説明

経皮吸収型製剤用基材シート及び経皮吸収型製剤

【課題】
ポリエチレンテレフタレートフィルム等のフィルムとアクリル系等の粘着剤及び脂肪酸等を含有してなる粘着剤層との優れた密着性を有し、経皮吸収型製剤に適用した場合に薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を好適に制御することができる経皮吸収型製剤用基材シート、及び、これを用いてなる経皮吸収型製剤を提供する。
【解決手段】
フィルムの片面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるプライマー層を有する経皮吸収型製剤用基材シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収型製剤用基材シート及び経皮吸収型製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薬物を体内に投与する手段として、注射剤、経口剤、軟膏剤等の他に、薬物投与の容易性、薬物量のコントロールの容易性、取り扱い性、副作用発現した際の投与中止の容易性等の種々の利点から、皮膚面に貼付使用する経皮吸収型製剤として貼付製剤が種々提案されており、例えば、ニトログリセリンやイソソルビドジニトレート等の狭心症予防薬、各種ステロイド薬、非ステロイド薬、麻酔薬、抗高血圧薬等を経皮吸収用薬物として粘着剤中に含有させた貼付製剤が開発されている。
【0003】
このような経皮吸収型の貼付製剤は、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体系、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等の合成ゴム系、アクリル系、シリコン系等の粘着剤に、各種経皮吸収用薬物、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、安定剤等を混合したものであり、皮膚面に貼付することによって、薬物が皮膚面を通して持続的に体内に吸収され、優れた薬理作用を発揮させることができる。
【0004】
しかし、これらの貼付製剤のなかでも、アクリル系粘着剤及び脂肪酸エステルを含有する粘着剤層を有するものを使用したものは、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のフィルムヘの密着性が悪いという問題があるため、改良が進められている。
【0005】
特許文献1に、ツロブテロール及びアクリル系粘着剤を含有する膏体層が支持体に積層されてなる経皮吸収型製剤が提案されている。ここでは、アクリル系粘着剤及び脂肪酸を使用した経皮吸収型製剤として、アクリル系粘着剤とミリスチン酸イソプロピルにポリエステル系不織布とポリエステルフィルムの積層フィルムを貼り合わせたものが開示されている。しかし、この製剤は、不織布によって粘着剤を物理的に絡ませて密着性を向上させたものであるため、製造工程が複雑となり、コストが高くなってしまうこと、等の問題点がある。
【0006】
特許文献2には、ポリエステル製不織布と、ポリエステル製フィルムとの積層構造の支持体のポリエステル製フィルム面に、皮膚貼付用のアクリル粘着剤層を積層してなる医療用貼付材が開示されており、粘着剤層中に脂肪酸エステルを含有させることができることが記載されている。しかし、これも不織布を使用するものであるため、同様の問題が存在する。
【0007】
また、経皮吸収型製剤のなかでも、狭心症予防薬等の全身性製剤は、薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性をコントロールする必要があるが、例えば、フィルム、プライマー層及び粘着剤層が積層されてなる製剤を使用する場合に、粘着剤中の薬物がプライマー層中に浸透してしまうと、薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を制御することが困難となってしまう。
【0008】
従って、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のフィルムとアクリル系粘着剤及び脂肪酸を含有する粘着剤層との優れた密着性を維持しつつ、薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を好適に制御することができる経皮吸収型製剤用基材シート及び経皮吸収型製剤を開発することが望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開平11−228395号公報
【特許文献2】特開平2001−29383公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のフィルムとアクリル系等の粘着剤及び脂肪酸を含有してなる粘着剤層との優れた密着性を有し、経皮吸収型製剤に適用した場合に薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を好適に制御することができる経皮吸収型製剤用基材シート、及び、これを用いてなる経皮吸収型製剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フィルムの片面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるプライマー層を有するものであることを特徴とする経皮吸収型製剤用基材シートである。
【0012】
上記経皮吸収型製剤用基材シートにおいて、上記フィルムは、ポリエステルフィルムであることが好ましい。
上記経皮吸収型製剤用基材シートにおいて、上記ポリエステルフィルムは、厚さが2〜25μmであることが好ましい。
【0013】
