細胞を取り扱い、画像化し、分析するためのマイクロ流体器具
細胞学的検体の細胞を分離及び画像化又は分析するためのマイクロ流体器具が、基板及び外壁、流路、仕切り部材及びレセプタクルを有するマイクロ流体細胞分離エレメントを有する。仕切り部材は、分離エレメントの内部の中に配置されており、レセプタクルが、仕切り部材内部の中に配置されている。分離エレメントは、外壁を通って導入される流体が第1の方向に流路を通って流れるように構成されており、仕切り部材は、流体が流路から第1の方向とは異なる第2の方向に仕切り部材の入口開口を通って仕切り部材内部の中に流れるように配置されている。レセプタクルは、流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するよう仕切り部材の入口に関連して配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、生検標本の処理に関し、特に、マイクロ流体器具を用いた生物検体の細胞の分離及び画像化に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者及び技師が、ガラス標本スライドといった標本キャリヤ上でしばしば生検標本を調整し、標本を検査して患者が特定の病状又は疾病を有するか又は疑いがあるか否かを分析する。例えば、標本を検査して、パパニコロー(Pap)塗抹試験の一部分及び他のガン発見試験として、悪性細胞又は悪性になりそうな細胞を見つける。標本スライドを調整した後に、自動化システムが標本を分析することが可能であり、最も関連のある細胞又は細胞群に技師の関心を集めるよう使用する一方、あまり関連のない細胞をさらなる検査から除く。
【0003】
Pap塗抹試験がよく知られている一方、いくつかある理由の中で検体の厚さが変化することにより、それを画像化するのが難しい。これらの問題に対処するために、「トラックエッチする」フィルタ膜法に基づく細胞移送エンジンを使用して、スライドに適用し、分析し、画像化し得る、より一貫した細胞の単層を調整する。トラックエッチする膜フィルタをうまく利用する1つの既知の自動化スライド調整システムは、アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01752,マールバラ,キャンパスドライブ 250のサイテック コーポレイションによって市販されている、ThinPrep(登録商標)3000システムである。このようなシステムを使用する試験は、一般に、ThinPrep(TP)パパニコロー(Pap)試験、又は特に、ThinPrep又はTP試験と称される。
【0004】
図1及び図2を参照すると、既知のThinPrep処理システム10は、細胞検体14を保持する容器又は小瓶12、フィルタ20、バルブ30、及び真空源40を有している。検体14は、一般に、液体、溶液、流体又はサイテック コーポレイション社によって市販されているPreservCytといった移送媒体18の中に分散した複数の細胞16を有している。既知のフィルタ20は、ポリエチレンテレフタラートで作成されるフィルタ材料を有しており、平方センチメートル当たり約180,000細孔の平均細孔密度、約6.9ミクロンの平均細孔直径、及び約16ミクロンの平均膜厚を有している。
【0005】
使用時に、フィルタ20の一端が溶液18の中に挿入され、フィルタ20の他端がバルブ30を介して真空源40に結合される。バルブ20を開放すると、真空源40からの負圧がフィルタ20にかかり、これにより、溶液18をフィルタ20の中に引き込む。引き込まれた液体18の中の細胞16をフィルタ20の面上で採取する。図3を参照すると、採取した細胞16を有するフィルタ20が、スライド50に接触する。そして、図4を参照すると、フィルタ20をスライド50から取り外すことで、単層の細胞16を有する検体スライドを調整する。
【0006】
「トラックエッチする」フィルタ膜法に基づく細胞移送エンジンを効果的に使用する一方、このような器具及び改良することができ、他の既知の方法に対して顕著な改良を与える。特に、フィルタ20の面上の単一細胞16の配置及び提示を制御するのが難しい。これは、細胞16をスライド50上に移す際の細胞16の配置及び提示を制御する際の困難さを与えるため、細胞の画像化及び分析又は試験をより複雑且つ時間がかかるものにする。
【0007】
図5は、例えば、ThinPrepを用いた「トラックエッチする」フィルタ膜を使用して調整した標本検体14の典型的な細胞分布及びレイアウト60の一例を示す。図5に示すように、さらに図6を参照すると、特定の細胞16を集めて細胞クラスタ又は重複する細胞17を形成している。概略的に図7に示すように、重複する細胞17は、現在市販されている画像処理システムで及び方法で細胞16の境界を判定する能力を妨げる可能性がある。
【0008】
細胞16の境界を判定する能力は、細胞16全体の境界を定義することができ、細胞質領域といった関連する細胞に関する測定及びデータを取得する能力のため重要である。これらの能力により、さらに、重要な手作業による分類評価指標、すなわち、重要な細胞学的分析パラメータでありこれまで自動的に測定されていない核小体/細胞質比の精度よい測定が可能となる。
【0009】
さらに、膜ベースのフィルタ20は、大きさによる細胞16又は細胞クラスタ17の効果的な仕分けができない。さらに、既知の調整システムを使用して染色し得る標本を調整し得る一方、このようなシステムは比較的大量の染料及び関連する煩わしい染色機器を必要とする。
【0010】
細胞を扱うのにマイクロ流体が近年使用されている。既知のマイクロ流体細胞捕捉法が、Robert M.Johannによる「Cell trapping in Microfluidic chips」及びDino Di Carloらによる「Single−Cell Enzyme Concentrations,Kinetics,and Inhibition Analysis Using High−Density Hydrodyanmic Cell Isolation Arrays」及びDino Di Carloらによる「Dynamic Single Culture Array」に記載されている。Johannnは、非接触の細胞捕捉及び接触ベースの細胞捕捉を有する様々な固定化法を説明している。Di Carloらは、細胞トラップの配列上の流体流れに基づいて細胞を捕捉するよう構成された特別な物理的障壁を説明している。他のマイクロ流体システムは、例えばDNAといった特定の分子の存在の検出に関する。
【0011】
特定のマイクロ流体器具及び関連する細胞操作が提案されている一方、既知のマイクロ流体器具及び方法が、血液及び粘液を含む潤滑剤及び体液といった他の構成要素を含む細胞の不均一な検体からの細胞の効果的な分離、配置及び移送を提供していない。さらに、既知のマイクロ流体器具は、試験及び分析を目的として基板に固定された生存していない調整標本検体の調整及び画像化を含む効果的な検体処理を与えるよう大規模にこれらの性能を与えていない。このため、既知のマイクロ流体器具及び研究は、このような検体の子宮頸部細胞診及び関連する調整及び分析に適していない。
【発明の概要】
【0012】
一実施例によれば、細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具が、基板と、基板に結合されるマイクロ流体細胞分離エレメントとを具えている。分離エレメントが、外壁、流路、仕切り部材及びレセプタクルを有している。外壁は、入口、出口、及び分離エレメント内部を規定し、流路が分離エレメント内部の中に規定され、外壁の入口と流体連通する。仕切り部材が、分離エレメント内部の中に配置され、入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具える。レセプタクルが、仕切り部材内部の中に配置されている。分離エレメントが、外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に流路を通って流れるように構成されており、仕切り部材が、流体が流路から第1の方向とは異なる第2の方向に仕切り部材の入口開口を通って仕切り部材内部の中に流れるように配置されており、レセプタクルが、流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するよう仕切り部材の入口に対して配置されている。
【0013】
別の実施例によれば、細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具が、基板と、基板に結合されるマイクロ流体細胞分離エレメントとを具えている。分離エレメント及び基板は、互いに取り外し可能に取り付けられている。分離エレメントが、外壁、流路、仕切り部材及びレセプタクルを有している。外壁は、入口、出口、及び分離エレメント内部を規定し、流路が分離エレメント内部の中に規定され、外壁の入口と流体連通する。仕切り部材が、分離エレメント内部の中に配置され、入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具える。レセプタクルが、仕切り部材内部の中に配置されている。分離エレメントが、外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に流路を通って流れるように構成されており、仕切り部材が、流体が流路から第1の方向とは異なる第2の方向に仕切り部材の入口開口を通って仕切り部材内部の中に流れるように配置されている。レセプタクルが、流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するよう仕切り部材の入口に対して配置されている。分離エレメント及び基板は、互いに取り外し可能に取り付けられており、レセプタクルによって捕捉され保持される細胞が基板と分離エレメントとの間に置かれる。
【0014】
さらなる実施例が、基板及び基板に関連するマイクロ流体細胞分離エレメントを有する、細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具を扱う。分離エレメントが、外壁、流路、仕切り部材及び複数のレセプタクルを有している。外壁は、入口、出口、及び分離エレメント内部を規定し、流路が分離エレメント内部の中に規定され、外壁の入口と流体連通する。仕切り部材が、分離エレメント内部の中に配置され、複数の入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具えており、複数のレセプタクルが、仕切り部材内部の中に配置されている。各レセプタクルは、互いに間隔を空けて単一細胞又は細胞クラスタを捕捉するよう構成された複数のレセプタクル部品を有している。分離エレメントが、外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に流路を通って流れるように構成されており、仕切り部材が、流体が流路から第1の方向とは異なる第2の方向に各仕切り部材の入口開口を通って仕切り部材内部の中に流れるように配置されている。レセプタクルが、流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するよう仕切り部材の入口開口に対して配置されている。
【0015】
さらなる代替的な実施例が、基板に関連するマイクロ流体細胞エレメントを用いて細胞学的検体の細胞を分離する方法を扱う。この方法は、分離エレメントの外壁の入口を通して流体又は溶液を導入するステップを有する。導入された流体は、分離エレメントの内部又は内部空間の中に規定される流路を通って第1の方向に流れる。流体は、流路から分離エレメント内部の中の仕切り部材の入口開口を通って第1の方向とは異なる第2の方向に流れる。また、この方法は、仕切り部材の中に配置されたレセプタクルを第2の方向に流れる流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するステップを有している。
【0016】
別の代替的な実施例が、基板に関連するマイクロ流体細胞分離エレメントを用いて細胞学的検体の細胞を分離及び分析する方法を扱う。この方法は、分離エレメントの外壁の入口を通して流体又は溶液を導入するステップを有する。導入された流体は、分離エレメントの内部又は内部空間の中に規定される流路を通って第1の方向に流れる。流体は、流路から分離エレメント内部の中に配置された仕切り部材の入口開口を通って第1の方向とは異なる第2の方向に流れる。さらに、この方法は、仕切り部材の中に配置されたレセプタクルを第2の方向に流れる流体の中の第1の細胞を捕捉及び保持するステップを有する。さらに、この方法は、(例えば、第1の細胞を分析した後に)第1の細胞を放出するステップと、第2の方向に流れる流体の中の第2の細胞を捕捉及び保持して放出した第1の細胞と取り替えるステップとを有する。そして、第2の細胞を分析する。
【0017】
別の代替的な実施例が、基板に関連するマイクロ流体細胞分離エレメントを用いて細胞学的検体の細胞を分離及び画像化する方法を扱う。この方法は、分離エレメントの外壁の入口を通して流体又は溶液を導入するステップを有する。導入された流体は、分離エレメントの内部又は内部空間の中に規定される流路を通って第1の方向に流れる。流体は、流路から分離エレメント内部の中に配置された仕切り部材の入口開口を通って第1の方向とは異なる第2の方向に流れる。さらに、この方法は、仕切り部材の中に配置されたレセプタクルを第2の方向に流れる流体の中の第1の細胞を捕捉及び保持するステップを有する。さらに、この方法は、(例えば、第1の細胞を分析した後に)レセプタクルから第1の細胞を放出するステップと、第2の方向に流れる流体の中の第2の細胞を捕捉及び保持して放出した第1の細胞と取り替えるステップとを有する。そして、第2の細胞を画像化する。
