説明

細胞融合用の不平等電界チャンバ

生物細胞(10)の融合を実施するための装置が提供され、この装置は、その上に導電性外側電極(18)が支持されたベース部材(24)を含み、外側電極半径(r2)を有し、ある電極高さ(19)を有する。導電性内側電極(20)は、ベース部材(24)上に支持され、内側電極半径(r1)を有し、さらに前記電極高さ(19)を有する。外側電極と内側電極(18、20)は、融合チャンバ(14)を画定するギャップによって互いから離隔されている。内側電極半径(r1)、外側電極半径(r2)及びギャップは、融合チャンバ(14)内において細胞融合を提供するために生物細胞(10)間の圧縮及び細胞膜間の透過性が最大化され、温度上昇が最小化されるように、0.7から0.9の範囲の選択可能な比(r1/r2)の所定の範囲に従って選択され、選択されたギャップは選択可能な比(r1/r2)の前記範囲によって限定され、前記選択可能な比の中から決定された比(r1/r2)は前記選択されたギャップに基づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、生物細胞を互いに融合させるための方法及び装置に関する。より具体的には本発明は、細胞融合電界パルスを受け取る前に生物細胞が整列しそれらの細胞膜接触が増大するように、生物細胞を電界で処理するための方法及び装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
中性に荷電した粒子、例えば生物細胞が、例えば同じサイズの一対の平面電極によって提供される、平等電界(uniform electric field)の中に置かれた場合、この生物細胞はどちらの電極の方へも移動しない。両方の電極の引力が同じだからである。
【0003】
一方、中性に荷電した生物細胞が、例えば図1に示す従来技術のようないずれか1つが平面電極ではない2つの電極によって提供される、不平等電界(non−uniform electric field)の中に置かれた場合、生物細胞は双極子を形成し、より大きな引力を有するほうの電極に引っ張られ、より大きな引力を有するほうの電極に向かって移動する。
【0004】
不平等電界のこのような使用は誘電泳動(dielectrophoresis)において使用されており、誘電泳動を使用して生細胞を整列させ、続いて融合/電気穿孔パルスを使用して細胞を融合させる発想は、1970年代の初めに文献に現れた。この方法は、治療目的のため、モノクローナル抗体を産出するためのハイブリドーマ産生のため、核融合のため、及び他の雑種細胞を産生するために、2つの異なるタイプの細胞の雑種を生み出すために使用される。
【0005】
誘電泳動は、生細胞などの中性荷電粒子に電気力を加える方法である。この電気力によって、隣接する生細胞は図5に示すように互いを圧縮する。この誘電泳動による力(誘電泳動力)は、電圧が印加された電極対によって生み出された不平等電界をかけることによって生じさせる。この不平等電界は細胞内部の電荷(イオン)を分離して双極子を形成する。双極子が形成された後、不平等電界は細胞を、電界の強さの強い方又は弱い方へ移動させる。この移動は、媒質と生物細胞又は粒子の相対的な導電率及び誘電率に依存する。従来技術の図2に示すようにこれらの生細胞はまた、この不平等電界の中で整列する。
【0006】
誘電泳動力は電界の2乗の関数であり、したがって電界の極性は重要ではない。誘電泳動力はまた、媒質と粒子又は細胞の相対的な導電率及び誘電率の関数でもある。導電率及び誘電率は、加えられた電界の周波数の関数である。一般に、正弦波などの交流電圧波を電極と電極の間に印加して、交流電界を生み出す。正弦波の電圧、周波数及び継続時間は特定の細胞タイプごとに最適化される。
【0007】
交流波をかけて細胞を整列させ圧縮した後、1つ又は複数の融合/電気穿孔パルスを加えて、隣接する細胞膜を透過性化し(隣接する細胞膜間に経路を形成し)、隣接する両方の細胞の細胞膜を融合し又は1つにする(commingle)。これらの経路は、細胞の内容物が混合し、融合した雑種細胞を形成することを可能にする。
【0008】
透過性化(permeabilization)は一般に、電界中の全ての細胞が均一に透過性化されるように、平等な電界強度を有する電界の中で実施される。この平等電界(uniform electric field)は平行平板電極を使用することによって達成される。
【0009】
一方、不平等な電界強度の中で全ての細胞を透過性化すると、細胞が不均一に透過性化されることが知られている。このような不均一な透過性化は望ましくない。細胞膜に形成される経路の数が減り、その結果、細胞融合数が少なくなる。
【0010】
融合パルスの後、別の交流電界を加えて、融合細胞が安定(成熟)する間、細胞を一体に保持することができる。場合によっては、電界が突然加わることによる細胞の損傷を防ぐために、交流電圧を直線的に増大又は低減させている。
【0011】
PCT国際出願公開公報WO03/020915A2は、低レベルで加えて、乱流を生じさせる大きな力を生み出すことなく細胞を整列させることができる交流波形を記載している。細胞が整列した後、次に加えられる波形が、細胞を圧縮して細胞間に大きな相互表面積を生み出す大きな力を提供し、その直後、透過性化電界パルスが加えられる。
【0012】
細胞融合応用の例にはハイブリドーマ産生及び核移植が含まれる。電気融合の最近の応用は、癌免疫療法用の治療雑種を生み出すことである。これらの雑種は、癌腫瘍細胞及び免疫系樹状細胞からex vivoプロセスで生み出される。それぞれの処理は生存可能な多数の雑種を必要とし、その結果、雑種産生過程の高効率化を求める新たに要求が生じている。これらの技法の商業的及び臨床的使用が現在重要であり、それによって単一のバッチで多数の雑種産物を産出することが求められている。
【0013】
