説明

紫外線硬化型樹脂組成物

【構成】 (1)イソボルニルメタクリレート、(2)ポリオール、脂環式ジイソシアネート及びヒドロキシアクリレートを反応させて得られるポリウレタンアクリレート及び(3)光重合開始剤を含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。
【効果】 2P法のよる基板成形の量産性に優れ、かつ十分な機械特性、記録特性及び高信頼性を有する光ディスク用基板を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディスク形状あるいはカード形状の基板上に、2P(PhotoPolymerization)法により、紫外線硬化型樹脂組成物等の光により硬化する性質を有する樹脂(Photo Polymer)から成る案内溝及び/又は信号ピット等の凹凸パターンを有する層(以下、2P層という。)を形成する光ディスクあるいは光カード用基板に関し、更に詳しくは、特定の組成を有する紫外線硬化型樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】光ディスクには、大きくわけて、再生専用型、追記型、書換え可能型の3種類が知られており、再生専用型及び追記型光ディスクは、既に様々な分野で利用されている。
【0003】書換え可能型光ディスクの開発も急速に進展しており、とりわけ、光磁気ディスクは、本格的な実用化時期を迎えようとしている。これらの光ディスク用の基板材料には、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいは、ガラスが一般に用いられている。また、特に光磁気ディスク用基板材料として、低複屈折、低吸水率といった特徴を有する新規なポリオレフィン系の樹脂についても、盛んに研究が行われている。
【0004】さて、多種多様かつ莫大な情報の伝達、加工、蓄積が必要な昨今、記録媒体である光ディスクに求められる性能は、大容量化、データ転送の高速化、高信頼性であり、現在の光ディスクの研究の中心は、これらの点に集中して行われている。これらの高度な性能を実現するためには、基板材料の果たす役割は、非常に重要であり、その意味でガラス基板に大きな期待が寄せられている。
【0005】例えば、大容量化は、基板の口径を大きくすることによって実現できるが、現在、最も多く用いられているポリカーボネート基板では、口径300mm程度になると、ディスク回転時に面振れ等の機械特性が悪化してしまい、3,600rpm以上の高速回転に対応するのは難しい。また、ポリカーボネート基板では、射出成形条件の制御が難しく、周方向の複屈折分布が大きくなってしまう等の欠点がある。この点ガラスは、最も機械特性に優れた基板材料であり、複屈折性もないため、大口径化に有利である。
【0006】また、データ転送の高速化をはかる目的で、ディスク回転速度を大きくする研究が行われており、最近では5,000rpm以上の高速記録の実験も行われている。この点においても、他のプラスチック製基板と比較してガラス基板は動的機械特性が格段に優れており、高回転速度記録にもガラス基板が最適と言える。
【0007】さらに、高温高湿度下における安定性に優れており、ガラス基板は最も信頼性の高い基板材料でもある。
【0008】光ディスク用基板には、一般にレーザービームのガイド用の案内溝及び/又はプリフォーマット信号ピット等の凹凸パターンが、予め形成されているが、ガラス基板の場合、紫外線硬化型樹脂組成物を用いて凹凸パターンを形成する2P法が知られている。2P法は、以下のプロセスにより基板上に凹凸パターンを有する2P層を形成する方法である。
【0009】即ち、レーザービームをガイドする為の案内溝あるいはプリフォーマット信号ピット等の凹凸パターンが形成されたスタンパー(電鋳法により原盤から転写されてできた成形用金型)上に、液状の紫外線硬化型樹脂組成物を塗布し、予めシランカップリング剤等から成るプライマーで処理されたガラス基板を配置し、加圧して未硬化の紫外線硬化型樹脂組成物を押し広げ、ガラス基板側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させた後、スタンパーから剥離することにより、所望の凹凸パターンを有する2P層を形成する。
【0010】現在、2P層を形成するために使用されている紫外線硬化型樹脂組成物としては、例えば、(a)光ラジカル重合可能なプレポリマー、モノマー及び光ラジカル重合開始剤を主成分とする光ラジカル重合組成物、(b)光カチオン重合可能なプレポリマー、モノマー及び光カチオン重合開始剤を主成分とする光カチオン重合組成物、(c)光ラジカル重合組成物及び光カチオン重合組成物を混合した組成物、等の紫外光により硬化する組成物等が挙げられる。
【0011】プレポリマーとしては、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ、ポリカーボネート、ウレタン等の骨格に、官能基としてアクリロイル基、メタクリロイル基を2つ以上付加したウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリカーボネート等が用いられる。それぞれの化学構造及び分子量によって、紫外線硬化型樹脂組成物のスタンパ上での広がり易さあるいは硬化物のスタンパからの離型性といった成形性、硬化物の硬度、柔軟性、接着性、耐熱性、耐湿性といった光ディスク用基板としての特性に、重大な影響を及ぼす成分である。
