説明

組み立て式放射線遮へい体及びこれを用いた放射線遮へい方法

【課題】作業員により運搬及び組み立てを容易に行うことができる組み立て式放射線遮へい体を提供する。
【解決手段】組み立て式放射線遮へい体1は、作業員によって搬送される複数の要素(複数の遮へい部材2A,2B、側面支持フレーム部材4A,4B、補強フレーム8A,8B、下面支持フレーム部材11、上面支持フレーム部材12,前面支持フレーム部材13、後面支持フレーム部材15,17及び車輪装置21A,21B)をボルト及びナットにより組み立てて構成される。放射線遮へい体である複数の遮へい部材2が側面支持フレーム部材4Aの垂直フレーム5Aと側面支持フレーム部材4Bの垂直フレーム5Bの間に積層されて配置され、これらの遮へい部材2は垂直フレーム5A,5Bに取り付けられた下面支持フレーム部材11、前面支持フレーム部材13、後面支持フレーム部材15,17によって保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て式放射線遮へい体及びこれを用いた放射線遮へい方法に係り、特に、原子力プラントに適用するのに好適な組み立て式放射線遮へい体及びこれを用いた放射線遮へい方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、プラントの点検、予防保全及び補修等において、作業員の被ばくを低減するために、放射線遮へい体を用いている。従来の放射線遮へい体には、作業員が取り扱うことができる重量を超える重量を有する部品が存在する。このため、放射線遮へい体の組み立てに際して、楊重機及び工作機械等が必要であった。
【0003】
組み立て式放射線遮へい体の一例が、特開昭61−38598号公報に記載されている。この組み立て式放射線遮へい体は、両側に配置された伸縮可能なガイドポスト、ガイドポストの上端に設けられた上端枠、ガイドポストの下端に設けられた下端枠を有する遮へいパネルを有し、キャスタを下端枠に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−38598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子力プラントにて作業を行う場合、作業内容によっては、予め放射線遮へい体が設置されていないエリアでも作業を行うことになり、このエリアにおいて簡易的に移動できて転倒防止機能を有する放射線遮へい体の設置が求められる。
【0006】
従来技術では、電動工作機械を用いなければ組み立て式放射線遮へい体を組み立てることができないため、上記のエリアへのアクセス経路、運搬方法、持ち込める工作機械等が制限される場合などには、組み立て式放射線遮へい体を適用できない可能性が非常に高い。
【0007】
このため、使用工具が制限される状況下においても、そのエリアでの放射線遮へい体の設置が可能になるように、作業員の人力のみで運搬、組み立て、据え付け、解体が可能な組み立て式放射線遮へい体が求められる。さらに、地震等により外力が組み立て式放射線遮へい体に作用すると、この組み立て式放射線遮へい体自身が転倒し、周囲に存在する、原子力プラントの配管及び機器等の構造物に損傷を与える危険性がある。このため、外力が加わっても転倒しにくい構造の組み立て式放射線遮へい体が求められ、もし、転倒したとしても、原子力プラントの特定の重要物を保護することができる構造の組み立て式放射線遮へい体が求められる。
【0008】
本発明の目的は、作業員により運搬及び組み立てを容易に行うことができる組み立て式放射線遮へい体及びこれを用いた放射線遮へい方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、水平フレームに垂直に取り付けられた垂直フレームを有する一対の側面支持フレーム部材と、各々側面支持フレーム部材の垂直フレームの一側面と水平フレーム部材に傾斜した状態で着脱可能にそれぞれ取り付けられた補強フレームと、互いに間隔を置いて配置されたこれらの側面支持フレーム部材のそれぞれの垂直フレームのその一側面に着脱可能に取り付けられた複数の後面支持フレーム部材と、それぞれの垂直フレームの、その一側面とは反対側の他の側面に着脱可能に取り付けられた下面支持フレーム部材及び複数の前面支持フレーム部材と、それぞれの水平フレームに着脱可能に取り付けられた複数の車輪装置とを備え、
複数の前面支持フレーム部材が下面支持フレーム部材の真上に配置され、
複数の遮へい部材が、下面支持フレーム部材及び各側面支持フレーム部材の水平フレーム部材に支えられ、積層されて各側面支持フレーム部材の垂直フレームの間に配置され、かつ、積層された複数の遮へい部材が、複数の後面支持フレーム部材と複数の前面支持フレーム部材の間に配置されていることにある。
