説明

給排水機能付口腔ケア用器具

【課題】電動歯ブラシと給水器とを連結継手で連結するだけの簡易な構成とし、安価で且つ持ち運びに便利で手軽に使用でき、口腔ケア時に両手で操作する必要がなく、電動歯ブラシや給水器の操作を片手で容易に行える給排水機能付口腔ケア用器具を提供する。
【解決手段】給水孔10cと排水孔10dを有するブラシ部10とを備えた電動歯ブラシ4と、ブラシ部10に洗浄水を供給する給水器6と、電動歯ブラシ4及び給水器6を取り付ける取付部22,24を略十字状に連結した連結継手8とを有する。電動歯ブラシ4の起動スイッチ12b及び給水器6の操作部20を給水器6を取り付ける取付部24の軸線方向の同一方向側から操作可能とする。連結継手8を口腔ケア用器具2の操作のための把持部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、嚥下障害をもつ障害者、あるいは嚥下障害以外で摂食を自力で行うことができない障害者や高齢者等、自己で歯磨きやうがい等の口腔ケアを行うのが困難な人(被施行者)に対して、医療施設や福祉施設、あるいは在宅等において、看護士や介護福祉士、あるいは家族等の施行者が口腔ケアを行う場合に有効な給排水機能付口腔ケア用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
概して、嚥下障害をもつ障害者、あるいは嚥下障害以外で摂食を自力で行うことができない障害者や高齢者等、自己で歯磨きやうがい等を行うのが困難な人に対して、家族や看護士、介護福祉士等の施行者が口腔ケアを行う場合には、給水のための機器に接続された歯ブラシと、吸引のための機器に接続された吸引器とを備えた口腔ケア専用機器を使用して口腔ケアを行うのが一般的である。
【0003】
しかしながら、この口腔ケア専用機器は、例えば特許文献1に示されているように、洗浄水及び排水を収容する容器、洗浄水の給水及び洗浄後の排水の吸引を行うポンプ、機器全体の制御を行う操作パネルを備えた制御部等を備えるために、非常に高価であり、特に在宅で介護等を行う者にとっては、該機器の購入及び維持管理が経済的に大きな負担になるばかりでなく、機器全体が大きく重量も重いため、施行者が被施行者の口腔ケアを行うときには、被施行者のところまでワゴン等に載せて運搬する必要があり、持ち運びが非常に困難であるという問題点があった。そのため、口腔ケア用器具は、その全体構成を簡単、軽量化し、簡便な器具として構成することが望まれている。
さらに、被施行者の口腔ケアを行うに際しては、施行者が給水及び歯磨き等の口腔ケアのための操作と、被施行者の口唇を部分的に開かせる操作と、口腔内に給水された洗浄水の口腔ケア後の排水を吸引するための吸引器の操作等とを同時に行う必要があるため、必然的に施行者は両手を使用して被施行者に対して口腔ケアを行わねばならず、施行者が単独で被施行者に口腔ケアを充分に行うのが非常に困難であるという問題点も指摘されている。
【特許文献1】特開平11−103938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の技術的課題は、口腔ケア時に口腔内に給水すべき洗浄水は量的に少なくてすむことに着目して、自己で歯磨きやうがい等の口腔ケアを行うのが困難な被施行者のための口腔ケア用器具を、当該口腔ケア用器具をポンプ等の給水のための設備に接続する必要がない簡易な構成として、安価で且つ持ち運びに便利で手軽に使用することができ、しかも被施行者に対して口腔ケアを行うときの電動歯ブラシの起動や給水器によるブラシ部への給水のための操作を片手で容易に行うことが可能な給排水機能付口腔ケア用器具を提供することにある。
