説明

紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維

【課題】紫外線遮蔽性、抗菌性を有し、かつ耐候性に優れたポリエステル繊維を提供することである。
【解決手段】平均粒子径が0.06〜1.0μmの粒子表面をカップリング剤で被覆処理した酸化亜鉛粒子0.1〜4.0重量%と平均粒子径が0.3〜1.2μmの酸化チタン0.1〜3.0重量%を含有することを特徴とする紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮蔽性、抗菌性を有し、かつ耐候性に優れたポリエステル繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成繊維は、機械的特性をはじめ、様々な優れた特性から一般衣料分野をはじめインテリア、産業資材製品等の各種分野に幅広く利用されている。合成繊維に機能を付与する方法として、種々の機能剤を添加する方法が知られており、紫外線遮蔽性や抗菌性を有する機能剤として酸化亜鉛が知られている。
【0003】
機能剤を含有する繊維として、微粒子酸化亜鉛と微粒子酸化チタンを含有し、その光活性点を利用して抗菌性を付与したポリエステル繊維が知られている(特許文献1)。しかしながら、上述のポリエステル繊維においては、微粒子の無機粒子は凝集しやすく、製糸時にブリードアウトを発生するばかりか、紫外線照射時に光活性による樹脂劣化を起こすという欠点を有している。
【0004】
また、凝集を抑制し、製糸時のブリードアウトを防ぐ方法として、酸化亜鉛を添加する際に可塑剤を使用したポリアミド繊維が提案されている(特許文献2)。しかしながら、可塑剤を用いる方法はポリアミド等の親水性の高いポリマー組成物には使用できるが、疎水性の高いポリエステル等に用いると、ポリエステルの優れた力学特性や耐熱性、耐薬品性が著しく損なわれるという欠点を有している。
【0005】
また、ポリエステル繊維への酸化亜鉛添加量を少量とすることで、酸化亜鉛の凝集やブリードアウトを抑制する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、繊維に機能性を付与するには他の機能剤と合わせて用いる必要があり、また、酸化亜鉛が有する光活性効果により、紫外線照射時に熱劣化を起こすといった耐候性に劣るという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−84758号公報
【特許文献2】特開2002−339163号公報
【特許文献3】特開平7−189018号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記した従来技術の問題を解決し、紫外線遮蔽性、抗菌性を有し、かつ耐候性に優れたポリエステル繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、平均粒子径が0.3〜1.2μmの酸化チタンがポリエステル繊維の製糸時に酸化亜鉛の分散剤として働くことにより、糸中の酸化亜鉛粒子の分散性が向上し、これにより紫外線遮蔽性、抗菌性を有し、かつカップリング剤で被覆した酸化亜鉛粒子を用いることで耐候性にも優れたポリエステル繊維が得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
【0009】
(1)平均粒子径が0.06〜1.0μmの粒子表面をカップリング剤で被覆処理した酸化亜鉛粒子0.1〜4.0重量%と平均粒子径が0.3〜1.2μmの酸化チタン0.1〜3.0重量%を含有することを特徴とする紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維。
【0010】
(2)前記(1)に記載の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維を少なくとも一部に用いた織編物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、ポリエステル繊維中の酸化亜鉛粒子の分散性が高く、紫外線遮蔽性、抗菌性、耐候性に優れたポリエステル繊維を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維に含有させる酸化亜鉛は粒子表面をカップリング剤で被覆処理したものが適用される。酸化亜鉛微粒子は、紫外線吸収や脱臭という作用に加えて、殺菌、抗菌作用を有しているが、光触媒活性を有するために、樹脂中に含有させたときに光劣化を生じ、得られる繊維の物性が劣ったものになるという欠点がある。
