説明

組織治癒用途における音波モードの制御

【課題】損傷した組織に超音波を与えるための改善された方法とシステムを提供する。
【解決手段】組織を治癒するためのモード変換器アセンブリであって、前記モード変換器アセンブリ10はトランスデューサ5および本体8を有する。トランスデューサ5は組織表面から組織内へ音波を送信するよう適合される。本体8は、組織に送信された音波が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、組織表面上でトランスデューサ5を収容するよう適合され、音波は、剪断波および縦波として伝播され、組織の損傷した部位を処置する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体を扱うための治療的超音波装置に関し、とりわけ、音波がトランスデューサから人体へと送られる角度を制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連した出願に対する相互参照]
本願は、「組織治癒用途における音波モードの制御(Controlling Acoustic Modes in Tissue Healing Applications)」という発明の名称で2006年4月7日に出願された米国仮特許出願第60/790,502号、および、「骨内の低強度パルス超音波送信における角度依存(Angle Dependence of Low Intensity Pulsed Ultrasound Transmission in Bone)」という発明の名称で2006年12月20日に出願された米国仮特許出願第60/870,934号の優先権を主張する。これらの出願はここに参照として含まれる。
【0003】
超音波は、45年以上の間、物理療法医学における治療技法として使用されてきた。それは、痛み、軟らかい組織の負傷、また、骨関節炎、関節周囲炎、滑液嚢炎、腱滑膜炎および様々な筋骨格の症候群を含めた関節機能障害の処置のための補助的治療にとって推薦される治療技法であった。さらに超音波は、外傷治癒の加速、局所的薬剤の音波泳動(phonophoresis)、瘢痕組織の処置、およびスポーツ傷害の処置のような用途で使われる。
【0004】
超音波の治療生物学的な効果は、2つの主要な領域中に特徴付けることができる:すなわち、熱的および非熱的な領域である。非熱的効果は、約0.05MHz(メガヘルツ)から約5.0MHzまでの広範囲な超音波周波数の範囲にわたる、音波ストリーミング(acoustic streaming)、キャビテーション(cavitation)、および他の機械的効果を含むことができる。信号ジェネレータ(生成器)からの電気的出力は、一般にチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のような圧電性(ピエゾ)材料、PMN−PZ−PTのような単結晶リラクサ強誘電体などから作られているところのトランスデューサを通して、機械的振動に変換される。組織を通過する機械的振動は音波を生成し、伝播するプロセスにおいて吸収される。粘性吸収の速度と関連する温度の上昇は、遭遇する組織タイプの微細(ミクロ)構造
特性、音波の周波数、空間的時間的音波強度、および組織における非線形伝播の度合いに依存している。音波エネルギーは、治療的用途に応じて連続波またはパルス波の形態にありうる。そして、通常、超音波ジェル、ローション、ヒドロゲル、または水のような音波カップリング材料(音波結合材料)を使ってトランスデューサから患者の組織へと移動される。通常、0.03から3.0W/cm(ワット毎平方センチメートル)の音波強度が、治療目的で、パルスモードまたは連続モードで適用され、骨折や、急性および慢性の組織外傷の処置を可能にしている。
【0005】
通常、治療的超音波処置は、皮膚組織界面に垂直に圧電性トランスデューサを使用することによって実行され、それによって処置領域に、主に縦波としての、組織中を伝播する音波縦波を生成する。もし入射縦波が圧電性トランスデューサ/皮膚組織の界面に垂直でないならば、続いての柔らかい組織内で、結果的に屈折させられた音波が種々の屈折角度における擬似的な縦波と擬似的な剪断波として伝播する。結果として、現状で利用可能な治療的超音波装置のための手段を使って、目標とする組織領域による好ましい配列の下に、患者に音波を与えることは、しばしば困難である。
【0006】