また、本発明の他の技術的課題は、上記吸引器を手動式、足踏式、又は電池若しくは家庭用コンセントへの接続により駆動する電動式で小型のものとすることにより、当該口腔ケア用器具をより簡便な構成として、特に在宅で介護等を行う施行者がより一層容易に被施行者の口腔ケアを行えるようにした給排水機能付口腔ケア用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、洗浄水の給水孔と吸引器に接続するための配管に連通させた排水孔とを有するブラシ部を備えた電動歯ブラシと、該電動歯ブラシにおけるブラシ部の給水孔に連通して該ブラシ部に洗浄水を供給するためのピストン形の手動の給水器と、それらの電動歯ブラシ及び給水器を取り付けるためのそれらの長手方向に沿う取付部を略十字状に連結することにより構成した連結継手とを有し、上記電動歯ブラシの起動スイッチ及び給水器におけるブラシ部の給水孔への給水操作のためのピストン操作部を、給水器を取り付ける取付部の軸線方向の同一方向側から操作可能として、上記電動ブラシ及び給水器が連結継手に組み付けられ、上記連結継手を、当該口腔ケア用器具の操作のための把持部としたことを特徴とするものである。
【0006】
本発明の好ましい実施形態においては、上記給水器を注射器で構成し、該注射器の注口と上記電動歯ブラシにおけるブラシ部の給水孔とが給水用の配管で連結される。
また、本発明の他の好ましい実施形態においては、上記吸引器が、手動式、足踏式、又は電動式の真空発生器で構成される。
本発明の他の好ましい実施形態においては、上記吸引器とブラシ部との間に接続した配管に、上記吸引器からの吸引を停止させるバルブが付設され、該バルブが、上記吸引器若しくは電動歯ブラシ、又はそれらを組み付けた連結継手の周囲に固定される。この場合、上記吸引器は、手動式又は足踏式の真空発生器の一時的な駆動で低圧化される容器を備えるものとして構成される。
本発明の他の好ましい実施形態においては、上記連結継手における電動歯ブラシ及び給水器を取り付けるそれぞれの取付部が、断面閉円状または略C字状の筒状部材で構成される。さらに、望ましくは、上記連結継手が、電動歯ブラシ及び給水器を取り付けるそれぞれの取付部を合成樹脂で一体的に成形することにより構成され、あるいは、上記連結継手における電動歯ブラシの取付部と給水器の取付部とが相互に回動自在に連結されるとともに、それらの取付部を任意の角度で交叉した状態で停止させる回転停止機構が介装される。
本発明の他の好ましい実施形態においては、電動歯ブラシ及び/または給水器が、上記連結継手におけるそれぞれの取付部に摩擦部材を介して着脱自在に取り付けられる。
本発明の好ましい実施形態においては、電動歯ブラシの取付部を、その長手方向両端側を対称形状に形成することにより、電動歯ブラシの取付方向が反転可能に構成される。
【発明の効果】
【0007】
以上に詳述した本発明の給排水機能付口腔ケア用器具によれば、自己で歯磨きやうがい等の口腔ケアを行うのが困難な被施行者のための口腔ケア用器具を、当該口腔ケア用器具をポンプ等の給水のための設備に接続する必要がなく、電動歯ブラシとピストン形の手動の給水器とを連結継手で連結するだけの簡易な構成とすることにより、当該口腔ケア用器具を安価に提供することができるばかりでなく、持ち運びに便利で手軽に使用することができ、特に上記吸引器を手動式、足踏式、又は電池若しくは家庭用コンセントへの接続により駆動する電動式で小型のものとし、なかでも手動式又は足踏式で一時的な駆動により内部を低圧化できる容器を備えたものとすることにより、口腔ケア用器具全体の構成を極めて簡単化できる。そのうえ、被施行者に対して口腔ケアを行うときの電動歯ブラシの起動や給水器によるブラシ部への給水のための操作を片手で容易に行うことができるので、空いている方の手を使うことで、被施行者の口唇を部分的に開かせる操作や、口腔ケア後の吸引器の操作等を同時に且つ容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1乃至図4は、本発明に係る給排水機能付口腔ケア用器具の第1実施例を示している。この口腔ケア用器具2は、特に、嚥下障害をもつ障害者、あるいは嚥下障害以外で摂食を自力で行うことができない障害者や高齢者等、自己で歯磨きやうがい等の口腔ケアを行うのが困難な被施行者に対して、医療施設や福祉施設、あるいは在宅等において、看護士や介護福祉士、あるいは家族等の施行者が口腔ケアを行う場合に有効なものであるが、自力で口腔ケアを行うことができる人が、自己の口腔ケアのために使用することができるのはいうまでもない。
