説明

結晶質固体の製造方法

【課題】 結晶質固体、特にチタンゼオライトの製造。
【解決手段】 群IIIa、IVa及びVaから選択される少なくとも1種の元素と、少なくとも1種の遷移金属を含有する結晶質固体の製造方法であって、群IIIa、IVa及びVaからの元素の少なくとも1種の酸化物源と、予め水のpKa以下のpKaを有するアルコールに溶解された、少なくとも1種の遷移金属酸化物源とが、鉱化剤を含有する水性溶媒中で加水分解され、このように得られたゲルが、構造剤の存在で結晶化されることを特徴とする方法。また、群IIIa,IVaおよびVaの元素はアルミニウム、ケイ素、リンであり、好ましくはケイ素である。遷移金属はチタン、バナジウム、ジルコニウム等である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶質固体、特にチタンゼオライトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】文献に記載されたチタンゼオライトの最初の合成は、米国特許第4,666,692号及び第4,410,501号の主題を形成し、後者はチタンシリカライトに特定している。使用された合成法は、加水分解性ケイ素酸化物源(アルコキシドのような)、チタンアルコキシド、任意に、鉱化剤(加水分解に必要なOH-イオンを与える)と構造剤(結晶構造に影響を与える)の両方として作用するアルカリ性オキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、及び水の反応によって得られるゲルの水熱処理から成る。多量のチタンをシリカライトに取込むことが望ましい場合、酸化ケイ素の原料より反応性の酸化チタンの原料は、H22溶液で予め処理して、アナターゼ型の酸化チタンの沈殿が結晶格子の外側に生じるのを回避しなければならない。この処理及びその後の窒素性有機塩基の添加は、遅くかつ冷却条件下で行われ、製造工程を困難にする。さらに、シリカライトの結晶化の前にケイ素とチタンアルコキシドの加水分解の結果生じるアルコールはエバポレートされる。このエバポレーションは時間がかかり、エネルギーを消耗し、さらに工業規模で行う操作を困難にし、なおかつエバポレーション後の水分含量の調整を必要とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】Thangarajら(Zeolites,1992,第12巻,11月/12月,p.943-950)は、H22溶液の使用を克服し、かつ格子中に多量のチタンを取込むことを可能にするTS-1の合成の改良方法を提案した。この方法は、窒素性有機塩基(TPAOH又はテトラ-n-プロピルアンモニウムヒドロキシド)の溶液の第1部分を、STEO(ケイ素テトラエトキシド)に添加すること、及びTTBO(チタンテトラ-n-ブトキシド)のiPrOH(イソプロルアルコール)溶液を、その混ぜた混合物に滴下することにある。撹拌後、窒素性有機塩基の溶液の残りが加えられ、その混合物を加熱してアルコールをエバポレートする。この方法は、加水分解に関して非常に不安定なTTBOのアルコール溶液を使用し、それゆえ酸化チタン沈殿物の形成を促進するという欠点を示す。さらに、結晶化前にゲル中に存在するアルコールのエバポレーションの工程を含む。
【0004】最近、Tuel(Catalysis Letters,51,1998,p.59-63)は、ゲル中に存在するイソプロピル(iPrOH)、エチル(EtOH)及びn-ブチル (nBuOH)アルコールをエバポレーションせずに同一反応物で始めてTS-1を合成でき、このことが結晶構造及びTS-1がフェノールのH22とのヒドロキシル化の反応で触媒として使用されるときのTS-1の活性に影響を及ぼさないことを示した。それにもかかわらず、この方法は、未だチタンアルコキシドのアルコール溶液を使用し、加水分解に関して非常に不安定なため、その溶液はその製造後素早くかつ注意深く使用しなければならないという欠点を示す。
【0005】
【課題を解決するための手段】出願人の会社は、驚くべきことに、群IIIa、IVa及びVaからの元素の少なくとも1種の酸化物源と、少なくとも1種の遷移金属酸化物源から出発する結晶質固体の合成の際に、遷移金属酸化物源を溶解するために、水のpKa以下のpKaを有するアルコールを選択すると、この溶液を水性加水分解溶媒に添加する際に沈殿物を形成することにならず、かつ使用前に貯蔵可能な安定した溶液を得ることができることを見いだした。さらに、このアルコールは、得られる結晶質固体の結晶構造及び触媒活性に影響を及ぼすことなく、結晶化の際に残存することができる。従って、遷移金属の酸化物源を溶解するために、水のpKa以下のpKaを有するアルコールを使用するという事実が、利用し易く、かつ例えばアナターゼのような結晶格子の外側に金属酸化物の沈殿の形成を容易に低減し、全く回避することさえ可能な方法に従って結晶質固体を得ることを可能にする。
