説明

経皮吸収促進剤及びそれを用いた経皮吸収製剤

【課題】 本発明は、経皮吸収促進効果が優れ、皮膚に対する刺激性が低く、粘着剤との相溶性が優れた経皮吸収促進剤及びそれを用いた経皮吸収製剤を提供する。
【解決手段】 一般式(1)で表されるジエチレンオキサイドアルキルエーテルからなることを特徴とする経皮吸収促進剤。
HO(CHCHO)R ・・・(1)
(式中、Rは炭素数16〜18のアルキル基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経皮吸収促進剤及びそれを用いた経皮吸収製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、体の局部に薬物を投与するために、経皮吸収製剤が盛んに利用されている。経皮吸収製剤としては、テープ製剤、バッチ製剤、パップ製剤、軟膏剤、クリーム製剤、口腔剤、点眼剤等が挙げられ、局部に貼付又は塗布することにより、薬物を皮膚や粘膜を透過して投与している。
【0003】
しかし、このような経皮吸収製剤を用いて薬物を投与しても、薬物が皮膚や粘膜を透過しにくく生体利用率が低くなる欠点があった。特に、皮膚表面には角質層が存在し、この角質層は体内へ異物の侵入を抑止するバリアー機能を有しているので、薬理効果を発揮するのに充分な量の薬物の吸収が防止される欠点があった。
【0004】
角質層のバリアー機能を弱めて充分な量の薬物を吸収させるために、経皮吸収促進剤の研究が盛んになされている。経皮吸収促進剤としては、例えば、サリチル酸、尿素、ジメチルスルホキシド、プロピレングルコール、グリセリン、ピロリドンカルボン酸ソーダ、脂肪酸ジアルキロールアミド(例えば、特許文献1参照。)、チオグリコール酸カルシウム、チオグリコール酸カルシウムとポリオキシエチレンラウリルエーテルの混合物(例えば、特許文献2参照。)等が挙げられる。
【特許文献1】特公平5−33929号公報
【特許文献2】特公平5−21894号公報
【0005】
しかしながら、上記経皮吸収促進剤は皮膚に対する刺激性を有する、粘着剤との相溶性が小さい等の欠点があり、且つ、経皮吸収性の促進効果の小さいものであった。又、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを単独で経皮吸収促進剤として使用する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献3】米国特許第5413776号公報
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、一般式(3)で表される化合物である。
R−O−(CHCHH ・・・(3)
又、「式中、nは2〜50、好ましくは2〜20である。Rは炭素数1〜20のアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イソプロピル、セチル、t−ブチル基」と記載され、具体的には、実施例7に「ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル」が記載されているにすぎない。
【0007】
本発明者は、一方の水酸基のみが高級アルコールでエーテル化されたポリオキシエチレンアルキルエーテルは、皮膚に対する刺激性が低く、粘着剤との相溶性が優れている点に注目し、鋭意検討したころ、重合度2のオキシエチレンの一方の水酸基のみが炭素数16〜18の高級アルコールでエーテル化されたジオキシエチレンアルキルエーテルが優れた経皮吸収促進効果を有することを発見し、本発明を完成した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、経皮吸収促進効果が優れ、皮膚に対する刺激性が低く、粘着剤との相溶性が優れた経皮吸収促進剤及びそれを用いた経皮吸収製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の経皮吸収促進剤は、一般式(1)で表されるジエチレンオキサイドアルキルエーテルからなることを特徴とする。
HO(CHCHO)R ・・・(1)
(式中、Rは炭素数16〜18のアルキル基を示す。)
【0010】
本発明で使用されるジエチレンオキサイドアルキルエーテルは、ジエチレンオキサイドの一方の水酸基を炭素数16〜18の高級アルコールでエーテル化したものであり、エーテル化方法は特に限定されず、例えば、ウイリアムソン合成により容易に得られる。
【0011】
尚、ウイリアムソン合成でエーテル化するには、例えば、ジエチレンオキサイドにその水酸基の0.5当量のナトリウムハイドライドを添加し、片末端水酸基をナトリウム化した後、ジエチレンオキサイドの1/2当量の塩化アルキルを添加し、テトラヒドロフラン等の溶媒中で例えば70℃に加熱し24時間反応する。
【0012】
上記ジエチレンオキサイドアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレンオキサイドセチルモノエーテル、ジエチレンオキサイドステアリルモノエーテル、ジエチレンオキサイドオレイルモノエーテル等が挙げられ、特に経皮吸収促進効果の優れたジエチレンオキサイドセチルモノエーテルが好ましい。
