結晶構造および分子構造の模型
【課題】本発明は、初学者でも簡単に短時間で組み立てることができる、結晶構造や分子構造の模型を提供する。
【解決手段】結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型。
【解決手段】結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学教材等として利用するための結晶構造および分子構造の模型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の分子模型としては、球と棒を使ったものが一般的である。これは、プラトンの正多面体の角を切り落した、14面体、20面体、26面体、32面体、球などの多面体をその原子表現体とし、その多面体に、原子価角に合わせて連結孔をあけ、多面体の中心間の距離が原子間距離に対応するように棒の両端を上記連結孔に挿し込んで、各多面体を連結したものである(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の模型にあっては、構造に忠実であろうとして、プラトンの正多面体の角を切り落した、14面体、20面体、26面体、32面体、球などの多面体をその原子表現体とすることにより、原子や分子の軌道概念に立脚した原子価角を使用し、原子間距離に対しては夫々の長さに立脚した異なる種類の連結棒を使うために、多面体と連結棒の組合せについては、初学者には複雑でわかり難いものであった。
【0004】
また、1つの模型は約30個から60個の原子を使用することが一般的であるため、例えば、1つの多面体に8本の連結棒を差し込んで作る模型は、240箇所から480箇所の差込み連結が必要となり、模型作りは、半日から1日の長時間作業となり、不便であった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−233900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、初学者でも簡単に短時間で組み立てることができる、結晶構造や分子構造の模型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によれば、結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型が提供される(請求項1)。
【0008】
このように、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品を溝で接合する模型であれば、組み立てが簡便で短時間で行うことができ、初学者でも結晶構造や化合物の分子構造を容易に理解することができる。
【0009】
この場合、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品1種類のみにより、ダイヤモンド構造の骨格を組み立てることができる(請求項2)。
【0010】
このように、本発明によれば、初学者にとって非常に複雑に見えるダイヤモンド構造の骨格を、わずか1種類の部品で簡単に短時間で組み立てることができる。
【0011】
この場合、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品2種類のみにより、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を組み立てることができる(請求項3)。
【0012】
このように、本発明によれば、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を、わずか2種類の部品で簡単に短時間で組み立てることができる。
【0013】
また、前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって単位格子内の原子配列状態を表現することができる(請求項4)。
【0014】
このように、前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって、単位格子内の原子配列状態の把握が極めて容易となり、初学者にもよりわかり易いものとすることができる。
【0015】
また、前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現するものとすることができる(請求項5)。
【0016】
このように、前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現するものとすれば、よりわかり易いものとすることができる。
【0017】
また、前記部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付ける、および/または、前記部品の化学結合手に相当する部位の色を変えることによって、原子および/または結合の違いを表現するものとすることができる(請求項6)。
【0018】
このようにして、原子および/または結合の違いを表現すれば、各原子の結合状態や、異種原子やその結合の違いの把握が極めて容易となる。
【0019】
また、少なくとも、上記本発明のいずれかに基づく第1の模型と、該第1の模型と少なくとも形状および/またはサイズが異なる上記本発明のいずれかに基づく第2の模型とを連結した模型とすることができる(請求項7)。
【0020】
このように、形状および/またはサイズが異なる複数の模型を連結することで、複数の構造を持つ材料の模型を形成して、夫々の構造間の対称性や結合の違いの理解に役立てることができる。
【0021】
また、前記模型は、組み立てた後、再度分解できるものであることが好ましい(請求項8)。
【0022】
このように、前記模型が、組み立ておよび分解できるものであれば、出張時に模型を分解して携行し、出張先で短時間で組み立てて使い、再度分解して持ち帰ることができ、模型の利用範囲を広げることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る結晶構造および分子構造の模型は、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品を、部品に設けられた溝同士を接合して組み立てるため、多面体と連結棒および差込孔の選択が不要で分かり易いものである。さらに、この部品の溝同士を1回接合するだけで複数個の原子と結合手の組み立てが可能となり、トータルの部品数を大幅に減少できるとともに、模型作りの時間を従来の1/5から1/10と大幅に短縮できるようになる。そのため、模型を分解して携行し、出張先での組み立て使用ということも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上述したように、従来の分子模型は多面体と連結棒および差込孔の選択が必要で、組立てに多大な時間を要していた。そこで、本発明者等は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品を用いることで模型作りの時間が大幅に短縮できることに想到し、本発明を完成させたものである。
