説明

組換えアデノウイルス迅速構築システム

【課題】組換えアデノウイルスの迅速な構築方法を提供する。
【解決手段】ウイルスゲノムを含むDNA−タンパク質複合体を、導入遺伝子を含むPCR産物と相同組換えさせることにより、ウイルスを構築する。従来の方法のように導入遺伝子の挿入断片の制限酵素処理およびリガーゼによる連結を含まないため、ウイルスゲノムと挿入断片の制限酵素認識部位の一致は不要であることから、迅速かつ高効率に組換えアデノウイルスを構築することが可能である。また、MyoD遺伝子を導入遺伝子として含む組換えウイルスベクターは、筋分化誘導スイッチとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えアデノウイルスの構築方法に関する。また、本発明の組換えアデノウイルスは、遺伝子機能解析もしくはそれらの機能を応用した細胞・遺伝子治療に用いることができる。さらに、本発明の組換えアデノウイルスは、ハイブリッドベクターとして、各種組換えウイルスベクターの作製に用いることができる。よって、本発明は、本発明の組換えアデノウイルスを含むベクターの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えアデノウイルスは、二本鎖DNAウイルスに由来するベクターであり、接着細胞への高い遺伝子導入効率を有する。このことから、組換えアデノウイルスは遺伝子を送達する担体として、遺伝子機能解析や遺伝子治療への応用が期待されている。特に、一過性に遺伝子発現を行う性質は、分化誘導スイッチとして有用である(非特許文献1:Itoh, A., et al., J. Gene Med., 2003, Vol.5, p.929-940)。例えば、Fujiiら(非特許文献2:Brain & Development, 2006, Vol.28, p.420-425)は、アデノウイルスベクターを用いてMyoD遺伝子を皮膚線維芽細胞に導入すると、当該細胞は筋管への変化を誘導し、そして変化した細胞は筋肉に特異的なデスミンおよびジストロフィンを発現したことを示した。
【0003】
しかしながら、従来法にて組換えアデノウイルスを単離するためには、アデノウイルスのゲノムが34.7kbと長いため、導入遺伝子を一旦プラスミドやコスミドなどのシャトルベクターに移す必要があった。この際、30kb以上の大きなプラスミドやコスミドは不安定で収率も低く、慎重な取り扱いが必要であった。また、構築したプラスミドやコスミドから最終的なウイルスを得るためには、さらに1〜2週間を要し、短期間に構築の成否を判定することは困難である。
【0004】
また、ウイルス複製には末端タンパク質が重要であり、完全長アデノウイルスゲノム導入(in vitroライゲーション法)は簡便であるが、末端タンパク質がないためウイルスベクター生成効率が低下することが知られている(非特許文献3:近藤ら、ウイルス、第57巻、第1号、pp.37-46、2007)。
【0005】
本発明者らは、以前に5型アデノウイルスゲノムを遺伝子工学的に操作し、末端タンパク質とE1領域に外来遺伝子挿入部位を有するDNA−タンパク質複合体を作製した。この技術を用いることにより、DNA−タンパク質複合体に直接cDNA断片をライゲーションするだけで、短期間にベクターを作製することが可能となった(非特許文献4:Okada, T., et al., Nucleic Acids Res., 1998, Vol.26, p.1947-1950)。ただし、非特許文献4に記載の技術では、DNA−タンパク質複合体の調製の際に、セルフライゲーションを防ぎ、目的断片の挿入効率を上げるために、ホスファターゼ処理とその除去操作を要した。また、挿入するcDNA断片の調製として、制限酵素処理と純化の作業が必要であった。この際、ベクターゲノムへの遺伝子断片の挿入には、遺伝子が大きなことから限られた酵素サイトしか使用できないため、挿入断片の配列によっては、部分消化などの工夫を要した。
【非特許文献1】Itoh, A., et al., J. Gene Med., 2003, Vol.5, p.929-940
【非特許文献2】Fujii, I., et al., Brain & Development, 2006, Vol.28, p.420-425
【非特許文献3】近藤小貴ら、ウイルス、第57巻、第1号、pp.37-46、2007
【非特許文献4】Okada, T., et al., Nucleic Acids Res., 1998, Vol.26, p.1947-1950
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、組換えアデノウイルスの迅速な構築方法を提供することを目的とする。本発明はまた、本発明の方法に用いる導入遺伝子を含む挿入断片を調製するためのプライマーを提供することを目的とする。
【0007】
本発明はさらに、本発明の方法により得られた組換えアデノウイルスを提供することを目的とする。特に、導入遺伝子としてMyoD遺伝子を含む組換えアデノウイルスの、筋分化誘導スイッチとしての利用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究の結果、DNA−タンパク質複合体をPCR産物と相同組換えさせることによりウイルスゲノム中に導入遺伝子を挿入し、これを293細胞に導入すると、高い効率で組換えウイルスが単離されることを見出し、本発明の方法を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
[1] 組換えアデノウイルスを構築する方法であって、以下の工程
(1)アデノウイルスDNA−タンパク質複合体を、導入遺伝子挿入部位で切断する;