上記口腔ケア用器具2は、図1に示すように、概略的には、歯磨き等の口腔ケアを行う電動歯ブラシ4と、該電動歯ブラシ4におけるブラシ部10に洗浄水を供給するピストン形の手動の給水器6とを、略十字状に形成した連結継手8に着脱自在に取り付けることにより構成されており、該口腔ケア用器具2は、被施行者に対して口腔ケアを行う場合には、口腔ケア後の排水を吸引する真空発生器30及び該排水を収容する容器31のみを備えた簡単な吸引器3に接続される。
【0009】
上記電動歯ブラシ4は、先端部に歯磨きのための多数の毛束10aが植設されたブラシ部10と、該ブラシ部10を歯磨きのためにその長手方向に往復駆動する駆動部12とを備えている。
上記ブラシ部10は、図2に詳細に示すように、その先端部の一面に合成樹脂あるいは獣毛等からなる毛束10aが縦横に配列して植設された植毛部10bが設けられており、該植毛部10bの略中央よりも若干当該ブラシ部10の基端側に位置して、給水器6から洗浄水を供給する配管14に連通させた給水孔10cが設けられ、また、上記植毛部10bの略中央に位置して、上記吸引器3に接続するための配管16に連通させた排水孔10dが設けられている。そして、該ブラシ部10における植毛部10bに背向する面には、上記給水孔10c及び排水孔10dに連通する配管14,16を接続するコネクタ10e,10fがそれぞれ設けられている。
一方、上記駆動部12は、その長手方向の先端に上記ブラシ部10の基端を嵌着する嵌着部12aが設けられており、該嵌着部12aを介して上記ブラシ部10に駆動部12から伝達される長手方向の往復動を歯磨きのための動作とするものである。また、当該電動歯ブラシ4を操作のために把持した際に手指が容易に届くところの該駆動部12の周面の略中央には、その長手方向に沿うスライド操作により該駆動部12を起動する起動スイッチ12bが設けられている。
【0010】
上記給水器6は、洗浄水を入れる略筒状の容部18と、上記ブラシ部10の給水孔10cに洗浄水を供給する操作を行うプランジャーからなる操作部20とを備えた注射器状のピストン形の形態とすることにより、上記電動歯ブラシ4におけるブラシ部10の給水孔10cに手動操作で洗浄水を供給するものとして構成されている。
上記容部18は、略筒状の長手方向の一端に上記プランジャーからなる操作部20を嵌入する開口部18aが設けられるとともに、その他端に洗浄水を注出する注口18bが設けられており、該注口18bに上記ブラシ部10の給水孔10cに連通する配管14が接続されている。
一方、上記プランジャーからなる操作部20は、その長手方向の一端にガスケット20aが設けられており(図4参照)、また、その他端には上記ブラシ部10の給水孔10cに洗浄水を供給する操作のための押圧部20bが設けられている。そして、当該操作部20をガスケット20a側から上記容部18の開口部18a内に嵌入して、該ガスケット20aの周囲を上記容部18の内壁に密接させた状態で上記押圧部20bを押圧することにより、該容部18内の洗浄水を該容部18の注口18bから注出するようにしている。
なお、上記容部18の注口18bに接続するところの上記ブラシ部10の給水孔10cに連通する配管14の長さは、口腔ケア時における当該器具2の操作、及び連結継手8に対する給水器6の着脱操作の支障にならない範囲において、適宜設定することができるものである。
【0011】
上記連結継手8は、上記電動歯ブラシ4及び給水器6を取り付けるそれぞれの取付部22,24を連結部26を介して合成樹脂で一体的に成形したもので、該取付部22,24は、図3に示すように、それぞれ上記電動歯ブラシ4の駆動部12及び給水器6の容部18の外周面に対応する断面略C字状の筒状部材で構成されている。また、上記電動歯ブラシ4の取付部22は、その長手方向両端側を対称形状に形成することにより、当該連結継手8に対する上記電動歯ブラシ4の取付方向を、被施行者の口腔ケアを行う施行者の利き腕に対応させて反転可能としている。そして、該連結継手8は、それ自体が当該口腔ケア用器具2の操作時における把持部としても機能するものとしている(図4参照)。そのため、該連結継手8の外形を一層把持に適したものとすることもできる。