【0012】モノマーとしては、低分子量で1〜3官能モノマーが用いられる場合が多い。官能基は、アクリロイル基、メタクリロイル基が多いが、スチレン、N−ビニルピロリドン等のビニル基を有するものも用いられる。一般にプレポリマーは粘度が高く、単体では2P成形を行なうのが困難なため、モノマーを反応性希釈剤として配合し、紫外線硬化型樹脂組成物の流動性を調製するのに用いる。また、モノマーの官能基数により、硬化物の架橋密度が異なる。例えば、3官能以上のモノマーを用いることにより、硬化物の架橋密度が増加し、硬度、ヤング率、耐湿熱性が向上する。反面、硬化物が脆くなったり、あるいは接着性、スタンパからの離型性等に悪影響を及ぼすこともあるため、多官能モノマーの選定は非常に重要である。
【0013】光重合開始剤は、紫外線が照射されると、特定波長を吸収して電子的励起状態となってラジカルが発生し、紫外線硬化型樹脂組成物の重合反応を開始させる。
【0014】光ディスクは、長期高信頼性が要求されるため、紫外線硬化型樹脂組成物を案内溝及び/又はプリフォーマット信号ピット等の凹凸パターン等の形成の材料として用いた際に要求される特性として、成形性、硬化後のスタンパからの離型性、凹凸パターンの転写性が良好であること、また高温高湿下において経時的にしわ、クラック等の変形が起こらず、基板との接着性、透明性が劣化しないことが要求される。従来より、これらの要求性能を兼備するように、例えば、特開昭57−88503号公報、特開昭58−108042号公報、特開昭60−74133号公報、特開昭62−192041号公報、特開昭62−239341号公報、特開昭63−210118号公報、特開平2−78033号公報、特開平2−118930号公報、特開平3−35012号公報等には、上記した種々のプレポリマー、モノマー、光重合開始剤を組み合わせた光ディスク用紫外線硬化型樹脂組成物が提案されている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来より用いられている紫外線硬化型樹脂組成物は、上記した光ディスク用としての要求性能をすべて兼ね備えたものではなく、以下のような問題点がある。
【0016】例えば、高耐熱性とするために、2官能以上のアクリレートモノマーを紫外線硬化型樹脂組成物中に60重量%以上含有するものがある。具体的には、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレートを80〜90重量%含有する組成物が提案されているが、この紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物は、高硬度、高ガラス転移温度(100℃以上)であり耐湿熱性に優れているが、反面、スタンパからの離型性に劣り、量産型2P成形機を用いて連続成形を行なうと、生産枚数が多くなるにつれて、スタンパの平面性を損なうことがあり、成形した基板の機械特性(瞬時面振れ加速度等)に悪影響を与える場合がある。また、生産枚数が多くなった場合、スタンパからの離型の際に、微小(数μm程度)な樹脂片がスタンパに残るようになり、それが原因で成形した基板にディフェクトが生じ、記録膜を製膜し光磁気ディスクとした場合の記録特性に悪影響を及ぼし、ノイズレベルやバイトエラーレートが増大することもある。このような現象は、低分子量多官能アクリレートの配合量を多くした場合に、よく見られる傾向である。
【0017】また、2P成形性を重視して、スタンパからの離型性を良くする為に、単官能アクリレートを20重量%以上含有させたり、プレポリマーを60重量%以上とすると、ガラス転移温度が80℃以下となり、耐熱性が不十分で、光ディスク用として以下のような問題が生じる。即ち、紫外線硬化型樹脂組成物を用いて2P成形したガラス基板に、スパッタ法により光磁気記録膜を製膜する際、スパッタチャンバー内の基板表面温度が上昇することにより、2P層にしわ等の変形が発生することがある。また、長期保存の信頼性を評価する目的で、加速環境試験(高温高湿試験、80℃、85%RH)を行なうと、しわ、浮き、クラック等の変形が発生する。これは、例えば、80℃、85%RHといった高温高湿度の環境下において、耐熱性の低い紫外線硬化型樹脂組成物から成る2P層では弾性率が低下しており、積層構造をとる光磁気記録膜の応力、特に誘電体層(通常、SiN、SiAlN等がよく用いられる)の応力によっ2P層が変形する為である。また、光磁気ディスクの重要な性能評価の1つである、消去、書き込み、再生の繰り返し試験を行なうと、繰り返し回数が増すににつれて、CN比が低下してしまう。
【0018】上記のように、従来の紫外線硬化型樹脂組成物では、2P成形の量産性に優れ、かつ十分な機械特性、記録特性及び高信頼性を有する光ディスク用基板を提供することはできなかった。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の紫外線硬化型樹脂組成物が、2P法による基板成形の量産性に優れ、かつ十分な機械特性、記録特性及び高信頼性を有する光ディスク用基板を提供し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0020】即ち、本発明は上記課題を解決するために、(1)イソボルニルメタクリレート、(2)ポリオール、脂環式ジイソシアネート及びヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート及び(3)光重合開始剤を含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物を提供する。