特許文献1は、台形断面形状の低粘性損失材料によるモード変換器を用いて、剪断波および縦波を制御することができ、組織に送ることができる、ということを教示している。このモード変換器は、組織表面領域とゴムブロックとの間に超音波カプリングジェルを必要とするゴム製の大きなブロックである。このようなブロックの形状と設計は、超音波の一貫した送信を可能にするような患者への設置および抑止が難しい。さらに、傷害場所に対するトランスデューサとゴムブロックの配置は、ブロック中心が骨折からオフセットする(ずれる)ことを必要とし、それは、骨折にその装置を適用する大多数の人にとって直感に反することとなる。このゴムブロックに対する音波の要件は、その材料が高度に減衰性であって、非常に高い入射強度がブロックの最初の面に伝達されることを必要とし、装
置の電池寿命とその有用性に対する実質的な浪費源を有している。
【0007】
特許文献1は、骨の表面に沿って縦波および剪断波をどのように最大化して骨膜治癒を加速するか、について説明しているが、組織回復に関与する他のプロセスのための剪断波の重要性を考慮していない。骨膜直接骨形成は、骨折回復に関与する鍵となるプロセスの1つであるが、骨および組織の治癒は、そのプロセスだけに限定されない。もし特定のタイプの組織治癒を助けるために縦波および剪断波を提供することが重要であるならば、好ましいタイプの組織治癒をもたらす臨界角を特定することもまた重要であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/013654 A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
損傷した組織に超音波を与えるための、改善された方法とシステムに対する技術が必要である。さらに、特定のタイプの組織治癒を達成するための臨界角で適用される超音波を使う方法とシステムに対する技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面は、組織を治癒するためのモード変換器アセンブリを提供する。前記モード変換器アセンブリは、トランスデューサと本体とを有する。トランスデューサは、組織表面から組織内へ音波を送信するよう適合される。本体は、組織に送信された音波が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、組織表面上でトランスデューサを収容するよう適合される。前記音波は、剪断波および縦波として伝播され、組織の損傷した部位を処置する。
【0011】
本発明の一実施形態は、前記トランスデューサが圧電性素子であることを特徴とするモード変換器アセンブリを提供する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、柔らかい組織の音速に類似した音速を持った材料から作られたモード変換器をさらに有する。前記モード変換器は、前記トランスデューサと組織表面の間の角度が傾斜した角度となるように、本体内で、かつ前記トランスデューサと柔らかい組織の間に配置される。
【0013】
本発明の他の実施形態は、トランスデューサに組織表面の方へのバイアスをかけるよう構成された音源をさらに有する。
【0014】
本発明のさらに他の実施形態は、前記本体に取り付けるよう構成されたキャップをさらに有する。音源は第1の端部および第2の端部とを有する。第1の端部は前記キャップに取り付けられ、第2の端部はトランスデューサに取り付けられる。
【0015】
本発明の他の実施形態は、前記トランスデューサが複数の音波生成素子を有することを特徴とするモード変換器アセンブリを提供する。前記複数の音波生成素子は組織表面に沿って方向付けられる。
【0016】
本発明の他の実施形態は、信号ジェネレータをさらに有する。信号ジェネレータは前記トランスデューサで生成された音波を制御するよう構成される。
【0017】
本発明の他の実施形態は、組織内に送信される音波の総和が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、音波が時間的に偏移(シフト)されることを特徴とするモード変換器アセンブリを提供する。
【0018】
本発明の他の実施形態は、傾斜した角度が、直角から約18度から71度までの範囲にあることを特徴とするモード変換器アセンブリを提供する。
【0019】
本発明の他の局面は、組織を治癒するためのモード変換器アセンブリを提供する。モード変換器アセンブリはトランスデューサ、本体、およびモード変換器を有する。トランスデューサは、組織表面から組織内へ音波を送信するよう適合される。本体は、組織表面上でトランスデューサを収容するよう適合される。モード変換器は、柔らかい組織の音速に類似した音速を持った材料から作られる。前記モード変換器は、前記トランスデューサと組織表面の間の角度が傾斜した角度となるように、本体内で、かつ前記トランスデューサと柔らかい組織の間に配置される。音波は、剪断波および縦波として伝播され、組織の損傷した部位を処置する。
【0020】