上記経皮吸収型製剤用基材シートにおいて、上記フィルムは、上記ポリエステルフィルムと、ポリオレフィンフィルム、軟質塩化ビニル樹脂フィルム、織布、編布及び不織布からなる群より選択される少なくとも1種との積層フィルムであり、上記プライマー層は、上記積層フィルムのポリエステルフィルムの表面に形成されているものであることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、上記経皮吸収型製剤用基材シートのプライマー層上に、粘着剤層を有することを特徴とする経皮吸収型製剤でもある。
【0015】
上記経皮吸収型製剤において、上記粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有するものであることが好ましい。
上記経皮吸収型製剤において、上記粘着剤層は、脂肪酸エステルを含有するものであることが好ましい。
上記経皮吸収型製剤において、上記粘着剤層は、薬物を含有するものであることが好ましい。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の経皮吸収型製剤用基材シートは、フィルムの片面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるプライマー層を有するものであるため、粘着剤層との密着性に優れたものである。特に、アクリル系粘着剤及び脂肪酸エステルを含有する粘着剤層を使用する場合には、従来ではフィルムと粘着剤層との密着性が悪かったため、不織布等を用いて密着性を向上させていたが、上記プライマー層を形成した経皮吸収型製剤用基材シートを用いると、密着性を向上させることができる。従って、低コストである製造方法により充分な密着性を付与することができる。
【0017】
本発明の経皮吸収型製剤用基材シートにおいて、プライマーの塗工量を制御してプライマー層の乾燥膜厚を比較的薄くすることにより、粘着剤層からプライマー層に薬物が浸透する場合であっても、浸透量を極少量に抑えることができる。このため、薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を高度に制御することができる。
【0018】
上記プライマー層は、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるものであれば特に限定されないが、例えば、高分子末端に水酸基を有する主剤(ポリエステルポリウレタンポリオール)とイソシアネート基を有する硬化剤(ポリイソシアネート)とからなる2液混合型接着剤を上記フィルムの片面に塗工し、水酸基とイソシアネート基との反応によりウレタン結合を形成し硬化させることによって得ることができる。
【0019】
上記2液混合型接着剤の主剤中の成分として使用されるポリエステルポリウレタンポリオールは、ポリエステルポリオールをジイソシアネートで付加伸長したものである。
上記ポリエステルポリオールは、多塩基酸と多価アルコールとを反応して得られるものである。
【0020】
上記多塩基酸としては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p′−ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物又はエステル形成性誘導体;p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体、ダイマー酸等の多塩基酸を挙げることができる。上記ダイマー酸は、オレイン酸、リノール酸等のC18の不飽和脂肪酸のディールスアルダー型2量化反応による生成物である。上記ダイマー酸の市販品としては、例えば、不飽和結合に水素を添加し飽和させたもの等を挙げることができる。代表的なものは、C18のモノカルボン酸0〜5質量%、C36ダイマー酸70〜98%及びC54のトリマー酸0〜30質量%からなるものを挙げることができる。これらの多塩基酸は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記多価アルコールとしては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、3−メチル−−10−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等のグリコール類;プロピオラクトン、ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の活性水素原子を2個有する化合物の1種又は2種以上を開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種又は2種以上を常法により付加重合したポリエーテル類等の多価アルコール成分を挙げることができる。これらの多価アルコールは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記ジイソシアネートとしては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族ジイソシアネート(ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、低分子グリコール類と上記芳香族ジイソシアネートとのプレポリマー等);脂肪族ジイソシアネート(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、エチレングリコール、プロピレングリコール等の低分子グリコール類と上記脂肪族ジイソシアネートとのプレポリマー等);脂環族ジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、水添化4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルー4,4′−ジイソシアネート、低分子グリコール類と上記脂環族ジイソシアネートとのプレポリマー等)を挙げることができる。これらのジイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ポリエステルポリウレタンポリオールのなかでも、ポリエステルフィルム(特に、ポリエチレンテレフタレートフィルム)とアクリル系粘着剤及び脂肪酸エステルを含有する粘着剤層との密着性をより向上させることができる点から、構成成分として、ポリブチレンアジペートを含むことが好ましい。また、芳香族系ポリオール以外のアルコール成分を含むことが好ましい。更に、脂肪族ジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート以外のイソシアネート成分を含むことが好ましい。