細胞融合の実行に使用可能ないくつかの(電気、機械及び化学的)技法がある。本発明は電気的方法に関する。現行の電気的技法は、電極装置又はチャンバに接続された電圧波形発生装置を使用する。知られている電気、機械及び化学的技法に関して、以下の米国特許が特に重要であり、これらは参照によって本明細書で組み込まれる。
第4326934号、1982年4月27日、Pohl
第4441972号、1982年4月10日、Pohl
第4578168号、1986年3月25日、Hofmann
第4695547号、1987年9月22日、Hillard
第4699881号、1987年10月13日、Matschke他
第4764473号、1988年8月16日、Matschke他
第4784954号、1988年11月15日、Zimmermann
第4804450号、1989年2月14日、Mochizuki
第5007995号、1991年4月16日、Takahashi
第5304486号、1994年4月19日、Chang
【0014】
上記の文献から、不平等電界を生み出す電極又はチャンバを使用することが知られている。そのような1つの例が、チャンバを形成する2つの同軸電極である。同軸チャンバは、1978年に出版されたPohlの著作に詳細に説明されている。この同軸チャンバは、誘電泳動の理論的考察に関して論じられた。
【0015】
それにもかかわらず、具体的応用に対して同軸チャンバの寸法を効果的に設定する方法についての記載はなかった。電気的方法を使用した細胞融合は、細胞を整列させ圧縮するための不平等電界と、細胞を透過性化するための平等電界とを必要とする。商業応用及び臨床応用において必要とされる、融合雑種細胞を生み出す際の可能な最も高い効率を提供するため、チャンバの幾何学的寸法(geometric dimensions)は慎重に選択されなければならない。
【0016】
どの細胞融合過程においても最初に、細胞を整列させ接触させなければならない。いずれにせよ、表面の負電荷に打ち勝つ十分な力をそれぞれの細胞に加えなければならない。前述のとおり、細胞の正味の電荷はゼロなので、平等電界を単にかけるだけでは細胞は移動しない。電荷がゼロなので、電界の定義から、加えられる力もゼロである。
力=(電界)×(電荷)
【0017】
しかし不平等電界は、従来技術の図1に示すように、それぞれの細胞の中の陽イオンを誘導して一方の側に移動させ、陰イオンを誘導してもう一方の側に移動させて、双極子を作り出す。不平等電界の存在により双極子が誘導されると、一方の側の電界の強さがもう一方の側の電界の強さよりも大きいため、ある正味の力が細胞に加わる。この一方向への細胞の移動によって細胞は整列する。このとき細胞は双極子であるので、従来技術の図2に示すように、1つの細胞の負側は、表面の負電荷に打ち勝って別の細胞の正側を引きつける。不平等電界は電極装置又はチャンバによって生み出される。不均一性は電極形状と相関関係にあり、電極構成(electrode configuration)の例は従来技術の図1及び2に示されている。
【0018】
細胞を傷つける可能性があり、媒質中に乱流を引き起こし、それによって融合された雑種の数を減らすオーム加熱を最小限に抑えるため、融合させる細胞タイプは一般に、低導電性媒質(例えば100マイクロシーメンス/cm)の中に置かれる。この点で、細胞融合にかけられている生物細胞は、細胞整列及び細胞膜接触中の加熱が低減するように処理されることが望ましい。
【0019】
波形発生装置は複数の機能を有する。第1の機能は、電極対又はチャンバによって交流電界に変換される交流電圧波形を生み出すことである。この交流電界は細胞を整列/接触させる。第2の機能は、交流波形の振幅を短時間増大させることによって細胞を圧縮することである。第3の機能は、緊密に接触した細胞の膜を電気穿孔して細胞を融合させる電界を生じさせるパルス電圧を生み出すことである。第4の機能は、融合産物が生存可能になり又は安定(成熟)するまで細胞を整列した状態に保持するために、低振幅交流電圧を印加することである。
【0020】
融合を成功させるための1つの要因は、隣接する細胞間の膜接触である。融合パルスが加えられる前のこの接触が緊密であるほど、融合の効率は高くなる。U.Zimmermann,et al.,“Electric Field−Induced Cell−to−Cell Fusion”,J.Membrane Biol.67,165−182(1982)において、Zimmermannは、融合パルスの直前に交流波電界の強さを増大させることが最適なアプローチであるかもしれないと指摘している。明らかに、細胞融合にかける生物細胞を、細胞膜接触を増大させる十分な力を生み出す非線形融合前電界波形で前処理し、その後直ちに、接触した細胞膜を透過性化する平等電界のパルスを加え、それによって細胞融合へと導くことが望ましいと考えられる。
【0021】
(不平等電界に比例した)大きな力を隣接する細胞に加え、細胞を圧縮して細胞間のより大きな表面積を生み出し、次いで直ちに、最も多くの接触細胞膜を透過性化する平等電界を1つの電極からもう一方の電極に加えることによって多数の融合産物を生み出すチャンバを提供することは非常に望ましいであろう。
【0022】
さらに、多数の雑種産物を生み出す十分な容積のチャンバを提供することが望ましい。
【0023】
さらに、以上のことを考慮すれば、最も多くの融合雑種細胞を提供する十分な平等電界及び不平等電界を生み出すチャンバを提供することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