本発明の他の局面は、組織を治癒するためのモード変換器アセンブリを提供する。前記モード変換器アセンブリは、トランスデューサと本体とを有する。トランスデューサは、組織表面から組織内へ音波を送信するよう適合された複数の音波生成素子を含む。前記複数の音波生成素子は組織表面に沿って方向付けられる。前記本体は、組織内に送信された音波が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、組織表面上でトランスデューサを収容するよう適合される。前記音波は、剪断波および縦波として伝播され、組織の損傷した部位を処置する。
【0021】
本発明のさらに他の局面は、組織を治癒するためのモード変換器アセンブリを提供する。前記モード変換器アセンブリは、トランスデューサと本体とを有する。トランスデューサは、組織表面から組織内へ音波を送信するよう適合される。前記本体は、組織内に送信された音波が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、組織表面上でトランスデューサを収容するよう適合される。音波は、組織内に送信される音波の総和が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、時間的に偏移(シフト)される。音波は、剪断波および縦波として伝播され、組織の損傷した部位を処置する。
【0022】
本発明のさらに他の局面は、組織を処置するための方法を提供する。この方法は、組織表面上でトランスデューサを方向付ける。この方法は、組織表面に対してトランスデューサを回転させる。この方法は、組織中に音波を送信もする。音波は、組織表面に対して傾斜した角度で送信される。音波は、剪断波および縦波として伝播され、組織の損傷した部位を処置する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有利な点は、組織表面に対して傾斜した角度で音波を実装することによって、組織の治癒を提供する。剪断波、または剪断波と縦波の組み合わせが、傾斜した角度で損傷した部位を処置することができる。
【0024】
本発明の適用性のさらなる領域は、以下に提供された詳細な記載から明白になるであろう。詳細な記載と具体的な事例は、本発明の好ましい実施形態を示すことを通して、例示の目的のみのために意図されたものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない、ということを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】モード変換器アセンブリの第1の実施形態の側面断面図である。
【図2】モード変換器アセンブリの本体の上面図である。
【図3】図2に示された本体の側面図である。
【図4】図2に示された本体の斜視図である。
【図5】図2で示された本体の側面断面図である。
【図6】縦波および剪断波を示すグラフである。
【図7】縦波および剪断波を比較するグラフである。
【図8】モード変換器アセンブリの第2の実施形態である。
【図9】モード変換器アセンブリの第3の実施形態である。
【図10】モード変換器アセンブリの第4の実施形態である。
【図11】モード変換器アセンブリの第5の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、詳細な記載と添付の図面から、一層完全に理解されるようになるであろう。
【0027】
好ましい実施形態についての以下の記載は本質的に単なる典型的なものであって、本発明、その用途、または適用を決して限定することを意図したものではない。
【0028】
図1〜5は、柔らかい組織および/または骨で構成されうる媒体B中に超音波を与えるためのモード変換器アセンブリ10を示す。超音波は、柔らかい組織外傷の治癒および/または骨折の治癒を促進する。モード変換器アセンブリ10は、キャップ2、音源4、トランスデューサ5、ベース7、本体8、およびモード変換器9を含む。キャップ2、ベース7、および本体8は、トランスデューサ5、音源4、およびモード変換器9を収容するハウジングを形成する。トランスデューサ5は、モード変換器9と媒体Bを通した波の伝播を制御するために、信号ジェネレータ19(信号発生器)およびコントローラ18に電気的に接続される。
【0029】