【0025】
すなわち、本発明は、結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型を提供する。
【0026】
このように、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品とすることで、従来のような多面体と連結棒および差込孔の選択が不要となり組立てが分かり易くなった。また、この部品の原子に相当する部位に設けられた溝同士を1回嵌め合わせるだけで複数個の原子と結合手を組み立てることになり、トータルの部品数を大幅に減少できるとともに、模型作りの時間も大幅に短縮できるようになった。
【0027】
たとえば、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品1種類のみにより、ダイヤモンド構造の骨格を組み立てることができる。このような場合を例として本発明に係る模型について以下に具体的に説明する。
【0028】
[ダイヤモンド構造の骨格]
図4に、半導体シリコンの結晶構造であるダイヤモンド構造(ダイヤモンド結晶格子)を示す。初学者にとって、非常に複雑な結晶構造に見えるが、本発明では、この複雑に見えるダイヤモンド構造の骨格を一種類の部品だけで作ることができる。
【0029】
この構造の特徴は1つの原子から4本の結合手が出ている点である。すなわち、原子bから原子aとcの方向と、原子fとgの方向に結合手が出ている。原子a方向の結合手と原子c方向の結合手の成す角abcと、原子f方向の結合手と原子g方向の結合手の成す角fbgは等価で、どちらも109度である。
【0030】
図5は、図4を上から見た図である。図5から、結合手abと結合手bcが直線上にあることや結合手fbと結合手bgも直線上にあること、更に、a-b-cとf-b-gが直交していることが良く判る。同様に、結合手cdとdeおよび結合手hdとdiが直線上にあり、お互い直交していることが判る。
【0031】
この様に、原子a-b-c-f-gの構造と原子c-d-e-h-iの構造が同じであること、更に、原子f-k-h-j-lも原子g-m-i-l-nも同じ構造であることが判る。
【0032】
すなわち、図4のダイヤモンド結晶格子は、原子a-b-c-f-gと原子c-d-e-h-iが並び、その下に、原子f-k-h-j-lと原子g-m-i-l-nが並んでいる。また、原子の並び方が、原子a-b-c-d-eと原子j-k-l-m-nは、同じ様に、109度の傾きを持ったジグザグ形状であることやお互いに直交していることが判る。
【0033】
従って、図4のダイヤモンド結晶格子は、原子の並びのa-b-c-d-eに、原子の並びのf-b-gやh-d-iが直交し、その下に、fkhやgmiが直交し、更に、その下に、原子の並びのj-k-l-m-nが直交して出来ていることが判る。
【0034】
次に、この複雑に見えるダイヤモンド構造の骨格を一種類の部品のみで作り上げる本発明の方法を説明する。
図3に本発明に係る部品12を示す。部品12は、原子に相当する部位13と化学結合手に相当する部位14を一体とした部品であり、原子に相当する部位13に溝15を有するものである。また部品12の結合手14同士の為す角は、上記で説明したダイヤモンド構造の結合手同士の為す角と同じく109度となっている。この部品12の上下を反転させただけの部品11を図2に示す。部品11および部品12は同じ1種類の部品である。
【0035】
図2の部品11は、図4のダイヤモンド構造の原子の並びのa-b-c-d-eに対応し、図3の部品12は、原子の並びのf-b-gやh-d-iやj-k-l-m-nに対応する。
【0036】
このような部品11の溝16に部品12の溝17を直交する様に差し込むことで原子a-b-c-f-gの構造が出来る。同種の部品を同様に組み立てることにより、原子c-d-e-h-iの構造が出来る。同様にして、原子の並びのf-k-hおよびg-m-iは部品11で、j-k-l-m-nは部品12に対応し、これらの部品11と部品12の溝を交互に直交する様に嵌め合いで差し込んで行くことで、簡単に、図1に示すダイヤモンド構造の骨格の模型を組み立てることが可能である。
【0037】
なお、ここでは説明のために部品11および12の色を異なったものとしているが、上述したようにそもそも部品11および12は1種類の部品であり、同じ色の部品としてもよい。
【0038】
また、本発明によれば、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品2種類のみにより、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を組み立てることができる。
【0039】
[単純立方格子の骨格]
図6に、単純立方格子を示す。本発明では、この結晶構造の骨格を2種類の部品で組み立てることが可能である。
【0040】
この構造の特徴は1つの原子から6本の結合手が出ている点である。すなわち、原子oから原子pとrとsの3方向と、その180度逆の方向である。
【0041】
上面の原子o-p-q-rの構造および下面の原子s-t-u-vの構造は、図7と図8の部品を互いに直交する様に溝同士を嵌め合わせることで作ることが出来る。図7と図8の部品は、上下を反転させただけで、同じ1種類の部品である。
例えば、原子o-p-q-rの構造は図7の部品の溝oとrに図8の部品の溝oとrを、図7の部品の溝pとqに図8の部品の溝pとqを差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。
【0042】
図7と図8の部品とは異なる部品を図9に示す。上面の原子o-p-q-rの構造および下面の原子s-t-u-vの構造を結ぶ結合は、図9の部品の溝o、s、p、t、q、u、r、vを、上面と下面の原子のoとs、pとt、qとu、rとvに相当する所に差し込むことで完成させることが出来る。
以上の様に、単純立方格子の骨格は、2種類の部品だけで簡単に作ることが出来る。
【0043】
[体心立方格子の骨格]
【0044】
図10に体心立方格子を示す。本発明では、この結晶構造の骨格を2種類の部品で組み立てることが可能である。
【0045】
この構造の特徴は1つの原子から8本の結合手が出ている点である。すなわち、原子eから原子aとbとhとiの4方向と、原子cとdとfとgの4方向である。
原子a、b、e、h、iの構造は、図11の2つの部品のeの溝同士をお互いに差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。
【0046】
原子c、d、e、f、gの構造は、図11の部品で作った構造のeの箇所に、図12の2つの部品のeの溝を差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。