このように、従来技術の上記の文献は、同軸チャンバを使用することがよく知られていることは示してはいるが、前述の従来技術は、望ましい特性の組合せを有するチャンバ幾何形状寸法、すなわち(1)過度の加熱なしに細胞を圧縮して大きな膜接触面積を提供する十分な力(非平等電界の強さ)を提供し、(2)細胞を透過性化する十分な平等電界の強さを提供し、(3)多数の雑種産物を生み出すチャンバ幾何形状寸法をどのように選択するのかを決定する方法を教示又は提案していない。上記の望ましい特性は、本発明の以下の説明から明らかになる他に類のない本発明の同軸細胞融合チャンバによって提供される。従来技術にない本発明の他の利点も明らかにする。
【0025】
重要な追加の米国特許及び公開米国特許出願には以下のものが含まれる。
第4561961号、1985年12月31日、Hofmann
第5001056号、1991年3月19日、Snyder他
第5589047号、1996年12月31日、Coster他
第5650305号、1997年7月22日、Hui他
第2003/0082163号、2003年5月1日、Shu
【0026】
追加の参照文献には以下のものが含まれる。





【0027】
本発明に関して後に説明するとおり、従来技術の知られているチャンバの従来技術の比r1/r2及びギャップ(gap)は、本発明のそれぞれの範囲の外にある。このような従来技術を以下に示す。
1.Dielectricophoresis of cell size liposomes、1993年12月13日、r1/r2=0.25、ギャップ=0.75mm
2.Hofmann、米国特許第4578168号、1986年3月25日、r1/r2=0.139、ギャップ=0.155mm
3.Hillard、米国特許第4695547号、1987年9月22日、r1/r=0.162、ギャップ=13mm
4.Matschke、米国特許第4699881号、1987年10月13日、r1/r2=0.98、ギャップ=0.4mm
5.Zimmerman、米国特許第4764473号、1988年8月16日、寸法記載なし
6.Mochizuki、米国特許第4804450号、1989年2月14日、r1/r2=0.962、ギャップ=2mm
7.Takahashi、米国特許第5007995号、1991年4月16日、r1/r2=0.263、ギャップ=2.8mm
8.Chang、米国特許第5304486号、1994年4月19日、r1/r2=記載なし、ギャップ=0.5から2.0mm
9.Shu、米国特許出願公開第2003/0082163号、2003年5月1日、r1/r2=記載なし、ギャップ=2から5mm
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、生物細胞の融合を実施するための装置を提供し、第1の電極半径(r1)及びある電極高さを有する内側電極と、第2の電極半径(r2)及び同じ電極高さを有する外側電極とを含む。内側電極と外側電極は同心である。内側電極と外側電極の間にはギャップが付与され、ギャップのサイズは、第2の電極半径と第1の電極半径の差である。電極高さ、ギャップ、第1の電極半径及び第2の電極半径によって細胞融合容積(cell fusion volume)が画定される。第1の電極半径、第2の電極半径及びギャップは、細胞融合容積内において細胞融合を提供するために生物細胞間の圧縮及び細胞膜間の透過性が最大化され、温度上昇が最小化されるように、第1の電極半径と第2の電極半径の選択可能な比(r1/r2)の所定の範囲に従って選択される。選択可能な比(r1/r2)の前記範囲は0.7から0.9であり、選択されたギャップは選択可能な比(r1/r2)の前記範囲によって限定され、前記選択可能な比の中から決定された比(r1/r2)は前記選択されたギャップに基づく。
【0029】
内側電極及び外側電極は共に、電気波形発生装置から延びるケーブル又は他の電気導体と接続するための手段を備えることを理解されたい。
【0030】
後により詳細に論じるが、比r1/r2が0.7未満のとき、電界の強さの変化百分率(Percent Change in Electric Field)は30%を超え、これは、望ましくない低い細胞透過性化及び望ましくない低い細胞融合をもたらすであろう。
【0031】
さらに、比r1/r2が0.9よりも大きいと、電界の強さは非常に均一になり、これは、一定の交流電圧において非常に小さい圧縮力をもたらすであろう。これは細胞融合の低減につながる。補償のため、交流電圧を増大させて一定の圧縮力を維持した場合、媒質の望ましくない加熱が起こり、これによって望ましくない温度上昇が生じ、細胞は死に至るであろう。
【0032】
本発明によれば、細胞圧縮と透過性化とを過度の加熱なしに同時に提供して融合した多数の雑種細胞を生み出すチャンバを提供する、同軸チャンバの幾何学的パラメータを選択することができる。
【0033】
チャンバのパラメータを決定するための十分な情報を提供している従来技術のチャンバは全て、本発明の好ましいパラメータよりもかなり小さいか、又はかなり大きい。それらは全て容積が非常に小さく、(数ミリリットル以上にスケールアップ可能な本発明とは対照的に)数百マイクロリットル未満でしかなく、(本発明の原理が教示する)圧縮力と透過性化の間のトレードオフも考えていない。
【0034】
本発明の他の態様によれば、生物細胞を融合させるための細胞融合チャンバの内側電極、外側電極及び内側電極と外側電極の間のギャップを選択するための方法が提供される。この方法は、
内側電極の第1の電極半径、外側電極の第2の電極半径及び内側電極と外側電極の間のギャップのうちの2つを決定するステップと、
第1の電極半径と第2の電極半径の比を、0.7から0.9の範囲の値に設定するステップと、
内側電極の第1の電極半径、外側電極の第2の電極半径及び内側電極と外側電極の間のギャップのうちの3つ目を、細胞融合チャンバ内において細胞融合を提供するために生物細胞間の圧縮及び細胞膜間の透過性が最大化され、温度上昇が最小化されるように計算するステップと
を含む。
【0035】
より具体的には、この方法によれば、2から10ミクロンの細胞半径では、第1の電極半径と第2の電極半径の比が0.8から0.85の範囲の値に設定され、ギャップが2から10ミリメートルの範囲にある。