表示された実施形態において、ベース7は、媒体Bとの界面が平らであると想定するように示されている。しかしながら、当業者は、剪断波の生成が制御される媒体B上のある場所において、ベース7が界面に媒体Bを適合させるような形状とされうる、ということを理解するであろう。例えば、ベース7は、患者の腕または足の上に適合するようにカーブさせることができ、または、不規則な表面上に適合するような不規則な形状とすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、ベース7は、穴またはスロットのようなアパーチャ3を含む。アパーチャ3は、モード変換器アセンブリ10を格納するか、またはベース7を媒体Bに取り付けるのに使うことができる。さらにアパーチャは、モード変換器アセンブリ10を媒体B上に位置決めするためのロケータとして使うことができる。図1〜5の実施形態におけるベース7は、寸法F、G、およびKを有する。寸法Fは約102ミリメートル、寸法Gは約38ミリメートル、そして寸法Kは約1.5ミリメートルである。このような実施形態は容易に実施され、また大多数の本体表面上で扱いやすい。モード変換器アセンブリ10のさらに小さな、またはさらに大きな寸法を必要としうる他の寸法を、本体表面に対して使うことができる。本体8はトランスデューサ5を受けるよう方向付けられ
る。
【0031】
トランスデューサ5は、通常的に超音波用途で使われるような材料と設計から作られる。トランスデューサ5は、圧電性特性を有し、例えば、セラミック材料、単結晶のリラクサ強誘電体、チタン酸ジルコン酸鉛、メタニオブ酸鉛、チタン酸バリウム、およびフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)の圧電性共重合体から作ることができる。あるいは、トランスデューサ5は磁歪特性を有することができる。トランスデューサ5はモード変換器9によって媒体B中に送信される超音波を生成する。超音波は、信号ジェネレータ19を通してトランスデューサ5で受信された駆動信号から生成される。音源4は、モード変換器9に接するトランスデューサ5にバイアスをかけ、超音波がトランスデューサ5からモード変換器9を通して媒体B中に移動するようになる。
【0032】
図1〜5に示した実施形態において、本体8は、トランスデューサ5が円形の断面を持つのに応じて円筒状の中空チューブであるが、他の形状を使うことができる。本体8は内側部分14と外側部分15を有する。図1〜5に示した実施形態において、本体8は、内側部分14と外側部分15をそれぞれ規定する内部壁12と外部壁13を持つ。本体8の内部壁12は、トランスデューサ5が本体8中にしっかり適合するような寸法とされる。内部壁12は、トランスデューサ5の直径と同じか、または少し大きな直径を持ちうる。例えば、内部壁12の直径は、トランスデューサ5の直径より約0mmから約2mm大きくありうる。本体8は基端部16と先端部17をも有する。キャップ2は先端部17のところで本体8に接続している。例えば本体8は、キャップ2が本体8にスナップ固定されるようなリップ11を持つことができる。さらに音源4は、トランスデューサ5に圧力を及ぼし、確実にバイアスをかけるために、キャップ2とトランスデューサ5との間に取り付けられる。いくつかの実施形態において、音源4はキャップ2に取り付けられうる。音源4は、トランスデューサ5に本体8の基端部16の方向へとバイアスをかける。本体8は、ベース7に対して傾斜した角度Aで取り付けられる。本体8は寸法HとJを有する。図1〜5に示した実施形態において、寸法Hは約33ミリメートルであり、寸法Jは約31ミリメートルであるが、他の寸法を使うこともできる。
【0033】
モード変換器9は、熱可塑性物質、熱硬化物質、エラストマー、およびそれらの混合物を含むが、それらに限定されないような、適当な低い減衰材料(attenuation material)で構成することができる。有用な熱可塑性物質は、USI株式会社(c/o Plastic Systems, Marlboro, MA(マサチューセッツ州))から入手可能なエチルビニルアセテート(酢酸塩)、EmersonおよびCumming(DewayおよびAlmay Chemical division,カールトン,MA(マサチューセッツ州))から入手可能なecothane CPC 41、および、Ren Plastics(a Division of Ciba Geigy, Fountain Valley, CA(カリフォルニア州)) から入手可能なpolyurethane RP 6400を含むが、それらに限定されない。有用な熱硬化物質は、Ernest F. Fullam株式会社(Schenectady, NY(ニューヨーク州))から入手可能なSpurr epoxy、およびEmersonおよびCummingから入手可能なStycastを含むが、それらに限定されない。他の熱硬化物質は、重合させたアクリル酸のエステル、アクリル酸のn-オクチルエステル、アクリル酸のnーノニルエステル、または2−エチルペンチルアクリレート(アクリルエステル)を含むことができる。有用なエラストマーは、General Electric (Silicon Products Division, Waterford, NY(ニューヨーク州))から入手可能なRTV60およびRTV90を含むが、それらに限定されない。他のエラストマーは、天然ゴム、オイル充填され過酸化物によって硬化されたシス−ブタジエンゴムのような合成のゴム、またはポリグリセロールヒドロゲルのようなゲルパッド材料を含むことができる。
