説明

組成物および黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)血清型5および8莢膜多糖コンジュゲート免疫原性組成物を調製するための方法

本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5および8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートならびにそれらを調製および使用するための方法に関する。本発明の免疫原性コンジュゲートを作製するための方法には、1,1カルボイル ジ1,2,4トリアゾール(CDT)または3(2ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)のいずれかを伴うコンジュゲーション化学反応を使用する莢膜多糖の担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを伴う。
【図4】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月22日出願の米国仮特許出願第61/219,143号および第61/219,151号の優先権の利益を主張するものであり、それらの全開示は、それらの全体が参照により本明細書にそれぞれ組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、一般に、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5および8莢膜多糖コンジュゲート免疫原性組成物ならびにそれらを調製および使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトは、グラム陽性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の自然保有宿主である。例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、疾患を引き起こすことなく永続的にまたは一時的に皮膚、鼻孔および咽喉にコロニーを形成することができる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染は、軽度の皮膚感染から心内膜炎、骨髄炎、菌血症および敗血症までさまざまである。黄色ブドウ球菌(S.aureus)はまた、大多数の院内感染も引き起こし、市中発症感染におけるその罹患率は増加しつつある。さらに、2005年には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus)(MRSA)感染は、100,000個体当たり31.8個体と見積もられ、2005年の米国における16,650人の死亡を包含していた(Klevensら(2007)J.Am.Med.Assoc.298:1763〜1771)。疾患は、個体が、手術中、留置カテーテルもしくは他の装置の設置、外傷または創傷など免疫バリアが破られることによって免疫無防備状態になるときに起こる。
【0004】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)は、多数の毒素および酵素を包含する多数の細胞外および細胞内抗原を産生する。本明細書において特に興味深いのは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の莢膜多糖血清型(WeinsteinおよびFields編、Seminars in Infectious Disease.IV.Bacterial Vaccines.(New York、NY、Thime Stratton;1982.pp.285〜293)中のKarakawaおよびVann、「Capsular polysaccharides of Staphylococcus aureus」を参照)、特に、血清型5および8莢膜多糖である。個体から単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)の多数の株に関する疫学的研究は、70%〜80%が、血清型5かまたは8莢膜多糖であることを示した(Arbeitら(1984)Digan.Microbiol.Infect.Dis.2:85〜91)。残念ながら、莢膜多糖は、それら自体では不十分な免疫原である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブドウ球菌性の感染および疾患は、血管内装置および侵襲的手順を使用するために、この20年間で劇的に増加した。疾患発生率の上昇は、抗生物質抵抗性が並行して上昇しているため、より厄介であり、したがって、ブドウ球菌性の感染および疾患を予防するための免疫原性組成物の差し迫った必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲート、およびそのようなコンジュゲートを作製するための方法を対象とする。黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖は、当業者に知られている単離手順を使用して細菌から直接得ることができ、合成プロトコルを使用して製造することができ、または当業者にも知られている遺伝子工学手順を使用して組換えにより製造することができる。さらに、本発明は、ブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌に対する免疫応答を誘導するための方法、ブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌により引き起こされる疾患を予防するための方法、およびブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌の感染により引き起こされる疾患の少なくとも1つの症状の重症度を軽減するための方法を提供する。
【0007】
一実施形態において、本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性の多糖タンパク質コンジュゲートを含み、多糖は、20kDaから1000kDaの間の分子量を有する。一部の実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、200kDaから5000kDaの間の分子量を有する。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートの多糖部分は、70kDaから300kDaの間の分子量範囲を有する。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、500kDaから2500kDaの間の分子量範囲を有する。
【0008】
一実施形態において、血清型5または8莢膜多糖は、10〜100%の間のO−アセチル化度を有する。一実施形態において、O−アセチル化度は、50〜100%の間である。一実施形態において、O−アセチル化度は、75〜100%の間である。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイのいずれかにおいて細菌を致死させることにより測定されて機能的である抗体を生成する。
【0009】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲート担体タンパク質は、CRM197を含む。一実施形態において、CRM197は、カルバメート結合、アミド結合、または両方を通じて多糖と共有結合している。一実施形態において、CRM197に対するコンジュゲートしているリシンのモル比は、約10:1〜約25:1であってよい。一実施形態において、コンジュゲートは、多糖の少なくとも5〜10個の糖反復単位毎にCRM197と多糖の間に1つの共有結合を含む。一実施形態において、担体タンパク質と多糖の間の結合は、多糖の5個の反復単位毎に1つ存在する。
【0010】
一実施形態において、CRM197を含む免疫原性コンジュゲートは、多糖と共有結合している5〜22個のリシンまたは8〜15個のリシンを含む。一実施形態において、CRM197を含む免疫原性コンジュゲートは、多糖と共有結合している5〜23個のリシンまたは8〜12個のリシンを含む。
【0011】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、10〜100%O−アセチル化されている5または8型多糖を含む。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、50〜100%O−アセチル化されている5または8型多糖を含む。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、75〜100%O−アセチル化されている5または8型多糖を含む。一部の実施形態において、免疫原性組成物を使用し、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイにおいて機能的である抗体を生成することができる。
【0012】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、5または8型多糖の総量と比較して約30%未満の遊離5または8型多糖を含む。
【0013】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、5または8型多糖の総量と比較して約20%未満の遊離5または8型多糖を含む。
【0014】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載されている免疫原性コンジュゲートおよびアジュバント、希釈剤、または担体のうちの少なくとも1つを含む免疫原性組成物を含む。
【0015】
アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムのうちの1つまたは複数などのアルミニウムベースのアジュバントであってよい。一実施形態において、アジュバントは、リン酸アルミニウムを含む。
【0016】
一実施形態において、免疫原性組成物は、5または8型多糖の総量と比較して約30%未満の遊離5または8型多糖を含む。
【0017】
一実施形態において、免疫原性組成物は、5または8型多糖の総量と比較して約20%未満の遊離5または8型多糖を含む。
【0018】
一実施形態において、本発明は、対象において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5または8莢膜多糖コンジュゲートに対する免疫応答を誘導する方法であって、対象に、免疫学的に有効な量の本明細書に記載されている免疫原性組成物を投与するステップを含む方法を含む。
【0019】
一実施形態において、本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性の多糖タンパク質コンジュゲートを製造する方法であって、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を有機溶媒中で1,1−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)(CDT)と反応させて、活性化された血清型5または8多糖を生じさせるステップと、活性化された血清型5または8多糖を有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型5または8多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップとを含む方法を含む。
【0020】
一実施形態において、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5または8莢膜多糖を活性化する方法は、単離された血清型5または8多糖を凍結乾燥するステップと、凍結乾燥された多糖を有機溶媒に再懸濁するステップとをさらに含む。一実施形態において、再懸濁された多糖は、活性化され、次いで、担体タンパク質と直接反応する。一実施形態において、活性化された単離された血清型5または8多糖は、担体タンパク質と反応させる前に単離される。一実施形態において、単離された活性化された単離された血清型5または8多糖は、多糖を担体タンパク質と反応させる前に、凍結乾燥されて、凍結乾燥された活性化された単離された血清型5または8多糖を生じさせる。一実施形態において、単離された多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、担体タンパク質を多糖と反応させる前に、担体タンパク質を凍結乾燥して、凍結乾燥された担体タンパク質を生じさせるステップを含む。一実施形態において、単離された多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、活性化された単離された血清型5または8多糖の担体タンパク質との反応の一部として、凍結乾燥された活性化された単離された血清型5または8多糖および凍結乾燥された担体タンパク質を有機溶媒に再懸濁するステップを含む。
【0021】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、活性化された多糖と担体タンパク質の反応混合物を希釈し、約20℃〜約26℃にて少なくとも4時間にわたって約8.8〜約9.2のpHを維持するステップを含む。
【0022】
一実施形態において、活性化された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖と担体タンパク質の反応混合物は、約23℃にて少なくとも4時間にわたって約9.0のpHにて維持される。
【0023】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖担体タンパク質を製造する方法は、製造された後に、単離された血清型5または8多糖タンパク質コンジュゲートを単離するステップを含む。
【0024】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において使用される有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。一実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される。一実施形態において、単離された多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法 有機溶媒は、DMSOである。
【0025】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、有機溶媒中の5型莢膜多糖およびCDTを含む反応混合物の水濃度を約0.1から0.3%の間に調整するステップを含む。一実施形態において、有機溶媒中の5型莢膜多糖およびCDTを含む反応混合物の水濃度は、約0.2%に調整される。
【0026】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5型莢膜多糖を活性化するステップは、多糖を、有機溶媒中の5型莢膜多糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する多糖の量に対して約20モル過剰である量のCDTと反応させるステップを含む。
【0027】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)8型莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、8型莢膜多糖を含む反応混合物の水濃度を決定するステップを含む。一実施形態において、多糖を活性化するために反応混合物に添加されるCDTの量は、有機溶媒中の8型莢膜多糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する水の量とほぼ等モルである量のCDTで提供される。
【0028】
一実施形態において、多糖を活性するために反応混合物に添加されるCDTの量は、有機溶媒中の8型莢膜多糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する水の量と比較して約0.5:1のモル比である量のCDTで提供される。一実施形態において、多糖を活性するために反応混合物に添加されるCDTの量は、有機溶媒中の8型莢膜多糖およびCDTを含む反応混合物中に存在する水の量と比較して約0.75:1のモル比である量のCDTで提供される。
【0029】
一実施形態において、活性化された多糖を単離するステップを含む方法は、透析濾過のステップを含む。
【0030】
一実施形態において、担体タンパク質の凍結乾燥を含む方法、凍結乾燥の前に、担体タンパク質は、NaClに対して透析濾過され、NaCl/タンパク質担体タンパク質のw/w比は、約0.5〜約1.5に調整される。一実施形態において、担体タンパク質に対するNaClの比は、約1である。
【0031】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において使用される担体タンパク質は、CRM197を含む。
【0032】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において使用されるCRM197は、約1:1の重量比にて活性化された血清型5または8多糖と反応する。
【0033】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、有機溶媒中でCDTと混合する前に5または8型莢膜多糖をイミダゾールまたはトリアゾールと混合するステップを含む。
【0034】
一実施形態において、単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、血清型5または8多糖担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップを含む。
【0035】
一実施形態において、本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを製造する方法であって、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を、有機溶媒中で3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド(PDPH)およびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせるステップと、PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせるステップと、活性化された血清型5または8多糖を単離して、単離された活性化された血清型5または8多糖を生じさせるステップと、活性化された担体タンパク質を提供するステップと、単離された活性化された血清型5または8多糖を活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型5または8多糖担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップとを含み、それによって、担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法を提供する。一実施形態において、活性化された担体タンパク質は、活性化された担体タンパク質を活性化された多糖と反応させる前に単離される。
【0036】
一実施形態において、活性化された担体タンパク質を単離するステップは、単離された活性化された血清型5または8多糖を凍結乾燥して、凍結乾燥された活性化された血清型5または8多糖を生じさせるステップをさらに含む。
【0037】
一実施形態において、ブロモ酢酸は、ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)である。
【0038】
一実施形態において、PDPHを利用する血清型8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、極性非プロトン性溶媒である有機溶媒の使用を含む。一実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、およびヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)からなる群から選択される。一実施形態において、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0039】
一実施形態において、PDPHを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において使用されるカルボジイミドは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)である。
【0040】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、血清型5または8莢膜多糖を、約1:5:3の多糖:PDPH:EDAC重量比にて有機中でPDPHおよびEDACと反応させるステップを含む。
【0041】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において使用される還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)である。
【0042】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法における担体タンパク質の活性化は、担体タンパク質をブロモ酢酸と反応させるステップを含む。
【0043】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において活性化された血清型5または8多糖を単離するステップは、透析濾過を含む。
【0044】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、血清型5または8多糖担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップを含む。一実施形態において、血清型5または8多糖担体タンパク質コンジュゲートを加水分解するステップは、システアミン塩酸塩の添加を含む。
【0045】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法は、担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを単離するステップをさらに含む。
【0046】
一実施形態において、血清型5または8多糖担体タンパク質コンジュゲートの単離は、透析濾過を含む。
【0047】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において使用される担体タンパク質は、CRM197を含む。
【0048】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖−CRM197コンジュゲートを製造する方法におけるCRM197は、約1:1 CRM197:莢膜多糖分子の重量比で添加される。
【0049】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において使用される活性化された5または8型莢膜多糖は、約50kdから約500kdの間のサイズを有する。
【0050】
一実施形態において、PDPHおよびEDACを利用する血清型5または8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを製造する方法において製造される免疫原性コンジュゲートは、約400kdから約5000kdの間のサイズを有する。
【0051】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載されている方法のうちのいずれかにより製造される5または8型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを含む免疫原性組成物を提供する。
【0052】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載されている方法のうちのいずれかにより製造される5または8型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートおよびアジュバント、希釈剤または担体のうちの少なくとも1つを含む免疫原性組成物を提供する。一実施形態において、免疫原性組成物は、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択することができるアルミニウムベースのアジュバントを含む。一実施形態において、本明細書に記載されている免疫原性組成物は、アジュバントリン酸アルミニウムを含む。
【0053】
本明細書に記載されている免疫原性組成物は、5または8型多糖の総量と比較して30%未満および20%未満の遊離5または8型多糖を含むことができる。本明細書に記載されている免疫原性組成物は、水または低イオン強度中性pH緩衝液中で保存することができる。
【0054】
一実施形態において、本発明は、対象においてブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌に関係するブドウ球菌性の感染、疾患または状態を軽減または予防する方法であって、対象に治療的または予防的な量の本明細書に記載されている免疫原性組成物を投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態において、感染、疾患または状態は、侵襲性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、敗血症および保菌からなる群から選択される。
【0055】
一実施形態において、本発明は、手術手順を受けている対象においてブドウ球菌性感染を軽減または予防する方法であって、手術手順の前に対象に予防的に有効な量の本明細書に記載されている免疫原性組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0056】
一実施形態において、本発明の方法は、CDTの代わりにCDIを用いることを含む。
【0057】
一実施形態において、本発明は、担体タンパク質と共有結合している50kDaから800kDaの間の分子量を有する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)5または8型莢膜多糖を提供し、担体タンパク質と共有結合している多糖の合わせた分子量は、約400kDaから5000kDaの間である。
【0058】
一実施形態において、担体タンパク質と共有結合している多糖は、70kDaから300kDaの間の分子量範囲を有する多糖部分を含む。一実施形態において、担体タンパク質と共有結合している多糖は、500kDaから2500kDaの間の分子量範囲を有する。
【0059】
一実施形態において、担体タンパク質と共有結合している多糖の担体タンパク質部分は、CRM197を含む。一実施形態において、CRM197は、カルバメート結合、アミド結合、または両方を通じて多糖と共有結合している。一部の実施形態において、CRM197に対するコンジュゲートしているリシンのモル比は、約10:1〜約25:1である。一部の実施形態において、担体タンパク質と共有結合している多糖は、多糖の少なくとも5〜10個の糖反復単位毎にCRM197間に少なくとも1つの共有結合を含む。一部の実施形態において、担体タンパク質と共有結合している多糖は、多糖の5個の反復単位毎に存在するCRM197と多糖の間の少なくとも1つの結合を含む。一部の実施形態において、CRM197と共有結合している多糖のCRM197部分は、多糖と共有結合している5〜22個のリシンを含む。一部の実施形態において、CRM197と共有結合している多糖のCRM197部分は、多糖と共有結合している5〜23個のリシンを含む。一部の実施形態において、担体タンパク質と共有結合している多糖のCRM197部分は、多糖と共有結合している8〜15個のリシンを含む。一部の実施形態において、担体タンパク質と共有結合している多糖のCRM197部分は、多糖と共有結合している8〜12個のリシンを含む。
【0060】
一実施形態において、本発明は、本明細書に記載されている担体タンパク質と共有結合している黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型多糖およびアジュバント、希釈剤、または担体のうちの少なくとも1つを含む免疫原性組成物を提供する。
【0061】
一実施形態において、本発明は、対象に本明細書に記載されている担体タンパク質と共有結合している黄色ブドウ球菌(S.aureus)5または8型多糖を含む免疫原性組成物を投与して、本明細書に記載されている免疫応答を生成する方法を提供する。
【0062】
一実施形態において、本発明は、分子量が20kDaから1000kDaの間の多糖を単離する方法を提供する。
【0063】
一実施形態において、本発明は、莢膜多糖、免疫原性コンジュゲート、または本発明の免疫原性組成物により生成される抗体を提供する。
【0064】
本発明は、その下記の詳細な説明について検討する場合、より良く理解され、上に示されているもの以外の特徴、態様および利点は、明らかになるはずである。そのような詳細な説明は、下記の図面に言及する:
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖の反復多糖構造を示す図である(N−アセチルマンノサミヌロン酸は、ManNAcaであり、N−アセチルL−フコサミンは、L−FucNAcであり、N−アセチルD−フコサミンは、D−FucNAcである)。
【図2A】黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖(O−アセチルアッセイ)およびテイコ酸(ホスフェートアッセイ)についてのイオン交換クロマトグラフィー(Q−Sepharose)の画分の分析を示す図である。
【図2B】二重免疫拡散アッセイによる黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖についてのイオン交換クロマトグラフィー(Q−Sepharose)の画分の分析を示す図である。
【図3A】熱処理における黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖分子量の減少に対する95℃におけるpH(3.5、4または5)の効果を示す図である。
【図3B】熱処理における黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖分子量の減少に対するpH3.5における温度(55℃、75℃または95℃)の効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型8莢膜多糖を含む免疫原性の多糖タンパク質コンジュゲートであって、
a)多糖が、20kDaから1000kDaの間の分子量を有する免疫原性コンジュゲート。
【請求項2】
200kDaから5000kDaの間の分子量を有する、請求項1に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項3】
担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5莢膜多糖を含む免疫原性の多糖タンパク質コンジュゲートであって、
a)多糖が、20kDaから1000kDaの間の分子量を有する免疫原性コンジュゲート。
【請求項4】
200kDaから5000kDaの間の分子量を有する、請求項3に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項5】
多糖が、70kDaから300kDaの間の分子量範囲を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項6】
500kDaから2500kDaの間の分子量範囲を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項7】
多糖が、10〜100%の間のO−アセチル化度を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項8】
多糖が、50〜100%の間のO−アセチル化度を有する、請求項7に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項9】
多糖が、75〜100%の間のO−アセチル化度を有する、請求項7に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項10】
動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイのいずれかにおける細菌の致死により測定されて機能的である抗体を生じさせることができる、請求項7から9のいずれかに記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項11】