【0018】
1又はそれ以上の実施例では、第2の方向が、第1の方向に対してほぼ横方向である。さらに、1又はそれ以上の実施例では、仕切り部材が、複数のレセプタクルを有しており、レセプタクルが様々なサイズを有し得る。小さい方のレセプタクルを、単一細胞を捕捉及び保持するよう構成することができ、大きい方のレセプタクルを、細胞クラスタを捕捉及び保持するよう構成し得る。一実施例では、小さい方のレセプタクルが、大きい方のレセプタクルよりも外壁の入口の近くに配置されている。また、仕切り部材の入口開口は、様々な大きさとすることができる。小さい方の開口を、単一細胞が通過し得るよう構成でき、大きい方のレセプタクルは細胞クラスタが通過し得る大きさである。一実施例では、小さい方の入口開口が、大きい方の入口開口よりも外壁の入口の近くに設けられている。
【0019】
1又はそれ以上の実施例では、分離エレメントが、複数の仕切り部材を有しているため、複数の流路を規定しており、そのそれぞれが外壁の入口に連通し、少なくとも1の流路が隣接する仕切り部材の壁の間に規定される。
【0020】
1又はそれ以上の実施例では、例えば、分離エレメントの外側に配置された前処理エレメントが流体によって搬送される細胞クラスタを分解するよう構成されている。そして、細胞及び/又は保持されるクラスタが、分離エレメントの中の1又はそれ以上のレセプタクルによって捕捉される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで、全体を通して同じ参照番号が対応するパーツを示す図面を参照する。
【0022】
【図1】図1は、細胞を採取して採取した細胞の層を検体スライドに適用するための細胞膜フィルタを使用する既知のスライド調整システム及び方法を示す。
【図2】図2は、検体スライドに適用するための採取した細胞を含む既知の細胞膜フィルタの底面図である。
【図3】図3は、細胞膜フィルタによって採取した細胞を検体スライドに適用する既知の方法を示す。
【図4】図4は、細胞膜フィルタによって適用される細胞の層を有する検体スライドを示す。
【図5】図5は、図1乃至4に示すタイプのシステム及び方法を用いて調整された検体スライド上の細胞分布の一例を示す。
【図6】図6は、図5に示す細胞の重なりをさらに示す。
【図7】図7は、規定された境界を有する隔離又は分離した細胞を示す。
【図8A】図8Aは、一実施例にしたがって構成されたマイクロ流体分離器具を示す。
【図8B】図8Bは、一実施例にしたがって構成されたマイクロ流体分離器具を示しており、基板及び分離エレメントが互いに付着又は接着している。
【図8C】図8Cは、基板から分離エレメントを除去して分離した細胞を有する基板を形成することを含む一実施例を示す。
【図8D】図8Dは、図8Cに示す分離エレメントの除去に続いて分離した細胞を有する基板をさらに示す。
【図8E】図8Eは、カバークリップが基板上の分離した細胞の上方に適用される一実施例を示す。
【図9】図9は、一実施例にしたがって構成されたマイクロ流体細胞分離器具の中の仕切り部材及び関連する溶液流れを示す。
【図10】図10は、仕切り部材の中の細胞レセプタクルに近づく溶液中の細胞を示す。
【図11】図11は、図10に示すレセプタクルによって捕捉された細胞を示す。
【図12】図12は、一実施例にしたがって構成され2つのレセプタクル要素を有する細胞レセプタクルを示す。
【図13】図13は、別の実施例にしたがって構成され3つのレセプタクル要素を有する細胞レセプタクルを示す。
【図14】図14は、さらなる実施例に係る、単一細胞を捕捉するよう構成された複数の入口開口及びレセプタクルを有する仕切り部材を有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図15】図15は、さらなる実施例に係る、細胞クラスタを捕捉するための複数の大きな入口開口及び大きなレセプタクルを有する仕切り部材を有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図16】図16は、別の実施例に係る、単一細胞を捕捉するよう構成された複数の仕切り部材及び複数の入口開口及びレセプタクルを有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図17】図17は、別の実施例に係る、細胞クラスタを捕捉するよう構成された複数の仕切り部材及び複数の大きな入口開口及び大きなレセプタクルを有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図18】図18は、別の実施例に係る、単一細胞及び細胞クラスタを捕捉するよう構成された複数の仕切り部材及び複数の入口開口及び様々な大きさのレセプタクルを有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図19】図19は、別の実施例に係る前処理又は分解エレメントを有する図18に示すマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図20】図20は、一実施例に係る前処理エレメントを示す。
【図21】図21は、細胞及び細胞クラスタを画像化するために使用し得るシステムを全体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、その一部を形成し、具体的な特定の実施例を示しそれらの実施法を示す添付図面を参照する。本発明の範囲を逸脱することなしに、これらの実施例で実施されるものとして変更し得ることに留意されたい。
【0024】
図8Aを参照すると、一実施例に係る細胞検体の単一細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離するよう構成されたマイクロ流体器具800が、基板又はベース部材810(全体的に基板810と称する)、マイクロ細胞分離エレメント820(全体的に分離エレメント820と称する)、及び流入口又は入口チューブ831(全体的に流入口831と称する)、流体出口又は出口チューブ832(全体的に流体出口832と称する)、又は流体マニホールド(図8Aに図示せず)を有している。マイクロ流体器具800は、流体又は溶液18を様々な方向に微細加工分離エレメント820を通して流し、細胞検体14の細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離するよう構成されていることで、細胞の調整、移送、供給、及び画像処理を促進する。流入口及び出口831、832は、処理すべき溶液18を分離エレメント820に導入して、分離エレメント820から処理した溶液18を排出するよう構成される。
【0025】
本実施例を使用して細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離できるが、特定の構成が細胞クラスタ17の分離を特別に含んでいない限り、一般に細胞16について説明する。さらに、本明細書で使用される溶液又は流体は、細胞16又は細胞クラスタ17を含む溶液、流体、材料又は物質として規定され、マイクロ流体細胞分離エレメント820を通って流れ得る。細胞16又は細胞クラスタ17を含む溶液又は流体18の例は、Cytycによって市販されたPreservCyt、ゲルベースの溶液、及び体液といった、液体ベースの溶液を含んでいる。このため、細胞16及び細胞クラスタ17は、(例えば、液体ベース又はゲルベースの溶液のケースのように)別の物質又は流体で希釈することができ、又は体液(例えば、頸部から直接採取される未希釈の細胞検体)の一部とすることができる。説明の簡単のために、マイクロ流体器具800を流れ抜ける液体ベースの溶液の形式で溶液18を説明するが、本実施例を用いて様々な溶液18の細胞を分離できることに留意されたい。さらに、装置、システム及び方法に係る本実施例を実施して、頸部の検体及び他のタイプの検体を含む細胞検体を分析し得る。説明の簡単のために、溶液18中の頸部の検体について説明する。
【0026】
一実施例では、基板810は、ガラス検体スライドといったガラス基板である。例えば、基板810は、約0.05インチの厚さ、約1.0インチの幅、及び約3.0インチの長さの既知のガラススライドとすることができる。基板810は、既知のスライド処理システムによって基板810を操作して既知のスライドレセプタクルに保存し得るように、既知の検体スライドと同一又は同じ形状及び大きさを有している。別の実施例では、器具800は、分離エレメント820がミクロンオーダーの寸法を有しているため、極端に小さくすることができる。実際には、基板の他の寸法及び形状を使用することができ、図8が、分離エレメント820に関連する基板810を全体として図示する。説明を簡単にするために、既知のガラス検体スライドの形式の基板810を説明する。
【0027】
図8Aに示すように、分離エレメント820が基板810に関連しており、例えば、基板810の表面812又はその一部に、常に又は取り外し可能に密封され、取り付けられ又は接着されている。一実施例によれば、分離エレメント820は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)といったポリマ材料である。また、他の材料及びポリマ材料を使用してもよく、PDMSが分離エレメント820の部品の微細加工に適した材料の一実施例として提供される。
【0028】
分離エレメント820は、既知の微細加工/微細成型法を用いたPDMS材料824に又はその中に形成された1又はそれ以上の細胞障壁、トラップ又は仕切り部材822(一般に仕切り部材822と称される)を有している。仕切り部材822は、分離エレメント820によって規定され、分離エレメント820の中を様々な方向に流れる溶液18から細胞16を捕捉して保持するために分離エレメント820と基板810の表面812との間に形成される微細加工チャンネル、ゲート及び細胞レセプタクル、又はトラップを有している。
【0029】
図8Aに示す実施例では、流入口831及び流体出口832が、分離エレメント820の対辺から外側に延在している。また、流入口831及び流体出口832を既知の微細加工/微細成型法を用いてPDMS材料824で形成し得る。このため、分離エレメント820、仕切り部材822、流入口831及び流体出口832は、一体化した微細成型又は微細加工部品とすることができる。流入口831は、細胞16を選択、選別又は分離する微細加工した仕切り部材822を含む分離エレメント820に細胞検体14を含む溶液18を供給するよう構成される。別のチューブ又は出口チューブ836が、溶液18が分離エレメント820を通り抜けた後に溶液18を分離エレメント820から搬送するよう構成される。
【0030】
また、流入口831及び流体出口832を使用して、細胞検体14を調整又は分析するのに使用される他の流体及び溶液を導入及び搬送し得る。例えば、流入口831及び流体出口832は、細胞染料又は染色剤のための流体経路として機能し得る。代替的に、収集した細胞16を染色するための染料及び染色剤を導入及び排出するための別々の入り口及び出口ポート(図8Aに図示せず)を、分離エレメント820及び流入口及び出口831、832とともに提供又は製造し得る。本実施例は、少量の染料及び小型の染色機器で細胞16を染色するための、「コンピュータに搭載された(on−board)」流体処理を有利に提供する。
【0031】
図8Aは、流入口831及び流体出口832が分離エレメント820の面に対して水平又は並列に設けられた装置800の一実施例を示す。代替的な実施例では、流入口831及び流体出口832を、分離エレメント820に対して鉛直方向に又は角度を成して設けることができ、分離エレメント820に溶液を供給し、ここから溶液18を搬出する。
【0032】
図8Bは、ガラス基板810及び分離エレメント820が付着又は接着された一実施例を示す。図8Bは、ガラス基板810の下部が分離エレメント820の下方に見えるように、図8Aに示す方向に対して180度回転又は反転したガラス基板810及び分離エレメント820部品を示す。仕切り部材822によって採取された細胞16は、ガラス基板810と分離エレメント820との間に配置される。このような構成により、採取した細胞を、流入口及び流体出口831、832を通る、又は別々の入口及び出口ポートを通る染料及び溶液の制御流によって、多量の染料及び溶液に晒すことができる。ガラス基板810及び分離エレメント(PDMS)の双方が透明であるため、細胞検査技師は、基板810及び分離エレメント820の組み立て品を操作し、基板810又は分離エレメント820を通して細胞16を観察することによって、細胞16を手動で検査及び分析できる。さらに、自動スライド処理システムが、双方が透明である基板810及び分離エレメント820部品の一方又は双方を通して細胞16を観ることによって細胞16を画像化できる。このような構成により、細胞16及び/又は細胞クラスタ17が基板810と分離エレメント820との間に挟まれているため、カバースリップが必要ではなく、さらなる調整を必要とせずに直接的に観察することができる。
【0033】
図8Cを参照すると、代替的な実施例では、微細加工した分離エレメント820及び分離エレメント820から延在する流入口831及び流体出口832を、細胞16がガラス表面812に付着されるように、始めに基板810の表面812に合わせることができる。そして、分離エレメント820及びそこから延在する流入口831及び流体出口832を、除去又は剥がすことができる。これにより、図8Dに示すように、基板810の表面812に細胞16が付着する。必要に応じて細胞をさらに染色又は処理して、図8Eに示すように、カバースリップ815を細胞16の上方にかけることができ、その後画像化することが可能である。様々な図に示す部品及び細胞の大きさは、実際の大きさ又は相対的な大きさを正確に反映しなくてもよく、部品及び細胞の大きさはどのようにして本実施例を利用するのかを図示するよう与えられていることに留意されたい。
