説明

組織切開器

【課題】組織切開器を提供する。
【解決手段】本組織切開器は、その長さに沿って延在する内腔を含みかつその中に長手軸を画定するイントロデューサ8を備える。イントロデューサ8は、標的組織に隣接して配置されるように構成されている。イントロデューサ8に動作可能に接続されたシャフト10は、その遠位端から展開可能であり、標的組織に隣接するシャフト10の遠位端18に近づけるための近位端を含む。シャフト10の遠位端18は、非拡張構成から、標的組織を隣接組織から分離する拡張構成に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組織切開器に関し、より詳細には、拡張可能な遠位端を有するシャフトを備えた展開可能な組織切開器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気外科手術処置(例えば、熱焼灼処置)の間に、標的組織は、高温(すなわち、組織を焼灼するのに十分に高い温度)に加熱される。特定の手術環境下では、時として、標的組織に隣接する重要な組織構造(例えば、臓器、骨物質など)を熱焼灼処置に伴う熱から保護しなければならない。隣接もしくは近接組織を保護するために、典型的に、隣接組織を切開、被覆または遮蔽するか、他の方法で処置する。例えば、熱焼灼処置の間に隣接組織構造を保護するために一般に利用される技術の1つとしては、標的組織と隣接組織との間の空間に流体(例えば、食塩水、CO、D5Wなど)を注入することによって隣接組織を切り離すことが挙げられる。この技術は特定の手術環境下では十分に機能するが、流体の位置を制御することが難しく、また、全ての流体を体内から除去することが難しいため、この技術は限られている。さらに、流体が気体(例えば、CO)である場合、COが組織の中に溶けてしまうことが多いため、手術処置の間に(時として非常に頻繁に)COを補充する必要がある。明らかなように、手術処置の間にCOを補充しなければならないことで、手術処置を効果的に行うために必要な時間が長引いてしまうことがある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は組織切開器を提供する。組織切開器は、その長さに沿って延在する内腔を含みかつその中に長手軸を画定するイントロデューサを備える。イントロデューサは、標的組織に隣接して配置されるように構成されている。イントロデューサに動作可能に接続されたシャフトは、その遠位端から展開可能であり、標的組織に隣接するシャフトの遠位端に近づけるための近位端を含む。電気外科手術処置の間に隣接組織が大きな影響を受けないように、シャフトの遠位端は、非拡張構成から、標的組織を隣接組織から分離する拡張構成に移動可能である。
【0004】
本開示は、組織を電気外科的に治療するシステムを提供する。本システムは、電気外科手術用エネルギー源と、電気外科手術用エネルギー源に動作可能に接続するように構成されかつ対象の組織を電気外科的に治療するように構成された電気外科手術用器具と、組織切開器とを備える。組織切開器は、その長さに沿って延在する内腔を含みかつその中に長手軸を画定するイントロデューサを備える。イントロデューサは、標的組織に隣接して配置されるように構成されている。シャフトは、イントロデューサに動作可能に接続されており、イントロデューサの遠位端から展開可能である。シャフトは、標的組織に隣接するシャフトの遠位端に近づけるための近位端を含む。電気外科手術処置の間に隣接組織が大きな影響を受けないように、シャフトの遠位端は、非拡張構成から、標的組織を隣接組織から分離する拡張構成に移動可能である。
【0005】
本開示は、組織を電気外科的に治療する方法も提供する。本方法の一工程としては、組織切開器のイントロデューサを標的組織に隣接して配置する工程が挙げられる。標的組織と隣接組織との間でシャフトをイントロデューサから展開させる工程は、本方法の一工程である。本方法は、隣接組織が標的組織から分離されるようにシャフトの遠位端を拡張させる工程を含む。また、標的組織を電気外科的に治療する工程も本方法の一工程である。
【0006】
以下、図面を参照しながら、本開示の組織切開器の実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本開示の一実施形態に係る電気外科手術処置を行うためのシステムの概略図である。