(2)導入遺伝子を含むDNA断片を調製する、ここで該DNA断片は、その5’末端および3’末端に、それぞれ前記DNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜100塩基の配列と相同な配列を有し、そしてその間に導入遺伝子の塩基配列を含む;
(3)工程(2)で調製した導入遺伝子を含むDNA断片と、工程(1)で調製した外導入遺伝子挿入部位で切断されたDNA−タンパク質複合体とを、相同組換えにより連結して、導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を得る;
(4)工程(3)で得られた導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体をヒト293細胞に遺伝子導入する;
(5)工程(4)で遺伝子導入したヒト293細胞を培養して、組換えアデノウイルスをウイルスプラークとして得る;
を含む、前記方法。
【0010】
[2] 導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜50塩基の配列と相同な配列である、[1]項に記載の方法。
【0011】
[3] 導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜20塩基の配列と相同な配列である、[1]項に記載の方法。
【0012】
[4] 相同組換えが、リコンビナーゼおよび相同組換えの促進タンパク質の存在下で行われる、[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] アデノウイルスDNA−タンパク質複合体が、AVC2.null(配列番号1)を含む、[1]ないし[3]のいずれか1項に記載の方法。
【0013】
[6] アデノウイルスDNA−タンパク質複合体がAVC2.null(配列番号1)を含み、そして外来遺伝子挿入部位の上流側および下流側がそれぞれAVC2.nullのマルチプルクローニングサイト中のXbaIおよびNspV制限酵素サイトである、[5]項に記載の方法。
【0014】
[7] アデノウイルスDNA−タンパク質複合体がAVC2.null(配列番号1)を含み、外来遺伝子挿入部位の上流側および下流側がそれぞれAVC2.nullにおけるCMVプロモーターの上流側のPacI制限酵素サイトおよびマルチプルクローニングサイト中のNspV制限酵素サイトであり、そして、導入遺伝子が構造遺伝子およびそれに機能可能に連結したプロモーター配列を含む、[5]項に記載の方法。
【0015】
[8] アデノウイルスDNA−タンパク質複合体がAVC2.null(配列番号1)を含み、外来遺伝子挿入部位の上流側および下流側がそれぞれAVC2.nullのマルチプルクローニングサイト中のXbaIおよびNspV制限酵素サイトであり、そして、導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の15塩基の配列と相同な配列である、[5]項に記載の方法。
【0016】
[9] 導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を構築する方法であって、以下の工程:
(1)アデノウイルスDNA−タンパク質複合体を、導入遺伝子挿入部位で切断する;
(2)導入遺伝子を含むDNA断片を調製する、ここで該DNA断片は、その5’末端および3’末端に、それぞれ前記DNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜100塩基の配列と相同な配列を有し、そしてその間に導入遺伝子の塩基配列を含む;
(3)工程(2)で調製した導入遺伝子を含むDNA断片と、工程(1)で調製した外導入遺伝子挿入部位で切断されたDNA−タンパク質複合体とを、相同組換えにより連結して、導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を得る;
を含む、前記方法。
【0017】
[10] 導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜20塩基の配列と相同な配列である、[9]項に記載の方法。
【0018】
[11] 相同組換えが、相同組換えの促進タンパク質の存在下で行われる、[9]または[10]に記載の方法。
[12] 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法に用いるための、25塩基ないし50塩基からなるプライマーであって、以下:
(a)5’−TTATCGAAATTCTAG−3’(配列番号2)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子の5’末端側の10〜35塩基の配列を含む、プライマー;
(b)5’−GACGTACGCCCTTCG−3’(配列番号3)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子の3’末端側の10〜35塩基の配列を含む、プライマー;および
(c)5’−AGATATAGGGCATTAAT−3’(配列番号4)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子に機能可能に連結したプロモーター配列の5’末端側の8〜33塩基の配列を含む、プライマー;
からなる群より選択される、前記プライマー。
【0019】
[13] MyoD遺伝子を導入される構造遺伝子として含む、組換えアデノウイルスベクター。
[14] 間葉系幹細胞の筋分化を誘導する方法であって、MyoD遺伝子を導入される構造遺伝子として含む組換えアデノウイルスを間葉系幹細胞に感染させることを含む、前記方法。
【0020】