【0023】
上記ポリエステルポリウレタンポリオールは、数平均分子量(Mn)が40000〜80000であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)が80000〜120000であることが好ましい。更に、Mw/Mnが1.6〜2.0であることが好ましい。上記のようなMn、Mwを有する場合、本発明の効果を好適に得ることができる。なお、上記Mw、上記Mnは、GPCによって測定した値である。
【0024】
上記ポリエステルポリウレタンポリオールは、Tgが−10〜30℃であることが好ましい。−5〜20℃であることがより好ましい。これにより、接着剤としての初期接着性、常態接着性等を向上させることができる。上記TgはDMA(動的粘弾性測定器)を用いて周波数10Hzの加振条件において得られた値である。
【0025】
上記ポリエステルポリウレタンポリオールは、炭素環濃度が1.5〜3.5ミリモル/g、数平均分子量が500〜16000であることが好ましい。これにより、接着剤としての初期接着性、常態接着性等を向上させることができる。
【0026】
上記2液混合型接着剤の硬化剤中の成分として使用されるポリイソシアネートとしては特に限定されず、従来公知のものを使用することができ、例えば、上記ジイソシアネートとポリオールとのアダクト体、上記ジイソシアネートのイソシアヌレート体、ビューレット体、アロファネート体等を挙げることができる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記2液混合型接着剤は、多塩基酸無水物を含有するものであってもよい。これにより、接着剤の耐酸性を向上させることができる。
上記多塩基酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、コハク酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物、マレイン酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドラフタル酸無水物、テトラプロムフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノテトラカルボン酸無水物、2,3,6,7ーナフタリンテトラカルボン酸2無水物、5−(2,5−オキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記2液混合型接着剤は、接着促進剤を含有するものであってもよい。
上記接着促進剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、リン類及びリン酸の誘導体化合物等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、3−ウレイドプロピルトリメトシキシシラン、3−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノプロピル−トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等のアミノシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピル−メチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン等を挙げることができる。また、アミノ基の官能基濃度を増大させるために2官能のアミノ基を有するN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランも使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピル(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアルキルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、アセトアセチィックエステルチタネート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、ジ−イソプロポキシ−ビス−(2,4−ペンタジオネオート)−チタニウム、ジ−イソプロピル−ビス−トリエタノールアミノチタネート等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記リン酸類及びリン酸の誘導体化合物としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類;オルトリン酸モノメチル、オルトリン酸モノエチル、オルトリン酸モノプロピル、オルトリン酸モノブチル、オルトリン酸モノ−2−エチルヘキシル、オルトリン酸モノフェニル、亜リン酸モノメチル、亜リン酸モノエチル、亜リン酸モノプロピル、亜リン酸モノブチル、亜リン酸モノ−2−エチルヘキシル、亜リン酸モノフェニル、オルトリン酸ジ−2−エチルヘキシル、オルトリン酸ジフェニル亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジ−2−エチルヘキシル、亜リン酸ジフェニル等のモノ、ジエステル化物、縮合リン酸とアルコール類とからのモノ、ジエステル化物;上記リン酸類に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させたもの;脂肪族又は芳香族のジグリシジルエーテルに上記リン酸類を付加させて得られるエポキシリン酸エステル類等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記2液混合型接着剤は、溶剤型又は無溶剤型のいずれの形態であってもよい。