【図2A−2B】図1に示されているシステムに関連する組織切開器の概略図である。
【図2C−2D】図2Aおよび図2Bに示されている組織切開器と共に利用され得る様々な遠位端構成を示す概略図である。
【図3A−3D】図1に示すシステムと共に使用されるように構成された本開示の別の実施形態に係る組織切開器の概略図である。
【図3E】図3Dの3E−3E線に沿って切断された断面図である。
【図4】図4A〜図4Bは、図1に示されているシステムと共に使用されるように構成された本開示のさらに別の実施形態に係る組織切開器の概略図である。
【図5】図2A、図3Aおよび図4Aに示されている組織切開器と共に使用されるように構成されたシャフトの上面立面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の詳細な実施形態が本明細書に開示されているが、開示されている実施形態は単に本開示の例であり、それらを様々な形態で具現化することができる。従って、本明細書に開示されている具体的な構造および機能の詳しい説明は、限定するものとして解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の根拠として、および実質的にあらゆる適切に詳細な構造において本開示を様々に用いることを当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0009】
図面および以下の説明では、「近位」という用語は、従来同様に、手術器具の使用者に近い方の端部を指し、「遠位」という用語は、手術器具の使用者から遠い方の端部を指す。
【0010】
図1を参照すると、電気外科手術用エネルギー源(例えば、電気外科手術用発生器2)と、電気外科手術用器具(例えば、マイクロ波アンテナアセンブリ4)と、組織切開器6とを備えた、組織を電気外科的に治療するためのシステム100が示されている。システム100は、組織を治療するため、例えば、限定されるものではないが、組織を焼灼、凝固および電気破壊するための1つまたは複数の電気外科手術処置を行うように構成されていてもよい。本明細書における目的のために、組織を焼灼するための使用の観点からシステム100について説明する。
【0011】
引き続き図1を参照すると、電気外科手術用発生器2は、組織を焼灼するのに適した電気外科手術用エネルギーを生成するように構成されている。マイクロ波アンテナアセンブリ4は、電気外科手術用発生器2に動作可能に接続するように構成されており、対象の組織(以下、標的組織「T」という)を電気外科的に治療するように構成されている。マイクロ波アンテナアセンブリ4を備えた電気外科手術用発生器4のより詳細な説明のために、2009年10月27日に出願されたBrannanへの共同所有の特許出願第12/606,767号を参照する。
【0012】
引き続き図1を参照し、さらに図2Aおよび図2Bを参照すると、イントロデューサ(イントロデューサもしくはカテーテル8の形態)およびシャフト10を備えた組織切開器6の一実施形態が示されている。
【0013】
図示の実施形態では、カテーテル8は、組織を穿孔した後、標的組織「T」に隣接して配置されるように構成されている。組織の穿孔を容易にするために、カテーテル8は、一般に鋭い遠位先端部14を含む(図1〜図2B)。特定の実施形態では、例えば、カテーテル8が組織を穿孔するように構成されていない場合は、比較的鈍いもしくは丸みのある遠位先端部をカテーテル8に設けると有利であることが分かるであろう。カテーテル8はその中に長手軸「A−A」を画定しており、その中に画定されかつその長さに沿って延在する内腔12を含む(図2A〜図2B)。シャフト10またはそれに関連して動作可能な構成要素(例えば、遠位端18)が、遠位先端部14に隣接するカテーテル8の開放された遠位端から展開可能であるように(図2B)、内腔12はシャフト10をその中に受容するように構成されている(図2A)。使用者がカテーテル8の内腔12内にシャフト10を配置し得るように、シャフト10は、使用者(例えば、臨床医)によって操作可能な近位端(図示せず)を含む。以下により詳細に説明するように、遠位端18は、シャフト10をカテーテル8の中に装入しかつそこから遠位端18を展開する非拡張構成(図2A)から、隣接組織「NT」を標的組織「T」から分離する拡張構成(図2B)に移動可能である。