以上の様に、体心立方格子の骨格は、図11と図12の2種類の部品だけで簡単に作ることが出来る。
【0047】
なお、図12の部品の溝の形成角度θは、図13に示す様に、結晶学的に、<011>方位と<―111>方位の成す角度であるから、cosθ=2/√6 の式より、
θ=35.3度と簡単に計算できる。従って、θ=35.3度となるように図12の部品の溝を形成してやればよい。
【0048】
[面心立方格子の骨格]
図14に、面心立方格子を示す。本発明では、この結晶構造の骨格を2種類の部品で組み立てることが可能である。
【0049】
この構造の特徴は1つの原子から12本の結合手が出ている点である。すなわち、原子eから原子aとbとcとdの4方向と、原子fとgとhとiの4方向および原子a、b、c、d、eの作る面に対して鏡面対称の方向に4方向である。原子a、b、c、d、eの作る面と原子j、k、l、m、nの作る面は等価であるから、原子eと原子nは等価となり、鏡面対象の方向とは、原子nから原子f、g、h、iの4方向と等価な方向である。原子面a-b-c-d-eは、図15の2つの部品のeの溝をお互いに差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。原子面j-k-l-m-nも、原子面a-b-c-d-eと等価であるから、同様に、図16の2つの部品のnの溝をお互いに差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。原子面f-g-h-iも、原子面a-b-c-d-eおよび原子面j-k-l-m-nと等価である。すなわち、原子a、e、dは、原子f、g、hと等価である。従って、図15や図16と同じ部品で作ることが出来る。なお、図15および図16の部品は同じ1種類の部品である。
【0050】
以上の様に、水平面内の結合は、図15や図16の部品で簡単に作る事が出来る。一方、上下斜め方向の原子a-i-m方向や原子d-i-j方向の結合は、図17の2つの部品の溝iをお互いに差し込むことで、簡単に作る事ができる。また、原子a-f-k方向や原子b-f-j方向、および、原子b-g-l方向や原子c-g-k方向、および、原子c-h-m方向や原子d-h-l方向は、原子a-i-m方向や原子d-i-j方向と等価であり、図17と同じ部品を用いて同様に作ることができる。
【0051】
以上の様に、面心立方格子の骨格は、図15および図16の部品1種類と図17の部品1種類の計2種類の部品だけで簡単に作ることが出来る。 図17の部品の溝の形成角度Φは、図18に示す様に、結晶学的に、<001>方位と<101>方位の成す角度であるから、cosΦ=1/√2 の式より、
Φ=45度と簡単に計算できる。従って、Φ=45度となるように図17の部品の溝を形成してやればよい。
【0052】
また、本発明では、前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって単位格子内の原子配列状態を表現することができる。
【0053】
その一例としてたとえば、図19に本発明に係るダイヤモンド構造の模型を示す。図19は、図1のダイヤモンド構造の骨格の模型の一部を破線21で示す様に紐、或いは、棒で結んだものである。このように紐、或いは、棒で結ぶことで、結ばれた領域を単位格子として、その単位格子内の原子配列状態を把握しやすいものとすることができる。
【0054】
また、本発明では、前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現することもできる。
【0055】
さらに、本発明では、前記部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付ける、および/または、前記部品の化学結合手に相当する部位の色を変えることによって、原子および/または結合の違いを表現することもできる。
【0056】
このような態様の一例を、図20に示す。図20に示す構造の骨格自体は、図1のダイヤモンド構造の骨格の模型と同じであるが、部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付けたり、結合手に相当する部位の色を変えたりすることによって、このように原子や結合がダイヤモンド構造とは違う閃亜鉛(Zincblende)型の結晶格子を表現することが可能である。例えば、III-V族の化合物半導体(AlP、GaAs、InSb等)がこの結晶構造で、黒色の玉31がIII族のAl、Ga、In原子を、白色の玉32がV族のP、As、Sb原子を表している。
【0057】
この場合、原子を表現する玉の構造は特に限定されず、部品の原子に相当する部位に固定できるものであればよい。その一例として、玉の具体例を図21に示す。(1)は、玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をBの方向から見た図である。これらの図に示すように、玉は取付溝33を有し、取付溝33を介して部品の原子に相当する部位にはめ込んで固定されるものとすることができる。
【0058】
また、本発明では、少なくとも、上記いずれかに記載の第1の模型と、該第1の模型と少なくとも形状および/またはサイズが異なる上記いずれかに記載の第2の模型とを連結した模型が提供される。
【0059】
このような連結された模型の一例を以下に説明する。
先ず、図22に、本発明に係るシリコン結晶上に成長した酸化膜の模型を示す。シリコン結晶はダイヤモンド構造であるが、酸化膜はクリストバライト結晶構造となる。
すなわち、図22に示す様に、灰色の玉41がシリコン原子42と結合した酸素原子で、シリコン原子とシリコン原子の間に酸素原子が入り込んで結合した構造である。格子定数は、シリコン結晶の0.543nmに対し、クリストバライトは0.712nmである。
【0060】
図23に、灰色の玉41の拡大図を示す。(1)は、玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をAの方向から見た図である。玉は、取付溝43および取付溝43から突出した凸部44を有している。一方、本発明に係る部品の化学結合手に相当する部位に、あらかじめ凸部44が挿入される挿入溝を形成しておく。これにより灰色の玉41は、部品の挿入溝に凸部44を挿入することで部品に固定することができる。
なお、灰色の玉41は部品の該当位置に固定することができればよく、玉を固定するための玉および部品の構造は以上で説明したものに限定されない。
【0061】
次に、図24に、図19のダイヤモンド構造の模型の上に図22の酸化膜の模型を連結した模型を示す。
図中、a−a’部分が図22に示した酸化膜(クリストバライト構造)の模型であり、b−b’部分が連結部分の模型で、酸化膜とシリコン結晶の界面となる。c−c’部分がシリコン結晶(ダイヤモンド構造)の模型である。
【0062】