【0014】
そこで、本発明においては、酸化亜鉛微粒子の欠点である光触媒活性を抑制し、かつ光学的にも化学的にも酸化亜鉛の性質を有するようにするために、粒子の表面をカップリング剤で被覆処理したものを用いる。
【0015】
カップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましく、チタン系、アルミニウム系、ジルコニウム系、ジルコアルミネート系等のその他のカップリング剤あるいはシラン等を用いても良い。シランカップリング剤としては、例えば信越化学社製のシランカップリング剤KBM−403、KBM−503が挙げられる。
【0016】
被覆処理の方法としては、特に限定されないが、酸化亜鉛粉末の水中または非水溶媒中のスラリーを攪拌しつつカップリング剤を添加する湿式法、高速回転が可能なヘンシェルミキサーやハイスピードミキサー等で酸化亜鉛粉末を高速攪拌しつつカップリング剤をスプレーまたは滴下する乾式法、酸化亜鉛粉末を入れた反応容器内に窒素等の不活性ガスでキャリーしたカップリング剤を導入し被覆処理する気相法等により処理することができる。
【0017】
そして、カップリング剤の被覆量は、酸化亜鉛微粒子の表面積にもよるが、0.1〜20重量%が好ましい。このように酸化亜鉛微粒子の表面がカップリング剤で被覆されていることによって、酸化亜鉛微粒子が有する光触媒活性を少量の被覆量で無駄なく十分に抑制することができ、一方では、紫外線吸収作用や抗菌、殺菌等の作用をそのまま維持することができる。
【0018】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維に含有させる酸化亜鉛粒子の含有量は0.1〜4.0重量%であることが必要であり、好ましくは0.2〜3.0重量%である。含有量が0.1重量%未満では、紫外線遮蔽性、抗菌性といった機能が十分に付与されなくなる。一方、含有量が4.0重量%を超えると、一部の酸化亜鉛粒子が分散されにくくなり、繊維の強度低下が発生し、製編織時のガイド摩耗等による糸切れや毛羽が発生し、操業性が悪化する。
【0019】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維に含有させるカップリング剤で表面が被覆された酸化亜鉛粒子は平均粒子径が0.06〜1.0μmであることが必要であり、好ましくは0.07〜0.7μm、より好ましくは0.08〜0.5μmである。平均粒子径が0.06μm未満では、酸化亜鉛粒子の表面積が大きくなり、光触媒活性を十分に抑制するためのカップリング剤被覆処理量が大きくなり、光触媒活性点のみならず抗菌や殺菌等を司る活性点も被覆されてしまうため、抗菌機能が得られなくなるばかりか、酸化亜鉛の凝集が発生し、繊維の強度低下や溶融ポリマー吐出時の圧力上昇等の製糸性の悪化を引き起こす。一方、平均粒子径が1.0μmを超えると、被覆処理された酸化亜鉛粒子の表面積が小さくなり、抗菌機能が得られなくなるばかりか、繊維の強度低下が発生し製編織時のガイド摩耗等による糸切れや毛羽が発生し、操業性が悪化する。
【0020】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維に含有させる酸化チタンの含有量は0.10〜3.0重量%であることが必要であり、好ましくは0.12〜2.0重量%である。酸化チタンの含有量が0.10重量%未満では、ポリエステル繊維中の酸化亜鉛の分散性が低くなり、紫外線遮蔽性、抗菌性といった機能が十分に付与されなくなる。酸化亜鉛の分散性が低くなる理由は明確ではないが、一つの仮説としてポリエステル繊維への分散性が高い酸化チタンが結晶核のようになり、その周辺に酸化亜鉛が付着する形で分散していることが考えられる。この考えに立てば、酸化チタンを用いることでポリエステル繊維中の酸化亜鉛の分散性を高くすることができ、酸化亜鉛粒子が有する紫外線遮蔽性、抗菌性を効果的に付与することが可能となり、製糸時の酸化亜鉛粒子のブリードアウトや凝集による操業性の悪化を防ぐことができる。一方、酸化チタン含有量が3.0重量%を超えると、酸化亜鉛粒子の分散性は維持されるが、繊維の強度低下が発生し、製編織時にガイド摩耗等による糸切れや毛羽が発生し、操業性が悪化する。