[15] 組換えアデノウイルスを、少なくともMOI=20pfu/cellで感染させる、[15]項に記載の方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の組換えアデノウイルス構築法により、DNA−タンパク質複合体をPCR産物と相同組換えさせることによりウイルスゲノム中に導入遺伝子を挿入し、これを293細胞に導入すると、高い効率で組換えウイルスを単離することが可能になった。本発明の方法においては、DNA−タンパク質複合体のホスファターゼ処理や、挿入断片の制限酵素処理は一切不要である。また、導入遺伝子のウイルスゲノムへの挿入の際にリガーゼを用いないため、制限酵素認識部位を一致させる必要はなく、あらゆる配列のPCR断片を自由自在にDNA−タンパク質複合体にクローニングすることが可能である。これらの特徴により、本発明の方法では、プラスミドやコスミドを用いた従来のウイルス単離方法にはない、容易な操作と短期間でのウイルス単離効果を応用することによって、迅速に目的の組換えアデノウイルスが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
1.組換えアデノウイルスの構築方法
一態様において本発明は、組換えアデノウイルスを迅速かつ効率よく構築する方法に関する。より具体的には、本発明の組換えアデノウイルスを構築する方法は、以下の工程
(1)アデノウイルスDNA−タンパク質複合体を、導入遺伝子挿入部位で切断する;
(2)導入遺伝子を含むDNA断片を調製する、ここで該DNA断片は、その5’末端および3’末端に、それぞれ前記DNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜100塩基の配列と相同な配列を有し、そしてその間に導入遺伝子の塩基配列を含む;
(3)工程(2)で調製した導入遺伝子を含むDNA断片と、工程(1)で調製した外導入遺伝子挿入部位で切断されたDNA−タンパク質複合体とを、相同組換えにより連結して、導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を得る;
(4)工程(3)で得られた導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体をヒト293細胞に遺伝子導入する;
(5)工程(4)で遺伝子導入したヒト293細胞を培養して、組換えアデノウイルスをウイルスプラークとして得る;
を含む方法である。本発明の方法を模式的に示したものが、図1である。
【0023】
1−1.工程(1)〜(3)について
本明細書においてアデノウイルスDNA−タンパク質複合体とは、アデノウイルスゲノムの末端に末端タンパク質が共有結合したDNA−タンパク質複合体をいう。アデノウイルスゲノムは二本鎖DNAであり、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体において末端タンパク質は、二本鎖DNAそれぞれの5’末端に共有結合している。好ましい態様において、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体を構成するアデノウイルスゲノムは、E1a遺伝子を欠失している。
【0024】
本発明の方法に利用可能なアデノウイルスDNA−タンパク質複合体の具体的なものとして、AVC2.null(配列番号1)を含むもの、コスミド由来の調製済みDNA−TPC(Adenovirus Expression Vector Kit;タカラバイオ社)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
AVC2.nullは、Okadaら(Nucleic Acid Research, 1998, 26(8):1947-1950)にその製造方法が記載されているDNA−タンパク質複合体である。具体的には、AVC2.null(配列番号1)は、5型アデノウイルスゲノム(Ad5)のN末端側配列(配列番号1のヌクレオチド1−400に相当)、pDCM8(Invitrogen)由来のCMV−IEプロモータおよびエンハンサー、マルチプルクローニングサイト(5’−XbaI−BamHI−PmeI−NspV−SunI−3’)、pDCM8(Invitrogen)由来のSV40イントロンおよびポリアデニル化サイト(プロモータからポリアデニル化サイトまでの発現カセットは配列番号1のヌクレオチド401−3327に相当)、並びにAd5のBglII−HindIII断片(Ad5のE1b/E2b領域:配列番号1のヌクレオチド3328−6241に相当)からなる構築物ををE1a遺伝子領域に代えて有するアデノウイルスゲノムDNAを含むDNA−タンパク質複合体である。
【0026】
本発明の方法において、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位は、E1a遺伝子領域、E1a遺伝子が欠失している場合はそれに対応する領域に存在する。導入遺伝子挿入部位は、制限酵素認識サイトであっても制限酵素認識サイトでなくてもよい。好ましくは導入遺伝子挿入部位は、制限酵素認識サイトである。
【0027】
例えば、AVC2.nullを用いる場合、E1a遺伝子領域と置換した構築物中の制限酵素認識サイトのいずれかを導入遺伝子挿入部位として利用することができる。具体的には、導入遺伝子を含む断片が、プロモータ配列を含まずに宿主細胞中での発現が望まれる構造遺伝子を含む場合は、AVC2.nullのマルチプルクローニングサイト中の、XbaI、BamHI、PmeI、NspV、SunIのいずれか1つまたは2つを利用してもよい。切断後の自己再結合を防ぐため、いずれか2つであることが好ましい。より好ましい組み合わせは、XbaIとNspVの組み合わせである。導入遺伝子を含む断片が、プロモータ配列および宿主細胞中での発現が望まれる構造遺伝子を含む場合は、CMV−IEプロモータの上流側のPacIおよびマルチプルクローニングサイト中の、XbaI、BamHI、PmeI、NspV、SunIのいずれか1つとの組み合わせを利用してもよい。好ましいのは、CMV−IEプロモータの上流側のPacIとマルチプルクローニングサイト中のNspVの組み合わせである。