このように、複数の模型を連結することで、複数の構造を有する材料を模型でわかりやすく表現することができる。たとえば、上記の通り、酸化膜の格子定数はシリコンより大きく、界面b−b’に格子歪みが発生することになり、すなわち、界面の結合手の長さが他と異なることが模型から視覚的に理解できる。
【0063】
上記では、3つの模型を連結した例を示したが、本発明はこれに限定されず、2つあるいは4つ以上の模型を連結してもよい。
【0064】
また、本発明の模型は、溝ではめ合わせたものであるので、組み立てた後、再度分解できるものである。本発明の模型が組立て後に分解できるものであれば、短時間で簡単に組み立ておよび分解が可能となる。したがって、模型を分解して携行し、出張先で組み立てて使用し、使用後は再度分解して持ち帰ることができる。
【0065】
なお、本発明に係る結晶構造や化合物の分子構造模型の材料は、特に限定されないが、たとえばプラスチック等で作るのが一般に便利である。
【0066】
以上本発明について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。前述の実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るダイヤモンド構造の骨格の模型の一例を示す図である。
【図2】本発明に係るダイヤモンド構造の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図3】本発明に係るダイヤモンド構造の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図4】ダイヤモンド結晶格子の立体図である。
【図5】ダイヤモンド結晶格子を上から見た平面図である。
【図6】単純立方格子の立体図である。
【図7】本発明に係る単純立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る単純立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図9】本発明に係る単純立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図10】体心立方格子の立体図である。
【図11】本発明に係る体心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図12】本発明に係る体心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図13】本発明に係る体心立方格子の骨格の模型の部品が有する溝の形成角度を求める図である。
【図14】面心立方格子の立体図である。
【図15】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図16】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図17】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図18】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品が有する溝の形成角度を求める図である。
【図19】本発明に係るダイヤモンド構造の模型の一例を示す図である。
【図20】本発明に係る閃亜鉛(Zincblende)型の結晶構造の模型の一例を示す図である。
【図21】(1)は、原子を表現する玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をBの方向から見た図である。
【図22】本発明に係るシリコン結晶上に成長した酸化膜の模型の一例でる。
【図23】(1)は、原子を表現する玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をAの方向から見た図である。
【図24】本発明に係る複数の模型を連結した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
11…部品、 12…部品、 13…原子に相当する部位、
14…化学結合手に相当する部位、 15…溝、 16…溝、 17…溝、
21…破線、 31…黒色の玉、 32…白色の玉、 33…取付溝、
41…灰色の玉、 42…シリコン原子、 43…取付溝、 44…凸部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学教材等として利用するための結晶構造および分子構造の模型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の分子模型としては、球と棒を使ったものが一般的である。これは、プラトンの正多面体の角を切り落した、14面体、20面体、26面体、32面体、球などの多面体をその原子表現体とし、その多面体に、原子価角に合わせて連結孔をあけ、多面体の中心間の距離が原子間距離に対応するように棒の両端を上記連結孔に挿し込んで、各多面体を連結したものである(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の模型にあっては、構造に忠実であろうとして、プラトンの正多面体の角を切り落した、14面体、20面体、26面体、32面体、球などの多面体をその原子表現体とすることにより、原子や分子の軌道概念に立脚した原子価角を使用し、原子間距離に対しては夫々の長さに立脚した異なる種類の連結棒を使うために、多面体と連結棒の組合せについては、初学者には複雑でわかり難いものであった。
【0004】
また、1つの模型は約30個から60個の原子を使用することが一般的であるため、例えば、1つの多面体に8本の連結棒を差し込んで作る模型は、240箇所から480箇所の差込み連結が必要となり、模型作りは、半日から1日の長時間作業となり、不便であった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−233900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、初学者でも簡単に短時間で組み立てることができる、結晶構造や分子構造の模型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によれば、結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型が提供される(請求項1)。
【0008】
このように、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品を溝で接合する模型であれば、組み立てが簡便で短時間で行うことができ、初学者でも結晶構造や化合物の分子構造を容易に理解することができる。
【0009】