【0034】
図9を参照すると、一実施例に係る微細加工分離エレメント820(又はその部分)は、既知の微細加工技術を用いて調整され、微細加工した外壁910及び微細加工した内壁又は仕切り部材822(一般に仕切り部材822と称する)を有している。分離エレメント820の外壁910は、仕切り部材822が形成される内部空間又は内面912、1又はそれ以上の流入口914及び1又はそれ以上の流体出口916を規定する。流入口914は、例えば、流入チューブ831といった溶液18の供給源に流体連通し、流体出口916は例えば流出チューブ832に流体連通する。
【0035】
図示する実施例では、矩形となるよう仕切り部材822を形成し得るが、仕切り部材822は、使用する微細加工技術及び機器に応じて、例えば、正方形、三角形、ダイアモンド状、及び他の形状といった他の形状及び構成を有し得る。図9は、既知の微細加工技術及び材料を用いてどのように実施例を実施し得るのかを表した略矩形の仕切り部材822を示す。
【0036】
図示する実施例では、仕切り部材822が、内部空間又は内面823を規定する4つの側面920a乃至dを有している。第1の側面920aは、1又はそれ以上の入口開口又はゲート922を規定する(一般に入口開口922と称する)。1つの入口開口922を説明するために示すが、側面920aが他の数の入口開口922を規定し得ることが明らかであろう。上流側又は下流側の側面920bが出口開口924を規定し得る。図示する実施例では、側面920c及び920dが中実であり、入口又は出口開口を規定しない。このため図示する実施例では、仕切り部材822は、入口開口922のみを規定する特定の側面920a、出口開口924のみを規定する特定の側面920b、中実で開口部を規定しない特定の側面920c、dを有している。
【0037】
入口914に流体連通し、流入口831に流体連通する微細加工流体流路930が、仕切り部材822の第1の側面920aと外壁910との間に規定される。ベース部材810は約6mmの厚さを有しており、分離エレメント820がベース部材810の中に成型され、流体流路930は約70乃至約100ミクロンの大きさであり、約40ミクロンの奥行である。図示する実施例では、流路930が側面920a、bによって規定される仕切り部材822の隅部の周囲を延在する。検体14の細胞16を有する溶液18が、流入口831から入口914を通って導入される。溶液18は、入口914から仕切り部材822の側面920aに沿った流路930を通って下流側に流れる。
【0038】
溶液18は、最初にこの流路を通って第1の方向941(概略的に流路930に平行な矢印によって表される)に流れ、又はそうでなければ層流、又は乱れのない溶液18の流れと称される。流路930の中の層流941は、比較的予測可能な方法で溶液18の流れを与える。第1の方向941に流路930を通って流れる溶液18の一部は、(例えば、圧力差及び/又は表面接着によって)方向を変えて仕切り部材822の第1の側面920aによって規定される入口開口922を通って流れる。そうでなければ、これは、層流と称され、又は第1の方向とは異なる第2の方向(矢印941又は流路930に平行ではない矢印によって概略的に表される)に流れる。一実施例によれば、第2の方向942への溶液18の流れが、第1の方向941に流路930を通る層流に対してほぼ横方向又は垂直方向になるように、分離エレメント820が製造される。一実施例によれば、第2の方向942が第1の方向941に対して約45度乃至90度の角度である。
【0039】
溶液18によって搬送される単一細胞16又は細胞クラスタ17は、溶液18が入口開口922を通ってレセプタクル950に向けて流れた後に、仕切り部材822の中に配置される細胞レセプタクル950によって取り込まれる。このような目的のために、レセプタクル950の開口又は受容端が入口開口922に面し、第2の方向942に入口開口922を通って流れる溶液18の経路の中にくるように、レセプタクル950を対応する角度に配置し得る。
【0040】
仕切り部材822に入りレセプタクル950を越えて流れる溶液18は、仕切り部材822の内部823を通って下流側に流れ続け、出口開口924を通って仕切り部材822を出て、仕切り部材に入らずに流路930を通って側面920a、bの周囲を流れる溶液18と合流する。そして、溶液18は、出口916に向けて流体出口832を通って下流側に流れ続ける。
【0041】
入口開口922を通る第2の方向942への溶液18の横方向の流れが、潤滑剤及び血液及び粘液を含む体液といった成分による入口開口922の詰まりを最小限にするため、微細加工構造及び様々な方向への溶液18の流れは有益である。さらに、第1の方向941への溶液18の流れが、大き過ぎて入口開口922を通過しない粒子を流すことによって、入口開口922の詰まりを抑制する一方、(単一細胞16又は細胞クラスタ17といった)十分小さい粒子が入口開口922を通過且つ移動して、レセプタクル950の中にとどまり得る。
【0042】
特に、図9に示すように、さらに図10及び11を参照すると、一実施例が、単一細胞16を保持するための形状及び大きさを有する細胞レセプタクル950を有している。図示する実施例では、細胞レセプタクル950は、別々の2つのアーチ形の部品951、952を有しており、「C」形又は「U」形構造を形成するよう構成され、それらの間に流体通路953を規定する。レセプタクルの他の実施例は、流体通路953といったものを規定しない単一の部品から成るレセプタクルとすることができるが、説明の簡単のために流体通路953を規定するレセプタクル950について説明する。
【0043】
使用中に、検体14の細胞16を含む溶液18が、入口開口922を通ってレセプタクル950に向けて第2の方向942に横方向に流れ、図11に示すように細胞16を捕らえる。レセプタクル950の構成に応じて、溶液18は捕らえた細胞16及びレセプタクル950の周囲を流れ、出口開口924を通って仕切り部材822を出る。また、レセプタクルがそのように構成されると、細胞16が通路953を完全に閉塞しない場合、少量の溶液18が通路953を通って流れる。
【0044】
図12及び13は、流体流路を規定する他のレセプタクル950の構成を示しており、それは単一細胞16又は細胞クラスタ17を捕捉又は採取するための実施例で使用される。一実施例では、図12に示すように、細胞レセプタクル950は、「V」形構造であって、流体通路1203をその間に規定する2つの略直線状の部品1201、1202を有している。図13は、3つの部品1301、1302、1303を有する代替的なレセプタクル950を示す。2つの部品1301、1302は略平行に構成されており、第3の部品1303が他の2つの部品1301、1302に対して略直交して、第1及び第2の部品1301、1302及び第3部品1303の間に流体通路1304を規定するよう構成される。しかしながら、流体通路1203及び1304といった流体通路を規定しないレセプタクル950を有する他のレセプタクル950の構成を使用でき、様々な形状、大きさ及び構成のレセプタクル950を使用して単一細胞16及び細胞クラスタ17を採取又は捕捉し得ることに留意されたい。
【0045】
例えば、図9乃至11に示す細胞レセプタクル950は、単一細胞16を採取するよう構成でき、このような目的のために、約75ミクロンの幅又は直径及び約25ミクロンの奥行を有する開口又は受容端を規定する。また、細胞レセプタクル950を細胞クラスタ17を捕らえるよう構成でき、このような目的のために、約150ミクロンの幅又は直径及び約50ミクロンの奥行を有する開口又は受容端を規定し得る。仕切り部材822の構成、入口開口922の数及びレセプタクル950の数を、様々な数及び大きさの単一細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離するよう選択し得る。このため、本実施例は、都合よく利用して細胞16の配列、クラスタ17の配列、又は単一細胞16及びクラスタ17の混合物の配列を分離でき、必要に応じて、例えば、染色及び画像処理をすることでさらに処理することができる。
【0046】
図14を参照すると、一実施例では、仕切り部材822が、複数の入口開口922a乃至e(全体として922)及び複数の細胞レセプタクル950a乃至e(全体として950)を規定する。具体例として5つのレセプタクル950を示すが、仕切り部材822は、様々な数、例えば数百及び数千のレセプタクル950といったレセプタクル950を有し得ることに留意されたい。図示する実施例では、各細胞レセプタクル950が単一細胞16を採取するための形状及び大きさを有している。このような目的のために、仕切り部材822の一方の側部920aによって規定される入口開口922の特定の構成が与えられており、全ての細胞レセプタクル950は同じ方向、すなわち、対応する入口開口922に向かって面している。例えば、溶液18が、仕切り部材822の第1の側部920aと外壁910との間の流路930を通って第1の方向941に流れ、その後で方向を変えて入口開口922a乃至eを通って第2の方向942にほぼ横方向に流れることができるため、各レセプタクル950a乃至eによって単一細胞16が捕捉される。
【0047】
一実施例にしたがって構成された単一細胞16を分離するための仕切り部材822の一例が、仕切り部材822の中に約100の入口開口922及び約500のレセプタクル950を有している。仕切り部材822は、約500ミクロンの幅及び数ミリメートルの高さを有し得る。各入口開口922は、約75乃至200ミクロンの幅を有し、入口開口922間の間隔は約100ミクロンとすることができる。入口開口922、レセプタクル950及び仕切り部材822の他の様々な数量及び構成を使用でき、所望の数の単一細胞16を捕捉するよう必要に応じて変え得ることに留意されたい。
【0048】
図15を参照すると、別の実施例によれば、仕切り部材822が、単一細胞のクラスタ17を捕捉するための形状及び大きさを有する複数の入口開口922a乃至c(全体として922)及び複数の細胞レセプタクル950a乃至c(全体として950)を規定する。具体例として3つのレセプタクル950を示すが、仕切り部材822が、様々な数量の、例えば、数百及び数千のレセプタクル950といったレセプタクル950を有し得ることに留意されたい。このような目的のために、仕切り部材822の一方の側部920aによって規定される入口開口922の特定の構成が与えられ、全ての細胞レセプタクル950が同じ方向、すなわち対応する入口開口922に面している。
【0049】
一実施例にしたがって構成される細胞クラスタ17を分離するための仕切り部材822の一例が、仕切り部材822の中に約25の入口開口922及び約125のレセプタクル950を有している。仕切り部材822は、約500ミクロンの幅及び数ミリメートルの高さを有し、各入口開口922は約200ミクロンの幅を有し、入口開口922間の間隔は、約100ミクロンとすることができる。入口開口922、レセプタクル950及び仕切り部材822の他の様々な数量及び構成を使用でき、所望の数のクラスタ17を捕捉するよう必要に応じて変え得ることに留意されたい。
【0050】
他の実施例では、分離エレメント820は、例えば対応する側部920a乃至dを具えた配列が並んで構成された複数の仕切り部材といった、複数の仕切り部材を有している。このような構成により、細胞16及び/又は細胞クラスタ17の対応する配列を捕捉及び処理し得る。例えば、図16を参照すると、別の実施例にしたがって構成された分離部材820が、複数の仕切り部材822−g(全体として822)を有しており、その各々が単一細胞16を捕捉するよう構成された入口開口922及び細胞レセプタクル950を有している。図示する実施例では、分離エレメント820の外壁910が、様々な流路930(930a乃至f)(全体として930)に溶液18を導入するための複数の入口914a乃至c(全体として914)を有している。
【0051】
図示する構成では、入口開口922が各仕切り部材822の同じ側910aに形成される。第1の流路930aが、(図9、14及び15に示すように)仕切り部材822aの側部920aと外壁910との間に規定される。さらなる流路930b乃至fが、入口開口922を有する仕切り部材822の側部920aと入口開口922を有しない別の仕切り部材の対向する側部920cとの間に規定される。例えば、流路930fが、入口開口922を有する仕切り部材822gの右側側部920aと入口開口922を有しない隣接する仕切り部材822fの左側側部920cとの間に規定される。外壁910の入口914a乃至cを、(図16に示すように)1つの流路又は複数の流路に溶液18を供給するよう構成し得る。仕切り部材822が、さらなる下流側の入口開口922を有し得ることに留意されたい。さらに、異なる仕切り部材822が様々な数の入口開口922及びレセプタクル950を有し得る。
【0052】
図17を参照すると、別の実施例にしたがって構成された分離部材820が、複数の仕切り部材822を有しており、その各々が細胞クラスタ17を捕捉するよう構成された入口開口922及び細胞レセプタクル950を有している。仕切り部材822がさらなる上流側の入口開口922を有し得ることに留意されたい。さらに、異なる仕切り部材が様々な数の入口開口922及びレセプタクル950を有し得る。
【0053】