【0014】
遠位端18は、1つまたは複数の好適な接合方法(例えば、半田付け、超音波溶接など)によって、シャフト10に動作可能に接続している。
【0015】
図2Aおよび図2Bに示されている実施形態では、シャフト10の遠位端18は、複数のワイヤ20で構成されたメッシュ構造を含む。いくつかの実施形態では、ワイヤ20は、形状記憶合金(例えばニチノール)および通常は拡張された構成にある圧縮可能なエラストマー材料などの材料で作られている。拡張構成では、シャフト10の遠位端18は、1つまたは複数の好適な形状を呈していてもよい。例えば、拡張構成では、遠位端18は、限定されるものではないが、球体(図2C)、長方形(図2D)および螺旋形(図2B)などの形状を含んでいてもよい。明らかなように、遠位端18が拡張状態で呈し得る具体的な形状は、異なる手術処置、電気外科的に治療される組織の種類、治療される組織の位置、製造業者の嗜好などによって異なってもよい。
【0016】
遠位端18は、半径方向外側に拡張する。図2Bに示すように、拡張構成では、遠位端18の螺旋形は、隣接組織「NT」が目的の組織から分離された距離に対応する距離「x」に及んでいる(あるいは幅「x」を含んでいる)(図2B)。この距離「x」は、電気外科手術処置の間に、隣接組織「NT」が大きな影響を受けないようにするのに十分である。
【0017】
特定の場合に、拡張構成では、シャフト10の遠位端18は、焼灼処置の間に、マイクロ波エネルギーの伝播を停止および/または阻害するように構成されていてもよい。この場合、遠位端18がファラデーケージとして機能するように、遠位端18のワイヤ20を密に編むと有利であることが分かるであろう(例えば、図2Cおよび図2Dを参照)。
【0018】
ここで、システム100の操作を、組織を電気外科的に治療する方法の使用の観点から説明する。カテーテル8が標的組織「T」(例えば、電気外科的に治療される組織)に隣接して配置され得るように、最初にカテーテル8を利用して組織を穿孔する(図2A)。シャフト10をカテーテル8の内腔12内に配置し、続いて、遠位端18が標的組織「T」と隣接組織「NT」との間に配置されるように、遠位端18をカテーテル8から展開させる(図2B)。遠位端18がカテーテル8から展開したら、遠位端18を非拡張構成から拡張構成に移行させる。遠位端18が非拡張構成から拡張構成に移行するにつれて、遠位端18は、隣接組織「NT」を標的組織「T」から分離する。その後、マイクロ波アンテナアセンブリ4によって標的組織「T」を電気外科的に治療する。
【0019】
明らかなように、本明細書に開示されている組織切開器6によって、隣接組織「NT」を標的組織「T」から効果的に分離および隔離し、標的組織「T」を電気外科的に治療する際に隣接組織「NT」が大きな影響を受ける可能性を減少および/または排除する。これは、上記のとおり、手術処置を効果的に行うために必要な時間を長引かせる恐れのある手術環境へのどのような余分な流体の導入も必要とすることなく達成される。
【0020】
図3A〜図3Eを参照すると、本開示の別の実施形態に係る組織切開器が、組織切開器106として示されている。組織切開器106は、組織切開器6に実質的に類似している。従って、組織切開器106に固有である特徴のみを本明細書に詳述する。
【0021】
カニューレ108は、カニューレ8に実質的に類似している。しかし、カニューレ8とは異なり、カニューレ108は、図3A〜図3Eに示されている実施形態では、シャフト10の直径よりも大きいシャフト110を受容するように構成されている。シャフト110のより大きな直径は、以下により詳細に説明するように、アクチュエータ107を収容するように構成されている。
【0022】
シャフト110は、断面(図3E)を観察すると、ほぼ円周形状を有する細長い構成を含む。図3Eに最もよく示されているように、シャフト10とは異なり、シャフト110の遠位端118は、複数の離間したスリットまたはスロット115a〜115f(まとめて、スリット115と呼ぶ)を含む。スリット115は、遠位端118を非拡張構成(図3A)から拡張構成(図3C)に容易に移動させる。すなわち、スリット115は、シャフト110の遠位端118の拡張および収縮を容易にする。特に、アクチュエータ107が近位に引かれた場合に、スリット115によって、シャフト110の遠位端118をスリット115の周りで「膨張」または「隆起」させることができる。