【0006】従って、本発明は、群IIIa、IVa及びVaから選択される少なくとも1種の元素と、少なくとも1種の遷移金属を含有する結晶質固体の製造方法であって、群IIIa、IVa及びVaからの元素の少なくとも1種の酸化物源と、予め水のpKa以下のpKaを有するアルコールに溶解された、少なくとも1種の遷移金属酸化物源とが、鉱化剤を含有する水性溶媒中で加水分解され、このように得られたゲルが、構造剤の存在で結晶化されることを特徴とする方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の結晶質固体は、原子が結晶格子を画定するように配列され、かつ群IIIa、IVa及びVaから選択される少なくとも1種の元素と、少なくとも1種の遷移金属を含むすべての固体を意味する。群IIIa、IVa及びVaの元素は、アルミニウム、ケイ素又はリンでありうる。この元素は、好ましくはケイ素である。遷移金属は、チタン、バナジウム、ジルコニウム、クロム、鉄又はコバルトでありうる。この元素は、好ましくはチタンである。
【0008】これら結晶質固体は、有利にはゼオライトである。それらは、好ましくはチタンゼオライトである。用語「チタンゼオライト」は、ゼオライト型のマイクロ細孔結晶構造を示すシリカを含み、かつ数個のケイ素原子がチタン原子と置換されている固体を意味するものと理解される。チタンゼオライトは、有利にはZSM-5又はZSM-11型の結晶構造を示す。それは、アルミニウムの無いゼオライトβ型の結晶構造をも示しうる。それは、好ましくは約950〜960cm-1で赤外線吸収バンドを示す。シリカライト型のチタンゼオライトは、非常に安定である。式xTiO2(1−x)SiO2で、式中xが0.0001〜0.5、好ましくは0.001〜0.05に対応するチタンゼオライトは優れた性能を有する。TS-1の名称で知られるこの型の物質は、ゼオライトZSM-5の結晶構造に類似したマイクロ細孔結晶ゼオライト構造を示す。これら化合物の特性及び主用途は公知である(B.Notari;Structure-Activity and Selectivity Relationship in Heterogeneous Catalysis;P.K.Grasselli and A.W. Sleight Editors;Elsevier;1991;p.243-256)。
【0009】群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源は、例えばこの元素のアルコキシドのようなこの元素の加水分解性化合物である。それがケイ素の場合、酸化物源は、コロイドシリカ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属シリケート、及びケイ素アルコキシドから選択されうる。後者が特に好適である。本発明の遷移金属酸化物源は、例えばTiCl3のような遷移金属ハライド、又は遷移金属アルコキシドでありうる。遷移金属アルコキシドは、特に好適である。チタンアルコキシドは良い結果を与える。
【0010】用語「ケイ素又はチタンアルコキシド」は、一般式M(OR)4で、式中Mがケイ素又はチタンのどちらかで、かつRが炭化水素基に相当する化合物を意味するものと理解される。ケイ素アルコキシドは、好ましくはケイ素テトラアルコキシドである。アルコキシド基は、有利には10個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子、さらに好ましくは4個までの炭素原子を含む。ケイ素テトラアルコキシド又はSTEOは、良い結果を与える。チタンアルコキシドは、好ましくはチタンテトラアルコキシドである。アルコキシド基は、有利には10個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子、さらに好ましくは4個までの炭素原子を含む。本発明の方法により、チタンアルコキシドが、水のpKa以上のpKaを有するアルコールから誘導される場合に良い結果が得られる。このようなアルコールの例は、エタノール、プロパノール及びブタノールである。チタンテトラ-n-ブトキシド又はTTBOは、優れた結果を与える。