溶剤型の場合、溶剤は主剤及び硬化剤の製造時に反応媒体として使用され、更に塗装時に希釈剤として使用される。使用できる溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等を挙げることができる。なかでも、酢酸エチルを使用することが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記2液混合型接着剤は、公知のコーターを用いて、上記フィルムに塗工することができる。塗工する方法としては、均一に塗工できるのであれば特に限定されず、例えば、グラビアコーターを用いる方法が好ましい。
【0034】
上記プライマー層は、乾燥膜厚が10μm以下であることが好ましい。10μm以下のプライマー層を形成すると、薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性をより高度に制御することができる。
【0035】
本発明の経皮吸収型製剤用基材シートでは、上記フィルムとしてポリエステルフィルムを使用した場合であっても、上記プライマー層を有するものであるため、優れた密着性を確保することができる。上記ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂のなかでも、ガスバリヤー性が優れている点から、芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。上記経皮吸収型製剤用基材シートと薬物を含有する粘着剤層とが積層されてなる経皮吸収型製剤において、上記芳香族ポリエステル樹脂を含んでなる基材シートを使用する場合には、粘着剤層中の薬物が基材シートを透過することが充分に抑制されるため、薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を制御し易くなる。
【0036】
上記芳香族ポリエステル樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記ポリエステルフィルムは、2軸延伸のフィルムを好適に用いることができる。
【0037】
上記経皮吸収型製剤用基材シートがポリエチレンテレフタレートフィルム及びプライマー層からなるものである場合(フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルム単層である場合)、フィルムの厚さは、25μm以下であることが好ましい。25μmを超えると、得られる基材シートが硬く、風合い、皮膚等の曲面への追従性が著しく悪くなるおそれがある。上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは、2〜12μmであることがより好ましく、6〜12μmであることが更に好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を使用する場合には、粘着剤中の薬物や可塑剤、粘着付与剤等の添加剤の基材フィルムヘの移行や、基材シートの膨潤を防止することができ、経皮投与薬の場合、安定した薬物投与の制御が可能になる。一般的に、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの市販品を使用することができ、例えば、NSC−12(帝人デュポン社製)等を使用することができる。
【0038】
上記経皮吸収型製剤用基材シートは、ポリエステルフィルムと他のフィルムとの積層フィルム及びプライマー層からなるものであってもよい。
上記他のフィルムとしては、例えば、ポリオレフィンフィルム、軟質塩化ビニル樹脂フィルム、織布、編布、不織布等を挙げることができる。
上記経皮吸収型製剤用基材シートが、上記積層フィルム及び上記プライマー層からなるものである場合、上記プライマー層は、上記積層フィルムのポリエステルフィルムの表面に形成されることになる。
【0039】
上記積層フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリオレフィンフィルム、軟質塩化ビニル樹脂フィルム、織布、編布、不織布等の他のフィルムとからなるものである場合、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは、10μm以下であることが好ましい。10μmを超えると、得られる基材シートが硬く、風合い、皮膚等の曲面への追従性が著しく悪くなるおそれがある。上記積層フィルムにおけるポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さは、1.8〜6μmであることがより好ましい。
【0040】
上記積層フィルムにおける他のフィルム(特に、ポリオレフィンフィルム)の厚さは、50〜200μmであることが好ましく、100〜130μmであることがより好ましい。ポリオレフィンフィルムを使用する場合、上記範囲内であると、皮膚への追従性、風合いに優れている。
【0041】
上記ポリオレフィンフィルムを構成するポリオレフィン樹脂は、数多く市場に出回っているものを使用することができ、リアクター系TPO、LLDPE、ゴム成分、ポリプロピレン、ポリエチレン等を必要に応じて配合することができる。
【0042】
