説明

組み立て式多面体ドーム形状の食品焼成窯

【課題】組み立て式で簡単に構築でき、高強度で安定したドーム形状であり、ずれにくい接続構造であり、各構成部品は正確に製造、量産できるような形状をしており、薪の燃焼熱を効率よく食品焼成窯に蓄熱できる、組み立て式の多面体ドーム形状の食品焼成窯を提供する。
【解決手段】組み立て式多面体ドーム形状の食品焼成窯であって、構成する各部品は型枠により不定形耐火物の素材から複数生産されることを特徴とし、断熱床板面上には炉床部品と本実の接続構造を持つ多面体ドーム壁部品とを、窯の正面部には窯口部品、窯口上方ドーム壁部品、窯口左ドーム壁部品、窯口右ドーム壁部品とを、載置、隣接、挿入、嵌入させることにより組み立て式で簡単に構築可能と成したことを特徴とし、燃焼支援装置を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薪を燃料として窯内を加熱・蓄熱させ、その熱を利用しピザ等の焼成食品を焼成する装置のうち、組み立て式で誰もが構築できうるドーム形状の食品焼成窯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、石窯・ピザ窯等食品焼成窯は窯内で薪を燃焼させて蓄熱させ、その熱を利用してパン・ピザの他あらゆる食材を焼成する装置として利用されてきている。この食品焼成窯の構造には主として燃焼室と焼成室が同一のものと、別々の物と、がある。このうち前記、燃焼室と焼成室が同一の食品焼成窯の形状には主として、直方体形状の物と、トンネル形状の物と、ドーム形状の物と、がある。
【0003】
従来から、ドーム形状の食品焼成窯は熟練の職人により耐火煉瓦を積み上げて現場製作されているか、耐火コンクリート等により現場で一体製作されているか、あるいは工場で一式製作され提供されている。
【0004】
また、ドーム形状の食品焼成窯は、提供する業者が少ないことと、ピザ専門の業務用のものが多く専門職により一品ずつ製作され高額な費用がかかることとから、使用者が自身で製作する場合がある。
【0005】
また、主として直方体形状の物、トンネル形状の物においては、組み立て式で構築できる食品焼成窯が提案されている。(たとえば、特許文献1を参照)これは、従来の耐火煉瓦や切出した自然石で構築される石窯は作業に熟練と時間がかかり、高価格化するという問題点を改善するため、安価で構築の容易な石窯を提案したものである。この石窯は、直方体形状の4枚の床プレートを前後方向に接続することで床部が構築され、同床部の左右端上面には直方体形状の左右側壁プレートが配置され、同左右側壁プレート間にはアーチ状の3枚の天井プレートが架設され、同天井プレートを前後方向に隣接することで天井部が構築され、後方開口部には奥壁プレートが嵌合された状態で後方壁が封塞されて成るものである。
【0006】
さらに、従来の薪用食品焼成窯において、薪を燃焼させて窯本体を使用可能なまでに蓄熱させるには十分に時間をかけて温度が上がるのを待つ必要がある。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3111932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熟練の職人により製作されているドーム形状の食品焼成窯は、技術と時間と高額な費用とがかかることから、使用者が自身で製作する場合がある。自身で製作することにより製作労力の費用を軽減できることが期待できる。しかしながら、これは技術を伴うことで誰もが出来ることではない。
【0009】
また、特許文献1に開示されているような石窯は組み立てて構築できるものであるが、この石窯の構造は直方体形状をしており、組み立て式であることも考慮すると、水平方向からの外力に対しては強度的にやや劣ると考えられる。
【0010】
さらに、従来の組積させたり隣接させたりして形成させる組み立て式の石窯においては、各接続部は隣接させるだけの構成になっており、前記各接続部はずれてしまう危険性がある。
【0011】