【0011】群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源と、遷移金属酸化物源の加水分解に必要な水酸化イオンを供給する鉱化剤、及び適切な結晶構造への結晶化を促進する構造剤は、それぞれ一方がアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基、他方がアミン、ホスフィン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アルコール若しくはアミノ酸のような2つの別個の化合物でありうる。代わりに、それらは四級アンモニウム塩基のように、1種かつ同一化合物でありうる。テトラ-n-プロピルアンモニウムヒドロキシド又はTPAOHのような四級アンモニウム塩基(アルキルは、10個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子、さらに好ましくは4個までの炭素原子を含みうる)は、鉱化剤と構造剤の両方として作用するのに特に好適である。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド又はテトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシドも好適である。しかし、この塩基の一部分を対応する三級アミンで置き換えると、経済的に有利であることがわかる。従って、塩基は、(アミン)/(塩基+アミン)モル比が1〜35%、特に20〜30%、例えば約25%であるような量のアミンと混合することができる。良い結果は、特にこのような比率でTPAOHをトリプロピルアミンと混合することによって得られる。
【0012】鉱化剤は、通常10質量%以上、好ましくは15質量%以上の濃度の水溶液である。鉱化剤の質量濃度は、好ましくは50%以下、実際は25%以下でさえある。約20%の濃度が、良い結果を与える。鉱化剤の溶液は、通常アルカリ金属及びアルカリ土類金属に消耗される。それは、好ましくは200ppm未満、実際は25ppm未満のこれら金属を含み、理想的には2ppm未満である。
【0013】本発明の文脈では、用語「アルコール」について、もっぱら一般的な意味で受け入れられ、かつちょうど直鎖若しくは環状、飽和若しくは不飽和、及び無置換で部分的に置換され若しくは完全に置換された脂肪族アルコールと同様におそらくフェノール(無置換で部分的に置換され又は完全に置換されたフェノール)を含むことが当を得ている。脂肪族アルコールが特に推奨される。10個までの炭素原子、好ましくは6個までの炭素原子、例えば4個までの炭素原子を含むものが好適である。水のpKa以下のpKaを有する本発明の脂肪族アルコールの例は、2,2,2-トリフルオロエタノール、2-メトキシエタノール及び2-エトキシエタノール(EtOEtOH)である。後者は良い結果を与える。同様に、本発明の文脈では、用語「ゲル」については、単一溶液(液体)から高いコンシステンシーを有する真のゲルまでの範囲の広い意味で受け入れることが当を得ている。
【0014】水のpKa以下のpKaを有するアルコール中の遷移金属酸化物源の溶解によって得られる溶液を加熱することが有利だろう。この結果、この溶液は通常少なくとも30℃、特に少なくとも32℃の温度に加熱される。この温度は、通常50℃を超えず、特に40℃を超えず、ほぼ35℃の温度が良い結果を与える。溶液が加熱される時間は、通常少なくとも1分、特に少なくとも10分である。この時間は、通常60分を超えず、特に45分を超えない。ほぼ30分の時間が良い結果を与える。
【0015】結晶化されるゲルの形成で沈殿する反応物、すなわち群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源、アルコール溶液中の遷移金属酸化物源、水及び鉱化剤は、いずれの順で混合してもよいが、遷移金属酸化物の沈殿が生じないように留意される。1つの可能な方法は、まず群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源、遷移金属酸化物源及びアルコールを混合し、次いで、好ましくは冷却状態(0〜5℃)で、ゆっくりと鉱化剤の水溶液を添加することにある。
