説明

経皮吸収型貼付剤

【課題】 支持体が軟質化、薄膜化された経皮吸収型貼付剤においても、離型フィルムの密着性と剥離性が優れた経皮吸収型貼付剤を提供する。
【解決手段】 支持体の片面に経皮吸収剤成分を含有する粘着剤層を有し、当該粘着剤層上に離型フィルムを有する経皮吸収型貼付剤であり、前記離型フィルムが、移行成分を1〜5%含有する熱硬化シリコーンからなる離型層を片面に有するポリエステルフィルムからなることを特徴とする経皮吸収型貼付剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収型貼付剤に関するものであり、詳しくは、保管時の安定性、使用時の作業性が極めて良好な経皮吸収型貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、薬物を含有する粘着層を設け、当該粘着剤層を被着体(生体の皮膚や粘膜)に貼付することで、薬物を皮膚や粘膜を通して生体内に連続的に投与する経皮吸収型貼付製剤が種々開発されている。
【0003】
経皮吸収型貼付剤は、経皮吸収薬物を含有する粘着層の片面に支持体を反対面に離型フィルムを積層した構成で製造される。支持体および離型フィルムの基材としてポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムが使用される。ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、特に薬剤成分の不透過性に優れるため、当該用途に使用される。
【0004】
支持体として使用されるフィルムは、被着体(生体の皮膚や粘膜)が曲面の場合にも密着するように軟質化や薄膜化が望まれている。しかし、支持体を軟質化や薄膜化した場合には製造工程における巻取り性の悪化や粘着材端面の影響による付き揃え性の悪化による作業性の低下が挙げられる。
【0005】
例えば、離型フィルムの厚さを厚くして剛性高くすることや離型フィルムに両面処理品を使用する等の解決手段が考えられるが、歩留まりの悪化や低価格化への対応できなくなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−281202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題点を解決しようとするものであり、その解決課題は、支持体が軟質化、薄膜化された経皮吸収型貼付剤においても、離型フィルムの密着性と剥離性が優れた経皮吸収型貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムからなる離型フィルムによれば、製造工程の安定化が図れることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、支持体の片面に経皮吸収剤成分を含有する粘着剤層を有し、当該粘着剤層上に離型フィルムを有する経皮吸収型貼付剤であり、前記離型フィルムが、移行成分を1〜5%含有する熱硬化シリコーンからなる離型層を片面に有するポリエステルフィルムからなることを特徴とする経皮吸収型貼付剤に存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、支持体の薄膜化や軟質化が可能となり、被着体の曲部等へと使用範囲を広くでき、さらに製造工程の効率化やコストを低減することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における離型フィルムの基体および支持体であるポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法により押出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸、熱処理を施したフィルムである。
【0012】
本発明で使用するフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。また、用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であればよい。
【0013】
かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等から選ばれる一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上が挙げられる。
【0014】
本発明で使用するポリエステルには、本発明の要旨を損なわない範囲で、耐候剤、耐光剤、帯電防止剤、潤滑剤、遮光剤、抗酸化剤、蛍光増白剤、マット化剤、熱安定剤、および染料、顔料などの着色剤などを配合してもよい。
【0015】
フィルム中に配合する粒子としては、酸化ケイ素、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタンおよび特公昭59−5216号公報に記載されているような架橋高分子微粉体等を挙げることができる。これらの粒子は、単独あるいは2成分以上を同時に使用してもよい。これら粒子を添加するフィルム層の含有量は、通常1重量%以下、好ましくは0.01〜1重量%、さらに好ましくは0.02〜0.6重量%の範囲である。粒子の含有量が少ない場合には、フィルム表面に十分な粗度を与えることができず、フィルム製造工程において、表面のキズが発生しやすかったり、巻き特性が劣ったりする傾向がある。
また、粒子の含有量が1重量%を超える場合には、フィルム表面の粗面化の度合いが大きくなりすぎて透明性が損なわれることがある。
【0016】
ポリエステルフィルム中に含有される粒子の平均粒径は、通常0.02〜5μmであり、好ましくは0.1〜3μm、さらに好ましくは0.2〜1.8μmの範囲である。粒径が0.02μm未満の場合には、フィルム表面に十分な粗度を与えることができず、フィルム製造工程における巻き特性が劣る傾向がある。粒径が5μmを超える場合には、偏光板離型用フィルムとして用いられた場合、輝点となり欠陥検査に支障を来す恐れがある。
【0017】
一方、フィルムの透明性を向上させるため、2層以上の積層フィルムとした場合、表層のみに粒子を配合する方法も好ましく採用される。この場合の表層とは、少なくとも表裏どちらか1層であり、もちろん表裏両層に粒子を配合することもできる。
【0018】
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。またベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0019】
なお、ポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素等不活性気流中に必要に応じてさらに固相重合を施してもよい。得られるポリエステルの固有粘度は0.40dl/g以上であることが好ましく、0.40〜0.90dl/gであることが好ましい。
【0020】
本発明の経皮吸収型貼付剤を構成する離型フィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲で、かつ、離型フィルムとしての加工が可能であれば特に限定されるものではないが、通常25〜125μm、好ましくは50〜125μmの範囲である。フィルム厚みが25μm未満では、フィルムの腰が不十分となり、離型フィルムを剥がす工程でトラブルを生じやくなる傾向がある。フィルム厚みが125μmを超える場合は、製造コストが上がるため低価格化の要求に反することになる。