図18は、単一細胞16及び細胞クラスタ17の双方を採取するよう構成された複数の仕切り部材822を有する分離エレメント820の別の代替的な実施例を示す。本実施例では、仕切り部材822が、入口開口922を通って流れる単一細胞16を通過させ且つ捕捉するよう構成された入口開口922(上流側開口部)及びレセプタクル950を有している。また、仕切り部材822は、小さな開口部922及び各レセプタクル950に対して入口914から離れた、より大きな開口部922(下流側開口部)及びレセプタクル950を有している。より大きな開口部922は、細胞クラスタ17を通過させるよう構成されており、レセプタクル950は仕切り部材822の内側に配置され、大きな入口開口922を通って流れる細胞クラスタ17を捕捉する。このような構成では、大き過ぎて小さな上流側の入口開口922を通って通過できない細胞クラスタ17を含む溶液18が、第1の方向941に流路930を通って流れ続け、その後、下流側の大きな入口開口922を通って第2の方向又は横方向942にほぼ横方向に流れ、下流側の大きな細胞レセプタクル950によってクラスタ17が採取される。都合よいことに、このような構成により、1つの分離エレメント820を用いて単一細胞16及び細胞クラスタ17の双方を分離し、撮像し分析することが可能となる。
【0054】
図17乃至19は、例えば、7個の仕切り部材822といった複数の仕切り部材822を含む分離エレメント820を示す。しかしながら、分離エレメント820が、例えば約50乃至約400の仕切り部材822といった様々な数量の仕切り部材822を有し得ることに留意されたい。さらに、図17乃至19は、1つの列で構成された仕切り部材822を示しているが、例えば複数の行、列、互い違いの構成等といった、他の配列を使用することもできる。したがって図17乃至19は、様々な流体流れ及び様々な方向の流体流れを用いて細胞16及び細胞クラスタ17をどのようにして捕捉し得るのかを全体的に表すよう提供される。
【0055】
図19を参照すると、必要に応じて、1又はそれ以上の顕微鏡スケール又はマクロスケールの予処理チャンバ1900を、分離エレメント820の上流側であるが流体口831といった溶液18の供給源の下流側に配置して、細胞の分離のために溶液18を調整又は前処理し得る。例えば、より小さなクラスタ17又は単一細胞16にクラスタ17を分離又は分解するのに十分なせん断力をクラスタ17に加えることにより、大きな細胞クラスタ17を分解させることによって、単一細胞16を損傷させることなく細胞溶液18を前処理し得る。代替的に又は付加的に、溶解した血液細胞の構成要素及び他の破片を、細胞16及びクラスタ17よりも小さい開口部又は孔の大きさを有するゲート又は濾過要素によって除去し得る。さらに、染色液の組み合わせ又は手順を染色処理のために段階分けすることができる。例えば、さらなる専用の入口及び出口ポート(図示せず)を、捕捉した細胞16及びクラスタ17の上に染料を流すために使用し得る。代替的に、溶液18を導入するための流入口831及び流体出口832と同じものを、例えば、適切な流体分岐機構を使用して、染色液及び染料液を導入及び排出するために使用し得る。
【0056】
一実施例では、図20を参照すると、前処理エレメント2000が、一般に、互いに分かれて十分に広く細胞16及び/又は小さなクラスタ17を含んだ溶液18が流路2003を通過し得るよう流路2003を規定する第1の部材2001及び第2の部材2002を有する先細のチューブ又は注射器のような形式である。図示する実施例では、部材2001、2003の遠位端によって規定される先細の領域2004を通過する際に、溶液18のクラスタ17に十分な力を加え、これによりクラスタ17を分解する。前処理チャンバ1900は、様々な数の前処理エレメント2000を有し得る。他の前処理エレメント構成も使用し得ることに留意されたい。
【0057】
さらなる実施例では、細胞レセプタクル950の中で捕捉された細胞16を放出して、放出した細胞の代わりに別の細胞16を捕捉し得る。例えば、レセプタクル950によって始めに捕捉された細胞16を撮像且つ試験し得る。そして、細胞検査技師は特定の細胞16が異常又は疑わしい可能性があると判断することができ、このようなケースでは、これらの細胞16を保存し、正常であると判定された細胞16を放出して、捕捉した他の細胞16と試験のために交換し得る。このような方式では、多数の細胞16が再検査され、正常な細胞16を放出し異常又は疑わしい他の細胞16と交換することによって、より徹底的且つ精密な分析を提供する。捕捉された細胞16の放出を、既知の機械的、光学的又は、例えば、Robert M.Johannによる「Cell trapping in Microfluidic chips」に記載されているような電子的方法で実行し得る。
【0058】
基板810と一体となり又はこれに取り付けられた分離エレメント820を用いて分離した細胞16及び細胞クラスタ17をそのままで、すなわち、採取した細胞16及びクラスタ17が基板810及び/又は分離エレメント820を通して見えるため、採取した細胞16及びクラスタ17を別の基板又は検体スライドに移すことなしに、直接的に撮像し得る。このような性能は、(細胞質領域といった)測定を達成して(核小体/細胞質比といった)重要な手作業による分類評価指標を自動的に測定し得るように、多くの細胞境界規定を有する検体標本の自動化検査を強化する。代替的に、採取した細胞16及びクラスタ17を、分離エレメント820から、ガラス検体スライドといった別の基板に移して、その後に、様々な既知の細胞撮像システムを使用して、移した細胞16及びクラスタ17を撮像してもよい。
【0059】
図21は、一般に、分離エレメントの実施例を用いて調整した検体の画像を自動的に取得するよう使用し得る撮像システム2110の一例を示す。捕捉した細胞16を(例えば、図8Bに示すような)別の基板又はスライドに移さず、細胞を(例えば、図8D、Eに示すような)異なる搬送手段に移す適用例の撮像でシステム2110を使用し得る。典型的な撮像システム2100は、プロセッサ、コンピュータ又はコントローラ2102、光学的スタック、及びロボット2104を有している。光学的スタックは、移動制御ボードコンピュータ又はコントローラ2106、ステージ2108、光源2110、顕微鏡2112及びカメラ2114に見られるようなレンズ又は光学素子の組み合わせを有している。基板(基板810は適切な大きさであると仮定する)又はガラススライド810上に配置された分離エレメント820によって分離した細胞16又は細胞クラスタ17を含む検体の供給及び除去のためにロボット2104を構成し得る。ロボット2104は、カセット2116から検体を取り出し、スライド810をステージ2108に置く。コンピュータ2102が、移動制御ボード2106がステージ2108を移動させてカメラ2114及びレンズ2112の下方にスライド810を置くように、移動制御ボード2106を制御する。光源2110が起動し、スライド810上に配置された分離エレメント820の検体(すなわち、1又はそれ以上の単一細胞16又はクラスタ17)の一部の画像が、カメラ2114によって取得されてコンピュータ2102に出力される。コンピュータ2102は、移動制御ボードコンピュータ2106に指示を出して、ステージ2108及びその上のスライド810(すなわち、他の細胞16又はクラスタ17)を、第1の位置から第2の位置まで非常に短い距離移動させる。第2の場所でのスライド810の検体の次の部分の画像をカメラ2114によって取得し、コンピュータ2102に出力する。分離した全ての細胞及び細胞クラスタを撮像するまで、このようなプロセスを繰り返す。そして、ロボット2104がステージ2108から撮像したスライド810を外して、上述のように撮像するためにカセット2116からステージ2108上に別のスライド810を置く。
【0060】
光学的スタックによって生成された、分離した細胞16及び細胞クラスタ17の画像は、分析のためにコンピュータ2102に出力される。分離した検体細胞16及び細胞クラスタ17を取得した後に画像を処理して、診断する上で関心のある細胞又は細胞クラスタを特定又は分類する。あるシステムでは、これは、悪性又は悪性になりそうな細胞に対応する特性を最も有していそうなこれらの細胞及びスライド上でのそれらの場所(x−y座標)を特定することを含んでいる。例えば、プロセッサ2102が、プロセッサ2101によって選択された細胞16及び細胞クラスタ17の場所を特定するx−y座標を有する、約20視野、例えば22視野を選択し得る。このような視野及び座標情報は顕微鏡に出力され、特定したx−y座標を通して出され、細胞又は細胞クラスタを技術者の視野の中に置く。
【0061】
説明することを目的として様々な部品の寸法が与えられ、説明した実施例の部品の大きさを必要に応じて変え得ることに留意されたい。さらに、マイクロ流体細胞分離器具の実施例は、様々な数の分離エレメントを有することができ、各分離エレメントは様々な数量及び構成の仕切り部材、入口開口、出口開口及び細胞レセプタクルを有し得る。さらに、実施例を実施することで、様々な形状及び大きさの様々な数の受容部材を有する細胞レセプタクルを用いて、単一細胞のみ、細胞クラスタのみ、又は必要に応じて単一細胞及び細胞クラスタの組み合わせを捕捉し得る。また、頸部の検体とは別のタイプの検体の細胞の分離及び分析に実施例を採用又は適用することができ、検体は様々な溶液の中にあってよい。さらに、微細加工及び流体力学に関連して実施例を説明しているが、光学的又は誘電泳動技術を含む他のマイクロ流体技術を用いて実施例を実施することもできる。
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、生検標本の処理に関し、特に、マイクロ流体器具を用いた生物検体の細胞の分離及び画像化に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者及び技師が、ガラス標本スライドといった標本キャリヤ上でしばしば生検標本を調整し、標本を検査して患者が特定の病状又は疾病を有するか又は疑いがあるか否かを分析する。例えば、標本を検査して、パパニコロー(Pap)塗抹試験の一部分及び他のガン発見試験として、悪性細胞又は悪性になりそうな細胞を見つける。標本スライドを調整した後に、自動化システムが標本を分析することが可能であり、最も関連のある細胞又は細胞群に技師の関心を集めるよう使用する一方、あまり関連のない細胞をさらなる検査から除く。
【0003】
Pap塗抹試験がよく知られている一方、いくつかある理由の中で検体の厚さが変化することにより、それを画像化するのが難しい。これらの問題に対処するために、「トラックエッチする」フィルタ膜法に基づく細胞移送エンジンを使用して、スライドに適用し、分析し、画像化し得る、より一貫した細胞の単層を調整する。トラックエッチする膜フィルタをうまく利用する1つの既知の自動化スライド調整システムは、アメリカ合衆国 マサチューセッツ州 01752,マールバラ,キャンパスドライブ 250のサイテック コーポレイションによって市販されている、ThinPrep(登録商標)3000システムである。このようなシステムを使用する試験は、一般に、ThinPrep(TP)パパニコロー(Pap)試験、又は特に、ThinPrep又はTP試験と称される。
【0004】
図1及び図2を参照すると、既知のThinPrep処理システム10は、細胞検体14を保持する容器又は小瓶12、フィルタ20、バルブ30、及び真空源40を有している。検体14は、一般に、液体、溶液、流体又はサイテック コーポレイション社によって市販されているPreservCytといった移送媒体18の中に分散した複数の細胞16を有している。既知のフィルタ20は、ポリエチレンテレフタラートで作成されるフィルタ材料を有しており、平方センチメートル当たり約180,000細孔の平均細孔密度、約6.9ミクロンの平均細孔直径、及び約16ミクロンの平均膜厚を有している。
【0005】
使用時に、フィルタ20の一端が溶液18の中に挿入され、フィルタ20の他端がバルブ30を介して真空源40に結合される。バルブ20を開放すると、真空源40からの負圧がフィルタ20にかかり、これにより、溶液18をフィルタ20の中に引き込む。引き込まれた液体18の中の細胞16をフィルタ20の面上で採取する。図3を参照すると、採取した細胞16を有するフィルタ20が、スライド50に接触する。そして、図4を参照すると、フィルタ20をスライド50から取り外すことで、単層の細胞16を有する検体スライドを調整する。
【0006】
「トラックエッチする」フィルタ膜法に基づく細胞移送エンジンを効果的に使用する一方、このような器具及び改良することができ、他の既知の方法に対して顕著な改良を与える。特に、フィルタ20の面上の単一細胞16の配置及び提示を制御するのが難しい。これは、細胞16をスライド50上に移す際の細胞16の配置及び提示を制御する際の困難さを与えるため、細胞の画像化及び分析又は試験をより複雑且つ時間がかかるものにする。
【0007】
図5は、例えば、ThinPrepを用いた「トラックエッチする」フィルタ膜を使用して調整した標本検体14の典型的な細胞分布及びレイアウト60の一例を示す。図5に示すように、さらに図6を参照すると、特定の細胞16を集めて細胞クラスタ又は重複する細胞17を形成している。概略的に図7に示すように、重複する細胞17は、現在市販されている画像処理システムで及び方法で細胞16の境界を判定する能力を妨げる可能性がある。
【0008】
細胞16の境界を判定する能力は、細胞16全体の境界を定義することができ、細胞質領域といった関連する細胞に関する測定及びデータを取得する能力のため重要である。これらの能力により、さらに、重要な手作業による分類評価指標、すなわち、重要な細胞学的分析パラメータでありこれまで自動的に測定されていない核小体/細胞質比の精度よい測定が可能となる。