【0016】他の方法によれば、群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源を、鉱化剤水溶液の第1フラクションと混合して第1溶液が調製され;遷移金属酸化物源をアルコールと混合して第2溶液が調製され;これら2つの溶液が混合され、この混合物に鉱化剤水溶液の第2フラクションが添加される。この方法では、群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源に添加される鉱化剤水溶液のフラクションは、鉱化剤の全フラクションの通常60%以上、好ましくは70%以上である。それは、有利には99%を超えず、実際には90%さえ超えない。この第2の方法は、第1の方法に対して以下の2つの利点を有する:第1に、それは結晶格子中に導入される遷移金属の比率を減らすことを可能にし、第2に、それは室温で、冷却状態下でなく、かつ短時間で加水分解操作を行うことを可能にする。
【0017】さらに別の方法では、群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源を、全鉱化剤と混合して第1溶液が調製され;次いで遷移金属酸化物源をアルコールと混合して第2溶液が調製され、その2つの溶液が混合される。持続時間、すなわちこれらの混合及び撹拌操作のスピードを調整して、沈殿物の形成を回避する。上述の混合操作は、好ましくは窒素下で行われる。それらは少なくとも60℃、実際には少なくとも75℃の温度で加熱することによって、アルコールのエバポレーションに供することができる。この温度は、通常100℃以下、好ましくは90℃である。ほぼ85℃の温度が非常に好適である。加熱の持続時間は、好ましくはアルコールを完全に除去するのに必要な時間である。それは、1時間〜10時間、特に3〜5時間で変えることができる。
【0018】アルコールの無い又は欠いていないゲルは、結晶化前に当該組成を調整するために添加される水及び/又はアルコールを引き続き有することができる。アルコールの存在下で結晶化を行うという事は、驚くべきことに、反応による固体の収量(すなわち、使用する群IIIa、IVa及びVaからの元素及び遷移金属の酸化物の前駆体の質量に基づいて計算される理論値に対して、か焼後に回収される固体の質量)を高めることができる。
【0019】結晶化前のゲルの組成は、通常以下を示す:−モル比(遷移金属/群IIIa、IVa及びVaからの元素)は、通常0.0005モル/モル以上、好ましくは0.001モル/モル以上であり;このモル比は、通常0.1モル/モルを超えず、好ましくは0.05モル/モルを超えない;−モル比(鉱化及び構造剤/群IIIa、IVa及びVaからの元素)は、通常0.05モル/モル以上、好ましくは0.1モル/モル以上であり;このモル比は、1モル/モルを超えず、好ましくは0.5モル/モルを超えず;標準的には0.12〜0.3の値;−モル比(H2O/群IIIa、IVa及びVaからの元素)は、通常5モル/モル以上、好ましくは10モル/モル以上であり;このモル比は、通常200モル/モルを超えず、好ましくは100モル/モルを超えず;標準的には10〜40の値;−モル比(群IIIa、IVa及びVaからの元素の酸化物源の加水分解によって生じるアルコール/群IIIa、IVa及びVaからの元素)は、通常0モル/モル以上であり;このモル比は、通常4モル/モルを超えない;−モル比(遷移金属酸化物源の加水分解によって生じるアルコール/群IIIa、IVa及びVaからの元素)は、通常0モル/モル以上であり;このモル比は、通常0.2モル/モルを超えない;−モル比(遷移金属酸化物源を溶解するアルコール/群IIIa、IVa及びVaからの元素)は、通常0.002モル/モル以上であり、好ましくは0.1モル/モル以上であり;このモル比は、通常10モル/モルを超えず、好ましくは8モル/モルを超えず;標準的には0.75〜5の値である。
【0020】結晶化されるゲルは、通常アルカリ性のpHであり、好ましくは、少なくともpH10である。結晶化は、通常、オートクレーブ内で行われる加熱処理の際に果たされる。用語「オートクレーブ」は、その内部の圧力、温度及び存在する反応物に対して耐えうる適度な機械的強度及び耐薬品性を備えた密封容器を記載するのに使用される。この容器は、さらに1種以上の熱調整手段及び撹拌手段を備える。それは、温度及び圧力調整手段及び適宜の安全装置をも備える。
【0021】加熱処理の持続時間は、好ましくは1時間以上、実際には5時間以上でさえある。加熱処理の持続時間は、好ましくは120時間を超えず、実際には72時間さえ超えず、標準的には10〜24時間である。加熱処理の際の平均温度は、通常100℃以上、好ましくは130℃以上である。それは、通常220℃以下、好ましくは200℃以下であり、標準的には150〜180℃の温度であり、例えば約175℃である。