【0021】本発明で使用するポリウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオールと脂環式ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートを、公知の手段でウレタン化することにより得られる。
【0022】ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等の多価アルコール、多価アルコールとアジピン酸等の多塩基酸の反応によって得られるポリエステルポリオール、あるいはポリカーボネートポリオール等を挙げることができるが、これらの中でも分子量500〜2000の範囲にあるポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0023】脂環式ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネートあるいはメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が好ましい。トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系のジイソシアネートを用いると、経時的に2P層が黄変化して光線透過率が低下し、光磁気ディスクの記録感度の低下、あるいはバイトエラーレートの増大を来たす場合もあるため好ましくない。また、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂環式でない脂肪族系ジイソシアネートは、黄変性は無いが、2P層の耐久性が劣り、耐湿熱試験において2P層が劣化する傾向にあるため好ましくない。
【0024】ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)メタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができるが、これらの中でも2−ヒドロキシエチルアクリレートは、OH基のイソシアネートとの反応性が高く、アクリル2重結合の反応性も高いので特に好ましい。
【0025】本発明の紫外線硬化型樹脂組成物中、イソボルニルメタクリレートとポリウレタンアクリレートとの配合比率は、重量比で20:80〜80:20の範囲が好ましい。
【0026】光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン等が挙げることができるが、これらの光重合開始剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。本発明の紫外線硬化型樹脂組成物中の光重合開始剤の配合比率は、2〜10重量%が好ましい。
【0027】本発明の紫外線硬化型樹脂組成物中に、イソボルニルメタクリレート以外にも、紫外線硬化型樹脂組成物中30重量%以下の範囲で、単官能あるいは2官能以上の多官能アクリレートモノマーを含有させることもできる。
【0028】単官能アクリレートモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、イソデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの単官能アクリレートモノマーは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、イソデシルアクリレート等の長鎖単官能(メタ)アクリレートを紫外線硬化型樹脂組成物に含有させると、2P成形時のスタンパからの離型性向上、あるいは紫外線硬化型樹脂組成物の基板(ガラスあるいはポリカーボネート等のプラスチック製基板)に対する接着性向上に効果があるが、その配合比率が大きくなると、2P層の耐熱性が低下するので、紫外線硬化型樹脂組成物中10重量%以下の範囲で使用するのが好ましい。
【0029】多官能アクリレートモノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールのプロピレンオキサイド2モル付加物のジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸とネオペンチルグリコールのエステルのジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変成ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの多官能アクリレートモノマーは単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0030】本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、2P法による基板成形の量産性に優れ、かつ十分な機械特性、記録特性及び高信頼性を有する光ディスク用基板を提供することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0032】(実施例1)
