説明

給水接続部材

【課題】漏水をより確実に防止可能な給水接続部材を提供する。
【解決手段】給水接続部材1は、壁部91の開口92に対して封止固定されるものである。この給水接続部材1は、給水管10と、給水管10を同軸状態で収納しつつ延びる筒状をなし、開口92より大きく拡がるフランジ21をもつ外筒管20と、内筒部11の外周側に設けられ、フランジ21に押圧されて開口92周りの壁部92と当接するパッキン30と、給水管10と外筒管20とを固定するとともに、フランジ21を壁部91側に押圧する固定手段40とを備えている。また、この給水接続部材1は、給水管10と外筒管20との間にあって、両者を封止する封止手段50を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給水接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の給水接続部材が開示されている。この給水接続部材は、壁部に形成された開口に対し、壁部の一方から装着されて封止固定されるものであって、給水管と、スリップワッシャと、パッキンと、固定手段とを備えている。
【0003】
給水管は、軸方向に延びて開口内に挿入され得る筒状をなす内筒部と、内筒部より先端側で開口より大きく拡がる係止部とをもつ。係止部は軸方向に直交する面内において互いに遠ざかる方向に延びる2片であり、両係止部で形成される略矩形は、長辺が開口より長く、短辺が開口より短くされている。
【0004】
スリップワッシャは、給水管に同軸状態で外挿される円環形状をなし、開口より大きく拡がるフランジをもつ。フランジの先端側にはテーパ状の内周面が形成されている。
【0005】
パッキンは、1個の環状をなす弾性体であり、内筒部の外周側に設けられるものである。パッキンは、スリップワッシャのテーパ状の内周面に当接するテーパ面を有している。
【0006】
固定手段は、給水管とスリップワッシャとを固定するとともに、フランジを壁部側に押圧するものである。より詳しくは、固定手段は、給水管の後端側の外周面に形成された雄ネジと、その雄ネジに螺合する雌ネジが内周面に形成されたナットとからなっている。
【0007】
このような構成である従来の給水接続部材は、下記のようにして、壁部に形成された開口に対して封止固定される。
【0008】
まず、給水管を傾けた状態で、一方の係止部を壁部の一方から開口に挿入することにより、他方の係止部を壁部の他方に通過させ、壁部に係止する。これにより、給水管は、内筒部の先端側が開口内に位置し、後端側が壁部の一方に延在する。
【0009】
次に、パッキンを給水管の後端側から外挿して、開口周りの壁部近傍まで移動させる。さらに、スリップワッシャを給水管の後端側から外挿して、フランジをパッキンに当接させる。
【0010】
そして、ナットの雌ネジを給水管の雄ネジに螺合させる。これにより、ナットの先端がスリップワッシャの後端を壁部側に押圧し、スリップワッシャのフランジと給水管の係止部とがパッキンと開口周りの壁部とを挟持する。それにより、パッキンは、フランジに押圧されて、フランジと開口周りの壁部との間で圧縮変形し、内筒部の外周面に当接しつつ、開口周りの壁部と当接する。その結果、給水管とスリップワッシャとが固定されるとともに、パッキンが給水管、スリップワッシャ及び開口周りの壁部の相互間に密着して、漏水を防止する。こうして、従来の給水接続部材は、壁部の開口に封止固定されることが可能となっている。
【0011】
【特許文献1】特開平11−81426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上記従来の給水接続部材以上に、より確実に漏水を防止可能な給水接続部材が求められている。
【0013】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、漏水をより確実に防止可能な給水接続部材を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の給水接続部材は、壁部に形成された開口に対し、該壁部の一方から装着されて封止固定される給水接続部材であって、
軸方向に延びて前記開口内に挿入され得る筒状をなし、先端側が該開口内に位置し得る内筒部と、該内筒部より先端側で該開口より大きく拡がる係止部とをもつ給水管と、
該給水管を同軸状態で収納しつつ延びる筒状をなし、該開口より大きく拡がるフランジをもつ外筒管と、
該内筒部の外周側に設けられ、該フランジに押圧されて該開口周りの前記壁部と当接するパッキンと、