【0010】
組み立て式放射線遮へい体が、水平フレームに垂直に取り付けられた垂直フレームを有する一対の側面支持フレーム部材、複数の遮へい部材、及びこれらの側面支持フレーム部材に着脱可能に取り付けられる補強フレーム、後面支持フレーム部材、下面支持フレーム部材、前面支持フレーム部材及び車輪装置の要素から構成されるので、これらの要素を作業員が人力で容易に搬送することができる。また、補強フレーム、後面支持フレーム部材、下面支持フレーム部材、前面支持フレーム部材及び車輪装置が、取り外し可能な結合手段(例えば、ボルト及びナット)を用いて、一対の側面支持フレーム部材に着脱可能に取り付けられるので、作業員が組み立て式放射線遮へい体を容易に組み立てることができる。
【0011】
好ましくは、車輪装置が、車輪、水平フレームに着脱可能に取り付けられる車輪支持部、及び車輪が取り付けられて、水平フレームの下面よりも下方の第1位置と下面よりも上方の第2位置の間での車輪の上下動が可能なように、上下方向で移動可能に車輪支持部に取り付けられた車輪支持軸を有することが望ましい。
【0012】
車輪装置が、車輪、水平フレームに着脱可能に取り付けられる車輪支持部、及び車輪が取り付けられて、上下方向で移動可能に車輪支持部に取り付けられた車輪支持軸を有するので、車輪を、水平フレームの下面よりも下方の第1位置とこの下面よりも上方の第2位置の間で上下動させることができ、作業員が組み立て式放射線遮へい体の移動及び設置を容易に行うことができる。
【0013】
好ましくは、それぞれの水平フレームの、垂直フレームの取り付け位置から1つの先端である第1先端までの長さが、それぞれの水平フレームの、垂直フレームの取り付け位置から他の先端である第2先端までの長さよりも長くなっており、
各補強フレームが、それぞれの水平フレームの、垂直フレームの取り付け位置と第1先端の間の部分に着脱可能に取り付けられており、各補強フレームが、それぞれの水平フレームの、垂直フレームの取り付け位置と前記第2先端の間の部分に取り付けられていないことが望ましい。
【0014】
それぞれの水平フレームの、垂直フレームの取り付け位置から第1先端までの長さが、それぞれの水平フレームの、垂直フレームの取り付け位置から第2先端までの長さよりも長くなっているので、転倒モーメントが積層された遮へい部材から補強フレームに向かう方向で組み立て式放射線遮へい体に作用しても、組み立て式放射線遮へい体が転倒する危険性が著しく小さくなる。このため、水平フレームの、垂直フレームの取り付け位置と第1先端の間の部分を、遮へい対象物である構造部材に面する側に配置することによって、組み立て式放射線遮へい体に転倒モーメントが作用する場合であっても、組み立て式放射線遮へい体が転倒してその構造部材に損傷を与える確率を非常に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、組み立て式放射線遮へい体に用いる要素の運搬を作業員の人力により容易に行うことができ、さらに組み立て式放射線遮へい体の組み立てを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施例である組み立て式放射線遮へい体の斜視図である。
【図2】図1に示す組み立て式放射線遮へい体の側面図である。
【図3】図1に示す組み立て式放射線遮へい体の組み立てを示す説明図である。
【図4】図1に示す組み立て式放射線遮へい体における板状の遮へい部材の積層状態を示す説明図である。
【図5】図4のV−V矢視図である。
【図6】図1に示す組み立て式放射線遮へい体の車輪装置付近の拡大図である。
【図7】図6のVII−VII矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の好適な一実施例である組み立て式放射線遮へい体を、図1、図2及び図3を用いて説明する。
【0019】
本実施例の組み立て式放射線遮へい体1は、板状の複数の遮へい部材2、支持フレーム3、補強フレーム8B、前面支持フレーム部材13、後面支持フレーム部材15,17及び車輪装置21A,21Bを備えている。
【0020】