【0009】
さらに、膜ベースのフィルタ20は、大きさによる細胞16又は細胞クラスタ17の効果的な仕分けができない。さらに、既知の調整システムを使用して染色し得る標本を調整し得る一方、このようなシステムは比較的大量の染料及び関連する煩わしい染色機器を必要とする。
【0010】
細胞を扱うのにマイクロ流体が近年使用されている。既知のマイクロ流体細胞捕捉法が、Robert M.Johannによる「Cell trapping in Microfluidic chips」及びDino Di Carloらによる「Single−Cell Enzyme Concentrations,Kinetics,and Inhibition Analysis Using High−Density Hydrodyanmic Cell Isolation Arrays」及びDino Di Carloらによる「Dynamic Single Culture Array」に記載されている。Johannnは、非接触の細胞捕捉及び接触ベースの細胞捕捉を有する様々な固定化法を説明している。Di Carloらは、細胞トラップの配列上の流体流れに基づいて細胞を捕捉するよう構成された特別な物理的障壁を説明している。他のマイクロ流体システムは、例えばDNAといった特定の分子の存在の検出に関する。
【0011】
特定のマイクロ流体器具及び関連する細胞操作が提案されている一方、既知のマイクロ流体器具及び方法が、血液及び粘液を含む潤滑剤及び体液といった他の構成要素を含む細胞の不均一な検体からの細胞の効果的な分離、配置及び移送を提供していない。さらに、既知のマイクロ流体器具は、試験及び分析を目的として基板に固定された生存していない調整標本検体の調整及び画像化を含む効果的な検体処理を与えるよう大規模にこれらの性能を与えていない。このため、既知のマイクロ流体器具及び研究は、このような検体の子宮頸部細胞診及び関連する調整及び分析に適していない。
【発明の概要】
【0012】
一実施例によれば、細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具が、基板と、基板に結合されるマイクロ流体細胞分離エレメントとを具えている。分離エレメントが、外壁、流路、仕切り部材及びレセプタクルを有している。外壁は、入口、出口、及び分離エレメント内部を規定し、流路が分離エレメント内部の中に規定され、外壁の入口と流体連通する。仕切り部材が、分離エレメント内部の中に配置され、入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具える。レセプタクルが、仕切り部材内部の中に配置されている。分離エレメントが、外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に流路を通って流れるように構成されており、仕切り部材が、流体が流路から第1の方向とは異なる第2の方向に仕切り部材の入口開口を通って仕切り部材内部の中に流れるように配置されており、レセプタクルが、流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するよう仕切り部材の入口に対して配置されている。
【0013】
別の実施例によれば、細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具が、基板と、基板に結合されるマイクロ流体細胞分離エレメントとを具えている。分離エレメント及び基板は、互いに取り外し可能に取り付けられている。分離エレメントが、外壁、流路、仕切り部材及びレセプタクルを有している。外壁は、入口、出口、及び分離エレメント内部を規定し、流路が分離エレメント内部の中に規定され、外壁の入口と流体連通する。仕切り部材が、分離エレメント内部の中に配置され、入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具える。レセプタクルが、仕切り部材内部の中に配置されている。分離エレメントが、外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に流路を通って流れるように構成されており、仕切り部材が、流体が流路から第1の方向とは異なる第2の方向に仕切り部材の入口開口を通って仕切り部材内部の中に流れるように配置されている。レセプタクルが、流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するよう仕切り部材の入口に対して配置されている。分離エレメント及び基板は、互いに取り外し可能に取り付けられており、レセプタクルによって捕捉され保持される細胞が基板と分離エレメントとの間に置かれる。
【0014】
さらなる実施例が、基板及び基板に関連するマイクロ流体細胞分離エレメントを有する、細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具を扱う。分離エレメントが、外壁、流路、仕切り部材及び複数のレセプタクルを有している。外壁は、入口、出口、及び分離エレメント内部を規定し、流路が分離エレメント内部の中に規定され、外壁の入口と流体連通する。仕切り部材が、分離エレメント内部の中に配置され、複数の入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具えており、複数のレセプタクルが、仕切り部材内部の中に配置されている。各レセプタクルは、互いに間隔を空けて単一細胞又は細胞クラスタを捕捉するよう構成された複数のレセプタクル部品を有している。分離エレメントが、外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に流路を通って流れるように構成されており、仕切り部材が、流体が流路から第1の方向とは異なる第2の方向に各仕切り部材の入口開口を通って仕切り部材内部の中に流れるように配置されている。レセプタクルが、流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するよう仕切り部材の入口開口に対して配置されている。
【0015】
さらなる代替的な実施例が、基板に関連するマイクロ流体細胞エレメントを用いて細胞学的検体の細胞を分離する方法を扱う。この方法は、分離エレメントの外壁の入口を通して流体又は溶液を導入するステップを有する。導入された流体は、分離エレメントの内部又は内部空間の中に規定される流路を通って第1の方向に流れる。流体は、流路から分離エレメント内部の中の仕切り部材の入口開口を通って第1の方向とは異なる第2の方向に流れる。また、この方法は、仕切り部材の中に配置されたレセプタクルを第2の方向に流れる流体によって搬送される細胞を捕捉及び保持するステップを有している。
【0016】
別の代替的な実施例が、基板に関連するマイクロ流体細胞分離エレメントを用いて細胞学的検体の細胞を分離及び分析する方法を扱う。この方法は、分離エレメントの外壁の入口を通して流体又は溶液を導入するステップを有する。導入された流体は、分離エレメントの内部又は内部空間の中に規定される流路を通って第1の方向に流れる。流体は、流路から分離エレメント内部の中に配置された仕切り部材の入口開口を通って第1の方向とは異なる第2の方向に流れる。さらに、この方法は、仕切り部材の中に配置されたレセプタクルを第2の方向に流れる流体の中の第1の細胞を捕捉及び保持するステップを有する。さらに、この方法は、(例えば、第1の細胞を分析した後に)第1の細胞を放出するステップと、第2の方向に流れる流体の中の第2の細胞を捕捉及び保持して放出した第1の細胞と取り替えるステップとを有する。そして、第2の細胞を分析する。
【0017】
別の代替的な実施例が、基板に関連するマイクロ流体細胞分離エレメントを用いて細胞学的検体の細胞を分離及び画像化する方法を扱う。この方法は、分離エレメントの外壁の入口を通して流体又は溶液を導入するステップを有する。導入された流体は、分離エレメントの内部又は内部空間の中に規定される流路を通って第1の方向に流れる。流体は、流路から分離エレメント内部の中に配置された仕切り部材の入口開口を通って第1の方向とは異なる第2の方向に流れる。さらに、この方法は、仕切り部材の中に配置されたレセプタクルを第2の方向に流れる流体の中の第1の細胞を捕捉及び保持するステップを有する。さらに、この方法は、(例えば、第1の細胞を分析した後に)レセプタクルから第1の細胞を放出するステップと、第2の方向に流れる流体の中の第2の細胞を捕捉及び保持して放出した第1の細胞と取り替えるステップとを有する。そして、第2の細胞を画像化する。
【0018】
1又はそれ以上の実施例では、第2の方向が、第1の方向に対してほぼ横方向である。さらに、1又はそれ以上の実施例では、仕切り部材が、複数のレセプタクルを有しており、レセプタクルが様々なサイズを有し得る。小さい方のレセプタクルを、単一細胞を捕捉及び保持するよう構成することができ、大きい方のレセプタクルを、細胞クラスタを捕捉及び保持するよう構成し得る。一実施例では、小さい方のレセプタクルが、大きい方のレセプタクルよりも外壁の入口の近くに配置されている。また、仕切り部材の入口開口は、様々な大きさとすることができる。小さい方の開口を、単一細胞が通過し得るよう構成でき、大きい方のレセプタクルは細胞クラスタが通過し得る大きさである。一実施例では、小さい方の入口開口が、大きい方の入口開口よりも外壁の入口の近くに設けられている。
【0019】
1又はそれ以上の実施例では、分離エレメントが、複数の仕切り部材を有しているため、複数の流路を規定しており、そのそれぞれが外壁の入口に連通し、少なくとも1の流路が隣接する仕切り部材の壁の間に規定される。
【0020】
1又はそれ以上の実施例では、例えば、分離エレメントの外側に配置された前処理エレメントが流体によって搬送される細胞クラスタを分解するよう構成されている。そして、細胞及び/又は保持されるクラスタが、分離エレメントの中の1又はそれ以上のレセプタクルによって捕捉される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで、全体を通して同じ参照番号が対応するパーツを示す図面を参照する。
【0022】
【図1】図1は、細胞を採取して採取した細胞の層を検体スライドに適用するための細胞膜フィルタを使用する既知のスライド調整システム及び方法を示す。
【図2】図2は、検体スライドに適用するための採取した細胞を含む既知の細胞膜フィルタの底面図である。
【図3】図3は、細胞膜フィルタによって採取した細胞を検体スライドに適用する既知の方法を示す。
【図4】図4は、細胞膜フィルタによって適用される細胞の層を有する検体スライドを示す。
【図5】図5は、図1乃至4に示すタイプのシステム及び方法を用いて調整された検体スライド上の細胞分布の一例を示す。
【図6】図6は、図5に示す細胞の重なりをさらに示す。
【図7】図7は、規定された境界を有する隔離又は分離した細胞を示す。
【図8A】図8Aは、一実施例にしたがって構成されたマイクロ流体分離器具を示す。
【図8B】図8Bは、一実施例にしたがって構成されたマイクロ流体分離器具を示しており、基板及び分離エレメントが互いに付着又は接着している。
【図8C】図8Cは、基板から分離エレメントを除去して分離した細胞を有する基板を形成することを含む一実施例を示す。
【図8D】図8Dは、図8Cに示す分離エレメントの除去に続いて分離した細胞を有する基板をさらに示す。
【図8E】図8Eは、カバークリップが基板上の分離した細胞の上方に適用される一実施例を示す。
【図9】図9は、一実施例にしたがって構成されたマイクロ流体細胞分離器具の中の仕切り部材及び関連する溶液流れを示す。
【図10】図10は、仕切り部材の中の細胞レセプタクルに近づく溶液中の細胞を示す。
【図11】図11は、図10に示すレセプタクルによって捕捉された細胞を示す。
【図12】図12は、一実施例にしたがって構成され2つのレセプタクル要素を有する細胞レセプタクルを示す。
【図13】図13は、別の実施例にしたがって構成され3つのレセプタクル要素を有する細胞レセプタクルを示す。
【図14】図14は、さらなる実施例に係る、単一細胞を捕捉するよう構成された複数の入口開口及びレセプタクルを有する仕切り部材を有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図15】図15は、さらなる実施例に係る、細胞クラスタを捕捉するための複数の大きな入口開口及び大きなレセプタクルを有する仕切り部材を有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図16】図16は、別の実施例に係る、単一細胞を捕捉するよう構成された複数の仕切り部材及び複数の入口開口及びレセプタクルを有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図17】図17は、別の実施例に係る、細胞クラスタを捕捉するよう構成された複数の仕切り部材及び複数の大きな入口開口及び大きなレセプタクルを有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図18】図18は、別の実施例に係る、単一細胞及び細胞クラスタを捕捉するよう構成された複数の仕切り部材及び複数の入口開口及び様々な大きさのレセプタクルを有するマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図19】図19は、別の実施例に係る前処理又は分解エレメントを有する図18に示すマイクロ流体細胞分離器具を示す。