該給水管と該外筒管とを固定するとともに、該フランジを該壁部側に押圧する固定手段とを備え、
前記給水管と前記外筒管との間には両者を封止する封止手段が備えられていることを特徴とする。
【0015】
このような構成である本発明の給水接続部材は、上記従来の給水接続管と同様、壁部の開口に封止固定される。こうして壁部に封止固定された本発明の給水接続部材は、給水管と外筒管との間に封止手段を備え、この封止手段が両者を封止する。
【0016】
したがって、本発明の給水接続部材は、パッキンと封止手段とにより従来よりも確実に漏水を防止可能である。
【0017】
固定手段としては、本発明の作用効果を奏するものであれば、どのようなものを採用してもかまわない。例えば、固定手段は、(1)給水管の後端側外周に形成された雄ネジと、その雄ネジに螺合する雌ネジが内周面に形成されたナットとからなるもの、(2)給水管の後端側外周で径方向に突出されたピンと、給水管の後端側外周と嵌り合う内周面をもち、ピンを軸方向に案内し、自己が周方向に回転されることによってピンによって抜け止めされるソケットとからなるもの、(3)給水管の後端側外周で径方向に凹設されたピン穴と、給水管の後端側外周と嵌り合う内周面をもち、ピン穴と整合するピンが螺合されたり打ち込まれたりことによって抜け止めされるソケットとからなるもの等を採用することができる。
【0018】
パッキンとしては、本発明の作用効果を奏するものであれば、どのようなものを採用してもかまわない。例えば、矩形断面リング(一般的なゴムパッキン)、Oリング、C断面リング、金属及びゴム等からなる複合パッキン等を採用することができる。
【0019】
上記特許文献1記載の給水接続部材では、1個のパッキンが給水管、スリップワッシャ及び開口周りの壁部の相互間に介在する構成であるため、給水管、スリップワッシャ及び開口周りの壁部に対するパッキンの相対位置がずれると、一部の箇所で密着が不十分となり易く、密着が不十分な箇所から漏水するおそれがある。また、この給水接続部材では、ナットが給水管とスリップワッシャとを固定する際、ナットの回転に伴ってパッキンに摩擦トルクが加わり易く、パッキンが捩られ易い。このため、パッキンに皺や破断等の損傷が生じ、給水管、スリップワッシャ又は開口周りの壁部の相互間に充分に密着することができなくなり、密着が不十分な箇所から漏水するおそれがある。そして、このような漏水を防止するため、作業者が給水管、スリップワッシャ及び開口周りの壁部に対するパッキンの相対位置を正しく位置決めし、かつパッキンを損傷させないように慎重にナットを螺合しようとすれば、作業性が損なわれてしまう。
【0020】
このため、本発明の給水接続部材においては、パッキンは内筒部の外周面と当接しないものであり得る。この場合、パッキンは、外筒管のフランジと開口周りの壁部との間に介在するだけである。このため、この給水接続部材は、特許文献1記載の給水接続部材の場合と比較して、フランジ及び開口周りの壁部に対するパッキンの位置決めを容易に実施でき、パッキンの位置ずれによる漏水を生じ難い。また、この給水接続部材は、パッキンが内筒部の外周面と当接しないことから、固定手段が給水管と外筒管とを固定する際に、パッキンに摩擦トルクが加わったとしても、パッキンが捩られ難い。このため、パッキンに皺や破断等の損傷が生じ難く、密着性の低下による漏水も生じ難い。そして、この給水接続部材は、作業者が簡易な作業で漏水をより防止できることから、優れた作業性も発揮することができる。
【0021】
封止手段としては、本発明の作用効果を奏するものであれば、どのようなものを採用してもかまわない。例えば、給水管の外周面及び外筒管の内周面の少なくとも一方に、ゴム等の弾性材料からなるOリング、C断面リング、矩形断面リング(一般的なゴムパッキン)、金属及びゴム等からなる複合パッキン等の封止部材を配設して、他方に当接し得るようにしてもよい。また、Oリング等の封止部材は、複数個配設されていてもよい。
【0022】
具体例として、封止手段は、外筒管の内周面に凹設されたシール溝と、シール溝に嵌合されて給水管の外周面と当接するOリングとからなり得る。この場合、予めOリングをシール溝に嵌め合わせておくことができ、装着作業時にも外れ難いので、作業を簡単に実施できる。また、この場合のOリングは、外部に露出しないことから、開口に当たって損傷する事態が発生し得ない。このため、この給水接続部材は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0023】