また、ドーム形状は水平方向からの外力や鉛直方向からの外力などあらゆる方向からの外力に対して、圧縮力の大きな素材で構成されていれば、その力学的性質上強度があり、安定していることは明らかである。また、ドーム形状は、強度的なメリット以外にも、均質的な輻射熱が得られる、天井付近に熱気を保持しやすい、などというメリットがあることから、ドーム形状の食品焼成窯を組み立て式で提供されることが期待されている。しかしながら、ドーム形状の食品焼成窯を組み立て式で構築するために複数に分割された部品、あるいは前記部品を製造・成型するための型枠、を正確に製造することは、ドーム形状が球体面で構成されているが故に、困難であった。
【0012】
さらに、従来の薪用食品焼成窯においては、薪を燃焼させて窯本体を温めるための予熱時間や使用中に窯の温度が冷めてきたときに追い焚きしたりする時間が長くかかり、効率よく窯内で薪を燃焼させ早く窯本体に蓄熱させるということについて積極的に解決されてきておらず、熱の温度コントロールをするのが難しいという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、複数に分割された部品から構成される組み立て式で、扱いやすく、誰もが構築できうる食品焼成窯であることを第一の課題とし、構造的に高強度で安定したドーム形状であり、かつ、構成部品はずれにくい接続構造になっていることを第二の課題とする。また、各構成部品は、低コストで正確に製造されることができるような形状をしていることを第三の課題とする。さらに、薪で燃焼・加熱する時には燃焼熱を効率よく食品焼成窯に蓄熱できるような機構があることを第四の課題とする。本発明は、上述のような課題を解決した組み立て式のドーム形状の食品焼成窯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、組み立て式の多面体ドーム形状の食品焼成窯であって、(イ)〜(ト)の各構成部品を備え、(A)〜(K)の形状の特徴を有する。
(イ) 食品焼成窯を形成しようとしている断熱床板1面上に、複数の炉床部品2が隣接 載置され、6角以上12角以下からなる正多角形状の床板を形成する炉床3(図1 )と、
(ロ) 炉床3の周囲に、かつ、断熱床板1面上に、窯口を配置すべき正面部6を除いて 、複数のドーム壁部品4が隣接載置され、かつ、形成しようとしているドームの頂 点部に開口が形成される場合は、天蓋部品10が嵌入されて、形成される、前記正 面部6が開放された、ドーム形状の多面体ドーム5(図3)と、
(ハ) 多面体ドーム5の開放された正面部6の上部には、左右のドーム壁部品4に接し て挿入される窯口上方ドーム壁部品7(図3)と、
(ニ) 多面体ドーム5の解放された正面部6の下部左側には、窯口上方ドーム壁部品7 を支持する形で、かつ、ドーム壁部品4に接するように挿入される窯口左ドーム壁 部品8(図3)と、
(ホ) 多面体ドーム5の解放された正面部6の下部右側には、窯口上方ドーム壁部品7 を支持する形で、かつ、ドーム壁部品4に接するように挿入される窯口右ドーム壁 部品9(図3)と、
(ヘ) さらに、窯口上方ドーム壁部品7、窯口左ドーム壁部品8、窯口右ドーム壁部品 9によってできた開口部16(図4)には、この開口部16へ嵌入される窯口部品 11と、
(ト) 窯口部品11の上面の排煙孔17に載置されて接続される煙突元部品15と、
を備えている。(図4)
(A)炉床部品2は、炉床3の中心を通る位置で2個以上12個以下に直線で分割された 板状の部品(図1)である。
(B)正面部6(図1)とは、窯口部品11と、および窯口部品11と接する周囲のドー ム壁部品が配置される部分、すなわち窯口上方ドーム壁部品7、窯口左ドーム壁部 品8、窯口右ドーム壁部品9との部分である。
(C)多面体ドーム5(図1、図3)は、炉床3で形成される正多角形の一辺にて、断熱 床板1面上から形成しようとしているドーム頂点に向けて、ドーム形状を形成すべ く、上側に弧を描くように前記一辺と平行に2か所以上4か所以下で折れた平面で 構成される多面体ドーム壁が、正面部6を除いて、前記正多角形の一辺ごとに同様 に形成された多面体のドーム形状である。