【0036】
さらにスケーラビリティの概念を考慮すれば、本発明では、電極高さを単純に大きくし、比r1/r2及びギャップを一定に保つことによって、細胞融合チャンバの容積を増大させることができる。加えて、電極高さを単純に大きくし、r1/r2を一定に保つことで、媒質の温度は変化しない。
【0037】
本発明の以下の詳細な説明を検討した後には、本発明の理解は深まり、上記の目的及びそれ以外の目的はより明らかになる。以下の説明では添付図面を参照する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
細胞膜は電界の印加によって透過性化される。その式は、従来技術の図6に提示され説明されている。この透過性化は電界の強さに正比例する。
【0039】
同軸細胞融合チャンバは強さが不均一な電界を生み出し、強さが不均一な電界は前述のとおり不均一な透過性化を引き起こす。図15に示すように、より大きな透過性化を引き起こすより強い電界の領域32は内側電極20により近く、より小さな透過性化を引き起こすより弱い電界の領域30は外側電極18により近い。図6の同軸チャンバの電界の式を再び参照すると、比r1/r2が小さくなるにつれて電界の強さはより不均一になる。図15を再び参照すると、r1は内側電極20の半径であり、r2は外側電極18の半径である。
【0040】
本発明の目的上、1つの電極から同軸の第2の電極への電界の強さの変化百分率(変化百分率)を以下のように定義する。
変化百分率=100×[E(内側)−E(外側)]/E(内側)
=100×(1−r1/r2) ただし(r2>r1)
【0041】
上式で、r1は内側電極の半径、r2は外側電極の半径である。
【0042】
内側電極から外側電極への電界の強さの変化百分率は比r1/r2だけの関数であり、ギャップ(G)から独立している。
【0043】
電極ギャップは以下のように定義される。
ギャップ=r2−r1
【0044】
同軸チャンバの寸法は、r1/r2、ギャップ及び電極高さによって、又はr1、r2及び電極高さによって一義的に定義される。電界は、内側電極のところで最も強く、外側電極のところで最も弱い。ギャップが小さくなるにつれ、比r1/r2は「1」に近づき、内側電極から外側電極への電界の変化はより均一になる(又はより不均一でなくなる)。やや異なる言い方をすると、本明細書で定義された「電界の強さの変化百分率」は電界の強さの不均一性の尺度である。
【0045】
これに関連する問題は、ギャップの中の細胞を最も多く透過性化するためには内側電極から外側電極にかけて電界がどのくらい不均一であればよいかということである。この問題に対する答えは図7の研究の中に見いだすことができ、siRNAトランスフェクションデータの検討は一例を供する。トランスフェクションは細胞融合を伴わないが、トランスフェクションも細胞融合と同様に細胞膜の透過性化に依存している。より具体的には、siRNAトランスフェクションは細胞膜だけを通して起こり、核の中へは起こらないはずである。したがって、このトランスフェクションデータは、細胞融合において必要な膜の透過性化を表わしている。
【0046】
図7は、生物細胞に送達されるsiRNA(低分子干渉(small interfering)RNA)を使用した遺伝子サイレンシングに関し、ネイティブ(native)遺伝子の発現百分率の低減は、細胞融合の必須のステップでもある細胞膜透過性の効率に依存する。これは細胞透過性化の1つのモデルである。siRNAが機能すると、標的RNAの破壊を引き起こし、それによって遺伝子発現の効果を抑制する。siRNAは、より多くのsiRNAが送達されたときにネイティブ遺伝子発現の低減を引き起こす。siRNAの効果は、電界を使用した透過性化(電気穿孔及び電気融合)が物質を送達する場所である細胞原形質で起こるので、siRNAは細胞透過性化の良いモデルである。対照的に、プラスミドを使用した遺伝子の送達(潜在的な別のモデル)は核へのDNAの移動を必要とし、これは、透過性化の程度に直接に関係しない2次的効果である。電気穿孔に対して使用される電界ベースの透過性化は電気融合に対して使用されるそれと同じであることに留意することは重要である。
【0047】
例えば図7では、電界の強さが1500V/cmから2000V/cmへ25%変化(増大)している(100×(2000−1500)/2000)。さらに、同じ間隔で、発現百分率が約42%(95%−53%)変化(低下)している(これは細胞膜透過性化の42%の増大を暗に示している)。この例は特定の細胞タイプ及び物質の特性だが、それでもそれは非常に劇的である。外挿によれば、電界の強さの約10%の増大は、ネイティブ遺伝子発現の低減によって示される送達効率の約15%の増大(これは細胞膜透過性化の増大を暗に示している)をもたらす。
【0048】
上記の例から、不平等電界の強さの不平等性を最小限に抑えて、細胞融合のための完全細胞集団の中で望ましい細胞膜透過性を達成するためには、パラメータ(r1/r2及びギャップ)を選択する際に非常な注意を払わなければならないと結論することができることが明らかである。
【0049】
透過性化と対比して、(先に論じた細胞整列及び圧縮において重要な)細胞に加わる誘電泳動力は、図8に提示され説明された式によって与えられる。このPohl and Jonesの式は重要な4つの元を有する。この力は以下のものに比例する。
1.細胞半径の3乗
2.細胞の外側の媒質の誘電率
3.Clausius−Mossotti関数であるK
4.電界の2乗の∇
【0050】
細胞半径の3乗及び細胞の外側の媒質の誘電率ついては追加の説明を要しない。
【0051】
Clausius−Mossotti関数は図9A及び図9Bに示されている。
