細胞画像解析装置
【課題】無染色の明視野観察において、個々の細胞を正確に自動認識でき、細胞解析における解析者の肉体的負担と処理時間を大幅に削減することが可能な細胞画像解析装置を提供する。
【解決手段】撮像光学系1aと撮像素子1bを有し、容器内に存在する細胞を撮像する細胞撮像手段1と、細胞撮像手段を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、該細胞に関する所定の特徴量を自動解析する細胞画像解析手段2を有する細胞画像解析装置であって、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段3を有する。
【解決手段】撮像光学系1aと撮像素子1bを有し、容器内に存在する細胞を撮像する細胞撮像手段1と、細胞撮像手段を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、該細胞に関する所定の特徴量を自動解析する細胞画像解析手段2を有する細胞画像解析装置であって、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段3を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を撮像し、撮像した細胞の画像から細胞の特徴量を解析する細胞画像解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の解析は、癌など様々な病気の解明や治療方法を確立するのに必要不可欠である。そのため、従来、細胞株を確立し、細胞の様子や動態、形態、性質等の解明に力がそそがれてきた。また、従来、細胞自体や特定タンパク質等の物質の解明に際しては、細胞や特定タンパク質等を特定し易くするために、蛍光物質や発光物質等が利用されてきている。
【0003】
蛍光物質、発光物質等は、扱い易く、細胞自体や特定タンパク質等を特定するために非常に有効な手段である。
しかし、一方で、蛍光物質、発光物質等は、細胞、特に、生細胞に対して、有毒物質や刺激物として機能し、正確な解析結果を阻害する原因となる場合がある。
そこで、近年、蛍光物質や発光物質等を介して細胞に刺激を与えることなく、極力自然な状態で、細胞の様子や増殖、形態などを観察、解析することが非常に重要であると考えられている。
【0004】
従来、細胞に刺激を与えないで観察、解析する場合には、例えば、次の特許文献1に記載の顕微鏡等の装置が用いられている。
特許文献1に記載の顕微鏡は、光源と、光源からの光を観察物体に導く照明光学系と、照明光学系の瞳位置に配置される開口と、開口を通過した光により照明された観察物体の像を合焦位置からずれた位置で観察するための観察光学系を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004第354650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細胞は、それ自体が無色透明のものが多い。このため、蛍光物質等を用いない通常の観察手法を介して細胞を撮像した場合、画像解析装置等を用いて、撮像した画像から細胞を自動的に解析しようとしても、個々の細胞を認識することができず、正確な解析結果を得ることが難しい。このような理由で、従来は、細胞に刺激を与えないで解析を行う場合には、解析者が、特許文献1に示す顕微鏡等を用い、目視で細胞の状態を観察していた。
【0007】
しかし、解析者を介した目視での細胞の状態の観察によって細胞を解析する手法は、数多くの細胞から統計的なデータを算出する場合、解析者にかかる肉体的負担や処理時間が膨大化してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、無染色の明視野観察において、個々の細胞を正確に自動認識でき、細胞解析における解析者の肉体的負担と処理時間を大幅に削減することが可能な細胞画像解析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による細胞画像解析装置は、撮像光学系と撮像素子を有し、容器内に存在する細胞を撮像する細胞撮像手段と、前記細胞撮像手段を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、該細胞に関する所定の特徴量を自動解析する細胞画像解析手段を有する細胞画像解析装置であって、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調手段が、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段であるのが好ましい。
【0012】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段と、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段とからなるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の内側領域に位置合わせし、次いで、該細胞の内側領域がぼやけ、且つ、該細胞の輪郭部分が明瞭になる位置まで、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させるのが好ましい。
【0014】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器の底面に位置合わせし、次いで、該容器内に存在する細胞の厚みに応じて、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させるのが好ましい。
【0015】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調照明手段が、偏斜照明装置であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無染色の明視野で撮像した細胞画像や生きたままの状態で撮像した細胞画像に対し、細胞解析装置を用いたときに、個々の細胞を正確に自動認識することが可能となり、細胞解析における解析者の肉体的負担と処理時間を大幅に削減することが可能な細胞画像解析装置が得られる。また、個々の細胞を正確に自動認識することが可能となることにより、目視では限界がある統計学データの解析も行うことができ、新たな発見に結びつくことも考えられる。更に、細胞を確実に認識できるので、様々な細胞解析の組み合わせや、次々と新たな細胞解析を行うことを通じて、病気解明、治療方法の確立のスピードアップに繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の細胞画像解析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる細胞画像解析装置全体の概略構成を示す説明図である。
【図3】細胞解析の全体的な処理手順を模式的に示す説明図である。
【図4】細胞の像の輪郭部分が強調された状態を示す説明図である。
【図5】本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aによる細胞の像の輪郭部分の強調方法の一例を示す説明図で、(a)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞内小器官内に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図、(b)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞輪郭に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図である。
【図6】本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する一連の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す処理手順において撮像光学系の焦点を、容器の底面から細胞輪郭部分が強調される所定位置にシフトするためのオフセット値の自動設定手順の一例を示す説明図である。
【図8】細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態及び認識結果との関係を示す写真で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(c)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図である。
【図9】細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識との関係を模式的に示す図で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭強調点に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図である。
【図10】本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する他の方法として、細胞内小器官の位置とは別な位置に、撮像光学系1aの焦点を合わせた状態を示す説明図で、(a)は細胞内の小器官がぼやける位置に撮像光学系1aの焦点を合わせた状態を示す図、(b)は細胞全体がぼやける位置に撮像光学系1aの焦点を合わせた状態を示す図である。
【図11】細胞に対する通常の照明と偏斜照明を模式的に示す説明図である。
【図12】本実施形態の細胞画像解析装置における細胞輪郭強調照明手段3bを介して偏斜照明の照明角度を変えて照明したときの細胞の輪郭部分の影のでき方を模式的に示す説明図で、(a)は傾斜角度を小さくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図、(b)は傾斜角度を大きくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図である。