(D)ドーム壁部品4(図1)は、多面体ドーム5に正面部6も含めた多面体ドームが、 炉床3で形成される正多角形の中心を通る鉛直面の位置で、2個以上12個以下に 分割されたものである。
(E)前記ドーム壁部品4の先端の分割角度が鋭角と成る場合(図1の66)にあっては 、ドーム壁部品4及び窯口上方ドーム壁部品7は、形成すべきドームの頂点に接す る上端が欠けやすいことを防止するため、前記上端の一部をあらかじめ欠落させた 形状とすることができ、前記分割角度が90度以上の場合(図6の66b)は、上 端の欠け防止の配慮が不要となり、上端をあらかじめ欠いておく必要もなくなり、 (図1)のドーム壁部品4、窯口上方ドーム壁部品7は(図6)に示すようにそれ ぞれドーム壁部品4b、窯口上方ドーム壁部品7bに、置き換えることができ、さ らには天蓋部品10(図3)も不要とすることができる。
(F)天蓋部品10(図3)は、ドーム壁部品4及び窯口上方ドーム壁部品7によって形 成されてできるドーム頂点部の開口部と相似形をした部品である。
(G)窯口部品11(図1)は、正面からドーム窯内に貫通する薪・焼成食品等の出し入 れのための窯口用開口18を有し、この窯口用開口18内の天井面には左右に横長 の排煙孔17を有した部品である。
(H)窯口上方ドーム壁部品7は、正面部6にあって窯口部品11の上面より上方の開放 された空間を、ドーム形状を形成すべく多面体ドーム5と同様の多面体ドーム壁で 、閉塞する一体化された部品(図1)である。
(I)窯口左ドーム壁部品8は、正面部6にあって窯口部品11の左側方に開放された空 間を、ドーム形状を形成すべく多面体ドーム5と同様の多面体ドーム壁で、閉塞す る部品であり、かつ窯口上方ドーム壁部品7を支持する部品(図1)である。
(J)窯口右ドーム壁部品9は、正面部6にあって窯口部品11の右側方に開放された空 間を、ドーム形状を形成すべく多面体ドーム5と同様の多面体ドーム壁で、閉塞す る部品であり、かつ窯口上方ドーム壁部品7を支持する部品(図1)である。
(K)煙突元部品15は、前記排煙孔17を覆う、下部が解放された箱型の金属製の部品 であり、さらに、前記煙突元部品15の上面に設けられた円形の穴には筒状の煙突 が溶接接合され、窯口部品11の排煙孔17から出てくる排煙を収集し前記筒状の 煙突に誘導する。また、前記煙突元部品15は、前記筒状の煙突に煙突19を嵌合 させて組み立て式で延長接続できる部品である。(図4)
本発明の食品焼成窯は断熱床板1面上に前記各部品を、載置させたり、隣接させたり、挿入させたり、嵌入させたり、することにより組み立て式で構築可能と成したことを特徴とする組み立て式多面体ドーム形状の食品焼成窯である。
【0015】
また、本発明の食品焼成窯は、ドーム壁部品4と、窯口上方ドーム壁部品7と、窯口左ドーム壁部品8と、窯口右ドーム壁部品9との、各ドーム壁部品どうしが隣接する接続部にあっては、(図2)に示すように前記各ドーム壁部品の一方側面に凹の雌実12が形成され、他方側面には凸の雄実13が形成され、この雌実12と雄実13とが互いに対と成り噛み合う接続構造である本実14が形成されており、この本実14により前記各ドーム壁部品どうしが、ずれにくい接続構造になっていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の食品焼成窯は、炉床部品2と、ドーム壁部品4と、窯口上方ドーム壁部品7と、窯口左ドーム壁部品8と、窯口右ドーム壁部品9と、窯口部品11と、天蓋部品10と、の各構成部品は不定形耐火物を素材として製造されていることを特徴とする
【0017】