【0034】
モード変換器9は、トランスデューサ5と媒体Bとの間に適合される。モード変換器9は、低い超音波減衰と柔らかい組織に類似した音速を有することができる。媒体Bに接触するモード変換器9の下側表面は、本体8に対して傾斜した角度にある。モード変換器9の寸法Eは、音源4がトランスデューサ5上に少なくともいくらかの圧力を及ぼすようなものである。最大超音波パワーがトランスデューサ5から組織内に送信されることを確実にするために、ヒドロゲル、鉱油、または水のようなカプリング材料の2つの薄い層が適用される。第1の層1はトランスデューサ5とモード変換器9との間に適用され、第2の層6はモード変換器9と媒体Bとの間に適用される。
【0035】
モード変換器9は、モード変換器9の音波インピーダンスに相当する音波インピーダンス、好ましくは、モード変換器9の音波インピーダンスのプラスマイナス10パーセント以内の音波インピーダンスを有する第1の層1によってトランスデューサ5に音響学的に結合される。いくつかの実施形態において、モード変換器9の音波インピーダンスは、人間の柔らかい組織のそれにほぼ等しい。さらに、モード変換器9は、好ましくは、人間の筋骨格の柔らかい組織に対する縦波の速度以下、および骨組織に対する縦波の速度以下の縦波の速度を有する材料で構成される。
【0036】
トランスデューサ5から生成される音波は、システムコントローラ18によって空間的および時間的に制御される。システムコントローラ18の設計と製作は当技術分野の当業者によく知られている。システムコントローラ18は信号ジェネレータ19に電気的に接続され、信号ジェネレータ19はトランスデューサ5に電気的に接続される。システムコントローラ18は、トランスデューサ5に送られる超音波の励起信号を生成するために、プログラム可能な信号ジェネレータ19を始動(トリガー)する。トランスデューサ5は励起信号を受信し、モード変換材料9を通して媒体B上に伝播する音波縦波を発散する。
【0037】
トランスデューサ5は、媒体Bを非侵襲的に照射するか、または超音波的に調査するために、システムコントローラ18によって制御された、特定の連続的または同時的な音波の送信を始動する。システムコントローラ18はプログラム可能なマイクロプロセッサとすることができる。しかしながら、集積回路、アナログデバイス、プログラム可能なロジックデバイス、パーソナル・コンピュータ、またはサーバをも含むことができるが、それらに限定されない。タイミング順序は、いかなる時にもユーザーによって、または製造プロセスの際に構築されうる。
【0038】
モード変換器アセンブリ10は、1日1回か2回の、また治癒プロセスを効果的に促進するためには数か月間毎日繰り返すような、超音波用量で構成された治療的処置を行なうように使われうる。いくつかの実施形態において、音波の一用量は、トランスデューサ5に対して、長さ1分から60分の範囲となる。モード変換器アセンブリ10は、骨折治癒プロセスにおける骨内膜および骨膜の両方の治癒局面を含んだ組織外傷治癒を促進しようとする取り組みにおいて、浅い、または深い、またはその両方の、解剖学的構成に、治療的超音波用量の適用を促進および強化するために使うことができる。
【0039】
図6は、柔らかい組織と骨の間の界面上への入射波IW、結果として反射された波RW、屈折させられた剪断波W、および屈折させられた縦波Vを図式的に示す。トランスデューサ5(図6には示していない)から生成された、直角に対して角度Θにある超音波はモード変換器9を通過し、角度θの入射波IWとして柔らかい組織のような第1の媒体中に入る。入射波IWは、第1の媒体を介して骨のような第2の媒体に到達するまで進み続ける。その時点で、入射波IWの一部が、角度φの反射波RWとして第2の媒体から反射され、一部が角度γの屈折剪断波Wとして屈折させられ、一部が角度βの縦波Vとして屈折させられる。屈折させられた剪断波Wと屈折させられた縦波Vは、異なるタイプの治癒を促進するものと考えられているので、それぞれのタイプの波を最大にする臨界角γとβを
特定することが重要である。臨界角を特定し、その臨界角を入射波IWの対応する角度θと比較することによって、モード変換器9を、所定の特定の複数タイプの治癒、またはそれらの組み合わせを提供するように構成し準備することができる。
【0040】