【図13】従来、画像解析装置を用いて細胞画像を解析する場合に生じていた細胞領域の誤認識の例を示す説明図で、(a)は1つの細胞を複数の細胞と誤認識する例を示す図、(b)は複数の細胞を1つの細胞と誤認識する例を示す図である。
【図14】無染色の細胞の透過画像を用いた細胞解析装置により細胞質の認識手順を示す説明図で、(a)は細胞の境界候補を”線”として抽出する段階を示す図、(b)は抽出した細胞の境界候補から個々の細胞の輪郭を決定する段階を示す図である。
【図15】透過画像において細胞を鮮明に撮像できた場合において細胞領域を認識する場合に生じる第1の問題点を示す説明図である。
【図16】透過画像において細胞を鮮明に撮像できた場合において細胞領域を認識する場合に生じる第2の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の説明に先立ち、本発明の解決課題、構成及び作用効果について説明する。
図1は本発明の細胞画像解析装置の概略構成を示すブロック図である。
本発明の細胞画像解析装置は、図1に示すように、細胞撮像手段1と、細胞画像解析手段2と、細胞輪郭強調手段3を有する。
細胞撮像手段1は、撮像光学系1aと撮像素子1bを有し、撮像位置に配置された図1において不図示の容器内に存在する細胞を撮像する。
細胞画像解析手段2は、細胞撮像手段1を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、細胞に関する所定の特徴量を自動解析する。
細胞輪郭強調手段3は、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する。
【0019】
細胞輪郭強調手段3は、好ましくは、撮像光学系1aの焦点を、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調された状態となる所定位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段3aで構成する。
または、細胞輪郭強調手段3は、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調されるように、細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段3bで構成してもよい。
または、細胞輪郭強調手段3は、これら細胞輪郭強調位置合焦手段3aと細胞輪郭強調照明手段3aとを備えて構成するとより好ましい。
【0020】
細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、細胞撮像手段1を介して細胞を撮像するときに、撮像光学系1aの焦点を、細胞の内側領域(小器官がある領域)の位置から細胞の輪郭が強調される所定位置に光軸方向の位置をずらすように構成する。
具体的には、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、例えば、撮像光学系1aの焦点を、先ず、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の内側領域に位置合わせし、次いで、細胞の内側領域の像がぼやけ、且つ、細胞の輪郭部分の像が明瞭になる位置まで、撮像光学系1aの光軸方向に沿って所定量移動させるように構成する。
または、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、例えば、撮像光学系1aの焦点を、先ず、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器の底面に位置合わせし、次いで、容器内に存在する細胞の厚みに応じて、撮像光学系1aの光軸方向に沿って所定量移動させるように構成する。
【0021】
また、細胞輪郭強調照明手段3bは、偏斜照明装置で構成する。
【0022】
従来、例えば、細胞に対して染色などの刺激を与えずに解析する、経時的に細胞を解析する、或いは、細胞形態、細胞増殖を生きたまま解析する等の場合においては、細胞を撮像し、撮像した細胞の画像を画像解析手段で自動的に解析しようとしても、細胞が無色であるため、画像中の細胞の認識をすることができず、或いは細胞を認識することができたとしても、培養状態においては細胞が密集していることが多いため、画像中における細胞の輪郭を誤認識してしまい、個々の細胞を正確に認識できなかった。
このため、従来、このような無染色状態の細胞の解析を正確に行う場合には、画像解析装置を介して細胞の画像を自動的に解析するのではなくて、顕微鏡観察において目視で個々の細胞を認識して解析する方法を採らざるを得なかった。これらの解析は、通常、解析者が、肉眼で、細胞をカウントしたり、細胞グロース、形態を測る等して行われる。しかし、このような目視による手法を用いたのでは、細胞の解析に多大な労力・時間がかかるため、細胞解析を行うことが可能な細胞数が少数に限られたものとなってしまう上、解析者にかかる肉体的負担が非常に大きなものとなる。
【0023】
しかるに、本発明の細胞画像解析装置のように、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器4内に存在する細胞5の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段3を備えれば、細胞撮像手段1を介して細胞5を撮像したときに、個々の細胞5の輪郭が明瞭な画像が得られ、細胞撮像手段1を介して撮像した画像を細胞解析手段2を用いて自動的に解析する際に、細胞の輪郭を特定でき、正確に個々の細胞を認識できる。
このため、本発明の細胞画像解析装置によれば、蛍光物質などの染色手段を用いることなく明視野で、また、細胞を生きたままで解析する場合、人間の肉眼による観察を行わずに装置を介して細胞の撮像から細胞認識まで自動的に行うことが可能となり、解析者にかかる肉体的負担や、処理時間を格段に削減することができ、一定の時間当たりに解析できる細胞数が増加し、しかも、細胞の解析を正確に行うことができるようになる。
【0024】
次に、本発明の細胞画像解析装置の実施形態を説明する。
図2は本発明の一実施形態にかかる細胞画像解析装置全体の概略構成を示す説明図である。
本実施形態の細胞画像解析装置は、図1における細胞撮像手段1が、対物レンズ1a1と結像レンズ1a2を備えた顕微鏡撮像光学系1aと、CCDやCMOS等の固体撮像素子1bを有して構成されている。対物レンズ1a1は、不図示の電動制御機構により、焦点合わせのために光軸方向に移動可能になっている。結像レンズ1a2は、容器4内に存在する細胞5の像を固体撮像素子1bの撮像面に結像させる。そして、細胞撮像手段1は、撮像位置に配置された、容器4内に存在する細胞5を撮像する。
【0025】
また、細胞画像解析手段2は、パーソナルコンピュータ12の中央演算処理装置及びそれにインストールされた画像解析ソフトウェアを有して構成されており、細胞撮像手段1を介して撮像した細胞5の画像を用いて、細胞5の領域を特定しながら、細胞5に関する所定の特徴量を自動的に解析する。
【0026】
なお、図2中、6は電動XYステージであり、容器4を載置し、後述するコントローラ10から電源供給及び動作指示を受けて動作する。8は細胞5を照明するための照明光源である。10はコントローラで、パーソナルコンピュータ12からの指示により電動ステージ6、照明光源8、対物レンズ1a1を制御する。11はカメラコントローラで、固体撮像素子1bとパーソナルコンピュータ12とに接続され、パーソナルコンピュータ12からの所定の指示信号を受信することにより、撮像制御やパーソナルコンピュータ12への撮像画像情報の転送を行う。13はパーソナルコンピュータ12に接続されたモニターである。
【0027】
また、本実施形態の細胞画像解析装置では、図1に示した細胞輪郭強調手段3が、細胞輪郭強調位置合焦手段3aと、細胞輪郭強調照明手段3bとで構成されている。
【0028】
細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、図2において不図示の自動合焦機構と、コントローラ10に接続する不図示の電動制御機構とからなる。そして、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、コンピュータ12からコントローラ10へ所定の指示信号が受信されたときに、撮像光学系1aの焦点を、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器4内に存在する細胞5の輪郭部分の像が強調される所定位置に自動的に位置合わせするように、対物レンズ1a1を光軸方向に所定量移動させるように構成されている。
より詳しくは、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、まず、自動合焦機構を介して撮像光学系1aの焦点を細胞5の内側の小器官へ合わせる自動合焦処理を行い、次いで、細胞5の輪郭部分の像が強調されるように、撮像光学系1aの焦点を、所定のオフセット量だけ光軸方向にシフトする処理を行う。
【0029】
細胞輪郭強調照明手段3bは、偏斜照明装置8で構成されている。偏斜照明装置8は、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器4内に存在する細胞5の像の輪郭部分が強調されるように、撮像光学系1aの光軸に対し斜めに傾斜した状態で、細胞5に対して照明光を照明する。また、偏斜照明装置8は、コントローラ10の制御を介して、R・G・B夫々の照明光を順次切替えて照明することができるように構成されている。
【0030】