【0021】
次に本発明のフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の要旨を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0022】
まず、本発明で使用するポリエステルの製造方法の好ましい例について説明する。ここではポリエステルとしてポリエチレンテレフタレートを用いた例を示すが、使用するポリエステルにより製造条件は異なる。常法に従って、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを、エステル交換反応させ、その生成物を重合槽に移送し、減圧しながら温度を上昇させ、最終的に真空下で280℃に加熱して重合反応を進め、ポリエステルを得る。
【0023】
次に例えば上記のようにして得、公知の手法により乾燥したポリエステルチップを溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーをダイから押出し、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。本発明においては、このようにして得られたシートを2軸方向に延伸してフィルム化する。
延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを好ましくは縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦1軸延伸フィルムとした後、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜240℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。さらにこの際、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。さらに、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆるインラインコーティングを施すこともできる。それは以下に限定するものではないが、例えば、1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、帯電防止性、滑り性、接着性等の改良、2次加工性改良、耐候性および表面硬度の向上等の目的で、水溶液、水系エマルジョン、水系スラリー等によるコーティング処理を施すことができる。また、フィルム製造後にオフラインコートで各種のコートを行ってもよい。このようなコートは片面、両面のいずれでもよい。コーティングの材料としてはオフラインコーティングの場合は水系および/または溶媒系のいずれでもよいが、インラインコーティングの場合は水系または水分散系が好ましい。
【0025】
次に本発明で使用する離型フィルムの離型層の形成について説明する。
【0026】
本発明における離型フィルムを構成する離型層は上述の塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、ポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。塗布延伸法(インラインコーティング)については以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に離型層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に離型層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0027】
また、本発明における離型フィルムを構成する離型層は離型性を良好とするために硬化型シリコーン樹脂を含有するのが好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0028】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387、KNS−3051、X−62−1496、KNS320A、KNS316、X−62−1574A/B、X−62−7052、X−62−7028A/B、X−62−7619、X−62−7213、GE東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56−A2775、XS56−A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605、SM3200、SM3030、東レ・ダウコーニング(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、SRX357、SRX211、SD7220、LTC750A、LTC760A、SP7259、BY24−468C、SP7248S、BY24−452、SP7268S、SP7265S、LTC1000M、LTC1050L、SYLOFF7900、SYLOFF7198、SYLOFF22A等が例示される。
さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0029】
本発明においては、移行成分を1〜5%含有する必要がある。本発明で言う移行成分とは、無官能のシロキサン等よりなるものが好ましく、具体的には、非反応性のオイル状物で非反応性シリコーン、パラフィン系油、芳香族炭化水素、植物油等が例示されるが、離型層との相溶性の点で非反応性シリコーンが好ましい。上記含有量の範囲外では、本発明で求められる特性を満足させることができない。
【0030】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0031】
本発明において、ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、塗布延伸法(インラインコーティング)により離型層を設ける場合、通常、170〜280℃で3〜40秒間、好ましくは200〜280℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。一方、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。また、塗布延伸法(インラインコーティング)あるいはオフラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.005〜1g/m、好ましくは0.005〜0.5g/mの範囲である。塗工量が0.005g/m未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、1g/mを超えて厚塗りにする場合には離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0032】