【0012】
また、上記給水器6は、当該口腔ケア用器具2を使用して口腔ケアを行っているときに、上記連結継手8の取付部24に対してずれ動いたりすることがないように、表面の摩擦抵抗が大きく且つ弾性を有する摩擦部材28を介して上記取付部22,24に取り付けられている。該摩擦部材28は、上記給水器6における操作部20の押圧部20bを押圧操作しているときに、当該給水器6の容部18が取付部24に対してずれ動かない程度に表面の摩擦抵抗が大きく、且つ弾性を有するスポンジやゴム等の合成樹脂からなるシート状部材で構成することができるものであるが、表面に摩擦抵抗を有し且つ弾性を有する適宜の素材のもので構成することができる。なお、必要に応じて電動歯ブラシ4の取付部22にも同様の摩擦部材を設けることができる。
ここで、上記連結継手8における取付部22,24は、上述した断面略C字状の筒状部材で構成したものに限定されず、電動歯ブラシ4及び給水器6を取り付けることが可能な手段を有する断面閉円形状その他適宜形状のもので構成することができる。
【0013】
而して、施行者が当該給排水機能付口腔ケア用器具2を使用して被施行者に対して口腔ケアを行う場合には、予め器具の消毒を行ったうえで、操作部20の操作によりブラシ部10から必要量の洗浄水を吸引して容部18に収容しておき、その状態で先ず、図4に示す如く上記連結継手8における取付部22,24を片手(図においては右手)の複数の手指F1で把持した状態で、手指F2で上記電動歯ブラシ4における駆動部12の起動スイッチ12bをスライドさせて該電動歯ブラシ4を起動する。次いで、該電動歯ブラシ4のブラシ部10を被施行者の口腔内に挿入し、歯磨き等の口腔ケアを行いながら手指F3で給水器6における操作部20の先端の押圧部20bを押圧操作することにより、上記配管14を通じて上記電動歯ブラシ4におけるブラシ部10の給水孔10cから口腔内に洗浄水を供給する。このとき、被施行者の口腔内を洗浄した後の食塊や痰等を含む排水は速やかに口腔外に吸引する必要があるため、上記ブラシ部10の植毛部10bに設けた排水孔10dは、配管16を介して上記吸引器3に接続されている。
【0014】
また、該吸引器3に接続した配管16には、図1に示すように、該吸引器3による吸引を一時的に停止させるためのバルブ32が付設されており、該バルブ32を、上記連結継手8における電動歯ブラシ4の取付部22に接着剤等によって接着固定することにより、連結継手8の取付部22,24を把持している手指、あるいは電動歯ブラシ4における駆動部12の起動スイッチ12bを操作する手指でバルブ32の開閉操作を行い、それにより、口腔ケア後の排水等の吸引及びその停止を容易に行うことができるようにしている。上記バルブ32は、吸引器3の吸引能力が小さい場合などに有効なものである。
なお、上記バルブ32としては、例えば、図5に示すように、押圧部35の押圧によって配管16を狭窄することにより吸引を停止させ、該押圧部35の押圧の解除によって口腔ケア後の排水等を吸引する構造のものを適用することができる。
【0015】
具体的には、上記バルブ32は、合成樹脂により中空で且つ一端面が開口する略箱状に形成されたハウジング33を備え、該開口の周囲の対向する一対の側壁34に、上記配管16を挿通するための挿通部35を形成するとともに、上記ハウジング33における上記開口側の端面に背向する面に、周囲の側壁34に軟質の変形部36を介して押圧部37を一体的に形成することにより構成したもので、該押圧部37の内面に突部37aを突設するとともに、該突部37aに背向するところの該押圧部37の外面にボタン部38を付設している。そして、図5において鎖線で示すように、上記ボタン部38の押圧による上記変形部36の弾性的な変形によって、該押圧部37の内面の突起37aを上記挿通部35に挿通した配管16に圧接し、該配管16を弾性的に変形させてその管路を狭窄することにより、上記吸引器3による吸引を一時的に停止させ、一方、上記押圧部37の押圧を解除することにより、同図において実線で示すように、上記変形部36の弾性(復元)力又は上記配管16自体の弾性(復元)力で狭窄された管路を開放して、該配管16から口腔ケア後の排水等を吸引することができるようしている。