さらに、本発明の食品焼成窯は、平面と直線で構成される、炉床部品2、ドーム壁部品4、窯口上方ドーム壁部品7、窯口左ドーム壁部品8、窯口右ドーム壁部品9、窯口部品11、天蓋部品10は、たとえば(図16)はドーム壁部品4の型枠であるが、このような平面板の素材から形成された型枠で、複数生産されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の食品焼成窯は、窯内の薪の燃焼を支援する装置(図14)として、複数のドーム壁部品4のうち、いずれか一つのドーム壁部品4の下から二分の一以内の高さの位置に送風用の貫通した送風口21を形成させ、この送風口21の外側に送風路を確保するために下側と内側に連通して開放された凹みのある形状の送風路確保部品22を寄り添わせ、この送風路確保部品22の下面に送風用開口23が形成され、送風用開口23に続くように断熱床板部品42に貫通する断熱床貫通孔24を形成させ、この断熱床貫通孔24から窯内部の送風口21へと続く送風路25が形成され、さらに、断熱床貫通孔24の下部にはスライドすることによって開閉し、送風量を調整する機能も兼ねるダンパー26が配置され、さらにこのダンパー26の下面に接するようにブロワー固定板63が基台32の大引部品(図8)に架け渡され、ブロワー固定板63には、断熱床貫通孔24に続くように貫通する穴64(図14)が開けられており、この穴64に連通するように送風用ブロワー27の送風口部分がブロワー固定板63に固着される、という構成を備えており、送風用ブロワー27を運転させることにより、送風される空気がダンパー26の送風量調整を経て送風路25を通り窯内部へ送られる、という薪の燃焼の支援をする燃焼支援装置28、を有して成ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、叙述の構成により、強度的に安定した、組み立て式多面体のドーム形状の食品焼成窯を、前記構成部品を載置したり、隣接させたり、挿入させたり、嵌入させたりして、組み立てることにより、誰もが構築することができるように成しえた。すなわち、ドーム形の食品焼成窯において、従来の製作労力に比して、本発明の組み立て式多面体のドーム形状の食品焼成窯は非常に簡単に構築できる。本発明は、このことにより、たとえば自作する人(たとえばDIYユーザーに)に対して、組み立て用部品一式(キット)として提供することもでき、また、自作する人の立場からすれば、自身の労力と引き替えに製作費用を軽減することができる。
【0020】
さらに、本発明の食品焼成窯を構成する前記ドーム壁部品は多面体であり、曲面ではなく平面から構成されていることから、直線の長さ、線の角度、面の構成角度、等が算出しやすい。すなわち、設計がしやすく、寸法を正確に、たとえば3次元CAD等を使用して算出することができる。
【0021】
また、本発明の食品焼成窯は、平面から構成されていることと、寸法を正確に算出することができるということとから、(図16)に示すように平面的材料(たとえば合板、金属板等)を素材として比較的容易に正確な型枠を製作することができ、すなわち型枠製作に高度の技術や大掛かりな加工機械を必要とせず型枠製作費用を軽減することができ、さらには、前記構成部品を工場等で正確に量産することができる。
【0022】
本発明の食品焼成窯は、前述のように、構築が組み立て式で簡単にできること、各構成部品を低コストの型枠で量産できることにより、完成するまでの製造コストを抑えることができる。
【0023】
本発明の食品焼成窯は、各ドーム壁部品どうしの接続部に、本実14が形成されており、この雌実12と雄実13とが噛み合う接続構造で、組立てる際も隣接部材がずれることなく安定した状態で構築することができ、特に接着剤等を使用する必要もない。
【0024】
さらに、本発明の食品焼成窯は、組み立て構築完了後も、ドーム形状であることと、本実14による接合構造により、水平又は、鉛直方向からの外力に対しても強度が大きく安定した構築物と成り、耐久性も大きなものとすることができる。
【0025】
本発明の食品焼成窯は、簡単に組み立てられるという特徴があるが、分解も比較的容易にできるということから、耐火煉瓦等をドーム状に積み上げた現場一品製作の食品焼成窯に比べて、移動・移築する際も有利な構造である。
【0026】
本発明の食品焼成窯は、複数に多分割した部品により構成されているので、各部品は小さく軽量化でき、すなわち、該各部品は扱いやすく、梱包・運搬もしやすく、又、分解した状態で保存もしやすい。
【0027】