本発明において塗布層上に離型層を設ける場合、塗布層を設けた後にフィルムを一旦巻き取り、あらためて離型層を設けてもよく、また、塗布層を設けた後、連続して、離型層を塗布層上に設けてもよく、何れの方法を採用してもよい。
【0033】
本発明における離型フィルムに関して、離型層が設けられていない面には本発明の主旨を損なわない範囲において、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよい。
【0034】
また、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0035】
本発明における離型フィルムの剥離力は、通常10〜100mN/cm、好ましくは10〜50mN/cmの範囲である。剥離力が10mN/cm未満の場合、剥離力が軽くなりすぎて本来剥離する必要がない場面においても容易に剥離する不具合を生じる場合があり、一方、100mN/cmを超える場合には、剥離力が重くなりすぎ、剥離する際に貼付剤に変形が生じたり、粘着剤が離型フィルム側に付着したりすることがある。
【0036】
本発明で使用する離型フィルムの反離型層面と未処理ポリエステルフィルムとの摩擦係数は、通常0.05〜0.20、好ましくは0.05〜0.15の範囲である。摩擦係数が0.20を超えた場合は、反離型層面と支持体とが密着し、貼付剤の製造工程での作業性が低下することがある。また、摩擦係数が0.05未満では、フィルムが滑りすぎるため、製造工程においてニップロールが滑る等の問題が生じたり、ロール状に巻いた時にフィルム同士のずれが発生したりして、ロール状の製品を得ることが難しくなることがある。
【0037】
本発明は、離型層に用いた離型成分がロールに巻かれた際、離型層の反対面にシリコーンが移行する性質を利用することにより、表面粗度を変えずに優れた滑り性を与えることができ、透明性と滑り性を両立させることができる。
【0038】
さらに、本発明は、フィルムの滑り性を改良し、貼付剤の製造工程での作業性を改善するために、残留接着率を70〜95%、さらには85〜90%の範囲とすることが好ましい。残留接着率が95%を超える場合は、フィルムの滑り性が改良されず、貼付剤の製造工程での作業性が劣ることがある。残留接着率が70%未満では、フィルムが滑りすぎるため、製造工程でニップロールが滑る等の問題が生じたり、貼付剤の粘着力が低下したりすることがある。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0040】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0041】
(2)平均粒径(d50)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
【0042】
(3)算術平均粗さ(Ra)
(株)小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のようにして求めた。
すなわち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線 y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられた値を〔μm〕で表わす。
Ra=(1/L)∫|f(x)|dx
算術平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の算術平均粗さの平均値で表わした。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0043】
(4)離型層の塗布量測定
蛍光X線測定装置((株)島津製作所(製)型式「XRF−1500」)を用いてFP(Fundamental Parameter Method)法により、下記測定条件下、離型フィルムの離型層が設けられた面および離型層がない面の珪素元素量を測定し、その差をもって、離型層中の珪素元素量とした。次に得られた珪素元素量を用いて、−SiO(CHのユニットとしての塗布量(Si)(g/m)を算出した。
《測定条件》
分光結晶:PET(ペンタエリスリトール)
2θ:108.88°
管電流:95mA
管電圧:40kv
【0044】
(5)離型フィルムの剥離力(F)の評価
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0045】
(6)離型フィルムの残留接着率の評価
《残留接着力》
試料フィルムの離型層表面に日東電工(製)No.31B粘着テープを2kgゴムローラーにて1往復圧着し、100℃で1時間加熱処理する。次いで、圧着したサンプルから試料フィルムを剥がし、No.31B粘着テープをJIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力、180°引き剥がし法)の方法に準じて接着力を測定する。これを残留接着力とする。
《基礎接着力》
残留接着力の場合と同じテープ(No.31B)を用いてJIS−C−2107に準じてステンレス板に粘着テープを圧着して、同様の要領にて測定を行う。この時の値を基礎接着力とする。これらの測定値を用いて、下記式に基づいて残留接着率を求める。
残留接着率(%)=(残留接着力/基礎接着力)×100
なお、測定は23±2℃、50±5%RHにて行う。
【0046】
(7)ポリエステルフィルムとの動摩擦係数(μd)
2週間以上保管したロールサンプルの表層から少なくとも20枚のフィルムを剥ぎ取り測定用サンプルを採取する。水平なガラス板上に測定用サンプルを固定し、未処理のポリエステルフィルムを置き、その上に30g(T2)の分銅を載せる。未処理ポリエステルフィルムを100mm/分の速度で移動させ、他端の抵抗力(T1(g))を測定し、次式により走行中の摩擦係数(μd)を求めた。
μd=T1/T2
【0047】
(8)離型特性
離型フィルム付き貼付剤より、離型フィルムを剥がした時の状況より、離型特性を評価した。
○:離型フィルムが綺麗に剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られない
△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤が離型層に付着する ×:離型フィルムに粘着剤が付着する
上記判定基準中、△以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0048】
(9)ロール汚染状況
粘着層を有する積層フィルムを製造した際に、製造装置の各ロールを目視観察し、ロールの汚染状況を評価した。
○:製造後のロール表面に付着物が見られない
△:製造後のロール表面に僅かに付着物が見られるが、製造上支障のないレベル
×:製造後のロール表面に付着物が見られ、ロール清掃を必要とする
【0049】
(10)巻取り状況
貼付剤製造工程において、粘着加工後支持体を貼合せた製品のロール外観を目視観察し評価した。
(ロール概観良好) ◎>○>△>× (ロール外観不良)
【0050】
(11)加工適正
貼付剤製造工程において、粘着層を有する積層フィルムを打ち抜き・小包装等の加工工程において、製造状況を下記のランクに分けで評価した。
○:問題なく製造できた
△:問題が発生したが、製品を製造できた