【0028】
本明細書において、導入遺伝子とは、ある宿主細胞中での発現が望まれる構造遺伝子を含む遺伝子を意味し、プロモーター配列を含んでいなくても、あるいはプロモーター配列が機能可能に当該構造遺伝子に連結していてもよい。ここで、ある宿主細胞中での発現が望まれる構造遺伝子を、特に導入される構造遺伝子ということがある。導入される構造遺伝子の由来に限定はなく、宿主細胞に対して内因性の遺伝子であっても外因性の遺伝子であってもよい。導入遺伝子がプロモーター配列を含む場合、当該プロモーター配列は、導入される構造遺伝子の発現が望まれる宿主細胞中で機能可能なプロモーター配列である。また、導入遺伝子のサイズは、8kb以下、7.5kb以下、7kb以下、6.5kb以下、6kb以下、5.5kb以下、5kb以下であるが、これらに限定されない。導入遺伝子のサイズの下限はない。
【0029】
本発明の方法において、導入遺伝子を含むDNA断片は、公知の方法により調製することができる。例えば、限定されるわけではないが、導入遺伝子を含むDNAをテンプレートにして、PCR法によってDNA断片として調製することが可能である。PCRのための酵素の選択や、適切な増幅条件については、当業者が適宜決定することができる。
【0030】
本発明の方法において、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体への導入遺伝子を含むDNA断片の挿入には、相同組換えの手法を利用する。導入遺伝子を含むDNA断片は、その5’末端および3’末端に、それぞれアデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側と相同な配列を有する。相同組換えは、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体を導入遺伝子挿入部位であらかじめ切断したのち、導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側と相同な配列を有する導入遺伝子を含むDNA断片との間で行う。
【0031】
導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列は、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側と相同な、10〜100塩基、10〜75塩基、10〜50配列、10〜40塩基、10〜30塩基、10〜20塩基、10〜15塩基、または15塩基の配列であってよい。導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側と相同な、導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列は、上記の長さの範囲内である限り、それぞれ同じ長さであってもよく、あるいは異なる長さであってもよい。好ましくは、導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側と相同な、導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列がそれぞれ異なる長さである場合には、互いに、5塩基以下、4塩基以下、3塩基以下、2塩基以下、または1塩基以下の長さの違いであることが好ましい。さらに好ましくは、導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側と相同な、導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列は、それぞれ同じ長さである。
【0032】
本願発明の方法において相同組換えは、リコンビナーゼおよび相同組換えの促進タンパク質の存在下で行ってもよい。本発明の方法において使用可能なリコンビナーゼは特に限定されない。相同組換えの促進タンパク質は、リコンビナーゼとの共存下において相同組換えを促進し、より相同配列の長さが短い場合でも相同組換えを可能にするタンパク質をいう。相同組換えの促進タンパク質は2種以上のタンパク質の組み合わせであってもよい。相同組換えの促進タンパク質の具体的なものとしては、大腸菌由来のRecEおよびRecTの組み合わせ、ファージ由来のRedαおよびRedβの組み合わせが知られている(Zhang et al., Nature Genetics, 20:123-128, 1998; Zhang et al., Nature Biotechnology 18:1314-1317, 2000; GenBank Accession No. NC_010473; GenBank Accession No. AX711994)。
このような相同組換えの促進タンパク質を伴う相同組換えの原理を利用して、より相同配列の長さが短いものについて相同組換えを行うためのキットが市販されている。本発明の方法は、そのようなキットを利用して行うことも可能である。そのようなキットには、In-FusionTM PCR Cloning Kit(タカラバイオ株式会社、Clontech社)、Red/ET Recombination System Quick and Easy BAC MODIFICATION Kit(フナコシ株式会社、Gene Bridges社)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
1−2.工程(4)および(5)
アデノウイルスDNA−タンパク質複合体と導入遺伝子を含むDNA断片との相同組換えにより、導入遺伝子が曽遊されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を得た後、これをヒト293細胞に遺伝子導入する。遺伝子導入には、公知の遺伝子導入方法、例えば、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法、ヌクレオフェクション等を使用することができるが、これらに限定されない。