支持フレーム3は、側面支持フレーム部材4A,4B、下面支持フレーム部材11及び上面支持フレーム部材12を有する。側面支持フレーム部材4Aは、垂直フレーム5Aを、水平方向に伸びる水平フレーム6Aに対して垂直になるように、水平フレーム6Aに取り付けて構成される。垂直フレーム5Aは下端を水平フレーム6Aに取り付けている。側面支持フレーム部材4Bは、垂直フレーム5Bを、水平方向に伸びる水平フレーム6Bに対して垂直になるように、水平フレーム6Bに取り付けて構成される。垂直フレーム5Bは下端を水平フレーム6Bに取り付けている。水平フレーム6A及び6Bが伸びる方向と直交する方向に配置された下面支持フレーム部材11の両端部が、ボルト及びナットによって、側面支持フレーム部材4Aの垂直フレーム5A及び側面支持フレーム部材4Bの垂直フレーム5Bのそれぞれの下端部に取り付けられる。この結果、平行に配置された側面支持フレーム部材4A及び側面支持フレーム部材4Bが、下面支持フレーム部材11によって連結される。上面支持フレーム部材12が、垂直フレーム5A及び垂直フレーム5Bのそれぞれの上端部に取り付けられる。
【0021】
下面支持フレーム部材11は、図3に記載されているように、支持フレーム11A、支持部材11B及び遮へい支持部11Cを有する。遮へい支持部11Cが、支持フレーム11Aの下方に配置され、支持フレーム11Aの下面に取り付けられた支持部材11Bに取り付けられている。遮へい支持部11Cは、支持フレーム11Aに対して90°曲げられており、水平フレーム6A,6Bと平行になっている。また、遮へい支持部11Cの下面は、水平フレーム6A,6Bのそれぞれの下面と同じ高さにある。
【0022】
補強フレーム8Aが、傾斜した状態で、両端部を垂直フレーム5A及び水平フレーム6Aにそれぞれボルト及びナットにより取り付けられている。補強フレーム8Bが、傾斜した状態で、両端部を垂直フレーム5B及び水平フレーム6Bにそれぞれボルト及びナットにより取り付けられている。
【0023】
前面支持フレーム部材13は、長い2本の要素フレーム13Aの両端部を短い2本の要素フレーム13Bで結合し、さらに長手方向の中央部で2本の要素フレーム13Aの間に配置された補強フレーム14の両端をこれらの要素フレーム13Aに取り付けて構成される。このような構成を有する2個の細長い前面支持フレーム部材13が、上下方向に重ねられ、補強フレーム8A,8Bが配置される位置とは反対側で垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの一側面に面して配置される。各前面支持フレーム部材13の、長手方向における一端部に位置するそれぞれの各要素フレーム13Bが、垂直フレーム5Aのその一側面にボルト及びナットで取り付けられている。各前面支持フレーム部材13の、長手方向における他端部に位置するそれぞれの各要素フレーム13Bが、垂直フレーム5Bのその一側面にボルト及びナットで取り付けられている。2個の前面支持フレーム部材13は、下面支持フレーム部材11の支持フレーム11Aの真上に配置される。
【0024】
2個のうち上方に配置された前面支持フレーム部材13の上部に存在する要素フレーム13Aの上面が、垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの上端と同じ高さに位置している。他の前面支持フレーム部材13が、その前面支持フレーム部材13の下方に配置され、前者の前面支持フレーム部材13の上部に存在する要素フレーム13Aが後者の前面支持フレーム部材13の下部に存在する要素フレーム13Aに接触している。
【0025】
後面支持フレーム部材15は、長い2本の要素フレーム15Aの両端部を短い2本の要素フレーム15Bで結合し、さらに長手方向の中央部で2本の要素フレーム15Aの間に配置された補強フレーム16の両端をこれらの要素フレーム15Aに取り付けて構成される。このような構成を有する2個の細長い後面支持フレーム部材15が、上下方向に重ねられ、補強フレーム8A,8Bが配置される位置側で垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの他の側面に面して配置される。各後面支持フレーム部材15の、長手方向における一端部に位置するそれぞれの各要素フレーム15Bが、垂直フレーム5Aにボルト及びナットで取り付けられている。各後面支持フレーム部材15の、長手方向における他端部に位置するそれぞれの各要素フレーム15Bが、垂直フレーム5Bにボルト及びナットで取り付けられている。2個のうち上方に配置された後面支持フレーム部材15の上部に存在する要素フレーム15Aの上面が、垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの上端と同じ高さに位置している。他の後面支持フレーム部材15が、その後面支持フレーム部材15の下方に配置され、前者の後面支持フレーム部材15の上部に存在する要素フレーム15Aが後者の後面支持フレーム部材15の下部に存在する要素フレーム15Aに接触している。2個の後面支持フレーム部材15は、補強フレーム8Aの垂直フレーム5Aへの取り付け位置及び補強フレーム8Bの垂直フレーム5Bへの取り付け位置よりも上方に配置されており、垂直フレーム5A,5Bを間に挟んで2個の後面支持フレーム部材13と向かい合っている。