担体タンパク質が、CRM197である、請求項1から10のいずれかに記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項12】
CRM197が、カルバメート結合、アミド結合、または両方を通じて多糖と共有結合している、請求項11に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項13】
CRM197に対するコンジュゲートしているリシンのモル比が、約10:1〜約25:1である、請求項11または12に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項14】
CRM197と多糖の間の少なくとも1つの共有結合が、少なくとも多糖の5〜10個の糖反復単位毎に存在する、請求項13に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項15】
CRM197と多糖の間の少なくとも1つの結合が、多糖の5個の糖反復単位毎に存在する、請求項13または14に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項16】
CRM197が、多糖と共有結合している5〜22個のリシンを含む、請求項11から15のいずれかに記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項17】
CRM197が、多糖と共有結合している8〜15個のリシンを含む、請求項16に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項18】
5または8型多糖の総量と比較して30%未満の遊離5または8型多糖を含む、請求項1から17のいずれかに記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項19】
5または8型多糖の総量と比較して20%未満の遊離5または8型多糖を含む、請求項18に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載の免疫原性コンジュゲートおよびアジュバント、希釈剤、または担体のうちの少なくとも1つを含む免疫原性組成物。
【請求項21】
アジュバントが、アルミニウムベースのアジュバントである、請求項20に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
アジュバントが、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される、請求項21に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
アジュバントが、リン酸アルミニウムである、請求項21に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
5または8型多糖の総量と比較して30%未満の遊離5または8型多糖を含む、請求項20から23のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
5または8型多糖の総量と比較して20%未満の遊離5または8型多糖を含む、請求項24に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
対象において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5または血清型8莢膜多糖コンジュゲートに対する免疫応答を誘導する方法であって、対象に、免疫学的に有効な量の請求項20から25のいずれかに記載の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項27】
担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型8莢膜多糖を含む免疫原性の多糖タンパク質コンジュゲートを製造する方法であって、
a)単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を有機溶媒中でカルボニルジトリアゾール(CDT)と反応させて、活性化された血清型8多糖を生じさせるステップと、
b)活性化された血清型8多糖を有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型8多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップとを含み、
黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法。
【請求項28】
担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5莢膜多糖を含む免疫原性の多糖タンパク質コンジュゲートを製造する方法であって、
a)単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を有機溶媒中でカルボニルジトリアゾール(CDT)と反応させて、活性化された血清型8多糖を生じさせるステップと、
b)活性化された血清型5多糖を有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型5多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップとを含み、
黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法。
【請求項29】
単離された多糖を凍結乾燥するステップと、凍結乾燥された多糖を有機溶媒に再懸濁するステップとをさらに含む、請求項27または請求項28に記載の方法。
【請求項30】
活性化された単離多糖が、担体タンパク質と反応させる前に活性化反応から単離される、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
ステップb)が、
i)単離された活性化された単離多糖を凍結乾燥して、凍結乾燥された活性化された単離多糖を生じさせるステップと、
ii)担体タンパク質を凍結乾燥して、凍結乾燥された担体タンパク質を生じさせるステップと、
iii)凍結乾燥された活性化された単離多糖および凍結乾燥された担体タンパク質を有機溶媒に再懸濁して、担体タンパク質と混合された活性化された単離多糖を生じさせるステップとを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
緩衝液中へステップb)の反応混合物を希釈し、約20℃〜約26℃にて少なくとも4時間にわたって約8.8〜約9.2のpHを維持するステップをさらに含む、請求項27から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
緩衝液中へステップb)の反応混合物を希釈し、約23℃にて少なくとも4時間にわたって約9.0のpHを維持するステップをさらに含む、請求項27から31のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型莢膜多糖担体タンパク質コンジュゲートを単離するステップをさらに含む、請求項27から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
有機溶媒が、極性非プロトン性溶媒である、請求項27から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
極性非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、およびヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
有機溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
多糖をCDTと反応させるステップが、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖中に存在する水を決定するステップと有機溶媒中でCDT:水の約1:1モル比にCDT濃度を調整するステップとを含む、請求項27および29から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
多糖をCDTと反応させるステップが、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖中に存在する水を決定するステップと、有機溶媒中でCDT:水の約0.5:1モル比にCDT濃度を調整するステップとを含む、請求項27および29から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
多糖をCDTと反応させるステップが、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖中に存在する水を決定するステップと、有機溶媒中でCDT:水の約0.75:1モル比にCDT濃度を調整するステップとを含む、請求項27および29から38のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
血清型5多糖をCDTと反応させるステップが、多糖と比較して約20倍モル過剰のCDTを提供するステップを含む、請求項28から37のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
有機溶媒混合物中の血清型5多糖CDTが、0.1から0.3%の間の水濃度に調整される、請求項28から37および41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
水濃度が、0.2%に調整される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
活性化された血清型多糖を単離するステップが、透析濾過を含む、請求項29から43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
凍結乾燥の前に、担体タンパク質が、NaClに対して透析濾過され、NaCl/タンパク質担体タンパク質のw/w比が、約0.5〜約1.5に調整される、請求項27から44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
担体タンパク質が、CRM197である、請求項27から45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
活性化された血清型多糖が、約1:1の重量比でCRM197と反応する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型莢膜多糖が、有機溶媒中でCDTと混合される前にイミダゾールまたはトリアゾールと混合される、請求項27から47のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
血清型多糖担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップをさらに含む、請求項27から48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを作製する方法であって、
a)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を、有機溶媒中で3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド(PDPH)およびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせるステップと、
b)PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせるステップと、
c)活性化された血清型8多糖を単離して、単離された活性化された血清型8多糖を生じさせるステップと、
d)活性化された担体タンパク質を提供するステップと、
e)単離された活性化された血清型8多糖を活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型8多糖担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップとを含み、それによって、担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法。
【請求項51】
担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)血清型5莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを作製する方法であって、
a)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を、有機溶媒中で3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド(PDPH)およびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせるステップと、
b)PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせるステップと、
c)活性化された血清型5多糖を単離して、単離された活性化された血清型5多糖を生じさせるステップと、
d)活性化された担体タンパク質を提供するステップと、
e)単離された活性化された血清型5多糖を活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型5多糖担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップとを含み、それによって、担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法。
【請求項52】
活性化された担体タンパク質が、活性化された担体タンパク質を活性化された多糖と反応させる前に単離される、請求項50または請求項51に記載の方法。
【請求項53】
ステップc)が、単離された活性化された血清型8多糖を凍結乾燥して、凍結乾燥された活性化された血清型多糖を生じさせるステップをさらに含む、請求項50から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
有機溶媒が、極性非プロトン性溶媒である、請求項50から53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
極性非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、およびヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)からなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
極性非プロトン性溶媒が、ジメチルスルホキシド(DMSO)である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
カルボジイミドが、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)である、請求項50から56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
血清型莢膜多糖を、有機溶媒中でPDPHおよびEDACと反応させるステップが、約1:5:3の多糖:PDPH:EDAC重量比を維持するステップを含む、請求項50から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
還元剤が、ジチオスレイトール(DTT)である、請求項50から58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
担体タンパク質の活性化が、担体タンパク質をブロモ酢酸と反応させるステップを含む、請求項50から59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
ブロモ酢酸が、ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
活性化された血清型多糖を単離するステップが、透析濾過を含む、請求項50から61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
活性化された担体タンパク質を単離するステップが、透析濾過を含む、請求項50から62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
血清型多糖担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップをさらに包含する、請求項50から63のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
血清型多糖担体タンパク質コンジュゲートを加水分解するステップが、システアミン塩酸塩の添加を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
担体タンパク質とコンジュゲートしている単離された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを単離するステップをさらに含む、請求項50から65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
血清型多糖:担体タンパク質コンジュゲートの単離が、透析濾過を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記担体タンパク質が、CRM197である、請求項50から67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
活性化された血清型多糖が、約1:1の重量比でCRM197と反応する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
活性化された多糖が、約20kDaから約1000kDaの間のサイズを有する、請求項27から69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
活性化された多糖が、約50kDaから約500kDaの間のサイズを有する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
免疫原性の多糖タンパク質コンジュゲートが、400kDaから約5000kDaの間のサイズを有する、請求項27から71のいずれかに記載の方法。
【請求項73】
請求項27から72のいずれかに記載の方法により製造される免疫原性コンジュゲート。
【請求項74】
約1%を超える遊離多糖および約30%未満の遊離多糖を含む、請求項73に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項75】
約20%未満の遊離多糖を含む、請求項73に記載の免疫原性コンジュゲート。
【請求項76】
請求項73から75のいずれかに記載の免疫原性コンジュゲートおよびアジュバント、希釈剤、または担体のうちの少なくとも1つを含む免疫原性組成物。
【請求項77】
アジュバントが、アルミニウムベースのアジュバントである、請求項76に記載の免疫原性組成物。
【請求項78】
アジュバントが、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される、請求項77に記載の免疫原性組成物。
【請求項79】
アジュバントが、リン酸アルミニウムである、請求項78に記載の免疫原性組成物。
【請求項80】
型多糖の総量と比較して30%未満の遊離型多糖を含む、請求項76から79のいずれかに記載の免疫原性組成物。
【請求項81】
型多糖の総量と比較して20%未満の遊離型多糖を含む、請求項80に記載の免疫原性組成物。
【請求項82】
担体タンパク質と共有結合している20kDaから1000kDaの間の分子量を有する黄色ブドウ球菌(S.aureus)8型莢膜多糖であって、担体タンパク質と共有結合している多糖の合わせた分子量が、約200kDaから5000kDaの間である多糖。
【請求項83】
担体タンパク質と共有結合している20kDaから1000kDaの間の分子量を有する黄色ブドウ球菌(S.aureus)5型莢膜多糖であって、担体タンパク質と共有結合している多糖の合わせた分子量が、約200kDaから5000kDaの間である多糖。
【請求項84】
70kDaから300kDaの間の分子量範囲を有する、請求項82または請求項83に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項85】
500kDaから2500kDaの間の分子量範囲を有する、請求項82または請求項83に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項86】
担体タンパク質が、CRM197である、請求項82または請求項83に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項87】
CRM197が、カルバメート結合、アミド結合、または両方を通じて多糖と共有結合している、請求項86に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項88】
CRM197に対するコンジュゲートしているリシンのモル比が、約10:1〜約25:1である、請求項86または請求項87に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項89】
CRM197と多糖の間の少なくとも1つの共有結合が、多糖の5〜10個の糖反復単位毎に存在する、請求項88のいずれか一項に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項90】
CRM197と多糖の間の少なくとも1つの共有結合が、多糖の5個の糖反復単位毎に存在する、請求項88または請求項89に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項91】
CRM197が、多糖と共有結合している5〜22個のリシンを含む、請求項88から89のいずれかに記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項92】
CRM197が、多糖と共有結合している8〜15個のリシンを含む、請求項91に記載の担体タンパク質と共有結合している多糖。
【請求項93】
請求項82から92のいずれかに記載の担体タンパク質と共有結合している多糖およびアジュバント、希釈剤、または担体のうちの少なくとも1つを含む免疫原性組成物。
【請求項94】
アジュバントが、アルミニウムベースのアジュバントである、請求項93に記載の免疫原性組成物。
【請求項95】
アジュバントが、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択される、請求項94に記載の免疫原性組成物。
【請求項96】
アジュバントが、リン酸アルミニウムである、請求項95に記載の免疫原性組成物。
【請求項97】
対象においてブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌に関係するブドウ球菌性の感染、疾患または状態を軽減または予防する方法であって、免疫学的に有効な量の請求項20から25および76から81および93から96のいずれかに記載の免疫原性組成物を対象に投与するステップを含む方法。
【請求項98】
感染、疾患または状態が、侵襲性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、敗血症および保菌からなる群から選択される、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
手術手順を受けている対象においてブドウ球菌性感染を軽減または予防する方法であって、手術手順の前に対象に免疫学的に有効な量の請求項20から25および76から81および93から96のいずれかに記載の免疫原性組成物を投与するステップを含む方法。
【請求項100】
対象が、ヒト、家庭のペット、または家畜動物である、請求項97から99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
細菌細胞懸濁液を酸性熱処理に供するステップを含む、分子量が20〜1000kDaの黄色ブドウ球菌(S.aureus)莢膜多糖を単離する方法。
【請求項102】
本発明の莢膜多糖、免疫原性コンジュゲート、または免疫原性組成物により生成される抗体。
【請求項103】
動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイにおいて細菌を致死させることにより測定されて機能的である、請求項102に記載の抗体。

【図4】それぞれpH3.5および4.5、ならびに95℃における熱処理中の経時的な血清型5莢膜多糖と比較した精製された黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖の分子量を示す図である。
【図5】AlPO処置対照(円)と比較した血清型8莢膜多糖−CRM197コンジュゲートを受けたマウス(菱形)における生存増加を示す図である。
【図6】黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5多糖の反復多糖構造を示す図である(N−アセチルマンノサミヌロン酸は、ManNAcAであり、N−アセチルL−フコサミンは、L−FucNAcであり、N−アセチルD−フコサミンは、D−FucNAcAである)。
【図7A】黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5多糖(O−アセチルアッセイ)およびテイコ酸(ホスフェートアッセイ)についてのイオン交換クロマトグラフィー(Q−Sepharose)の画分の分析を示す図である。
【図7B】二重免疫拡散アッセイによる黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5多糖についてのイオン交換クロマトグラフィー(Q−Sepharose)の画分の分析を示す図である。
【図8A】熱処理における黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖分子量の減少に対する95℃におけるpH(3.5、4または5)の効果を示す図である。
【図8B】熱処理における黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖分子量の減少に対するpH3.5における温度(55℃、75℃または95℃)の効果を示す図である。
【図9】PBS処置対照と比較した血清型5多糖−CRM197コンジュゲートを受けたマウス(網掛け部分は、処置マウスである)における腎盂腎炎減少を示す図である。
【図10】高分子量(HMW)CP5−CRM、低分子量(LMW)CP5−CRMまたはPP5−CRM対照をワクチン接種されたマウスにおける黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266によるチャレンジ後の腎臓において回収されたコロニー形成単位(CFU)を示す図である。
【図11】多糖コンジュゲートの異なる製剤(高分子量(HMW)CP5−CRM、低分子量(LMW)CP5−CRM)をワクチン接種されたマウスから得られた血清のOPA力価(幾何平均)の比較を示す図である。群は、5〜9匹のマウスからなった。
【発明を実施するための形態】
【0066】
概要
本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5および8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートならびにそれらを調製および使用するための方法に関する。本発明の免疫原性コンジュゲートの新規な特徴は、多糖および得られたコンジュゲートの分子量プロファイル、CRM197担体タンパク質当たりのコンジュゲートしているリシンと多糖と共有結合しているリシンの数の比、多糖の反復単位の関数としての担体タンパク質と多糖の間の共有結合の数、および総多糖と比較した遊離多糖の相対量を包含する。本明細書で使用されている「遊離多糖」という用語は、担体タンパク質とコンジュゲートしていないが、それにも関わらずコンジュゲート組成物中に存在する多糖を意味する。
【0067】
本発明の免疫原性コンジュゲートを作製するための方法には、CDI(1,1−カルボニルジイミダゾール)、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)またはPDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を伴うコンジュゲーション化学反応を使用する莢膜多糖の担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを伴う。CDIは、CP8コンジュゲーションのみに対して特異的である。CDI/CDTの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の1炭素または0炭素リンカーをもたらすが、PDPHの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の共有チオエーテル結合をもたらす。
【0068】
−SH(チオール化されたCP)〜−NH結合のための追加のクロスリンカーは、スルホ−LC−SMPT;スルホ−LC−SMPT(4−スルホスクシンイミジル−6−メチル−a−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート));スルホ−KMUS(N−[k−マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル);チオールにより開裂するスルホ−LC−SPDP(スルホスクシンイミジル6−(3’−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド)ヘキサノエート);スルホ−SMPB(スルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート);スルホ−SIAB(N−スルホスクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート);スルホ−EMCS([N−e−マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル);EMCA(N−e−マレイミドカプロン酸);スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート);スルホ−MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル);スルホ−GMBS(N−[g−マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル);BMPA(N−β−マレイミドプロピオン酸);2−イムノチオラン塩酸塩;3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジルエステル;3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジルエステル;4−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル;SMPT(4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−a−[2−ピリジルジチオ]トルエン);LC−SMCC(スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシ−[6−アミドカプロエート]);KMUA(N−k−マレイミドウンデカン酸);LC−SPDP(スクシンイミジル6−(3−[2−ピリジルジチオ]−プロピオンアミド)ヘキサノエート);SMPH(スクシンイミジル−6−[β−マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート);SMPB(スクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート);SIAB(N−スクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート);EMCS([N−e−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル);SMCC(スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート);MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル);SBAP(スクシンイミジル3−[ブロモアセトアミド]プロピオネート);BMPS(N−[β−マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル);AMAS N−(a−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル);SIA(N−スクシンイミジルヨードアセテート);およびN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノベンゾエートを包含するが、それらに限定されるものではない。