この場合、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品1種類のみにより、ダイヤモンド構造の骨格を組み立てることができる(請求項2)。
【0010】
このように、本発明によれば、初学者にとって非常に複雑に見えるダイヤモンド構造の骨格を、わずか1種類の部品で簡単に短時間で組み立てることができる。
【0011】
この場合、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品2種類のみにより、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を組み立てることができる(請求項3)。
【0012】
このように、本発明によれば、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を、わずか2種類の部品で簡単に短時間で組み立てることができる。
【0013】
また、前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって単位格子内の原子配列状態を表現することができる(請求項4)。
【0014】
このように、前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって、単位格子内の原子配列状態の把握が極めて容易となり、初学者にもよりわかり易いものとすることができる。
【0015】
また、前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現するものとすることができる(請求項5)。
【0016】
このように、前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現するものとすれば、よりわかり易いものとすることができる。
【0017】
また、前記部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付ける、および/または、前記部品の化学結合手に相当する部位の色を変えることによって、原子および/または結合の違いを表現するものとすることができる(請求項6)。
【0018】
このようにして、原子および/または結合の違いを表現すれば、各原子の結合状態や、異種原子やその結合の違いの把握が極めて容易となる。
【0019】
また、少なくとも、上記本発明のいずれかに基づく第1の模型と、該第1の模型と少なくとも形状および/またはサイズが異なる上記本発明のいずれかに基づく第2の模型とを連結した模型とすることができる(請求項7)。
【0020】
このように、形状および/またはサイズが異なる複数の模型を連結することで、複数の構造を持つ材料の模型を形成して、夫々の構造間の対称性や結合の違いの理解に役立てることができる。
【0021】
また、前記模型は、組み立てた後、再度分解できるものであることが好ましい(請求項8)。
【0022】
このように、前記模型が、組み立ておよび分解できるものであれば、出張時に模型を分解して携行し、出張先で短時間で組み立てて使い、再度分解して持ち帰ることができ、模型の利用範囲を広げることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る結晶構造および分子構造の模型は、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品を、部品に設けられた溝同士を接合して組み立てるため、多面体と連結棒および差込孔の選択が不要で分かり易いものである。さらに、この部品の溝同士を1回接合するだけで複数個の原子と結合手の組み立てが可能となり、トータルの部品数を大幅に減少できるとともに、模型作りの時間を従来の1/5から1/10と大幅に短縮できるようになる。そのため、模型を分解して携行し、出張先での組み立て使用ということも可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上述したように、従来の分子模型は多面体と連結棒および差込孔の選択が必要で、組立てに多大な時間を要していた。そこで、本発明者等は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品を用いることで模型作りの時間が大幅に短縮できることに想到し、本発明を完成させたものである。
【0025】
すなわち、本発明は、結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型を提供する。
【0026】
このように、原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品とすることで、従来のような多面体と連結棒および差込孔の選択が不要となり組立てが分かり易くなった。また、この部品の原子に相当する部位に設けられた溝同士を1回嵌め合わせるだけで複数個の原子と結合手を組み立てることになり、トータルの部品数を大幅に減少できるとともに、模型作りの時間も大幅に短縮できるようになった。
【0027】
たとえば、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品1種類のみにより、ダイヤモンド構造の骨格を組み立てることができる。このような場合を例として本発明に係る模型について以下に具体的に説明する。
【0028】
[ダイヤモンド構造の骨格]
図4に、半導体シリコンの結晶構造であるダイヤモンド構造(ダイヤモンド結晶格子)を示す。初学者にとって、非常に複雑な結晶構造に見えるが、本発明では、この複雑に見えるダイヤモンド構造の骨格を一種類の部品だけで作ることができる。
【0029】
この構造の特徴は1つの原子から4本の結合手が出ている点である。すなわち、原子bから原子aとcの方向と、原子fとgの方向に結合手が出ている。原子a方向の結合手と原子c方向の結合手の成す角abcと、原子f方向の結合手と原子g方向の結合手の成す角fbgは等価で、どちらも109度である。
【0030】
図5は、図4を上から見た図である。図5から、結合手abと結合手bcが直線上にあることや結合手fbと結合手bgも直線上にあること、更に、a-b-cとf-b-gが直交していることが良く判る。同様に、結合手cdとdeおよび結合手hdとdiが直線上にあり、お互い直交していることが判る。
【0031】
この様に、原子a-b-c-f-gの構造と原子c-d-e-h-iの構造が同じであること、更に、原子f-k-h-j-lも原子g-m-i-l-nも同じ構造であることが判る。
【0032】
すなわち、図4のダイヤモンド結晶格子は、原子a-b-c-f-gと原子c-d-e-h-iが並び、その下に、原子f-k-h-j-lと原子g-m-i-l-nが並んでいる。また、原子の並び方が、原子a-b-c-d-eと原子j-k-l-m-nは、同じ様に、109度の傾きを持ったジグザグ形状であることやお互いに直交していることが判る。
【0033】