【0026】
後面支持フレーム部材17は、長い2本の要素フレーム17Aの両端部を短い2本の要素フレーム17Bで結合し、さらに長手方向の中央部で2本の要素フレーム17Aの間に配置された補強フレーム18の両端をこれらの要素フレーム17Aに取り付けて構成される。このような構成を有する1個の細長い後面支持フレーム部材17が、補強フレーム8A,8Bが配置される位置側で垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの側面に面して配置され、後面支持フレーム部材15の真下に配置されている。後面支持フレーム部材17の、長手方向における一端部に位置するそれぞれの要素フレーム17Bが、垂直フレーム5Aにボルト及びナットで取り付けられている。後面支持フレーム部材17の、長手方向における他端部に位置する要素フレーム17Bが、垂直フレーム5Bにボルト及びナットで取り付けられている。後面支持フレーム部材17の下部に存在する要素フレーム17Aは、水平フレーム6A,6B及び遮へい支持部11Cよりも上方に配置され、補強フレーム8Aの垂直フレーム5Aへの取り付け位置及び補強フレーム8Bの垂直フレーム5Bへの取り付け位置よりも下方に配置されている。
【0027】
複数の遮へい部材2は、放射線遮へい材(例えば、鉛)で構成される板状の複数の遮へい部材2A及び板状の複数の遮へい部材2Bを含んでいる(図4参照)。遮へい部材2Aと遮へい部材2Bは長さが異なっており、遮へい部材2Aは遮へい部材2Bよりも長くなっている。遮へい部材2A,2Bは、それぞれ作業員が運べる重さになっている。各遮へい部材2Aと各遮へい部材2Bは、1つの遮へい部材2Aと1つの遮へい部材2Bが一列に並ぶように、側面支持フレーム部材4Aの垂直フレーム5Aと側面支持フレーム部材4Bの垂直フレーム5Bの間において、水平フレーム6A,6Bの上面から垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの上端に向かって積み上げられている。遮へい部材2A,2Bのそれぞれの長手方向は、垂直フレーム5A,5Bの方向を向いている。積み上げられた遮へい部材2の層の最も下方では、例えば、遮へい部材2Aが両端部を水平フレーム6A及び遮へい支持部11Cによって支持され、遮へい部材2Bが両端部を水平フレーム6B及び遮へい支持部11Cによって支持されている。同じ高さに位置する遮へい部材2Aと遮へい部材2Bは、それぞれの一端が互いに接触している。遮へい部材2Aと遮へい部材2Bの接触位置が、高さ方向において、一直線に配置されずにずれるように、遮へい部材2Aと遮へい部材2Bは、図4に示すように、互い違いに積み重ねられている。
【0028】
遮へい部材2は、図5に示すように、前後において、2列になるように配置される。便宜的に、図5において、積み上げられた遮へい部材2の層を基準に、水平フレーム6Bの、補強フレーム8Bが取り付けられた部分側を後、水平フレーム6Bの、補強フレーム8Bが取り付けられていない部分側を前と称する。積み上げられた遮へい部材2の層の前列の層及び後列の層は、ともに、図4に示すように、遮へい部材2Aと遮へい部材2Bが互い違いに積み重ねられている。ただし、前列の層及び後列の層では、遮へい部材2Aと遮へい部材2Bが逆に配置され、一列に配置された遮へい部材2Aと遮へい部材2Bの接触位置が、放射線ストリミングを考慮してずれている。前列の層に配置された遮へい部材2A,2Bの高さ方向での位置が、後列の層に配置された遮へい部材2A,2Bの高さ方向での位置と異なっている。すなわち、前列の層に配置された各遮へい部材2は、後列の層に配置された各遮へい部材2の上下方向における接触面を遮るように配置される。このような前列の層の各遮へい部材2と後列の層の各遮へい部材2の配置により、前後方向に進行する放射線が、各遮へい部材2の上下方向における接触面相互間を通過するのを阻止することができる。このような、各遮へい部材2の配置を実現するために、後列の層において、最も下方に配置された遮へい部材2A,2B及び最も上方に配置された遮へい部材2A,2Bのそれぞれの高さ方向での厚みは、他の遮へい部材2A,2Bのそれぞれの高さ方向での厚みの半分になっている。
【0029】
積み上げられた遮へい部材2の層の上部に存在する遮へい部材2A,2Bは、前面支持フレーム部材13と後面支持フレーム部材15の間に配置されている。前面支持フレーム部材13の補強フレーム13及び後面支持フレーム部材15の補強フレーム16は、水平方向に配置された遮へい部材2Aと遮へい部材2Bの長手方向における接触面を覆っている。