【0069】
薬剤は、−SHから−OH基のためのクロスリンカーを使用して架橋することもできる。そのようなクロスリンカーは、PMPI(N−[p−マレイミドフェニル]イソシアネート)を包含するが、それに限定されるものではない。
【0070】
本明細書に記載されている組成物および方法は、様々な応用において有用である。例えば、コンジュゲートは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染からレシピエントを防御するためのコンジュゲート免疫原性組成物の製造において使用することができる。代替方法として、様々なコンジュゲートは、細菌の莢膜多糖に対する抗体の製造において使用することができ、その後に、細菌検出および血清型決定などの研究および臨床検査アッセイにおいて使用することができる。そのような抗体は、対象に受動免疫を与えるために使用することもできる。一部の実施形態において、細菌性多糖に対して産生される抗体は、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイのいずれかにおいて機能的である。
【0071】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されているすべての技術的および科学的用語は、本発明が関係する当業者により一般に理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似しているか同等であるいずれの方法および材料も本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が本明細書に記載されている。実施形態について記載することおよび本発明を主張することに際して、ある種の用語法は、下に記されている定義に従って使用されるものとする。
【0072】
本明細書で使用されている、単数形「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確にそうでないことを示していない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「その方法」への言及は、本明細書に記載されておりかつ/または本開示を読めば当業者に明らかになるであろうタイプの1つまたは複数の方法、および/またはステップを包含し、以下同様である。
【0073】
本明細書で使用されている、「約」とは、述べられている濃度範囲、時間枠、分子量、温度またはpHなどの値の統計的に意味のある範囲内を意味する。そのような範囲は、所与の値または範囲の一桁以内、典型的には、20%以内、より典型的には、10%以内、さらにより典型的には、5%以内であってよい。「約」という用語により包含される許容できる変動は、研究中の特定のシステムによって決まるはずであり、当業者により容易に理解することができる。ある範囲が、本出願内で引用される場合はいつでも、その範囲内のあらゆる整数も本発明の実施形態として企図される。
【0074】
本開示において、「含む(comprise)」、「含まれる(comprised)」、「含んでいる(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有している(containing)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰属される意味を有することがあり、例えば、それらは、「包含する(include)」、「包含される(included)」、「包含している(including)」などを意味することがある。そのような用語は、いずれの他の要素も除外することなく特定の要素または一組の要素の包含を指す。「から本質的になっている(consisting essentially of)」および「から本質的になる(consist essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれらに帰属される意味を有し、例えば、それらは、本発明の新規または基礎的な特徴を損なわない追加の要素またはステップの包含を可能にし、すなわち、それらは、本発明の新規なまたは基礎的な特徴を損なう追加の引用されていない要素またはステップを除外し、それらは、本明細書に引用されているか参照により本明細書に組み込まれている文書などの従来技術の要素またはステップを除外するのは、特に、例えば、本明細書に引用されているか参照により本明細書に組み込まれている文書を超える、特許性のある、例えば、従来技術を越えて新規な、非自明の、独創的である文書を定義することが本文書の目的であるためである。また、「からなる(consist of)」および「からなっている(consisting of)」という用語は、米国特許法においてそれらに帰属される意味を有し、すなわち、これらの用語は、クローズエンド型である。したがって、これらの用語は、特定の要素または一組の要素の包含およびすべての他の要素の除外を指す。
【0075】
免疫原性コンジュゲート
上に記載されているように、本発明は、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートに関する。本発明の一実施形態は、下記の特徴のうちの1つまたは複数を有する担体分子またはタンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを提供し:多糖は、50kDaから700kDaの間の分子量を有し;免疫原性コンジュゲートは、500kDaから2500kDaの間の分子量を有し;コンジュゲートは、総多糖に対して約30%未満の遊離多糖を含む。一部の実施形態において、多糖は、20kDaから1000kDaの間の分子量を有する。一部の実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、200kDaから5000kDaの間の分子量を有する。他の実施形態において、コンジュゲートは、総多糖に対して約25%、約20%、約15%、約10%、または約5%未満の遊離多糖を含む。
【0076】
本明細書で使用されているような「コンジュゲート」は、通常は望ましい範囲の分子量の莢膜多糖および担体タンパク質を含み、莢膜多糖は、担体タンパク質とコンジュゲートしている。コンジュゲートは、若干量の遊離莢膜多糖を含有していても含有していなくてもよい。本明細書で使用されている、「遊離莢膜多糖」とは、コンジュゲートしている莢膜多糖担体タンパク質と非共有結合的に会合している(すなわち、非共有結合している、吸着されているまたは中にもしくは共に取り込まれている)莢膜多糖を指す。「遊離莢膜多糖」、「遊離多糖」および「遊離糖」という用語は、互換的に使用されることがあり、同じ意味を伝えることが意図されている。
【0077】
担体タンパク質の性質に関わらず、担体タンパク質は、直接かまたはリンカーを通じて莢膜多糖とコンジュゲートさせることができる。本明細書で使用されている、「コンジュゲートさせること(to conjugate)」、「コンジュゲートした(conjugated)」および「コンジュゲートしている(conjugating)」とは、それによって細菌の莢膜多糖が担体分子と共有結合的に接続しているプロセスを指す。コンジュゲーションは、細菌の莢膜多糖の免疫原性を高める。コンジュゲーションは、下に記載されている方法に従うか当技術分野において知られている他のプロセスにより行うことができる。
【0078】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)莢膜多糖の分子量は、免疫原性組成物における使用について考慮すべき事柄である。高分子量莢膜多糖は、抗原表面上に存在するエピトープのより高い結合価によってある種の抗体免疫応答を誘導することができる。「高分子量莢膜多糖」の単離は、本発明の組成物および方法における使用のために企図されている。本発明の一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で20kDaから1000kDaまでの範囲で単離および精製することができる。本発明の一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で50kDaから700kDaまでの範囲で単離および精製することができる。本発明の一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で50kDaから300kDaまでの範囲で単離および精製することができる。一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で70kDaから300kDaまでの範囲で単離および精製することができる。一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で90kDaから250kDaまでの範囲で単離および精製することができる。一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で90kDaから150kDaまでの範囲で単離および精製することができる。一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で90kDaから120kDaまでの範囲で単離および精製することができる。一実施形態において、高分子量血清型5または8莢膜多糖は、分子量で80kDaから120kDaまでの範囲で単離および精製することができる。本発明の方法により単離および精製することができる高分子量血清型5または8莢膜多糖の他の範囲は、分子量で70kDa〜100kDa;分子量で70kDa〜110kDa;分子量で70kDa〜120kDa;分子量で70kDa〜130kDa;分子量で70kDa〜140kDa;分子量で70kDa〜150kDa;分子量で70kDa〜160kDa;分子量で80kDa〜110kDa;分子量で80kDa〜120kDa;分子量で80kDa〜130kDa;分子量で80kDa〜140kDa;分子量で80kDa〜150kDa;分子量で80kDa〜160kDa;分子量で90kDa〜110kDa;分子量で90kDa〜120kDa;分子量で90kDa〜130kDa;分子量で90kDa〜140kDa;分子量で90kDa〜150kDa;分子量で90kDa〜160kDa;分子量で100kDa〜120kDa;分子量で100kDa〜130kDa;分子量で100kDa〜140kDa;分子量で100kDa〜150kDa;分子量で100kDa〜160kDa;および類似の望ましい分子量範囲を包含する。上の範囲のうちの任意の範囲内にあるすべての全数整数(whole number integer)が、本明細書の実施形態として企図されている。
【0079】
一実施形態において、コンジュゲートは、分子量で約50kDaから約5000kDaの間の分子量を有する。一実施形態において、コンジュゲートは、分子量で約200kDaから約5000kDaの間の分子量を有する。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、約500kDaから約2500kDaの間の分子量を有する。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、約500kDaから約2500kDaの間の分子量を有する。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、約600kDaから約2800kDaの間の分子量を有する。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、約700kDaから約2700kDaの間の分子量を有する。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートは、約1000kDaと約2000kDaの間;約1800kDaと約2500kDaの間;約1100kDaと約2200kDaの間;約1900kDaと約2700kDaの間;約1200kDaと約2400kDaの間;約1700kDaと約2600kDaの間;約1300kDaと約2600kDaの間;約1600kDaから約3000kDaの間の分子量を有する。上の範囲のうちの任意の範囲内にあるすべての全数整数が、本発明の実施形態として企図されている。
【0080】
本明細書で使用されている、「免疫原性の」とは、細菌の莢膜多糖または抗原を含むコンジュゲート免疫原性組成物などの抗原(または、抗原のエピトープ)が、体液性かもしくは細胞性に、または両方で哺乳動物などの宿主において免疫応答を誘発する能力を意味する。したがって、本明細書で使用されているような「免疫原性コンジュゲート」または「コンジュゲート」とは、免疫応答を誘発するために使用することができる担体分子とコンジュゲートしている細菌の莢膜多糖の抗原または抗原決定基(すなわち、エピトープ)を含有するいずれの免疫原性コンジュゲートも意味する。免疫原性コンジュゲートは、細胞表面におけるMHC分子と会合している抗原の提示により宿主を感作するのに役立つことがある。さらに、抗原特異的なT細胞または抗体を生成させ、免疫化された宿主の将来の防御を可能にすることができる。このようにして、免疫原性コンジュゲートは、細菌による感染に関係する1つまたは複数の症状から宿主を防御することができ、または莢膜多糖に関係する細菌による感染に起因する死から宿主を防御することがある。免疫原性コンジュゲートは、対象に受動免疫を与えるために使用することができるポリクローナルまたはモノクローナル抗体を生成するために使用することもできる。免疫原性コンジュゲートは、動物有効性モデルにおいてかまたはオプソニン化貪食性致死アッセイを介して細菌を致死させることにより測定されて機能的である抗体を生成するために使用することもできる。
【0081】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的と特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用されている、文脈により別段の指示がない限り、この用語は、無傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体ばかりでなく、人工的に作り出された抗体(例えば、キメラ、ヒト化および/またはエフェクター機能、安定性および他の生物学的活性を変えるための誘導体化)およびそれらの断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、サメおよびラクダ抗体を包含する単鎖(ScFv)およびドメイン抗体)、および抗体部分、多価抗体、多重特異性抗体を含む融合タンパク質(例えば、それらが望ましい生物学的活性を示すかぎり二重特異性抗体)および本明細書に記載されている抗体断片、ならびに抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれの他の改変された立体配置も包含することが意図されている。抗体は、IgG、IgA、またはIgM(または、それらのサブクラス)などのいずれのクラスの抗体も包含し、抗体は、いずれの特定のクラスである必要もない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、ヒトにおいてIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けられることがある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は、よく知られている。
【0082】
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部のみを含み、その部分は、無傷の抗体中に存在する場合にその部分に通常関係する機能の少なくとも1つ、好ましくは、大部分またはすべてを保持することが好ましい。
【0083】
「抗原」という用語は、一般的に、生物学的分子、通常は、免疫原性組成物中のタンパク質、ペプチド、多糖もしくはコンジュゲート、または動物中に注入されるか吸収される組成物を包含する動物において抗体もしくはT細胞応答、または両方の産生を刺激することができる免疫原性物質を指す。免疫応答は、全分子に対してか、分子の様々な部分(例えば、エピトープまたはハプテン)に対して生成されることがある。この用語は、個々の分子または抗原分子の均一もしくは不均一な集団を指すために使用されることがある。抗原は、抗体、T細胞受容体または特異的な体液性および/または細胞性免疫の他の要素により認識される。「抗原」は、すべての関連する抗原エピトープも包含する。所与の抗原のエピトープは、当技術分野においてよく知られているいずれの数のエピトープマッピング技法を使用しても同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology、Vol.66(Glenn E.Morris、編、1996)Humana Press、Totowa、N.J.を参照されたい。例えば、直線状エピトープは、例えば、固体支持体上で多数のペプチド、タンパク質分子の部分に相当するペプチドを同時に合成し、ペプチドが支持体に依然として接続している間にペプチドを抗体と反応させることにより決定することができる。そのような技法は、当技術分野において知られており、例えば、米国特許第4,708,871号;Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998〜4002;Geysenら(1986)Molec.Immunol.23:709〜715に記載されており、それらの各々は、その全体が記述されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれるものとする。同様に、立体構造エピトープは、例えば、X線結晶学および2次元核磁気共鳴などにより、アミノ酸の空間立体構造を決定することにより同定することができる。例えば、エピトープマッピングプロトコル、前掲書を参照されたい。さらに、本発明のために、「抗原」は、タンパク質が、免疫学的応答を誘発する能力を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加および置換(一般的に、保存的性質であるが、それらは、非保存的であってよい)などの改変を包含するタンパク質を指すためにも使用することができる。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発を通じて、または特定の合成手順を通じて、または遺伝子工学アプローチを通じてなどの意図的であってよいか、抗原を産生する宿主の突然変異を通じてなどの偶発的であってよい。さらに、抗原は、微生物、例えば、細菌から誘導、入手、または単離するか、全有機体であってよい。同様に、核酸免疫化応用におけるなどの抗原を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、この定義に包含される。合成抗原、例えば、ポリエピトープ、フランキングエピトープ、および他の組換えまたは合成的に誘導された抗原も包含される(Bergmannら(1993)Eur.J.Immunol.23:2777 2781;Bergmannら(1996)J.Immunol.157:3242〜3249;Suhrbier(1997)Immunol.Cell Biol.75:402 408;Gardnerら(1998)12th World AIDS Conference、Geneva、Switzerland、Jun.28〜Jul.3、1998)。
【0084】
「防御」免疫応答とは、免疫原性組成物が、体液性かもしくは細胞性、または両方の免疫応答を誘発する能力を指し、感染から対象を防御するのに役立つ。提供される防御は、絶対的である必要はなく、すなわち、対象の対照集団、例えば、ワクチンまたは免疫原性組成物を投与されていない感染動物と比較して統計的に有意な改善があれば、感染は、完全に予防され根絶される必要はない。防御は、感染の症状の重症度または発症速度を緩和することに限定されることがある。一般に、「防御免疫応答」は、各抗原に対するあるレベルの測定可能な機能的抗体応答を包含する、対象の少なくとも50%における特定の抗原に対して特異的な抗体レベルの増加の誘導を包含するであろう。特定の状況において、「防御免疫応答」は、各抗原に対するあるレベルの測定可能な機能的抗体応答を包含する、対象の少なくとも50%における特定の抗原に対して特異的な抗体レベルの2倍の増加または抗体レベルの4倍の増加の誘導を包含するかもしれない。ある種の実施形態において、オプソニン化した抗体は、防御免疫応答と相関している。したがって、防御免疫応答は、オプソニン化貪食作用アッセイ、例えば、下に記載されるものにおいて細菌数の減少率を測定することによりアッセイすることができる。少なくとも10%、25%、50%、65%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の細菌数の減少のあることが好ましい。ある組成物中の特定のコンジュゲートの「免疫原性量」は、一般的に、そのコンジュゲートについてコンジュゲートしているおよびコンジュゲートしていない総多糖に基づいて投与される。例えば、遊離多糖が20%の血清型5または8莢膜多糖コンジュゲートは、100mcg投与量中にコンジュゲートしている多糖約80mcgおよびコンジュゲートしていない多糖20mcgを有するであろう。コンジュゲートに対するタンパク質寄与は、通常、コンジュゲートの投与量を算出する場合に考慮されない。コンジュゲートの量は、ブドウ球菌の血清型に応じて変わることがある。一般的に、各投与量は、多糖0.1〜100mcg、詳細には、0.1〜10mcg、より詳細には、1〜10mcgを含むであろう。
【0085】
「対象」という用語は、哺乳動物、鳥、魚、は虫類、またはいずれの他の動物も指す。「対象」という用語は、ヒトも包含する。「対象」という用語は、家庭のペットも包含する。家庭のペットの非限定的な例は、イヌ、ネコ、ブタ、ウサギ、ラット、マウス、スナネズミ、ハムスター、モルモット、フェレット、鳥、蛇、トカゲ、魚、カメ、およびカエルを包含する。「対象」という用語は、家畜動物も包含する。家畜動物の非限定的な例は、アルパカ、バイソン、ラクダ、ウシ、シカ、ブタ、ウマ、ラマ、ラバ、ロバ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、トナカイ、ヤク、ニワトリ、ガチョウおよび七面鳥を包含する。
【0086】
図1に示されているように、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖は、下記の構造を有する:血清型5
[→4)−β−D−ManNAcA−(1→4)−3−O−Ac−α−L−FucNAc−(1→3)−β−D FucNAc−(1→]
および血清型8
[→3)−4−O−Ac−β−D−ManNAcA−(1→3)−α−L−FucNAc−(1→3)−β−D FucNAc−(1→]
Jones(2005)Carbohydr.Res.340:1097〜1106を参照されたい。血清型8莢膜多糖は、血清型5莢膜多糖と類似した三糖反復単位を有し、しかしながら、それらは、糖結合およびO−アセチル化部位の点で異なり、免疫反応性の血清学的に相異なるパターンを生み出す(Fournierら(1984)Infect.Immun.45:87〜93;およびMoreauら(1990)Carbohydr.Res.201:285〜297)。したがって、血清型8および5莢膜多糖は、水に可溶で、通常は酸性である比較的複雑な炭水化物であり、おおよそ25kDaの分子量を有するとこれまで考えられていた(Fattom(1990)Infect.Immun.58、2367〜2374)。
【0087】
一部の実施形態において、本発明の血清型5および/または8莢膜多糖は、O−アセチル化されている。一部の実施形態において、5型莢膜多糖またはオリゴ糖のO−アセチル化度は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%である。一部の実施形態において、8型莢膜多糖またはオリゴ糖のO−アセチル化度は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%である。一部の実施形態において、5型および8型莢膜多糖またはオリゴ糖のO−アセチル化度は、10〜100%、20〜100%、30〜100%、40〜100%、50〜100%、60〜100%、70〜100%、80〜100%、90〜100%、50〜90%、60〜90%、70〜90%または80〜90%である。
【0088】
多糖またはオリゴ糖のO−アセチル化度は、当技術分野において知られている任意の方法により、例えば、プロトンNMRにより決定することができる(LemercinierおよびJones 1996、Carbohydrate Research 296;83〜96、JonesおよびLemercinier 2002、J Pharmaceutical and Biomedical analysis 30;1233〜1247、WO05/033148またはWO00/56357)。別の一般に使用される方法は、Hestrin(1949)J.Biol.Chem.180;249〜261により記載されている。
【0089】
一部の実施形態において、本発明の血清型5および/または8莢膜多糖は、抗体が細菌を致死させることを示す動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイにおける細菌の致死により測定されて機能的である抗体を生成するために使用される。機能的致死は、抗体単独の生成をモニターするアッセイを使用して示されることはなく、有効性におけるO−アセチル化の重要性を示さない。
【0090】
血清型5または8などの莢膜多糖は、当業者に知られている単離手順を使用して細菌から直接得ることができる。例えば、Fournierら(1984)、前掲書;Fournierら(1987)Ann.Inst.Pasteur/Microbiol.138:561〜567;米国特許出願公開第2007/0141077号;および国際特許出願公開第WO00/56357号を参照されたい。それらの各々は、その全体が記述されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれるものとする。さらに、それらは、合成的プロトコルを使用して製造することができる。さらに、血清型5または8莢膜多糖は、当業者にも知られている遺伝子工学手順を使用して組換えにより製造することができる(Sauら(1997)Microbiology 143:2395〜2405;および米国特許第6,027,925号を参照。それらの各々は、その全体が記述されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0091】
単離された血清型8莢膜多糖を得るために使用することができる1つの黄色ブドウ球菌(S.aureus)株は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)R2 PFESA0286である。この株は、Modified Frantz Broth中の黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0286(American Type Culture Collection;Manassas、VA;ATCC Accession No.49525;)の培養後にウサギ抗血清型8多糖抗体によるフローサイトメトリーにより選択された。2つの集団、R1およびR2がフローサイトメトリー中に観察された。R1およびR2を精製して再培養した。R2は、血清型8莢膜多糖を与えた。フローサイトメトリー分析は、均一な蛍光強度を示した。こうして、血清型8莢膜多糖製造のためにR2が選択された。
【0092】
単離された血清型5莢膜多糖を得るために使用することができる1つの黄色ブドウ球菌(S.aureus)株は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266である。この株は、成長中に血清型5莢膜多糖を産生し、産生は、細胞が静止期にある時に頂点に達する。確立した培養株保存施設かまたは臨床標本から得られる他の黄色ブドウ球菌(S.aureus)5型または8型株を使用し、それぞれの多糖を作製することができる。
【0093】
本発明の免疫原性コンジュゲートの別の構成成分は、細菌の莢膜多糖がコンジュゲートしている担体分子またはタンパク質である。「タンパク質担体」または「担体タンパク質」という用語は、それに対する免疫応答が望まれる抗原(莢膜多糖など)とコンジュゲートさせることができるいずれのタンパク質分子も指す。担体とのコンジュゲーションは、抗原の免疫原性を高めることができる。コンジュゲーションは、標準的な手順により行うことができる。抗原にとって好ましいタンパク質担体は、毒素、類毒素または破傷風、ジフテリア、百日咳、シュードモナス属(Pseudomonas)、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)および連鎖球菌属(Streptococcus)の毒素のいずれかの突然変異交差反応性物質(CRM)である。一実施形態において、特に好ましい担体は、CRM197タンパク質を産生するジフテリア菌(C.diphtheriae)C7株(β197)に由来するジフテリア類毒素CRM197である。この株は、ATCCアクセッション番号53281を有する。CRM197を製造するための方法は、その全体が記述されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,614,382号に記載されている。代替方法として、タンパク質担体の断片もしくはエピトープまたは他の免疫原性タンパク質を使用することができる。例えば、ハプテン性抗原は、細菌の毒素、類毒素またはCRMのT細胞エピトープとカップリングさせることができる。その全体が記述されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれている「Synthetic Peptides Representing a T−Cell Epitope as a Carrier Molecule For Conjugate Vaccines」と題された1988年2月1日出願の米国特許出願第150,688号を参照されたい。他の適当な担体タンパク質は、コレラ類毒素(例えば、国際特許出願第WO2004/083251号に記載されている)、大腸菌(E.coli)LT、大腸菌(E.coli)STなどの不活化細菌毒素、および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の外毒素Aを包含する。外膜複合体c(OMPC)、ポーリン、トランスフェリン結合タンパク質、肺炎球菌溶血素、肺炎球菌の表面タンパク質A(PspA)、肺炎球菌の接着タンパク質(PsaA)またはインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)タンパク質Dなどの細菌の外膜タンパク質も使用することができる。オボアルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、またはツベルクリンの精製タンパク質誘導体(PPD)などの他のタンパク質も担体タンパク質として使用することができる。
【0094】
したがって、一実施形態において、本発明の免疫原性コンジュゲート内の担体タンパク質は、CRM197であり、CRM197は、カルバメート結合、アミド結合、または両方を介して多糖と共有結合している。一部の実施形態において、本発明の免疫原性コンジュゲート内の担体タンパク質は、CRM197であり、CRM197は、チオエーテル結合を介して多糖と共有結合している。莢膜多糖とコンジュゲートさせることになる担体タンパク質中のリシン残基数は、コンジュゲートしているリシンの範囲として特徴付けることができる。例えば、所与の免疫原性組成物において、CRM197は、莢膜多糖と共有結合している39個のうちの5〜15個のリシンを含むことがある。このパラメーターを表す別の方法は、CRM197リシンの12%〜40%が莢膜多糖と共有結合していることである。例えば、所与の免疫原性組成物において、CRM197は、莢膜多糖と共有結合している39個のうちの18〜22個のリシンを含むことがある。このパラメーターを表す別の方法は、CRM197リシンの40%〜60%が莢膜多糖と共有結合していることである。一部の実施形態において、CRM197は、CP8と共有結合している39個のうちの5〜15個のリシンを含む。このパラメーターを表す別の方法は、CRM197リシンの12%〜40%がCP8と共有結合していることである。一部の実施形態において、CRM197は、CP5と共有結合している39個のうちの18〜22個のリシンを含む。このパラメーターを表す別の方法は、CRM197リシンの40%〜60%がCP5と共有結合していることである。