図3は細胞解析全体の処理手順を模式的に示す説明図である。
細胞解析においては、先ず解析対象となる細胞サンプルを用意する。次いで、細胞サンプルを複数の視野に区分けして撮像する。次いで、それぞれの撮像画像を解析し、各画像に映っている複数の細胞を個々の細胞領域に切り分けて認識する。次いで、領域が認識された各細胞に対して、例えば、細胞の大きさ(面積)の平均などの所定の統計的な処理を行う。
【0031】
本実施形態の細胞画像解析装置を用いて細胞解析を行う場合、解析者は、マルチウェルプレート、スライドガラス等の容器4に細胞5を入れ、細胞5を入れた容器4を電動XYステージ6に載置し、細胞画像解析装置を駆動する。すると、コントローラ10を介して、電動XYステージ6が容器4を細胞撮像手段1の撮像位置に搬送する。次いで、コントローラ10、カメラコントローラ11を介して、細胞撮像手段1が撮像位置に搬送された容器4内に存在する細胞の撮像を、複数の視野に分けて行う。撮像に際しては、自動合焦機構による撮像光学系1aの焦点を細胞5の内側の小器官へ合わせる自動合焦処理、細胞5の輪郭部分の像が強調されるようにする撮像光学系1aの焦点のシフト処理、R・G・B夫々の照明光による撮像処理を、順に行う。
細胞に対する全ての視野の撮像処理を終了後、細胞画像解析手段2が、細胞5の画像より画像中の各細胞の領域を認識し、次いで、領域が認識された各細胞に対し、解析者を介して予め設定された、例えば、細胞の総数、細胞の大きさ(面積)の平均、各細胞の蛍光量の総量などのパラメタに基づいて、統計的な処理を行う。
【0032】
ここで、従来、画像解析装置を用いて細胞を正確に自動解析することを阻害していた原因について説明する。
画像解析装置を用いて、細胞を正確に自動解析するには、細胞の画像を画像解析したときに各細胞の領域を特定して個々の細胞を正確に認識できる必要がある。
しかし、従来、画像解析装置を用いて細胞の画像から細胞解析を自動的に行った場合、例えば、図13(a)に示すように、1つの細胞を複数の細胞と誤認識してしまう、或いは、図13(b)に示すように、複数の細胞を1つの細胞として誤認識してしまう等、個々の細胞の領域を誤認識し易いという問題があった。
【0033】
細胞の領域を誤認識する頻度は、解析対象とする細胞の形態により異なる。
例えば、細胞核のように、円形あるいは楕円形のような比較的に規則的な形態をとる細胞に対しては、比較的容易に個々の細胞を認識することができる。
一方、細胞質や細胞膜のような不定形の形態をとる細胞に対しては、個々の細胞の認識が困難な場合が多い。このような不定形の形態をとる細胞は、接着細胞(通常の細胞)や、浮遊細胞(血球細胞など)等に分類することができる、このうち、接着細胞は、容器の底面等に接着して、特に複雑な形態をとる。
【0034】
また、上述のように、細胞核における個々の細胞を認識することは比較的容易ではあるものの、個々の細胞が認識され易い状態の細胞核の画像を撮像するには、通常は、蛍光物質等の染色物質を用いて細胞核を特異的に染色する必要がある。
しかし、核染色に用いる蛍光物質等の染色物質は、毒性のあるものが多く、細胞を生きたままの状態で観察するような場合には使用することができない。
このため、生細胞の解析を行う場合には、無染色での細胞の画像を用いて個々の細胞を認識することが必要となる。
【0035】
例えば、無染色の細胞の透過画像を用いて細胞解析装置により細胞質を認識する場合には、まず、図14に示すように、細胞の境界候補を”線”として抽出し、次いで、抽出した細胞の境界候補から個々の細胞の輪郭を決定することによって行う。
ここで、細胞における境界候補は、画像内において輝度差の大きい箇所を選ぶことによって抽出する。例えば、白黒の画像において白と黒のコントラストがある部分は”線”として現れる。そのような箇所を細胞における境界候補として抽出する。
【0036】
ところで、透過画像において細胞を鮮明に撮像できた場合には、細胞質あるいは細胞の境界(=細胞膜)だけではなく、細胞内の小器官まで観察できる。しかし、そのような場合、図15に示すように、逆に、細胞の境界候補となる”線”成分が多く現れすぎるため、細胞解析装置を用いて細胞個々の境界をトレースすることが非常に難しくなる。
【0037】
また、透過画像の性質上、細胞を鮮明に撮像できるとは限らず、例えば、図16(a)、図16(b)に示すように、細胞の境界候補となる“線”成分が断片化されてしまうことが頻繁に起こりうる。このような場合、細胞解析装置を用いて”線”成分の断片をつなぎ合わせて個々の細胞の境界を復元する必要があるが、細胞の形態が特に複雑な場合には、細胞の境界を復元することが難しくなる。
【0038】
このような問題を解決するため、本実施形態の細胞画像撮像装置は、細胞輪郭強調手段3を介して、図4に示すように、細胞の像の輪郭部分を自動的に強調するように構成されている。
【0039】
図5は本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aによる細胞の像の輪郭部分の強調方法の一例を示す説明図で、(a)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞内小器官内に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図、(b)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞輪郭に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図である。図6は本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する一連の処理手順を示すフローチャートである。図7は図6に示す処理手順において撮像光学系の焦点を、容器の底面から細胞輪郭部分が強調される所定位置にシフトするためのオフセット値の自動設定手順の一例を示す説明図である。
【0040】
細胞は容器の底面に接着し、あるいは、浮遊細胞の場合、沈んで底面に接する。このため、まず、細胞を入れる容器の底面の光軸方向の位置を検出する。これは機械的な方法(例えば、レーザーを照射して、底面からの反射量を測定する方法)で検出することができる。
【0041】
ここで、個々の細胞のサイズは、ほぼ同じとみなすことができる。このため、光軸方向への一定のシフト量をオフセット量とすることで、所定の細胞位置(例えば、細胞の底(図5(b)参照)ではシフト量Z3、上部(図5(b)参照)ではシフト量Z2、中心部分(図5(a)参照)ではシフト量Z1等)での撮像を行うことができる。
本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aでは、図5(b)に示す細胞の底や細胞の上部に撮像光学系1aの焦点が合うように、容器の底面から光軸方向に撮像光学系1aの焦点を移動させたときのシフト量Z2,Z3をオフセット量としている。
【0042】
図6に本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する一連の処理手順を示す。
まず、解析者が、細胞を入れた容器4を電動XYステージ6に載置し、細胞画像解析装置を駆動する。すると、コントローラ10を介して、電動XYステージ6が容器4を細胞撮像手段1の撮像位置に搬送する(ステップS1)。
次いで、自動合焦機構が、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うように、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を光軸方向に移動させるハードウェアAF(オートフォーカス)動作を、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うまで繰り返し行なう(ステップS2〜ステップS4)。なお、規定回数内のハードウェアAF動作において、容器4の底面に焦点が合わない場合は警告を出力して処理を終了する(ステップS5)。
次いで、例えば、図7を用いて後述するオフセット設定処理によってパーソナルコンピュータ12の記憶領域に記憶されている所定のオフセット設定値に基づき、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を、自動合焦機構によるオートフォーカスAF動作を介して得られた撮像光学系1aの容器4底面への合焦位置から光軸方向へ、そのオフセット量だけ移動させる(ステップS6)。
次いで、細胞撮像手段1が、撮像位置に位置する容器4に入れられた細胞5の透過照明画像を撮像する(ステップS7)。
次いで、撮像した画像をパーソナルコンピュータ12の記憶領域に保存する(ステップS8)。
これらの容器4の細胞撮像手段1の撮像位置への搬送(ステップS1)〜撮像した画像の所定の記憶領域への保存(ステップS8)を、全ての細胞の撮像領域に対して行なう(ステップS9)。
【0043】
なお、オフセット量は、細胞の厚みの平均値が予め判明している場合には、その細胞の厚みの平均値を手動で設定しておくことができるようにする、好ましくは、本実施形態の細胞画像撮像装置において自動的に決定することができるようにするとよい。
図7に本実施形態の細胞画像撮像装置におけるオフセット量を撮像した細胞画像から自動的に設定する処理手順の一例を示す。
まず、解析者が、細胞を入れた容器4を電動XYステージ6に載置し、細胞画像解析装置を駆動する。すると、コントローラ10を介して、電動XYステージ6が容器4を細胞撮像手段1の撮像位置に搬送する(ステップS11)。
次いで、自動合焦機構が、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うように、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を光軸方向に移動させる、ハードウェアAF(オートフォーカス)動作を、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うまで繰り返し行なう(ステップS12〜ステップS14)。なお、規定回数内のハードウェアAF動作において、容器4の底面に焦点が合わない場合は警告を出力して処理を終了する(ステップS15)。