別の具体例として、封止手段は、給水管の外周面に凹設されたシール溝と、シール溝に嵌合されて外筒管の内周面と当接するOリングとからなり得る。この場合も、予めOリングをシール溝に嵌め合わせておくことができ、装着作業時にも外れ難いので、作業を簡単に実施できる。この場合、内筒部は、係止部に隣接し、外径が細い小径部と、小径部の後方で小径部より外径が太い大径部とを有し、大径部にシール溝が形成されていることが好ましい。このような構成であれば、係止部を壁部の一方から開口に挿入して、壁部の他方に通過させる際、大径部と小径部との段差が開口の内周縁に当接して止まるので、大径部に配設されたOリングが開口に当たって損傷する事態が発生し難い。このため、この給水接続部材は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0024】
本発明の給水接続部材において、給水管の後端側の内周面は、工具が係合可能な回り止め形状とされ得る。この場合、給水管の後端側の内周面に工具を係合させて給水管を回り止めした状態で、固定手段の装着作業を実施できるので、作業者がより簡単に装着作業を実施することができる。
【0025】
本発明の給水接続部材において、外筒管の内周面後端には、外筒管が給水管に対して逆向きに外挿される場合に、給水管と干渉する突部が形成されていることが好ましい。この場合、給水管に対して逆向きに外筒管を装着することができなくなり、作業者が間違えることなく装着作業を実施することができる。突部としては、例えば、外筒管の後端から軸芯に向かって延在する内フランジや、1個又は複数個の突起等を採用することができる。
【0026】
本発明の給水接続部材において、外筒管は、フランジより先端側で開口内に嵌合される嵌合部を有していることが好ましい。この場合、外筒管は、開口に対して位置決めされ、給水管も外筒管を介して開口に対して位置決めされることになるので、給水管が壁部の開口に対して傾倒し難くなる。このため、この給水接続部材は、本発明の作用効果を一層確実に奏することができる。嵌合部としては、例えば、軸方向に延在する筒状体又は複数個の突起等を採用することができる。
【0027】
本発明の給水接続部材において、パッキンは嵌合部から抜け止めされていることが好ましい。この場合、予めパッキンを嵌合部に外挿し、フランジに当接させておくことができ、装着作業時にもパッキンが嵌合部から抜け落ちることがなくなるため、作業者が一層簡単に装着作業を実施することができる。パッキンが嵌合部から抜け止めされる具体的構成としては、例えば、嵌合部とフランジとの間に凹設されたパッキン用溝にパッキンの内周縁が嵌まり込む構成等を採用することができる。
【0028】
本発明の給水接続部材において、固定手段は、給水管の後端側に形成された雄ネジと、雄ネジに螺合する雌ネジが内周面に形成されたナットとからなることが好ましい。この場合、固定手段は、雄ネジと雌ネジとによって、給水管と外筒管とを固定するとともに、フランジを壁部側に押圧することを簡単かつ確実に実施できる。このため、この給水接続部材は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例1〜3を図面を参照しつつ説明する。なお、図2及び図3において、右斜め上方が先端側であり、左斜め下方が後端側である。また、図4、図5及び図7において、右方が先端側であり、左方が後端側である。
【実施例1】
【0030】
図1に示すように、実施例1の給水接続部材1は、例えば、洋風水洗便器の便器本体90に適用されるものである。便器本体90には、前方の鉢面93に上方から旋回状に水を供給する導水路94と、後方の配管類収容空間95とを区画する壁部91が設けられている。そして、給水接続部材1は、図2〜図4に示すように、壁部91に形成された円形の開口92に対し、壁部91の一方(配管類収容空間95側)から装着されて封止固定されるものである。この給水接続部材1は、給水管10と、外筒管20と、パッキン30と、固定手段40と、封止手段50とを備えている。
【0031】
給水管10は、軸X方向に延びて開口92内に挿入され得る筒状をなす内筒部11と、内筒部11より先端側で開口92より大きく拡がる係止部12a、12bとをもっている。係止部12a、12bは軸X方向に直交する面内において互いに遠ざかる方向に延びる2片であり、両係止部12a、12bで形成される略矩形は、長辺L1が開口92の内径より長く、短辺L2が開口92の内径より短くされている。
【0032】