【0095】
上で論じられているように、莢膜多糖とコンジュゲートしている担体タンパク質中のリシン残基数は、コンジュゲートしているリシンの範囲として特徴付けることができ、モル比として表すことができる。例えば、CP8免疫原性コンジュゲートにおけるCRM197対するコンジュゲートしているリシンのモル比は、約18:1から約22:1の間であってよい。一実施形態において、CP8免疫原性コンジュゲートにおけるCRM197対するコンジュゲートしているリシンのモル比の範囲は、約15:1から約25:1の間であってよい。一実施形態において、CP8免疫原性コンジュゲートにおけるCRM197対するコンジュゲートしているリシンのモル比の範囲は、約14:1〜約20:1;約12:1〜約18:1;約10:1〜約16:1;約8:1〜約14:1;約6:1〜約12:1;約4:1〜約10:1;約20:1〜約26:1;約22:1〜約28:1;約24:1〜約30:1;約26:1〜約32:1;約28:1〜約34:1;約30:1〜約36:1;約5:1〜約10:1;約5:1〜約20:1;約10:1〜約20:1;または約10:1〜約30:1の間であってよい。また、CP5免疫原性コンジュゲートにおけるCRM197に対するコンジュゲートしているリシンのモル比は、約3:1から25:1の間であってよい。一実施形態において、CP5免疫原性コンジュゲートにおけるCRM197に対するコンジュゲートしているリシンのモル比の範囲は、約5:1から20:1の間であってよい。一実施形態において、CP5免疫原性コンジュゲートにおけるCRM197に対するコンジュゲートしているリシンのモル比の範囲は、約4:1〜約20:1;約6:1〜約20:1;約7:1〜約20:1;約8:1〜約20:1;約10:1〜約20:1;約11:1〜約20:1;約12:1〜約20:1;約13:1〜約20:1;約14:1〜約20:1;約15:1〜約20:1;約16:1〜約20:1;約17:1〜約20:1;約18:1〜約20:1;約5:1〜約18:1;約7:1〜約16:1;または約9:1〜約14:1の間であってよい。
【0096】
莢膜多糖とコンジュゲートしている担体タンパク質中のリシン残基数を表す別の方法は、コンジュゲートしているリシンの範囲としてであってよい。例えば、所与のCP8免疫原性コンジュゲートにおいて、CRM197は、莢膜多糖と共有結合している39個のうちの5〜15個のリシン残基を含むことがある。代替方法として、このパラメーターは、百分率として表すことができる。例えば、所与のCP8免疫原性コンジュゲートにおいて、コンジュゲートしているリシンの百分率は、10%〜50%の間であってよい。一部の実施形態において、リシンの20%〜50%は、CP8と共有結合していてよい。代替方法として、さらに、CRM197リシンの30%〜50%は、CP8と共有結合していてよく;CRM197リシンの10%〜40%;CRM197リシンの10%〜30%;CRM197リシンの20%〜40%;CRM197リシンの25%〜40%;CRM197リシンの30%〜40%;CRM197リシンの10%〜30%;CRM197リシンの15%〜30%;CRM197リシンの20%〜30%;CRM197リシンの25%〜30%;CRM197リシンの10%〜15%;またはCRM197リシンの10%〜12%は、CP8と共有結合している。また、所与のCP5免疫原性コンジュゲートにおいて、CRM197は、莢膜多糖と共有結合している39個のうちの18〜22個のリシン残基を含むことがある。代替方法として、このパラメーターは、百分率として表すことができる。例えば、所与のCP5免疫原性コンジュゲートにおいて、コンジュゲートしているリシンの百分率は、40%〜60%の間であってよい。一部の実施形態において、リシンの40%〜60%は、CP5と共有結合していてよい。代替方法として、さらに、CRM197リシンの30%〜50%は、CP5と共有結合していてよく;CRM197リシンの20%〜40%;CRM197リシンの10%〜30%;CRM197リシンの50%〜70%;CRM197リシンの35%〜65%;CRM197リシンの30%〜60%;CRM197リシンの25%〜55%;CRM197リシンの20%〜50%;CRM197リシンの15%〜45%;CRM197リシンの10%〜40%;CRM197リシンの40%〜70%;またはCRM197リシンの45%〜75%は、CP5と共有結合している。
【0097】
担体タンパク質上のリシンとの莢膜多糖鎖の接続の頻度は、莢膜多糖のコンジュゲートを特徴付けるための別のパラメーターである。例えば、一実施形態において、CRM197と多糖の間の少なくとも1つの共有結合は、莢膜多糖の少なくとも5〜10個の糖反復単位毎に存在する。別の実施形態において、莢膜多糖の5〜10個の糖反復単位毎、2〜7個の糖反復単位毎、3〜8個の糖反復単位毎;4〜9個の糖反復単位毎;6〜11個の糖反復単位毎;7〜12個の糖反復単位毎;8〜13個の糖反復単位毎;9〜14個の糖反復単位毎;10〜15個の糖反復単位毎;2〜6個の糖反復単位毎、3〜7個の糖反復単位毎;4〜8個の糖反復単位毎;6〜10個の糖反復単位毎;7〜11個の糖反復単位毎;8〜12個の糖反復単位毎;9〜13個の糖反復単位毎;10〜14個の糖反復単位毎;10〜20個の糖反復単位毎;または5〜10個の糖反復単位毎にCRM197と莢膜多糖の間に少なくとも1つの共有結合がある。別の実施形態において、CRM197と莢膜多糖の間の少なくとも1つの結合は、莢膜多糖の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の糖反復単位毎に存在する。
【0098】
本発明の一実施形態は、上に記載されている担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートのうちのいずれかを含む免疫原性組成物を提供する。
【0099】
「免疫原性組成物」という用語は、抗原、例えば、微生物またはその構成成分を含有するいずれの医薬組成物にも関し、その組成物を使用し、対象において免疫応答を誘発することができる。本発明の免疫原性組成物は、全身、皮膚または粘膜経路を介して免疫原性組成物を投与することによって黄色ブドウ球菌(S.aureus)感染を受けやすいヒトを防御または治療するために使用することができ、または別の対象に対して受動免疫を与えるために使用することができるポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物を生成するために使用することができる。これらの投与は、筋肉内、腹腔内、皮内もしくは皮下経路を介する注射;または口道/消化管、呼吸管または泌尿生殖管への粘膜投与を介するものを包含することができる。一実施形態において、鼻腔内投与は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の鼻咽頭保菌を治療または予防し、その最初期段階において感染を軽減するために使用される。免疫原性組成物は、動物有効性モデルにおけるかまたはオプソニン化貪食性致死アッセイを介する細菌の致死により測定されて機能的である抗体を生成するために使用されてもよい。
【0100】
特定の免疫原性組成物についての構成成分の最適量は、対象における適切な免疫応答の観察を伴う標準的研究により確定することができる。最初のワクチン接種に続き、対象は、十分に間隔をあけた1回または数回のブースター免疫化を受けることができる。
【0101】
本発明の免疫原性組成物は、下記の抗原のうちの1つまたは複数を包含することもある:ClfA、ClfB、SdrC、SdrD、SdrE MntC/SitC/Saliva結合タンパク質、IsdB、IsdA、Opp3a、DltA、HtsA、LtaS、SdrH、SrtA、SpA、SBI、α−ヘモリシン(hla)、β−ヘモリシン、フィブロネクチン結合タンパク質A(fnbA)、コアグラーゼ、マップ(map)、Panton−Valentineロイコシジン(pvl)、γ−毒素(hlg)、アイカ(ica)、免疫優性ABCトランスポーター、RAP、オートリシン、ラミニン受容体、IsaA/PisA、IsaB/PisB、SPOIIIE、SsaA、EbpS、SasF、SasH、EFB(FIB)、FnbB、Npase、EBP、骨シアロ結合タンパク質II、オーレオリシン(aureolysin)前駆体(AUR)/Sepp1、Cna、TSST−1、mecA、dPNAG、GehD、EbhA、EbhB、SSP−1、SSP−2 HBP、ビトロネクチン結合タンパク質、HarA、エンテロトキシンA、エンテロトキシンB、エンテロトキシンC1、および新規オートリシン。
【0102】
一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、アジュバント、緩衝液、凍結防止剤、塩、二価陽イオン、非イオン性界面活性剤、遊離ラジカル酸化の阻害剤、希釈剤または担体のうちの少なくとも1つをさらに含む。一実施形態において、本発明の免疫原性組成物内のアジュバントは、アルミニウムベースのアジュバントである。一実施形態において、アジュバントは、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムからなる群から選択されるアルミニウムベースのアジュバントである。一実施形態において、アジュバントは、リン酸アルミニウムである。
【0103】
アジュバントは、免疫原または抗原と一緒に投与される場合に免疫応答を高める物質である。インターロイキン1−α、1−β、2、4、5、6、7、8、10、12(例えば、米国特許第5,723,127号を参照)、13、14、15、16、17および18(および、その突然変異型);インターフェロン−α、βおよびγ;顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)(例えば、米国特許第5,078,996号およびATCC Accession Number39900を参照);マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF);顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);ならびに腫瘍壊死因子αおよびβを包含するがそれらに限定されない多くのサイトカインまたはリンホカインは、免疫調節活性を有することが明らかにされており、したがって、アジュバントと同じか同様に有用であることがある。本明細書に記載されている免疫原性組成物とで有用であるさらに他のアジュバントは、MCP−1、MIP−1α、MIP−1β、およびRANTESを包含するがそれらに限定されないケモカイン;セレクチン、例えば、L−セレクチン、P−セレクチンおよびE−セレクチンなどの接着分子;ムチン様分子、例えば、CD34、GlyCAM−1およびMadCAM−1;LFA−1、VLA−1、Mac−1およびp150.95などの多くのインテグリンファミリー;PECAM、ICAM、例えば、ICAM−1、ICAM−2およびICAM−3、CD2およびLFA−3などの多くの免疫グロブリンスーパーファミリー;B7−1、B7−2、CD40およびCD40Lなどの共刺激分子;血管成長因子、神経成長因子、線維芽細胞成長因子、上皮成長因子、PDGF、BL−1、および血管内皮成長因子を包含する成長因子;Fas、TNF受容体、Flt、Apo−1、p55、WSL−1、DR3、TRAMP、Apo−3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL−R2、TRICK2、およびDR6を包含する受容体分子;ならびにICEを包含するカスパーゼを包含する。
【0104】
免疫応答を高めるために使用される適当なアジュバントは、米国特許第4,912,094号に記載されているMPL(商標)(3−O−脱アセチル化モノホスホリル脂質A、Corixa;Hamilton、MT)をさらに包含することがあるが、それに限定されるものではない。Corixaから入手可能である合成脂質A類似体もしくはアミノアルキルグルコサミンホスフェート化合物(AGP)、またはそれらの誘導体もしくは類似体、および米国特許第6,113,918号に記載されているものも、アジュバントして使用するのに適している。1つのそのようなAGPは、529(以前は、RC529として知られている)としても知られている2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]エチル 2−デオキシ−4−O−ホスホノ−3−O−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル]−2−[(R)−3−テトラデカノイルオキシテトラデカノイル−アミノ]−b−D−グルコピラノシドである。この529アジュバントは、水性形態(AF)として、または安定エマルジョン(SE)として製剤化される。
【0105】
さらに他のアジュバントは、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニン−2−(1’−2’ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などのムラミルペプチド;モデル110Yマイクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)などのマイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化されたMF59(米国特許第6,299,884号)(5%スクアレン、0.5%ポリソルベート80、および0.5%Span85を含有する(場合により、様々な量のMTP−PEを含有する))、およびサブミクロンエマルジョンにマイクロ流動化されるかまたはより大きい粒径のエマルジョンを作製するためにボルテックスされたSAF(10%スクアレン、0.4%ポリソルベート80、5%プルロニック−ブロックドポリマーL121、およびthr−MDPを含有する)などの水中油型エマルジョン剤;不完全フロイントアジュバント(IFA);水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム塩(ミョウバン);Amphigen;Avridine;L121/スクアレン;D−ラクチド−ポリラクチド/グリコシド;プルロニックポリオール;死菌ボルデテラ属(Bordetella);米国特許第5,057,540号に記載されているStimulon(商標)QS−21(Antigenics、Framingham、MA)、米国特許第5,254,339号に記載されているIscomatrix(登録商標)(CSL Limited、Parkville、Australia)、および免疫刺激複合体(ISCOMS)などのサポニン;結核菌(Mycobacterium tuberculosis);CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドなどの合成ポリヌクレオチド(例えば、米国特許第6,207,646号);EP特許第1,296,713号および第1,326,634号に記載されているIC−31(Intercell AG、Vienna、Austria);百日咳毒素(PT)もしくはその突然変異体、コレラ毒素もしくはその突然変異体(例えば、米国特許第7,285,281号、第7,332,174号、第7,361,355号および第7,384,640号);または大腸菌(E.coli)易熱性毒素(LT)もしくはその突然変異体、特に、LT−K63、LT−R72(例えば、米国特許第6,149,919号、第7,115,730号および第7,291,588号)を包含する。
【0106】
免疫原性組成物は、場合により、薬学的に許容できる担体を含むことができる。「薬学的に許容できる担体」という用語は、連邦、州政府の規制機関、または他の規制機関により認可されているか、ヒトならびに非ヒト哺乳動物を包含する動物で使用するために米国薬局方または他の一般的に認められた薬局方に列挙されている担体を意味する。「担体」という用語は、医薬組成物と一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。水、食塩溶液および水性のデキストロースおよびグリセロール溶液は、液体担体として、特に、注射用溶液剤のために用いることができる。適当な医薬担体の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。製剤は、投与様式に合わせるべきである。
【0107】
本発明の免疫原性組成物は、体液性および/または細胞性の免疫の上方制御かまたは下方制御が観察されるように、免疫系をかき乱すまたは変化させる薬剤である1つまたは複数の追加の「免疫調節薬」をさらに含むことができる。一実施形態において、免疫系の体液性および/または細胞性アームの上方制御が提供される。ある種の免疫調節薬の例は、とりわけ、例えば、アジュバントもしくはサイトカイン、または米国特許第5,254,339号に記載されているIscomatrix(登録商標)(CSL Limited;Parkville、Australia)を包含する。本発明の免疫原性組成物において使用することができるアジュバントの非限定的な例は、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.;Hamilton、MT)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲルなどの鉱物ゲル、水中油型エマルジョン剤、例えば、フロイント完全および不完全アジュバントなどの油中水型エマルジョン剤、ブロックコポリマー(CytRx;Atlanta、GA)、QS−21(Cambridge Biotech Inc.;Cambridge、MA)、SAF−M(Chiron;Emeryville、CA)、Amphigen(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil Aまたは他のサポニン画分、モノホスホリル脂質A、およびAvridine脂質−アミンアジュバントを包含する。本発明の免疫原性組成物において有用な水中油型エマルジョン剤の非限定的な例は、改変SEAM62およびSEAM1/2製剤を包含する。改変SEAM62は、5%(v/v)スクアレン(Sigma)、1%(v/v)Span(登録商標)85Detergent(ICI Surfactants)、0.7%(v/v)ポリソルベート80界面活性剤(ICI Surfactants)、2.5%(v/v)エタノール、200mcg/ml Quil A、100mcg/mlコレステロール、および0.5%(v/v)レシチンを含有する水中油型エマルジョンである。改変SEAM1/2は、5%(v/v)スクアレン、1%(v/v)Span(登録商標)85界面活性剤、0.7%(v/v)ポリソルベート80界面活性剤、2.5%(v/v)エタノール、100mcg/ml Quil A、および50mcg/mlコレステロールを含む水中油型エマルジョンである。免疫原性組成物に包含することができる他の「免疫調節薬」は、例えば、1つまたは複数のインターロイキン、インターフェロン、または他の知られているサイトカインもしくはケモカインを包含する。一実施形態において、アジュバントは、それぞれ米国特許第6,165,995号および第6,610,310号に記載されているものなどのシクロデキストリン誘導体またはポリアニオン系ポリマーであってよい。使用されることになる免疫調節薬および/またはアジュバントが、免疫原性組成物が投与されるであろう対象、注射経路および与えられることになる注射の数によって異なることは理解されるべきである。
【0108】
本発明の免疫原性組成物は、複数のブドウ球菌莢膜多糖タンパク質コンジュゲートに加えて、1つまたは複数の保存剤をさらに含むことがある。FDAは、ごくわずかな例外はあるものの、複数回投与量(マルチドーズ)バイアル中の生物学的製品が、保存剤を含有することを要求している。保存剤を含有するワクチン製品は、塩化ベンゼトニウム(炭疽菌)、2−フェノキシエタノール(DTaP、HepA、Lyme、Polio(非経口))、フェノール(Pneumo、Typhoid(非経口)、Vaccinia)およびチメロサール(DTaP、DT、Td、HepB、Hib、Influenza、JE、Mening、Pneumo、Rabies)を含有するワクチンを包含する。注射用薬物における使用が認可されている保存剤は、例えば、クロロブタノール、m−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、2−フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、フェノール、チメロサールおよび硝酸フェニル水銀を包含する。
【0109】
本発明の製剤は、緩衝液、塩、二価陽イオン、非イオン界面活性剤、糖などの凍結防止剤、およびフリーラジカル捕捉剤またはキレート化剤などの抗酸化剤、またはそれらのいずれの複数組合せのうちの1つまたは複数もさらに含むことができる。いずれか1つの構成成分、例えば、キレート剤の選択は、別の構成成分(例えば、捕捉剤)が望ましいかどうかを決定することがある。投与のために製剤化された最終組成物は、無菌および/またはパイロジェンフリーであるべきである。当業者は、必要とされる特定の保存および投与条件などの様々な要因に応じて、これらおよび他の構成成分のどの組合せが、本発明の保存剤含有免疫原性組成物への包含に最適であるかを経験的に決定することができる。
【0110】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、Tris(トリメタミン)、リン酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、グリシン、ヒスチジンおよびコハク酸塩から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数の生理学的に許容できる緩衝液を含む。ある種の実施形態において、製剤は、約6.0〜約9.0、好ましくは、約6.4から約7.4までのpH範囲内に緩衝される。
【0111】
ある種の実施形態において、本発明の免疫原性組成物または製剤のpHを調整することが望ましいことがある。本発明の製剤のpHは、当技術分野における標準的な技法を使用して調整することができる。製剤のpHは、3.0から8.0の間であるように調整することができる。ある種の実施形態において、製剤のpHは、3.0から6.0、4.0から6.0、または5.0から8.0の間であってよく、または3.0から6.0、4.0から6.0、または5.0から8.0の間であるように調整することができる。他の実施形態において、製剤のpHは、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約5.8、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0であってよいか、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約5.8、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0であるように調整することができる。ある種の実施形態において、pHは、4.5から7.5まで、または4.5から6.5まで、5.0から5.4まで、5.4から5.5まで、5.5から5.6まで、5.6から5.7まで、5.7から5.8まで、5.8から5.9まで、5.9から6.0まで、6.0から6.1まで、6.1から6.2まで、6.2から6.3まで、6.3から6.5まで、6.5から7.0まで、7.0から7.5までまたは7.0から8.0までの範囲であってよいか、4.5から7.5まで、または4.5から6.5まで、5.0から5.4まで、5.4から5.5まで、5.5から5.6まで、5.6から5.7まで、5.7から5.8まで、5.8から5.9まで、5.9から6.0まで、6.0から6.1まで、6.1から6.2まで、6.2から6.3まで、6.3から6.5まで、6.5から7.0まで、7.0から7.5までまたは7.0から8.0までの範囲であるように調整することができる。具体的実施形態において、製剤のpHは、約5.8である。
【0112】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、約0.1mMから約10mMまでの範囲であり、最高で約5mMまでが好ましい濃度で、MgCl、CaClおよびMnClを包含するがそれらに限定されない1つまたは複数の二価陽イオンを含む。
【0113】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、非経口投与の際には対象に対して生理学的に許容できるイオン強度で存在し、最終製剤において選択されるイオン強度または容積モル浸透圧濃度を生じる最終濃度で包含される、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、および硫酸カリウムを包含するがそれらに限定されない1つまたは複数の塩を含む。製剤の最終イオン強度または重量モル浸透圧濃度は、複数の構成成分(例えば、1つまたは複数の緩衝化合物および他の非緩衝塩由来のイオンにより決定されるであろう。好ましい塩、NaClは、最高で約250mMまでの範囲から存在し、塩濃度は、製剤の最終総容積モル浸透圧濃度が、非経口投与(例えば、筋肉内または皮下注射)に適合しており、様々な温度範囲にわたって免疫原性組成物製剤の免疫原性構成成分の長期安定性を促進するように、他の構成成分(例えば、糖)を補完するように選択される。無塩製剤は、望ましい最終容積モル浸透圧濃度レベルを維持するために増加した範囲の1つまたは複数の選択された凍結防止剤を容認するであろう。
【0114】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、二糖(例えば、ラクトース、マルトース、スクロースまたはトレハロース)およびポリヒドロキシ炭化水素(例えば、ズルシトール、グリセロール、マンニトールおよびソルビトール)から選択されるがそれらに限定されない1つまたは複数の凍結防止剤を含む。
【0115】
ある種の実施形態において、製剤の容積モル浸透圧濃度は、約200mOs/Lから約800mOs/Lまでの範囲であり、好ましい範囲は、約250mOs/Lから約500mOs/Lまで、または約300mOs/L〜約400mOs/Lである。無塩製剤は、例えば、スクロース約5%から約25%まで、好ましくは、スクロース約7%から約15%まで、または約10%〜約12%を含有することができる。代替方法として、無塩製剤は、例えば、ソルビトール約3%から約12%まで、好ましくは、ソルビトール約4%から約7%まで、または約5%〜約6%を含有することができる。塩化ナトリウムなどの塩が添加される場合、スクロースまたはソルビトールの有効範囲は相対的に減少する。これらおよび他のそのような重量モル浸透圧濃度および容積モル浸透圧濃度に対する配慮は、当業者の技術範囲内に十分ある。
【0116】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、1つまたは複数のフリーラジカル酸化阻害剤および/またはキレート化剤を含む。様々なフリーラジカル捕捉剤およびキレート剤が当技術分野において知られており、本明細書に記載されている製剤および使用方法に当てはまる。例は、エタノール、EDTA、EDTA/エタノール組合せ、トリエタノールアミン、マンニトール、ヒスチジン、グリセロール、クエン酸ナトリウム、イノシトール六リン酸、トリポリリン酸塩、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩、コハク酸/コハク酸塩、リンゴ酸/リンゴ酸塩、デスフェラール、EDDHAおよびDTPA、ならびに上のうちの2つ以上の様々な組合せを包含するが、それらに限定されるものではない。ある種の実施形態において、少なくとも1つの非還元性フリーラジカル捕捉剤は、製剤の長期安定性を有効に高める濃度で添加することができる。1つまたは複数のフリーラジカル酸化阻害剤/キレート剤も、捕捉剤と二価陽イオンなどの様々な組合せで添加することができる。キレート剤の選択は、捕捉剤の添加が必要とされるかどうかを決定するであろう。
【0117】
ある種の実施形態において、非経口投与に適合している本発明の製剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート−80(Tween 80)、ポリソルベート−60(Tween 60)、ポリソルベート−40(Tween 40)およびポリソルベート−20(Tween 20)、Brij 58、Brij 35を包含するがそれらに限定されないポリオキシエチレンアルキルエーテル、ならびにTriton X−100;Triton X−114、NP 40、Span 85およびPluronicシリーズの非イオン界面活性剤(例えば、Pluronic 121)などの他のものを包含するがそれらに限定されない1つまたは複数の非イオン界面活性剤を含み、好ましい構成成分は、約0.001%から約2%までの濃度(最高で約0.25%までが好ましい)のポリソルベート−80または約0.001%から1%までの濃度(最高で約0.5%までが好ましい)のポリソルベート−40である。
【0118】
ある種の実施形態において、本発明の製剤は、非経口投与に適している1つまたは複数の追加安定化剤、例えば、少なくとも1つのチオール(−SH)基を含む還元剤(例えば、システイン、N−アセチルシステイン、還元グルタチオン、チオグリコール酸ナトリウム、チオ硫酸塩、モノチオグリセロール、またはそれらの混合物)を含む。代替方法としてまたは場合により、本発明の保存剤含有免疫原性組成物製剤は、保存容器から酸素を除去すること、光から製剤を守ること(例えば、琥珀色のガラス容器を使用すること)によりさらに安定化することができる。
【0119】
本発明の保存剤含有免疫原性組成物製剤は、それ自体が免疫応答を誘導しない任意の賦形剤を包含する1つまたは複数の薬学的に許容できる担体または賦形剤を含むことができる。適当な賦形剤は、タンパク質、糖質、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース(Paolettiら、2001、Vaccine、19:2118)、トレハロース、ラクトースおよび脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)を包含するが、それらに限定されるものではない。そのような担体は、当業者によく知られている。薬学的に許容できる賦形剤は、例えば、Gennaro、2000、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN:0683306472で論じられている。
【0120】
本発明の組成物は、凍結乾燥されるか、水性形態、すなわち、溶液剤または懸濁剤であってよい。液体製剤は、それらの包装された形態から直接、有利に投与することができるため、さもなければ本発明の凍結乾燥組成物にとって必要とされるような水性媒体における再構成を必要とすることなく注射にとって理想的である。
【0121】
対象への本発明の免疫原性組成物の直接送達は、非経口投与により(筋肉内に、腹腔内に、皮内に、皮下に、静脈内に、または組織の間質空間へ);または直腸、経口、膣、局所、経皮、鼻腔内、眼、耳、肺または他の粘膜投与により行うことができる。好ましい実施形態において、非経口投与は、例えば、対象の大腿または上腕への筋肉内注射による。注射は、注射針(例えば、皮下注射針)を介してよいが、代替方法として、無針注射を使用することができる。典型的な筋肉内投与量は、0.5mLである。本発明の組成物は、例えば、液体の溶液剤かまたは懸濁剤としての注射のため、様々な形態で調製することができる。ある種の実施形態において、組成物は、例えば、吸入器における肺投与のための粉末またはスプレーとして調製することができる。他の実施形態において、組成物は、坐剤もしくは膣坐剤として、鼻、耳もしくは眼投与のために、例えば、スプレー、点滴剤、ゲルもしくは粉末として調製することができる。
【0122】
各免疫原性組成物投与量におけるコンジュゲートの量は、著しい有害作用なしに免疫防御応答を誘導する量として選択される。そのような量は、ブドウ球菌血清型に応じて変わることがある。一般的に、各投与量は、多糖0.1〜100μg、詳細には、0.1〜10μg、より詳細には、1〜5μgを含むであろう。
【0123】
特定の免疫原性組成物についての構成成分の最適量は、対象における適切な免疫応答の観察を伴う標準的な試験により確定することができる。初回ワクチン接種の後に、対象は、十分に間隔をおいた1回または数回のブースター免疫化を受けることができる。
【0124】
包装および剤形
本発明の免疫原性組成物は、単位投与量または複数回投与形態(例えば、2投与量、4投与量、またはそれ以上)で包装することができる。複数回投与形態については、バイアルが典型的であるが、必ずしも充填済み注射器より好ましいわけではない。適当な複数回投与フォーマットは、1投与量当たり0.1〜2mLにて1容器当たり2〜10投与量を包含するが、それらに限定されるものではない。ある種の実施形態において、投与量は、0.5mL投与量である。例えば、参照により本明細書に組み込まれている国際特許出願WO2007/127668を参照されたい。