【図20】図20は、一実施例に係る前処理エレメントを示す。
【図21】図21は、細胞及び細胞クラスタを画像化するために使用し得るシステムを全体的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の説明では、その一部を形成し、具体的な特定の実施例を示しそれらの実施法を示す添付図面を参照する。本発明の範囲を逸脱することなしに、これらの実施例で実施されるものとして変更し得ることに留意されたい。
【0024】
図8Aを参照すると、一実施例に係る細胞検体の単一細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離するよう構成されたマイクロ流体器具800が、基板又はベース部材810(全体的に基板810と称する)、マイクロ細胞分離エレメント820(全体的に分離エレメント820と称する)、及び流入口又は入口チューブ831(全体的に流入口831と称する)、流体出口又は出口チューブ832(全体的に流体出口832と称する)、又は流体マニホールド(図8Aに図示せず)を有している。マイクロ流体器具800は、流体又は溶液18を様々な方向に微細加工分離エレメント820を通して流し、細胞検体14の細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離するよう構成されていることで、細胞の調整、移送、供給、及び画像処理を促進する。流入口及び出口831、832は、処理すべき溶液18を分離エレメント820に導入して、分離エレメント820から処理した溶液18を排出するよう構成される。
【0025】
本実施例を使用して細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離できるが、特定の構成が細胞クラスタ17の分離を特別に含んでいない限り、一般に細胞16について説明する。さらに、本明細書で使用される溶液又は流体は、細胞16又は細胞クラスタ17を含む溶液、流体、材料又は物質として規定され、マイクロ流体細胞分離エレメント820を通って流れ得る。細胞16又は細胞クラスタ17を含む溶液又は流体18の例は、Cytycによって市販されたPreservCyt、ゲルベースの溶液、及び体液といった、液体ベースの溶液を含んでいる。このため、細胞16及び細胞クラスタ17は、(例えば、液体ベース又はゲルベースの溶液のケースのように)別の物質又は流体で希釈することができ、又は体液(例えば、頸部から直接採取される未希釈の細胞検体)の一部とすることができる。説明の簡単のために、マイクロ流体器具800を流れ抜ける液体ベースの溶液の形式で溶液18を説明するが、本実施例を用いて様々な溶液18の細胞を分離できることに留意されたい。さらに、装置、システム及び方法に係る本実施例を実施して、頸部の検体及び他のタイプの検体を含む細胞検体を分析し得る。説明の簡単のために、溶液18中の頸部の検体について説明する。
【0026】
一実施例では、基板810は、ガラス検体スライドといったガラス基板である。例えば、基板810は、約0.05インチの厚さ、約1.0インチの幅、及び約3.0インチの長さの既知のガラススライドとすることができる。基板810は、既知のスライド処理システムによって基板810を操作して既知のスライドレセプタクルに保存し得るように、既知の検体スライドと同一又は同じ形状及び大きさを有している。別の実施例では、器具800は、分離エレメント820がミクロンオーダーの寸法を有しているため、極端に小さくすることができる。実際には、基板の他の寸法及び形状を使用することができ、図8が、分離エレメント820に関連する基板810を全体として図示する。説明を簡単にするために、既知のガラス検体スライドの形式の基板810を説明する。
【0027】
図8Aに示すように、分離エレメント820が基板810に関連しており、例えば、基板810の表面812又はその一部に、常に又は取り外し可能に密封され、取り付けられ又は接着されている。一実施例によれば、分離エレメント820は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)といったポリマ材料である。また、他の材料及びポリマ材料を使用してもよく、PDMSが分離エレメント820の部品の微細加工に適した材料の一実施例として提供される。
【0028】
分離エレメント820は、既知の微細加工/微細成型法を用いたPDMS材料824に又はその中に形成された1又はそれ以上の細胞障壁、トラップ又は仕切り部材822(一般に仕切り部材822と称される)を有している。仕切り部材822は、分離エレメント820によって規定され、分離エレメント820の中を様々な方向に流れる溶液18から細胞16を捕捉して保持するために分離エレメント820と基板810の表面812との間に形成される微細加工チャンネル、ゲート及び細胞レセプタクル、又はトラップを有している。
【0029】
図8Aに示す実施例では、流入口831及び流体出口832が、分離エレメント820の対辺から外側に延在している。また、流入口831及び流体出口832を既知の微細加工/微細成型法を用いてPDMS材料824で形成し得る。このため、分離エレメント820、仕切り部材822、流入口831及び流体出口832は、一体化した微細成型又は微細加工部品とすることができる。流入口831は、細胞16を選択、選別又は分離する微細加工した仕切り部材822を含む分離エレメント820に細胞検体14を含む溶液18を供給するよう構成される。別のチューブ又は出口チューブ836が、溶液18が分離エレメント820を通り抜けた後に溶液18を分離エレメント820から搬送するよう構成される。
【0030】
また、流入口831及び流体出口832を使用して、細胞検体14を調整又は分析するのに使用される他の流体及び溶液を導入及び搬送し得る。例えば、流入口831及び流体出口832は、細胞染料又は染色剤のための流体経路として機能し得る。代替的に、収集した細胞16を染色するための染料及び染色剤を導入及び排出するための別々の入り口及び出口ポート(図8Aに図示せず)を、分離エレメント820及び流入口及び出口831、832とともに提供又は製造し得る。本実施例は、少量の染料及び小型の染色機器で細胞16を染色するための、「コンピュータに搭載された(on−board)」流体処理を有利に提供する。
【0031】
図8Aは、流入口831及び流体出口832が分離エレメント820の面に対して水平又は並列に設けられた装置800の一実施例を示す。代替的な実施例では、流入口831及び流体出口832を、分離エレメント820に対して鉛直方向に又は角度を成して設けることができ、分離エレメント820に溶液を供給し、ここから溶液18を搬出する。
【0032】
図8Bは、ガラス基板810及び分離エレメント820が付着又は接着された一実施例を示す。図8Bは、ガラス基板810の下部が分離エレメント820の下方に見えるように、図8Aに示す方向に対して180度回転又は反転したガラス基板810及び分離エレメント820部品を示す。仕切り部材822によって採取された細胞16は、ガラス基板810と分離エレメント820との間に配置される。このような構成により、採取した細胞を、流入口及び流体出口831、832を通る、又は別々の入口及び出口ポートを通る染料及び溶液の制御流によって、多量の染料及び溶液に晒すことができる。ガラス基板810及び分離エレメント(PDMS)の双方が透明であるため、細胞検査技師は、基板810及び分離エレメント820の組み立て品を操作し、基板810又は分離エレメント820を通して細胞16を観察することによって、細胞16を手動で検査及び分析できる。さらに、自動スライド処理システムが、双方が透明である基板810及び分離エレメント820部品の一方又は双方を通して細胞16を観ることによって細胞16を画像化できる。このような構成により、細胞16及び/又は細胞クラスタ17が基板810と分離エレメント820との間に挟まれているため、カバースリップが必要ではなく、さらなる調整を必要とせずに直接的に観察することができる。
【0033】
図8Cを参照すると、代替的な実施例では、微細加工した分離エレメント820及び分離エレメント820から延在する流入口831及び流体出口832を、細胞16がガラス表面812に付着されるように、始めに基板810の表面812に合わせることができる。そして、分離エレメント820及びそこから延在する流入口831及び流体出口832を、除去又は剥がすことができる。これにより、図8Dに示すように、基板810の表面812に細胞16が付着する。必要に応じて細胞をさらに染色又は処理して、図8Eに示すように、カバースリップ815を細胞16の上方にかけることができ、その後画像化することが可能である。様々な図に示す部品及び細胞の大きさは、実際の大きさ又は相対的な大きさを正確に反映しなくてもよく、部品及び細胞の大きさはどのようにして本実施例を利用するのかを図示するよう与えられていることに留意されたい。
【0034】
図9を参照すると、一実施例に係る微細加工分離エレメント820(又はその部分)は、既知の微細加工技術を用いて調整され、微細加工した外壁910及び微細加工した内壁又は仕切り部材822(一般に仕切り部材822と称する)を有している。分離エレメント820の外壁910は、仕切り部材822が形成される内部空間又は内面912、1又はそれ以上の流入口914及び1又はそれ以上の流体出口916を規定する。流入口914は、例えば、流入チューブ831といった溶液18の供給源に流体連通し、流体出口916は例えば流出チューブ832に流体連通する。
【0035】
図示する実施例では、矩形となるよう仕切り部材822を形成し得るが、仕切り部材822は、使用する微細加工技術及び機器に応じて、例えば、正方形、三角形、ダイアモンド状、及び他の形状といった他の形状及び構成を有し得る。図9は、既知の微細加工技術及び材料を用いてどのように実施例を実施し得るのかを表した略矩形の仕切り部材822を示す。
【0036】
図示する実施例では、仕切り部材822が、内部空間又は内面823を規定する4つの側面920a乃至dを有している。第1の側面920aは、1又はそれ以上の入口開口又はゲート922を規定する(一般に入口開口922と称する)。1つの入口開口922を説明するために示すが、側面920aが他の数の入口開口922を規定し得ることが明らかであろう。上流側又は下流側の側面920bが出口開口924を規定し得る。図示する実施例では、側面920c及び920dが中実であり、入口又は出口開口を規定しない。このため図示する実施例では、仕切り部材822は、入口開口922のみを規定する特定の側面920a、出口開口924のみを規定する特定の側面920b、中実で開口部を規定しない特定の側面920c、dを有している。
【0037】
入口914に流体連通し、流入口831に流体連通する微細加工流体流路930が、仕切り部材822の第1の側面920aと外壁910との間に規定される。ベース部材810は約6mmの厚さを有しており、分離エレメント820がベース部材810の中に成型され、流体流路930は約70乃至約100ミクロンの大きさであり、約40ミクロンの奥行である。図示する実施例では、流路930が側面920a、bによって規定される仕切り部材822の隅部の周囲を延在する。検体14の細胞16を有する溶液18が、流入口831から入口914を通って導入される。溶液18は、入口914から仕切り部材822の側面920aに沿った流路930を通って下流側に流れる。
【0038】
溶液18は、最初にこの流路を通って第1の方向941(概略的に流路930に平行な矢印によって表される)に流れ、又はそうでなければ層流、又は乱れのない溶液18の流れと称される。流路930の中の層流941は、比較的予測可能な方法で溶液18の流れを与える。第1の方向941に流路930を通って流れる溶液18の一部は、(例えば、圧力差及び/又は表面接着によって)方向を変えて仕切り部材822の第1の側面920aによって規定される入口開口922を通って流れる。そうでなければ、これは、層流と称され、又は第1の方向とは異なる第2の方向(矢印941又は流路930に平行ではない矢印によって概略的に表される)に流れる。一実施例によれば、第2の方向942への溶液18の流れが、第1の方向941に流路930を通る層流に対してほぼ横方向又は垂直方向になるように、分離エレメント820が製造される。一実施例によれば、第2の方向942が第1の方向941に対して約45度乃至90度の角度である。
【0039】
溶液18によって搬送される単一細胞16又は細胞クラスタ17は、溶液18が入口開口922を通ってレセプタクル950に向けて流れた後に、仕切り部材822の中に配置される細胞レセプタクル950によって取り込まれる。このような目的のために、レセプタクル950の開口又は受容端が入口開口922に面し、第2の方向942に入口開口922を通って流れる溶液18の経路の中にくるように、レセプタクル950を対応する角度に配置し得る。
【0040】
仕切り部材822に入りレセプタクル950を越えて流れる溶液18は、仕切り部材822の内部823を通って下流側に流れ続け、出口開口924を通って仕切り部材822を出て、仕切り部材に入らずに流路930を通って側面920a、bの周囲を流れる溶液18と合流する。そして、溶液18は、出口916に向けて流体出口832を通って下流側に流れ続ける。
【0041】
入口開口922を通る第2の方向942への溶液18の横方向の流れが、潤滑剤及び血液及び粘液を含む体液といった成分による入口開口922の詰まりを最小限にするため、微細加工構造及び様々な方向への溶液18の流れは有益である。さらに、第1の方向941への溶液18の流れが、大き過ぎて入口開口922を通過しない粒子を流すことによって、入口開口922の詰まりを抑制する一方、(単一細胞16又は細胞クラスタ17といった)十分小さい粒子が入口開口922を通過且つ移動して、レセプタクル950の中にとどまり得る。