【0013】
本発明の経皮吸収促進剤は、テープ製剤、バッチ製剤、パップ製剤、軟膏剤、クリーム製剤、口腔剤、点眼剤、座薬等の経皮吸収製剤に添加することにより、薬物の経皮吸収効果を促進することができる。特に、支持シートの一面に、薬物を含む薬物含有層が積層されている経皮吸収製剤の薬物含有層に本発明の経皮吸収促進剤添加することにより、経皮吸収製剤の薬物の経皮吸収効果を促進することができるので好ましい。
【0014】
請求項3記載の経皮吸収製剤は、支持シートの一面に、マトリックス材料、薬物及び請求項1又は2記載の経皮吸収促進剤よりなる薬物含有層が積層されていることを特徴とする
【0015】
上記支持シートとしては、特に限定されず、従来からテープ製剤、バッチ製剤、パップ製剤等の支持シートとして一般に使用されているシートが好ましく、例えば、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、SIS樹脂、SEBS樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アルミニウム等のシートが挙げられる。又、これらのシートは、上記材料の繊維の織布又は不織布であってもよいし、これらのシート、織布及び不織布の積層シートであってもよい。
【0016】
上記薬物は経皮・経粘膜投与により生体膜を透過しうるものであればよく、例えば、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、抗腫瘍剤、抗嘔吐剤、局所麻酔剤、ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、抗凝血剤、利尿剤、向精神剤、睡眠薬、抗生物質等が挙げられる。
【0017】
上記非ステロイド系抗炎症剤としては、例えば、サリチル酸、アスピリン、アセトアミノフェン、ジクロフェナックナトリウム、イブプロフェン、スリンダック、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルフェナム酸、イブフェナック、フェンブフェン、アルクロフェナック、フェルビナク、フェニルブタゾン、メヘナム酸、インドメタシン、ベンダザック、ピロキシカム、メロキシカム、フルルビブロフェン等が挙げられる。
【0018】
上記ステロイド系抗炎症剤としては、例えば、ヒドロコルチゾン、ブレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、フルドキシコルチド、メチルブレドニゾロン、酢酸ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、酢酸ベタメサゾン、吉草酸ジフルコルトロン、プロピオン酸クロベタゾール、フルオシノニド等が挙げられる。
【0019】
上記血管拡張剤としては、例えば、ジルチアゼム、ベラパミル、四硝酸ペンタエリスリートル、ジピリダモール、硝酸イソソルビド等が挙げられる。
【0020】
上記抗不整脈剤としては、例えば、プロパノロール、ピンドロール、キニジン、アジマリン、プラマリン、アルプレノロール等が挙げられる。上記抗高血圧剤としては、例えば、クロニジン等が挙げられる。
【0021】
上記抗腫瘍剤としては、例えば、テガフール、5−フルオロウラシル、1−(2−テトラヒドロフリル)−5−フルオロラウシル、マイトマイシンC等が挙げられる。上記抗嘔吐剤としては、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン等が挙げられる。上記局所麻酔剤としては、例えば、ベンゾカイン、ブロカイン、リドカイン、テトラカイン等が挙げられる。
【0022】
上記ホルモン剤としては、例えば、エストロゲン、エストラジオール、テストステロン、ブロゲステロンなどのステロイドホルモン類、インスリンなどのペプチドホルモン類、ブロスタグランジン等が挙げられる。上記抗ヒスタミン剤としては、例えば、シクロヘプタジンハイドロクロライド、ジフェンヒドラミン、フェンベンザミン等が挙げられる。
【0023】
上記抗凝血剤としては、例えば、ヘパリン等が挙げられ、利尿剤としては、例えば、サイアザイド等が挙げられ、向精神剤としては、例えば、スコボラミン、クロフルベローウ等が挙げられ、睡眠薬としては、例えば、フェノバルビタール、アモバルビターノ等が挙げられ、抗生物質としては、例えば、テトラサイクリン、クロラムフェニコール等が挙げられる。
【0024】
上記薬物の添加量は、薬物の種類、使用目的により適宜決定されればよいが、一般にマトリックス材料100重量部に対し0.001〜30重量部である。
【0025】