この関数は、媒質の誘電率及び細胞の内と外の導電率の関数である。提示された例は、外部導電率10マイクロS/cm(実線)及び外部導電率100マイクロS/cm(破線)に対するものである。Clausius−Mossotti関数は周波数と共に変化する。直流及びより低い交流周波数でこの関数は負であり、このことは、細胞に加わる力が外側電極の方を向いていることを意味する。0.2から2MHzの周波数範囲でこの関数は正であり、細胞に加わる力は内側電極の方を向いている。これは好ましい動作モードである。Kは、外部媒質導電率100マイクロS/cm、細胞半径4マイクロメートル超で約0.95である。以上のことを考慮すれば、4ミクロン超の細胞半径及び導電率100マイクロS/cm超の外部媒質に関して、Clausius−Mossotti関数は同軸チャンバの幾何形状の因子ではない。
【0052】
電界の関数∇Eは、同軸チャンバの幾何形状だけの関数である。この電界関数は電界の2乗の微分(1次導関数)を含意している。電界が均一な場合には電界関数はゼロであり、細胞に力は加わらない。
【0053】
電界の強さの場合と同様に、本発明はさらに、力の変化百分率を電界関数の変化百分率と定義する。この式は以下のとおりである。
∇Eの変化百分率=[1−(r1/r2)]×100
【0054】
上記の電界の強さの変化百分率と同様に、電界関数の変化百分率も比r1/r2だけに関係する。
【0055】
本明細書で定義された電界の変化百分率及び本明細書で定義された電界関数の変化百分率から、比r1/r2が小さいほど両方の変化百分率は小さいことが明らかである。さらに、電界関数(∇E)は、比r1/r2が1に近づくと∇Eの絶対値はゼロに近づくという第2の特性を有する。
【0056】
要約すると、ここには2つの対立する考慮事項がある。
1.比r1/r2が1に近づくと、電界の強さはより均一になり、このことは細胞透過性化にとって望ましい。
2.比r1/r2が0に近づくと、細胞にかかる力が増大し、このことは細胞整列及び圧縮にとって望ましい。
【0057】
本発明の原理によれば、細胞透過性化及び細胞整列/圧縮用の細胞融合チャンバの幾何学的寸法を選択するための最良の妥協点である比r1/r2を容易に選択することができる。
【0058】
適当な圧縮力を与える同軸電極パラメータ(r1/r2及びギャップ)を選択するためには、適当な圧縮力の大きさを決定する必要がある。圧縮力の大きさを決定するため、Fdep式(図8)を2セットの経験的データと共に使用した。結果を下表Iに示す。
【表1】

【0059】
これらのプロトコルは共に、使用した細胞及び媒質に関して最も多数の細胞融合雑種を与えた。このK562自家融合実験は、Cyto Pulse,Inc.社(米メリーランド州Hanover)で実施された。図10を参照されたい。A549自家融合実験は、Arizona Cancer Center(AZCC)で実施され、2002年4月にthe American Association of Cancer Researchers(AACR)でポスターによって発表された。AZCC/AACRデータは、整列のために低交流電圧を、圧縮のために高交流電圧を使用した。上表には圧縮データだけを含めた。両方の実験で、Cyto Pulse PA−4000/PA−101細胞融合システム及び6mlチャンバ(r1/r2=0.83)が使用された。要約すると、これらの細胞に対する圧縮力は0.1から1.0ナノダイン範囲であった。
【0060】
同軸電極の比r1/r2及びギャップの最適な寸法は、下表IIに記載されたパラメータ及びそれらのそれぞれの特性によって決定される。
【表2】

【0061】
上記の条件に関して最適な寸法値を見つけるため、比r1/r2及びギャップがパラメータとして使用され、出発点として1ナノダインが使用される。比r1/r2が1に近づくと、必要な力を生み出すのに必要な交流電圧は非常に大きくなる。長い秒数にわたって印加された高圧交流波は、電極間の(in the electrode)媒質を非常に急速に加熱し、細胞を破壊する。
【0062】
2セットの例が計算された。1セットの例は、図11A、11B及び11Cに示すように0.1ナノダインの力のために計算された。第2のセットの例は、図12A、12B及び12Cに示すように1.0ナノダインの力にために計算された。両セットの例とも、選択可能な0.7から0.9の比r1/r2及び2から10mmのギャップが提示される。
【0063】
0.1ナノダインに対して、図11Aは細胞半径2ミクロンに対応する。図11Bは細胞半径6ミクロンに対応する。図11Cは細胞半径10ミクロンに対応する。
【0064】
1.0ナノダインに対して、図12Aは細胞半径2ミクロンに対応する。図12Bは細胞半径6ミクロンに対応する。図12Cは細胞半径10ミクロンに対応する。
【0065】
図12Aに示すように、細胞半径2ミクロンでは、必要な交流電圧が非常に大きく、そのため現実的な全てのギャップ値について加熱が40℃を超えた。これは、チャンバを冷却することでいくぶん補償することができる。図12B及び12Cに示すように、半径6ミクロン及び10ミクロンでもかなりの加熱が依然として起こる。過度の加熱の一部は外部冷却で補償することができる。0.9を超える比r1/r2で動作させると媒質の温度の増大が相当に大きくなり、10ミクロン以下の細胞半径に対してこれは望ましい動作範囲とはいえない。
【0066】
図11A及び11Bでは、媒質加熱が相対的に小さく、加熱を低減させるためのチャンバの冷却は任意である。
【0067】
10ミクロンを超える細胞半径を有する粒子又は生物細胞の場合、より低い交流電圧で済み、非常に小さな比r1/r2が可能である。
【0068】
大部分の腫瘍及び免疫系細胞の細胞半径を含む中間範囲では慎重な検討がなされなければならない。一般に、0.8から0.85の比r1/r2を使用し、ギャップを2から10mmの範囲とすべきである。Cyto Pulse 6ml実験チャンバの1つは比r1/r2 0.83及びギャップ4mmを有する。ハイブリドーマの産生及び癌−免疫細胞治療雑種の産生のためにさまざまな細胞タイプを用いてこの電極を使用したところ、良好な効率が得られた。