内筒部11は、係止部12a、12bに隣接し、外径が細い小径部11aと、小径部11aの後方で小径部11aより外径が太い大径部11bとを有している。大径部11bにはシール溝13a、13bが2箇所に凹設され、各シール溝13a、13bには2個のOリング14a、14bが嵌合されている。そして、内筒部11の後端側の外周面には、後述するナット41の雌ネジ45と螺合する雄ネジ15が形成され、さらにその後端側には、円筒状の接続部16が形成されている。接続部16には、給水ホース(図示しない)の先端が外挿固定される。
【0033】
外筒管20は、給水管10を同軸状態で収納しつつ延びる筒状をなしており、先端側に開口92より大きく拡がるフランジ21をもっている。フランジ21の先端側の端面は、開口92周りの壁部91に対面し得る平面とされている。また、外筒管20の内周面22は、上述のOリング14a、14bが当接して隙間なく密着するように、平滑な円筒面とされている。さらに、外筒管20の内周面22の後端には、内フランジ状の突部23が形成されている。突部23の内径は、大径部11bの外径より小さく、かつ雄ネジ15の外径より大きくされている。
【0034】
また、外筒管20は、フランジ21よりさらに先端側に円筒状に突出する嵌合部24を有している。嵌合部24の外径は、開口92の内径より僅かに小さくされており、嵌合部24が開口92内に嵌合するようになっている。
【0035】
シール溝13a、13bとOリング14a、14bとにより、封止手段50が構成されている。そして、外筒管20が給水管10を同軸状態で収納すれば、Oリング14a、14bが外筒管20の内周面22と当接して、給水管10と外筒管20との間を封止するようになっている。
【0036】
パッキン30は、1個の環状をなす弾性体であり、具体的には、EPDM等の一般的な弾性材料からなる矩形断面リングである。パッキン30の外径はフランジ21の外径と略同一とされ、パッキン30の内径は嵌合部24の外径と略同一とされている。このため、パッキン30は、予め嵌合部24に外挿しておくことが可能となっている。そして、外筒管20が給水管10を同軸状態で収納すれば、パッキン30は、内筒部11の外周側に位置することになるが、パッキン30の内周面は内筒部11の外周面に当接しないようになっている。
【0037】
固定手段40は、上述の雄ネジ15と、雄ネジ15に螺合する雌ネジ45が内周面に形成されたナット41とからなっている。そして、ナット41の雌ネジ45を雄ネジ15に螺合させることにより、ナット41の先端が外筒管20の後端を先端側に押圧するようになっている。
【0038】
このような構成である実施例1の給水接続部材1は、下記のようにして、開口92に封止固定される。
【0039】
予め、Oリング14a、14bを給水管10のシール溝13a、13bに嵌合させるとともに、パッキン30を嵌合部24に外挿させてフランジ21の先端側の端面に当接した状態にしておく。
【0040】
そして、給水管10を傾けた状態で、一方の係止部12aを壁部91の一方(配管類収容空間95側)から開口92に挿入することにより、他方の係止部12bを壁部91の他方(導水路94側)に通過させ、壁部91に係止する。これにより、給水管10は、内筒部11の先端側が開口92内に位置し、後端側が壁部91の一方(配管類収容空間95側)に延在する。
【0041】
次に、外筒管20を給水管10の後端側から外挿して、給水管10を同軸状態で収納した状態にするとともに、嵌合部24を開口92内に嵌合させる。その結果、パッキン30は、フランジ21と開口92周りの壁部91との間に位置することとなる。この際、外筒管20が給水管10に対して逆向きに外挿されれば、突部23が給水管10の大径部11bと干渉して、外筒管20をそれ以上外挿できない。
【0042】
そして、ナット41の雌ネジ45を給水管10の雄ネジ15に螺合させる。これにより、ナット41の先端が外筒管20の後端を壁部91側に押圧し、外筒管20のフランジ21と給水管10の係止部12a、12bとがパッキン30と開口92周りの壁部91とを挟持する。それにより、パッキン30は、フランジ21に押圧されて、フランジ21と開口92周りの壁部91との間で圧縮変形し、開口92周りの壁部91と当接する。その結果、図4に示すように、給水管10と外筒管20とが固定されるとともに、パッキン30が外筒管20のフランジ21と開口92周りの壁部91との間に密着して、漏水を防止する。また、給水管10と外筒管20との間は、Oリング14a、14bが外筒管20の内周面22に隙間なく密着して、漏水を防止する。こうして、実施例1の給水接続部材1は、壁部91の開口92に封止固定されることが可能となっている。