本発明の食品焼成窯は、送風量が調節可能な燃焼支援装置を有するため、初期段階の予熱燃焼を効率的に行うことができ、使用可能な温度に達するまでの予熱燃焼時間を燃焼支援装置の無いものと比べて短縮させることができる。また、窯本体の蓄熱を保温する時はダンパー26(図14)を完全に閉じることにより、送風路25を通じて窯内部の温度を逃がしてしまうことを避けることができる。さらに、シース熱電対プローブ29(図15)とその温度を表示するためのパネルメータ30からなる窯内部温度表示装置31を設置することにより窯内部の温度を把握することが可能である。また、燃焼支援装置により熾き火に向けて送風することにより薪の燃焼熱を効率よく食品焼成窯に蓄熱でき、逆に、熾き火を取り除いた時などに送風することで効率よく温度を下げることもでき、すなわち、窯内部の温度帯を効率よく最適にコントロールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の組み立て式多面体のドーム形状の食品焼成窯の実施の一形態について図を参照して説明する。
【0029】
あらかじめ準備した4か所の基礎の上に、あるいは平らなコンクリート板上に、木造の部品で基台32(図12)を組み立てて形成する。
【0030】
基台32の部品は、(図8)に示すように前柱33、後柱34、正面梁35、後梁36、端大引37、中央大引38、方杖板39、からなり、接続は、(図7、図8)に示すようなホゾ差し込栓止め40と、相欠き組込み41との仕口になっており、木槌だけで組み立てられる。
【0031】
基台32上には、(図8)に示すようにパーライト製で直方体の端断熱板部品42が左右各2枚、計4枚と、中央断熱板部品43が3枚、を載置して、断熱床板1を形成する。なお、断熱板部品42、43は、ガラスファイバー系の強化繊維入りのパーライトモルタルを素材として形成されている
【0032】
本実施例では炉床3を4分割したものを炉床部品2とし、断熱床板1上に前記炉床部品2を4枚隣接載置し、基本形状が正八角形の炉床3を形成する。(図1)
【0033】
本実施例では多面体ドーム5を6分割したものをドーム壁部品4とし、炉床3の周囲の断熱床板1上に6個の前記ドーム壁部品4を本実14により実が噛み合うように隣接、載置させ、さらに、天蓋部品10を頂点に嵌入させ、多面体ドーム5を形成する。(図1)
【0034】
さらに、窯口上方ドーム壁部品7を左右両サイドのドーム壁部品4に接するように挿入させ、窯口上方ドーム壁部品7を支持する形で、正面対して左側には窯口左ドーム壁部品8を、正面対して右側には窯口右ドーム壁部品9を、ドーム壁部品4に接するように挿入させる。(図1)
【0035】
窯口上方ドーム壁部品7と窯口左ドーム壁部品8と窯口右ドーム壁部品9とによって形成される開口部16(図4)には、窯口部品11が嵌入され、多面体ドーム形状窯本体20(図5)が形成される。なお、多面体ドーム形状窯本体20を構成する各部品の各接続部には外側から耐火パテ等で覆い、可能な限り隙間が生じないようにすることが望ましい。
【0036】
また、窯口部品11は、上部に窯口の開口幅いっぱいに横長の形状の排煙用の開口である排煙孔17、を形成しており、さらに、窯口部品11の窯口の開口内で、自由に前記開口内に載置したり、移動したり、はずしたりでき、水平面に自立することができる、独立した部品の窯口扉44(図13)を備える。この窯口扉44は、(図13a)に示すように排煙孔17よりも窯内部寄りの開口周囲縁45に接して載置することで、窯内の熱気を封じることができる構造と成っている。しかも、窯口扉44は、(図13a、図13b)に示すように燃焼時には排煙孔17の手前に設置することにより排煙でき、排煙孔17の水平前後奥行き間で前後させることにより、排煙用かつ熱気保持用ダンパーとしての役割を備え、すなわち排煙量の調節ができ、かつ、窯内の熱気を保持できる構造と成っている。
【0037】
さらに、窯口部品11の排煙孔17には、ステンレス製の煙突元部品15が組み立て式で接続されている。煙突元部品15は、箱型で下部が解放されていて、前記下部の周囲の縁は窯口部品と正面ドーム壁部品の形状に隙間なく接する形状をしており、さらに、煙突元部品15の箱の上面には円形の穴が設けられ、その穴に筒状の煙突が溶接接合されており、窯口部品11の排煙孔17からくる排煙を収集し前記筒状の煙突に導入する部品である。さらに、煙突元部品15の筒状の煙突に、煙突19が嵌合して組み立て式で接続される。(図13)