【0021】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維に含有させる酸化チタン粒子は平均粒子径が0.30〜1.2μmである必要があり、好ましくは0.35〜1.0μm、より好ましくは0.40〜0.8μmである。酸化チタン粒子の平均粒子径が0.3μm未満では、酸化チタンの凝集が発生し、酸化亜鉛の分散剤としての効果が得られなくなる。また、粒径が小さくなると、光活性が強くなり、酸化チタンのバンドギャップ以上のエネルギーをもつ紫外線等の光を照射することで活性化され、樹脂劣化を引き起こすため耐候性が劣ったものになる。一方酸化チタン粒子の平均粒子径が1.2μmを超えると、酸化チタンの粗大粒子により繊維の強度低下が発生し、製編織時のガイド摩耗等による糸切れや毛羽が発生し、操業性が悪化する。
【0022】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維は紫外線を6時間照射した強制劣化時の強力保持率が70%以上である。強力保持率が70%未満では、紫外線をはじめとするエネルギーの大きな光が照射された際の耐候性に劣り、カーテンや屋外で使用される産業資材等の耐候性が要求される用途には使用し難くなる。
【0023】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維は50回洗濯試験後の殺菌活性値が0より大きくなる。殺菌活性値が0以下では、繊維上の皮膚常在菌や有害細菌が増加するため、医療機関で使用されるカーテンやシーツ等の清潔で衛生的な管理を求められる用途では使用し難くなる。
【0024】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維の製造方法は、特に限定されないが、常法により、溶融紡糸装置を用いて製造することができる。また、ポリエステル中への酸化亜鉛、酸化チタン各無機粒子の添加は、これらの無機粒子を高濃度で含有する樹脂組成物(マスターチップ)を作成し、適宜量添加する方法や、ポリエステル重合時に無機粒子を粉末で添加する方法等が挙げられ特に限定されないが、酸化チタン粒子が酸化亜鉛粒子の分散剤として有効に機能させるためには、ポリエステル中に酸化チタン粒子を先に添加し、その後酸化亜鉛粒子を添加する方法が好ましい。
【0025】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維の総繊度は特に限定されるものではないが、22〜250dtexであることが好ましい。特に84dtex程度にしたものでは、カーテン用途として低密度の織編物にしたときの紫外線遮蔽性を最も良好にすることができる。
【0026】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維は、糸強度が2.0〜5.0cN/dtex、伸度が20〜200%であることが好ましい。より好ましくは、糸強度が2.5〜5.0cN/dtex、伸度が20〜180%である。糸強度が2.0cN/dtex未満の場合、製編織時にガイド摩耗等による糸切れや毛羽が発生し操業性が悪化するばかりか、布帛にした際に破れやすく実用的な安定性に乏しい。一方、糸強度が5.0cN/dtexを超える繊維は単成分における通常の溶融紡糸法で得ることは困難である。伸度が20%未満では、布帛にした際に伸縮性の点から安定性に乏しい。一方、伸度が200%を超える繊維は高次工程にて染めムラなどの異常を発生しやすく実用性に劣る。
【0027】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維の断面形態は、丸断面の他、扁平断面、多葉断面、中空断面等の種々の断面繊維が可能である。
【0028】
本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル織編物は、本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維を少なくとも一部に用いて製編織して得られたものである。十分な紫外線遮蔽性、抗菌性が得られる範囲であれば、本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維以外の繊維との交絡混繊糸や合撚糸等を製造しておき製編織したものや、本発明の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維以外の繊維とを交織、交編したものでもよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の測定、評価項目は以下に述べる方法で測定した。
・ 紫外線遮蔽性
経糸に84dtex−36filの延伸糸、緯糸に実施例、比較例で得られた延伸糸を用い、経糸密度95.0本/inch、緯糸密度93.0本/inchとなるように打ち込んだ織物を作製し、分光光度計を用いて波長0.28μm〜0.40μm域の紫外線透過度を測定し、測定試料なし(ブランク)との面積差を紫外線吸収性(紫外線遮蔽性)とした。紫外線遮蔽性80%以上を合格とした。