ここで、上記バルブ32は、上述のような構成のものに限定されず、口腔ケア後の排水等の吸引及びその停止が可能な適宜の構成のバルブを適用することができる。また、上記バルブ32の固定場所及び固定手段は、上述した電動歯ブラシ4の取付部22に接着剤で固定するものに限定されず、例えば、上記連結継手8に両面テープで固定させ、あるいは上記電動歯ブラシ4にベルト状部材で支持固定させるなど、被施行者の口腔ケアを行う施行者がバルブの操作を容易に行うことができる適宜の固定場所に、適宜の固定手段で固定することができる。
【0016】
ところで、一般に口腔ケアに用いられる吸引器は、被施行者の歯茎を痛めないようにするために、その吸引力に制限があり、そのため、口腔ケア後の排水に大きな食塊や粘度の高い痰等が混入していると、吸引器の配管等が目詰まりを起こす場合があるが、当該口腔ケア用器具2では、たとえ上記目詰まりを起こした場合でも、上記バルブ32の操作による吸引用配管16の通断の繰返しや、一方の手で当該口腔ケア用器具2を操作しながら、空いている他方の手で吸引器3の吸引力を調整し、配管16の目詰まりを速やかに解消することができる。
なお、当該口腔ケア用器具2を使用する際における上記連結継手8を把持する態様、並びに口腔ケア時における電動歯ブラシ4の起動のための操作及び給水器6によるブラシ部10への給水のための操作等を行う態様は、上述した態様に限定されるものではなく、施行者が当該口腔ケア用器具2を操作しやすい適宜の態様で把持し、あるいは当該器具2を操作しやすい適宜の手指を使って操作を行うことができるのはいうまでもない。
【0017】
ここで、当該口腔ケア用器具2を接続する上記吸引器3は、口腔ケア用器具2をより簡便な構成として、特に在宅で介護等を行う施行者がより一層容易に被施行者の口腔ケアを行えるようにするため、例えば、図6〜図8に概略的に示すように、手動式、足踏み式、又は電動式の真空発生器で構成することができる。
【0018】
具体的には、図6は足踏み式の吸引器40の構成例を示すもので、この吸引器40は、口腔ケア後の排水を配管16を通じて収容するポリカーボネート製の容器41と、該容器41の上面に一体的に並設された有底円筒状の一対のシリンダ部42と、該シリンダ部42内にシール部材43aを介して上下摺動可能に挿入された一対のピストン43と、足踏み操作用の長板状の操作板44とを備え、該操作板44が、その下面の長手方向中央において、上記容器41における両シリンダ部42間に立設した支軸41aの先端に揺動自在に連結されるとともに、上記操作板44の下面の長手方向両側にそれぞれピストンロッド45が回動自在に連結され、該ピストンロッド45の先端には上記ピストン43がそれぞれ連結されている。また、一対の上記シリンダ部42における内底に、上記容器41からシリンダ部42内への空気の流れは許容するが、該シリンダ部42から容器41内への空気の流れは遮断する逆止弁46aを設けるとともに、上記一対のピストン43に、シリンダ部42内から外部への空気の流れは許容するが、外部からシリンダ部42内への空気の流れは遮断する逆止弁46bを設けている。そして、上記操作板45の両端を足踏みにより上記支軸41aを支点として交互に押下することで、上記両シリンダ部42内をピストン43が交互に上下摺動し、それにより上記容器41内を減圧するように構成している。このように構成した吸引器40は、口腔ケア後の排水等を吸引するに際し、上記操作板45を足で操作することにより該吸引器40を作動させることができるので、安定感があって施行者が疲労することなく、極めて容易に口腔ケア後の排水等の吸引のための操作することができる。