上記経皮吸収促進剤の添加量は、特に限定されないが、添加量が少なくなると経皮吸収促進効果がすくなくなる傾向があり、多くなるとマトリックス材料の性能を低下させたり、にじみ出る等の不具合が発生しやすくなるという傾向があるので、一般にマトリックス材料100重量部に対し1〜150重量部であり、好ましくは5〜120重量部である。一般に粘着剤100重量部に対し上記経皮吸収促進剤の添加量が50重量部よりも多い場合、粘着剤組成物の凝集力が弱くなり、皮膚への貼付時に組成物の皮膚への糊残りが発生しやすい。それを防ぎ、適度の凝集力を持たせるためにアクリル系粘着剤の場合にはイソシアネ−ト架橋、金属架橋によりアクリル系粘着剤高分子を後架橋させることが有効である。
【0026】
上記マトリックス材料は経皮吸収製剤の種類に異なるが、テープ製剤やバッチ製剤の場合は粘着剤であり、テープ製剤の場合は皮膚に対して粘着性が優れ、糊残りなく剥離できることが必要なので、アクリル系粘着剤及びゴム系粘着剤が好適に使用される。
【0027】
上記アクリル系粘着剤としては、炭素数4〜18の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸のエステルである(メタ)アクリル酸アルキルエステルの(共)重合体及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルと官能性モノマーとの(共)重合体が好適に使用される。
【0028】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0029】
上記官能性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸ブチル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノアクリレート、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0030】
更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な重合性モノマーが共重合されてもよく、重合性モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブタジエン等が挙げられる。尚、(共)重合体の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分は50重量%以上であるのが好ましい。
【0031】
上記ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレンーブタジエン共重合体、スチレンーブタジエンースチレン共重合体、スチレンーイソプレン共重合体、スチレンーイソプレンースチレン共重合体、ウレタンゴム等のゴムを主体とする従来公知のゴム系粘着剤が使用できる。
【0032】
上記粘着剤には、必要に応じて、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、クマロンーインデン系樹脂、石油系樹脂、テルペンーフェノール系樹脂などの粘着付与剤、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン、鉱油ラノリン、液状ポリアクリレートなどの可塑剤、充填剤、老化防止剤等が添加されてもよい。
【0033】
テープ製剤は、上記粘着剤、薬物及び経皮吸収促進剤を混合し、支持シートの一面に積層して薬物含有層を形成することにより得られる。積層方法は、従来公知の任意の方法が採用されてよく、例えば、粘着剤が溶液やエマルションの場合は粘着剤に薬物及び経皮吸収促進剤を混合し、支持シートに塗布乾燥する方法が挙げられ、粘着剤がホットメルト型の場合は粘着剤に薬物及び経皮吸収促進剤を混合し、支持シートにホットメルト塗工する方法が挙げられ、粘着剤が光硬化型、熱硬化型、湿気硬化型等の場合は粘着剤に薬物及び経皮吸収促進剤を混合し、支持シートに塗工した後、光照射、加熱、湿気の付与等の処理をする方法が挙げられる。
【0034】
パップ製剤の場合は、上記マトリックス材料はパップ剤である。パップ剤は、一般に水溶性樹脂と水により形成される。
【0035】
上記水溶性樹脂としては、例えば、アラビアガム、トラガンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、エコーガム、カラヤガム、寒天、でんぷん、カラゲナン、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコール、デキストラン、デキストリン、アミロース、ゼラチン、コラーゲン、プルラン、ペクチン、アミロペクチン、アミロペクチンセミグリコール酸ナトリウム、キチン、アルブミン、カゼイン、ポリグルタミン酸などの天然ポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキメチルシスターチ、アルカリ金属カルボキシメチルセルロース、アルカリ金属セルロース硫酸塩、セルロースアセテートフタレート、デンプンーアクリル酸グラフト共重合体、架橋ゼラチン、無水フタル酸変性ゼラチン、コハク酸変性ゼラチンなどの半合成ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、メチルビニルエステル