【0043】
したがって、実施例1の給水接続部材1は、パッキン30と封止手段50とにより従来よりも確実に漏水を防止可能となっている。
【0044】
また、この給水接続部材1において、パッキン30は内筒部11の外周面と当接せず、外筒管20のフランジ21と開口92周りの壁部91との間に介在するだけである。このため、この給水接続部材1は、特許文献1記載の給水接続部材の場合と比較して、フランジ21及び開口92周りの壁部91に対するパッキン30の位置決めを容易に実施でき、パッキン30の位置ずれによる漏水を生じ難い。また、この給水接続部材1は、パッキン30が内筒部11の外周面と当接しないことから、固定手段40が給水管10と外筒管20とを固定する際に、パッキン30に摩擦トルクが加わったとしても、パッキン30が捩られ難い。このため、パッキン30に皺や破断等の損傷が生じ難く、密着性の低下による漏水も生じ難い。そして、この給水接続部材1は、作業者が簡易な作業で漏水をより防止できることから、優れた作業性も発揮することができる。
【0045】
さらに、この給水接続部材1において、封止手段50は、給水管10の外周面に凹設されたシール溝13a、13bと、シール溝13a、13bに嵌合されて外筒管20の内周面22と当接するOリング14a、14bとからなっている。このため、予めOリング14a、14bをシール溝13a、13bに嵌め合わせておくことができ、装着作業時にも外れ難いので、作業を簡単に実施できる。
【0046】
また、この給水接続部材1において、内筒部11は、係止部12a、12bに隣接し、外径が細い小径部11aと、小径部11aの後方で小径部11aより外径が太い大径部11bとを有し、大径部11bにシール溝13a、13bが形成されている。このため、係止部12a、12bを壁部91の一方から開口92に挿入して、壁部91の他方に通過させる際、大径部11bと小径部11aとの段差が開口92の内周縁に当接して止まるので、大径部11bに配設されたOリング14a、14bが開口92に当たって損傷する事態が発生し難い。このため、この給水接続部材1は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0047】
また、この給水接続部材1において、外筒管20の内周面22の後端には、突部23が形成されていることから、給水管10に対して逆向きに外筒管20を装着することができなくなっており、作業者が間違えることなく装着作業を実施することが可能となっている。
【0048】
さらに、この給水接続部材1において、外筒管20は、フランジ21より先端側で開口92内に嵌合される嵌合部24を有している。このため、外筒管20は、開口92に対して位置決めされ、給水管10も外筒管20を介して開口92に対して位置決めされることになり、その結果、給水管10が壁部91の開口92に対して傾倒し難くなっている。このため、この給水接続部材1は、本発明の作用効果を一層確実に奏することができている。
【0049】
また、この給水接続部材1において、固定手段40は、雄ネジ15と、雌ネジ45が内周面に形成されたナット41とからなっていることから、給水管10と外筒管20とを固定するとともに、フランジ21を壁部91側に押圧することを簡単かつ確実に実施可能となっている。このため、この給水接続部材1は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【実施例2】
【0050】
図5に示すように、実施例2の給水接続部材2は、内筒部11の内周面後端側に工具係止孔10aが形成されている。また、嵌合部24とフランジ21との間に形成されたパッキン用溝24aにより、パッキン230が抜け止めされている。これらの点が実施例1の給水接続部材1と異なる。その他の構成は、実施例1の給水接続部材1と同様である。よって、実施例2では、工具係止孔10a、パッキン用溝24a及びパッキン230を中心に説明し、その他の構成については、実施例1と同一の符号を付して、説明を簡略又は省略する。
【0051】
内筒部11の後端側の内周面には、図6に示すように、六角形の断面形状とされた工具係止孔10aが形成されている。工具係止孔10aには、六角レンチ等の一般的な工具が係止可能となっている。
【0052】
図5に示すように、嵌合部24とフランジ21との間には、嵌合部24よりも外径が小さくされたパッキン用溝24aが凹設されている。そして、パッキン230は、実施例1のパッキン30よりも内周縁の内径が小さく、パッキン用溝24aの外径と略同一とされており、パッキン230の内周縁がパッキン用溝24aに嵌まり込むようになっている。