・ 抗菌性(殺菌活性値)
得られた繊維を丸編機を用いて筒編にした筒編サンプルに精練を行った後、社団法人繊維評価技術協議会が定める制菌加工繊維製品認証基準に従い、試験菌として黄色ぶどう球菌を用いて殺菌活性値を測定するものである。試験方法はJIS L1902 (繊維製品の抗菌性試験方法)の定量試験法(菌液吸収法)とし、培養後の生菌数測定方法は混釈平板培養法(コロニー法)により行った。
【0030】
サンプルの未処理(精練後)と50回洗濯試験後について評価した。ただし、洗濯方法はJIS L0217 103号の試験方法により行い、洗剤はJAFET標準洗剤を使用した。
【0031】
殺菌活性値が0より大きいものを合格とした。
・ 耐候性
スガ試験機社製UVテスターを使用し、ブラックパネル温度83±3℃で6時間紫外線照射を行い、照射前後の繊維の引張強力をテンシロンで測定し、以下の式により強力保持率を求めた。強力保持率70%以上を合格とした。
【0032】
強力保持率=紫外線照射後の繊維の最大強力/紫外線照射前の繊維の最大強力
・ 分散性
糸の断面をTEM観察し、3.0μm以上の凝集塊の数の割合を測定した。
【0033】
◎・・・0.50%未満
○・・・5.0%未満
×・・・5.0%以上
(5)糸強度
テンシロン引張試験機で試長20cm、引張速度20cm/min、初荷重1/10cN/dtexで引張り、最大強力/繊度により求めた。
【0034】
実施例1
酸化チタンをポリマー重合時に添加して得られた溶融粘度0.64のポリエチレンテレフタレートチップに対し、酸化亜鉛を10重量%添加した溶融粘度0.60のポリエチレンテレフタレートマスターチップを混合し、公知の溶融紡糸方法にて紡糸し、通常の延伸条件で延伸して84dtex/36フィラメント、伸度40%のポリエステル繊維を得た。該ポリエステル繊維の酸化亜鉛の含有量、平均粒子径およびシラン系カップリング剤での表面被覆の有無、酸化チタンの含有量および平均粒子径を表1に示す。また、該ポリエステル繊維の紫外線遮蔽性、抗菌性、耐候性、分散性、糸強度を表1に示す。高い抗菌性、紫外線遮蔽性、耐候性、分散性、糸強度が得られた。
【0035】
実施例2
実施例1において、酸化亜鉛の含有量を4.0重量%にする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。分散性は粗大粒子が少し見られたが問題ないレベルであり、高い紫外線遮蔽性、抗菌性、耐候性が得られ、糸強度も問題ないレベルであった。
【0036】
実施例3
実施例1において、酸化亜鉛の含有量を0.15重量%にする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。紫外線遮蔽性、抗菌性は問題ないレベルであり、高い耐候性、分散性、糸強度が得られた。
【0037】
実施例4
実施例1において、酸化亜鉛の平均粒子径を0.10μmにする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。高い紫外線遮蔽性が得られ、抗菌性、耐候性、分散性、糸強度は問題ないレベルであった。
【0038】
実施例5
実施例1において、酸化亜鉛の平均粒子径を1.0μmにする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。紫外線遮蔽性、抗菌性、耐候性、分散性、糸強度は問題ないレベルであった。
【0039】
実施例6〜9
実施例1において、酸化チタンの含有量を表1に示す通りに変更する以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。実施例1対比酸化チタン含有量が多くなることで、分散性、糸強度が低下傾向となり、また、実施例1対比酸化チタン含有量が少なくなることで、紫外線遮蔽性、抗菌性、分散性、糸強度が低下傾向となったが、どれも問題ないレベルであった。
【0040】
実施例10〜15
実施例1において、酸化チタンの平均粒子径を表1に示す通りに変更する以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。実施例1対比酸化チタンの平均粒子径が大きくなることで、酸化亜鉛の分散性が低くなり、紫外線遮蔽性、抗菌性、糸強度が低下傾向となった。また、実施例1対比酸化チタンの平均粒子径が小さくなることで、酸化亜鉛、酸化チタンとも分散性が低くなり、紫外線遮蔽性、抗菌性、耐候性、糸強度は低下傾向となった。但し、どれも問題ないレベルであった。