【0038】
また、正面対して左側、または右側のうち一つである最前列のドーム壁部品4にあって、(図14)に示すように下から二分の一以内の高さの位置に貫通する送風口21が形成されており、この送風口21の外側に送風路を確保するために下側と内側に連通して開放された凹みのある形状の送風路確保部品22を寄り添わせ、この送風路確保部品22下面に送風用開口23が形成されている。さらに、この送風用開口23に続くように端断熱床板部品42に貫通する断熱床貫通孔24が形成されており、この断熱床貫通孔24から送風口21までの窯内部へ続く送風路25が形成されている。端断熱床板部品42の断熱床貫通孔24の下面にはスライドすることによって開閉し、送風量を調整する機能も兼ねるダンパー26が配置され、さらにこのダンパー26の下面に接するようにブロワー固定板63が基台32の大引部品(図8)に架け渡され、ブロワー固定板63には、断熱床貫通孔24に続くように貫通する穴64(図14)が開けられており、この穴64に連通するように送風用ブロワー27の送風口部分がブロワー固定板63に固着されている。送風用ブロワー27を運転させることにより送風される空気はダンパー26の送風量調整を経て送風路25を通り窯内部へ送られるという薪の燃焼の支援をする燃焼支援装置28を有している。
【0039】
本実施例の食品焼成窯にあっては、(図15)に示すようにドーム壁部品4の本実14の位置において雌実12と雄実13の一部を欠いて窯内部にシース熱電対プローブ29の先端を挿入し設置し、さらに、断熱床板1に貫通した穴をあけ前記シース熱電対プローブ29からつづく電線を通し、正面の見やすい位置である基台32の正面梁35に取り付けたパネルメータ30に前記電線を接続させ、窯内部の測定温度結果を表示させる窯内部温度表示装置31を設置してある。
【0040】
さらに、多面体ドーム形状窯本体20の周囲で断熱床板1上にパーライト製の断熱外周壁46が組み立て式で形成される。(図10)
【0041】
断熱外周壁46(図10、図11、図12)は、(図9)に示すように直方体がL形に結合された形の下段コーナー壁47が4個、直方体の下段側壁48が2個、直方体の下段後壁49、直方体の上段正面壁50、直方体の上面が斜めになった形のものと直方体がL型に結合された形の上段左コーナー壁51とこれと対象形の上段右コーナー壁52、直方体の上面が斜めになった形の上段側壁53が2個、の部品からなり、前記各部品どうしの上下左右前後の接続部には、凹の雌実と凸の雄実とが互いに対と成り、噛み合う接続構造の外周壁本実54が形成されていることにより各部品どうしがずれにくく接続されている。なお、前記各部品はガラスファイバー系の強化繊維入りのパーライトモルタルを素材として形成される。
【0042】
また、断熱外周壁46と多面体ドーム形状窯本体20との間の空間に、断熱材として砂状のパーライト断熱材55が充填され、多面体ドーム形状窯本体20は砂状のパーライト断熱材55で完全に覆われている。(図10)
【0043】
次に、断熱外周壁46には、前桁56と後桁57が各2本のボルト58で結合されている。(図11)
【0044】
さらに、前桁56と後桁57には垂木59が釘あるいはネジ釘で固定され、さらに前記垂木59の上に野地板が釘あるいはネジ釘で固定され、屋根下地60が形成される。なお、煙突貫通部は野地板の一部をケイ酸カルシウム板製の煙突用防火板61に置き換えてあり、煙突19は防火板61を介して接して屋根を貫通している。(図11、図12)
【0045】
屋根下地60には、ルーフィングをタッカー止めにより貼られ、されに、板金屋根で仕上げられ、屋根構造62(図12)が形成される。
【0046】
なお、断熱外周壁46(図12)の外周表面は窯が燃焼していても人肌程度の温度であるので、この外周表面には石、タイル等を接着して装飾仕上げが自由にできる。
【0047】