【0034】
その後、遺伝子導入したヒト293細胞を培養して、組換えアデノウイルスをウイルスプラークとして得る。培養条件は、特に限定されないが、ヒト293細胞の培養条件として通常用いられる条件で行う。
【0035】
2.導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を構築する方法
別の態様において、上記の組換えアデノウイルスを構築する方法における工程(1)ないし(3)を含む、導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を構築する方法もまた、本発明の範囲内である。
【0036】
3.プライマー
好ましい態様において、本発明の方法におけるアデノウイルスDNA−タンパク質複合体はAVC2.nullであり、導入遺伝子を含む断片がプロモータ配列を含まずに宿主細胞中での発現が望まれる構造遺伝子を含み、導入遺伝子挿入部位としてAVC2.nullのマルチプルクローニングサイト中XbaIとNspVの組み合わせを利用する。この場合、導入遺伝子を含むDNA断片をPCR法により調製するためのプライマーは、25塩基ないし50塩基からなるプライマーであって、以下:
5’−TTATCGAAATTCTAG−3’(配列番号2)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子の5’末端側の10〜35塩基、好ましくは15〜35塩基、15〜30塩基、15〜25塩基、の配列を含む、プライマー;および、
5’−GACGTACGCCCTTCG−3’(配列番号3)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子の3’末端側の10〜35塩基、好ましくは15〜35塩基、15〜30塩基、15〜25塩基、の配列を含む、プライマー;
であってよい。
【0037】
別の好ましい態様において、本発明の方法におけるアデノウイルスDNA−タンパク質複合体はAVC2.nullであり、導入遺伝子を含む断片がプロモータ配列が機能可能に連結された宿主細胞中での発現が望まれる構造遺伝子を含み、導入遺伝子挿入部位としてAVC2.nullのCMV−IEプロモータの上流側のPacIとマルチプルクローニングサイト中のNspVの組み合わせを利用する。この場合、導入遺伝子を含むDNA断片をPCR法により調製するためのプライマーは、25塩基ないし50塩基からなるプライマーであって、以下:
5’−AGATATAGGGCATTAAT−3’(配列番号4)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子に機能可能に連結したプロモーター配列の5’末端側の8〜33塩基、好ましくは10〜30塩基、15〜30塩基、15〜25塩基、の配列を含む、プライマー;および
5’−GACGTACGCCCTTCG−3’(配列番号3)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子の3’末端側の10〜35塩基、好ましくは15〜35塩基、15〜30塩基、15〜25塩基、の配列を含む、プライマー;
であってよい。
【0038】
4.筋分化誘導スイッチとしてのMyoD遺伝子を含む組換えアデノウイルスベクター
本発明者らは、導入遺伝子としてMyoD遺伝子が挿入された組換えアデノウイルスを、本願発明の方法に従って構築した。得られた組換えアデノウイルスを、宿主細胞にMyoD遺伝子を導入するための組換えアデノウイルスベクターとして用いて、SDラット由来間葉系幹細胞に感染させた。感染させた間葉系幹細胞を培養したところ、筋分化マーカーであるミオゲニンおよびα−アクチニンの発現と筋管形成を確認した。このことから、本発明者らはMyoD遺伝子を導入遺伝子として含む組換えアデノウイルスベクターを間葉系幹細胞に感染させることにより、間葉系幹細胞の筋分化を誘導できることを見出した。アデノウイルスベクターは一過性に遺伝子発現を行う性質を有するため、本発明のMyoD遺伝子を導入遺伝子として含む組換えアデノウイルスベクターは、間葉系幹細胞における筋分化誘導スイッチとして利用可能である。
【0039】
また、iPS細胞や線維芽細胞等においても利用可能である。
よって、本発明の別の態様は、MyoD遺伝子を導入遺伝子として含む組換えアデノウイルスベクターを間葉系幹細胞に感染させることを含む、間葉系幹細胞、iPS細胞、または線維芽細胞を誘導する方法に関する。上記の方法において、組換えアデノウイルスベクターを感染させる条件は特に限定されないが、下限は少なくともMOI=5pfu/細胞、10pfu/細胞、15pfu/細胞、20pfu/細胞から選択されてよく、上限はMOI=1000pfu/細胞以下、750pfu/細胞以下、500pfu/細胞以下、400pfu/細胞以下から選択されてよい。
【0040】
細胞の培養は、当業者に公知の条件で行うことができ、また当業者は適宜培養条件を調製することができる。例えば、間葉系幹細胞の培養条件は、特に限定されないが、10%ウシ胎仔血清入りDMEM培地(ダルベッコ改変イーグル培地)中、37℃、5%COの条件などが挙げられる。
【0041】
間葉系幹細胞の筋分化は、筋分化マーカーであるミオゲニン、α−アクチニン、Pax3、Pax7、Myf5、MRF4、デスミンおよびミオシン重鎖からなる群より選択されるマーカーの発現をモニタリングし、当該筋分化マーカーの発現を確認することにより検出することができる。筋分化マーカーの発現の検出は、当該技術分野において公知の免疫染色および電子顕微鏡での観察により行うことができる。
【0042】