【0023】
図3A〜図3Eに示されている実施形態では、6つのスリット115a〜115fは、互いから約60°間隔で均一に離間されている。但し、スリット115の数は、異なる外科的処置、電気外科的に治療される組織の種類、治療される組織の位置、製造業者の嗜好などによって異なってもよい。例えば、2つのスリット115(例えば、スリット115aおよび115b)が利用されている場合には、それらのスリットは、互いから約180°間隔で離間されており、3つのスリット115(例えば、スリット115a、115bおよび115c)が利用されている場合には、それらのスリットは、互いから約120°間隔で離間されており、4つのスリット115(例えば、スリット115a、115b、115cおよび115d)が利用されている場合には、それらのスリットは、互いから約90°間隔で離間されており、5つのスリット115(例えば、スリット115a、115b、115c、115dおよび115e)が利用されている場合には、それらのスリットは、互いから約72°間隔で離間されている。当業者には明らかなように、任意の数のスリットを利用してもよい。6つスリット115a〜115fによって、シャフト110の遠位端118が非拡張構成から拡張構成に移行した際に生じる拡張力の均一な分布が得られることが分かった。
【0024】
シャフト10とは異なり、遠位端118が標的組織「T」もしくは隣接組織「NT」に一時的に固定され得るように、シャフト110は、組織(例えば、標的組織「T」または隣接組織「NT」)を穿孔また貫通するように構成された、尖ったもしくは鋭い遠位先端部116を含む(図3A〜図3D)。すなわち、鋭い遠位先端部116は、遠位先端部116の一部が組織に固定され得るよう、組織を穿孔するように構成されている。明らかなように、遠位先端部116を標的組織「T」または隣接組織「NT」に一時的に固定することにより、遠位端118をカテーテル8の遠位端から展開する間に、カテーテル108を容易に引き戻すまたは引き寄せることができる。
【0025】
図3Bおよび図3Cに最もよく示されているように、アクチュエータ107は、シャフト110の内腔113を通って延在し、シャフト110の遠位端118に隣接する遠位先端部116に動作可能に接続している。アクチュエータ107は、シャフト110の遠位端118を非拡張構成から、アクチュエータ107が近位に引かれた際の拡張構成に移動させるように構成されている。この目的を達成するために、アクチュエータ107は、限定されるものではないが、ワイヤ、ケーブルおよび紐などの任意の好適なアクチュエータ107であってもよい。図示の実施形態では、アクチュエータ107は、ケーブルの形態である。
【0026】
使用の際は、カテーテル108が標的組織「T」に隣接して配置され得るように、最初にカテーテル108を利用して組織を穿孔する(図3A)。シャフト110をカテーテル108の内腔112内に配置し、続いて、遠位端118が標的組織「T」と隣接組織「NT」との間に配置されるように、遠位端118をカテーテル108から展開させる(図3C)。遠位端118がカテーテル108から展開され、隣接組織「NT」と標的組織「T」との間に配置されたら、アクチュエータ107を作動させる(例えば、近位に引く)と、遠位端118のスリット115は、最初の非拡張構成から拡張構成に移動または移行する。遠位端118が非拡張構成から拡張構成に移行するにつれて、遠位端118は、隣接組織「NT」を標的組織「T」から分離する。その後、標的組織「T」を上述したように電気外科的に治療する。
【0027】
図4Aおよび図4Bを参照すると、本開示の別の実施形態に係る組織切開器が、組織切開器206として示されている。組織切開器206は、組織切開器106に実質的に類似している。従って、組織切開器206に固有である特徴のみを本明細書に詳述する。
【0028】