上記経皮吸収型製剤用基材シートがポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリオレフィン樹脂を含んでなるポリオレフィンフィルムとからなるものである場合、必要に応じて着色層、印刷層、接着剤層、エンボス加工を含むものであってもよい。これにより、様々な意匠、機能を付加することができる。これらの層は、従来公知の方法によって形成することができる。
【0043】
また、上記ポリオレフィン樹脂は、酸化防止剤、滑剤、顔料等の一般に樹脂に添加される公知の添加剤を適量添加することもできる。
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリオレフィンフィルムからなる積層シートが、柔軟な風合いをだすためには、50%モジュラスは、45N/cm以下であることが好ましい。50%モジュラスの測定は、サンプルサイズ:19mm巾短冊、チャック間:100mm、標線間:50m、引張速度:50mm/minの条件で測定する。
【0044】
上記積層フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムと軟質塩化ビニル樹脂フィルムからなるものである場合、軟質塩化ビニル樹脂フィルムの平均重合度は、1700〜3000であることが好ましい。この範囲内であることにより、皮膚へのなじみや風合いがより優れることとなる。
【0045】
上記経皮吸収型製剤用基材シートに用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、破断強度(フィルム流れ方向、縦方向)が35kgf/mm以下、2%モジュラスが9.5kgf/mm以下であることが、基材シートにした際の風合い柔軟性から望ましい。従って、例えば、市販品の厚み3.5μm、破断強度29.4kgf/mm、2%モジュラス8.6kgf/mmであるポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に用いることができる。上記破断強度の測定は、JIS K 7113に準じて行う。上記2%モジュラスの測定は、JIS K 7113に準じて行う。
【0046】
上記経皮吸収型製剤用基材シートがポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリオレフィン樹脂を含んでなる積層シートを用いるものである場合、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、薬物、粘着剤中の添加剤のバリアー層として機能し、薬物や、パラフィンオイル等のオレフィンとの相溶性の良い添加剤が、オレフィン層まで拡散透過することが充分に抑制され、その結果、安定して薬物投与量を制御することができる。また、5μm以下のポリエチレンテレフタレートフィルム単層である場合にはフィルムに腰が無いため、経皮吸収型製剤用基材シートとして使用することが困難であるが、柔軟性のあるポリオレフィンフィルムを積層することにより、柔軟な風合いがある上に、ハンドリングが良くなり、誰でも簡単に貼ることができる。
【0047】
本発明の経皮吸収型製剤は、上述した経皮吸収型製剤用基材シートのプライマー層上に、粘着剤層を有するものである。上記経皮吸収型製剤は、上記プライマー層中のポリエステル系ポリウレタン樹脂が粘着剤層中の薬物に悪影響を及ぼさないものであるため、好適に用いることができるものである。
【0048】
上記粘着剤層中に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を挙げることができるが、本発明の経皮吸収型製剤用基材シートは、特にアクリル系粘着剤との密着性に優れたものである。
【0049】
上記アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含むものである。
上記アクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体又はこれらの共重合体等を挙げることができる。
【0050】
上記アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40質量%以上の割合で重合した重合体が好ましい。特に、一種又は二種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜98質量%と、一種又は二種以上の共重合性単量体2〜50質量%を共重合して得られる共重合体が好ましい。
【0051】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が2〜18、好ましくは4〜12の一級〜三級アルコールと、アクリル酸又はメタクリル酸とから得られるエステル等を挙げることができる。
【0052】
上記共重合性単量体としては、共重合反応に関与する不飽和二重結合を分子内に少なくとも一個有すると共に、カルボキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等〕やヒドロキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル等〕、スルホキシル基〔例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホプロピルエステル、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等〕、アミノ基〔例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルエステル等〕、アミド基〔例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等〕、アルコキシル基〔例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル等〕等の官能基を側鎖に有する単量体を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