図7は、要求される量の剪断波W(図6で最も良く見られる)、および/または、縦波V(図6で最も良く見られる)に対するモード変換角度Θを決定する典型的な方法をグラフで示す。4つのプロットは、角度を示すグラフに含められる。その角度で、屈折させられた波が、柔らかい組織、骨、およびモード変換器に対する材料特性の4つの異なった組み合わせを仮定した媒体2(骨)中を進む。例えば、もし界面に平行な剪断波Wのみが必要ならば、モード変換角度Θは約60度であるように選ばれるであろう。しかしながら、媒体中への剪断波Wのみが必要ならば、モード変換角度Θは約55度であるように選ばれるであろう。もし媒体中への剪断波Wと縦波Vの組み合わせが必要ならば、モード変換器9の角度Θは約35度であるように選ばれるであろう。しかしながら、図7は、モード変
換器の材料、第2の媒体の材料に大きく依存した関連する角度としての典型例のみであって、それぞれの材料間の界面の幾何学形態にさらに依存しうる。約1390m/secの速度のモード変換材料を音が通過すると仮定すると、縦波の音波は、約3000m/secから約3800m/secの範囲の速度で第2の媒体を通過し、剪断波の音波は、約1630m/secから約1890m/secの範囲の速度で第2の媒体を通過し、実際の臨界角は、第1及び第2の媒体間の界面に平行な縦波V進行を最大にするために約22度から約28度、界面に平行な剪断波W進行を最大にするために約48度から約59度、界面に平行な縦波V進行と第2の媒体への剪断波W進行との組み合わせを最大にするために約36度から約41度、であると決定された。一般に、縦波を実現するためのモード変換
角度の範囲は、約9度から約71度であるに対して、剪断波を実現するためのモード変換角度の範囲は約18度から約76度である。
【0041】
図8はモード変換器アセンブリの第2の実施形態を示し、全般的に参照符号100によって表される。モード変換器アセンブリ100は、トランスデューサ110(変換器)、モード変換器112、および本体114を含む。トランスデューサ110とモード変換器112は本体114にマウント(取り付け)される。モード変換器112は、超音波を所定の方向に指向するためにトランスデューサ110の表面上にグレーティング(格子)を提供する。モード変換器112のグレーティングパターンの選択およびグレーティング間隔は、トランスデューサ110から発散された縦波に角度シフトを受けさせるようにできる。
【0042】
図9はモード変換器アセンブリの第3の実施形態を示し、全般的に参照符号200によって表される。モード変換器アセンブリ200は、圧電性素子210、モード変換器212、および本体214を含む。圧電性素子210とモード変換器212は本体214にマウント(取り付け)される。圧電性素子210は、本体210の底面に対してある角度でマウントされる。モード変換器212は、圧電性素子210によって生成された波を向け直す(または方向を変更する)。
【0043】
図10はモード変換器アセンブリの第4の実施形態を示し、全般的に参照符号300によって表される。モード変換器アセンブリ300は、圧電性素子310およびモード変換器312を含む。この実施形態において、モード変換器312は、圧電性素子310のためのハウジングまたは本体としても機能する。圧電性素子310は、モード変換器312の底面に対してある角度でマウントされる。モード変換器312は、圧電性素子310によって生成された波を向け直す(または方向を変更する)。
【0044】
図11はモード変換器アセンブリの第5の実施形態を示し、全般的に参照符号400によって表される。モード変換器アセンブリ400は、複数のトランスデューサ410、412、414、416含む。トランスデューサ410、412、414、416は、対応する波420、422、424、426を作り出す。図1に示したシステムコントローラに類似したシステムコントローラを、それぞれのトランスデューサ410、412、414、416の関与(連動)を制御するために使うことができる。従って、例として、システムコントローラは、全体的な角度剪断波または縦波を提供するために、それぞれのトランスデューサ410、412、414、416を連続的に関与(連動)させることができる。トランスデューサ410、412、414、416の連続的な動作の間の時間遅れを
制御することによって、モード変換器アセンブリ400は所定の角度での波を提供することができる。従って、モード変換器アセンブリ400は与えられた剪断波および/または縦波の量を制御することができる。
【0045】
各実施形態で示したように、圧電性素子は、媒体に対する圧電性トランスデューサの角度を物理的または時間的に変えることによって、治癒モードとしての剪断波を送ることができる。モード変換器のような材料を、媒体に対する圧電性素子の角度に適合するよう方向付けることができる。さらに、多数の圧電性素子を、類似の効果を達成するように連続的に使うことができる。