あるいは、間葉系幹細胞の筋分化は、上記の筋分化マーカーの検出と共にまたは別個に、筋管形成をモニタリングすることにより行うことができる。筋管形成のモニタリングは、チューブ状に細長くなった細胞が複数、望ましくは3個以上、の核を有していることを顕微鏡下で観察することにより行うことができる。
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1:ウイルスベクターの構築
(1)DNA−タンパク質複合体の調製
DNA−タンパク質複合体の骨格として、CMVプロモーター、およびpolyA配列をアデノウイルスゲノムのE1領域の一部(E1aからE1bの一部にかけての領域)に挿入した、組換えアデノウイルスAVC2.null(配列番号1)を用いた。Okada, T., et al.(Nucleic Acids Res., 1998, Vol.26, p.1947-1950)に記載の方法に従い、DNA−タンパク質複合体を調製した。これに制限酵素XbaIおよびNspVによる処理を加え、発現遺伝子断片が挿入可能なDNA−タンパク質複合体を作製した。
【0045】
(2)遺伝子断片の調製
AVC2.nullのDNA−タンパク質複合体に挿入する遺伝子断片を以下の手順で調製した。AVC2.nullにおいて導入遺伝子を挿入する部位、すなわちマルチプルクローニングサイト中のXbaIおよびNspVの外側15塩基の塩基配列は5’−ttatcgaaattctag−3’(上流側:配列番号2)および5’−gacgtacgcccttcg−3’(下流側:配列番号3)である。これらの配列に相同な配列を導入遺伝子の両端に隣接して含む挿入断片を、PCR法にて増幅した。この際、遺伝子変異が生じない様に、正確性と効率の高い高忠実度DNAポリメラーゼとして、PrimeSTAR(登録商標)HS(タカラバイオ株式会社)を用いた。PCRの条件は、98℃、10秒;55℃、15秒;68℃、1分;のサイクルを30サイクル、とした。PCR産物を、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社、カタログ番号28704)にて精製し挿入断片として使用した。導入遺伝子としてEGFP遺伝子及びMyoD遺伝子を用いた。
【0046】
(i)EGFP遺伝子
EGFP遺伝子(配列番号5)のcDNAを含むプラスミド(pEGFP-N1 Vector(クロンテック社、カタログ番号632318)を鋳型として、次のプライマーを用いてPCR法にて挿入遺伝子断片を増幅した。PCR産物の両端にAVC2.nullにおいて導入遺伝子を挿入する部位の配列に相同な15塩基対の配列をアダプターとして含む様に、プライマーを設計した。大文字部分はEGFP遺伝子の塩基配列である。
5’−AVC2.XbaI.EGFP(配列番号6)
5’−ttatcgaaattctagacgccaccATGGTGAGCAAGGGCG−3’
3’−AVC2.NspV.EGFP(配列番号7)
5’−gacgtacgcccttcgaaTTACTTGTACAGCTCGTCCATGC−3’
(ii)MyoD遺伝子
EGFP遺伝子の場合と同様に、マウスMyoD遺伝子(配列番号8)のcDNAを含むプラスミドを鋳型として、次のプライマーを用いてPCR法にて挿入遺伝子断片を増幅した。大文字部分はMyoD遺伝子の塩基配列である。
5’−AVC2.XbaI.mMyoD(配列番号9)
5’−ttatcgaaattctagaATGGAGCTTCTATCGCCGCCAC−3’
3’−AVC2.NspV.mMyoD(配列番号10)
5’−gacgtacgcccttcgaaTCAAAGCACCTGATAAATCGC−3’
(3)遺伝子断片の挿入
In-FusionTMPCR Cloning Kit(タカラバイオ株式会社)を用い、アダプター付きPCR産物をDNA−タンパク質複合体に挿入した。具体的には、PCR産物およびDNA−タンパク質複合体を、モル比で2:1となるように混合し、さらに相同組換えに必要な酵素とバッファーを混合し、37℃で15分間反応させた。
【0047】
(4)ウイルスプラークの単離(293細胞への遺伝子導入操作)
外来遺伝子のcDNA断片を挿入したDNA−タンパク質複合体を含む上記反応液10μLにTEバッファー40μLを加え、反応を停止させた。このうち10μLを分取し、キャリアとなるプラスミドDNA2.5μgと混合した後、Opti−MEM−I培地(インビトロジェン社)500μLに添加した。ここに、LipofectamineTM LTX Reagent(インビトロジェン社)7μLを混合後、室温で30分静置した。この反応液を、6穴プレートに撒いたヒト293細胞に加え、5%COインキュベータ内にて37℃で培養した。経時的に細胞を観察し、遺伝子導入3日後にウイルスプラークの出現を確認した。図1中の蛍光顕微鏡観察写真は、EGFP遺伝子発現ベクターの作製に伴うプラークの出現を示している。
【0048】
(5)組換えウイルス構築の確認
組換えウイルスが構築の確認を、以下に記載するようにcDNA断片が挿入されたことの確認、および当該組換えウイルスを細胞に感染させた際に導入遺伝子が発現することの確認、により行った。
【0049】
(5−1)cDNA断片挿入の確認
外来遺伝子のcDNA断片の挿入を、上記(4)で得られたウイルスプラークのPCRにより確認した(図2A)。具体的には、軟寒天培地で覆われたウイルスプラークを採取し、これを293細胞に感染させて細胞内でウイルスを複製させた後、細胞を回収した。凍結融解を3回反復し、3000×gで10分間遠心し、ウイルスを含む上清を採取した。このサンプルを0.1%SDSを含むTEバッファーで懸濁し、これを鋳型としてPCR反応を行った。
【0050】
EGFP遺伝子の挿入の確認には、以下のプライマー対:
5’−ttatcgaaattctagacgccaccATGGTGAGCAAGGGCG−3’(配列番号6)、および