従って、図4のダイヤモンド結晶格子は、原子の並びのa-b-c-d-eに、原子の並びのf-b-gやh-d-iが直交し、その下に、fkhやgmiが直交し、更に、その下に、原子の並びのj-k-l-m-nが直交して出来ていることが判る。
【0034】
次に、この複雑に見えるダイヤモンド構造の骨格を一種類の部品のみで作り上げる本発明の方法を説明する。
図3に本発明に係る部品12を示す。部品12は、原子に相当する部位13と化学結合手に相当する部位14を一体とした部品であり、原子に相当する部位13に溝15を有するものである。また部品12の結合手14同士の為す角は、上記で説明したダイヤモンド構造の結合手同士の為す角と同じく109度となっている。この部品12の上下を反転させただけの部品11を図2に示す。部品11および部品12は同じ1種類の部品である。
【0035】
図2の部品11は、図4のダイヤモンド構造の原子の並びのa-b-c-d-eに対応し、図3の部品12は、原子の並びのf-b-gやh-d-iやj-k-l-m-nに対応する。
【0036】
このような部品11の溝16に部品12の溝17を直交する様に差し込むことで原子a-b-c-f-gの構造が出来る。同種の部品を同様に組み立てることにより、原子c-d-e-h-iの構造が出来る。同様にして、原子の並びのf-k-hおよびg-m-iは部品11で、j-k-l-m-nは部品12に対応し、これらの部品11と部品12の溝を交互に直交する様に嵌め合いで差し込んで行くことで、簡単に、図1に示すダイヤモンド構造の骨格の模型を組み立てることが可能である。
【0037】
なお、ここでは説明のために部品11および12の色を異なったものとしているが、上述したようにそもそも部品11および12は1種類の部品であり、同じ色の部品としてもよい。
【0038】
また、本発明によれば、前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品2種類のみにより、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を組み立てることができる。
【0039】
[単純立方格子の骨格]
図6に、単純立方格子を示す。本発明では、この結晶構造の骨格を2種類の部品で組み立てることが可能である。
【0040】
この構造の特徴は1つの原子から6本の結合手が出ている点である。すなわち、原子oから原子pとrとsの3方向と、その180度逆の方向である。
【0041】
上面の原子o-p-q-rの構造および下面の原子s-t-u-vの構造は、図7と図8の部品を互いに直交する様に溝同士を嵌め合わせることで作ることが出来る。図7と図8の部品は、上下を反転させただけで、同じ1種類の部品である。
例えば、原子o-p-q-rの構造は図7の部品の溝oとrに図8の部品の溝oとrを、図7の部品の溝pとqに図8の部品の溝pとqを差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。
【0042】
図7と図8の部品とは異なる部品を図9に示す。上面の原子o-p-q-rの構造および下面の原子s-t-u-vの構造を結ぶ結合は、図9の部品の溝o、s、p、t、q、u、r、vを、上面と下面の原子のoとs、pとt、qとu、rとvに相当する所に差し込むことで完成させることが出来る。
以上の様に、単純立方格子の骨格は、2種類の部品だけで簡単に作ることが出来る。
【0043】
[体心立方格子の骨格]
【0044】
図10に体心立方格子を示す。本発明では、この結晶構造の骨格を2種類の部品で組み立てることが可能である。
【0045】
この構造の特徴は1つの原子から8本の結合手が出ている点である。すなわち、原子eから原子aとbとhとiの4方向と、原子cとdとfとgの4方向である。
原子a、b、e、h、iの構造は、図11の2つの部品のeの溝同士をお互いに差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。
【0046】
原子c、d、e、f、gの構造は、図11の部品で作った構造のeの箇所に、図12の2つの部品のeの溝を差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。
以上の様に、体心立方格子の骨格は、図11と図12の2種類の部品だけで簡単に作ることが出来る。
【0047】
なお、図12の部品の溝の形成角度θは、図13に示す様に、結晶学的に、<011>方位と<―111>方位の成す角度であるから、cosθ=2/√6 の式より、
θ=35.3度と簡単に計算できる。従って、θ=35.3度となるように図12の部品の溝を形成してやればよい。
【0048】
[面心立方格子の骨格]
図14に、面心立方格子を示す。本発明では、この結晶構造の骨格を2種類の部品で組み立てることが可能である。
【0049】
この構造の特徴は1つの原子から12本の結合手が出ている点である。すなわち、原子eから原子aとbとcとdの4方向と、原子fとgとhとiの4方向および原子a、b、c、d、eの作る面に対して鏡面対称の方向に4方向である。原子a、b、c、d、eの作る面と原子j、k、l、m、nの作る面は等価であるから、原子eと原子nは等価となり、鏡面対象の方向とは、原子nから原子f、g、h、iの4方向と等価な方向である。原子面a-b-c-d-eは、図15の2つの部品のeの溝をお互いに差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。原子面j-k-l-m-nも、原子面a-b-c-d-eと等価であるから、同様に、図16の2つの部品のnの溝をお互いに差し込むことで簡単に組み立てることが出来る。原子面f-g-h-iも、原子面a-b-c-d-eおよび原子面j-k-l-m-nと等価である。すなわち、原子a、e、dは、原子f、g、hと等価である。従って、図15や図16と同じ部品で作ることが出来る。なお、図15および図16の部品は同じ1種類の部品である。
【0050】
以上の様に、水平面内の結合は、図15や図16の部品で簡単に作る事が出来る。一方、上下斜め方向の原子a-i-m方向や原子d-i-j方向の結合は、図17の2つの部品の溝iをお互いに差し込むことで、簡単に作る事ができる。また、原子a-f-k方向や原子b-f-j方向、および、原子b-g-l方向や原子c-g-k方向、および、原子c-h-m方向や原子d-h-l方向は、原子a-i-m方向や原子d-i-j方向と等価であり、図17と同じ部品を用いて同様に作ることができる。
【0051】
以上の様に、面心立方格子の骨格は、図15および図16の部品1種類と図17の部品1種類の計2種類の部品だけで簡単に作ることが出来る。 図17の部品の溝の形成角度Φは、図18に示す様に、結晶学的に、<001>方位と<101>方位の成す角度であるから、cosΦ=1/√2 の式より、
Φ=45度と簡単に計算できる。従って、Φ=45度となるように図17の部品の溝を形成してやればよい。
【0052】