本実施例の食品焼成窯は、基台から断熱床板、ドーム形状の窯本体、外周壁、窯本体の断熱材、屋根構造そして、燃焼支援装置、窯内部温度表示装置までの一式が組み立て式になっているので、断熱性能、排煙性能、熱保持能力、温度測定機能等の諸性能・諸機能が高レベルで確保されたものを部品一式で運搬して短時間で簡単に構築したり、DIY用向けのキットとして提供したりできる。
【0048】
本実施例のような食品焼成窯は、自作志向のユーザーに対して、自分で組み立てて作る、という喜びを与えることができ、なおかつ施工費用の軽減に協力することができる。
【0049】
なお、基台、外周壁、屋根構造については本実施例の物とは別の方法により、窯本体20に対して適切に窯の台を作り、断熱と防水処理を施せば、ユーザー独自のデザインで工夫することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】 本発明の食品焼成窯の分解斜視図である。
【図2】 雌実と雄実とで構成される本実の状態を示す、一部のドーム壁部品の分解斜視図である。
【図3】 開放された正面部と組み立てられた多面体ドーム壁の状態を示す部分的分解斜視図である。
【図4】 窯口部品、及び煙突元部品が窯本体に嵌入される状態を示す部分的分解斜視図である。
【図5】 断熱床板上に本発明の食品焼成窯が組み立てられた状態を示す斜視図である。
【図6】 多面体ドーム壁を四分割した場合の一例を示す一部省略分解斜視図である。
【図7】 本発明における一実施例の基台部分の接合部詳細を示す部分的分解斜視図である。
【図8】 同じく実施例の基台・断熱床板部分の組み立て状態を示す部分的分解斜視図である。
【図9】 同じく実施例の基台・断熱床板上に載置される窯本体と外周壁の組み立て状態を示す部分的分解斜視図である。
【図10】 同じく実施例の外周壁が組み立てられた状態と砂状のパーライト断熱材の施工状態を示す部分的切欠斜視図である。
【図11】 同じく実施例の外周壁上に設置される屋根構造の組み立て状態を示す一部省略分解斜視図である。
【図12】 同じく実施例の組み立て完了状態を示す斜視図である。
【図13】 (a)は窯内部の熱を保温する時の窯口扉の位置(閉鎖状態)を示す部分的切欠き断面斜視図である。(b)は窯内部で加熱燃焼する時の窯口扉の位置(半開放状態)を示す部分的切欠き断面斜視図である。
【図14】 燃焼支援装置の構成を示す部分的分解斜視図である。
【図15】 窯内部温度表示装置の構成を示す部分的切欠・分解斜視図である。
【図16】 本発明の食品焼成窯における部品製造用型枠の一例として示す型枠の斜視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 断熱床板
2 炉床部品
3 炉床
4 ドーム壁部品
4b 分割角度が90度以上の場合のドーム壁部品
5 多面体ドーム
6 正面部
7 窯口上方ドーム壁部品
7b 分割角度が90度以上の場合の窯口上方ドーム壁部品
8 窯口左ドーム壁部品
9 窯口右ドーム壁部品
10 天蓋部品
11 窯口部品
12 雌実
13 雄実
14 本実
15 煙突元部品
16 開口部
17 排煙孔
18 窯口用開口
19 煙突
20 多面体ドーム形状窯本体
21 送風口
22 送風路確保部品
23 送風用開口
24 断熱床貫通孔
25 送風路
26 ダンパー
27 送風用ブロワー
28 燃焼支援装置
29 シース熱電対プローブ
30 パネルメータ
31 窯内部温度表示装置
32 基台
33 前柱
34 後柱
35 正面梁
36 後梁
37 端大引
38 中央大引
39 方杖板
40 ホゾ差し込栓止め仕口
41 相欠き組込み仕口
42 端断熱床部品
43 中央断熱板部品
44 窯口扉
45 開口周囲縁
46 断熱外周壁
47 下段コーナー壁
48 下段側壁
49 下段後壁
50 上段正面壁
51 上段左コーナー壁
52 上段右コーナー壁
53 上段側壁
54 外周壁本実
55 砂状のパーライト断熱材
56 前桁
57 後桁
58 ボルト
59 垂木
60 屋根下地
61 防火板
62 屋根構造
63 ブロワー固定板
64 穴
65 不定形耐火物の打込み口
66 鋭角の分割角度