【0041】
比較例1
実施例1において、酸化亜鉛の含有量を5.0重量%する以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。高い紫外線遮蔽性、抗菌性が得られ、耐候性も問題ないレベルであったが、分散性、糸強度が低く操業性が不安定であった。
【0042】
比較例2
実施例1において、酸化亜鉛の含有量を0.08重量%する以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。高い耐候性、分散性、糸強度が得られたが、紫外線遮蔽性、抗菌性は不十分であった。
【0043】
比較例3
実施例1において、酸化亜鉛の平均粒子径を0.03μmとする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。紫外線遮蔽性、耐候性も問題ないレベルであったが、抗菌性は不十分であり、分散性、糸強度が低く、操業性が不安定であった。
【0044】
比較例4
実施例1において、酸化亜鉛の平均粒子径を1.30μmとする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。紫外線遮蔽性、耐候性は問題ないレベルであったが、糸強度が低く操業性が不安定であり、抗菌性、分散性も不十分であった。
【0045】
比較例5
実施例1において、酸化亜鉛のシランカップリング剤での表面被覆を実施しない以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。紫外線遮蔽性、抗菌性、分散性、糸強度は問題ないレベルであったが、紫外線照射時の強度劣化が大きく耐候性は不十分であった。
【0046】
比較例6
実施例1において、酸化チタンの含有量を4.0重量%とする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。高い紫外線遮蔽性、抗菌性、耐候性、分散性が得られたが、糸強度が低く操業性は不安定であった。
【0047】
比較例7
実施例1において、酸化チタンの含有量を0.05重量%とする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。耐候性は問題ないレベルであったが、糸強度が低く操業性が不安定であり、紫外線遮蔽性、抗菌性、分散性も不十分であった。
【0048】
比較例8
実施例1において、酸化チタンの平均粒子径を2.0μmとする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。高い耐候性が得られ紫外線遮蔽性、抗菌性は問題ないレベルであったが、分散性、糸強度が低く操業性は不安定であった。
【0049】
比較例9
実施例1において、酸化チタンの平均粒子径を0.20μmとする以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。糸強度が低く操業性が不安定であり、紫外線遮蔽性、抗菌性、耐候性、分散性も不十分であった。
【0050】
比較例10
実施例1において、酸化亜鉛を添加したマスターチップを混合しない以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。高い耐候性、分散性、糸強度が得られたが、紫外線遮蔽性、抗菌性は不十分であった。
【0051】
比較例11
実施例1において、ベースチップに酸化チタンを添加しないこと以外は同様の方法で紡糸・延伸を実施し、ポリエステル繊維を得た。耐候性は問題ないレベルであったが、糸強度が低く操業性が不安定であり、紫外線遮蔽性、抗菌性、分散性も不十分であった。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.06〜1.0μmの粒子表面をカップリング剤で被覆処理した酸化亜鉛粒子0.1〜4.0重量%と平均粒子径が0.3〜1.2μmの酸化チタン0.1〜3.0重量%を含有することを特徴とする紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維。
【請求項2】
請求項1に記載の紫外線遮蔽性および抗菌性を有するポリエステル繊維を少なくとも一部に用いた織編物。

【公開番号】特開2011−111704(P2011−111704A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271795(P2009−271795)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】