【0042】
特に、図9に示すように、さらに図10及び11を参照すると、一実施例が、単一細胞16を保持するための形状及び大きさを有する細胞レセプタクル950を有している。図示する実施例では、細胞レセプタクル950は、別々の2つのアーチ形の部品951、952を有しており、「C」形又は「U」形構造を形成するよう構成され、それらの間に流体通路953を規定する。レセプタクルの他の実施例は、流体通路953といったものを規定しない単一の部品から成るレセプタクルとすることができるが、説明の簡単のために流体通路953を規定するレセプタクル950について説明する。
【0043】
使用中に、検体14の細胞16を含む溶液18が、入口開口922を通ってレセプタクル950に向けて第2の方向942に横方向に流れ、図11に示すように細胞16を捕らえる。レセプタクル950の構成に応じて、溶液18は捕らえた細胞16及びレセプタクル950の周囲を流れ、出口開口924を通って仕切り部材822を出る。また、レセプタクルがそのように構成されると、細胞16が通路953を完全に閉塞しない場合、少量の溶液18が通路953を通って流れる。
【0044】
図12及び13は、流体流路を規定する他のレセプタクル950の構成を示しており、それは単一細胞16又は細胞クラスタ17を捕捉又は採取するための実施例で使用される。一実施例では、図12に示すように、細胞レセプタクル950は、「V」形構造であって、流体通路1203をその間に規定する2つの略直線状の部品1201、1202を有している。図13は、3つの部品1301、1302、1303を有する代替的なレセプタクル950を示す。2つの部品1301、1302は略平行に構成されており、第3の部品1303が他の2つの部品1301、1302に対して略直交して、第1及び第2の部品1301、1302及び第3部品1303の間に流体通路1304を規定するよう構成される。しかしながら、流体通路1203及び1304といった流体通路を規定しないレセプタクル950を有する他のレセプタクル950の構成を使用でき、様々な形状、大きさ及び構成のレセプタクル950を使用して単一細胞16及び細胞クラスタ17を採取又は捕捉し得ることに留意されたい。
【0045】
例えば、図9乃至11に示す細胞レセプタクル950は、単一細胞16を採取するよう構成でき、このような目的のために、約75ミクロンの幅又は直径及び約25ミクロンの奥行を有する開口又は受容端を規定する。また、細胞レセプタクル950を細胞クラスタ17を捕らえるよう構成でき、このような目的のために、約150ミクロンの幅又は直径及び約50ミクロンの奥行を有する開口又は受容端を規定し得る。仕切り部材822の構成、入口開口922の数及びレセプタクル950の数を、様々な数及び大きさの単一細胞16及び/又は細胞クラスタ17を分離するよう選択し得る。このため、本実施例は、都合よく利用して細胞16の配列、クラスタ17の配列、又は単一細胞16及びクラスタ17の混合物の配列を分離でき、必要に応じて、例えば、染色及び画像処理をすることでさらに処理することができる。
【0046】
図14を参照すると、一実施例では、仕切り部材822が、複数の入口開口922a乃至e(全体として922)及び複数の細胞レセプタクル950a乃至e(全体として950)を規定する。具体例として5つのレセプタクル950を示すが、仕切り部材822は、様々な数、例えば数百及び数千のレセプタクル950といったレセプタクル950を有し得ることに留意されたい。図示する実施例では、各細胞レセプタクル950が単一細胞16を採取するための形状及び大きさを有している。このような目的のために、仕切り部材822の一方の側部920aによって規定される入口開口922の特定の構成が与えられており、全ての細胞レセプタクル950は同じ方向、すなわち、対応する入口開口922に向かって面している。例えば、溶液18が、仕切り部材822の第1の側部920aと外壁910との間の流路930を通って第1の方向941に流れ、その後で方向を変えて入口開口922a乃至eを通って第2の方向942にほぼ横方向に流れることができるため、各レセプタクル950a乃至eによって単一細胞16が捕捉される。
【0047】
一実施例にしたがって構成された単一細胞16を分離するための仕切り部材822の一例が、仕切り部材822の中に約100の入口開口922及び約500のレセプタクル950を有している。仕切り部材822は、約500ミクロンの幅及び数ミリメートルの高さを有し得る。各入口開口922は、約75乃至200ミクロンの幅を有し、入口開口922間の間隔は約100ミクロンとすることができる。入口開口922、レセプタクル950及び仕切り部材822の他の様々な数量及び構成を使用でき、所望の数の単一細胞16を捕捉するよう必要に応じて変え得ることに留意されたい。
【0048】
図15を参照すると、別の実施例によれば、仕切り部材822が、単一細胞のクラスタ17を捕捉するための形状及び大きさを有する複数の入口開口922a乃至c(全体として922)及び複数の細胞レセプタクル950a乃至c(全体として950)を規定する。具体例として3つのレセプタクル950を示すが、仕切り部材822が、様々な数量の、例えば、数百及び数千のレセプタクル950といったレセプタクル950を有し得ることに留意されたい。このような目的のために、仕切り部材822の一方の側部920aによって規定される入口開口922の特定の構成が与えられ、全ての細胞レセプタクル950が同じ方向、すなわち対応する入口開口922に面している。
【0049】
一実施例にしたがって構成される細胞クラスタ17を分離するための仕切り部材822の一例が、仕切り部材822の中に約25の入口開口922及び約125のレセプタクル950を有している。仕切り部材822は、約500ミクロンの幅及び数ミリメートルの高さを有し、各入口開口922は約200ミクロンの幅を有し、入口開口922間の間隔は、約100ミクロンとすることができる。入口開口922、レセプタクル950及び仕切り部材822の他の様々な数量及び構成を使用でき、所望の数のクラスタ17を捕捉するよう必要に応じて変え得ることに留意されたい。
【0050】
他の実施例では、分離エレメント820は、例えば対応する側部920a乃至dを具えた配列が並んで構成された複数の仕切り部材といった、複数の仕切り部材を有している。このような構成により、細胞16及び/又は細胞クラスタ17の対応する配列を捕捉及び処理し得る。例えば、図16を参照すると、別の実施例にしたがって構成された分離部材820が、複数の仕切り部材822−g(全体として822)を有しており、その各々が単一細胞16を捕捉するよう構成された入口開口922及び細胞レセプタクル950を有している。図示する実施例では、分離エレメント820の外壁910が、様々な流路930(930a乃至f)(全体として930)に溶液18を導入するための複数の入口914a乃至c(全体として914)を有している。
【0051】
図示する構成では、入口開口922が各仕切り部材822の同じ側910aに形成される。第1の流路930aが、(図9、14及び15に示すように)仕切り部材822aの側部920aと外壁910との間に規定される。さらなる流路930b乃至fが、入口開口922を有する仕切り部材822の側部920aと入口開口922を有しない別の仕切り部材の対向する側部920cとの間に規定される。例えば、流路930fが、入口開口922を有する仕切り部材822gの右側側部920aと入口開口922を有しない隣接する仕切り部材822fの左側側部920cとの間に規定される。外壁910の入口914a乃至cを、(図16に示すように)1つの流路又は複数の流路に溶液18を供給するよう構成し得る。仕切り部材822が、さらなる下流側の入口開口922を有し得ることに留意されたい。さらに、異なる仕切り部材822が様々な数の入口開口922及びレセプタクル950を有し得る。
【0052】
図17を参照すると、別の実施例にしたがって構成された分離部材820が、複数の仕切り部材822を有しており、その各々が細胞クラスタ17を捕捉するよう構成された入口開口922及び細胞レセプタクル950を有している。仕切り部材822がさらなる上流側の入口開口922を有し得ることに留意されたい。さらに、異なる仕切り部材が様々な数の入口開口922及びレセプタクル950を有し得る。
【0053】
図18は、単一細胞16及び細胞クラスタ17の双方を採取するよう構成された複数の仕切り部材822を有する分離エレメント820の別の代替的な実施例を示す。本実施例では、仕切り部材822が、入口開口922を通って流れる単一細胞16を通過させ且つ捕捉するよう構成された入口開口922(上流側開口部)及びレセプタクル950を有している。また、仕切り部材822は、小さな開口部922及び各レセプタクル950に対して入口914から離れた、より大きな開口部922(下流側開口部)及びレセプタクル950を有している。より大きな開口部922は、細胞クラスタ17を通過させるよう構成されており、レセプタクル950は仕切り部材822の内側に配置され、大きな入口開口922を通って流れる細胞クラスタ17を捕捉する。このような構成では、大き過ぎて小さな上流側の入口開口922を通って通過できない細胞クラスタ17を含む溶液18が、第1の方向941に流路930を通って流れ続け、その後、下流側の大きな入口開口922を通って第2の方向又は横方向942にほぼ横方向に流れ、下流側の大きな細胞レセプタクル950によってクラスタ17が採取される。都合よいことに、このような構成により、1つの分離エレメント820を用いて単一細胞16及び細胞クラスタ17の双方を分離し、撮像し分析することが可能となる。
【0054】
図17乃至19は、例えば、7個の仕切り部材822といった複数の仕切り部材822を含む分離エレメント820を示す。しかしながら、分離エレメント820が、例えば約50乃至約400の仕切り部材822といった様々な数量の仕切り部材822を有し得ることに留意されたい。さらに、図17乃至19は、1つの列で構成された仕切り部材822を示しているが、例えば複数の行、列、互い違いの構成等といった、他の配列を使用することもできる。したがって図17乃至19は、様々な流体流れ及び様々な方向の流体流れを用いて細胞16及び細胞クラスタ17をどのようにして捕捉し得るのかを全体的に表すよう提供される。
【0055】
図19を参照すると、必要に応じて、1又はそれ以上の顕微鏡スケール又はマクロスケールの予処理チャンバ1900を、分離エレメント820の上流側であるが流体口831といった溶液18の供給源の下流側に配置して、細胞の分離のために溶液18を調整又は前処理し得る。例えば、より小さなクラスタ17又は単一細胞16にクラスタ17を分離又は分解するのに十分なせん断力をクラスタ17に加えることにより、大きな細胞クラスタ17を分解させることによって、単一細胞16を損傷させることなく細胞溶液18を前処理し得る。代替的に又は付加的に、溶解した血液細胞の構成要素及び他の破片を、細胞16及びクラスタ17よりも小さい開口部又は孔の大きさを有するゲート又は濾過要素によって除去し得る。さらに、染色液の組み合わせ又は手順を染色処理のために段階分けすることができる。例えば、さらなる専用の入口及び出口ポート(図示せず)を、捕捉した細胞16及びクラスタ17の上に染料を流すために使用し得る。代替的に、溶液18を導入するための流入口831及び流体出口832と同じものを、例えば、適切な流体分岐機構を使用して、染色液及び染料液を導入及び排出するために使用し得る。
【0056】
一実施例では、図20を参照すると、前処理エレメント2000が、一般に、互いに分かれて十分に広く細胞16及び/又は小さなクラスタ17を含んだ溶液18が流路2003を通過し得るよう流路2003を規定する第1の部材2001及び第2の部材2002を有する先細のチューブ又は注射器のような形式である。図示する実施例では、部材2001、2003の遠位端によって規定される先細の領域2004を通過する際に、溶液18のクラスタ17に十分な力を加え、これによりクラスタ17を分解する。前処理チャンバ1900は、様々な数の前処理エレメント2000を有し得る。他の前処理エレメント構成も使用し得ることに留意されたい。
【0057】
さらなる実施例では、細胞レセプタクル950の中で捕捉された細胞16を放出して、放出した細胞の代わりに別の細胞16を捕捉し得る。例えば、レセプタクル950によって始めに捕捉された細胞16を撮像且つ試験し得る。そして、細胞検査技師は特定の細胞16が異常又は疑わしい可能性があると判断することができ、このようなケースでは、これらの細胞16を保存し、正常であると判定された細胞16を放出して、捕捉した他の細胞16と試験のために交換し得る。このような方式では、多数の細胞16が再検査され、正常な細胞16を放出し異常又は疑わしい他の細胞16と交換することによって、より徹底的且つ精密な分析を提供する。捕捉された細胞16の放出を、既知の機械的、光学的又は、例えば、Robert M.Johannによる「Cell trapping in Microfluidic chips」に記載されているような電子的方法で実行し得る。
【0058】
基板810と一体となり又はこれに取り付けられた分離エレメント820を用いて分離した細胞16及び細胞クラスタ17をそのままで、すなわち、採取した細胞16及びクラスタ17が基板810及び/又は分離エレメント820を通して見えるため、採取した細胞16及びクラスタ17を別の基板又は検体スライドに移すことなしに、直接的に撮像し得る。このような性能は、(細胞質領域といった)測定を達成して(核小体/細胞質比といった)重要な手作業による分類評価指標を自動的に測定し得るように、多くの細胞境界規定を有する検体標本の自動化検査を強化する。代替的に、採取した細胞16及びクラスタ17を、分離エレメント820から、ガラス検体スライドといった別の基板に移して、その後に、様々な既知の細胞撮像システムを使用して、移した細胞16及びクラスタ17を撮像してもよい。