次いで、細胞撮像手段1が、撮像位置に位置する容器4に入れられた細胞5の透過照明画像を撮像する(ステップS16)。
次いで、細胞画像解析手段2は撮像された画像から細胞における境界の候補領域となる輪郭を抽出し、その輪郭の個数に応じて、所定のスコア判定を行う。スコア判定は、例えば、所定のコントラストを有する輪郭の個数が減ってきた場合に、高スコアとする(ステップS17)。そして、細胞画像解析装置は、抽出された輪郭のスコアが最大値となる(ステップS18)まで、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を光軸方向に所定量移動し(ステップS19)、細胞撮像手段1による細胞5の撮像(ステップS16)〜細胞輪郭の抽出、所定のスコア判定(ステップS17)を繰り返す。
そして、細胞画像解析装置は、抽出された輪郭のスコアが最大値となった(ステップS18)とき、自動合焦機構によるオートフォーカスAF動作を介して得られた撮像光学系1aの容器4底面の合焦位置からの光軸方向の移動量(オフセット量)をパーソナルコンピュータ12の記憶領域に記憶する(ステップS20)。
これにより、本実施形態の細胞画像撮像装置におけるオフセット量の自動設定処理が終了する。
【0044】
ところで、透過画像の場合、細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置の違いにより、例えば、図8、図9に示すように、画像の特徴が異なる。
図8は細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態及び認識結果との関係を示す写真で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(c)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図である。図9は細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識との関係を模式的に示す図で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭強調点に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図である。
【0045】
撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官に位置するときは、図8(b)、図8(c)、図9(a)に示すように、細胞画像解析手段2を介して細胞輪郭を認識させようとしても、細胞を認識できない(図9(a)右側上段)、小器官ごとに認識(図8(c)、図9(a)右側中段)、或いは、境界領域を誤認識(図8(b)、図9(a)右側下段)する等し易く、細胞の境界領域を正確に認識することが難しい。
一方、撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭(又は輪郭強調点)に位置するときは、図8(a)、図9(b)に示すように、細胞の境界領域を正確に認識することができる。
【0046】
なお、本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する方法としては、上述した所定のオフセット量、撮像光学系1aの焦点位置をシフトさせる方法の他にも、細胞の輪郭部分を相対的に強調する方法がある。
例えば、図10に示すように、細胞内小器官の位置とは別な位置に、撮像光学系1aの焦点を合わせることで細胞内の小器官を見づらくする方法がある。撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官とは別の位置に合うように、対物レンズ1a1を光軸方向に所定量移動すると、図10(a)に示すように細胞内小器官がぼやけて見づらくなり、相対的に細胞の輪郭領域が見やすくなる。また、対物レンズ1a1の移動量を大きくすると、図10(b)に示すように細胞全体の像がぼやけてくるが、細胞には所定の厚みがあるので、細胞の輪郭を認識することは可能である。
【0047】
上述したオフセット量だけ対物レンズ1a1を移動させる方法、細胞内小器官の位置とは別な位置に、撮像光学系1aの焦点を合わせる方法のいずれを用いても、合焦位置を通常の位置(即ち、細胞内領域に焦点が合う位置)とは別の位置に設定することによって、細胞の輪郭を強調することができる。
【0048】
また、本実施形態の細胞画像解析装置では、細胞輪郭強調手段3が、細胞の輪郭部分の像を強調する第二の手段として、細胞輪郭強調照明手段3bを備えており、撮像位置に配置された容器4内の細胞5に対して偏斜照明を行うようになっている。
偏射照明を用いると、入射角度の調節それ自体、あるいは撮像光学系1aの焦点位置を変えることとの組み合わせにより、細胞5の輪郭が強調されるようになる。
即ち、偏射照明は“影”をつけて対象を見えやすくするための照明方法である。影は照明対象物の“高さ”に比例する。
そこで、本実施形態の細胞画像解析装置では、細胞輪郭強調照明手段3bを介して偏斜照明を行い、光の角度を大きくすると影が伸びる原理を用いて、細胞5の輪郭部分を強調している。特に、細胞の輪郭領域は、細胞内の小器官より高いので、偏斜照明で細胞を照明すると、細胞の輪郭部分が、黒い輪のように影を作って強調される。図11は細胞に対する通常の照明と偏斜照明を模式的に示す説明図、図12は本実施形態の細胞画像解析装置における細胞輪郭強調照明手段3bを介して偏斜照明の照明角度を変えて照明したときの細胞の輪郭部分の影のでき方を模式的に示す説明図で、(a)は傾斜角度を小さくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図、(b)は傾斜角度を大きくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図である。
【0049】
このように本実施形態の細胞画像解析装置の細胞輪郭強調手段3における細胞輪郭強調位置合焦手段3a、細胞輪郭強調照明手段3bによって細胞の輪郭を強調すると、細胞の輪郭は太く強調される、細胞内の小器官は、ぼやけて相対的に見えにくくなる。その結果、細胞の輪郭部分が、細胞画像解析手段2を介して撮像した画像中の“線”成分を検出する際に、検出され易くなり、上述したような輪郭領域の断片化や輪郭候補となる線を多く検出してしまうといった問題を解消して、正確に個々の細胞を認識できる。無染色の明視野で撮像した細胞画像や生きたままの状態で撮像した細胞画像に対し、このため、本実施形態の細胞画像解析装置によれば、無染色の明視野で撮像した細胞画像や生きたままの状態で撮像した細胞画像に対し、細胞解析装置を用いたときに、個々の細胞を正確に自動認識することが可能となり、細胞解析における解析者の肉体的負担と処理時間を大幅に削減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の細胞画像解析装置は、細胞を撮像し、撮像した細胞の画像から細胞の特徴量を解析する医療、医学、生物学の分野に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 細胞撮像手段
1a 撮像光学系
1a1 対物レンズ
1a2 結像レンズ
1b 固体撮像素子
2 細胞画像解析手段
3 細胞輪郭強調手段
3a 細胞輪郭強調位置合焦手段
3b 細胞輪郭強調照明手段
4 容器
5 細胞
6 電動XYステージ
8 照明光源(偏斜照明装置)
10 コントローラ
11 カメラコントローラ
12 パーソナルコンピュータ
13 モニター
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を撮像し、撮像した細胞の画像から細胞の特徴量を解析する細胞画像解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の解析は、癌など様々な病気の解明や治療方法を確立するのに必要不可欠である。そのため、従来、細胞株を確立し、細胞の様子や動態、形態、性質等の解明に力がそそがれてきた。また、従来、細胞自体や特定タンパク質等の物質の解明に際しては、細胞や特定タンパク質等を特定し易くするために、蛍光物質や発光物質等が利用されてきている。
【0003】
蛍光物質、発光物質等は、扱い易く、細胞自体や特定タンパク質等を特定するために非常に有効な手段である。
しかし、一方で、蛍光物質、発光物質等は、細胞、特に、生細胞に対して、有毒物質や刺激物として機能し、正確な解析結果を阻害する原因となる場合がある。
そこで、近年、蛍光物質や発光物質等を介して細胞に刺激を与えることなく、極力自然な状態で、細胞の様子や増殖、形態などを観察、解析することが非常に重要であると考えられている。
【0004】
従来、細胞に刺激を与えないで観察、解析する場合には、例えば、次の特許文献1に記載の顕微鏡等の装置が用いられている。
特許文献1に記載の顕微鏡は、光源と、光源からの光を観察物体に導く照明光学系と、照明光学系の瞳位置に配置される開口と、開口を通過した光により照明された観察物体の像を合焦位置からずれた位置で観察するための観察光学系を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004第354650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