【0125】
組成物は、バイアルもしくは他の適当な保存容器で提供することができ、または充填済み送達装置、例えば、注射針の有無に関わらず供給することができる単一または複数構成成分注射器で提供することができる。必ずしも要しないが、注射器は、典型的には、本発明の保存剤含有免疫原性組成物の単回投与量を含有するが、複数回投与充填済み注射器も想定されている。同様に、バイアルは、単回投与量を包含するが、代替方法として、複数回投与量を包含することができる。
【0126】
有効用量体積は、常法通りに定めることができるが、注射のための組成物の典型的な投与量は、0.5mLの体積を有する。ある種の実施形態において、投与量は、ヒト対象への投与のために製剤化される。ある種の実施形態において、投与量は、成人、十代、青年、幼児または乳児(すなわち、1歳程度)のヒト対象への投与のために製剤化され、好ましい実施形態において、注射により投与することができる。
【0127】
本発明の液体免疫原性組成物は、凍結乾燥形態で提供される他の免疫原性組成物を再構成するのにも適している。免疫原性組成物が、そのような即時再構成のために使用されることになる場合、本発明は、2つ以上のバイアル、2つ以上の充填済み注射器、または各々のうちの1つもしくは複数を含むキットを提供し、注射器の内容物を使用し、注射の前にバイアルの内容物を再構成するか、その逆をする。
【0128】
代替方法として、本発明の免疫原性組成物は、例えば、それらを調製するのに使用される厳密な方法を変えることにより選択および制御することができる平均直径サイズなどの粒子特性を有するミクロペレットまたはミクロスフェアなどの乾燥した規則正しい形状の(例えば、球状の)粒子を形成するための当技術分野においてよく知られている凍結乾燥のための数多くの方法のうちの1つを使用し、凍結乾燥および再構成することができる。免疫原性組成物は、場合により、ミクロペレットまたはミクロスフェアなどの別々の乾燥した規則正しい形状(例えば、球状の)粒子と共に調製するか、それらの中に含有することができるアジュバントをさらに含むことができる。そのような実施形態において、本発明は、場合により本発明の1つまたは複数の保存剤をさらに含む安定化された乾燥免疫原性組成物を包含する第一構成成分、および第一構成成分の再構成のための無菌水溶液を含む第二構成成分を含む免疫原性組成物キットをさらに提供する。ある種の実施形態において、水溶液は、1つまたは複数の保存剤を含み、少なくとも1つのアジュバントを場合により含むことができる(例えば、WO2009/109550を参照(参照により本明細書に組み込まれている)。
【0129】
さらに別の実施形態において、複数回投与フォーマットの容器は、一般的な実験室のガラス器具、フラスコ、ビーカー、メスシリンダー、発酵槽、バイオリアクター、管類、パイプ、袋、広口瓶、バイアル、バイアルクロージャー(例えば、ゴムストッパー、ねじ式キャップ)、アンプル、注射器、二室または多室の注射器、注射器ストッパー、注射器プランジャー、ラバークロージャー、プラスチッククロージャー、ガラスクロージャー、カートリッジおよび使い捨てペンからなるがそれらに限定されない群のうちの1つまたは複数から選択される。本発明の容器は、製造の材料により限定されず、ガラス、金属(例えば、スチール、ステンレススチール、アルミニウムなど)およびポリマー(例えば、熱可塑性プラスチック、エラストマー、熱可塑性プラスチック−エラストマー)などの材料を包含する。特定の実施形態において、このフォーマットの容器は、ブチルストッパー付きの5mL Schott1型ガラスバイアルである。当業者は、上に示されているフォーマットが、決して網羅的リストではなく、単に、本発明に使用可能である様々なフォーマットに関する当業者への指導の役割を果たすことを理解しているであろう。本発明における使用が企図されている追加フォーマットは、United States Plastic Corp.(Lima、OH)、VWRなどの実験装置の販売者および製造者の公表されたカタログ中に見いだすことができる。
【0130】
免疫原性コンジュゲートを作製するための方法
本発明は、本明細書に記載されている免疫原性コンジュゲートを作製する方法も包含する。本発明の免疫原性コンジュゲートを作製するための方法には、CDI(1,1−カルボニルジイミダゾール)、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)またはPDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を伴うコンジュゲーション化学反応を使用する莢膜多糖の担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを伴う。
【0131】
したがって、本発明の一実施形態は、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法であって、a)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖をイミダゾールまたはトリアゾールと混ぜ合わせて、混ぜ合わせられた多糖を生じさせるステップと;b)混ぜ合わせられた多糖を有機溶媒および約0.1%〜約0.3%w/vの水の中でCDTと反応させて、活性化された血清型5または8莢膜多糖を生じさせるステップと;c)活性化された血清型5または8莢膜多糖を精製して、精製された活性化された血清型5または8莢膜多糖を生じさせるステップと;d)精製された活性化された血清型5または8莢膜多糖を有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップと、e)血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップとを含み、それによって、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法を提供する。一実施形態において、ステップ(d)の前に、精製された活性化された血清型5または8莢膜多糖は、担体タンパク質と混ぜ合わせられる。
【0132】
本発明の一実施形態において、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを作製する別のCDTベースの方法であって、a)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖をイミダゾールまたはトリアゾールと混ぜ合わせて、混ぜ合わせられた多糖を生じさせるステップと;b)混ぜ合わせられた多糖を有機溶媒および約0.1%〜約0.3%w/vの水の中でCDTと反応させて、活性化された血清型5または8莢膜多糖を生じさせるステップと;c)活性化された血清型5または8莢膜多糖を有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップと、d)血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップとを含み、それによって、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法が提供される。
【0133】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法における有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。一実施形態において、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、およびヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)からなる群から選択される極性非プロトン性溶媒である。一実施形態において、有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)である。
【0134】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法における混ぜ合わせられた多糖をCDTと反応させるステップは、多糖と比較して約20倍モル過剰のCDTを提供するステップを含む。
【0135】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法における活性化された血清型5または8莢膜多糖を精製するステップは、透析濾過を含む。
【0136】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法における担体タンパク質は、CRM197である。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製する方法における活性化された血清型5または8莢膜多糖は、約1:1の重量比でCRM197と反応する。
【0137】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法における血清型5または8多糖:担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップは、緩衝液中へ希釈し、約20℃〜約26℃にて少なくとも4時間にわたって約8.8〜約9.2のpHを維持するステップを含む。一実施形態において、血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを加水分解するステップは、緩衝液中へ希釈し、約23℃にて少なくとも4時間にわたって約9.0のpHを維持するステップを含む。
【0138】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法に従って製造される血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートは、精製される。一実施形態において、血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートの精製は、透析濾過を含む。
【0139】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法において混ぜ合わせられた多糖をCDTと反応させる前に、混ぜ合わせられた血清型5または8多糖は、凍結乾燥および再懸濁される。一実施形態において、混ぜ合わせられた多糖と担体タンパク質は共に、混ぜ合わせられた多糖をCDTと反応させる前に、別々に凍結乾燥および再懸濁される。一実施形態において、凍結乾燥された混ぜ合わせられた多糖および/または凍結乾燥された担体タンパク質は、有機溶媒に再懸濁される。一実施形態において、有機溶媒は、DMSOである。
【0140】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するCDTベースの方法において混ぜ合わせられた活性化された血清型5または8莢膜多糖を担体タンパク質と反応させる前に、精製された活性化された血清型5または8莢膜多糖および担体タンパク質は、別々に凍結乾燥および再懸濁される。一実施形態において、担体タンパク質は、CRM197であり、凍結乾燥の前に、CRM197は、NaClに対して透析濾過される。一実施形態において、凍結乾燥の前に、CRM197は、NaClに対して透析濾過され、NaCl/CRMのw/w比は、約0.5〜約1.5に調整される。
【0141】
本発明の一実施形態は、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法であって、a)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を有機溶媒中でPDPHおよびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせるステップと;b)PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせるステップと;c)活性化された血清型5または8莢膜多糖を精製して、精製された活性化された血清型5または8莢膜多糖を生じさせるステップと;d)担体タンパク質を有機溶媒中でブロモ酢酸と反応させて、活性化された担体タンパク質を生じさせるステップと;e)活性化された担体タンパク質を精製して、精製された活性化された担体タンパク質を生じさせるステップと;f)精製された活性化された血清型5または8莢膜多糖を精製された活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせるステップと;g)血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップとを含み、それによって、担体タンパク質とコンジュゲートしている黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5または8莢膜多糖を含む免疫原性コンジュゲートが生じる方法を提供する。
【0142】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法において使用されるブロモ酢酸は、ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)である。一実施形態において、本発明のPDPHベースの方法において使用される担体タンパク質は、CRM197であり、BAANSは、約1:0.1〜約1:0.5のCRM197:BAANS重量比で添加される。
【0143】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法における有機溶媒は、極性非プロトン性溶媒である。一実施形態において、有機溶媒は、DMSO、DMF、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、およびHMPAからなる群から選択される極性非プロトン性溶媒である。一実施形態において、有機溶媒は、DMSOである。
【0144】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法において使用されるカルボジイミドは、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)である。一実施形態において、血清型5または8莢膜多糖を有機溶媒中でPDPHおよびEDACと反応させるステップは、約1:5:3の多糖:PDPH:EDAC重量比を維持することを含む。
【0145】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法において使用される還元剤は、ジチオスレイトール(DTT)である。
【0146】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法において活性化された血清型5または8莢膜多糖を精製するステップと担体タンパク質を精製するステップは、各々透析濾過を含む。
【0147】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法における担体タンパク質は、CRM197である。一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製する方法における活性化された血清型5または8多糖は、約1:1の重量比でCRM197と反応する。
【0148】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法において血清型5または8多糖:担体タンパク質コンジュゲートを加水分解して、未反応の活性化基を除去するステップは、システアミン塩酸塩の添加を含む。
【0149】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法に従って製造される血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートは、精製される。一実施形態において、血清型5または8莢膜多糖:担体タンパク質コンジュゲートの精製は、透析濾過を含む。
【0150】
一実施形態において、免疫原性コンジュゲートを作製するPDPHベースの方法において精製された活性化された血清型5または8莢膜多糖を精製された活性化された担体タンパク質と反応させる前に、精製された活性化された多糖と精製された活性化された担体タンパク質は、別々に凍結乾燥および再懸濁される。一実施形態において、凍結乾燥された活性化された多糖および/または凍結乾燥された活性化された担体タンパク質は、有機溶媒に再懸濁される。一実施形態において、有機溶媒は、DMSOである
【0151】
本明細書で使用されている、「凍結乾燥」とは、周囲の圧力が、凍結水が固相から気相に直接昇華することを可能にするのに十分な熱の存在下で低下する間に、細菌の莢膜多糖が凍結される脱水プロセスを意味する。多糖を凍結乾燥するための当技術分野において知られているいずれの方法も使用することができる。例えば、KennedyおよびCabral、編、「Recovery Processes for Biological Materials」(John Wiley & Sons;1993)中のHarrisおよびAngal(1989)「Protein Purification Methods」;米国特許第4,134,214号;および国際特許出願公開第WO2003/086471号を参照されたい;それらの各々は、その全体が記述されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれるものとする。場合により、例えば、スクロース、グルコース、ラクトース、トレハロース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、ソルビトールまたはマンニトールなどの凍結防止剤が凍結乾燥中に包含されることがある。
【0152】
本明細書で使用されている、「活性化する」および「活性化」とは、細菌の莢膜多糖または担体タンパク質が、コンジュゲーションを受けやすくなるように改変されることを意味する(すなわち、少なくとも1つの部分は担体分子と共有結合することができるようにしなければならない)。例えば、本発明のCDTベースのコンジュゲーション方法に関して、多糖は、低水分環境中で(例えば、DMSO中で)活性化され、利用可能なヒドロキシルとトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルトリアゾール部分を形成する。次いで、活性化された多糖をCRM197タンパク質と反応させることができ、CRM197内のリシン残基によるトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成をもたらす。対照的に、本発明のPDPHベースのコンジュゲーション方法に関して、担体タンパク質と多糖は共に、コンジュゲーションの前に活性化され:1)CRM197の活性化には、アミン基のブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応によりCRM197タンパク質中にブロモアセチル基を導入するステップを伴い;2)多糖の活性化には、多糖中のN−アセチルマンノサミノウロン酸のカルボジイミドで活性化されたカルボキシレート基をスルフヒドリル反応性ヒドラジドヘテロ二官能性リンカーPDPHのヒドラジド基とカップリングするステップと、続く、DTTによる還元を伴う。次いで、活性化された多糖を、PDPHチオール化多糖のチオールが活性化された担体タンパク質のブロモアセチル基と反応し、臭化物置換により形成される共有チオエーテル結合をもたらすように、活性化された担体タンパク質と反応させることができる。
【0153】
本発明の方法に従い、莢膜多糖、担体タンパク質、および/または多糖タンパク質コンジュゲートを精製することができる。濃縮/透析濾過、沈殿/溶離、カラムクロマトグラフィーおよびデプス濾過などの多糖またはタンパク質を精製するための当技術分野において知られているいずれの方法も使用することができる。例えば、Farresら(1996)Biotechnol.Tech.10:375〜380;Communicating Current Research and Educational Topics and Trends in Applied Microbiology(Antonio Mendez Vilas、編、第1版 Badajoz、Espanha:Formatex;2007、pp.450〜457)中のGoncalvesら;Tanizakiら(1996)J.Microbiol.Methods 27:19〜23;および米国特許第6,146,902号;および米国特許出願公開第2008/0286838号を参照されたい;それらの各々は、その全体が記述されているのと同様に参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0154】
本明細書で使用されている、「単離された」または「精製された」という用語は、材料が、その元の環境から(例えば、天然に存在する場合には自然環境または組換え物である場合には宿主有機体から)取り出されるか、1つの環境から異なる環境に運ばれることを意味する。例えば、単離された多糖、ペプチドまたはタンパク質は、タンパク質が由来する細胞または組織源の細胞材料も他の夾雑タンパク質も実質的に含まず、または科学的に合成された場合か、さもなければ化学反応の一部として混合物中に存在する化学的前駆体も他の化学物質も実質的に含まない。本発明において、タンパク質または多糖は、それらが免疫原性組成物の製造において有用な形態で提供されるように、細菌の細胞からまたは細菌の残骸から単離することができる。「単離された」または「単離している」という用語は、例えば、本明細書に記載されているように、莢膜多糖の精製方法を包含する精製すること、または精製を包含することがある。「細胞材料を実質的に含まない」という言語は、多糖/ポリペプチド/タンパク質が、単離されるか組換えにより製造される細胞の細胞構成成分から分離される多糖/ポリペプチド/タンパク質の調製物を包含する。したがって、細胞材料も他の化合物も実質的に含まないポリペプチド/タンパク質、多糖、またはコンジュゲートは、夾雑しているタンパク質、多糖、または他の化合物約30%、20%、10%、5%、2.5%または1%(乾燥重量で)未満を有するポリペプチド/タンパク質、多糖、またはコンジュゲートの調製物を包含する。ポリペプチド/タンパク質が、組換えにより製造される場合、培養培地を実質的に含まないことも好ましく、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%未満に相当する。ポリペプチド/タンパク質または多糖が、化学合成により製造される場合、化学的前駆体も他の化学物質も実質的に含まないことが好ましく、すなわち、タンパク質または多糖の合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離される。したがって、ポリペプチド/タンパク質または多糖のそのような調製物は、関心のあるポリペプチド/タンパク質または多糖断片以外の化学的前駆体または化合物約30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%(乾燥重量で)未満を有する。
【0155】
本明細書に記載されている方法のうちのいずれかにより製造される免疫原性コンジュゲートは、水または低イオン強度中性pH緩衝液の中に保存するか乾燥粉末に凍結乾燥することができる。
【0156】
免疫応答を誘導し黄色ブドウ球菌(S.Aureus)感染を防御するための方法
本発明は、本明細書に記載されている免疫原性組成物についての使用方法も包含する。例えば、本発明の一実施形態は、免疫原性量の本明細書に記載されている免疫原性組成物のうちのいずれかを対象に投与することを含む黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する免疫応答を誘導する方法を提供する。本発明の一実施形態は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)による感染から対象を防御する方法、または黄色ブドウ球菌(S.aureus)による感染を予防する方法、または黄色ブドウ球菌(S.aureus)により引き起こされる感染に関係する少なくとも1つの症状の重症度を軽減するかその発症を遅らせる方法であって、免疫原性量の本明細書に記載されている免疫原性組成物のうちのいずれかを対象に投与するステップを含む方法を提供する。本発明の一実施形態は、対象においてブドウ球菌性の感染、ブドウ球菌属種(Staphylococcus sp.)に関係する疾患または状態を治療または予防する方法であって、対象に治療的または予防的に有効な量の本明細書に記載されている免疫原性組成物を投与するステップを含む方法を提供する。一部の実施形態において、ブドウ球菌性の感染、疾患または状態を治療または予防する方法は、ヒトの、家畜の、動物の、または農業の処置を含む。別の実施形態は、対象においてブドウ球菌性の感染、ブドウ球菌属種(Staphylococcus sp.)に関係する疾患または状態を治療または予防する方法であって、本明細書に記載されている免疫原性組成物からポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物を生成させ、前記抗体調製物を使用し、対象に受動免疫を与えるステップを含む方法を提供する。本発明の一実施形態は、手術手順を受けている対象においてブドウ球菌性感染を予防する方法であって、手術手順の前に対象に予防的に有効な量の本明細書に記載されている免疫原性組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0157】
抗原または免疫原性組成物に対する「免疫応答」は、関心のある抗原またはワクチン組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞性免疫応答の対象における発生である。本発明のために、「体液性免疫応答」は、抗体仲介性免疫応答であり、本発明の免疫原性組成物中の抗原に対して一部の親和性を持って認識および結合する抗体の誘導および生成を伴うが、「細胞性免疫応答」は、T細胞および/または他の白血球により仲介されるものである。「細胞性免疫応答」は、主要組織適合性複合体(MHC)のクラスIまたはクラスII分子、CD1または他の非古典的MHC様分子と関係する抗原エピトープの提示により誘発される。これは、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞またはCD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞(「CTL」)を活性化する。CTLは、古典的または非古典的MHCによりコードされるタンパク質と関係して提示され細胞の表面上で発現されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはそのような微生物が感染している細胞の溶解を誘導および促進する一助となる。細胞性免疫の別の態様には、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を伴う。ヘルパーT細胞は、機能を刺激し、それらの表面上の古典的または非古典的MHC分子と関係するペプチドまたは他の抗原を示す細胞に対する非特異的エフェクター細胞の活性に焦点を置く。「細胞性免疫応答」は、CD4+およびCD8+T細胞由来のものを包含する活性化されたT細胞および/または他の白血球により産生されるサイトカイン、ケモカインおよび他のそのような分子の産生も指す。特定の抗原または組成物が細胞性免疫学的応答を刺激する能力は、リンパ増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイなどによる多くのアッセイにより、感作された対象において抗原に対して特異的なTリンパ球についてアッセイすることにより、または抗原による再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン産生の測定により決定することができる。そのようなアッセイは、当技術分野においてよく知られている。例えば、Ericksonら(1993)J.Immunol.151:4189〜4199;およびDoeら(1994)Eur.J.Immunol.24:2369〜2376を参照されたい。
【0158】
本明細書で使用されている、「治療」(その変形、例えば、「治療する」または「治療された」を包含する)とは、下記のうちのいずれか1つまたは複数を意味する:(i)伝統的なワクチンにおけるように、感染または再感染の予防、(ii)症状の重症度の軽減、または症状の除去、および(iii)問題の病原菌または障害の実質的または完全な除去。したがって、治療は、予防的に(感染前に)または治療的に(感染後に)行うことができる。本発明において、予防的治療は、好ましい様式である。本発明の特定の実施形態によれば、微生物感染(例えば、ブドウ球菌属(Staphylococcus)などの細菌)に対して宿主動物を予防的および/または治療的に免疫化することを包含する、治療する組成物および方法が提供される。本発明の方法は、対象に予防的および/または治療的免疫を与えるのに有用である。本発明の方法は、生物医学的研究応用のために対象に対して実施することもできる。
【0159】
本明細書で使用されている、「哺乳動物」とは、ヒトまたは非ヒト動物を意味する。より詳細には、哺乳動物は、ヒト、家庭および農業用動物を包含する哺乳動物、ならびに家庭のペットおよびウシ、ヒツジ、フェレット、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、イヌ、ネコなどを包含するがそれらに限定されない他の家畜化された動物などの動物園、スポーツおよびペットのコンパニオン動物として分類されるいずれの動物も指す。好ましいコンパニオン動物は、イヌおよびネコである。哺乳動物は、ヒトであることが好ましい。
【0160】
「免疫原性量」、および「免疫学的に有効な量」は、それらが共に本明細書において互換的に使用され、当業者に知られている標準的アッセイにより測定されるように、細胞性(T細胞)応答かもしくは体液性(B細胞または抗体)応答、または両方の免疫応答を誘発するのに十分な抗原または免疫原性組成物の量を指す。
【0161】
組成物中の特定のコンジュゲートの量は、一般的に、そのコンジュゲートについてのコンジュゲートしているおよびコンジュゲートしていない総多糖に基づいて算出される。例えば、20%遊離多糖のCP5コンジュゲートは、100mcgCP5多糖投与量中にコンジュゲートしているCP多糖約80mcgおよびコンジュゲートしていないCP5多糖約20mcgを有するであろう。コンジュゲートに対するタンパク質寄与は、コンジュゲートの投与量を算出する場合に通常は考慮されない。コンジュゲートの量は、ブドウ球菌の血清型に応じて変わることがある。一般的に、各投与量は、多糖0.1〜100mcg、詳細には、0.1〜10mcg、より詳細には、1〜10mcgを含むであろう。免疫原性組成物中の異なる多糖構成成分の「免疫原性量」は、異なることがあり、各々は、任意の特定多糖抗原1mcg、2mcg、3mcg、4mcg、5mcg、6mcg、7mcg、8mcg、9mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcg、90mcg、または約100mcgを含み得る。
【0162】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)「侵襲性疾患」は、疾患の関係する臨床的な徴候/症状のある通常は無菌の部位からの細菌の単離である。通常は無菌の身体部位は、血液、CSF、胸膜液、心嚢液、腹水、関節/滑膜液、骨、体内部位(リンパ節、脳、心臓、肝臓、脾臓、硝子体液、腎臓、膵臓、卵巣)または他の通常は無菌の部位を包含する。侵襲性疾患を特徴付ける臨床状態は、菌血症、肺炎、蜂窩織炎、骨髄炎、心内膜炎、敗血症性ショックおよびそれ以上のものを包含する。
【0163】
免疫原としての抗原の有効性は、増殖アッセイにより、T細胞がその具体的標的細胞を溶解する能力を測定するためのクロム遊離アッセイなどの細胞溶解アッセイにより、または血清中の抗原に対して特異的な循環する抗体のレベルを測定することによりB細胞活性のレベルを測定することにより測定することができる。免疫応答は、抗原の投与に続いて誘導される抗原特異的抗体の血清レベルを測定することにより、より具体的には、本明細書に記載されているように、そのように誘導された抗体が特定の白血球のオプソニン化貪食性能力を高める能力を測定することにより検出することもできる。免疫応答の防御のレベルは、投与された抗原で免疫化された宿主にチャレンジすることにより測定することができる。例えば、免疫応答が望まれる抗原が細菌である場合、免疫原性量の抗原により誘導される防御のレベルは、細菌細胞による動物のチャレンジ後の生存率または死亡率を検出することにより測定される。一実施形態において、防御の量は、細菌感染に関係する少なくとも1つの症状、例えば、感染に関係する発熱を測定することにより測定することができる。多重抗原もしくは多重成分ワクチンまたは免疫原性組成物中の抗原の各々の量は、他の構成成分の各々に対して変わるはずであり、当業者に知られている方法により決定することができる。そのような方法は、免疫原性および/またはインビボ有効性を測定するための手順を包含するであろう。