【0059】
図21は、一般に、分離エレメントの実施例を用いて調整した検体の画像を自動的に取得するよう使用し得る撮像システム2110の一例を示す。捕捉した細胞16を(例えば、図8Bに示すような)別の基板又はスライドに移さず、細胞を(例えば、図8D、Eに示すような)異なる搬送手段に移す適用例の撮像でシステム2110を使用し得る。典型的な撮像システム2100は、プロセッサ、コンピュータ又はコントローラ2102、光学的スタック、及びロボット2104を有している。光学的スタックは、移動制御ボードコンピュータ又はコントローラ2106、ステージ2108、光源2110、顕微鏡2112及びカメラ2114に見られるようなレンズ又は光学素子の組み合わせを有している。基板(基板810は適切な大きさであると仮定する)又はガラススライド810上に配置された分離エレメント820によって分離した細胞16又は細胞クラスタ17を含む検体の供給及び除去のためにロボット2104を構成し得る。ロボット2104は、カセット2116から検体を取り出し、スライド810をステージ2108に置く。コンピュータ2102が、移動制御ボード2106がステージ2108を移動させてカメラ2114及びレンズ2112の下方にスライド810を置くように、移動制御ボード2106を制御する。光源2110が起動し、スライド810上に配置された分離エレメント820の検体(すなわち、1又はそれ以上の単一細胞16又はクラスタ17)の一部の画像が、カメラ2114によって取得されてコンピュータ2102に出力される。コンピュータ2102は、移動制御ボードコンピュータ2106に指示を出して、ステージ2108及びその上のスライド810(すなわち、他の細胞16又はクラスタ17)を、第1の位置から第2の位置まで非常に短い距離移動させる。第2の場所でのスライド810の検体の次の部分の画像をカメラ2114によって取得し、コンピュータ2102に出力する。分離した全ての細胞及び細胞クラスタを撮像するまで、このようなプロセスを繰り返す。そして、ロボット2104がステージ2108から撮像したスライド810を外して、上述のように撮像するためにカセット2116からステージ2108上に別のスライド810を置く。
【0060】
光学的スタックによって生成された、分離した細胞16及び細胞クラスタ17の画像は、分析のためにコンピュータ2102に出力される。分離した検体細胞16及び細胞クラスタ17を取得した後に画像を処理して、診断する上で関心のある細胞又は細胞クラスタを特定又は分類する。あるシステムでは、これは、悪性又は悪性になりそうな細胞に対応する特性を最も有していそうなこれらの細胞及びスライド上でのそれらの場所(x−y座標)を特定することを含んでいる。例えば、プロセッサ2102が、プロセッサ2101によって選択された細胞16及び細胞クラスタ17の場所を特定するx−y座標を有する、約20視野、例えば22視野を選択し得る。このような視野及び座標情報は顕微鏡に出力され、特定したx−y座標を通して出され、細胞又は細胞クラスタを技術者の視野の中に置く。
【0061】
説明することを目的として様々な部品の寸法が与えられ、説明した実施例の部品の大きさを必要に応じて変え得ることに留意されたい。さらに、マイクロ流体細胞分離器具の実施例は、様々な数の分離エレメントを有することができ、各分離エレメントは様々な数量及び構成の仕切り部材、入口開口、出口開口及び細胞レセプタクルを有し得る。さらに、実施例を実施することで、様々な形状及び大きさの様々な数の受容部材を有する細胞レセプタクルを用いて、単一細胞のみ、細胞クラスタのみ、又は必要に応じて単一細胞及び細胞クラスタの組み合わせを捕捉し得る。また、頸部の検体とは別のタイプの検体の細胞の分離及び分析に実施例を採用又は適用することができ、検体は様々な溶液の中にあってよい。さらに、微細加工及び流体力学に関連して実施例を説明しているが、光学的又は誘電泳動技術を含む他のマイクロ流体技術を用いて実施例を実施することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具であって:
基板と;
前記基板に結合されるマイクロ流体細胞分離エレメントと;を具えており、前記分離エレメントが、
入口、出口、及び分離エレメント内部を規定する外壁と、
前記分離エレメント内部の中に規定され、前記外壁の入口と流体連通する流路と、
前記分離エレメント内部の中に配置され、入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具える仕切り部材と、
前記仕切り部材内部の中に配置されたレセプタクルと、を具えており、
前記分離エレメントが、前記外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に前記流路を通って流れるように構成されており、
前記仕切り部材が、流体が前記流路から前記第1の方向とは異なる第2の方向に前記仕切り部材の入口開口を通って前記仕切り部材内部の中に流れるように配置されており、
前記レセプタクルが、前記流体によって運ばれる細胞を捕捉及び保持するよう前記仕切り部材の入口に対して配置されていることを特徴とする器具。
【請求項2】
前記第2の方向が、前記第1の方向に対して実質的に横方向であることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記第1の方向が、前記内壁の縦寸法に対して略平行であることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記分離エレメントが、ポリマを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記レセプタクルが、互いに間隔を空け且つ単一細胞を捕捉するよう構成された複数のレセプタクル要素を具えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項6】
前記内壁が、複数の入口開口を規定しており、
対応する複数のレセプタクルが、前記流路から前記仕切り部材のそれぞれの入口開口を通って前記仕切り部材内部の中に流れる流体によって運ばれる1又はそれ以上の細胞を、それぞれ捕捉及び保持するよう前記仕切り部材内部の中に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項7】
前記レセプタクルが、同じ方向に向いていることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記レセプタクルが、異なる大きさであることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項9】
前記レセプタクルが、単一細胞を捕捉及び保持するような大きさの小さい方のレセプタクルと、細胞クラスタを捕捉及び保持するような大きさの大きい方のレセプタクルと、を有しており、
前記小さい方のレセプタクルが、前記大きい方のレセプタクルよりも前記外壁の入口の近くに配置されることを特徴とする請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記入口開口が、ほぼ同じ大きさであることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項11】
前記入口開口が、異なる大きさであることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項12】
前記入口開口が、単一細胞が通過し得る大きさの小さい方の開口と、細胞クラスタが通過し得る大きさの大きい方のレセプタクルと、を有しており、
前記小さい方の入口開口が、前記大きい方の入口開口よりも前記外壁の入口の近くに配置されることを特徴とする請求項11に記載の器具。
【請求項13】
前記分離エレメントの内部が、複数の仕切り部材と複数の流路とを有しており、
各流路が前記外壁の入口と流体連通しており、
少なくとも1の流路が、隣接する仕切り部材の壁の間に規定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項14】
さらに、前記分離エレメントの外側に配置され、前記流体で運ばれる細胞クラスタを分解するよう構成された前処理エレメントを具えることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項1】
細胞学的検体の細胞を分離するためのマイクロ流体器具であって:
基板と;
前記基板に結合されるマイクロ流体細胞分離エレメントと;を具えており、前記分離エレメントが、
入口、出口、及び分離エレメント内部を規定する外壁と、
前記分離エレメント内部の中に規定され、前記外壁の入口と流体連通する流路と、
前記分離エレメント内部の中に配置され、入口開口、出口開口、及び仕切り部材内部を規定する内壁を具える仕切り部材と、
前記仕切り部材内部の中に配置されたレセプタクルと、を具えており、
前記分離エレメントが、前記外壁の入口を通って導入される流体が第1の方向に前記流路を通って流れるように構成されており、
前記仕切り部材が、流体が前記流路から前記第1の方向とは異なる第2の方向に前記仕切り部材の入口開口を通って前記仕切り部材内部の中に流れるように配置されており、
前記レセプタクルが、前記流体によって運ばれる細胞を捕捉及び保持するよう前記仕切り部材の入口に対して配置されていることを特徴とする器具。
【請求項2】
前記第2の方向が、前記第1の方向に対して実質的に横方向であることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記第1の方向が、前記内壁の縦寸法に対して略平行であることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記分離エレメントが、ポリマを含んでいることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項5】
前記レセプタクルが、互いに間隔を空け且つ単一細胞を捕捉するよう構成された複数のレセプタクル要素を具えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項6】
前記内壁が、複数の入口開口を規定しており、
対応する複数のレセプタクルが、前記流路から前記仕切り部材のそれぞれの入口開口を通って前記仕切り部材内部の中に流れる流体によって運ばれる1又はそれ以上の細胞を、それぞれ捕捉及び保持するよう前記仕切り部材内部の中に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項7】
前記レセプタクルが、同じ方向に向いていることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項8】
前記レセプタクルが、異なる大きさであることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項9】
前記レセプタクルが、単一細胞を捕捉及び保持するような大きさの小さい方のレセプタクルと、細胞クラスタを捕捉及び保持するような大きさの大きい方のレセプタクルと、を有しており、
前記小さい方のレセプタクルが、前記大きい方のレセプタクルよりも前記外壁の入口の近くに配置されることを特徴とする請求項8に記載の器具。
【請求項10】
前記入口開口が、ほぼ同じ大きさであることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項11】
前記入口開口が、異なる大きさであることを特徴とする請求項6に記載の器具。
【請求項12】
前記入口開口が、単一細胞が通過し得る大きさの小さい方の開口と、細胞クラスタが通過し得る大きさの大きい方のレセプタクルと、を有しており、
前記小さい方の入口開口が、前記大きい方の入口開口よりも前記外壁の入口の近くに配置されることを特徴とする請求項11に記載の器具。
【請求項13】
前記分離エレメントの内部が、複数の仕切り部材と複数の流路とを有しており、
各流路が前記外壁の入口と流体連通しており、
少なくとも1の流路が、隣接する仕切り部材の壁の間に規定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の器具。
【請求項14】
さらに、前記分離エレメントの外側に配置され、前記流体で運ばれる細胞クラスタを分解するよう構成された前処理エレメントを具えることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2010−539907(P2010−539907A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526050(P2010−526050)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/077257
【国際公開番号】WO2009/042550
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/077257
【国際公開番号】WO2009/042550
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
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