【0053】
このような構成である実施例2の給水接続部材2も、実施例1の給水接続部材1と同様の作用効果を奏することができている。
【0054】
また、この給水接続部材2において、給水管10の後端側の内周面は、工具係止孔10aにより工具が係合可能な回り止め形状とされている。このため、工具係止孔10aに工具を係合させて給水管10を回り止めした状態で、固定手段40の装着作業を実施できるので、作業者がより簡単に装着作業を実施することが可能となっている。
【0055】
さらに、この給水接続部材2において、パッキン230はパッキン用溝24aにより嵌合部24から抜け止めされている。このため、予めパッキン30を嵌合部24に外挿し、フランジ21に当接させておくことができ、装着作業時にもパッキン230が嵌合部24から抜け落ちることがなくなっているため、作業者が一層簡単に装着作業を実施することが可能となっている。
【0056】
なお、図5に示すように、ナット41の先端に外フランジ41aを形成し、外筒管20の後端に外フランジ20aを形成して、双方の当接する面積を増加させてもよい。こうすれば、給水管10と外筒管20とをより確実に固定することができる。
【実施例3】
【0057】
図7に示すように、実施例3の給水接続部材3は、封止手段350が外筒管320の内周面322に凹設されたシール溝313a、313bと、シール溝313a、313bに嵌合されるOリング314a、314bとからなっている。この点が実施例1の給水接続部材1と異なる。その他の構成は、実施例1の給水接続部材1と同様である。よって、実施例3では、給水管310、外筒管320及び封止手段350を中心に説明し、その他の構成については、実施例1と同一の符号を付して、説明を簡略又は省略する。
【0058】
給水接続部材3は、給水管310と、外筒管320と、パッキン30と、固定手段40と、封止手段350とを備えている。
【0059】
給水管310は、軸X方向に延びて開口92内に挿入され得る筒状をなす内筒部311と、内筒部311より先端側で開口92より大きく拡がる係止部12a、12bとをもっている。
【0060】
内筒部311の外周面312は、後述するOリング314a、314bが当接して隙間なく密着するように、平滑な円筒面とされている。そして、内筒部311の後端側の外周面には、ナット41の雌ネジ45と螺合する雄ネジ15が形成され、さらにその後端側には、円筒状の接続部16が形成されている。接続部16には、給水ホース(図示しない)の先端が外挿固定される。
【0061】
外筒管320は、給水管310を同軸状態で収納しつつ延びる筒状をなしており、先端側に開口92より大きく拡がるフランジ321をもっている。フランジ321の先端側の端面は、開口92周りの壁部91に対面し得る平面とされている。また、外筒管320の内周面322には、シール溝313a、313bが2箇所に凹設され、各シール溝313a、313bには2個のOリング314a、314bが嵌合されている。さらに、外筒管320の内周面322の後端には、内フランジ状の突部23が形成されている。
【0062】
また、外筒管320は、フランジ321よりさらに先端側に円筒状に突出する嵌合部324を有している。嵌合部324の外径は、開口92の内径より僅かに小さくされており、嵌合部324が開口92内に嵌合するようになっている。
【0063】
シール溝313a、313bとOリング314a、314bとにより、封止手段350が構成されている。そして、外筒管320が給水管310を同軸状態で収納すれば、Oリング314a、314bが給水管310の外周面312と当接して、給水管310と外筒管320との間を封止するようになっている。
【0064】
このような構成である実施例3の給水接続部材3も、実施例1の給水接続部材1と同様の作用効果を奏することができている。
【0065】
また、この給水接続部材3において、封止手段350は、外筒管320の内周面322に凹設されたシール溝313a、313bと、シール溝313a、313bに嵌合されて給水管320の外周面312と当接するOリング314a、314bとからなっている。このため、予めOリング314a、314bをシール溝313a、313bに嵌め合わせておくことができ、装着作業時にも外れ難いので、作業を簡単に実施できる。また、この場合のOリング314a、314bは、外部に露出しないことから、開口92に当たって損傷する事態が発生し得ない。このため、この給水接続部材3は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0066】