【0164】
ある種の実施形態において、「約」という用語は、20%以内、好ましくは、10%以内、より好ましくは、5%以内を意味する。
【0165】
本発明は、本発明の血清型5もしくは8莢膜多糖または免疫原性コンジュゲートと特異的および選択的に結合する抗体および抗体組成物をさらに提供する。一部の実施形態において、抗体は、本発明の血清型5または8莢膜多糖または免疫原性コンジュゲートの対象への投与で生成される。一部の実施形態において、本発明は、本発明の血清型5または8莢膜多糖または免疫原性コンジュゲートのうちの1つまたは複数を対象とする精製または単離された抗体を提供する。一部の実施形態において、本発明の抗体は、動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイのいずれかにおいて細菌を致死させることにより測定されて機能的である。一部の実施形態において、本発明の抗体は、対象に受動免疫を与える。本発明は、当業者によく知られている技法を使用し、本発明の抗体もしくは抗体断片をコードするポリヌクレオチド分子、および細胞、細胞系(ハイブリドーマ細胞または抗体の組換え産生のための他の人工的に作り出された細胞系)または本発明の抗体もしくは抗体組成物を産生するトランスジェニック動物をさらに提供する。
【0166】
本発明の抗体または抗体組成物は、対象においてブドウ球菌性の感染、ブドウ球菌属種(Staphylococcus sp.)に関係する疾患または状態を治療または予防する方法であって、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体調製物を生成させ、前記抗体または抗体調製物を使用して対象に受動免疫を与えるステップを含む方法において使用することができる。本発明の抗体は、診断方法、例えば、CP5、CP8、またはそれらのコンジュゲートの存在を検出するか、CP5、CP8、またはそれらのコンジュゲートのレベルを定量化するためにも有用であることがある。
【0167】
当技術分野において知られているいくつかの動物モデルを使用し、本明細書に記載されている免疫原性組成物のうちのいずれか1つの有効性を評価することができる。例えば:
【0168】
受動的マウス敗血症モデル:マウスを、免疫IgGまたはモノクローナル抗体により腹腔内で(i.p.)受動的に免疫化する。マウスに、致死投与量の黄色ブドウ球菌(S.aureus)を24時間後にチャレンジする。細菌チャレンジは、静脈内(i.v.またはi.p.)に投与し、生存が、抗体の細菌との特異的インビボ相互作用に起因することを保証する。細菌のチャレンジ投与量は、免疫化されていない対照マウスのおおよそ20%の致死性敗血症を達成するのに必要とされる投与量であるように決定される。生存研究の統計的評価は、カプラン−マイヤー解析により行うことができる。
【0169】
能動免疫化およびチャレンジモデル:このモデルでは、マウスを、0、3および6週目に(または、当業者に知られている類似スケジュール)標的抗原により皮下で(s.c.)で能動的に免疫化し、静脈内または腹腔内経路により8週目に(または、当業者に知られている他の類似スケジュール)黄色ブドウ球菌(S.aureus)をチャレンジする。細菌のチャレンジ投与量は、14日間にわたって対照群におけるおおよそ20%の生存を達成するように較正される。生存研究の統計的評価は、カプラン−マイヤー解析により行うことができる。
【0170】
受動的感染性心内膜炎モデル:黄色ブドウ球菌(S.aureus)により引き起こされる感染性心内膜炎(IE)のための受動免疫化モデルは、ClfAが防御免疫を誘導することができることを示すためにこれまで使用されてきた。Vernachioら(2006)Antmicro.Agents & Chemo.50:511〜518を参照されたい。IEのこのモデルでは、ウサギまたはラットを使用し、中心静脈カテーテル、菌血症、および遠位器官への血行性播種を包含する臨床感染をシミュレートする。無菌の大動脈弁疣腫のあるカテーテル処置されたウサギまたはラットに、標的抗原に対して特異的なモノクローナルまたはポリクローナル抗体の単回静脈内注射を投与する。24時間後、動物に、異種のブドウ球菌株またはMRSA株をi.v.チャレンジする。チャレンジの48時間後、心臓疣腫、腎臓および血液を収集して培養する。次いで、心臓弁疣腫、腎臓、および血液におけるブドウ球菌感染の頻度を測定する。一研究において、動物にMRSE ATCC35984かまたはMRSA PFESA0003をチャレンジした場合、感染ラットの有意な減少は、ポリクローナル抗体調製物かまたはC1fAに対するモノクローナル抗体を使用して示された。Venachioら、前掲書を参照されたい。
【0171】
受動的感染性心内膜炎モデル:感染性心内膜炎モデルは、能動免疫化研究にも適合された。ウサギまたはラットを、標的抗原により筋肉内(i.m.)で免疫化し、i.v.経路を介して2週後に黄色ブドウ球菌(S.aureus)をチャレンジする。
【0172】
腎盂腎炎モデル:腎盂腎炎モデルでは、マウスを、標的抗原により0、3および6週目に(または、当業者に知られている同様のスケジュール)免疫化する。8週目に、動物に、例えば、1.7×10cfu黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266をi.p.注射によりチャレンジする。48時間後、腎臓および/または他の組織を収集して培養する。最後に、チャレンジ細菌のコロニー形成単位を、腎臓および/または他の組織において数え上げる。このモデルは、動物における全身性播種を評価する。
【0173】
オプソニン化貪食性致死アッセイを使用した機能的抗体のモニタリング
細胞系(例えば、HL60)の分化したエフェクター細胞または製造者のプロトコル通りにLYMPHOLYTE(登録商標)−ポリ溶液(Cedarlane laboratories limited、Ontario、Canada)を使用してドナーヒト血液から単離された多形核細胞(PMN)をこのアッセイのために使用することができる。エフェクター細胞を、おおよそ2×10細胞/mlの濃度にてアッセイ緩衝液(1%ウシ血清アルブミンを含有する変法イーグル培地)に再懸濁し、使用する準備ができるまで37℃のインキュベーターに入れる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株を、トリプチックソイ寒天プレート上で一夜にわたって生育させた。細菌細胞をすくい取り、2回洗浄し、おおよそ5×10cfu/mlの濃度と等しいOD600=1まで5%グリセロールを含有するアッセイ緩衝液に再懸濁した。細菌懸濁液の1mlアリコートを凍結させ、使用する準備ができるまで−40℃にて保存した。凍結した細菌懸濁液を解凍し、アッセイ緩衝液中で10cfu/mlの濃度に調整し、氷上に置いた。アッセイは、無菌の96ディープウェル1mlポリプロピレンプレートを使用して行った。抗体試料の2倍段階希釈液(50μl)を調製し、続いて、抗体ミックスにアッセイ緩衝液300μlを添加した。細菌をプレートに添加し(50μl)、30分にわたって4℃にて回転振盪機上に置いた。オプソニン化ステップに続いて、ヒト補体50μlを添加した(1%最終濃度)。最後に、エフェクター細胞50μl(10細胞/mlの濃度)をプレートに添加し、懸濁液を、ピペッティングを繰り返すことにより十分に混合した。懸濁液の50μlアリコートを、無菌の1%サポニン溶液中で10倍段階希釈し、細菌の凝集を最小限に抑えるためにボルテックスにかけ、二つ組でトリプチックソイ寒天上にプレートした。アッセイプレートを、ロティセリー(rotisserie)スタイルの振盪機を使用して連続して混合しながら1時間にわたって37℃にてインキュベートした。インキュベーションが終わったら、懸濁液の50μlアリコートを、無菌の1%サポニン溶液中で10倍段階希釈し、細菌の凝集を最小限に抑えるためにボルテックスすることにより混合し、二つ組でトリプチックソイ寒天上にプレートした。致死率は、抗体を欠くが細菌、補体およびエフェクター細胞を含有する管の中で生存しているcfu数に対する、細菌、抗体、補体およびエフェクター細胞を含むウェル中で60分に生存しているcfu数の比を決定することにより算出した。細菌、補体、および血清を含有する対照を、凝集に起因するcfuの低下について調整するために包含させた。
【0174】
補体吸着
黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株、PFESA0286およびPFESA0270に対して吸着されたヒトドナーの血清は、アッセイにおける補体源として使用することができる。黄色ブドウ球菌(S.aureus)株を、37℃にてTSAプレート上で生育させた。細胞を、プレートからすくい取り、無菌のPBSに再懸濁した。細菌細胞を、4℃にて10分にわたって10,000rpmにて遠心分離し、細胞ペレットを、吸着のためにヒト血清に再懸濁した。血清を、30分にわたって4℃にてヌテイター(nutator)上で細菌と共にインキュベートした。細胞を遠心分離し、血清を、細菌を含有する別の管に移し、吸着ステップを、30分にわたって再び繰り返した。最後に、細胞を遠心分離し、血清を、0.2ミクロンのフィルターに通した後、0.5mlアリコートを、液体窒素中で凍結させた。
【0175】
方法II−HL−60細胞を使用するOPA
HL−60細胞を、S.Romero−Steiner、ら、Clin Diagn Lab Immunol 4(4)(1997)、pp.415〜422に従って分化させた。収集されたHL−60細胞を、おおよそ10細胞/mlにてアッセイ緩衝液(1%ウシ血清アルブミンを含有する変法イーグル培地)に再懸濁し、使用する準備ができるまで37℃のインキュベーターに入れた。黄色ブドウ球菌(S.aureus)を、トリプチックソイ寒天プレート上で一夜にわたって生育させた。細菌細胞をすくい取り、2回洗浄し、おおよそ5×10cfu/mlの濃度と等しいOD600=1まで5%グリセロールを含有するアッセイ緩衝液に再懸濁した。細菌懸濁液の1mlアリコートを凍結させ、使用する準備ができるまで−40℃にて保存した。凍結した細菌懸濁液を解凍し、アッセイ緩衝液中で10cfu/mlの濃度に調整し、氷上に置いた。アッセイは、無菌の96ディープウェル1mlポリプロピレンプレートを使用して行った。モノクローナル抗体試料の2倍段階希釈液(25μl)を調製し、続いて、抗体懸濁液にアッセイ緩衝液150μlを添加した。細菌をプレートに添加し(25μl)、30分にわたって4℃にて回転振盪機上に置き、続いて、ヒト補体25μlを添加した(1%最終濃度)。最後に、HL−60細胞25μl(10細胞/ml)をプレートに添加し、懸濁液を、ピペッティングを繰り返すことにより十分に混合した。懸濁液の25μlアリコートを、無菌の1%サポニン溶液中で10倍段階希釈し、細菌の凝集を最小限に抑えるためにボルテックスすることにより混合し、二つ組でトリプチックソイ寒天上にプレートした。アッセイプレートを、ロティセリースタイルの振盪機を使用して連続して混合しながら1時間にわたって37℃にてインキュベートした。インキュベーションが終わったら、懸濁液の25μlアリコートを、無菌の1%サポニン溶液中で10倍段階希釈し、ボルテックスすることにより混合し、二つ組でトリプチックソイ寒天上にプレートした。致死率は、抗体を欠くが細菌、補体およびHL−60細胞を含有する管の中で生存しているcfu数に対する、細菌、抗体、補体およびHL−60細胞を含むウェル中で60分に生存しているcfu数の比を決定することにより算出した。細菌、補体、およびmAbを含有する対照を、凝集に起因するcfuの低下について調整するために包含させた。
【0176】
下記の実施例は、限定のためではなく例示のために提供される。
【実施例】
【0177】
(実施例1)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖の調製。
この実施例には、様々なサイズ範囲の黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖の製造が記載されている。構造黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖反復単位は、図1に示されている。本明細書に記載されている方法は、分子量が約20kDaから700kDaまでの範囲である血清型8莢膜多糖を製造するのに有効である。条件の適切な選択により、高分子量血清型8莢膜多糖を、分子量で50kDaから700kDaまでの範囲で単離および精製することができる。免疫原性組成物において使用するため、血清型8莢膜多糖を、分子量で70kDaから300kDaまでの範囲および多くの望ましい範囲で単離および精製することができる。生育特性および産生される莢膜の量に基づき、PFESA0005株またはPFESA0286株を、血清型8莢膜多糖を製造するために使用した。PFESA0005株またはPFESA0286株から単離された莢膜は、同一であることが分かった。
【0178】
血清型8莢膜多糖を製造するため、菌株を、主として炭素源(ラクトースかまたはスクロース)、窒素源としての加水分解された大豆粉、および微量金属からなる複合培地中で生育させた。菌株を、2〜5日にわたってバイオリアクター中で生育させた。
【0179】
高圧蒸気殺菌法の前に、試料を取り出し、培養液中のブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)のレベルをテストした。0.05%ポリソルベート80の存在下で、発酵におけるSEBの濃度は、15〜20ng/mlであった。以前の実験は、1時間にわたって培養液を高圧蒸気殺菌することが、TECRAキットについての検出限界未満である0.1ng/mlまでSEBのレベルを下げることを示した。
【0180】
透析濾過され、エタノール分画された多糖を、Q−Sepharose AECカラム上にロードし、上に記載されているNaClの直線グラジエントで溶離させた。画分を、血清型5多糖の存在についてはO−アセチルアッセイおよび二重免疫拡散テストならびにテイコ酸(TA)の存在についてはホスフェートアッセイにより分析した。血清型8多糖の存在は、画分35〜95において検出された(図2A〜B)。
【0181】
テイコ酸による夾雑を軽減するため、画分35〜75をプールし、残留テイコ酸をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、diHOに対する3K透析濾過によるその除去を可能にした。
【0182】
コンジュゲートの調製のために使用される血清型8莢膜多糖の精製は、細胞からの莢膜の遊離に影響を及ぼす高温および低pHに依存し多糖の分子量を下げる2つの異なる方法により行った。得られた分子量は、加水分解ステップの時間、温度およびpHに依存していた。
【0183】
血清型8莢膜多糖の特徴付けは、表1に明記されている技法を使用して行った。
【0184】
【表1】
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【0185】
下に記載されている方法により製造される莢膜多糖は、タンパク質、核酸、ペプチドグリカンおよびテイコ酸夾雑物が低レベルの純粋な十分に特徴付けられた多糖をもたらす。
【0186】
第一の方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、調製物を、酵素(例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、リゾチームおよびプロテアーゼ)のカクテルで処理し、不純物を消化した。インキュベーション後、残留不純物を、エタノールの添加(最終濃度約25%)により沈殿させた。残留エタノールの除去後、莢膜多糖を含有する溶液を、陰イオン交換カラム(Q−Sepharose)上にロードし、直線塩グラジエントで溶離した。莢膜多糖を含有する画分をプールし、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理した。この処理は、残留テイコ酸夾雑物の酸化的加水分解をもたらしたが、血清型8莢膜多糖には影響を及ぼさなかった。反応物を、エチレングリコールの添加によりクエンチした。材料を濃縮し、dHOに対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0187】
第二の方法を使用し、様々な細胞由来の不純物を消化するために酵素を使用することなく莢膜多糖を製造した。この方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、加水分解された発酵ブロスを、精密濾過と、続く、限外濾過および透析濾過により清澄化した。溶液を、活性炭で処理し、不純物を除去した。炭素処理後、材料を、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理して残留テイコ酸を酸化し、続いて、プロピレングリコールでクエンチした。材料を濃縮し、dHOに対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0188】
いずれかの方法を使用して製造された調製物は、タンパク質、核酸およびテイコ酸夾雑物が低レベルである純粋な莢膜多糖をもたらした。記載されている方法を使用し、加水分解の条件を変えることにより具体的範囲の望ましい高分子量多糖を製造することができる。本明細書に記載されている方法により得ることができる莢膜多糖の例は、下の表2に示されている。精製された血清型8莢膜多糖のバッチは、テイコ酸(TA)、ペプチドグリカンが無いことおよび低い残留タンパク質により示されるように高い純度を有していた。表2を参照されたい。より低い分子量の範囲は、20.4kDa〜65.1kDaに及び、精製された多糖は、高度にO−アセチル化されていた(約100%)。核酸夾雑のレベルは、低かった(0.12〜2.45%)。
【0189】
【表2】
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【0190】
莢膜多糖の分子量選択:速度論的解析は、広範囲の分子量の莢膜多糖を本明細書に記載されている方法により生成することができることを示した。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、続いて、望ましい分子量範囲が選択され、次いで、熱および加水分解ステップのpHおよび熱条件の操作により精製された。
【0191】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)発酵ブロスの熱処理は、発酵と莢膜多糖回収の間のプロセスステップである。このプロセスステップは、熱を使用して特定の期間にわたってpH調整されたブロスを処理する。低いpHにおける熱処理の目的は、細胞を死滅させ、エンテロトキシンを不活性化し、細胞に結合している多糖を遊離し、望ましいサイズに分子量を下げることであった。これらの目的の中で、分子量の低減は、このステップにおいて必要とされる処理時間という点で最も遅かった。したがって、他の目的は、考慮された処理時間内で必然的に達成された。
【0192】
熱処理:様々な分子量範囲の莢膜多糖を選択するためのpHおよび温度条件を決定した。15LのBiolafitte Fermenterをこれらの研究のために使用した。発酵ブロスを、蠕動ポンプにより発酵槽に移した。約200rpmの撹拌速度を使用し、ブロスpHを濃硫酸で調整した。次いで、ブロス温度を、設定レベルまで上げた。熱処理時間は、温度が設定ポイントに達すると直ぐに開始した。望ましい処理時間に達したら、ブロスを、室温まで冷却した。インプロセス試料を採取し、それぞれHPLCおよびSEC−MALLSシステムにより多糖濃度および分子量を決定した。分子量(MW)データを、速度論的解析で使用した。MWプロファイルを、pH3.5、4.0および5.0にて経時的に決定した。図3Aを参照されたい。
【0193】
多糖の穏和な酸加水分解の速度論を、プロセスから得られた精製された血清型8莢膜多糖を使用して行った。精製された多糖溶液を、硫酸で実験にとって望ましいpHに調整した。溶液約1.5mLを、15mLの遠心分離管の各々に移した。管を、精密な温度制御システムを備えた油浴に入れた。管を、所定の時間間隔で取り出し、アイスバケット中でクエンチした。実験が終わったら、1M Tris緩衝液(pH7.5)のアリコートを試料に加え、pHをもとの約7に調整した。試料を、SEC−MALLSシステムにより分析した。MWデータを、速度論的解析で使用した。pH3.5におけるCP8のMWプロファイルに対する温度の効果を、経時的に決定した。図3Bを参照されたい。
【0194】
結果
図3Aに示されているように、より低いpHは、多糖の分子量を下げるのにより有効であった。300kDaから600kDaの間の分子量は、15分から120分の間にわたって95℃にて5のpHを使用して生成させることができる。同様に、250kDaから450kDaの間の分子量は、15分から120分の間にわたって95℃にて4のpHを使用して生成させることができる。さらに、120kDaから450kDaの間の分子量は、15分から120分の間にわたって95℃にて3.5のpHを使用して生成させることができる。
【0195】
図3Bに示されているように、温度が高いほど、加水分解速度は速くなり、時間と共に製造される多糖の分子量の範囲は広がる。より低い温度の使用は、同じpHにて55℃対95℃で、より狭い範囲の多糖分子量を生じる。
【0196】
さらに、図4は、穏和な酸(95℃にてpH3.5)加水分解についての精製されたCP8の分子量と処理時間との相関を示している。精製された多糖は、これまでに詳述された回収プロセスから得られる最終製品である。図4にも示されているように、pH3.5における黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0005株の熱処理時間の増加は、より小分子量のCP8をもたらし、一方、pH3.5におけるより短い処理時間は、より高分子量のCP8をもたらした。血清型8莢膜多糖のサイズは、pH3.5における熱処理の時間の長さに応じて約80kDaから約220kDaまで範囲であった。低いpHにおける熱処理の時間と精製されたCP8のサイズの間の相関は、図4に示されているように、特定の範囲の分子量を持つ精製された多糖を製造するのに必要とされる処理時間の推定を可能にした。
【0197】
上に示されているように、20kDaから500kDa超までの全範囲の分子量の血清型8莢膜多糖を製造、遊離および精製することができることに留意することは重要である。したがって、方法を使用し、表3に示されているように具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。ピーク分子量が87kDaから108kDaまでの範囲である比較的狭い範囲の分子量の製造された多糖は、本明細書に記載されている方法により得ることができる十分に特徴付けられた範囲の分子量に相当する。70kDaから300kDaまで、または70kDaから150kDaまでの範囲である特に有利な範囲の高分子量多糖は、莢膜多糖を担体分子またはタンパク質とコンジュゲートさせることにより免疫原性組成物を作製するのに有用である(表3を参照)。約80から120kDaまでの分子量範囲を有するCP8莢膜多糖を生成するのに使用される条件は、下記の通りである:300分にわたって95℃、pH3.5。
【0198】
【表3】
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【0199】
(実施例2)血清型8莢膜多糖のCRM197とのコンジュゲーション。
この実施例は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖−CRM197コンジュゲートの製造において使用されるプロセスおよび特徴付けアッセイについて記載している。黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖をこの担体タンパク質とコンジュゲートさせるための異なるコンジュゲーション化学反応を開発した。例えば、PDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を使用するコンジュゲーションは、CPと担体タンパク質の間に共有チオエーテル結合をもたらす。代替方法として、CDI/CDT(1,1−カルボニルジイミダゾール/1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)を使用するコンジュゲーションは、CPと担体タンパク質の間に1炭素または0炭素リンカーをもたらす。
【0200】
PDPHコンジュゲーション化学反応による血清型8莢膜多糖のCRM197とのコンジュゲーション。
PDPHコンジュゲーション化学反応は、多糖の活性化、チオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、CRM197タンパク質の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスである。多糖へのリンカーを含有するチオール基およびCRM197タンパク質担体へのハロアセチル基の導入後、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を、チオエーテル結合を通じてタンパク質担体と結合させた。ブロモアセチル基は、アミノ基のブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応によりCRM197タンパク質中に導入した。チオール化された多糖を生成するため、多糖中のN−アセチルマンノサミノウロン酸のカルボジイミドで活性化されたカルボキシレート基を、スルフヒドリル反応性ヒドラジドヘテロ二官能性リンカー3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド(PDPH)のヒドラジド基とカップリングさせた。PDPHチオール化多糖のチオールを、DTTによる還元により生成させ、Sephadex G25カラム上のSECにより精製し、活性化されたタンパク質のブロモアセチル基と反応させると、多糖と担体タンパク質の間の臭素置換により形成される共有チオエーテル結合が得られた。未反応のブロモアセチル基は、システアミン塩酸塩(2−アミノエタンチオール塩酸塩)で「キャップ」した。次いで、反応混合物を濃縮し、透析濾過した。残ったコンジュゲートしていないブロモアセチル基をシステアミン塩酸塩でキャップし、反応性ブロモアセチル基がコンジュゲーション後に残っていないことを保証した。これは、臭素の置換後にシステアミンのチオール末端とリシン残基上のアセチル基との間で共有結合を形成した。
【0201】
1.PDPHによる黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖のチオール化:多糖を、まず、PDPHによるチオール化により活性化した。多糖を、血清型8莢膜多糖については1:0.6:1.25の多糖:PDPH:EDAC重量比を維持しながら、新たに調製したPDPHストック溶液(DMSO中250mg/mL)、EDACストック溶液(diHO中90mg/mL)、およびMES緩衝液ストック溶液(0.5M、pH4.85)と混合し、最終溶液0.1M MES、ならびに2および4mg多糖/mLを作製した。この混合物を、室温にて1時間にわたってインキュベートし、次いで、4℃と8℃の間にて3500 MWCO透析装置を使用して4回、1000×体積の蒸留HOに対して透析し、未反応のPDPHを除去した。PDPH結合型多糖は、0.2M DTTを使用して作製し、4℃と8℃の間にて3時間または一夜にわたって室温にてインキュベートした。過剰のDTTならびに反応の副成物を、Sephadex G25樹脂および移動相としての蒸留水を使用するSECにより活性化された糖から分離した。画分を、チオール基についてDTDPアッセイにより分析し、カラムの空隙体積近くで溶離されるチオール陽性画分をプールした。画分のプールを、PAHBAHおよびO−アセチルアッセイにより分析し、チオール基を含有する反復単位のモルパーセント(チオールのモル濃度/反復単位のモル濃度)として表される活性化度を決定した。活性化された多糖を凍結乾燥し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0202】
PDPHによる血清型8多糖チオール化の再現性の結果は、表4に示されている。血清型8多糖の活性化度は、10個の莢膜多糖反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する12%〜16%の範囲であった。
【0203】
【表4】
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【0204】
2.担体タンパク質活性化:別に、担体タンパク質を、ブロモアセチル化により活性化した。CRM197を、10mMのリン酸緩衝された0.9%NaCl pH7(PBS)で5mg/mLまで希釈し、次いで、1Mストック溶液を使用して0.1M NaHCO pH7.0を作製した。ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)を、20mg/mL DMSOのBAANSストック溶液を使用してCRM197:BAANS比1:0.25(w:w)にて添加した。反応混合物を、1時間にわたって4と8℃の間にてインキュベートし、次いで、Sephadex G−25上のSECを使用して精製した。精製された活性化されたCRM197を、ローリーアッセイにより分析してタンパク質濃度を決定し、次いで、5mg/mLまでPBSで希釈した。スクロースを、凍結防止剤として5%wt/volまで添加し、活性化されたタンパク質を凍結し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0205】
CRM197のリシン残基のブロモアセチル化は、極めて一貫性があり、利用可能な39個のリシンから19〜25個のリシンの活性化をもたらした(表5を参照)。反応は、高収率の活性化されたタンパク質を生じた。
【0206】
【表5】
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【0207】
3.カップリング反応:活性化された莢膜多糖および活性化された担体タンパク質を調製したら直ぐに、2つを、コンジュゲーション反応で混ぜ合わせた。凍結乾燥およびチオール化された多糖を、0.16MボレートpH8.95に溶かし、解凍したブロモアセチル化されたCRM197および蒸留水と混合して最終溶液0.1Mボレート、CRM197:多糖の1:1wt/wt比、および1mg/mL多糖を作製した。この混合物を、16から24時間の間にわたって室温にてインキュベートした。タンパク質上の未反応のブロモアセチル基を、0.1MボレートpH8.95に溶かしたシステアミンの135mg/mLストック溶液を使用して1:2(wt/wt)のCRM197:システアミンの比にてシステアミン塩酸塩を添加することによりキャップし、室温にて4時間インキュベートした。莢膜多糖−CRM197コンジュゲート(コンジュゲート)を、100Kポリエーテルスルホンウルトラフィルターを使用して0.9%NaClに対して50倍に透析濾過することにより精製した。
【0208】
PDPHによる血清型8莢膜多糖チオール化研究の再現性の結果は、多糖の活性化度が、10個の多糖反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する12%〜16%の範囲であることを示した。
【0209】
CDI/CDTコンジュゲーション化学反応による血清型8莢膜多糖のCRM197とのコンジュゲーション。
CDIおよびCDTは、多糖を、無水環境(DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとイミダゾールまたはトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1段階コンジュゲーションプロセスを提供する。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるイミダゾールまたはトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成をもたらす。
【0210】
CDIとCDTコンジュゲーション化学反応は共に、サイズ排除クロマトグラフィーの画分における糖とタンパク質の存在、およびグリコアルデヒドでキャップされたまたはシステアミン塩酸塩でキャップされたコンジュゲートのアミノ酸分析により示される担体タンパク質と共有結合している血清型8莢膜多糖を生じた。
【0211】
多糖サイズが20kDa〜40kDaの範囲である莢膜血清型8についてのPDPHとCDI/CDTの両方の化学反応により調製されるコンジュゲートのいくつかのロットの調製の結果の要約は、下の表6に示されている。これらの2つのコンジュゲーション方法により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、多糖タンパク質の比および収率に有意差はなかった。コンジュゲートしている血清型8莢膜多糖の抗原性は、コンジュゲートと天然多糖の間の同一性沈降素ラインにより示されるように、コンジュゲーションにより変わることはなかった。