【0030】
2枚の薄板22が、下方に位置する後面支持フレーム部材15と遮へい部材2の間でかつ後列の層に配置された遮へい部材2と後面支持フレーム部材17の間に配置される。これらの薄板22の下端が水平フレーム6A,6B及び遮へい部材2に支持される。それらの薄板22の上端部は、下方に位置する後面支持フレーム部材15の下部に存在する要素フレーム15Aと後列の層に配置された遮へい部材2の間に配置される。図示されていないが、他の2枚の薄板22が、下方に位置する前面支持フレーム部材13と遮へい部材2の間でかつ前列の層に配置された遮へい部材2とその前面支持フレーム部材17の下部に存在する要素フレーム13A及び下面支持フレーム部材11の支持フレーム11Aのそれぞれの間に配置される。これらの薄板22の下端も水平フレーム6A,6B及び遮へい部材2に支持される。
【0031】
これらの薄板22及び補強フレーム14,16は各遮へい部材2A,2Bが水平フレーム6A,6Bの長手方向においてずれるのを防止している。
【0032】
これらの薄板22の替りに、垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの一側面に、水平フレーム6A,6Bの上面から垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの上端に亘って、複数の前面支持フレーム部材を連続して取り付け、垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの反対側の側面に、後面支持フレーム部材17の上面から垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの上端に亘って、補強フレーム8Aと垂直フレーム5Aの取り付け位置及び補強フレーム8Bと垂直フレーム5Bの取り付け位置を考慮して複数の後面支持フレーム部材15を連続して取り付けても良い。
【0033】
次に、車輪装置21A,21Bについて説明する。車輪装置21A,21Bは同じ構成を有するので、車輪装置21Bの構成を、図6及び図7を用いて説明する。2個の車輪装置21Bが水平フレーム6Bに取り付けられている。車輪装置21Bは、車輪支持部7B、車輪9B及び車輪支持軸10Bを有する。車輪支持部7Bは、ボルト及びナットにより水平フレーム6Bの上面に取り付けられ、水平フレーム6Aに向かって水平フレーム6Bよりも突出している。車輪9Bが車輪支持軸10Bに回転可能に取り付けられ、車輪支持軸10Bが車輪支持部7Bを高さ方向に貫通している。車輪支持軸10Bは上部にネジを形成しており、このネジに2つのナット19,20が噛み合っている(図7参照)。ナット19が車輪支持部7Bの上端部に設けられた鋼板支持部23の上方に位置し、ナット20が鋼板支持部23の下方に位置する。ナット19とナット20を、鋼板支持部23を挟み込むように締め付けることによって、車輪支持軸10Bが車輪支持部7Bに固定される。
【0034】
車輪装置21Aは、車輪装置21Bと同様に、車輪支持部7A、車輪9A(図示せず)及び車輪支持軸10Aを有する。2個の車輪装置21Aが、車輪装置21Bと同様に、水平フレーム6Aに取り付けられている。
【0035】
各車輪装置21Bにおいて、ナット20を緩めてナット19を締め付けることによって、車輪支持軸10Bが上方に向かって移動し、車輪9Bを水平フレーム6Bの下面よりも上方に移動させることができる。各車輪装置21Aにおいても、ナット20(図示せず)を緩めてナット19(図示せず)を締め付けることによって、車輪支持軸10Aが上方に向かって移動し、車輪9Aを水平フレーム6Aの下面よりも上方に移動させることができる。
【0036】
組み立て式放射線遮へい体1は、2個の車輪9Aを水平フレーム6Aの下面よりも下方に下げてこれらの車輪9Aを床面に接触させ、2個の車輪9Bを水平フレーム6Bの下面よりも下方に下げてこれらの車輪9Bを床面に接触させることにより、床面上を移動させることができる。2個の車輪9Aを水平フレーム6Aの下面よりも上方に引き上げ、さらに、2個の車輪9Bを水平フレーム6Bの下面よりも上方に引き上げることにより、水平フレーム6A,6B及び遮へい支持部11Cのそれぞれの下面を床面に接触させることができる。この状態で、組み立て式放射線遮へい体1が床面上に設置される。
【0037】