これら以外に共重合できる単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニル−2−ピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記共重合性単量体は、一種又は二種以上を共重合することができるが、粘着特性としての接着性や凝集性、粘着剤層中に含有する経皮吸収用薬物の放出性等の点から、カルボキシル基含有単量体やヒドロキシル基含有単量体の少なくとも一種を必須成分として1〜50質量%、好ましくは3〜20質量%の範囲で共重合し、必要に応じて上記に例示の他の単量体、例えば、酢酸ビニルやN−ビニル−2−ピロリドン等のビニル系単量体を40質量%以下、好ましくは30質量%以下の範囲で共重合することが好ましい。
【0055】
上記アクリル系粘着剤の具体例としては、2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートと2−メトキシエチルアクリレートと酢酸ビニルとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとメチルメタクリレートと2−メトキシエチルアクリレートとからなる共重合体、2−エチルヘキシルアクリレートとビニルピロリドンとアクリル酸とからなる共重合体等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記粘着剤層には、グリコール類、油脂類、脂肪酸類、アルコール類、脂肪酸エステル類等の有機液状成分を含有させることができる。これらの成分を含有させることによって、皮膚接着性や経皮吸収用薬物の皮膚透過性の向上、皮膚刺激性の低減等の効果を得ることができる。
【0057】
上記グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等を挙げることができる。ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等の高分子量のものは、200〜1000の重量平均分子量のものが好適に使用することができる。
【0058】
上記油脂類としては、例えば、オリーブ油、ひまし油、スクワレン、オレンジオイル、ミネラルオイル等を挙げることができる。
上記脂肪酸類としては、例えば、モノカプリン酸、オレイン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸、リノール酸等の炭素数が6〜20のものを挙げることができる。
【0059】
上記脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸オクチル、オレイン酸エチル、フタル酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、乳酸エチル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ニコチン酸ラウリル、ピロリドンカルボン酸ラウリル等の炭素数が6〜20のものを挙げることができる。上記経皮吸収型製剤において、上記粘着剤層が脂肪酸エステル及びアクリル系粘着剤を含む場合、上記プライマー層がポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるものであるため、上記プライマー層と粘着剤層との密着性が優れたものとなる。これらの脂肪酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
上記アルコール類は、上記グリコール類を除くアルコールであって、炭素数1〜20のアルコールであり、例えば、エタノールやメタノール、オクチルアルコール、エトキシ化ステアリルアルコール、1,3−ブタンジオール、デシルアルコール、シネオール、オレイルアルコール等の炭素数1〜20のものを挙げることができる。
【0061】
上記有機液状成分を粘着剤層中に一種又は二種以上の配合することによって、経皮吸収用薬物の皮膚浸透性を向上させることができる。また、上記有機液状成分は粘着剤層と相溶することによって粘着剤層を可塑化するので、皮膚面に貼付した際に皮膚に対してソフト感を与えることができ、更に架橋処理を施すことにより適度な凝集力を付与し、使用後の剥離除去時に生じる皮膚刺激を低減することができる。
【0062】
上記有機液状成分の含有量は、上記粘着剤層中の粘着剤100質量部に対して、25〜200質量部であることが好ましい。25質量部未満であると、添加することによる効果が期待できないおそれがある。200質量部を超えると、粘着剤層が可塑化されすぎて凝集力が低下し、架橋処理を施しても皮膚面に糊残り現象を生じて剥離時に皮膚刺激性を増大させてしまうおそれがある。40〜180質量部であることがより好ましく、60〜180質量部であることが更に好ましい。
【0063】
上記経皮吸収型製剤において、粘着剤層に含有する経皮吸収用薬物としては、その治療目的に応じて任意に選択することができ、例えば、コルチコステロイド類、鎮痛消炎剤、催眠鎮静剤、精神安定剤、抗高血圧剤、降圧利尿剤、抗生物質、麻酔剤、抗菌剤、抗真菌剤、ビタミン剤、冠血管拡張剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、性ホルモン剤、抗鬱剤、、脳循環改善剤、制吐剤、抗腫瘍剤、生体医薬等の種類の薬物であって、皮膚面上に滞留するものではなく、皮下又は血中にまで浸透して局所作用又は全身作用を発揮する経皮吸収可能な薬物が使用できる。なかでも、上記経皮吸収型製剤は、薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を高度に制御することができるものであるため、全身作用を発揮する経皮吸収可能な薬物を含有する製剤として好適に使用することができる。これらの薬物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