シャフト210は、シャフト210の遠位端218に動作可能に配置されかつ長手軸「A−A」に沿って延在する1つまたは複数の離間した弾性部材211(3つの弾性部材211a〜211cが図示されている)を介して互いに接続された第1のリング209aおよび第2のリング209bを含む。第1および第2のリング209aおよび209bは、シャフト210の遠位端218をその遠位先端部216に接続するように構成されている。弾性部材211a〜211cを含むリング209aおよび209bは、スリット115と同様に機能する。すなわち、弾性部材211a〜211cを含むリング209aおよび209bは、シャフト210の遠位端218を非拡張構成から拡張構成に容易に移動させる。弾性部材211a〜211cは、限定されるものではないが、ワイヤ、バンド、バネなどの任意の好適な弾性材料で作られていてもよい。図4Aおよび図4Bに示されている実施形態では、弾性部材211a〜211cは、リング209aおよび209bの周りで湾曲される(あるいは、それ以外の方法でそれらに接続された)ワイヤ片である。
【0029】
使用の際は、カテーテル208が標的組織「T」に隣接して配置され得るように、最初にカテーテル208(図4B)を利用して組織を穿孔する。シャフト210をカテーテル208の内腔(図示せず)内に配置し、続いて、遠位端218が標的組織「T」と隣接組織「NT」との間に配置され得るように、遠位端218をカテーテル208から展開させる。遠位端218がカテーテル208から展開され、隣接組織「NT」と標的組織「T」との間に配置されたら、ケーブル207を近位に引くと、遠位端218の弾性部材211a〜211cが非拡張構成から拡張構成に移動または移行する。遠位端218が非拡張構成から拡張構成に移行するにつれて、遠位端218は、隣接組織「NT」を標的組織「T」から分離する。その後、標的組織「T」を電気外科的に治療する。
【0030】
上記から、そして様々な図を参照すると、当業者には明らかなように、本発明の範囲を逸脱せずに本開示に対する特定の修正も可能である。例えば、1つまたは複数のガイドワイヤ380を、1つまたは複数の好適な接続方法によって、上記組織切開器のいずれかと共に使用されるように構成されたシャフト310に動作可能に接続し得ることが想定される(図5)。ガイドワイヤ380は、誘導機構として機能し、シャフト310を移動または誘導するように構成されている。より具体的には、2つの独立して制御可能なガイドワイヤ381aおよび381bは、シャフト310に動作可能に接続されていてもよく、互いに180°間隔で離間されている。ガイドワイヤ381aおよび381を互いから180°間隔で分離させることにより、シャフト310全体での牽引力の均一な分布が得られる。図5に示されている実施形態では、ガイドワイヤ381aおよび381bは、シャフト310の外面に沿って、対応する溝(図示せず)の中に動作可能に配置されている。ガイドワイヤ381aおよび381bは、1つまたは複数の好適な接合方法(例えば、半田付け)によって、シャフト310の遠位端318に隣接して接続されている。例示のために、遠位端318は、互いから約180°間隔で離間された2つのスロット315aおよび315bを含む。
【0031】
ガイドワイヤ381aおよび381bは、ガイドワイヤ381aおよび381bのうちのそれぞれ1つを作動させる(例えば、引く)と、遠位端318を含むシャフト310が、それぞれの方向(例えば、左または右)に長手軸「A−A」を横切って横方向または横断方向に移動するように構成されている。ガイドワイヤ381aおよび381bを利用することで、シャフト310の遠位端318を標的組織「T」および/または隣接組織「NT」に隣接して配置するのが容易になる。例示のために、ガイドワイヤ381aを引くと、遠位端318を含むシャフト310は左側に移動し、ガイドワイヤ381bを引くと、遠位端318を含むシャフト310は右側に移動する。
【0032】
シャフト310の部分305は、ガイドワイヤの381aおよび381bのうちのいずれか一方が引かれた際に屈曲するように構成されている。この目的を達成するために、部分305は、屈曲を容易にするように構成された1つまたは複数の接合部を含んでいてもよい。シャフト310の部分305(またはシャフト310自体)は、1つまたは複数の方向への屈曲を容易にするために実質的に弾性であってもよく、または、シャフト310の部分305(またはシャフト310自体)は可鍛性であってもよい。図5に示されている実施形態では、部分305は、可鍛性材料(例えば、比較的柔軟であるか変形可能なプラスチック)で作られており、ガイドワイヤ381aおよび381bのうちのいずれか一方が引かれた場合に、シャフト310が部分305の周りで屈曲または移動し、次いで、遠位端318を対応する方向に誘導または移動させるように構成されている。可鍛性部分305は、ガイドワイヤ381または381bのうちのいずれか一方が作動されるまで遠位端318を対応する方向に維持するように構成されている。従って、標的組織「T」、隣接組織「NT」または他の組織構造と遠位端318との間の不注意による接触によって、遠位端318を移動させてしまうことはない。