【0212】
【表6】
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【0213】
上に示されているように、本明細書に記載されている方法を使用し、具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。我々は、免疫原性組成物における使用のために濾過および精製することができる予め選択された範囲の高分子量血清型8莢膜多糖からコンジュゲートを調製することを目指した。表7は、血清型8莢膜多糖が約80kDaから120kDaまでの分子量の範囲であり、イミダゾールコンジュゲーション化学反応を利用した血清型8莢膜多糖コンジュゲートの分析を要約している。得られたコンジュゲートの分子量は、595kDaから1708kDaまでの範囲であった。CRM197当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で9個から最低で3個までの範囲であった。遊離莢膜多糖は、最高で6%から最低で2%までの範囲であった。
【0214】
【表7】
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【0215】
両方のコンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質と共有結合している血清型8莢膜多糖を生じる。これらの2つの方法により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、血清型8莢膜多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0216】
(実施例3)ワンポット対複合CDI/CDTプロセス。
上に記載されているように、本発明の免疫原性コンジュゲートを作製するための方法には、CDI(1,1−カルボニルジイミダゾール)、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)またはPDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を伴うコンジュゲーション化学反応を使用する莢膜多糖の担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを伴う。CDI/CDTの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の1炭素または0炭素リンカーをもたらすが、PDPHの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の共有チオエーテル結合をもたらす。
【0217】
PDPHベースの方法は、多糖の活性化、多糖上のチオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、タンパク質単体の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスであった。この方法では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を、0.1M MESなどの水溶液中でPDPHおよびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせた。PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせ、次いで、精製した。担体タンパク質を、水溶液中でブロモ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステルと反応させて、活性化された担体タンパク質を生じさせ、次いで、精製した。次いで、精製された活性化された血清型8多糖を、精製された活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型8多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。
【0218】
対照的に、CDIベースおよびCDTベースの方法は、莢膜多糖を、無水環境(すなわち、DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとイミダゾールまたはトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1または2段階コンジュゲーションプロセスであった。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるイミダゾールまたはトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成をもたらす。したがって、2つのCDIベースのおよびCDTベースの方法:より複雑なプロセスおよびより簡単なワンポットプロセスを開発した。より複雑なプロセスでは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖を、イミダゾールまたはトリアゾールと混ぜ合わせ、凍結乾燥し、次いで、有機溶媒(DMSOなど)中でCDIまたはCDTと反応させて、活性化された血清型8多糖を生じさせた。活性化された血清型8多糖を精製し、次いで、有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型8多糖−担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。ワンポットプロセスは、活性化された血清型8多糖を、担体タンパク質との反応に先立って精製しないことを除いては複合プロセスと同様であった。
【0219】
CDI/CDT複合プロセス。
多糖の活性化:血清型8多糖を、血清型8 1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。得られたケーキを、2.0mg血清型8多糖/mLにてDMSOに溶かした。含水量を決定した。DMSO中で100mg/mLにて新たに調製したCDTのストック溶液を添加し、水と等しいモル量のCDTを達成した。代替方法として、添加されるCDTの量を調整し、より高いかより低い活性化度を達成した。これを、23℃にて30分保持した。
【0220】
活性化された血清型8多糖の精製:活性化された血清型8(ACP8)の溶液を、25体積の水の中に注ぎ、過剰のCDTを破壊した。これを、おおよそ1mg/cmにて10kDa PES膜上でその元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積の水に対して透析濾過した。このステップは、4時間未満で終了した。透析濾過された材料を、元の血清型8多糖1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。
【0221】
凍結乾燥されたCRMの調製:CRMを、少なくとも10体積の10kDa PES膜上で一定体積にて0.4%NaCl/5%スクロースに対して透析濾過した。タンパク質濃度を決定し、十分な透析濾過緩衝液を添加し、タンパク質濃度を5.0g/Lにすると、NaCl/CRMのw/w比=0.8が得られた。CRMを凍結乾燥した。
【0222】
コンジュゲーション:活性化された、透析濾過された血清型8多糖を、1mg/mLにてDMSOに溶かした。100mMにてボレート溶液を添加し、2%v/vを達成した。
【0223】
CRMを、2mg/mLにて再懸濁し、溶解が終了したら、ACP8溶液と混ぜ合わせた。これを、20時間にわたって23℃にて反応させた。
【0224】
コンジュゲート反応物を、24体積の5mMボレートpH9.0の中に注ぎ、1時間にわたって室温にて撹拌させた。次いで、0.5Mリン酸緩衝液、pH6.5でpH7.5に調整した。これを、5ミクロンフィルターに通して濾過し、約1mg/cmの負荷にて300kDa PES膜上で元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積の水に対して透析濾過した。得られた濃縮物を、0.22ミクロンフィルターに通して濾過し、2℃〜8℃にて保存した。
【0225】
CDI/CDTワンポットプロセス。
CRM197マトリックス交換:CRM197を透析濾過し、おおよそ10mMホスフェート/80mM NaCl/15%スクロース、pH7のバルクマトリックスから5mMイミダゾール/0.72%NaCl/15mMオクチル−β−D−グルコシド、pH7へ交換した。交換は、コンジュゲーションに有害であり、コンジュゲーション中に運ばれる塩化ナトリウム含量を規定するホスフェートおよびスクロースの除去を可能にした。オクチル−β−D−グルコピラノシドは、無菌濾過後の粒子形成を防ぐために添加される。
【0226】
CRM197のマトリックスを、おおよそ4mg/mLの保持液濃度にて10K MWCO PES膜を使用する10ダイアボリューム(diavolume)を通じての5mMイミダゾール/0.72%/15mMオクチル−β−D−グルコピラノシドpH7に対する平行流濾過により交換した。典型的な膜チャレンジは、2グラム/ftとし、マトリックス中の標的最終CRM197濃度は、6mg/mLとした。CRM197は、2℃〜8℃にて保存した。
【0227】
活性化/コンジュゲーション:黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型8莢膜多糖についての活性化/コンジュゲーションプロセスは、下記のステップからなった:1)CRM197のマトリックス交換;2)多糖の混ぜ合わせ;3)CRM197および混ぜ合わせられた多糖のシェル凍結および凍結乾燥;4)凍結乾燥された多糖およびCRM197の溶解;5)多糖の活性化;6)活性化された多糖のCRM197とのコンジュゲーション;および7)コンジュゲートの精製(希釈、透析濾過、無菌濾過)。
【0228】
多糖を、多糖1g当たり10グラムの1,2,4−トリアゾール賦形剤と混ぜ合わせた。賦形剤を、多糖への動力として添加すると、周囲温度にて15分未満の混合の後に溶液が得られた。
【0229】
混ぜ合わせられた多糖およびCRM197を、−75℃のエタノール浴を使用して別々にシェル凍結した。1Lのボトル当たりの体積は、おおよそ500mLとした。
【0230】
多糖溶解については、DMSOを、多糖の個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、加熱のための活性化/コンジュゲーション反応容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。懸濁液が、混合しながらおおよそ45℃に達すると、澄明な溶液が得られた。次いで、溶液を、23℃±2℃まで冷却した。
【0231】
CRM197溶解については、DMSOを、CRM197を含有する個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、混合のための第二の容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。澄明な溶液は、典型的には、15分未満で得られた。
【0232】
多糖/DMSO溶液を、カールフィッシャー分析のためにサンプリングし、水分含量を決定した。CDTを、DMSO中で100mg/mL溶液として調製し、決定された水分含量に基づいて添加した。CDT溶液の連続添加は、混合しながら23℃±2℃にて約5分かけて行った。反応を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって進行させた。反応物をサンプリングし、活性化レベルを決定し(UV220/205nm)、次いで、100mMホウ酸ナトリウム、pH9を添加すると、1.5%水溶液が得られた。次いで、反応溶液を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって撹拌した。
【0233】
活性化された多糖のCRM197とのコンジュゲーションについては、DMSOを、0.8mg/mL反応濃度を標的にして添加した。次いで、DMSOに溶かされたCRM197を、混合しながら、活性化された多糖溶液に添加した。反応物を、23℃±2℃にて最低限4時間にわたって撹拌した。
【0234】
反応溶液を、混合しながら5mM四ホウ酸ナトリウム、pH9の中にそれを添加することにより10×希釈し、残留活性化基を加水分解した。希釈された溶液を、5μmフィルターに通し、2g/Lの標的保持液濃度まで濃縮した。平行流濾過は、5mMスクシネート、pH7による20ダイアボリュームを通じて300K再生セルロース膜を使用して行った。典型的な膜チャレンジは、1グラム/ftとした。精製されたコンジュゲートを、0.22ミクロンフィルターに通し、2℃〜8℃にて保存した。
【0235】
(実施例4)ワンポットおよび複合コンジュゲーションプロセスを使用する血清型8莢膜多糖のコンジュゲーション。
この実施例は、予め選択された範囲の分子量の莢膜多糖を、ワンポットプロセスかまたは複合プロセスにおけるコンジュゲーションのために使用することができることを示している。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、得られる精製された分子量範囲は、実施例1における加水分解プロセスのpHおよび熱により制御することができる(表3に示されている通り)。
【0236】
この実施例では、血清型8莢膜多糖が、約80kDaから約120kDaまでの分子量範囲である8個のバッチを選択し、コンジュゲーションは、血清型8莢膜多糖のための1,1−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)による活性化を使用して行った。表8を参照されたい。得られたコンジュゲートの分子量は、595kDaから1708kDaまでの範囲であった。CRM当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で13個から最低で3個までの範囲であった。遊離糖は、最高で11%から最低で1%までの範囲であった。
【0237】
【表8】
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【0238】
(実施例5)マウス菌血症モデルにおけるコンジュゲートしている天然および塩基処理血清型8莢膜多糖の評価。
機能的抗体応答の誘導についてのコンジュゲーション前の天然血清型8莢膜多糖上に存在するO−アセチル基の重要性を、莢膜多糖コンジュゲートについて評価した。血清型8莢膜多糖を、穏和な塩基性条件下で脱O−アセチル化すると、NMRとイオンクロマトグラフィー(IC)は共に、血清型8莢膜多糖脱O−Ac−CRM中にO−アセチル化がないことを裏付けた。CP8脱O−Ac−CRMコンジュゲートを、実施例2に記載されているPDPH化学反応による脱O−Ac CP8多糖のCRMとのコンジュゲーションにより調製した。
【0239】
血清型8莢膜多糖コンジュゲートは、予想外に、IC方法により測定できるアセチル基を示さなかった。このことは、コンジュゲーション中に血清型8莢膜多糖中のアセチル基の除去または改変を引き起こす他の黄色ブドウ球菌(S.aureus)莢膜多糖と比較して構造の差、O−アセチル化の部位に起因すると思われる。
【0240】
マウス菌血症モデルを使用し、CRM197とコンジュゲートしている天然対塩基処理血清型8莢膜多糖の有効性を評価した。雌性BALB/cマウスの群(15/群)に、1mcg血清型8莢膜多糖脱O−Ac−CRMまたは1μg血清型8莢膜多糖O−Ac−CRMを0、3および6週目にワクチン接種した。ワクチンは、22mcg AlPOと共に製剤化した。動物に、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0003をチャレンジし、細菌を、3時間後に血液から数え上げた。データは、スチューデントt検定により決定されるように未処置の天然血清型8莢膜多糖で免疫化された動物の血液から回収された細菌cfuに統計的に有意な(p=0.0362)減少があることを示した(表9)。塩基処理血清型8莢膜多糖コンジュゲートで免疫化された動物では、血液から回収された細菌cfuは、生理食塩水対照群と同様であった。
【0241】
【表9】
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【0242】
(実施例6)マウス菌血症モデルにおけるコンジュゲートしている天然および塩基処理血清型8莢膜多糖の評価。
血清型8莢膜多糖コンジュゲートを、腎盂腎炎モデルにおいてマウスを防御するそれらの能力について評価した。i.p.黄色ブドウ球菌(S.aureus)チャレンジを受けたマウスの血液における細菌数は、PBSで免疫化された対照と比較して有意に減少した。
【0243】
2つの研究を行い、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0268(8型)によるチャレンジ後の、前に記載されているマウス菌血症モデルにおけるCP8−CRM197コンジュゲートの有効性を評価した。第一の研究(図5)は、菌血症の有意な減少を示した(p=0.0308)。研究のため、6〜8週齢Swiss Websterマウスの群(n=30)を、0、2および4週目に両方とも100μg AlPOと共に製剤化された1μg血清型8莢膜多糖−CRM197および生理食塩水による皮下注射により能動的に免疫化し、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0268(8型)を静脈内経路により6週目にチャレンジした。事前のチャレンジ実験を行い、3回のワクチン接種後に達するマウスの年齢におけるチャレンジ株の投与量を最適化した。生存研究の統計学的評価は、カプラン−マイヤー解析により行った。
【0244】
(実施例7)天然および化学的に改変された血清型8莢膜多糖コンジュゲートで免疫化されたマウスからの血清のオプソニン活性。
ワクチン接種研究からの血清型8莢膜多糖力価が高い選択されたマウス血清(n=5)を、PFESA0005株を使用してオプソニン活性について比較した。OPA結果(表10)は、天然の血清型8莢膜多糖のコンジュゲーションにより調製されたコンジュゲートのみが、マウスにおいてオプソニン抗体を誘発したことを示している。脱OAc血清型8莢膜多糖コンジュゲートは、マウスにおいて免疫原性であったが、誘発された抗体は、このアッセイにおいてオプソニン性でなかったことは注目に値する。OPA力価は、40%致死が観察された希釈度の逆数として報告される。
【0245】
【表10】
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【0246】
(実施例8)血清型8コンジュゲート抗血清による黄色ブドウ球菌(S.aureus)株の致死は、天然血清型8莢膜多糖の添加により阻害されることがある。
致死の特異性を確認するため、オプソニン化貪食性アッセイを、本質的に上に記載されているように、天然血清型8莢膜多糖または関係のない肺炎球菌多糖(Pn14poly)の存在下で行った。
【0247】
結果(表11)は、反応混合物中の天然血清型8莢膜多糖の存在が、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0286(8型)のオプソニン化貪食性致死を阻害することを示した。これらの結果は、免疫血清によるオプソニン化貪食性致死が、莢膜特異的抗体により仲介されることを裏付けている。
【0248】
【表11】
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【0249】
要約
すべてのコンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質CRM197と共有結合している血清型8莢膜多糖を生じた。これらの方法により生成されるコンジュゲートの遊離糖、血清型8莢膜多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0250】
(実施例9)黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖の調製。
この実施例には、様々なサイズ範囲の黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖の製造が記載されている。黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖反復単位の構造は、図6に示されている。本明細書に記載されている方法は、分子量が約20kDaから800kDaの範囲である血清型5莢膜多糖を製造するのに有効である。条件の適切な選択により、高分子量血清型5莢膜多糖を、分子量で50kDaから800kDaまでの範囲で単離および精製することができる。免疫原性組成物において使用するため、血清型5莢膜多糖を、分子量で70kDaから300kDaまで、70kDaから150kDaまでの範囲および多くの望ましい範囲で単離および精製することができる。生育特性および産生される莢膜の量に基づき、PFESA0266株を、血清型5莢膜多糖製造のために選択した。
【0251】
血清型5莢膜多糖を製造するため、PFESA0266株を、主として炭素源(ラクトースかまたはスクロース)、窒素源としての加水分解された大豆粉、および微量金属からなる複合培地中で生育させた。菌株を、2〜5日にわたってバイオリアクター中で生育させた。
【0252】
PFESA0266株の発酵は、上に詳述されているように行った。収集時に、培養液のOD600は、7.38であった。培養液を、1時間にわたって高圧蒸気殺菌し、冷却した後、培養液を、上に記載されているように処理し、上清材料から細胞を分離した。濾過および濃縮された上清および細胞の各々おおよそ1Lを回収した。
【0253】
高圧蒸気殺菌法の前に、試料を取り出し、培養液中のブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)のレベルをテストした。0.05%ポリソルベート80の存在下で、発酵におけるSEBの濃度は、15〜20ng/mlであった。以前の実験は、1時間にわたって培養液を高圧蒸気殺菌することが、TECRAキットについての検出限界未満である0.1ng/mlまでSEBのレベルを下げることを示した。
【0254】
透析濾過され、エタノール分画された多糖を、Q−Sepharose AECカラム上にロードし、上に記載されているNaClの直線グラジエントで溶離させた。画分を、血清型5多糖の存在についてはO−アセチルアッセイおよび二重免疫拡散テストならびにテイコ酸の存在についてはホスフェートアッセイにより分析した。血清型5多糖の存在は、画分60〜105において検出された(図7A〜B)。テイコ酸による夾雑を軽減するため、画分60〜85をプールし、残留テイコ酸をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化し、diHOに対する3K透析濾過によるその除去を可能にした。
【0255】
コンジュゲートの調製のために使用される血清型5莢膜多糖の精製は、細胞からの莢膜の遊離に影響を及ぼす高温および低pHに依存し多糖の分子量を下げる2つの異なる方法により行った。得られた分子量は、加水分解ステップの時間、温度およびpHに依存していた。
【0256】
血清型5莢膜多糖の特徴付けは、表1、前掲書に明記されている技法を使用して行った。
【0257】
下に記載されている方法により製造される莢膜多糖は、タンパク質、核酸、ペプチドグリカンおよびテイコ酸夾雑物が低レベルの純粋な多糖をもたらす。
【0258】
第一の方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、調製物を、酵素(例えば、リボヌクレアーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、リゾチームおよびプロテアーゼ)のカクテルで処理し、不純物を消化した。インキュベーション後、残留不純物を、エタノールの添加(最終濃度約25%)により沈殿させた。残留エタノールの除去後、莢膜多糖を含有する溶液を、陰イオン交換カラム(Q−Sepharose)上にロードし、直線塩グラジエントで溶離した。莢膜多糖を含有する画分をプールし、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理した。この処理は、残留テイコ酸夾雑物の酸化的加水分解をもたらしたが、血清型5莢膜多糖には影響を及ぼさなかった。反応物を、エチレングリコールの添加によりクエンチした。材料を濃縮し、蒸留水(dHO)に対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0259】
第二の方法を使用し、様々な細胞由来の不純物を消化するために酵素を使用することなく莢膜多糖を製造した。この方法では、細胞からの莢膜多糖の遊離および分子量の低減に続いて、加水分解された発酵ブロスを、精密濾過と、続く、限外濾過および透析濾過により清澄化した。溶液を、活性炭で処理し、不純物を除去した。炭素処理後、材料を、メタ過ヨウ素酸ナトリウムで処理して残留テイコ酸を酸化し、続いて、プロピレングリコールでクエンチした。材料を濃縮し、dHOに対して透析濾過し、残留試薬および副成物を除去した。
【0260】
いずれかの方法を使用して製造された調製物は、タンパク質、核酸およびテイコ酸夾雑物が低レベルである純粋な莢膜多糖をもたらした。記載されている方法を使用し、加水分解の条件を操作することにより具体的範囲の望ましい高分子量多糖を製造することができる。
【0261】
本明細書に記載されている方法により得ることができる莢膜多糖の例は、下の表12に示されている。精製された血清型5莢膜多糖のバッチは、テイコ酸(TA)、ペプチドグリカンが無いことおよび低い残留タンパク質により示されるように高い純度を有していた。表12および13を参照されたい。分子量の範囲は、132.7kDa〜800kDaに及び、精製された多糖は、90%〜100%の範囲で高度にO−アセチル化されており、100%N−アセチル化されていた。血清型5莢膜多糖精製の収率は、39%〜63%であり、精製された血清型5莢膜多糖のサイズは、35kDaから65kDaまで変化した(表12を参照)。テイコ酸(TA)夾雑のレベルは、許容可能であり、残留タンパク質および核酸のレベルも、許容できる範囲であった。血清型5多糖のNMRスペクトルは、文献に報告されているものと一致した。
【0262】
【表12】
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【0263】
【表13】
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【0264】
莢膜多糖の分子量選択:速度論的解析は、広範囲の分子量の莢膜多糖を本明細書に記載されている方法により生成することができることを示した。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、続いて、望ましい分子量範囲が選択され、次いで、熱および加水分解ステップのpHおよび熱条件の操作により精製された。
【0265】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)発酵ブロスの熱処理は、発酵と莢膜多糖回収の間のプロセスステップである。このプロセスステップは、熱を使用して特定の期間にわたってpH調整されたブロスを処理する。低いpHにおける熱処理の目的は、細胞を致死させ、エンテロトキシンを不活性化し、細胞に結合している多糖を遊離し、望ましいサイズに分子量を下げることであった。これらの目的の中で、分子量の低減は、このステップにおいて必要とされる処理時間という点で最も遅かった。したがって、他の目的は、考慮された処理時間内で必然的に達成された。
【0266】
熱処理:様々な分子量範囲の莢膜多糖を選択するためのpHおよび温度条件を決定した。15LのBiolafitte Fermenterをこれらの研究のために使用した。発酵ブロスを、蠕動ポンプにより発酵槽に移した。約200rpmの撹拌速度を使用し、ブロスpHを濃硫酸で調整した。次いで、ブロス温度を、設定レベルまで上げた。熱処理時間は、温度が設定ポイントに達すると直ぐに開始した。望ましい処理時間に達したら、ブロスを、室温まで冷却した。インプロセス試料を採取し、それぞれHPLCおよびSEC−MALLSシステムにより多糖濃度および分子量を決定した。分子量(MW)データを、速度論的解析で使用した。MWプロファイルを、pH3.5、4.0および5.0にて経時的に決定した。図8Aを参照されたい。
【0267】
多糖の穏和な酸加水分解の速度論を、プロセスから得られた精製された血清型8莢膜多糖を使用して行った。精製された多糖溶液を、硫酸で実験にとって望ましいpHに調整した。溶液約1.5mLを、15mLの遠心分離管の各々に移した。管を、精密な温度制御システムを備えた油浴に入れた。管を、所定の時間間隔で取り出し、アイスバケット中でクエンチした。実験が終わったら、1M Tris緩衝液(pH7.5)のアリコートを試料に加え、pHをもとの約7に調整した。試料を、SEC−MALLSシステムにより分析した。MWデータを、速度論的解析で使用した。pH4.5におけるCP5のMWプロファイルに対する温度の効果を、経時的に決定した。図8Bを参照されたい。
【0268】
結果
図8Aに示されているように、より低いpHは、多糖の分子量を下げるのにより有効であった。この実施例では、約300kDaから約600kDaの間の分子量の範囲は、15分から120分の間にわたって95℃にて5のpHを使用して生成することができる。図8Aを参照されたい。同様に、15分から120分の間にわたって95℃にて4.5のpHを選択すると、200kDaから400kDaの間の多糖分子量範囲を得ることができる。さらに、15分から120分の間にわたって95℃にて4.0のpHを選択すると、120kDaから300kDaの間の多糖分子量範囲を得ることができる。
【0269】
図8Bに示されているように、温度が高いほど、加水分解速度は速くなり、時間と共に製造される多糖の分子量は広がる。別の方法で表すと、より低い温度の使用は、同じpHにて55℃対95℃で、より狭い範囲の多糖分子量を生じる。
【0270】
さらに、図4は、穏和な酸(95℃にてpH4.5)加水分解についての精製された血清型5莢膜多糖の分子量と処理時間との相関を示している。精製された多糖は、これまでに詳述された回収プロセスから得られる最終製品である。図4にも示されているように、pH4.5における黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の熱処理時間の増加は、より小分子量の血清型8莢膜多糖をもたらし、一方、pH4.5におけるより短い熱処理時間は、より高分子量の血清型5莢膜多糖をもたらした。血清型5莢膜多糖のサイズは、pH4.5における熱処理の時間の長さに応じて約90kDaから約220kDaまでの範囲であった。低いpHにおける熱処理の時間と精製された血清型5莢膜多糖のサイズの間の相関は、図4に示されているように、特定の範囲の分子量を持つ精製された多糖を製造するのに必要とされる処理時間の推定を可能にする。
【0271】
上に示されているように、20kDaから500kDa超までの全範囲の分子量の血清型5莢膜多糖を製造、遊離および精製することができる。記載されている方法を使用し、表14に示されているように具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。ピーク分子量が63kDaから142kDaまでの範囲である比較的狭い範囲の分子量の製造された多糖は、本明細書に記載されている方法により得ることができる十分に特徴付けられた範囲の分子量に相当する。70kDaから300kDaまで、または70kDaから150kDaまでの範囲である特に有利な範囲の高分子量多糖は、莢膜多糖を担体分子またはタンパク質とコンジュゲートさせることにより免疫原性組成物を作製するのに有用である。約100から140kDaまでの分子量範囲を有するCP5莢膜多糖を生成するのに使用される条件は、下記の通りである:135分にわたって95℃、pH4.5。しかしながら、pH、温度、および時間の異なる組合せも、分子量範囲が約100〜140kDaのCP5分子を生成するであろう。
【0272】
【表14】
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【0273】
(実施例10)血清型5莢膜多糖のCRM197とのコンジュゲーション。
この実施例は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖−CRM197コンジュゲートの製造において使用されるプロセスおよび特徴付けアッセイについて記載している。黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖をこの担体タンパク質とコンジュゲートさせるための異なるコンジュゲーション化学反応を開発した。例えば、PDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を使用するコンジュゲーションは、CPと担体タンパク質の間に共有チオエーテル結合をもたらし;一方、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)を使用するコンジュゲーションは、莢膜多糖と担体タンパク質の間に1炭素または0炭素リンカーをもたらす。