【0022】結晶化後、懸濁液中の固体粒子は、通常の手段(遠心分離、ろ過、噴霧等)によって液状反応溶媒から分離され、任意に洗浄されうる。液状反応溶媒から分離され又は分離されない結晶化粒子は、好ましくは乾燥される。乾燥は、いずれの公知の手段によっても行うことができる。乾燥され又は未乾燥の結晶化粒子は、通常、好ましくは空気下、か焼に供される。か焼の持続時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上である。か焼の持続時間は、通常72時間以下、好ましくは24時間以下であり、標準的には5〜15時間である。か焼温度は、通常400℃以上、好ましくは500℃以上である。か焼温度は、一般に650℃以下、通常600℃以下である。それは、例えば約550℃である。
【0023】本発明の方法は、有利に、オレフィン化合物、好ましくは塩化アリル又はプロピレンと、ペルオキシド化合物、好ましくは過酸化水素との反応によるオキシランの製造方法に組み込むことができる。結果として、本発明の方法は、結晶質固体が上述の方法に従って製造され、かつこの結晶質固体が、オレフィン化合物、好ましくは塩化アリル又はプロピレンと、ペルオキシド化合物、好ましくは過酸化水素との反応のための触媒として使用されるオキシランの製造方法に関する。
【0024】
【実施例】本発明は、以下の実施例によって限定されることなく説明される。これら実施例に関連する実験条件は以下に記載され、その結果は表1に示される。
実施例C1:本発明に従わず35gのSTEO(約38ml)と、0.96g(0.89ml)のTTEOとを空気を除いて混合し、その混合物を窒素下、35℃で30分間撹拌した。次いで、その混合物を窒素下、0℃に冷却し、それに、撹拌しながら以下の添加プロフィル:最初の2mlは0.1ml/分、次の2mlは0.2ml/分、次の4mlは0.5ml/分、かつバランス用に1.0ml/分で、47.5g(47.5ml)の20質量%TPAOH溶液を加えた。沈殿物の出現は、最初の2mlの添加の際、2〜4mlの間の凝結の際、及び4〜47.5mlの再溶解の際に観察された。
【0025】得られた溶液を0.5時間かけて65℃にして、窒素下、撹拌しながら3時間そのままにした。約67mlに等しい量の水を添加した。その混合物を175℃のオートクレーブ内で64時間加熱し、7×105Pa(7バール)下、0.025μmのミリポアフィルターでろ過した。収集された固体を90℃のオーブン内で一晩中乾燥してから、空気下10時間550℃で、か焼した。そして、この反応による固体の収率を計算した。
【0026】得られたシリカライトの1フラクションを、そのチタン含量を測定する目的でICP-OASにより、またそのアナターゼ含量を測定する目的でXRD(X線回折)により分析した。得られたシリカライトの別のフラクションを、ALC(塩化アリル)と希釈H22(30〜35質量%)のエポキシ化の試験に、以下の条件下:溶媒=CH3OH、25℃、750rpm、2.6モルALC/kg、1.3モルH22/kg、ALC/H22=2モル/モル、CH3OH/ALC=7.2モル/モル、20gのTi/kgを含有する2質量%の触媒;で使用した。H22は、20分かけて添加し、反応溶媒の温度の増加を制限する。21分及び90分の反応後試料を取り除く。それらを、残留H22含量を測定するためにヨードメトリーで分析し、有機化合物の同定のためにガスクロマトグラフィーで分析した(反応の最後、すなわち90分で収集したフラクションのみ)。
【0027】実施例2:本発明に従う進める手順は、以下の点に関して以外、上述の実施例1と同様である:−STEOとTTEOの混合物に、EtOEtOH(Siに関して0.1モル/モル)を添加し、−アルコールのエバポレーションは、85℃で行い、−加熱処理後の固体の回収は、超遠心分離によって行った。
沈殿物の形成は、TPAOHのSTEO、TTEO及びEtOEtOHの混合物への添加の際に観察されなかった。
【0028】実施例C3:本発明に従わず進める手順は、Thangarajによって推奨され、かつ以下の段階を含む手順に従う:−窒素下、TTBO(1.86g)を乾燥イソプロパノール(iPrOH)(13.3ml)に溶解、かつ35℃で30分間撹拌し、−20質量%のTPAOH水溶液の一部をSTEOへ添加し(25℃で10分かけて48.2mlを添加)、15分間撹拌し、−そのTTBO溶液を窒素下かつ室温で、予め加水分解されたSTEOに添加し(16ml/時間)、かつ30分間この温度に保持し、−残りのTPAOHを上述の混合物に添加し(16ml/時間で16ml)、−操作の続きは、実施例2と同一である(アルコールのエバポレーション、加熱処理、か焼及び分析)。
TTBOの溶液をiPrOHに注入するための管の末端に僅かな沈殿物が観察された。