【0019】
図7は手動(手押し)又は足踏みにより操作する吸引器50の構成例を示すもので、この吸引器50は、略円筒状のベローズ部52における伸縮方向の一端にポンプヘッド54(操作板)を固定するととともに、該ベローズ部52の他端をポンプベース55の筒状部55aに気密に固定し、該ベローズ部52の内部のポンプ室52aにおいて、上記ポンプヘッド54とポンプベース55との間にスプリング56を設けることにより、上記ポンプヘッド54の手押し又は足踏み操作によって上記ベローズ部52を該スプリング56の付勢力に抗して収縮できるようにしている。そして、上記ポンプベース55の筒状部55aに、上記ベローズ部52のポンプ室52aから外部への空気の流れは許容するが、外部からポンプ室52a内への空気の流れは遮断する逆止弁57aを設けるとともに、上記ポンプベース55の筒状部55aと該ポンプベース55上に並設した口腔ケア後の排水等を収容する容器51との間に接続した配管58に、該容器51からポンプ室52a内への空気の流れは許容するが、該ポンプ室52aから容器51への空気の流れは遮断する逆止弁57bを付設することにより、上記ポンプヘッド54の手押し又は足踏みによる押圧によって上記ベローズ部52を伸縮操作することで、上記容器51内を減圧できるように構成している。
このように構成した吸引器50は、上記ポンプヘッド54を足踏みによる押圧だけでなく、手押しによる押圧によって操作することができるので、被施行者の口腔ケアを行う場所の周囲の状況に応じて、施行者が手動式又は足踏式を選択的に使用して被施行者の口腔ケアを行うことができる。
【0020】
前記図6の吸引器40における容器41及び上記図7の吸引器50における容器51は、口腔ケア後の排水等を貯溜するものとして説明したが、前記バルブ32を閉じた状態で吸引器40又は吸引器50を動作させれば、容器41,51は内部が低圧化された減圧タンクとなり、この状態でバルブ32を操作しながら口腔ケアを行うと、足踏みや手動による吸引器の操作を行うことなく、口腔ケアを続行することができる。即ち、上記バルブ32を設けた場合には、吸引器40,50の一時的な駆動で容器41,51内を低圧化し、該吸引器40,50の操作を継続的に行うことなく口腔ケアを行うことができる。
【0021】
図8は電動式の吸引器60の構成例を示すもので、この吸引器60は、略円筒状のシリンダ部62内にシール部材63aを介して摺動自在に挿入されたピストン63にピストンロッド65を固定するとともに、上記シリンダ部62に該ピストンロッド65を気密に且つ摺動自在に貫通させることにより、上記シリンダ部62内にピストン63を介して一対のポンプ室62aを形成し、それぞれのポンプ室62aに、該ポンプ室62a内から外部への空気の流れは許容するが、外部からポンプ室62a内への空気の流れは遮断する逆止弁65aを設けるとともに、両ポンプ室62aと口腔ケア後の排水等を収容する容器61との間に接続した配管68に、該容器61からポンプ室62a内への空気の流れは許容するが、該ポンプ室62aから容器61内への空気の流れは遮断する逆止弁65bを付設しており、上記ピストンロッド65の一端を、電池または家庭用コンセントへの接続によって駆動するモーター66の回転運動を往復動に変換するリンク機構67に連結することにより、上記容器61内を減圧するように構成したものである。
なお、電動式の吸引器の具体例としては、例えば、唾液や痰の吸引器を利用したり、観賞魚用エアポンプの内部の逆止弁を、空気を送り出す方向から吸引する方向に反転したような構成とすることにより、口腔ケア後の排水等を収容する容器内を減圧するようにしたものなどを利用することができる。
このように、上記吸引器を手動式、足踏式、又は電動式とすることにより、当該口腔ケア用器具をより簡便な構成として、特に在宅で介護等を行う施行者がより一層容易に被施行者の口腔ケアを行うことができる。
【0022】