また、本発明では、前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって単位格子内の原子配列状態を表現することができる。
【0053】
その一例としてたとえば、図19に本発明に係るダイヤモンド構造の模型を示す。図19は、図1のダイヤモンド構造の骨格の模型の一部を破線21で示す様に紐、或いは、棒で結んだものである。このように紐、或いは、棒で結ぶことで、結ばれた領域を単位格子として、その単位格子内の原子配列状態を把握しやすいものとすることができる。
【0054】
また、本発明では、前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現することもできる。
【0055】
さらに、本発明では、前記部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付ける、および/または、前記部品の化学結合手に相当する部位の色を変えることによって、原子および/または結合の違いを表現することもできる。
【0056】
このような態様の一例を、図20に示す。図20に示す構造の骨格自体は、図1のダイヤモンド構造の骨格の模型と同じであるが、部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付けたり、結合手に相当する部位の色を変えたりすることによって、このように原子や結合がダイヤモンド構造とは違う閃亜鉛(Zincblende)型の結晶格子を表現することが可能である。例えば、III-V族の化合物半導体(AlP、GaAs、InSb等)がこの結晶構造で、黒色の玉31がIII族のAl、Ga、In原子を、白色の玉32がV族のP、As、Sb原子を表している。
【0057】
この場合、原子を表現する玉の構造は特に限定されず、部品の原子に相当する部位に固定できるものであればよい。その一例として、玉の具体例を図21に示す。(1)は、玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をBの方向から見た図である。これらの図に示すように、玉は取付溝33を有し、取付溝33を介して部品の原子に相当する部位にはめ込んで固定されるものとすることができる。
【0058】
また、本発明では、少なくとも、上記いずれかに記載の第1の模型と、該第1の模型と少なくとも形状および/またはサイズが異なる上記いずれかに記載の第2の模型とを連結した模型が提供される。
【0059】
このような連結された模型の一例を以下に説明する。
先ず、図22に、本発明に係るシリコン結晶上に成長した酸化膜の模型を示す。シリコン結晶はダイヤモンド構造であるが、酸化膜はクリストバライト結晶構造となる。
すなわち、図22に示す様に、灰色の玉41がシリコン原子42と結合した酸素原子で、シリコン原子とシリコン原子の間に酸素原子が入り込んで結合した構造である。格子定数は、シリコン結晶の0.543nmに対し、クリストバライトは0.712nmである。
【0060】
図23に、灰色の玉41の拡大図を示す。(1)は、玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をAの方向から見た図である。玉は、取付溝43および取付溝43から突出した凸部44を有している。一方、本発明に係る部品の化学結合手に相当する部位に、あらかじめ凸部44が挿入される挿入溝を形成しておく。これにより灰色の玉41は、部品の挿入溝に凸部44を挿入することで部品に固定することができる。
なお、灰色の玉41は部品の該当位置に固定することができればよく、玉を固定するための玉および部品の構造は以上で説明したものに限定されない。
【0061】
次に、図24に、図19のダイヤモンド構造の模型の上に図22の酸化膜の模型を連結した模型を示す。
図中、a−a’部分が図22に示した酸化膜(クリストバライト構造)の模型であり、b−b’部分が連結部分の模型で、酸化膜とシリコン結晶の界面となる。c−c’部分がシリコン結晶(ダイヤモンド構造)の模型である。
【0062】
このように、複数の模型を連結することで、複数の構造を有する材料を模型でわかりやすく表現することができる。たとえば、上記の通り、酸化膜の格子定数はシリコンより大きく、界面b−b’に格子歪みが発生することになり、すなわち、界面の結合手の長さが他と異なることが模型から視覚的に理解できる。
【0063】
上記では、3つの模型を連結した例を示したが、本発明はこれに限定されず、2つあるいは4つ以上の模型を連結してもよい。
【0064】
また、本発明の模型は、溝ではめ合わせたものであるので、組み立てた後、再度分解できるものである。本発明の模型が組立て後に分解できるものであれば、短時間で簡単に組み立ておよび分解が可能となる。したがって、模型を分解して携行し、出張先で組み立てて使用し、使用後は再度分解して持ち帰ることができる。
【0065】
なお、本発明に係る結晶構造や化合物の分子構造模型の材料は、特に限定されないが、たとえばプラスチック等で作るのが一般に便利である。
【0066】
以上本発明について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。前述の実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るダイヤモンド構造の骨格の模型の一例を示す図である。
【図2】本発明に係るダイヤモンド構造の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図3】本発明に係るダイヤモンド構造の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図4】ダイヤモンド結晶格子の立体図である。
【図5】ダイヤモンド結晶格子を上から見た平面図である。
【図6】単純立方格子の立体図である。
【図7】本発明に係る単純立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る単純立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図9】本発明に係る単純立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図10】体心立方格子の立体図である。
【図11】本発明に係る体心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図12】本発明に係る体心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図13】本発明に係る体心立方格子の骨格の模型の部品が有する溝の形成角度を求める図である。
【図14】面心立方格子の立体図である。