、ポリアクリル酸塩(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、カルボキシビニルポリマー、ビニルピロリドンーアクリル酸エチル共重合体、ビニルピロリドンースチレン共重合体、ビニルピロリドンー酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニルー(メタ)アクリル酸共重合体、酢酸ビニルークロトン酸共重合体、ポリビニルスルホン酸、ポリイタコン酸、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、スチレンーマレイン酸無水物共重合体、エチレンーマレイン酸無水物共重合体、アクリルアミドーアクリル酸共重合体などの合成ポリマーが挙げられる。
【0036】
パップ剤に含まれる水の量は、特に限定されないが、水の含有量が少ないと薬物の吸収が遅くなり、パップ製剤を皮膚に貼付した際に水の蒸発による冷感効果が低下する傾向があり、逆に多くなると、水溶性ポリマーの流動性が大きくなり、製剤の形状を保持するのが困難になる傾向があるので、一般に1〜90重量%であり、好ましくは5〜85重量%である。
【0037】
上記パップ剤には、必要に応じて、アクリル系樹脂、ゴム、シリコン系樹脂などの樹脂、多価アルコール(例えば、グリセリン、ポリプロピレングリコール)などの保湿剤、カオリン、ベントナイト、亜鉛華、二酸化チタンなどの無機充填剤、粘度調節剤、老化防止剤等が添加されてもよい。
【0038】
パップ製剤は、上記水溶性樹脂、薬物及び経皮吸収促進剤を混合し、支持シートの一面に積層して薬物含有層を形成することにより得られる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の経皮吸収促進剤の構成は上述の通りであり、一般式(1)で表されるジリエチレンオキサイドアルキルエーテルからなるので経皮吸収促進効果が優れ、皮膚に対する刺激性が低く、粘着剤との相溶性が優れている。従って、この経皮吸収促進剤を用いた経皮吸収製剤、特に、テープ製剤及びパップ製剤は経皮吸収促進効果が優れ、皮膚に対する刺激性が低いので医療用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
スチレンーイソプレンースチレン共重合体(クレイトンポリマージャパン社製、商品名「クレイトンD−1107」)100重量部、粘着付与剤(荒川化学社製、商品名「アルコンP−100」)100重量部及びパラフィン50重量部をシクロヘキサン500重量部に溶解してゴム系粘着剤を得た。
【0042】
得られたゴム系粘着剤に、ゴム系粘着剤の固形分100重量部に対しケトプロフェン5重量部及び下記一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテル15重量部を添加溶解して薬物含有ゴム系粘着剤を得た。得られた薬物含有ゴム系粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルムの一面にナイフコーターにより塗布し、90℃で15分間乾燥して厚さ100μmの薬物含有層を有するテープ製剤を得た。
【0043】
HO(CHCHO)R ・・・(2)
使用したポリエチレンオキサイドアルキルエーテルは上記一般式(2)で表され、各実験で使用したポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのn及びRは下記の通りである。
実験1−1 n=2、R=16(セチル基)
実験1−2 n=2、R=12(ラウリル基)
実験1−3 n=4、R=16(セチル基)
【0044】
In vitro 経皮吸収試験
拡散断面積3.14cmのFranz型拡散セルを用いた。ウイスター系雄性ラット腹部皮膚を剃毛した透過膜の角質側にテープ製剤を貼付し、レセプター液として生理食塩水とポリエチレングリコール600の混合液(体積比80:20)を用いて試験した。24時間後にレセプター液を採取し、ラット腹部皮膚を拡散し、レセプター液に移行したケトプロフェンの濃度(以下、「24時間透過量」という。)を高速液体クロマトグラフで測定した。
【0045】
高速液体クロマトグラフのカラムはODS型逆相分配カラムであり、移動相は燐酸バッファー(pH3.0)とアセトニトリルの混合液(体積比50:50)であった。又、250nmの紫外光で検出した。
【0046】
得られた結果を表1に示した。表1には一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのnとRを横軸及び縦軸とし、レセプター液に移行したケトプロフェンの24時間透過量を示した。尚、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルを添加しなかった場合のケトプロフェンの24時間透過量は250ug/cmであった。
【0047】
【表1】

【実施例2】
【0048】