上記構成を有する給排水機能付口腔ケア用器具2は、当該口腔ケア用器具2をポンプ等の給水のための設備に接続する必要がなく、電動歯ブラシ4とピストン形の手動の給水器6とを連結継手8で連結するだけの簡易な構成とすることにより、当該口腔ケア用器具2を安価に提供することができるばかりでなく、持ち運びに便利で手軽に使用することができる。しかも、被施行者に対して口腔ケアを行うときに両手で操作する必要がなく、電動歯ブラシ4の起動スイッチ12bによる起動操作及びブラシ部10の給水孔10cへ洗浄水を給水するための給水器6の操作部20の操作を片手で容易に行うことができるので、空いている方の手を使うことで、被施行者の口唇を部分的に開かせる操作や、口腔ケア後の吸引器3の操作等を同時に且つ容易に行うことができる。
【0023】
なお、上記電動歯ブラシ及び給水器を組み付ける連結継手は、上述した実施例のように、電動歯ブラシ4の取付部22と給水器6の取付部24とを連結部26を介して一体的に成形したものに限定されず、図9に示す連結継手78ように、電動歯ブラシ4の取付部92と給水器6の取付部94とを連結部96において相互に回動自在に連結した構成とすることもできる。
【0024】
具体的には、この構成例の連結継手78における連結部96は、電動歯ブラシ4の取付部92及び給水器6の取付部94の周面に、それらの軸線方向に直交して略円形の連結面92a,94aをそれぞれ形成し、それらの連結面92a,94aを互いに衝合させた状態で、該連結面92a,94aの中心を貫通させた枢軸97により取付部92,94を相互に回動自在に連結している。なお、上記枢軸97は、リベット、又はボルト及びナット等で構成することができる。
【0025】
また、上記取付部92,94における連結面92a,94a間には、両取付部92,94を任意の角度で交叉した状態で停止させる回転停止機構が介装されている。この回転停止機構は、給水器6の取付部94の連結面94a側に設けられた凹部94b内に、球体98及び該球体98を電動歯ブラシ4の取付部92の連結面92a側に付勢するばね部材99を収容するとともに、電動歯ブラシ4の取付部92の連結面92aに、上記枢軸97における両取付部92,94相互の回動時に上記球体98が圧接するところの円周軌道上に配置して、任意の角度、例えば0°〜90°間に15°の角度を置いて凹窪92bを形成することにより、上記球体98が凹窪92bに嵌入した位置で両取付部92,94の回転を停止させるように構成したものである。なお、上記凹窪92bを形成する円周軌道上の角度は、上述のものに限定されるものではなく、被施行者の口腔ケアを行う施行者の要望に応じて任意に設定することができるものである。
【0026】
上記のように構成することにより、被施行者の口腔ケアを行う施行者が、必要に応じて電動歯ブラシ4の取付部92と給水器6の取付部94の角度を使い易い角度に適宜設定することができるので、被施行者の口腔ケアをより一層容易に行うことができる。
なお、両取付部92,94を任意の角度で交叉した状態で停止させる回転停止機構の構成は、上述したものに限定されるものではなく、相互に回動自在の両取付部92,94を任意の角度で交叉した状態で停止させることが可能な適宜の構成のものを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施例に係る給排水機能付口腔ケア用器具の全体構成を示す斜視図である。
【図2】同電動歯ブラシにおけるブラシ部の拡大断面図である。
【図3】同連結継手の拡大斜視図である。
【図4】本発明に係る給排水機能付口腔ケア用器具を把持した状態を示す斜視図である。
【図5】吸引器に接続した配管上のバルブを電動歯ブラシの取付部に固定した態様を示す要部拡大断面図である。
【図6】足踏式の吸引器の構成例を概略的に示す概念図である。
【図7】手動又は足踏式の吸引器の構成例を概略的に示す概念図である。
【図8】電動式の吸引器の構成例を概略的に示す概念図である。
【図9】連結継手の他の構成例を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0028】