(A)イソボルニルメタクリレート (共栄社油脂化学工業(株)製:商品名「IB−X」) 47重量% (B)分子量1200のポリテトラメチレングリコール1モルとメチレンビス (4−シクロヘキシルイソシアネート)2モルとの反応生成物に、さらに 2−ヒドロキシエチルアクリレート2モルを反応させて得られるポリウレ タンアクリレート 30重量% (C)1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 20重量% (D)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン (チバガイギー社製:商品名「イルガキュア−184」) 3重量%
【0033】上記(A)〜(D)を混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。続いて、この紫外線硬化型樹脂組成物とディスク形状のソーダライムガラス(外径130mm、内径15mm、板厚1.1mm)を用いて、自動2P成形機(大日本インキ化学工業(株)製)により、光ディスク用ガラス基板を連続して100枚成形した。
【0034】2P成形を行うガラス表面は、予めシランカップリング剤を主成分とするプライマーをスピンコートした後、焼付け処理をしておいた。自動2P成形機には、ISO標準フォーマットの入った5.25インチのスタンパを装着し、温度、圧力制御されたディスペンサーにより、紫外線硬化型樹脂組成物をスタンパ上に適量塗布した後、プライマー処理したガラスを乗せて加圧し、窒素雰囲気下で紫外線を照射した後、ISO標準フォーマット信号が転写された紫外線硬化型樹脂組成物の硬化層(2P層)が形成されたガラス2P基板を、スタンパから離型した。以上のプロセスは、総て超高精度に制御されたロボットを用いて自動的に行なった。
【0035】このようにして成形した100枚のガラス基板について機械特性を測定したところ、総て良好な結果が得られた。結果を表1に示した。
【0036】スタンパからの離型性を評価する目的で、2P成形機の離型用のピンに一定の力を加え、離型に要する時間を測定したところ、1.2秒で良好(2秒以内を良と判定)であった。
【0037】次に、インターバック式スパッタ装置を用いて、2P成形したガラス基板上に光磁気記録膜を製膜した。記録膜は、基板側から、SiN/TbFeCo/SiN/Alの4層構造とした。この光磁気ディスクについて、耐湿熱性試験(80℃、85%RH、2000時間)を行なったが、2P層及び記録膜にクラック、しわ、浮き等の変化は無かった。さらに、バイトエラーレートの測定を行なったが、2.2×10-6と良好な値であった。
【0038】(実施例2)
(A)イソボルニルメタクリレート (共栄社油脂化学工業(株)製:商品名「IB−X」) 47重量% (B)実施例1で使用したポリウレタンアクリレート 30重量% (C)トリメチロールプロパントリアクリレート 15重量% (D)ステアリルアクリレート 5重量% (E)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン (チバガイギー社製:商品名「イルガキュア−184」) 3重量%
【0039】上記(A)〜(E)を混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。以下、実施例1と同様の方法で、2P成形、機械特性評価、離型性評価、光磁気記録膜製膜、耐湿熱性試験、バイトエラーレート測定を行なった。その結果を、表1〜2に示した。
【0040】(実施例3)
(A)イソボルニルメタクリレート (共栄社油脂化学工業(株)製:商品名「IB−X」) 42重量% (B)実施例1で使用したポリウレタンアクリレート 55重量% (C)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン (チバガイギー社製:商品名「イルガキュア−184」) 3重量%
【0041】上記(A)〜(C)を混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。以下、実施例1と同様の方法で、2P成形、機械特性評価、離型性評価、光磁気記録膜製膜、耐湿熱性試験、バイトエラーレート測定を行なった。その結果を、表1〜2に示した。
【0042】(比較例1)
(A)トリプロピレングリコールジアクリレート (東亜合成化学工業(株)製:商品名「M−220」) 37重量% (B)実施例1で使用したポリウレタンアクリレート 35重量% (C)ネオペンチルグリコールジアクリレート 25重量% (D)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン (チバガイギー社製:商品名「イルガキュア−184」) 3重量%