組み立て式放射線遮へい体1の転倒防止策を、図2を用いて説明する。垂直フレーム5Bの水平方向における厚みの1/2の位置を基点にした、水平フレーム6Bの後方部分(水平フレーム6Bの、補強フレーム8Bが取り付けられた部分)の長さはd1であり、その位置を基点にした、水平フレーム6Bの前方部分(水平フレーム6Bの、補強フレーム8Bが取り付けられていない部分)の長さはd2である。図2には示されていないが、垂直フレーム5Aの水平方向における厚みの1/2の位置を基点にした、水平フレーム6Aの後方部分(水平フレーム6Aの、補強フレーム8Aが取り付けられた部分)の長さは同様にd1であり、その位置を基点にした、水平フレーム6Aの前方部分(水平フレーム6Aの、補強フレーム8Aが取り付けられていない部分)の長さは同様にd2である。長さd1は長さd2よりも長く、水平フレーム6A,6Bの、後方部分での長さは、水平フレーム6A,6Bの、前方部分の長さよりも長くなっている。
【0038】
長さd2は、積層された遮へい部材2の層の重心Gに地震等により設計加速度αが作用した場合に、A点周りの安定モーメントM1が重心Gに働く転倒モーメントM2よりも大きくなるように、設定されている。ここで、安定モーメントM1は、長さd1が長さd2に等しいと仮定した上で求めている。このため、仮に、長さd1が長さd2に等しい場合であっても、積層された遮へい部材2の層に作用した水平加速度が、設計加速度α以下であれば、組み立て式放射線遮へい体1は転倒しない。
【0039】
本実施例では、d1>d2であって、補強フレーム8Aが垂直フレーム5Aを支持しており、補強フレーム8Bが垂直フレーム5Bを支持しているので、組み立て式放射線遮へい体1は、b方向に対して、さらに、転倒しにくい構造になっており、積層された遮へい部材2の層が崩壊しにくい構造になっている。
【0040】
このため、組み立て式放射線遮へい体1の補強フレーム8A,8Bを、原子力プラントの重要機器に向けて、組み立て式放射線遮へい体1を床面に設置することにより、組み立て式放射線遮へい体1が転倒することにより重要機器が受ける損傷の危険性を非常に小さくすることができる。組み立て式放射線遮へい体1が床面に設置された状態では、車輪9A,9Bが水平フレーム6A,6Bのそれぞれの下面よりも上方に引き上げられており、水平フレーム6A,6Bのそれぞれの下面が床面に接触している。
【0041】
また、原子力プラントの重要機器から積層された遮へい部材2の層までの距離を、積層された遮へい部材2の層の高さhの寸法よりも離して、組み立て式放射線遮へい体1を設置することにより、万が一、組み立て式放射線遮へい体1が重要機器に向かって転倒した場合でも、重要機器の損傷等の危険性をさらに低減することができる。
【0042】
本実施例の組み立て式放射線遮へい体1の組み立てについて、説明する。
【0043】
複数の作業員が、複数の遮へい部材2A,2B、側面支持フレーム部材4A,4B、補強フレーム8A,8B、下面支持フレーム部材11、上面支持フレーム部材12、前面支持フレーム部材13、後面支持フレーム部材15,17及び車輪装置21A,21Bを、分担して持って、複数の作業員で分担して、原子力プラントに対して組み立て式放射線遮へい体1を設置するエリア、または、このエリアの近くで放射線量が低いエリアまで運搬する。
【0044】
そのエリアにおいて、作業員が、以下に述べる組み立て式放射線遮へい体1の組み立て作業を実施する。
【0045】
側面支持フレーム部材4Aの水平フレーム6Aに2個の車輪装置21Aをボルト及びナットにより取り付ける。側面支持フレーム部材4Bの水平フレーム6Bにも2個の車輪装置21Bをボルト及びナットにより取り付ける。車輪9A,9Bを水平フレーム6A,6Bよりも上方に引き上げて、水平フレーム6A,6Bのそれぞれの下面を床面に接触させて、側面支持フレーム部材4A,4Bを床面上に立てる。側面支持フレーム部材4Aと側面支持フレーム部材4Bを、所定の幅だけ離して配置する。この状態で、下面支持フレーム部材11の支持フレーム11Aの両端部、及び2個の前面支持フレーム部材13のそれぞれの要素フレーム13Bを、前述した位置で、垂直フレーム5A,5Bにそれぞれボルト及びナットで取り付ける。補強フレーム8Aを水平フレーム6A及び垂直フレーム5Aにボルト及びナットで取り付ける。補強フレーム8Bを水平フレーム6B及び垂直フレーム5Bにボルト及びナットで取り付ける。
【0046】