【0069】
本発明の一実施形態は、図13A及び13Bに示す同軸チャンバである。このチャンバは、導電材料の四角いブロック及び非導電材料の四角いブロックから構築することができる。導電材料の中心電極及び同じ高さの非導電性材料。
【0070】
図13Bを参照すると、互いに積み重ねられた3つの層が本質的に示されている。最下層は非導電性ベース部材24を含む。中間層は、内側電極20、融合チャンバ14及び内側電極20を含む。最上層は、非導電性外側電極カバー部材12、アクセスチャネル22及び非導電性内側電極カバー部材16を含む。
【0071】
最下層と中間層は、一体として、本発明の装置の第1の実施形態を示すことに留意されたい。より具体的には、本発明の装置の第1の実施形態は、生物細胞の融合を実施するために提供されたものであり、非導電性ベース部材24を含む。導電性外側電極18はベース部材24上に支持されており、外側電極18は、外側電極半径(r2)を有し電極高さ19を有する凹形の外側電極表面28を含む。導電性内側電極20はベース部材24上に支持されており、内側電極20は、内側電極半径(r1)を有し前記電極高さ19を有する凸形の内側電極表面26を含む。外側電極表面28と内側電極表面26は、融合チャンバ14を画定するギャップによって互いから離隔されている。
【0072】
先に論じたとおり、第1の電極半径(r1)、第2の電極半径(r2)及びギャップは、融合チャンバ14内において細胞融合を提供するために生物細胞10間の圧縮及び細胞膜間の透過性が最大化され、温度上昇が最小化されるように、第1の電極半径と第2の電極半径の選択可能な比(r1/r2)の所定の範囲に従って選択され、選択可能な比(r1/r2)の前記範囲は0.7から0.9であり、選択されたギャップは選択可能な比(r1/r2)の前記範囲によって限定され、前記選択可能な比の中から決定された比(r1/r2)は選択されたギャップに基づく。
【0073】
やはり図13B及び図13Aに示されている本発明の第2の実施形態によれば、中間層に最上層が固定される。この点で、本発明の第2の実施形態は図13Bの最下層、中間層及び最上層を全て含む。
【0074】
より具体的には、本発明の第2の実施形態に関して、非導電性外側電極カバー部材12が外側電極18によって支持される。非導電性内側電極カバー部材16が内側電極20によって支持され、外側電極カバー部材12と内側電極カバー部材16がアクセスチャネル22を画定し、アクセスチャネル22が融合チャンバ14と連絡している。
【0075】
非導電性外側電極カバー部材12は、外側カバー部材半径を有する凹形の外側カバー部材表面29を含むことが好ましい。同様に、非導電性内側電極カバー部材16は、内側カバー部材半径を有する凸形の内側カバー部材表面31を含むことが好ましい。外側カバー部材半径が外側電極半径に等しく、内側カバー部材半径が内側電極半径に等しく、それによってアクセスチャネル22の位置が融合チャンバ14の位置と合っていることが好ましい。
【0076】
ベースプレート24に内側電極20を取付け、内側電極に内側電極カバー部材16を取り付けるのには、非導電性ナイロンねじを使用することができる。ベースプレート24に外側電極18を取付け、外側電極18に外側電極カバー部材12を取り付けるのには、導電性金属ねじを使用することができる。
【0077】
外側電極18及び内側電極20はステンレス鋼から製作することができる。
【0078】
同軸チャンバの第3の実施形態を図14に示す。このチャンバは全体に、垂直に据えつけられた同軸チャンバの半分である。整列交流電圧が印加されたとき、細胞の移動は重力とは逆になる。これは、波形が印加されている間、細胞がチャンバの底に沈むことを防ぐ。このチャンバは開いていてもよく、又はチャンバを満たし空にするための無菌ポート及びフィルタ逃しポート(filter relief ports)で閉じられていてもよい。
【0079】
より具体的には、本発明の装置の第3の実施形態は非導電性支持部材40を含む。導電性外側電極43は支持部材40によって水平方向に支持される。外側電極43は、外側電極半径(r2)を有しある電極幅を有する凹形の導電性外側電極表面42を含む。導電性内側電極45は、支持部材40によって、外側電極43の上方に水平方向に支持される。内側電極45は、内側電極半径(r1)を有し前記電極幅を有する凸形の導電性内側電極表面44を含む。外側電極43及び内側電極45の端には、垂直に向けられた一対の非導電性端壁が位置する。外側電極表面42と内側電極表面44はギャップによって互いに離隔されている。ギャップと垂直に向けられた端壁とが融合チャンバ46を画定する。融合チャンバ46内の細胞融合媒質の液面は高さ56にある。
【0080】
外側電極43が、導電性外側電極表面42を支持する非導電性外側電極支持部48を含み、内側電極45が、導電性内側電極表面44を支持する非導電性内側電極支持部50を含むことが好ましい。導電性電極表面42及び44は、それぞれの非導電性支持部48及び50上にめっきされた金膜とすることができる。
【0081】
さらに、この装置は、支持部材40によって支持された入/出ポート52を含むことができ、入/出ポート52は融合チャンバ46と連絡している。
【0082】
さらに、この装置は、支持部材40によって支持されたフィルタ圧力逃し弁54を含むことができ、フィルタ圧力逃し弁54は融合チャンバ46と連絡している。
【0083】
非導電性支持部材40、非導電性外側電極支持部48、非導電性内側電極支持部50及び垂直に向けられた非導電性端壁は、一体成形されたプラスチックユニットとして形成されることが好ましい。
【0084】