細胞は、それ自体が無色透明のものが多い。このため、蛍光物質等を用いない通常の観察手法を介して細胞を撮像した場合、画像解析装置等を用いて、撮像した画像から細胞を自動的に解析しようとしても、個々の細胞を認識することができず、正確な解析結果を得ることが難しい。このような理由で、従来は、細胞に刺激を与えないで解析を行う場合には、解析者が、特許文献1に示す顕微鏡等を用い、目視で細胞の状態を観察していた。
【0007】
しかし、解析者を介した目視での細胞の状態の観察によって細胞を解析する手法は、数多くの細胞から統計的なデータを算出する場合、解析者にかかる肉体的負担や処理時間が膨大化してしまう。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、無染色の明視野観察において、個々の細胞を正確に自動認識でき、細胞解析における解析者の肉体的負担と処理時間を大幅に削減することが可能な細胞画像解析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明による細胞画像解析装置は、撮像光学系と撮像素子を有し、容器内に存在する細胞を撮像する細胞撮像手段と、前記細胞撮像手段を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、該細胞に関する所定の特徴量を自動解析する細胞画像解析手段を有する細胞画像解析装置であって、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調手段が、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段であるのが好ましい。
【0012】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段と、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段とからなるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の内側領域に位置合わせし、次いで、該細胞の内側領域がぼやけ、且つ、該細胞の輪郭部分が明瞭になる位置まで、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させるのが好ましい。
【0014】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器の底面に位置合わせし、次いで、該容器内に存在する細胞の厚みに応じて、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させるのが好ましい。
【0015】
また、本発明の細胞画像解析装置においては、前記細胞輪郭強調照明手段が、偏斜照明装置であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無染色の明視野で撮像した細胞画像や生きたままの状態で撮像した細胞画像に対し、細胞解析装置を用いたときに、個々の細胞を正確に自動認識することが可能となり、細胞解析における解析者の肉体的負担と処理時間を大幅に削減することが可能な細胞画像解析装置が得られる。また、個々の細胞を正確に自動認識することが可能となることにより、目視では限界がある統計学データの解析も行うことができ、新たな発見に結びつくことも考えられる。更に、細胞を確実に認識できるので、様々な細胞解析の組み合わせや、次々と新たな細胞解析を行うことを通じて、病気解明、治療方法の確立のスピードアップに繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の細胞画像解析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる細胞画像解析装置全体の概略構成を示す説明図である。
【図3】細胞解析の全体的な処理手順を模式的に示す説明図である。
【図4】細胞の像の輪郭部分が強調された状態を示す説明図である。
【図5】本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aによる細胞の像の輪郭部分の強調方法の一例を示す説明図で、(a)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞内小器官内に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図、(b)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞輪郭に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図である。
【図6】本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する一連の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】図6に示す処理手順において撮像光学系の焦点を、容器の底面から細胞輪郭部分が強調される所定位置にシフトするためのオフセット値の自動設定手順の一例を示す説明図である。
【図8】細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態及び認識結果との関係を示す写真で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(c)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図である。
【図9】細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識との関係を模式的に示す図で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭強調点に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図である。
【図10】本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する他の方法として、細胞内小器官の位置とは別な位置に、撮像光学系1aの焦点を合わせた状態を示す説明図で、(a)は細胞内の小器官がぼやける位置に撮像光学系1aの焦点を合わせた状態を示す図、(b)は細胞全体がぼやける位置に撮像光学系1aの焦点を合わせた状態を示す図である。
【図11】細胞に対する通常の照明と偏斜照明を模式的に示す説明図である。
【図12】本実施形態の細胞画像解析装置における細胞輪郭強調照明手段3bを介して偏斜照明の照明角度を変えて照明したときの細胞の輪郭部分の影のでき方を模式的に示す説明図で、(a)は傾斜角度を小さくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図、(b)は傾斜角度を大きくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図である。
【図13】従来、画像解析装置を用いて細胞画像を解析する場合に生じていた細胞領域の誤認識の例を示す説明図で、(a)は1つの細胞を複数の細胞と誤認識する例を示す図、(b)は複数の細胞を1つの細胞と誤認識する例を示す図である。
【図14】無染色の細胞の透過画像を用いた細胞解析装置により細胞質の認識手順を示す説明図で、(a)は細胞の境界候補を”線”として抽出する段階を示す図、(b)は抽出した細胞の境界候補から個々の細胞の輪郭を決定する段階を示す図である。
【図15】透過画像において細胞を鮮明に撮像できた場合において細胞領域を認識する場合に生じる第1の問題点を示す説明図である。
【図16】透過画像において細胞を鮮明に撮像できた場合において細胞領域を認識する場合に生じる第2の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の説明に先立ち、本発明の解決課題、構成及び作用効果について説明する。
図1は本発明の細胞画像解析装置の概略構成を示すブロック図である。
本発明の細胞画像解析装置は、図1に示すように、細胞撮像手段1と、細胞画像解析手段2と、細胞輪郭強調手段3を有する。
細胞撮像手段1は、撮像光学系1aと撮像素子1bを有し、撮像位置に配置された図1において不図示の容器内に存在する細胞を撮像する。
細胞画像解析手段2は、細胞撮像手段1を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、細胞に関する所定の特徴量を自動解析する。
細胞輪郭強調手段3は、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する。
【0019】
細胞輪郭強調手段3は、好ましくは、撮像光学系1aの焦点を、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調された状態となる所定位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段3aで構成する。
または、細胞輪郭強調手段3は、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調されるように、細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段3bで構成してもよい。
または、細胞輪郭強調手段3は、これら細胞輪郭強調位置合焦手段3aと細胞輪郭強調照明手段3aとを備えて構成するとより好ましい。
【0020】
細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、細胞撮像手段1を介して細胞を撮像するときに、撮像光学系1aの焦点を、細胞の内側領域(小器官がある領域)の位置から細胞の輪郭が強調される所定位置に光軸方向の位置をずらすように構成する。