【0033】
明らかなように、ガイドワイヤの数(および/またはシャフト310の周囲に沿ったそれらの位置)は、異なる外科的処置、電気外科的に治療される組織の種類、治療される組織の位置、製造業者の嗜好などによって異なってもよい。例えば、特定の一実施形態では、4つのガイドワイヤは、シャフト310の周囲に沿って動作可能に配置されていてもよい。この場合、4つのガイドワイヤは、互いから90°間隔で離間され、シャフト310を対応する方向(例えば、長手軸「A−A」の左および右ならびに長手軸「A−A」の上または下)に移動させるように構成されていてもよい。
【0034】
ガイドワイヤ381aおよび381bを含むシャフト310を備えた上記組織切開器(例えば、組織切開器206)のいずれかの使用は、上に記載した使用に実質的に類似している。1つの相違点は、遠位端318を拡張状態に移動させる前または後に、ガイドワイヤ381aおよび381bを利用して、遠位端318を含むシャフト310を移動または「誘導」し得る点である。明らかなように、遠位端318を「誘導」するという能力を有することにより、特に、標的組織位置への到達に障害があるかそれが困難な状態にある場合に、最終使用者に有意な機械的利点を提供することができる。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態を図面に示してきたが、本開示は当該技術分野が許容するのと同程度に範囲が広く、本明細書は同様に解釈されることが意図されているため、本開示はそれらに限定されるものではない。従って、上記説明は限定するものとして解釈されるべきではなく、単に特定の実施形態の例示として解釈されるべきである。当業者であれば、本明細書に添付されている特許請求の範囲の範囲および趣旨を逸脱しない他の修正を思いつくであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織切開器であって、
その長さに沿って延在しかつその中に長手軸を画定する内腔を含み、標的組織に隣接して配置されるように構成されたイントロデューサと、
前記イントロデューサに動作可能に接続され、その遠位端から展開可能なシャフトと、
を含み
前記イントロデューサは、標的組織に隣接する前記シャフトの前記遠位端に近づけるための近位端を含み、前記シャフトの前記遠位端は、非拡張構成から、標的組織を隣接組織から分離する拡張構成に移動可能である組織切開器。
【請求項2】
前記遠位端は半径方向外側に拡張する、請求項1に記載の組織切開器。
【請求項3】
前記遠位端は、ワイヤで作られたメッシュ構成を含む、請求項2に記載の組織切開器。
【請求項4】
前記ワイヤは、形状記憶合金およびエラストマー材料からなる群から選択された材料で作られている、請求項3に記載の組織切開器。
【請求項5】
前記拡張構成にある場合に、前記シャフトの前記遠位端は、球体、長方形および螺旋形からなる群から選択された形状を含む、請求項1に記載の組織切開器。
【請求項6】
前記シャフト内に画定された内腔を通って延在するアクチュエータであって、前記遠位端に動作可能に接続されており、前記アクチュエータを作動させると、前記シャフトの前記遠位端を非拡張構成から拡張構成に移行させるように構成されたアクチュエータをさらに備える、請求項1に記載の組織切開器。
【請求項7】
前記シャフトの前記遠位端の外周に沿って複数のスリットが画定されている、請求項6に記載の組織切開器。
【請求項8】
前記アクチュエータは、ワイヤ、ケーブルおよび紐からなる群から選択される、請求項6に記載の組織切開器。
【請求項9】
前記アクチュエータは、前記シャフトの前記遠位端の遠位先端部に動作可能に接続している、請求項6に記載の組織切開器。
【請求項10】