5’−gacgtacgcccttcgaaTTACTTGTACAGCTCGTCCATGC−3’(配列番号7)
と共に、DNAポリメラーゼとして、PrimeSTAR(登録商標)HS(タカラバイオ株式会社)を用い、98℃、10秒;55℃、15秒;68℃、1分;のサイクルを30サイクル、の条件でPCR反応を行った。
【0051】
MyoD遺伝子の挿入の確認には、以下のプライマー対:
5’−CGCCGCCGCCTGAGCAAAGT−3’(配列番号11)、および
5’−GGTCTGGGTTCCCTGTTCTGTGT−3’(配列番号12)
と共に、DNAポリメラーゼとして、PrimeSTAR(登録商標)HS(タカラバイオ株式会社)を用い、98℃、10秒;63℃、15秒;68℃、1分;のサイクルを30サイクル、の条件でPCR反応を行った。
【0052】
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動により評価した。EGFP遺伝子の挿入は760bpのバンドとして、MyoD遺伝子の挿入は534bpのバンドとして確認された。
【0053】
(5−2)導入遺伝子発現の確認
得られた組換えアデノウイルスのクローンを用いて、293細胞への感染を行った。感染した293細胞の溶解物についてウェスタンブロッティング解析によりEGFPまたはMyoD(図2B)の発現を確認した。
【0054】
以上の実験により、本発明の方法により組換えウイルスが構築できたことが確認された。

実施例2:組換えウイルスベクターの機能解析(間葉系幹細胞の分化誘導)
MyoD遺伝子を導入遺伝子として有する組換えアデノウイルスをAVC2MyoDとした。精製した組換えアデノウイルスAVC2MyoDを、MOI=1、20、400pfu/細胞の条件にて、2時間、SDラット骨髄由来の間葉系幹細胞に感染させ、その後培養した。感染時の培養条件は、2%ウシ胎仔血清入りDMEM培地中、37℃、5%COであり、感染後の培養条件は2%ウシ胎仔血清入りDMEM培地中、37℃、5%COであった。
【0055】
感染4日後に免疫染色にて筋分化マーカーであるミオゲニン(赤)およびα−アクチニン(緑)の発現と筋管形成を確認した(図3)。特にMOI=20pfu/細胞以上の条件で感染させた場合に、筋分化している傾向が顕著に現れた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の組換えアデノウイルスを構築する方法は、高い効率で組換えアデノウイルスを取得することが可能であるため、組換えアデノウイルスを利用した遺伝子の機能スクリーニングや疾患関連遺伝子の探索の効率化に貢献する。すなわち、従来は組換えアデノウイルスを得るために多くの時間がかかっていたが、本発明の方法では短時間で準備することが可能である。このため、導入遺伝子を有する組換えアデノウイルスを容易に準備することができ、組換えアデノウイルスを利用する各種の実験を効率よく進めることが可能である。具体的には、目的遺伝子あるいはその一部を増幅したPCR産物の機能解析実験、幹細胞への遺伝子導入による分化に関連する遺伝子の機能解析実験、および機能を欠失した疾患モデル細胞へ治療タンパク質遺伝子を有する組換えアデノウイルスを感染させることによる治療タンパク質の効果予測スクリーニング実験、等の効率化に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、従来の方法および本願発明の方法を模式的に示した図、ならびにEGFP遺伝子を挿入したDNA−タンパク質複合体の293細胞への遺伝子導入に伴うプラークの出現を示す蛍光顕微鏡観察写真である。
【図2】図2Aは、導入遺伝子(MyoD遺伝子)のcDNA断片のAVC2.nullへの挿入をウイルスプラークのPCRにより確認した結果を示すゲル電気泳動写真である。M:サイズマーカー、PC:ポジティブコントロール、NC:ネガティブコントロール(293細胞)、B:DNA−タンパク質複合体(AVC2.null)、1:クローン#1、2:クローン#2。図2Bは、MyoD遺伝子を挿入した組換えアデノウイルスのクローン#1および#2を用いて、293細胞への感染を行い、ウェスタンブロッティング解析にてMyoDの発現を確認したゲル電気泳動写真である。NC:ネガティブコントロール(293細胞)、1:クローン#1、2:クローン#2。
【図3】図3は、MyoD遺伝子を導入遺伝子として有する組換アデノウイルスAVC2MyoDを、MOI=1、20、400pfu/細胞の条件にて2時間、SDラット由来の間葉系幹細胞に感染させ、4日後に免疫染色を行った結果を示す電子顕微鏡写真である。赤色:ミオゲニン、緑色:α−アクチニン、青色:DAPI染色。
【配列表フリーテキスト】
【0058】
配列番号1: AVC2.nullのDNA配列
配列番号2: プライマー
配列番号3: プライマー
配列番号4: プライマー
配列番号5: EGFPをコードするDNA
配列番号6: プライマー 5’−AVC2.XbaI.EGFP
配列番号7: プライマー 3’−AVC2.NspV.EGFP
配列番号8: マウスMyoDをコードするDNA
配列番号9: プライマー 5’−AVC2.XbaI.mMyoD
配列番号10: プライマー 3’−AVC2.NspV.mMyoD
配列番号11: プライマー
配列番号12: プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノウイルスを構築する方法であって、以下の工程
(1)アデノウイルスDNA−タンパク質複合体を、導入遺伝子挿入部位で切断する;
(2)導入遺伝子を含むDNA断片を調製する、ここで該DNA断片は、その5’末端および3’末端に、それぞれ前記DNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜100塩基の配列と相同な配列を有し、そしてその間に導入遺伝子の塩基配列を含む;