【図15】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図16】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図17】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品の一例を示す図である。
【図18】本発明に係る面心立方格子の骨格の模型の部品が有する溝の形成角度を求める図である。
【図19】本発明に係るダイヤモンド構造の模型の一例を示す図である。
【図20】本発明に係る閃亜鉛(Zincblende)型の結晶構造の模型の一例を示す図である。
【図21】(1)は、原子を表現する玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をBの方向から見た図である。
【図22】本発明に係るシリコン結晶上に成長した酸化膜の模型の一例でる。
【図23】(1)は、原子を表現する玉を下から見た図であり、(2)は(1)のA―A’断面図であり、(3)は(1)をAの方向から見た図である。
【図24】本発明に係る複数の模型を連結した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
11…部品、 12…部品、 13…原子に相当する部位、
14…化学結合手に相当する部位、 15…溝、 16…溝、 17…溝、
21…破線、 31…黒色の玉、 32…白色の玉、 33…取付溝、
41…灰色の玉、 42…シリコン原子、 43…取付溝、 44…凸部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型。
【請求項2】
前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品1種類のみにより、ダイヤモンド構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする請求項1に記載の模型。
【請求項3】
前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品2種類のみにより、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を組み立てるものであることを特徴とする請求項1に記載の模型。
【請求項4】
前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって単位格子内の原子配列状態を表現するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の模型。
【請求項5】
前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の模型。
【請求項6】
前記部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付ける、および/または、前記部品の化学結合手に相当する部位の色を変えることによって、原子および/または結合の違いを表現するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の模型。
【請求項7】
少なくとも、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の第1の模型と、該第1の模型と少なくとも形状および/またはサイズが異なる請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の第2の模型とを連結したものであることを特徴とする模型。
【請求項8】
前記模型は、組み立てた後、再度分解できるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の模型。
【請求項1】
結晶構造や化合物の分子構造を立体的に表現する模型であって、少なくとも原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品が、前記原子に相当する部位に溝を有し、該溝同士を嵌め合わせることにより前記部品を接合して前記結晶構造や化合物の分子構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする模型。
【請求項2】
前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品1種類のみにより、ダイヤモンド構造の骨格を組み立てるものであることを特徴とする請求項1に記載の模型。
【請求項3】
前記原子に相当する部位と化学結合手に相当する部位を一体とした部品2種類のみにより、単純立方格子、体心立方格子、面心立方格子のいずれかの骨格を組み立てるものであることを特徴とする請求項1に記載の模型。
【請求項4】
前記模型の一部を紐、或いは、棒で結ぶことによって単位格子内の原子配列状態を表現するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の模型。
【請求項5】
前記部品の原子に相当する部位に玉を付けることによって、原子を表現するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の模型。
【請求項6】
前記部品の原子に相当する部位に色の異なる玉を付ける、および/または、前記部品の化学結合手に相当する部位の色を変えることによって、原子および/または結合の違いを表現するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の模型。
【請求項7】
少なくとも、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の第1の模型と、該第1の模型と少なくとも形状および/またはサイズが異なる請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の第2の模型とを連結したものであることを特徴とする模型。
【請求項8】
前記模型は、組み立てた後、再度分解できるものであることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の模型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2007−155768(P2007−155768A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−346368(P2005−346368)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(590002172)株式会社プレテック (41)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(590002172)株式会社プレテック (41)
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