500mlの反応容器に、酢酸エチル200重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル100重量部、アクリル酸10重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながら70℃で15時間重合してアクリル系粘着剤を得た。
【0049】
得られたアクリル系粘着剤に、アクリル系粘着剤の固形分100重量部に対しメロキシカム5重量部、及び前記一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテル20重量部を添加溶解して薬物含有アクリル系粘着剤を得た。得られた薬物含有アクリル系粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルムの一面にナイフコーターにより塗布し、90℃で15分間乾燥して厚さ100μmの薬物含有層を有するテープ製剤を得た。
【0050】
各実験で使用したポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのn及びRは下記の通りである。
実験2−1 n=2、R=16(セチル基)
実験2−2 n=2、R=18(ステアリル基)
実験2−3 n=1、R=12(ラウリル基)
実験2−4 n=2、R=12(ラウリル基)
実験2−5 n=3、R=13(トリデシル基)
実験2−6 n=1、R=18(ステアリル基)
実験2−7 n=2、R=20(エイコシル基)
【0051】
実施例1で行ったと同様にしてIn vitro 経皮吸収試験を行い、レセプター液に移行したメロキシカムの濃度を高速液体クロマトグラフで測定した。高速液体クロマトグラフの移動相は燐酸バッファー(pH2.0)とアセトニトリルの混合液(体積比50:50)であり、355nmの紫外光で検出した。
【0052】
得られた結果を表2に示した。表2には一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのnとRを横軸及び縦軸とし、レセプター液に移行したメロキシカムの24時間透過量を示した。
【0053】
尚、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルを添加しなかった場合のメロキシカムの24時間透過量は14ug/cmであり、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルとラウリル酸ジエタノールアミドを添加しなかった場合のメロキシカムの24時間透過量は9ug/cmであった。
【0054】
【表2】

【実施例3】
【0055】
ポリアクリル酸10重量部、カルボキシメチルセルロースソーダ塩1重量部、ポリビニルピロリドン3重量部、カオリン2重量部、グリセリン10重量部及び精製水60重量部を混合してペースト状のパップ基剤を得た。
【0056】
得られたパップ基剤100重量部、フェルビナク0.5重量部、水酸化アルミニウム0.5重量部、及び前記一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテル5重量部を混合してパップ剤を得た。得られたパップ剤をポリエチレンテレフタレートフィルムの一面にナイフコーターにより塗布し、厚さ200μmの薬物含有層を有するパップ製剤を得た。
【0057】
各実験で使用したポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのn及びRは下記の通りである。
実験3−1 n=2、R=16(セチル基)
実験3−2 n=2、R=18(ステアリル基)
実験3−3 n=1、R=12(ラウリル基)
実験3−4 n=2、R=12(ラウリル基)
実験3−5 n=3、R=13(トリデシル基)
実験3−6 n=1、R=18(ステアリル基)
実験3−7 n=2、R=20(エイコシル基)
【0058】
実施例1で行ったと同様にしてIn vitro 経皮吸収試験を行い、レセプター液に移行したフェルビナクの濃度を高速液体クロマトグラフで測定した。得られた結果を表3に示した。表3には一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのnとRを横軸及び縦軸とし、レセプター液に移行したフェルビナクの24時間透過量を示した。尚、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルを添加しなかった場合のメロキシカムの24時間透過量は10ug/cmであった。
【0059】
【表3】

【実施例4】
【0060】
500mlの反応容器に、酢酸エチル200重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル50重量部、アクリル酸ブチル30重量部、ビニルピロリドン20重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部を仕込み、窒素置換した後、攪拌しながら70℃で15時間重合してアクリル系粘着剤を得た。
【0061】