以上において、本発明を実施例1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は洋風水洗式便器等の給水を利用する設備に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1の給水接続部材が適用される洋風水洗便器の斜視図(部分断面図)である。
【図2】実施例1の給水接続部材の斜視図である。
【図3】実施例1の給水接続部材の分解斜視図である。
【図4】実施例1の給水接続部材の断面図である。
【図5】実施例2の給水接続部材の断面図である。
【図6】実施例2の給水接続部材に係り、図5のVI−VI断面を示す断面図である。
【図7】実施例3の給水接続部材の断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1、2、3…給水接続部材
10、310…給水管
10a…工具係止孔
11、311…内筒部
11a…小径部
11b…大径部
12a、12b…係止部
13a、13b、313a、313b…シール溝
14a、14b、314a、314b…Oリング
15…雄ネジ
20、320…外筒管
21、321…フランジ
22、322…外筒管の内周面
23…突部
24、324…嵌合部
24a…パッキン用溝
30、230…パッキン
40…固定手段
41…ナット
45…雌ネジ
50、350…封止手段
91…壁部
92…開口
312…給水管の外周面
X…軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に形成された開口に対し、該壁部の一方から装着されて封止固定される給水接続部材であって、
軸方向に延びて前記開口内に挿入され得る筒状をなし、先端側が該開口内に位置し得る内筒部と、該内筒部より先端側で該開口より大きく拡がる係止部とをもつ給水管と、
該給水管を同軸状態で収納しつつ延びる筒状をなし、該開口より大きく拡がるフランジをもつ外筒管と、
該内筒部の外周側に設けられ、該フランジに押圧されて該開口周りの前記壁部と当接するパッキンと、
該給水管と該外筒管とを固定するとともに、該フランジを該壁部側に押圧する固定手段とを備え、
前記給水管と前記外筒管との間には両者を封止する封止手段が備えられていることを特徴とする給水接続部材。
【請求項2】
前記パッキンは、前記内筒部の外周面に当接しない請求項1記載の給水接続部材。
【請求項3】
前記封止手段は、前記外筒管の内周面に凹設されたシール溝と、該シール溝に嵌合されて前記給水管の外周面と当接するOリングとからなる請求項1又は2記載の給水接続部材。
【請求項4】
前記封止手段は、前記給水管の外周面に凹設されたシール溝と、該シール溝に嵌合されて前記外筒管の内周面と当接するOリングとからなる請求項1又は2記載の給水接続部材。
【請求項5】
前記内筒部は、前記係止部に隣接し、外径が細い小径部と、該小径部の後方で該小径部より外径が太い大径部とを有し、該大径部に前記シール溝が形成されている請求項4記載の給水接続部材。
【請求項6】
前記給水管の後端側の内周面は、工具が係合可能な回り止め形状とされている請求項1乃至5のいずれか1項記載の給水接続部材。
【請求項7】
前記外筒管の内周面後端には、該外筒管が前記給水管に対して逆向きに外挿される場合に、該給水管と干渉する突部が形成されている請求項1乃至6のいずれか1項記載の給水接続部材。
【請求項8】
前記外筒管は、前記フランジより先端側で前記開口内に嵌合される嵌合部を有している請求項1乃至7のいずれか1項記載の給水接続部材。
【請求項9】
前記パッキンは前記嵌合部から抜け止めされている請求項8記載の給水接続部材。
【請求項10】
前記固定手段は、前記給水管の後端側に形成された雄ネジと、該雄ネジに螺合する雌ネジが内周面に形成されたナットとからなる請求項1乃至9のいずれか1項記載の給水接続部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−144454(P2008−144454A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332354(P2006−332354)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】