×:問題が発生し、製品を製造することができなかった
上記判定基準中、△以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0051】
(12)ロール外観
離型フィルムの製造において、離型フィルムの製品ロールの外観を目視観察し評価した。特に、ロール両端面のズレを観察した。
(ロール外観良好) ◎>○>△>× (ロール外観不良)
上記判定基準中、△以上のものが実使用上問題なく使用できるレベルである。
【0052】
<ポリエステル(A)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。
4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。
一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップ(A)を得た。この、ポリエステルの極限粘度は0.63であった。
【0053】
<ポリエステル(B)の製造>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェートを添加後、平均粒子径2.2μmのシリカ粒子のエチレングリコールスラリーを粒子のポリエステルに対する含有量が0.6重量%となるように添加した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。得られたポリエステル(B)は極限粘度0.63であった。
【0054】
<ポリエステルフィルムの製造>
離型フィルム基材用ポリエステルフィルム、上記ポリエステル(A)チップ90部と、ポリエステル(B)チップ10部とを混合した原料を押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、100℃にて縦方向に2.8倍延伸した後、テンター内で予熱工程を経て120℃で4.9倍の横延伸を施した後、190℃で10秒間の熱処理を行い、その後180℃で幅方向に10%の弛緩を加え、幅3000mmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの全厚みは75μmでRaは21nmであった。
【0055】
支持材用ポリエステルフィルム、ポリエステル(A)チップ75部と、ポリエステル(B)チップ25部とを混合した原料を押出機に供給し、上記ポリエステルフィルムと同様の工程で、幅4000mmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの全厚みは6μmでRaは,28nmであった。
【0056】
<離型フィルムの製造>
下記に示す離型剤組成からなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.1g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型フィルムを得た。
【0057】
(離型フィルムA)
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
ポリエーテル変性シリコーン(BY24−842:東レダウコーニング製)3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0058】
(離型フィルムB)
硬化型シリコーン樹脂(KS−774:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T: 信越化学製) 1部
ポリエーテル変性シリコーン(BY24−842:東レダウコーニング製)3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0059】
(離型フィルムC)
硬化型シリコーン樹脂(KS−778:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T: 信越化学製) 1部
ポリエーテル変性シリコーン(BY24−842:東レダウコーニング製)1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0060】
(離型フィルムD)
硬化型シリコーン樹脂(KS−778:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T: 信越化学製) 1部
ポリエーテル変性シリコーン(BY24−842:東レダウコーニング製)3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0061】
(離型フィルムE)
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
ポリエーテル変性シリコーンオイル(KF−351:信越化学製) 3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0062】
(離型フィルムF)
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0063】
(離型剤フィルムG)
硬化型シリコーン樹脂(KS−778:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0064】
(離型フィルムH)
硬化型シリコーン樹脂(KS−778:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
ポリエーテル変性シリコーン(BY24−842:東レダウコーニング製)8部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 1500部
【0065】
(経皮吸収型貼付剤の製造)
離型フィルムAからHまでの離型層表面に、硝酸エステルを5重量%含有するクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが100μmとなるように塗布し、80℃の乾燥炉内を通過時間30秒で通過させた後、厚さ6μmの支持材用ポリエステルフィルムを貼り合せて経皮吸収型貼付剤を作成した。
以上、得られた結果をまとめて下記表1にまとめて示す。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の経皮吸収型貼付剤は、各種の経皮吸収型貼付剤として好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の片面に経皮吸収剤成分を含有する粘着剤層を有し、当該粘着剤層上に離型フィルムを有する経皮吸収型貼付剤であり、前記離型フィルムが、移行成分を1〜5%含有する熱硬化シリコーンからなる離型層を片面に有するポリエステルフィルムからなることを特徴とする経皮吸収型貼付剤。

【公開番号】特開2011−178708(P2011−178708A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43635(P2010−43635)
【出願日】平成22年2月28日(2010.2.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】