66b 90度以上の分割角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱床板面上にあって、平面的に見て基本形状が6角以上12角以下からなる正多角形に形成された炉床を持つドームの形状であり、
前記ドームは、前記正多角形の一辺にて前記断熱床板面上から形成しようとしているドーム頂点に向けて、ドーム形状を形成すべく、上側に弧を描くように前記一辺と平行に2か所以上4か所以下で折れた平面で構成される多面体ドーム壁が前記正多角形の一辺ごとに同様に形成された多面体ドームの形状であり、
前記多面体ドームは、正面部の下方の一部を、窯口部品が嵌入されるための開口部として欠如させた形状をしており、
前記開口部に薪・調理物等の出し入れのための窯口用開口と、前記窯口用開口内の天井面に形成される左右に横長の排煙孔と、を有する前記窯口部品が嵌入されて、
成ることを特徴とする組み立て式の多面体ドーム形状の食品焼成窯。
【請求項2】
前記炉床が、2個以上12個以下に分割された複数の炉床部品と、
前記多面体ドームが前記正多角形に形成された炉床の中心を通る鉛直面の位置で2個以上12個以下に分割された複数のドーム壁部品と、
前記正面部には、前記窯口部品と、前記窯口部品上に形成される窯口上方ドーム壁部品と、前記窯口部品左側に形成される窯口左ドーム壁部品と、前記窯口部品右側に形成される窯口右ドーム壁部品とで、構成されており、
前記各構成部品を組み立て式で構築できることを特徴とする請求項1に記載の組み立て式の多面体ドーム形状の食品焼成窯。
【請求項3】
前記ドーム壁部品のドーム頂点に接する上端の分割角度が鋭角と成るように分割した場合にあっては、前記ドーム壁部品は、前記上端が欠けやすくなることを防止するため、前記上端をあらかじめ欠如させた形状のドーム壁部品と成り、前記窯口上方ドーム壁部品も、同様に上端を欠如させた窯口上方ドーム壁部品と成る、ことを特徴とし、かつ、前記上端を欠如させたドーム壁部品と窯口上方ドーム壁部品とで形成させると、ドーム頂部付近には開口が形成され、前記開口と相似形の天蓋部品が前記開口に嵌入されることにより多面体ドームが形成される、ことを特徴とする請求項1、又は2のいずれか一つに記載の組み立て式の多面体ドーム形状の食品焼成窯。
【請求項4】
前記各ドーム壁部品と、前記窯口上方ドーム壁部品と、前記窯口左ドーム壁部と、前記窯口右ドーム壁部品との、各ドーム壁部品どうしが隣接する接続部にあっては、前記各ドーム壁部品の一方側面に凹の雌実が形成され、他方側面には凸の雄実が形成され、この雌実と雄実が互いに対と成り噛み合う接続構造である本実が形成されており、前記本実により前記各ドーム壁部品どうしが互いに、ずれにくい接続構造になっていることを特徴とする、請求項1、2、又は3に記載の組み立て式多面体ドーム形状の食品焼成窯。
【請求項5】
前記各構成部品は不定形耐火物を素材とし、かつ、平面板の素材から形成された型枠で、複数生産されることを特徴とする請求項1、2、3、又は4に記載の組み立て式の多面体ドーム形状の食品焼成窯。
【請求項6】
前記複数のドーム壁部品のうちいずれか1つに送風用の貫通した送風口を形成させ、前記送風口の外側から下側に送風路を確保させ、前記送風路の最下部にはスライドすることによって開閉し送風量を調整する機能も兼ねるダンパーが配置され、前記ダンパーの下面に連通するように送風用ブロワーが設置され、前記送風用ブロワーを運転させることにより窯内部へ空気が送られ、薪の燃焼の支援をする機構である燃焼支援装置、を有することを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5のいずれか一つに記載の組み立て式多面体ドーム形状の食品焼成窯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−78401(P2011−78401A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249491(P2009−249491)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(509299802)