比r1/r2及びギャップの値は上記の方法によって決定される。チャンバは開いていても又は閉じられていてもよい。融合させる細胞は多数の低導電率媒質に入れられ、次いで2つの導電性電極材料間のギャップに入れられる。次いで、交流波形発生装置及びパルス発生装置が導電性中心(内側)電極及び導電性外側電極に接続される。
【0085】
電界発生のために、Cyto Pulse PA−4000/PA−101コンピュータ制御波形発生装置などの電圧波形発生装置が使用される。整列、圧縮、融合及び保持波形が印加された後、電極の非導電性容積の中に細胞培養基が加えられる。この培養基は、融合細胞が回復している間、細胞の生存可能性を増大させる。
【0086】
この装置は、大容積研究、臨床及び商業応用を有することができる。この装置は無菌パッケージに入れて包装することができる。この装置はさらに、1回だけ使用する使い捨てユニットとして製造することができる。全ての実施形態で、電極高さを大きくすることによって容積を増大させることができる。温度の上昇は電極高さと無関係である。
【0087】
本発明の最も実用的な好ましい実施形態であると現時点で考えられるもの特徴及び詳細を挙げて、本発明を図示し、以上に詳細に説明してきたが、サイズ、材料、形状、形態、機能の変更並びに動作、組立て及び使用方法の変更を含む、しかし限定はされない多くの変更を、本明細書に記載された原理及び発想から逸脱することなく実施できることは当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】非対称電極によって生み出された不平等電界の影響下での生物細胞内の従来技術の双極子形成を示す図である。
【図2】非対称電極によって生み出された不平等電界内の生物細胞の従来技術の移動経路並びに生物細胞のパールチェーン整列及び形成を示す図である。
【図3】比較的に小さな振幅の長時間融合前電界波形を印加する前の独立した生物細胞10を示す図である。
【図4】比較的に小さな振幅の長時間融合前電界波形を印加している最中の、わずかに接触しパールチェーン状に整列した生物細胞10を示す図である。
【図5】図4で印加された比較的に小さい振幅の長時間融合前電界波形の印加後に比較的に大きな振幅の短時間融合前電界波形を印加している最中の、緊密に接触し圧縮された生物細胞10を示す図である。
【図6】電界の印加によって誘導される膜内外電圧(transmembrane voltage:TMV)の式を示す図である。同軸チャンバの電界の式も示されている。透過性化の開始の臨界点はTMV約0.5から1.5ボルトにある。細胞融合のための望ましい電界の強さは、透過性化の開始に必要な電界の強さよりも大きい。
【図7】生物細胞中に送達中のsiRNA(低分子干渉RNA)を使用した遺伝子サイレンシングに関する図であり、遺伝子の発現百分率の低減は細胞透過性化の効率に依存し、細胞透過性化は細胞融合の必須のステップでもある。
【図8】不平等電界によって中性の細胞に加えられる誘電泳動力の式を示す図であり、同軸チャンバの不平等電界の強さの式も示されている。
【図9A】細胞直径1ミクロンに対するClausius−Mossotti関数を示す図である。
【図9B】細胞直径4ミクロンに対するClausius−Mossotti関数を示す図である。
【図10】K562細胞の自家融合百分率を、印加された交流電圧及び交流電圧継続時間に対して示した図である。
【図11A】生物細胞間の圧縮力0.1ナノダインについて、電界変化百分率及び温度上昇を比r1/r2の関数として示す図であり、より詳細には細胞半径2ミクロンに対応する。
【図11B】生物細胞間の圧縮力0.1ナノダインについて、電界変化百分率及び温度上昇を比r1/r2の関数として示す図であり、より詳細には細胞半径6ミクロンに対応する。
【図11C】生物細胞間の圧縮力0.1ナノダインについて、電界変化百分率及び温度上昇を比r1/r2の関数として示す図であり、より詳細には細胞半径10ミクロンに対応する。
【図12A】生物細胞間の圧縮力1.0ナノダインについて、電界変化百分率及び温度上昇を比r1/r2の関数として示す図であり、より詳細には細胞半径2ミクロンに対応する。
【図12B】生物細胞間の圧縮力1.0ナノダインについて、電界変化百分率及び温度上昇を比r1/r2の関数として示す図であり、より詳細には細胞半径6ミクロンに対応する。
【図12C】生物細胞間の圧縮力1.0ナノダインについて、電界変化百分率及び温度上昇を比r1/r2の関数として示す図であり、より詳細には細胞半径10ミクロンに対応する。
【図13A】水平動作方向を有する同軸電極設計の第2の実施形態を示す図である。
【図13B】水平動作方向を有する同軸電極設計の第2の実施形態を示す図であり、この図の一部は、先に説明した水平動作方向を有する同軸電極設計の第1の実施形態を示す。
【図14】垂直動作方向を有する同軸電極設計の第3の実施形態を示す図である。
【図15】内側電極に近いより強い電界の領域と外側電極に近いより弱い電界の領域を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物細胞の融合を実施するための装置であって、
第1の電極半径(r1)及びある電極高さを有する内側電極と、
第2の電極半径(r2)及び前記電極高さを有する外側電極と
を含み、前記内側電極と前記外側電極とが同心であり、
さらに、前記内側電極と前記外側電極の間に、
そのサイズが、前記第2の電極半径と前記第1の電極半径の差であるギャップを有し、
前記電極高さ、前記ギャップ、前記第1の電極半径(r1)及び前記第2の電極半径(r2)によって細胞融合容積が画定され、
前記第1の電極半径、前記第2の電極半径及び前記ギャップが、前記細胞融合容積内において細胞融合を提供するために生物細胞間の圧縮及び細胞膜間の透過性が最大化され、温度上昇が最小化されるように、前記第1の電極半径と前記第2の電極半径の選択可能な比(r1/r2)の所定の範囲に従って選択され、