【0043】上記(A)〜(D)を混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。以下、実施例1と同様の方法で、2P成形、機械特性評価、離型性評価、光磁気記録膜製膜、耐湿熱性試験、バイトエラーレート測定を行なった。その結果を、表1〜2に示した。
【0044】(比較例2)
(A)ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート (日本化薬(株)製:商品名「R−604」) 77重量% (B)実施例1で使用したポリウレタンアクリレート 20重量% (C)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン (チバガイギー社製:商品名「イルガキュア−184」) 3重量%
【0045】上記(A)〜(C)を混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。以下、実施例1と同様の方法で、2P成形、機械特性評価、離型性評価、光磁気記録膜製膜、耐湿熱性試験、バイトエラーレート測定を行なった。その結果を、表1〜2に示した。
【0046】なお、この紫外線硬化型樹脂組成物は、スタンパからの離型性が悪く、連続成形を続けていくうちに、スタンパにダメージ(物理的変形)を与えてしまったので、成形を18枚で打ち切った。表1の機械特性の結果は、18枚目の成形基板についての測定値を示した。
【0047】(比較例3)
(A)式(I)
【0048】
【化1】


【0049】
で表される3官能アクリレート (東亜合成化学工業(株)製:商品名「M−315」) 37重量% (B)分子量1200のポリテトラメチレングリコール1モルとヘキサメチレ ンジイソシアネート2モルとの反応生成物に、さらに2−ヒドロキシエ チルアクリレート2モルを反応させて得られるポリウレタンアクリレー ト 35重量% (C)ネオペンチルグリコールジアクリレート 25重量% (D)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン (チバガイギー社製:商品名「イルガキュア−184」) 3重量%
【0050】上記(A)〜(D)を混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。以下、実施例1と同様の方法で、2P成形、機械特性評価、離型性評価、光磁気記録膜製膜、耐湿熱性試験、バイトエラーレート測定を行なった。その結果を、表1〜2に示した。
【0051】(比較例4)
(A)2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート (東亜合成化学工業(株)製:商品名「M−5700」) 37重量% (B)実施例1で使用したポリウレタンアクリレート 35重量% (C)ネオペンチルグリコールジアクリレート 25重量% (D)1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン (チバガイギー社製:商品名「イルガキュア−184」) 3重量%
【0052】上記(A)〜(D)を混合して、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。以下、実施例1と同様の方法で、2P成形、機械特性評価、離型性評価、光磁気記録膜製膜、耐湿熱性試験、バイトエラーレート測定を行なった。その結果を、表1〜2に示した。
【0053】
【表1】


【0054】(*1)機械特性の測定値として、特に規格外となりやすい、瞬時面振れ加速度の値で評価した。2P成形を100枚行い、10枚おきに10点サンプリングしたものについて測定した結果の最大値を示した。
(*2)18枚目に2P成形したサンプルについての測定値。
(*3)2P成形のプロセスで、紫外線硬化型樹脂組成物を硬化した後、2P成形機の離型用のピンに一定の力を加え、離型に要する時間を測定した。
【0055】2秒以内を、良と判定した。
【0056】
【表2】


【0057】(*1)基板の光磁気記録膜(2P層)形成面の全面に、水玉状の浮き(2P層とガラスとの間に空気の層ができたもの)及びしわが観察された。
(*2)基板のグルーブ形状のダメージが大きい為、トラッキングサーボ不能で測定できなかった。
【0058】
【発明の効果】本発明の紫外線硬化型樹脂組成物によれば、2P法のよる基板成形の量産性に優れ、かつ十分な機械特性、記録特性及び高信頼性を有する光ディスク用基板を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】(1)イソボルニルメタクリレート、(2)ポリオール、脂環式ジイソシアネート及びヒドロキシ(メタ)アクリレートを反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート及び(3)光重合開始剤を含有することを特徴とする紫外線硬化型樹脂組成物。

【公開番号】特開平5−140254
【公開日】平成5年(1993)6月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−303257
【出願日】平成3年(1991)11月19日
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【出願人】(000004123)日本鋼管株式会社 (1,044)