2 給排水機能付口腔ケア用器具
3,40,50,60 吸引器
4 電動歯ブラシ
6 給水器
8,78 連結継手
10 ブラシ部
10c 給水孔
10d 排水孔
12b 起動スイッチ
14,16 配管
18b 注口
20 操作部
22,24,92,94 取付部
28 摩擦部材
30 真空発生器
31,41,51,61 容器
32 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水の給水孔と吸引器に接続するための配管に連通させた排水孔とを有するブラシ部を備えた電動歯ブラシと、該電動歯ブラシにおけるブラシ部の給水孔に連通して該ブラシ部に洗浄水を供給するためのピストン形の手動の給水器と、それらの電動歯ブラシ及び給水器を取り付けるためのそれらの長手方向に沿う取付部を略十字状に連結することにより構成した連結継手とを有し、
上記電動歯ブラシの起動スイッチ及び給水器におけるブラシ部の給水孔への給水操作のためのピストン操作部を、給水器を取り付ける取付部の軸線方向の同一方向側から操作可能として、上記電動ブラシ及び給水器が連結継手に組み付けられ、
上記連結継手を、当該口腔ケア用器具の操作のための把持部とした、
ことを特徴とする給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項2】
上記給水器を注射器で構成し、該注射器の注口と上記電動歯ブラシにおけるブラシ部の給水孔とを給水用の配管で連結した、
ことを特徴とする請求項1に記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項3】
上記吸引器を、手動式、足踏式、又は電動式の真空発生器で構成した、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項4】
上記吸引器とブラシ部との間に接続した配管に、該吸引器からの吸引を停止させるバルブを付設し、
該バルブを、上記吸引器若しくは電動歯ブラシ、又はそれらを組み付けた連結継手の周囲に固定した、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項5】
上記吸引器が、手動式又は足踏式の真空発生器の一時的な駆動で低圧化される容器を備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項6】
上記連結継手における電動歯ブラシ及び給水器を取り付けるそれぞれの取付部を、断面閉円状または略C字状の筒状部材で構成した、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項7】
上記連結継手を、上記電動歯ブラシ及び給水器を取り付けるそれぞれの取付部を合成樹脂で一体的に成形することにより構成した、
ことを特徴とする請求項6に記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項8】
上記連結継手における電動歯ブラシの取付部と給水器の取付部とを相互に回動自在に連結するとともに、それらの取付部を任意の角度で交叉した状態で停止させる回転停止機構を介装した、
ことを特徴とする請求項6に記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項9】
電動歯ブラシ及び/または給水器を、上記連結継手におけるそれぞれの取付部に摩擦部材を介して着脱自在に取り付けた、
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の給排水機能付口腔ケア用器具。
【請求項10】
電動歯ブラシの取付部を、その長手方向両端側を対称形状に形成することにより、電動歯ブラシの取付方向を反転可能とした、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の給排水機能付口腔ケア用器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate