説明

経皮吸収治療システムの誤用を防止する方法

【課題】変性剤添加層を有する経皮吸収治療システムの提供。
【解決手段】嫌な味を有する治療上関係のない非相互作用物質を加えることが提案され、このような物質を添加することによって、味に対して非常に不快で予想外な経験をするので、TTS又はその変性層の1つと最初に経口接触しただけで、そのバップ剤を即座に吐き出すという自発的な反応が得られ、子供又は薬物常用者がバップ剤に含まれる活性物質を不適切に(即ち、経口で)適用しないようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性物質を含有し、特に感圧性の少なくとも1つの接着層と、さらに少なくとも1つの活性物質不浸透性の裏打ち層とを有する経皮吸収治療システム(TTS)の有毒な成分を不適切に(即ち、経口で)適用することに起因する異物混入からヒトを保護するための方法、および変性剤を含むTTSに関する。
【背景技術】
【0002】
一連のTTSは、可溶性の活性剤(新しいシステムであるかまたは使用されたシステムであるかに関係なく)を抽出するためにヒトに経口投与した場合、望ましくない副作用を及ぼし、非常に危険である。例えば、幼児は、何か面白いものを見ると口の中に入れ、少なくともそれをしゃぶったりまたは咬んだりする傾向がある。このようなことは、特に子供がこのようなシステム(特に、剥離ライナーを有さないシステム)に偶然近づいた場合、避けることができない。このような事故が発生したことは未だ知られていないが、製薬当局者は、このような事故が起こるのではないかとますます懸念している。それ故、当局者は、様々な場合において、子供に安全なパッケージを求めている。事実、このような子供に安全なパッケージは、様々な実施態様において開発されている。しかし、子供に安全なパッケージであっても、一旦開かれると、または子供が何らかの状況で使用されたバップ剤(patch)をつかんでしまうと、子供がTTSを口の中にいれないように保護することはできない。特に、麻酔薬、鎮痛薬、精神安定剤、または精神薬理剤などの活性物質を含むTTSの場合、経口により乱用すると、深刻な健康障害の原因となり得る。他方、薬物常用者が、しゃぶったり、咬んだりすることによって、経皮吸収治療システムからこのような活性剤を抽出したくなることも考えられる。
【0003】
飲用エチルアルコールが変性可能で、メチル化アルコール(spirit)として市場に出回っていることは公知である。他方、医薬活性剤の変性についてはまだ公開されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記のような経口による乱用を不可能にし、それと同時に、システム中の治療活性剤が不都合に変化するのを避け、不適切に(即ち、経口で)適用した場合に健康に障害が起こらないように、請求項1の導入部で言及したようなヒトを保護する方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明の方法によると、嫌な味を有する治療上関係のない非相互作用物質を加えることが提案される。このような物質を添加することによって、味に対して非常に不快で予想外な経験をするので、本発明によるTTSまたはその変性層の1つと最初に経口接触しただけで、そのバップ剤を即座に吐き出すという自発的な反応が得られ、子供または薬物常用者がバップ剤に含まれる活性物質を不適切に(即ち、経口で)適用しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
1つの実施態様では、物質はTTSの変性に用いられ、その変性によって、吐き気を起こさせ、吐き気を催したヒトが経口でその物質を適用したいと思わないようにする。
【0007】
本発明による方法の他の実施態様では、前記物質は、活性物質を含有する層の表面に、活性物質の浸透を妨げない別個の非常に薄い層として与えられる。これにより、口内粘膜または舌でTTSに最初に接触したときに非常に嫌な味を即座に経験するため、活性物質を含有する層を通して異物が混入され得る前に、さらなる経口接触を思いとどまらせるという利点が得られる。
【0008】
他の手段として、前記物質は、裏打ち層に別個の(好ましくは非常に薄い)層として加えられ、変性の効果を安全にさらに増強させることができる。
【0009】
この場合、別個の物質層は、10μmと100μmとの間、好ましくは5μmと20μmとの間の厚さで適用される。
【0010】
本発明の特に有利な実施態様では、さらに、口内粘膜および舌の炎症などの不快感を引き起こす物質が使用される。子供または薬物常用者をTTSに経口で二度と接触させないようにするには、このような苦い経験を与えるだけで充分である。同様の効果はまた、極端に苦い味および特にあと味を引き起こす物質を用いても成し遂げることができる。
【0011】
本発明による方法の効果的な実施態様では、没食子酸、キニーネ、タンニン、アンゴスツラ、(純粋な)カフェイン、ロベリン、チャノキ油、ある種の糸状菌培養物、変性もしくは凝固物質、テルペンチンまたはアンモニアが、TTSの少なくとも1つの層を変性するための嫌な味を有する苦味質または物質として使用される。
【0012】
本発明による方法の1つの実施態様を実施するために、活性物質を含有する層、および場合によっては裏打ち層をコーティングするためのフィルム層に変性用の物質が導入される。特に有利な解決法は、唾液に溶性なフィルム層を用いることである。
【0013】
方法は、簡単かつ効果的であり、経皮吸収治療システムの有毒な成分の不適切な(すなわち、経口による)適用から子供および/または薬物常用者を守る。従って、本発明による方法およびTTSは、上記の目的を達成するための理想的な手段を提示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの活性物質を含有し、特に感圧性の少なくとも1つの接着層と、さらに少なくとも1つの活性物質不浸透性の裏打ち層とを有する経皮吸収治療システム(TTS)の有毒な成分を不適切に(即ち、経口で)適用することに起因する異物混入からヒトを保護するための方法であって、治療上関係のない嫌な味を有する非相互作用物質を加えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記嫌な味を有する物質が、少なくとも前記活性物質を含有する層に加えられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
変性に用いられる物質が、前記活性物質を含有する層および場合によっては前記裏打ち層をコーティングするためのフィルム層に導入されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
唾液に溶性なフィルム層の使用を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
吐き気を起こさせる物質の使用を特徴とする請求項1から4の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記物質が前記活性物質を含有する層の表面に前記活性物質の浸透を妨げない別個の非常に薄い層として与えられることを特徴とする請求項1から5の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記物質が前記裏打ち層に別個の非常に薄い層としてさらに与えられることを特徴とする請求項1から6の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項8】
前記別個の物質層が10μmと100μmとの間の厚さ、好ましくは5μmと20μmとの間の厚さで与えられることを特徴とする請求項1から7の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項9】
口内粘膜および舌の炎症などの不快感を引き起こす物質の使用を特徴とする請求項1から8の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項10】
極端に苦い味および特にあと味を引き起こす物質の使用を特徴とする請求項1から9の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
没食子酸、キニーネ、タンニン、アンゴスツラ、(純粋な)カフェイン、ロベリン、チャノキ油(tea tree oil)、糸状菌培養物(hyphomycete culture)、変性もしくは凝固物質、テルペンチンまたはアンモニアが、TTSの少なくとも1つの層を変性するための嫌な味を有する苦味質(amaroids)または物質として使用されることを特徴とする請求項1から10の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項12】
活性物質を含有し、特に感圧性の少なくとも1つの接着層と、さらに少なくとも1つの活性物質不浸透性の裏打ち層とを有する、変性剤を含むTTS。

【公開番号】特開2009−35561(P2009−35561A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212077(P2008−212077)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【分割の表示】特願2000−513566(P2000−513566)の分割
【原出願日】平成10年9月18日(1998.9.18)
【出願人】(397036170)エルティエス ローマン テラピー−ズュステーメ アーゲー (6)
【Fターム(参考)】