得られたアクリル系粘着剤に、アクリル系粘着剤の固形分100重量部に対しテガフール7重量部及び前記一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテル5重量部、及びラウリル酸ジエタノールアミド3重量部、を添加溶解して薬物含有アクリル系粘着剤を得た。得られた薬物含有アクリル系粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルムの一面にナイフコーターにより塗布し、90℃で15分間乾燥して厚さ100μmの薬物含有層を有するテープ製剤を得た。
【0062】
各実験で使用したポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのn及びRは下記の通りである。
実験4−1 n=2、R=16(セチル基)
実験4−2 n=2、R=18(ステアリル基)
実験4−3 n=1、R=12(ラウリル基)
実験4−4 n=5、R=12(ラウリル基)
実験4−5 n=3、R=13(トリデシル基)
実験4−6 n=2、R=20(エイコシル基)
【0063】
実施例1で行ったと同様にしてIn vitro 経皮吸収試験を行い、レセプター液に移行したテガフールの濃度を高速液体クロマトグラフで測定した。高速液体クロマトグラフの移動相は燐酸バッファー(pH3.0)とアセトニトリルの混合液(体積比94:6)であり、270nmの紫外光で検出した。
【0064】
得られた結果を表4に示した。表4には一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのnとRを横軸及び縦軸とし、レセプター液に移行したテガフールの24時間透過量を示した。尚、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルを添加しなかった場合のテガフールの24時間透過量は29ug/cmであった。
【0065】
【表4】

【実施例5】
アクリル系粘着剤として実施例2と同一の粘着剤を用いた。
【0066】
アクリル系粘着剤の固形分100重量部に対しオンダンセトロン8重量部及び前記一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテル100重量部、ポリイソシアネート0.3重量部を添加溶解して薬物含有アクリル系粘着剤溶液を得た。得られた薬物含有アクリル系粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルムの一面にナイフコーターにより塗布し、90℃で15分間乾燥して厚さ100μmの薬物含有層を有する架橋された粘着剤を基剤とするテープ製剤を得た。
【0067】
各実験で使用したポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのn及びRは下記の通りである。
実験5−1 n=2、R=16(セチル基)
実験5−2 n=2、R=18(オレイル基)
実験5−3 n=1、R=12(ラウリル基)
実験5−4 n=3、R=13(トリデシル基)
実験5−5 n=2、R=20(エイコシル基)
【0068】
実施例1で行ったと同様にしてIn vitro 経皮吸収試験を行い、レセプター液に移行したオンダンセトロンの濃度を高速液体クロマトグラフで測定した。高速液体クロマトグラフの移動相は燐酸バッファー(pH3.0)とアセトニトリルの混合液(体積比25:75)であり、306nmの紫外光で検出した。
【0069】
得られた結果を表5に示した。表5には一般式(2)で表されるポリエチレンオキサイドアルキルエーテルのnとRを横軸及び縦軸とし、レセプター液に移行したオンダンセトロンの24時間透過量を示した。尚、ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルを添加しなかった場合のオンダンセトロンの24時間透過量は15ug/cmであった。
【0070】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるジエチレンオキサイドアルキルエーテルからなることを特徴とする経皮吸収促進剤。
HO(CHCHO)R ・・・(1)
(式中、Rは炭素数16〜18のアルキル基を示す。)
【請求項2】
ポリエチレンオキサイドアルキルエーテルが、ジエチレンオキサイドセチルモノエーテルであることを特徴とする請求項1記載の経皮吸収促進剤。
【請求項3】
支持シートの一面に、マトリックス材料、薬物及び請求項1又は2記載の経皮吸収促進剤よりなる薬物含有層が積層されていることを特徴とする経皮吸収製剤。
【請求項4】
経皮吸収促進剤の添加量がマトリックス材料100重量部に対し1〜150重量部であることを特徴とする請求項3記載の経皮吸収製剤。
【請求項5】
マトリックス材料がアクリル系粘着剤又はゴム系粘着剤よりなるテープ製剤であることを特徴とする請求項3又は4記載の経皮吸収製剤。
【請求項6】
マトリックス材料が水溶性ポリマーと水よりなるパップ製剤であることを特徴とする請求項3又は4記載の経皮吸収製剤。