選択可能な比の前記範囲が0.7から0.9であり、選択されたギャップが選択可能な比の前記範囲によって限定され、前記選択可能な比の中から決定された比が前記選択されたギャップに基づく、装置。
【請求項2】
前記細胞融合容積が1ミリリットル超の容積を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の電極半径と前記第2の電極半径の前記比が0.75から0.9の範囲にある、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の電極半径と前記第2の電極半径の前記比が0.8から0.85の範囲にあり、
前記ギャップが2から10ミリメートルの範囲にある、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の電極半径と前記第2の電極半径の前記比が0.83であり、
前記ギャップが4ミリメートルである、
請求項 に記載の装置。
【請求項6】
生物細胞を融合させるための細胞融合チャンバの内側電極、外側電極及び内側電極と外側電極の間のギャップを選択するための方法であって、
内側電極の第1の電極半径、外側電極の第2の電極半径及び内側電極と外側電極の間のギャップのうちの2つを決定するステップと、
第1の電極半径と第2の電極半径の比(r1/r2)を、0.7から0.9の範囲の値に設定するステップと、
内側電極の第1の電極半径、外側電極の第2の電極半径及び内側電極と外側電極の間のギャップのうちの3つ目を、細胞融合チャンバ内において細胞融合を提供するために生物細胞間の圧縮及び細胞膜間の透過性が最大化され、温度上昇が最小化されるように、前記比の設定値に基づいて計算するステップと
を含む方法。
【請求項7】
第1の電極半径と第2の電極半径の比が0.8から0.85の範囲の値に設定され、
ギャップが2から10ミリメートルの範囲にある、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
生物細胞の融合を実施するための装置であって、
非導電性ベース部材と、
前記ベース部材上に支持された導電性外側電極であって、外側電極半径(r2)を有しある電極高さを有する凹形(concave)の外側電極表面を含む導電性外側電極と、
前記ベース部材上に支持された導電性内側電極であって、内側電極半径(r1)を有し前記電極高さを有する凸形(convex)の内側電極表面を含む導電性内側電極と
を含み、前記外側電極表面と前記内側電極表面が、融合チャンバを画定するギャップによって互いから離隔されており、
さらに、
前記外側電極によって支持された非導電性外側電極カバー部材と、
前記内側電極によって支持された非導電性内側電極カバー部材と
を含み、前記外側電極カバー部材と前記内側電極カバー部材がアクセスチャネルを画定し、前記アクセスチャネルが前記融合チャンバと連絡している
装置。
【請求項9】
前記非導電性外側電極カバー部材が、外側カバー部材半径を有する凹形の外側カバー部材表面を含み、
前記非導電性内側電極カバー部材が、内側カバー部材半径を有する凸形の内側カバー部材表面を含み、
前記外側カバー部材半径が前記外側電極半径に等しく、前記内側カバー部材半径が前記内側電極半径に等しく、それによって前記アクセスチャネルの位置が前記融合チャンバの位置と合っている
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
生物細胞の融合を実施するための装置であって、
非導電性支持部材と、
前記支持部材によって水平方向に支持された導電性外側電極であって、外側電極半径(r2)を有しある電極幅を有する凹形の導電性外側電極表面を含む導電性外側電極と、
前記支持部材によって前記外側電極の上方に水平方向に支持された導電性内側電極であって、内側電極半径(r1)を有し前記電極幅を有する凸形の導電性内側電極表面を含む導電性内側電極と、
前記外側電極及び前記内側電極の端に位置する垂直に向けられた非導電性端壁と
を含み、
前記外側電極表面と前記内側電極表面がギャップによって互いから離隔されており、前記ギャップと前記垂直に向けられた端壁が融合チャンバを画定する
装置。
【請求項11】
前記外側電極が、前記導電性外側電極表面を支持する非導電性外側電極支持部を含み、
前記内側電極が、前記導電性内側電極表面を支持する非導電性内側電極支持部を含む、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記非導電性支持部材、前記非導電性外側電極支持部、前記非導電性内側電極支持部及び前記非導電性の垂直に向けられた端壁が、一体成形されたユニットとして形成された、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記支持部材によって支持された入/出ポートをさらに含み、前記入/出ポートが前記融合チャンバと連絡している、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記支持部材によって支持されたフィルタ圧力逃し弁をさらに含み、前記フィルタ圧力逃し弁が前記融合チャンバと連絡している、請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−520994(P2007−520994A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513115(P2005−513115)
【出願日】平成15年12月1日(2003.12.1)
【国際出願番号】PCT/US2003/035982
【国際公開番号】WO2005/066342
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(505345129)
【Fターム(参考)】