具体的には、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、例えば、撮像光学系1aの焦点を、先ず、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器内に存在する細胞の内側領域に位置合わせし、次いで、細胞の内側領域の像がぼやけ、且つ、細胞の輪郭部分の像が明瞭になる位置まで、撮像光学系1aの光軸方向に沿って所定量移動させるように構成する。
または、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、例えば、撮像光学系1aの焦点を、先ず、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器の底面に位置合わせし、次いで、容器内に存在する細胞の厚みに応じて、撮像光学系1aの光軸方向に沿って所定量移動させるように構成する。
【0021】
また、細胞輪郭強調照明手段3bは、偏斜照明装置で構成する。
【0022】
従来、例えば、細胞に対して染色などの刺激を与えずに解析する、経時的に細胞を解析する、或いは、細胞形態、細胞増殖を生きたまま解析する等の場合においては、細胞を撮像し、撮像した細胞の画像を画像解析手段で自動的に解析しようとしても、細胞が無色であるため、画像中の細胞の認識をすることができず、或いは細胞を認識することができたとしても、培養状態においては細胞が密集していることが多いため、画像中における細胞の輪郭を誤認識してしまい、個々の細胞を正確に認識できなかった。
このため、従来、このような無染色状態の細胞の解析を正確に行う場合には、画像解析装置を介して細胞の画像を自動的に解析するのではなくて、顕微鏡観察において目視で個々の細胞を認識して解析する方法を採らざるを得なかった。これらの解析は、通常、解析者が、肉眼で、細胞をカウントしたり、細胞グロース、形態を測る等して行われる。しかし、このような目視による手法を用いたのでは、細胞の解析に多大な労力・時間がかかるため、細胞解析を行うことが可能な細胞数が少数に限られたものとなってしまう上、解析者にかかる肉体的負担が非常に大きなものとなる。
【0023】
しかるに、本発明の細胞画像解析装置のように、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器4内に存在する細胞5の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段3を備えれば、細胞撮像手段1を介して細胞5を撮像したときに、個々の細胞5の輪郭が明瞭な画像が得られ、細胞撮像手段1を介して撮像した画像を細胞解析手段2を用いて自動的に解析する際に、細胞の輪郭を特定でき、正確に個々の細胞を認識できる。
このため、本発明の細胞画像解析装置によれば、蛍光物質などの染色手段を用いることなく明視野で、また、細胞を生きたままで解析する場合、人間の肉眼による観察を行わずに装置を介して細胞の撮像から細胞認識まで自動的に行うことが可能となり、解析者にかかる肉体的負担や、処理時間を格段に削減することができ、一定の時間当たりに解析できる細胞数が増加し、しかも、細胞の解析を正確に行うことができるようになる。
【0024】
次に、本発明の細胞画像解析装置の実施形態を説明する。
図2は本発明の一実施形態にかかる細胞画像解析装置全体の概略構成を示す説明図である。
本実施形態の細胞画像解析装置は、図1における細胞撮像手段1が、対物レンズ1a1と結像レンズ1a2を備えた顕微鏡撮像光学系1aと、CCDやCMOS等の固体撮像素子1bを有して構成されている。対物レンズ1a1は、不図示の電動制御機構により、焦点合わせのために光軸方向に移動可能になっている。結像レンズ1a2は、容器4内に存在する細胞5の像を固体撮像素子1bの撮像面に結像させる。そして、細胞撮像手段1は、撮像位置に配置された、容器4内に存在する細胞5を撮像する。
【0025】
また、細胞画像解析手段2は、パーソナルコンピュータ12の中央演算処理装置及びそれにインストールされた画像解析ソフトウェアを有して構成されており、細胞撮像手段1を介して撮像した細胞5の画像を用いて、細胞5の領域を特定しながら、細胞5に関する所定の特徴量を自動的に解析する。
【0026】
なお、図2中、6は電動XYステージであり、容器4を載置し、後述するコントローラ10から電源供給及び動作指示を受けて動作する。8は細胞5を照明するための照明光源である。10はコントローラで、パーソナルコンピュータ12からの指示により電動ステージ6、照明光源8、対物レンズ1a1を制御する。11はカメラコントローラで、固体撮像素子1bとパーソナルコンピュータ12とに接続され、パーソナルコンピュータ12からの所定の指示信号を受信することにより、撮像制御やパーソナルコンピュータ12への撮像画像情報の転送を行う。13はパーソナルコンピュータ12に接続されたモニターである。
【0027】
また、本実施形態の細胞画像解析装置では、図1に示した細胞輪郭強調手段3が、細胞輪郭強調位置合焦手段3aと、細胞輪郭強調照明手段3bとで構成されている。
【0028】
細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、図2において不図示の自動合焦機構と、コントローラ10に接続する不図示の電動制御機構とからなる。そして、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、コンピュータ12からコントローラ10へ所定の指示信号が受信されたときに、撮像光学系1aの焦点を、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器4内に存在する細胞5の輪郭部分の像が強調される所定位置に自動的に位置合わせするように、対物レンズ1a1を光軸方向に所定量移動させるように構成されている。
より詳しくは、細胞輪郭強調位置合焦手段3aは、まず、自動合焦機構を介して撮像光学系1aの焦点を細胞5の内側の小器官へ合わせる自動合焦処理を行い、次いで、細胞5の輪郭部分の像が強調されるように、撮像光学系1aの焦点を、所定のオフセット量だけ光軸方向にシフトする処理を行う。
【0029】
細胞輪郭強調照明手段3bは、偏斜照明装置8で構成されている。偏斜照明装置8は、細胞撮像手段1の撮像位置に配置された容器4内に存在する細胞5の像の輪郭部分が強調されるように、撮像光学系1aの光軸に対し斜めに傾斜した状態で、細胞5に対して照明光を照明する。また、偏斜照明装置8は、コントローラ10の制御を介して、R・G・B夫々の照明光を順次切替えて照明することができるように構成されている。
【0030】
図3は細胞解析全体の処理手順を模式的に示す説明図である。
細胞解析においては、先ず解析対象となる細胞サンプルを用意する。次いで、細胞サンプルを複数の視野に区分けして撮像する。次いで、それぞれの撮像画像を解析し、各画像に映っている複数の細胞を個々の細胞領域に切り分けて認識する。次いで、領域が認識された各細胞に対して、例えば、細胞の大きさ(面積)の平均などの所定の統計的な処理を行う。
【0031】
本実施形態の細胞画像解析装置を用いて細胞解析を行う場合、解析者は、マルチウェルプレート、スライドガラス等の容器4に細胞5を入れ、細胞5を入れた容器4を電動XYステージ6に載置し、細胞画像解析装置を駆動する。すると、コントローラ10を介して、電動XYステージ6が容器4を細胞撮像手段1の撮像位置に搬送する。次いで、コントローラ10、カメラコントローラ11を介して、細胞撮像手段1が撮像位置に搬送された容器4内に存在する細胞の撮像を、複数の視野に分けて行う。撮像に際しては、自動合焦機構による撮像光学系1aの焦点を細胞5の内側の小器官へ合わせる自動合焦処理、細胞5の輪郭部分の像が強調されるようにする撮像光学系1aの焦点のシフト処理、R・G・B夫々の照明光による撮像処理を、順に行う。
細胞に対する全ての視野の撮像処理を終了後、細胞画像解析手段2が、細胞5の画像より画像中の各細胞の領域を認識し、次いで、領域が認識された各細胞に対し、解析者を介して予め設定された、例えば、細胞の総数、細胞の大きさ(面積)の平均、各細胞の蛍光量の総量などのパラメタに基づいて、統計的な処理を行う。
【0032】
ここで、従来、画像解析装置を用いて細胞を正確に自動解析することを阻害していた原因について説明する。
画像解析装置を用いて、細胞を正確に自動解析するには、細胞の画像を画像解析したときに各細胞の領域を特定して個々の細胞を正確に認識できる必要がある。
しかし、従来、画像解析装置を用いて細胞の画像から細胞解析を自動的に行った場合、例えば、図13(a)に示すように、1つの細胞を複数の細胞と誤認識してしまう、或いは、図13(b)に示すように、複数の細胞を1つの細胞として誤認識してしまう等、個々の細胞の領域を誤認識し易いという問題があった。
【0033】
細胞の領域を誤認識する頻度は、解析対象とする細胞の形態により異なる。
例えば、細胞核のように、円形あるいは楕円形のような比較的に規則的な形態をとる細胞に対しては、比較的容易に個々の細胞を認識することができる。
一方、細胞質や細胞膜のような不定形の形態をとる細胞に対しては、個々の細胞の認識が困難な場合が多い。このような不定形の形態をとる細胞は、接着細胞(通常の細胞)や、浮遊細胞(血球細胞など)等に分類することができる、このうち、接着細胞は、容器の底面等に接着して、特に複雑な形態をとる。
【0034】
また、上述のように、細胞核における個々の細胞を認識することは比較的容易ではあるものの、個々の細胞が認識され易い状態の細胞核の画像を撮像するには、通常は、蛍光物質等の染色物質を用いて細胞核を特異的に染色する必要がある。
しかし、核染色に用いる蛍光物質等の染色物質は、毒性のあるものが多く、細胞を生きたままの状態で観察するような場合には使用することができない。
このため、生細胞の解析を行う場合には、無染色での細胞の画像を用いて個々の細胞を認識することが必要となる。
【0035】