2枚の薄板22を下面支持フレーム部材11の支持フレーム11A及び下側に配置された前面支持フレーム部材13の下部の要素フレーム13Aに接触させた状態で、遮へい部材2A,2Bを、前述した状態になるように、互い違いにして、下面支持フレーム部材11の遮へい支持部11C及び水平フレーム6A,6Bのそれぞれの上面から下側に配置された前面支持フレーム部材13の下部の要素フレーム13Aの位置まで、積層する。遮へい部材2A,2Bのその積層が終了した後、別の2枚の薄板22が積層されたそれぞれの遮へい部材2A,2Bに接触させた状態で、後面支持フレーム部材17の各要素フレーム17Bをボルト及びナットにより垂直フレーム5A,5Bの前述した位置に取り付ける。そして、残りの遮へい部材2A,2Bを、互い違いに配置して、垂直フレーム5A,5Bの上端まで積層する。その後、2個の後面支持フレーム部材15を前述した位置にボルト及びナットにより取り付ける。遮へい部材2A,2Bの積層が終了した後、上面支持フレーム部材12を、積層されて最も上方に位置する遮へい部材2A,2Bの上方に配置し、ボルト及びナットにより垂直フレーム5A,5Bのそれぞれの上端に取り付ける。
【0047】
各車輪装置21Bにおいて、ナット19を、車輪9Bが水平フレーム6Bの下面より下方になる位置まで、緩めて持ち上げる。そして、ナット20を回転して鋼板支持部23に向かって移動させる。これにより、水平フレーム6Bが持ち上げられ、車輪9Bが水平フレーム6Bの下面より下方に位置するようになる。ナット19,20をしっかりと締め付けて、車輪支持軸10Bを車輪支持部7Bに固定する。各車輪装置21Aにおいても、同様な操作が行われ、車輪9Aが水平フレーム6Aの下面より下方に位置するようになる。ナット19,20が振動により緩まないことを確認する。
【0048】
その後、組み立て式放射線遮へい体1を、作業員が押すことによって、車輪9A,9Bを回転させながら床面上を移動させ、原子力プラントにおいて放射線遮へいを行う所定の位置まで移動させる。組み立て式放射線遮へい体1が、その所定の位置まで移動した後、前述したように、車輪9Aを水平フレーム6Aの下面よりも持ち上げて、車輪9Bを水平フレーム6Bの下面よりも持ち上げて、水平フレーム6A,6Bのそれぞれの下面を床面に接触させて組み立て式放射線遮へい体1を床面上に設置する。
【0049】
必要に応じて、原子力プラントの構造部材に対して対向するように、複数の組み立て式放射線遮へい体1を並べて配置する。このとき、各組み立て式放射線遮へい体1は、水平フレーム6A,6Bの補強フレーム8A,8Bが取り付けられている部分を、放射線遮へい対象物であるその構造部材に面するように(その構造部材側を向くように)、配置される。このような状態で必要な作業(例えば、原子力プラントの保守点検作業)が作業員によって行われる。この作業中、各組み立て式放射線遮へい体1の積層された遮へい部材2の層が、構造部材から放出される放射線を遮へいするため、その作業を行っている作業員の被ばく線量が低減される。その作業が終了した後、組み立ての手順とは逆の手順で、作業員がボルト及びナットを緩めて、組み立て式放射線遮へい体1を分解する。分解後、組み立て式放射線遮へい体1の分解された各部品が、作業員によって搬出される。
【0050】
本実施例によれば、組み立て式放射線遮へい体1は、この組み立て式放射線遮へい体1を構成する複数の要素(例えば、複数の遮へい部材2A,2B、側面支持フレーム部材4A,4B、補強フレーム8A,8B、下面支持フレーム部材11、上面支持フレーム部材12、前面支持フレーム部材13、後面支持フレーム部材15,17及び車輪装置21A,21B)に分けて搬送するので、作業員が人力で容易に搬送することができる。搬送通路が狭くて組み立てた組み立て式放射線遮へい体1を搬送することができない場合であっても、これらの要素は狭い搬送通路を搬送することができる。これらの要素の搬送に楊重機等の搬送装置が不要である。
【0051】
また、搬送後に、これらの要素を用いて組み立て式放射線遮へい体1を組み立てる場合には、作業員がボルト及びナットを用いて組み立てることができる。このため、溶接装置及び電動工具が不要になり、これらを搬送する必要がなくなる。組み立て式放射線遮へい体1を設置した状態での作業(例えば、原子力プラントの構造部材に対する保守点検作業)が終了した後、組み立て式放射線遮へい体1を作業員が上記の各要素に容易に分解することができ、分解後に、組み立て式放射線遮へい体1を各要素にして作業員が容易に搬送することができる。
【0052】
組み立て式放射線遮へい体1が車輪9A,9Bを上げ下げできる車輪装置21A,21Bを備えているので、組み立て式放射線遮へい体1の移動及び設置を作業員によって容易に行うことができる。
【0053】