(3)工程(2)で調製した導入遺伝子を含むDNA断片と、工程(1)で調製した外導入遺伝子挿入部位で切断されたDNA−タンパク質複合体とを、相同組換えにより連結して、導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を得る;
(4)工程(3)で得られた導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体をヒト293細胞に遺伝子導入する;
(5)工程(4)で遺伝子導入したヒト293細胞を培養して、組換えアデノウイルスをウイルスプラークとして得る;
を含む、前記方法。
【請求項2】
導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜50塩基の配列と相同な配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜20塩基の配列と相同な配列である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
相同組換えが、リコンビナーゼおよび相同組換えの促進タンパク質の存在下で行われる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
アデノウイルスDNA−タンパク質複合体が、AVC2.null(配列番号1)を含む、請求項1ないし3いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
アデノウイルスDNA−タンパク質複合体がAVC2.null(配列番号1)を含み、そして外来遺伝子挿入部位の上流側および下流側がそれぞれAVC2.nullのマルチプルクローニングサイト中のXbaIおよびNspV制限酵素サイトである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
アデノウイルスDNA−タンパク質複合体がAVC2.null(配列番号1)を含み、外来遺伝子挿入部位の上流側および下流側がそれぞれAVC2.nullにおけるCMVプロモーターの上流側のPacI制限酵素サイトおよびマルチプルクローニングサイト中のNspV制限酵素サイトであり、そして、導入遺伝子が構造遺伝子およびそれに機能可能に連結したプロモーター配列を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
アデノウイルスDNA−タンパク質複合体がAVC2.null(配列番号1)を含み、外来遺伝子挿入部位の上流側および下流側がそれぞれAVC2.nullのマルチプルクローニングサイト中のXbaIおよびNspV制限酵素サイトであり、そして、導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の15塩基の配列と相同な配列である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を構築する方法であって、以下の工程:
(1)アデノウイルスDNA−タンパク質複合体を、導入遺伝子挿入部位で切断する;
(2)導入遺伝子を含むDNA断片を調製する、ここで該DNA断片は、その5’末端および3’末端に、それぞれ前記DNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜100塩基の配列と相同な配列を有し、そしてその間に導入遺伝子の塩基配列を含む;
(3)工程(2)で調製した導入遺伝子を含むDNA断片と、工程(1)で調製した外導入遺伝子挿入部位で切断されたDNA−タンパク質複合体とを、相同組換えにより連結して、導入遺伝子が挿入されたアデノウイルスDNA−タンパク質複合体を得る;
を含む、前記方法。
【請求項10】
導入遺伝子を含むDNA断片の5’末端および3’末端の配列が、それぞれ、アデノウイルスDNA−タンパク質複合体における導入遺伝子挿入部位の上流側および下流側の10〜20塩基の配列と相同な配列である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
相同組換えが、相同組換えの促進タンパク質の存在下で行われる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法に用いるための、25塩基ないし50塩基からなるプライマーであって、以下:
(a)5’−TTATCGAAATTCTAG−3’(配列番号2)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子の5’末端側の10〜35塩基の配列を含む、プライマー;
(b)5’−GACGTACGCCCTTCG−3’(配列番号3)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子の3’末端側の10〜35塩基の配列を含む、プライマー;および
(c)5’−AGATATAGGGCATTAAT−3’(配列番号4)を5’末端側に含み、そして3’末端側に、導入される構造遺伝子に機能可能に連結したプロモーター配列の5’末端側の8〜33塩基の配列を含む、プライマー;
からなる群より選択される、前記プライマー。
【請求項13】
MyoD遺伝子を導入される構造遺伝子として含む、組換えアデノウイルスベクター。
【請求項14】
間葉系幹細胞の筋分化を誘導する方法であって、MyoD遺伝子を導入される構造遺伝子として含む組換えアデノウイルスを間葉系幹細胞に感染させることを含む、前記方法。
【請求項15】
組換えアデノウイルスを、少なくともMOI=20pfu/cellで感染させる、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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