上記経皮吸収用薬物の含有量は、薬物種や投与目的に応じて適宜設定することができるが、通常、粘着剤100質量部に対して、1〜40質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、治療や予防に有効な量の放出が期待できない場合がある。40質量部を超えると、増量による効果の増大が期待できないので経済的にも不利であるばかりか、皮膚に対する接着性にも劣る傾向を示すおそれがある。3〜30質量部であることがより好ましい。なお、薬物は、粘着剤中に全部が溶解している必要はなく、粘着剤への溶解度以上の薬物を含有させて未溶解状態の薬物が含有されていてもよいものである。この場合、未溶解状態の薬物は、経皮吸収製剤中で含有量にバラツキがないように均一分散していることが好ましい。
【0065】
上記粘着剤層は、粘着剤を酢酸エチル、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒に完全に溶解させ、得られた溶液を経皮吸収型製剤用基材シートの片面に塗布し、乾燥して形成させることができる。
【0066】
上記経皮吸収型製剤は、製造、運搬、保存中に粘着剤層が、器具、容器等に接着することを防止すること、製剤の劣化を防止することを目的として、皮膚面への貼付の直前までは粘着剤層の露出面を、離型フィルムにて被覆、保護することが好ましい。そして、使用時にこれを剥離して、粘着剤層の面を露出させ、皮膚に貼付して使用する。
【0067】
上記離型フィルムとしては、使用時に粘着剤層から容易に剥離されるものであれば特に限定されず、例えば、粘着剤層と接触する面にシリコーン樹脂、フッ素樹脂等を塗布することによって剥離処理が施されたポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム、上質紙、グラシン紙等の紙、上質紙又はグラシン紙等とポリオレフィンとのラミネートフィルム等を挙げることができる。上記離型フィルムの厚さは、通常12〜200μm、好ましくは50〜100μmである。
【0068】
本発明の経皮吸収型製剤用基材シートは、フィルムの片面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるプライマー層を有するものであるため、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のフィルムと粘着剤層との間に優れた密着性を付与することができるものである。特に、アクリル系粘着剤及び脂肪酸エステルを含む粘着剤層に対する密着性にも優れたものである。また、プライマー層を比較的薄い乾燥膜厚で形成することによって、経皮吸収型製剤に適用した場合に薬物の経皮吸収速度及び放出の持続性を好適に制御することができる。また、上記ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるプライマー層は、粘着剤層中の薬物に悪影響を及ぼすことを充分に抑制することができるものである。
【発明の効果】
【0069】
本発明の経皮吸収型製剤用基材シートは、上述した構成よりなるので、脂肪酸エステル及びアクリル系粘着剤を含んでなる粘着剤層との密着性に優れており、また、薬物、添加剤の移行、基材シートの膨潤を防止することができ、柔軟な風合いを持ち、皮膚等の曲面への追従性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0070】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また実施例中、「部」、「%」は特に断りのない限り「質量部」、「質量%」を意味する。
【0071】
実施例1
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン社製「NCS6」)6μmにポリエステル系ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学社製、「T−5265」)をグラビアロールにてコーティング(乾燥目付0.5g/m)し、支持体(経皮吸収型製剤用基材シート)とした。
得られた支持体に、不活性ガス中にて、アクリル系粘着剤としてアクリル酸2−エチルヘキシルエステル50部及びアクリル酸2−メトキシエチルエステル25部、酢酸ビニル25部、脂肪酸エステルを膏体層(粘着剤層)中の配合量が10%、β−エストラジオールを膏体層中の配合量が10%となるように添加、混合し、乾燥後の粘着剤層の厚さが60μmとなるように調整、塗工、乾燥し、膏体層を作成し、経皮吸収製剤を得た。
【0072】
実施例2
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン社製「NCS25」)25μmにポリエステル系ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学社製、「T−5265」)をグラビアロールにてコーティング(乾燥目付0.5g/m)し、支持体(経皮吸収型製剤用基材シート)とした。
得られた支持体に、実施例1と同様にして膏体層を作成し、経皮吸収製剤を得た。
【0073】
実施例3
(積層基材シートの作成)
トクヤマ社製リアクターTPO樹脂「PER210E」40質量部、日本ポリケム社製ポリエチレン樹脂「カーネルKF281」50質量部、日本ポリオレフィン社製ポリプロピレン「ジェイアロマーPM620」10質量部、日本油脂社製酸化防止剤「アンチオクス10」0.1質量部をバンバリーミキサーで溶融混練後、カレンダー本体の各ロールを通し、エンボス加工後の厚みが0.10mmのフィルムを作成した。このポリオレフィンフィルムと2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュボン製、厚さ4.5μm)を、ウレタン樹脂2液接着剤(セイコー化学社社製「UD417」)にて接着し、この2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学社製、「T−5265」)をグラビアロールにてコーティング(乾燥目付0.5g/m)し、支持体(経皮吸収型製剤用基材シート)とした。