前記複数の細長いスリットは、互いから約60°間隔で離間された6つの細長いスリットによってさらに画定されている、請求項9に記載の組織切開器。
【請求項11】
第1および第2のリングが、前記シャフトの前記遠位端に動作可能に配置され、かつ前記長手軸に沿って延在する少なくとも2つの離間した弾性部材によって互いに接続されており、前記第1および第2のリングは、前記シャフトの前記遠位端に接続するように構成され、前記シャフトの前記遠位端を非拡張構成から拡張構成に移動させるのを容易にするように構成されている、請求項6に記載の組織切開器。
【請求項12】
前記少なくとも2つの弾性部材は、ワイヤおよびバンドのうちの1つである、請求項11に記載の組織切開器。
【請求項13】
少なくとも2つの独立して制御可能なガイドワイヤが、前記シャフトに動作可能に接続されており、前記少なくとも2つの独立して制御可能なガイドワイヤはそれぞれ、前記少なくとも2つの独立して制御可能なガイドワイヤのそれぞれを作動させると、前記遠位端を含む前記シャフトを前記長手軸に対して横断方向に移動させるように構成されている、請求項1に記載の組織切開器。
【請求項14】
前記少なくとも2つのガイドワイヤは、前記シャフトの外周に沿って動作可能に配置されており、互いから180°間隔で離間されている、請求項13に記載の組織切開器。
【請求項15】
前記シャフトの一部は、前記長手軸に対する前記シャフトの横断方向移動を容易にするように可鍛性であり、前記シャフトの前記可鍛性部分は、前記少なくとも2つのガイドワイヤのうちのそれぞれ1つが作動されるまで、その前記遠位端を含む前記シャフトを前記横断方向位置に維持する、請求項14に記載の組織切開器。
【請求項16】
組織を電気外科的に治療するためのシステムであって、
電気外科手術用エネルギーの供給源と、
電気外科手術用エネルギーの前記供給源に動作可能に接続するように構成され、かつ標的組織を電気外科的に治療するように構成された電気外科手術用器具と、
組織切開器と、
を含み、
前記組織切開器は、
その長さに沿って延在しかつその中に長手軸を画定する内腔を含み、標的組織に隣接して配置されるように構成されたイントロデューサと、
前記イントロデューサに動作可能に接続され、かつその遠位端から展開可能なシャフトと、
を含み、
前記イントロデューサは、標的組織に隣接する前記シャフトの前記遠位端に近づけるための近位端を含み、前記シャフトの前記遠位端は、非拡張構成から、標的組織を隣接組織から分離する拡張構成に移動可能であるシステム。
【請求項17】
組織を電気外科的に治療するための方法であって、
組織切開器のイントロデューサを標的組織に隣接して配置する工程と、
シャフトを前記標的組織と隣接組織との間で前記イントロデューサから展開させる工程と、
前記隣接組織が前記標的組織から分離されるように前記シャフトの遠位端を拡張させる工程と、
前記標的組織を電気外科的に治療する工程と、
を含む方法。
【請求項18】
前記遠位端を拡張させる前記工程は、前記遠位端にワイヤで作られたメッシュ構成を設ける工程を含み、前記ワイヤは、形状記憶合金およびエラストマー材料からなる群から選択された材料で作られている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記シャフトを展開させる前記工程は、前記シャフトの前記遠位端の外周に沿って画定された複数のスリットを含むシャフトを展開させる工程を含み、前記複数のスリットは、前記シャフトの前記遠位端を非拡張構成から拡張構成に容易に移行させるように構成されている、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記シャフトの前記遠位端を拡張させる前記工程は、前記シャフトの前記遠位端に動作可能に接続されたアクチュエータを移動させる工程を含み、前記アクチュエータは、ワイヤ、ケーブルおよび紐からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239900(P2012−239900A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−111727(P2012−111727)
【出願日】平成24年5月15日(2012.5.15)
【出願人】(512092575)タイコ ヘルスケア グループ,エルピー (3)
【Fターム(参考)】