本実施例では、水平フレーム(6A,6B)の後方部分(水平フレーム(6A,6B)の、補強フレーム(8A,8B)が取り付けられた部分)の長さが、水平フレーム(6A,6B)の前方部分(水平フレーム(6A,6B)の、補強フレーム(8A,8B)が取り付けられていない部分)の長さよりも長くなっているので、地震等により、転倒モーメントが積み重ねられた遮へい部材2から補強フレーム(8A,8B)に向かう方向で組み立て式放射線遮へい体1に作用しても、組み立て式放射線遮へい体1が転倒する危険性が著しく小さくなる。このため、水平フレーム(6A,6B)の、補強フレーム(8A,8B)が取り付けられた部分を、原子力プラントの構造部材に面する側に配置することによって、地震等により、組み立て式放射線遮へい体1に転倒モーメントM2が作用しても、組み立て式放射線遮へい体1が転倒してその構造部材に損傷を与える確率を非常に小さくすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…組み立て式放射線遮へい体、2,2A,2B…遮へい部材、3…支持フレーム、4A,4B…側面支持フレーム部材、5A,5B…垂直フレーム、6A,6B…水平フレーム、7A,7B…車輪支持部、8A,8B…補強フレーム、9B…車輪、10A,10B…車輪支持軸、11…下面支持フレーム部材、11C…遮へい支持部、12…上面支持フレーム部材、13…前面支持フレーム部材、15,17…後面支持フレーム部材、21A,21B…車輪装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平フレームに垂直に取り付けられた垂直フレームを有する一対の側面支持フレーム部材と、各前記側面支持フレーム部材の前記垂直フレームの一側面と前記水平フレーム部材に傾斜した状態で着脱可能にそれぞれ取り付けられた補強フレームと、互いに間隔を置いて配置されたこれらの側面支持フレーム部材のそれぞれの前記垂直フレームの前記一側面に着脱可能に取り付けられた複数の後面支持フレーム部材と、前記それぞれの垂直フレームの、前記一側面とは反対側の他の側面に着脱可能に取り付けられた下面支持フレーム部材及び複数の前面支持フレーム部材と、前記それぞれの水平フレームに着脱可能に取り付けられた複数の車輪装置とを備え、
前記複数の前面支持フレーム部材が前記下面支持フレーム部材の真上に配置され、
複数の遮へい部材が、前記下面支持フレーム部材及び前記各側面支持フレーム部材の前記水平フレーム部材に支えられ、積層されて前記各側面支持フレーム部材の前記垂直フレームの間に配置され、かつ、前記積層された複数の遮へい部材が、前記複数の後面支持フレーム部材と前記複数の前面支持フレーム部材の間に配置されていることを特徴とする組み立て式放射線遮へい体。
【請求項2】
前記複数の遮へい部材が複数の第1遮へい部材及び前記第1遮へい部材よりも長い複数の第2遮へい部材を含んでおり、前記第1遮へい部材及び前記第2遮へい部材が、前記各側面支持フレーム部材の前記垂直フレームの間においてそれぞれの長手方向が一致するように直線状に並べられて配置され、前記第1遮へい部材及び前記第2遮へい部材が互い違いに積層されている請求項1に記載の組み立て式放射線遮へい体。
【請求項3】
前記車輪装置が、車輪、前記水平フレームに着脱可能に取り付けられる車輪支持部、及び前記車輪が取り付けられて、前記水平フレームの下面よりも下方の第1位置と前記下面よりも上方の第2位置の間での前記車輪の上下動が可能なように、上下方向で移動可能に前記車輪支持部に取り付けられた車輪支持軸を有する請求項1または2に記載の組み立て式放射線遮へい体。
【請求項4】
前記それぞれの水平フレームの、前記垂直フレームの取り付け位置から1つの先端である第1先端までの長さが、前記それぞれの水平フレームの、前記垂直フレームの取り付け位置から他の先端である第2先端までの長さよりも長くなっており、
前記各補強フレームが、前記それぞれの水平フレームの、前記垂直フレームの取り付け位置と前記第1先端の間の部分に着脱可能に取り付けられており、前記各補強フレームが、前記それぞれの水平フレームの、前記垂直フレームの取り付け位置と前記第2先端の間の部分に取り付けられていない請求項1ないし3のいずれか1項に記載の組み立て式放射線遮へい体。
【請求項5】
請求項4に記載の組み立て式放射線遮へい体を用いた放射線遮へい方法であって、
前記水平フレームの、前記垂直フレームの取り付け位置と前記第1先端の間の部分を、遮へい対象物である構造部材に面する側に配置し、前記構造部材から放出される放射線を前記遮へい部材によって遮へいすることを特徴とする組み立て式放射線遮へい体を用いた放射線遮へい方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−7640(P2013−7640A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140136(P2011−140136)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)