(経皮吸収製剤の作成)
得られた支持体に、実施例1と同様にして膏体層を作成し、経皮吸収製剤を得た。
【0074】
実施例4
(積層基材シートの作成)
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュボン製、厚さ4.5μm)の代わりに、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン社製、厚さ9μm)を用いた以外は、実施例3と同様にして支持体を作成した。
(経皮吸収製剤の作成)
得られた支持体に、実施例1と同様にして膏体層を作成し、経皮吸収製剤を得た。
【0075】
比較例1
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン社製「NCS6」)6μmを支持体とした。
この支持体に、実施例1と同様にして膏体層を作成し、経皮吸収製剤を得た。
【0076】
比較例2
(積層基材シートの作成)
トクヤマ社製リアクターTPO樹脂「PER210E」40質量部、日本ポリケム社製ポリエチレン樹脂「カーネルKF281」50質量部、日本ポリオレフィン社製ポリプロピレン「ジェイアロマーPM620」10質量部、日本油脂社製酸化防止剤「アンチオクス10」0.1質量部をバンバリーミキサーで溶融混錬後、カレンダー本体の各ロールを通し、エンボス加工後の厚みが0.10mmのフィルムを作成した。このポリオレフィンフィルムと2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポン製、厚さ9μm)を、ウレタン樹脂2液接着剤(セイコー化学社社製「UD417」)にて接着し、支持体(経皮吸収型製剤用基材シート)とした。
(経皮吸収製剤の作成)
得られた支持体に、実施例1と同様にして膏体層を作成し、経皮吸収製剤を得た。
【0077】
(評価)
得られた経皮吸収型製剤(粘着シート)について、次の試験を行い、結果を表1に示した。
〔(1)アクリル系粘着剤と支持体の密着性(40℃×1ヶ月)〕
経皮吸収型製剤(粘着シート)を離型紙に貼った状態で10cm角にし、アルミ/ポリエチレンフィルムパックに入れ、熱ラミネートし、40℃のオーブンで1ヶ月後放置した。経皮吸収製剤を人の皮膚に貼り付け24時間後に剥がしたときの糊残りがなく、支持体と粘着剤の密着性が充分なときを○とし、糊残りがあるときには×とした。
【0078】
〔(2)粘着剤中の添加剤の基材表面ブリード、べたつき(40℃×1ヶ月)〕
上記(1)の評価後のフィルムを目視にて、表面に脂肪酸エステル、薬物等が透過・ブリードしているものを×、変化の無いものを○と判断した。
【0079】
〔(3)基材シートの伸縮柔軟性、風合い評価(官能試験)〕
経皮吸収型製剤(粘着シート)を手の甲上に置き、その追従性、密着性、なじみ性、折れ曲がり性を目視及び手触りにて総合的に判断し、評価した。手の甲に沿って充分に追従し、密着性、なじみ性、皮膚への適合性に優れ、風合いが良いものを○、やや硬い感触があるが実用上は問題ないものを△、硬く、実用性が無いものを×とした。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から、実施例の経皮吸収型製剤は、密着性、基材表面ブリード、ベタツキ、伸縮柔軟性、風合いに優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の経皮吸収型製剤用基材シートは、経皮吸収型製剤に好適に使用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の経皮吸収型製剤用基材シートの概略図である。
【図2】本発明の経皮吸収型製剤の概略図である。
【図3】本発明の経皮吸収型製剤の概略図である。
【符号の説明】
【0084】
1 フィルム
2 プライマー層
3 粘着剤層
4 離型剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの片面に、ポリエステル系ポリウレタン樹脂を含んでなるプライマー層を有するものであることを特徴とする経皮吸収型製剤用基材シート。
【請求項2】
フィルムは、ポリエステルフィルムである請求項1記載の経皮吸収型製剤用基材シート。
【請求項3】
ポリエステルフィルムは、厚さが2〜25μmである請求項2記載の経皮吸収型製剤用基材シート。
【請求項4】
フィルムは、ポリエステルフィルムと、ポリオレフィンフィルム、軟質塩化ビニル樹脂フィルム、織布、編布及び不織布からなる群より選択される少なくとも1種との積層フィルムであり、
プライマー層は、前記積層フィルムのポリエステルフィルムの表面に形成されている請求項1記載の経皮吸収型製剤用基材シート。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の経皮吸収型製剤用基材シートのプライマー層上に、粘着剤層を有することを特徴とする経皮吸収型製剤。
【請求項6】
粘着剤層は、アクリル系粘着剤を含有するものである請求項5記載の経皮吸収型製剤。
【請求項7】
粘着剤層は、脂肪酸エステルを含有するものである請求項5又は6記載の経皮吸収型製剤。
【請求項8】
粘着剤層は、薬物を含有するものである請求項5、6又は7記載の経皮吸収型製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−182652(P2006−182652A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374433(P2004−374433)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】