例えば、無染色の細胞の透過画像を用いて細胞解析装置により細胞質を認識する場合には、まず、図14に示すように、細胞の境界候補を”線”として抽出し、次いで、抽出した細胞の境界候補から個々の細胞の輪郭を決定することによって行う。
ここで、細胞における境界候補は、画像内において輝度差の大きい箇所を選ぶことによって抽出する。例えば、白黒の画像において白と黒のコントラストがある部分は”線”として現れる。そのような箇所を細胞における境界候補として抽出する。
【0036】
ところで、透過画像において細胞を鮮明に撮像できた場合には、細胞質あるいは細胞の境界(=細胞膜)だけではなく、細胞内の小器官まで観察できる。しかし、そのような場合、図15に示すように、逆に、細胞の境界候補となる”線”成分が多く現れすぎるため、細胞解析装置を用いて細胞個々の境界をトレースすることが非常に難しくなる。
【0037】
また、透過画像の性質上、細胞を鮮明に撮像できるとは限らず、例えば、図16(a)、図16(b)に示すように、細胞の境界候補となる“線”成分が断片化されてしまうことが頻繁に起こりうる。このような場合、細胞解析装置を用いて”線”成分の断片をつなぎ合わせて個々の細胞の境界を復元する必要があるが、細胞の形態が特に複雑な場合には、細胞の境界を復元することが難しくなる。
【0038】
このような問題を解決するため、本実施形態の細胞画像撮像装置は、細胞輪郭強調手段3を介して、図4に示すように、細胞の像の輪郭部分を自動的に強調するように構成されている。
【0039】
図5は本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aによる細胞の像の輪郭部分の強調方法の一例を示す説明図で、(a)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞内小器官内に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図、(b)は撮像光学系の焦点を容器の底面に合わせた後に、その焦点が細胞輪郭に合うようにオフセット値を設定した状態を示す図である。図6は本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する一連の処理手順を示すフローチャートである。図7は図6に示す処理手順において撮像光学系の焦点を、容器の底面から細胞輪郭部分が強調される所定位置にシフトするためのオフセット値の自動設定手順の一例を示す説明図である。
【0040】
細胞は容器の底面に接着し、あるいは、浮遊細胞の場合、沈んで底面に接する。このため、まず、細胞を入れる容器の底面の光軸方向の位置を検出する。これは機械的な方法(例えば、レーザーを照射して、底面からの反射量を測定する方法)で検出することができる。
【0041】
ここで、個々の細胞のサイズは、ほぼ同じとみなすことができる。このため、光軸方向への一定のシフト量をオフセット量とすることで、所定の細胞位置(例えば、細胞の底(図5(b)参照)ではシフト量Z3、上部(図5(b)参照)ではシフト量Z2、中心部分(図5(a)参照)ではシフト量Z1等)での撮像を行うことができる。
本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aでは、図5(b)に示す細胞の底や細胞の上部に撮像光学系1aの焦点が合うように、容器の底面から光軸方向に撮像光学系1aの焦点を移動させたときのシフト量Z2,Z3をオフセット量としている。
【0042】
図6に本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する一連の処理手順を示す。
まず、解析者が、細胞を入れた容器4を電動XYステージ6に載置し、細胞画像解析装置を駆動する。すると、コントローラ10を介して、電動XYステージ6が容器4を細胞撮像手段1の撮像位置に搬送する(ステップS1)。
次いで、自動合焦機構が、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うように、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を光軸方向に移動させるハードウェアAF(オートフォーカス)動作を、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うまで繰り返し行なう(ステップS2〜ステップS4)。なお、規定回数内のハードウェアAF動作において、容器4の底面に焦点が合わない場合は警告を出力して処理を終了する(ステップS5)。
次いで、例えば、図7を用いて後述するオフセット設定処理によってパーソナルコンピュータ12の記憶領域に記憶されている所定のオフセット設定値に基づき、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を、自動合焦機構によるオートフォーカスAF動作を介して得られた撮像光学系1aの容器4底面への合焦位置から光軸方向へ、そのオフセット量だけ移動させる(ステップS6)。
次いで、細胞撮像手段1が、撮像位置に位置する容器4に入れられた細胞5の透過照明画像を撮像する(ステップS7)。
次いで、撮像した画像をパーソナルコンピュータ12の記憶領域に保存する(ステップS8)。
これらの容器4の細胞撮像手段1の撮像位置への搬送(ステップS1)〜撮像した画像の所定の記憶領域への保存(ステップS8)を、全ての細胞の撮像領域に対して行なう(ステップS9)。
【0043】
なお、オフセット量は、細胞の厚みの平均値が予め判明している場合には、その細胞の厚みの平均値を手動で設定しておくことができるようにする、好ましくは、本実施形態の細胞画像撮像装置において自動的に決定することができるようにするとよい。
図7に本実施形態の細胞画像撮像装置におけるオフセット量を撮像した細胞画像から自動的に設定する処理手順の一例を示す。
まず、解析者が、細胞を入れた容器4を電動XYステージ6に載置し、細胞画像解析装置を駆動する。すると、コントローラ10を介して、電動XYステージ6が容器4を細胞撮像手段1の撮像位置に搬送する(ステップS11)。
次いで、自動合焦機構が、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うように、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を光軸方向に移動させる、ハードウェアAF(オートフォーカス)動作を、撮像光学系1aの焦点を容器4の底面に合うまで繰り返し行なう(ステップS12〜ステップS14)。なお、規定回数内のハードウェアAF動作において、容器4の底面に焦点が合わない場合は警告を出力して処理を終了する(ステップS15)。
次いで、細胞撮像手段1が、撮像位置に位置する容器4に入れられた細胞5の透過照明画像を撮像する(ステップS16)。
次いで、細胞画像解析手段2は撮像された画像から細胞における境界の候補領域となる輪郭を抽出し、その輪郭の個数に応じて、所定のスコア判定を行う。スコア判定は、例えば、所定のコントラストを有する輪郭の個数が減ってきた場合に、高スコアとする(ステップS17)。そして、細胞画像解析装置は、抽出された輪郭のスコアが最大値となる(ステップS18)まで、撮像光学系1aの対物レンズ1a1を光軸方向に所定量移動し(ステップS19)、細胞撮像手段1による細胞5の撮像(ステップS16)〜細胞輪郭の抽出、所定のスコア判定(ステップS17)を繰り返す。
そして、細胞画像解析装置は、抽出された輪郭のスコアが最大値となった(ステップS18)とき、自動合焦機構によるオートフォーカスAF動作を介して得られた撮像光学系1aの容器4底面の合焦位置からの光軸方向の移動量(オフセット量)をパーソナルコンピュータ12の記憶領域に記憶する(ステップS20)。
これにより、本実施形態の細胞画像撮像装置におけるオフセット量の自動設定処理が終了する。
【0044】
ところで、透過画像の場合、細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置の違いにより、例えば、図8、図9に示すように、画像の特徴が異なる。
図8は細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態及び認識結果との関係を示す写真で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図、(c)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するときの認識状態(左側の図)及び認識結果(右側の図)を示す図である。図9は細胞5に対する撮像光学系1aの合焦位置と、細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識との関係を模式的に示す図で、(a)は撮像光学系1aの焦点が細胞5内の小器官に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図、(b)は撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭強調点に位置するとき(左側の図)、及びそのときの細胞画像解析手段2による細胞輪郭の認識状態(右側の図)を示す図である。
【0045】
撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官に位置するときは、図8(b)、図8(c)、図9(a)に示すように、細胞画像解析手段2を介して細胞輪郭を認識させようとしても、細胞を認識できない(図9(a)右側上段)、小器官ごとに認識(図8(c)、図9(a)右側中段)、或いは、境界領域を誤認識(図8(b)、図9(a)右側下段)する等し易く、細胞の境界領域を正確に認識することが難しい。
一方、撮像光学系1aの焦点が細胞5の輪郭(又は輪郭強調点)に位置するときは、図8(a)、図9(b)に示すように、細胞の境界領域を正確に認識することができる。