【0029】実施例4:本発明に従う進める手順は、iPrOHに代えて2-エトキシ-エタノール(EtOEtOH)を使用し、かつ結晶化の持続時間が136時間であること以外、上述の実施例3と同一である。TTBOの溶液をEtOEtOHにTTBO溶液を注入するための管の末端に沈殿物は観察されなかった。
【0030】実施例5:本発明に従う進める手順は、以下の点に関して以外、上述の実施例3の手順と同一である:−使用する反応物の量は、モル組成が1Si−0.034Ti−0.28TPAOH−28H2O−4.9アルコールであるゲルを導く;
−アルコールの性質:EtOEtOH;
−アルコールは、結晶化前にエバポレーションされないこと;
−結晶化の持続時間:18時間;
−固体の回収を噴霧によって行うこと。
このアルコール中のTTBOの溶液は、空気に対して数日間安定であり、従ってiPrOH中のTTBO溶液よりも容易に処理できる。
【0031】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 群IIIa、IVa及びVaから選択される少なくとも1種の元素と、少なくとも1種の遷移金属を含有する結晶質固体の製造方法であって、群IIIa、IVa及びVaからの元素の少なくとも1種の酸化物源と、予め水のpKa以下のpKaを有するアルコールに溶解された、少なくとも1種の遷移金属酸化物源とが、鉱化剤を含有する水性溶媒中で加水分解され、このように得られたゲルが、構造剤の存在で結晶化されることを特徴とする方法。
【請求項2】 群IIIa、IVa及びVaからの前記元素がケイ素であり、かつ前記遷移金属がチタンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記結晶質固体が、チタンゼオライト、好ましくはTS-1である請求項2に記載の方法。
【請求項4】 ケイ素酸化物源が、ケイ素アルコキシド、好ましくはケイ素テトラエトキシドである請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】 チタン酸化物源が、チタンアルコキシド、好ましくはチタンテトラ-n-ブトキシドのような、水のpKa以上のpKaを有するアルコールから誘導されたチタンアルコキシドであり、かつ前記アルコールが2-エトキシエタノールである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】 テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、好ましくはテトラ-n-プロピルアンモニウムヒドロキシドが、鉱化剤と構造剤の両方として作用する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】 テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが、対応する三級アミンと混合された水性溶媒中に導入される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】 群IIIa、IVa及びVaからの元素の前記酸化物源を、前記鉱化剤水溶液の第1フラクションと混合して第1溶液が調製され;前記遷移金属酸化物源を、前記アルコールと混合して第2溶液が調製され;これら2つの溶液が混合され、この混合物に、前記鉱化剤水溶液の第2フラクションが添加される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】 前記ゲルが、結晶化前に、アルコールのエバポレーションに供されない、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】 結晶質固体が、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に従って製造され、かつこの結晶質固体が、オレフィン化合物、好ましくは塩化アリル又はプロピレンと、ペルオキシド化合物、好ましくは過酸化水素との反応のための触媒として使用される、オキシランの製造方法。

【公開番号】特開2001−278619(P2001−278619A)
【公開日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−41962(P2001−41962)
【出願日】平成13年2月19日(2001.2.19)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ (252)