【0274】
PDPHコンジュゲーション化学反応による血清型5莢膜多糖のCRM197とのコンジュゲーション。
PDPHコンジュゲーション化学反応は、多糖の活性化、チオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、CRM197タンパク質の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスである。多糖へのリンカーを含有するチオール基およびCRM197タンパク質担体へのハロアセチル基の導入後、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を、チオエーテル結合を通じてタンパク質担体と結合させた。ブロモアセチル基は、アミノ基のブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルとの反応によりCRM197タンパク質中に導入した。チオール化された多糖を生成するため、多糖中のN−アセチルマンノサミノウロン酸のカルボジイミドで活性化されたカルボキシレート基を、スルフヒドリル反応性ヒドラジドヘテロ二官能性リンカー3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド(PDPH)のヒドラジド基とカップリングさせた。PDPHチオール化多糖のチオールを、DTTによる還元により生成させ、Sephadex G25カラム上のSECにより精製し、活性化されたタンパク質のブロモアセチル基と反応させると、多糖と担体タンパク質の間の臭素置換により形成される共有チオエーテル結合が得られた。未反応のブロモアセチル基は、システアミン塩酸塩(2−アミノエタンチオール塩酸塩)で「キャップ」した。次いで、反応混合物を濃縮し、透析濾過した。残ったコンジュゲートされていないブロモアセチル基をシステアミン塩酸塩でキャップし、反応性ブロモアセチル基がコンジュゲーション後に残っていないことを保証した。これは、臭素の置換後にシステアミンのチオール末端とリシン残基上のアセチル基との間に共有結合を形成した。
【0275】
1.PDPHによる黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖のチオール化:多糖を、まず、PDPHによるチオール化により活性化した。多糖を、血清型5莢膜多糖については1:5:3の莢膜多糖:PDPH:EDAC重量比を維持しながら、新たに調製したPDPHストック溶液(DMSO中250mg/mL)、EDACストック溶液(diHO中90mg/mL)、およびMES緩衝液ストック溶液(0.5M、pH4.85)と混合し、最終溶液0.1M MES、ならびに2mgおよび4mg多糖/mLを作製した。この混合物を、室温にて1時間にわたってインキュベートし、次いで、4℃と8℃の間にて3500 MWCO透析装置を使用して4回、1000×体積の蒸留HOに対して透析し、未反応のPDPHを除去した。PDPH結合型多糖は、0.2M DTTを使用して作製し、4℃と8℃の間にて3時間または一夜にわたって室温にてインキュベートした。過剰のDTTならびに反応の副成物を、Sephadex G25樹脂および移動相としての蒸留水を使用するSECにより活性化された糖から分離した。画分を、チオール基についてDTDPアッセイにより分析し、カラムの空隙体積近くで溶離されるチオール陽性画分をプールした。画分のプールを、PAHBAHおよびO−アセチルアッセイにより分析し、チオール基を含有する反復単位のモルパーセント(チオールのモル濃度/反復単位のモル濃度)として表される活性化度を決定した。活性化された多糖を凍結乾燥し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0276】
PDPHによる血清型5多糖チオール化の再現性の結果は、表15に示されている。血清型5多糖の活性化度は、10個の莢膜多糖反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する11%〜19%の範囲であった。
【0277】
【表15】
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【0278】
2.担体タンパク質活性化:別に、担体タンパク質を、ブロモアセチル化により活性化した。CRM197を、10mMのリン酸緩衝された0.9%NaCl pH7(PBS)で5mg/mLまで希釈し、次いで、1Mストック溶液を使用して0.1M NaHCO pH7.0を作製した。ブロモ酢酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(BAANS)を、20mg/mL DMSOのBAANSストック溶液を使用してCRM197:BAANS比1:0.25(w:w)にて添加した。この反応混合物を、1時間にわたって4℃と8℃の間にてインキュベートし、次いで、Sephadex G−25上のSECを使用して精製した。精製された活性化されたCRM197を、ローリーアッセイにより分析してタンパク質濃度を決定し、次いで、5mg/mLまでPBSで希釈した。スクロースを、凍結防止剤として5%wt/volまで添加し、活性化されたタンパク質を凍結し、コンジュゲーションに必要とされるまで−25℃にて保存した。
【0279】
CRM197のリシン残基のブロモアセチル化は、極めて一貫性があり、利用可能な39個のリシンから19〜25個のリシンの活性化をもたらした(表16を参照)。反応は、高収率の活性化されたタンパク質を生じた。
【0280】
【表16】
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【0281】
3.カップリング反応:活性化された莢膜多糖および活性化された担体タンパク質を調製したら直ぐに、2つを、コンジュゲーション反応で混ぜ合わせた。凍結乾燥およびチオール化された多糖を、0.16MボレートpH8.95に溶かし、解凍したブロモアセチル化されたCRM197および蒸留水と混合し、最終溶液0.1Mボレート、CRM197:多糖の1:1wt/wt比、および2mg/mL血清型5莢膜多糖を作製した。この混合物を、16から24時間の間にわたって室温にてインキュベートした。タンパク質上の未反応のブロモアセチル基を、0.1MボレートpH8.95に溶かされたシステアミンの135mg/mLストック溶液を使用して1:2(wt/wt)のCRM197:システアミンの比にてシステアミン塩酸塩を添加することによりキャップし、室温にて4時間にわたってインキュベートした。莢膜多糖−CRM197コンジュゲート(コンジュゲート)を、100Kポリエーテルスルホンウルトラフィルターを使用して0.9%NaClに対して50倍の透析濾過をすることにより精製した。
【0282】
PDPHによる血清型5莢膜多糖チオール化研究の再現性の結果は、活性化度が、10個のCP反復単位当たり接続しているおおよそ1個のリンカー分子〜5個の反復単位当たり1個のリンカー分子に相当する11%〜19%の範囲であることを示した。
【0283】
CDTコンジュゲーション化学反応による血清型5莢膜多糖のCRM197とのコンジュゲーション。
CDTは、多糖を、無水環境(DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1段階コンジュゲーションプロセスを提供する。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成をもたらす。反応溶液は、平行流濾過による精製のために調製中に水溶液中に10倍希釈される。
【0284】
CDTコンジュゲーション化学反応は、サイズ排除クロマトグラフィーの画分における糖とタンパク質の存在により、およびグリコアルデヒドでキャップされたまたはシステアミン塩酸塩でキャップされたコンジュゲートのアミノ酸分析により示される担体タンパク質と共有結合している血清型5莢膜多糖を生じた。
【0285】
20kDa〜40kDaの範囲である血清型5莢膜多糖サイズについてのPDPHとCDTの両方の化学反応により調製されるコンジュゲートのいくつかのロットの調製の結果の要約は、下の表17に示されている。これらのコンジュゲーション化学反応により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、多糖タンパク質の比および収率に有意差はなかった。コンジュゲートしている血清型5莢膜多糖の抗原性は、コンジュゲートと天然多糖の間の同一性沈降素ラインにより示されるように、コンジュゲーションにより変わることはなかった。
【0286】
【表17】
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【0287】
上に示されているように、本明細書に記載されている方法を使用し、具体的範囲の望ましい高分子量莢膜多糖を製造することができる。我々は、免疫原性組成物における使用のために濾過および精製することができる予め選択された範囲の高分子量血清型5莢膜多糖からコンジュゲートを調製することを目指した。表18は、血清型5莢膜多糖が約92kDaから119kDaの分子量範囲であり、トリアゾール(CDT)で活性化された血清型5莢膜多糖コンジュゲートの分析を要約している。得られたコンジュゲートの分子量は、1533kDaから2656までの範囲であった。CRM197当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で22個から最低で15個までの範囲であった。遊離莢膜多糖は、最高で18%から最低で11%までの範囲であった。
【0288】
【表18】
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【0289】
両方のコンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質と共有結合している血清型5莢膜多糖を生じる。これらの2つの方法により生成されるコンジュゲートの遊離莢膜多糖、血清型5莢膜多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0290】
(実施例11)複合対ワンポットCDTプロセス。
上に記載されているように、本発明の免疫原性コンジュゲートを作製するための方法には、CDT(1,1−カルボイル−ジ−1,2,4−トリアゾール)またはPDPH(3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド)を伴うコンジュゲーション化学反応を使用する莢膜多糖の担体タンパク質との共有結合コンジュゲーションを伴う。CDTの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間の1炭素または0炭素リンカーをもたらすが、PDPHの使用は、莢膜多糖と担体タンパク質の間に共有チオエーテル結合を含有する5炭素リンカーをもたらす。
【0291】
PDPHベースの方法は、多糖の活性化、多糖上のチオール保護基の除去、活性化された多糖中間体の精製、タンパク質単体の活性化および精製、ならびに活性化された構成成分のコンジュゲーションと、続く、精製を伴う多段階プロセスであった。この方法では、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を、DMSOなどの有機溶媒中でPDPHおよびカルボジイミドと反応させて、PDPH結合型多糖を生じさせた。PDPH結合型多糖を還元剤と反応させて、活性化された多糖を生じさせ、次いで、精製した。担体タンパク質を、有機溶媒中でブロモ酢酸と反応させて、活性化された担体タンパク質を生じさせ、次いで、精製した。次いで、精製された活性化された血清型5多糖を、精製された活性化された担体タンパク質と反応させて、血清型5多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。
【0292】
対照的に、CDTベースの方法は、莢膜多糖を、無水環境(すなわち、DMSO)中で活性化し、利用可能なヒドロキシルとトリアゾールカルバメート部分およびカルボン酸とアシルイミダゾールまたはアシルトリアゾール部分を形成する1段階コンジュゲーションプロセスであった。タンパク質担体の添加(DMSO中)は、リシンによるイミダゾールまたはトリアゾールの求核置換ならびにカルバメート結合(活性化されたヒドロキシルの場合)およびアミド結合(活性化されたカルボン酸の場合)の形成につながり、それによって、コンジュゲーションが「ワンポット」で進行することを可能にする。したがって、2つのCDTベースの方法:より複雑なプロセスおよびより簡単なワンポットプロセスを開発した。より複雑なプロセスでは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖を、イミダゾールまたはトリアゾールと混ぜ合わせ、次いで、有機溶媒(DMSOなど)および約0.2%w/vの水の中でCDTと反応させて、活性化された血清型5多糖を生じさせた。活性化された血清型5多糖を精製し、次いで、有機溶媒中で担体タンパク質と反応させて、血清型5多糖:担体タンパク質コンジュゲートを生じさせた。ワンポットプロセスは、活性化された血清型5多糖を、担体タンパク質との反応の前に精製しないことを除いては複合プロセスと同様であった。
【0293】
CDT複合プロセス。
血清型5莢膜多糖の活性化:血清型5莢膜多糖を、血清型5莢膜多糖1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。得られたケーキを、2.0mg血清型5莢膜多糖/mLにてDMSOに溶かした。含水量を決定し、0.2%に調整した。DMSO中で100mg/mLにて新たに調製したCDTのストック溶液を添加し、CP5の量と比較して20倍モル過剰量のCDTを達成した。代替方法として、添加されるCDTの量を調整し、より高いかより低い活性化度を達成した。これを、23℃にて30分保持した。
【0294】
活性化された血清型5莢膜多糖の精製:活性化された血清型5莢膜多糖(ACP5)の溶液を、25体積の水の中に注ぎ、過剰のCDTを破壊した。これを、おおよそ1mg/cm2にて10kDa PES膜上でその元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積に対して水に対して透析濾過した。このステップは、4時間未満で終了した。透析濾過された材料を、元の血清型5多糖1g当たり10gのトリアゾールと混合し、凍結乾燥した。
【0295】
凍結乾燥されたCRMの調製:CRMを、少なくとも10体積に対して10kDa PES膜上で一定体積にて0.4%NaCl/5%スクロースに対して透析濾過した。タンパク質濃度を決定し、十分な透析濾過緩衝液を添加し、タンパク質濃度を5.0g/Lにすると、NaCl/CRMのw/w比=0.8が得られた。CRMを凍結乾燥した。
【0296】
コンジュゲーション:活性化された、透析濾過された血清型5莢膜多糖を、1mg/mLにてDMSOに溶かした。100mMにてボレート溶液を添加し、2%v/vを達成した。
【0297】
CRMを、2mg/mLにて再懸濁し、溶解が終了したら、ACP5溶液と混ぜ合わせた。これを、20時間にわたって4℃にて反応させた。
【0298】
コンジュゲート反応物を、24体積の5mMボレートpH9.0の中に注ぎ、1時間にわたって室温にて撹拌させた。次いで、0.5Mリン酸緩衝液、pH6.5でpH7.5に調整した。これを、5ミクロンフィルターに通して濾過し、約1mg/cmの負荷にて300kDa PES膜上で元の体積まで濃縮し、少なくとも10体積の水に対して透析濾過した。得られた濃縮物を、0.22ミクロンフィルターに通して濾過し、2℃〜8℃にて保存した。
【0299】
CDTワンポットプロセス。
CRM197マトリックス交換:CRM197を透析濾過し、おおよそ10mMホスフェート/80mM NaCl/15%スクロース、pH7から5mMイミダゾール/0.72%NaCl/15mMオクチル−β−D−グルコピラノシド、pH7へ交換した。交換は、コンジュゲーションに有害であり、コンジュゲーション中に運ばれる塩化ナトリウム含量を規定するホスフェートおよびスクロースの除去を可能にした。オクチル−β−D−グルコピラノシドは、無菌濾過後の粒子形成を防ぐために添加される。
【0300】
CRM197のマトリックスを、おおよそ4mg/mLの保持液濃度にて10K MWCO PES膜を使用する10ダイアボリュームを通じての5mMイミダゾール/0.72%NaCl/15mMオクチル−β−D−グルコピラノシド、pH7に対する平行流濾過により交換した。典型的な膜チャレンジは、2グラム/ft2とし、マトリックス中の標的最終CRM197濃度は、6mg/mLとした。CRM197は、2℃〜8℃にて保存した。
【0301】
活性化/コンジュゲーション:黄色ブドウ球菌(S.aureus)血清型5莢膜多糖についての活性化/コンジュゲーションプロセスは、下記のステップからなった:1)多糖の混ぜ合わせ;2)CRM197および混ぜ合わせられた多糖のシェル凍結および凍結乾燥;3)凍結乾燥された多糖およびCRM197の溶解;4)多糖の活性化;5)活性化された多糖のCRM197とのコンジュゲーション;および6)コンジュゲートの精製(希釈、透析濾過、無菌濾過)。
【0302】
多糖を、多糖1g当たり10グラムの1,2,4−トリアゾール賦形剤と混ぜ合わせた。賦形剤を、多糖へ粉末として添加すると、周囲温度にて15分未満の混合の後に溶液が得られた。
【0303】
混ぜ合わせられた多糖およびCRM197を、−75℃のエタノール浴を使用して別々にシェル凍結した。1Lのボトル当たりの体積は、おおよそ500mLとした。
【0304】
多糖溶解については、DMSOを、多糖の個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、加熱のための活性化/コンジュゲーション反応容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。澄明な溶液は、5〜10分の混合後に得られた。
【0305】
CRM197溶解については、DMSOを、CRM197を含有する個々の凍結乾燥ボトルに添加すると懸濁液が得られ、次いで、混合のための第二の容器に移した。DMSOを添加して2g/L濃度を得た。澄明な溶液は、典型的には、15分未満の間に得られた。
【0306】
多糖/DMSO溶液を、カールフィッシャー分析のためにサンプリングし、水分含量を決定した。CDTを、DMSO中で100mg/mL溶液として調製し、5型多糖に5モル過剰にて添加した(複合プロセスは、20モル当量CDTを使用し、一方、ワンポットプロセスは、5モル当量のCDT:CP5を使用した)。CDT溶液の連続添加は、混合しながら23℃±2℃にて約5分かけて行った。反応を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって進行させた。反応物をサンプリングし、活性化レベルを決定し(UV220/205nm)、次いで、100mMホウ酸ナトリウム、pH9を添加すると、1.5%水溶液が得られた。次いで、反応溶液を、23℃±2℃にて最低限30分にわたって撹拌した。
【0307】
活性化された多糖のCRM197とのコンジュゲーションについては、DMSOを、0.55mg/mL反応濃度を標的にして添加した。次いで、DMSOに溶かされたCRM197を、混合しながら、活性化された多糖溶液に添加した。反応物を、23℃±2℃にて最低限16時間にわたって撹拌した。
【0308】
反応溶液を、5mM四ホウ酸ナトリウム、pH8.6で10×希釈し、9±0.2の最終希釈pHを得た。溶液を、最低限4時間にわたって23℃±3℃にて撹拌した。希釈された溶液を、5μmフィルターに通し、2g/Lの標的保持液濃度まで濃縮した。平行流濾過は、5mMスクシネート、pH7による20ダイアボリュームを通じて300K再生セルロース膜を使用しておこなった。典型的な膜チャレンジは、1グラム/ft2とした。精製されたコンジュゲートを、0.22ミクロンフィルターに通し、2℃〜8℃にて保存した。
【0309】
(実施例12)ワンポットおよび複合コンジュゲーションプロセスを使用する血清型5莢膜多糖のコンジュゲーション。
この実施例は、予め選択された範囲の分子量の莢膜多糖を、ワンポットプロセスかまたは複合プロセスのコンジュゲーションに使用することができることを示している。初めに、より大きな多糖が細菌細胞により産生され、得られる精製された分子量範囲は、実施例9における加水分解プロセスのpHおよび熱により制御することができる。この実施例では、血清型5莢膜多糖が、約90kDaから約140kDaまでの分子量範囲である8個のバッチを選択し、コンジュゲーションは、上に記載されているワンポットプロセスかまたは複合プロセスでトリアゾール(CDT)による活性化を使用して行った。表19を参照されたい。得られたコンジュゲートの分子量は、1125kDaから2656kDaまでの範囲であった。CRM当たりのコンジュゲートしているリシン数は、最高で22個から最低で15個までの範囲であった。遊離糖は、最高で23%から最低で11%までの範囲であった。
【0310】
【表19】
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【0311】
(実施例13)血清型5莢膜多糖コンジュゲートは、マウス腎盂腎炎モデルにおいて一貫して防御を示す。
血清型5莢膜多糖コンジュゲートを、それらが腎盂腎炎モデルにおいてマウスを防御する能力について評価した。i.p.黄色ブドウ球菌(S.aureus)チャレンジを受けているマウスの血液における細菌数は、PBSで免疫化された対照と比較して有意に減少した。
【0312】
すべての6つの個別研究は、免疫化された動物においてcfu/ml腎臓の有意な減少を示した(図9)。これらの研究をメタ分析についてプールした場合、研究についての全有意性は、全体として0.0001未満まで増加した。データは、莢膜多糖コンジュゲートによる能動的ワクチン接種後に腎臓コロニー形成の一貫した減少を示した。
【0313】
(実施例14)異なるコンジュゲーション化学反応により調製される血清型5莢膜多糖コンジュゲートは、実験感染からマウスを防御する。
マウス腎盂腎炎モデルにおける能動的免疫化研究を、PDPH化学反応かまたはCDT化学反応により調製された血清型5莢膜多糖コンジュゲートで行った。莢膜多糖をCRM197とコンジュゲートさせるための方法は、上に記載されている。結果は、両コンジュゲートが、偽免疫化された動物と比較してマウスにおけるコロニー形成を低減することを示した(表20)。
【0314】
【表20】
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【0315】
(実施例15)血清型5莢膜多糖コンジュゲートの能動的免疫化は、ラット心内膜炎モデルにおいてラットを防御する。
4つの研究を、CP5−CRM197PDPHコンジュゲートで行った。血清型5莢膜多糖コンジュゲートは、3つのうちの2つの実験において心臓と腎臓の両方で黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266によるチャレンジ後に回収されたCFUを有意に減少させた(表21)。第三の研究では、幾何平均力価(GMT)抗CP5力価は、3つの実験のうちで最も低かったが、前の実験よりわずかに低いに過ぎなかった。
【0316】
【表21】
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【0317】
(実施例16)LMW CP5コンジュゲートワクチンと比較したマウスにおけるHMW CP5コンジュゲートワクチンの増強された免疫原性
マウス腎盂腎炎研究を行い、異なるCP5コンジュゲート製剤の免疫原性および有効性を評価した。2つの製剤を試験した:第一の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている高分子量(HMW)CP5(おおよそ300kDa)からなった。第二の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている低分子量(HMW)CP5(おおよそ25kDa)からなった。3つの投与量レベルをHMWワクチンについて試験した(1、0.1および0.01mcg)。LMWワクチンは、1mcgにて試験した。CRM197とコンジュゲートしている肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)由来の多糖コンジュゲートワクチン(PP5)からなる陰性対照群も包含した。多糖を、0、3、6週目に22mcg AlPO4と共に製剤化し、8週目に黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266をチャレンジした。腎臓を収集し、細菌コロニーを、チャレンジの48時間後に数えた。両ワクチンは、免疫応答を生成するのに有効であり、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266のCFUの減少は、HMWワクチンとLMWワクチンの両方の1μg群をワクチン接種されたマウスの腎臓から観察された。これは、より低いワクチン用量の有効性低下により示されるように用量依存的であった(図10)。CFU読み出しは、HMWおよびLMWワクチンについての有効性の差を検出するのに十分敏感ではなかった。したがって、マウスの血清を、OPAにより試験した。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の40%を致死させるのに必要とされる血清の希釈度として定義した。増強されたOPA力価は、LMW製剤と比較してHMWワクチンについて見られた(図11)。
【0318】
(実施例17)高分子量多糖を含む莢膜多糖コンジュゲートは、低分子量多糖を含むコンジュゲートと比較して増強された免疫原性を示す。
非ヒト霊長類(NHP)研究を行い、異なる莢膜コンジュゲート製剤の免疫原性を評価した。2つの製剤を、2つの異なる用量レベル(2および20μg)にて試験した。第一の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている高分子量(HMW)多糖(おおよそ130kDa)を含有した。第二の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている低分子量(LMW)多糖(おおよそ25kDa)を含有した。5匹の霊長類の群に、単回のいずれかのワクチンをワクチン接種し、免疫力価を、ワクチン接種の前におよびワクチン接種の2週後にモニターした。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の40%を致死させるのに必要とされる血清の希釈度として定義した。抗体力価も、ELISAによりモニターした。増強された活性は、LMWワクチンと比較してHMWワクチンについての抗体力価の10倍上昇により示されるように、LMW製剤と比較してHMWワクチンについて見られた(表22)。HMWワクチンを受けたNHPについてのOPAレスポンダー率もより高かった(40%と比較して80%)。
【0319】
【表22】
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【0320】
(実施例18)多糖O−アセチル化は、血清型5莢膜多糖コンジュゲートに対する防御抗体応答の誘導にとって重要である。
血清型5莢膜多糖のO−アセチル化の重要性を評価するため、天然の莢膜多糖を脱O−アセチル化(dOAc)し、上で論じられているように、PDPHコンジュゲーション化学反応を使用してCRM197(dOAc−CRM197)とコンジュゲートさせた。dOAcCP−CRM197コンジュゲートの有効性を、マウス腎盂腎炎モデルにおいてCP5−CRM197と並行して比較した。
【0321】
O−アセチル基を欠くコンジュゲート(dOAc CP5−CRM)による免疫化は、腎臓における回収された細菌CFUを下げることができなかった。これらのデータ(表23)は、O−アセチル化が、CP5に対する機能的抗体の誘発にとって重要であることを示している。
【0322】
【表23】
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【0323】
(実施例19)特異性が知られているモノクローナル抗体を使用するOPAによる血清型5莢膜多糖の機能的エピトープとしてのO−アセチル化の重要性の確認。
OAc+(CP5−7−1)、OAc+/−(CP5−5−1)およびOAc−(CP5−6−1)に対する特異性をもつ血清型5莢膜多糖モノクローナル抗体を、5型PFESA0266株に対するOP致死活性について評価した(表24)。血清型8莢膜多糖(CP8 OAc+に対して特異的なCP8−3−1)に対するモノクローナル抗体を、陰性対照として使用した。
【0324】
OAc特異的抗CP5 mAb CP5−7−1は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266の致死を仲介した(表24)。また、モノクローナル抗体CP5−5−1は、CP5 OAc+とCP5 OAc−の両方により共有されるエピトープを認識し、PFESA0266株の致死を仲介した。血清型5O−Ac莢膜多糖上に存在するエピトープに対して特異的なモノクローナル抗体は、PFESA0266株の致死を仲介しなかった。これらの結果は、血清型5莢膜多糖上のO−アセチルエピトープが、血清型5特異的抗体の機能的活性を誘発するのに必要であることを示している。
【0325】
抗体は、抗体が細菌を致死させることを示す動物有効性モデルまたはオプソニン化貪食性致死アッセイにおいて細菌を致死させることにより測定されて機能的であることを必要とする。機能的致死は、抗体単独の生成をモニターするが、有効性におけるO−アセチル化の重要性を示すことがないアッセイを使用して示されないことがある。
【0326】
【表24】
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【0327】
(実施例20)増強された免疫原性は、非ヒト霊長類(NHP)において低分子量多糖と比較して高分子量多糖からなるCP5コンジュゲートについて観察される。
非ヒト霊長類(NHP)研究を行い、異なる莢膜コンジュゲート製剤の免疫原性を評価した。2つの製剤を、2つの異なる用量レベル(2および20μg)にて試験した。第一の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている高分子量(HMW)多糖(おおよそ130kDa)からなった。第二の製剤は、CRM197とコンジュゲートしている低分子量(LMW)多糖(おおよそ25kDa)を含有した。5匹の霊長類の群に、単回投与のいずれかのワクチンをワクチン接種し、免疫力価を、ワクチン接種の前におよびワクチン接種の2週後にモニターした。OPA力価は、OPAアッセイにおいて黄色ブドウ球菌(S.aureus)PFESA0266株の40%を致死させるのに必要とされる血清の希釈度として定義した。抗体力価も、ELISAによりモニターした。増強された活性は、LMW製剤と比較してHMWワクチンについて見られた(表25)。LMWワクチンと比較してHMWワクチンについては抗体力価の3〜10倍の上昇があった。HMWワクチンを受けたNHPについてのOPAレスポンダー率もより高かった(40%と比較して80%)。
【0328】
【表25】
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【0329】
要約
本明細書に記載されている両コンジュゲーション化学反応は、担体タンパク質CRM197と共有結合している血清型5莢膜多糖を生じた。これらの2つの方法により生成されるコンジュゲートの遊離多糖、血清型5多糖:タンパク質の比および収率に有意差はなかった。
【0330】
本明細書に述べられているすべての刊行物および特許出願は、本発明が関連している当業者の技術水準を示す。すべての刊行物および特許出願は、あたかも各々の個別の刊行物または特許出願が参照により組み込まれることを具体的および個別に示されているのと同程度に参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0331】
上述の発明について、理解の明確さのために例示および実施例によってある程度詳細に記載してきたが、ある種の変更および改変を、添付の特許請求の範囲内で実施することができる。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−530785(P2012−530785A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517649(P2012−517649)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/039473
【国際公開番号】WO2011/041003
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】