【0046】
なお、本実施形態の細胞画像撮像装置における細胞輪郭強調手段3の細胞輪郭強調位置合焦手段3aを介して細胞の像の輪郭部分を強調した状態で画像を撮像する方法としては、上述した所定のオフセット量、撮像光学系1aの焦点位置をシフトさせる方法の他にも、細胞の輪郭部分を相対的に強調する方法がある。
例えば、図10に示すように、細胞内小器官の位置とは別な位置に、撮像光学系1aの焦点を合わせることで細胞内の小器官を見づらくする方法がある。撮像光学系1aの焦点が細胞内の小器官とは別の位置に合うように、対物レンズ1a1を光軸方向に所定量移動すると、図10(a)に示すように細胞内小器官がぼやけて見づらくなり、相対的に細胞の輪郭領域が見やすくなる。また、対物レンズ1a1の移動量を大きくすると、図10(b)に示すように細胞全体の像がぼやけてくるが、細胞には所定の厚みがあるので、細胞の輪郭を認識することは可能である。
【0047】
上述したオフセット量だけ対物レンズ1a1を移動させる方法、細胞内小器官の位置とは別な位置に、撮像光学系1aの焦点を合わせる方法のいずれを用いても、合焦位置を通常の位置(即ち、細胞内領域に焦点が合う位置)とは別の位置に設定することによって、細胞の輪郭を強調することができる。
【0048】
また、本実施形態の細胞画像解析装置では、細胞輪郭強調手段3が、細胞の輪郭部分の像を強調する第二の手段として、細胞輪郭強調照明手段3bを備えており、撮像位置に配置された容器4内の細胞5に対して偏斜照明を行うようになっている。
偏射照明を用いると、入射角度の調節それ自体、あるいは撮像光学系1aの焦点位置を変えることとの組み合わせにより、細胞5の輪郭が強調されるようになる。
即ち、偏射照明は“影”をつけて対象を見えやすくするための照明方法である。影は照明対象物の“高さ”に比例する。
そこで、本実施形態の細胞画像解析装置では、細胞輪郭強調照明手段3bを介して偏斜照明を行い、光の角度を大きくすると影が伸びる原理を用いて、細胞5の輪郭部分を強調している。特に、細胞の輪郭領域は、細胞内の小器官より高いので、偏斜照明で細胞を照明すると、細胞の輪郭部分が、黒い輪のように影を作って強調される。図11は細胞に対する通常の照明と偏斜照明を模式的に示す説明図、図12は本実施形態の細胞画像解析装置における細胞輪郭強調照明手段3bを介して偏斜照明の照明角度を変えて照明したときの細胞の輪郭部分の影のでき方を模式的に示す説明図で、(a)は傾斜角度を小さくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図、(b)は傾斜角度を大きくして照明した状態及びそのときにできる細胞輪郭の影を示す図である。
【0049】
このように本実施形態の細胞画像解析装置の細胞輪郭強調手段3における細胞輪郭強調位置合焦手段3a、細胞輪郭強調照明手段3bによって細胞の輪郭を強調すると、細胞の輪郭は太く強調される、細胞内の小器官は、ぼやけて相対的に見えにくくなる。その結果、細胞の輪郭部分が、細胞画像解析手段2を介して撮像した画像中の“線”成分を検出する際に、検出され易くなり、上述したような輪郭領域の断片化や輪郭候補となる線を多く検出してしまうといった問題を解消して、正確に個々の細胞を認識できる。無染色の明視野で撮像した細胞画像や生きたままの状態で撮像した細胞画像に対し、このため、本実施形態の細胞画像解析装置によれば、無染色の明視野で撮像した細胞画像や生きたままの状態で撮像した細胞画像に対し、細胞解析装置を用いたときに、個々の細胞を正確に自動認識することが可能となり、細胞解析における解析者の肉体的負担と処理時間を大幅に削減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の細胞画像解析装置は、細胞を撮像し、撮像した細胞の画像から細胞の特徴量を解析する医療、医学、生物学の分野に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 細胞撮像手段
1a 撮像光学系
1a1 対物レンズ
1a2 結像レンズ
1b 固体撮像素子
2 細胞画像解析手段
3 細胞輪郭強調手段
3a 細胞輪郭強調位置合焦手段
3b 細胞輪郭強調照明手段
4 容器
5 細胞
6 電動XYステージ
8 照明光源(偏斜照明装置)
10 コントローラ
11 カメラコントローラ
12 パーソナルコンピュータ
13 モニター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系と撮像素子を有し、容器内に存在する細胞を撮像する細胞撮像手段と、前記細胞撮像手段を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、該細胞に関する所定の特徴量を自動解析する細胞画像解析手段を有する細胞画像解析装置であって、
前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段を有することを特徴とする細胞画像解析装置。
【請求項2】
前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段であることを特徴とする請求項1に記載の細胞輪郭解析装置。
【請求項3】
前記細胞輪郭強調手段が、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段であることを特徴とする請求項1に記載の細胞画像解析装置。
【請求項4】
前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段と、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段とからなることを特徴とする請求項1に記載の細胞画像解析装置。
【請求項5】
前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の内側領域に位置合わせし、次いで、該細胞の内側領域がぼやけ、且つ、該細胞の輪郭部分が明瞭になる位置まで、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させることを特徴とする請求項2又は4に記載の細胞画像解析装置。
【請求項6】
前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器の底面に位置合わせし、次いで、該容器内に存在する細胞の厚みに応じて、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させることを特徴とする請求項2又は4に記載の細胞画像解析装置。
【請求項7】
前記細胞輪郭強調照明手段が、偏斜照明装置であることを特徴とする請求項3又は4、請求項4に従属する請求項5又は6に記載の細胞画像解析装置。
【請求項1】
撮像光学系と撮像素子を有し、容器内に存在する細胞を撮像する細胞撮像手段と、前記細胞撮像手段を介して撮像した細胞の画像を用いて、細胞の領域を特定しながら、該細胞に関する所定の特徴量を自動解析する細胞画像解析手段を有する細胞画像解析装置であって、
前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分を自動的に強調する細胞輪郭強調手段を有することを特徴とする細胞画像解析装置。
【請求項2】
前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段であることを特徴とする請求項1に記載の細胞輪郭解析装置。
【請求項3】
前記細胞輪郭強調手段が、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の像の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段であることを特徴とする請求項1に記載の細胞画像解析装置。
【請求項4】
前記細胞輪郭強調手段が、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調される位置に自動的に位置合わせする細胞輪郭強調位置合焦手段と、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の輪郭部分が強調されるように、該細胞を照明する細胞輪郭強調照明手段とからなることを特徴とする請求項1に記載の細胞画像解析装置。
【請求項5】
前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器内に存在する細胞の内側領域に位置合わせし、次いで、該細胞の内側領域がぼやけ、且つ、該細胞の輪郭部分が明瞭になる位置まで、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させることを特徴とする請求項2又は4に記載の細胞画像解析装置。
【請求項6】
前記細胞輪郭強調位置合焦手段は、前記撮像光学系の焦点を、前記細胞撮像手段の撮像位置に配置された前記容器の底面に位置合わせし、次いで、該容器内に存在する細胞の厚みに応じて、該撮像光学系の光軸方向に沿って所定量移動させることを特徴とする請求項2又は4に記載の細胞画像解析装置。
【請求項7】
前記細胞輪郭強調照明手段が、偏斜照明装置であることを特徴とする請求項3又は4、請求項4に従属する請求項5又は6に記載の細胞画像解析装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図8】
【公開番号】特開2010−216920(P2010−216920A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62608(P2009−62608)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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