【0046】
模範的な実施形態に対して、本発明の範囲を逸脱することなく、対応する例示を参照して上記で記載したように種々の修正をなすことができる。従って、上述の記載内容に含まれ、また添付の図面において示されたすべての内容が、限定ではなくむしろ例示として解釈すべきである、ということが意図される。従って、本発明の広さおよび範囲は、上記の模範的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではなく、ここに添付された特許請求の範囲の各請求項、およびそれらの均等物の通りにのみ定義されるべきである。
【符号の説明】
【0047】
2 キャップ
3 アパーチャ
4 音源
5 トランスデューサ
7 ベース
8 本体
9 モード変換器
10 モード変換器アセンブリ
11 リップ
12 内部壁
13 外部壁
14 内側部分
15 外側部分
16 基端部
17 先端部
18 コントローラ
19 信号ジェネレータ
100 モード変換器アセンブリ
110 トランスデューサ
112 モード変換器
114 本体
200 モード変換器アセンブリ
210 圧電性素子
212 モード変換器
214 本体
300 モード変換器アセンブリ
310 圧電性素子
312 モード変換器
400 モード変換器アセンブリ
410 トランスデューサ
420 波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を治癒するためのモード変換器アセンブリであって、
前記モード変換器アセンブリは、
a.組織表面から組織内へ音波を送信するよう適合されたトランスデューサと、
b.組織に送信された音波が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、組織表面上でトランスデューサを収容するよう適合された本体と、
を有し、
前記音波が、剪断波および縦波として伝播され、組織の損傷した部位を処置しており、 組織内に送信される音波の総和が組織表面に対して傾斜した角度で送信されるように、音波が時間的に偏移されることを特徴とするモード変換器アセンブリ。
【請求項2】
前記トランスデューサは圧電性素子であることを特徴とする請求項1に記載のモード変換器アセンブリ。
【請求項3】
柔らかい組織の音速に類似した音速を持った材料から作られたモード変換器であって、前記トランスデューサと組織表面の間の角度が傾斜した角度となるように、本体内で、かつ前記トランスデューサと柔らかい組織の間に配置されるモード変換器を、さらに有することを特徴とする請求項1または2に記載のモード変換器アセンブリ。
【請求項4】
トランスデューサに組織表面の方へのバイアスをかけるよう構成された音源をさらに有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のモード変換器アセンブリ。
【請求項5】
前記本体に取り付けるよう構成されたキャップをさらに有し、前記音源は第1の端部および第2の端部を有し、前記第1の端部は前記キャップに取り付けられ、前記第2の端部はトランスデューサに取り付けられる、ことを特徴とする請求項4に記載のモード変換器アセンブリ。
【請求項6】
前記トランスデューサは、組織表面に沿って方向付けられた複数の音波生成素子を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のモード変換器アセンブリ。
【請求項7】
前記トランスデューサで生成された音波を制御するよう構成された信号ジェネレータを、さらに有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のモード変換器アセンブリ。
【請求項8】
傾斜した角度は、直角より、約18度から71度までの範囲にあることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のモード変換器アセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−232150(P2012−232150A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−159398(P2012−159398)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2009−504500(P2009−504500)の分割
【原出願日】平成19年4月7日(2007.4.7)
【出願人】(397071355)スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド (186)
【Fターム(参考)】