説明

給水条件決定装置、給水条件決定方法及び給水条件決定プログラム

【課題】顧客の要求通りの給水条件を決定し、これに基づく最適化された水を提供することができる給水条件決定装置、給水条件決定方法及び給水条件決定プログラムを提供する。
【解決手段】給水条件決定サーバS1に、顧客の情報を入力する顧客情報入力部55、顧客の情報を記憶する顧客情報DB1、水質に影響を与える環境に関する特性を記憶する特性情報DB2、設置可能な水処理機器に関する情報を記憶する管理情報記憶部3、入力された顧客の情報、特性に基づいて、給水条件を判定する条件判定部41、判定された給水条件に基づいて、必要な機器を判定する機器判定部42を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客の要求に応じて、給水条件を決定する給水条件決定装置、給水条件決定方法及び給水条件決定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
[従来の一般的需給形態]
従来からの一般的な工業製品における需給形態は、図4に示す通りである。まず、マーケットリサーチ等から始まり、各社(A社〜C社)の技術を集積して開発された試作品群が、顧客の要求の最大公約数として凝縮され、最終的に製品化される(製品a〜i)。つまり、各社がそれぞれの技術を集積し、顧客の選択肢を考慮した結果が、幾つかの完成品として市場に供給されるのである。そして、顧客側は、その細分化された製品群の中から、いずれかを選択することによって(ベターチョイス)、購買する。
【0003】
[水の需給形態]
次に、水に関する顧客のニーズをより詳細に分析すると、顧客は、水処理機器の所有を望む場合と、供給される水自体を要求する場合との2種類がある。つまり、従来の水の供給方法としては、
(1)水処理機器の販売(リースを含む)・貸与(レンタルを含む)
(2)水自体の販売(宅配を含む)
のいずれかの方法であった。これらの販売・貸与に関しても、機器や水は、販売会社、製造会社側が、リサーチの結果準備した製品について、顧客がベターチョイスを行っていた。また、販売されている水を顧客が購入する場合、数ある容器入り水から、自らの判断において、おおよそ要求に近い種類の水を必要時購入するというのが一般的購入事例であった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−284722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような顧客の選択は、あくまでも各顧客の希望に対する近似値であり、その水質、量、購入形態について、各顧客の要求を完全に満足させるものではなかった。価格に関しては、各社は、単一製品の大量生産をもって、単価を抑制し、他社との競合に備えたわけだが、顧客は、水質、量、販売形態において、満足していた訳ではない。結局、顧客のそれぞれの求めに適合した製品を製造するのとは根本的な違いがあった。
【0006】
例えば、水道配管工事に関して、顧客の要求に応じて機器を選択し、見積もりを作成するというシステムは、特許文献1に開示されている。しかし、最終的な供給水の水質に影響を及ぼす水処理装置に関しては、顧客の希望は全く考慮されることはなかった。
【0007】
さらに、一旦選択された水処理機器に関しては、使用期間が長期にわたることになるため、次のような問題があった。すなわち、水処理機器を購入する場合には、機器性能の経年劣化や、吐出される水質の劣化について、一定期間以降は製造者は責任を負うことはなかった。また、水処理機器をレンタルする場合には、製造者が一方的に製造した機器の中で、所定性能が自らの要求に近い機器を選択し、一定期間貸借する契約であり、希望する機器の性能や、希望する水質を保障するものではなかった。
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するもので、その目的は、顧客の要求通りの給水条件を決定し、これに基づく最適化された水を提供することができる給水条件決定装置、給水条件決定方法及び給水条件決定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、コンピュータにより、給水条件を決定する給水条件決定装置において、前記コンピュータは、顧客の情報を入力する顧客情報入力手段と、顧客の情報を記憶する顧客情報記憶手段と、水質に影響を与える環境に関する特性を記憶する環境特性記憶手段と、設置可能な水処理機器に関する情報を記憶する機器情報記憶手段と、前記顧客情報記憶手段に記憶された顧客情報と、前記環境特性記憶手段に記憶された特性とに基づいて、顧客への給水条件を判定する条件判定手段と、前記条件判定手段によって判定された給水条件に基づいて、前記機器情報記憶手段に記憶された情報の中から必要な機器を判定する機器判定手段と、を有することを特徴とする。なお、かかる発明は、上記の各手段をコンピュータにより実行する方法(請求項4)及びコンピュータに実行させるプログラム(請求項7)として捉えることもできる。
【0010】
以上のような発明では、あらかじめ供給者側が製造した水や水処理機器を、顧客に単純に提供するのとは異なり、顧客の要求と、顧客の環境に応じて、最適な水質となる給水条件を設定し、機器を提供することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の給水条件決定装置において、前記特性は、地域に由来する地域特性と、水源に由来する水質特性と、給水構造に由来する建物特性と、を含むことを特徴とする。なお、かかる発明は、上記の情報を用いる方法(請求項5)及びプログラム(請求項7)として捉えることもできる。
【0012】
以上のような発明では、顧客が給水を受ける地域、水源、建物に応じた木目の細かい判定ができるので、顧客が専門的な知識を有していない場合であっても、顧客に適した給水条件を設定できる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の給水条件決定装置において、前記顧客情報には、顧客毎に、条件判定手段によって判定された給水条件が含まれ、前記顧客情報に共通部分を有する顧客を判定する共通判定手段と、前記共通判定手段によって一致すると判定された顧客について、前記顧客情報記憶手段に記憶された給水条件を、案内情報として生成する案内情報生成手段と、前記案内情報生成部によって生成された案内情報を出力する案内情報出力手段と、を有することを特徴とする。なお、かかる発明は、上記の各手段をコンピュータにより実行する方法(請求項6)及びコンピュータに実行させるプログラム(請求項9)として捉えることもできる。
【0014】
以上のような発明では、新規の顧客であっても、例えば、同一の建物に居住する顧客の給水条件が既に記憶されている場合、その給水条件を提案できるので、処理の簡略化が図れる。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明によれば、顧客の要求通りの給水条件を決定し、これに基づく最適化された水を提供可能な給水条件決定装置、給水条件決定方法及び給水条件決定プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下「実施形態」と呼ぶ)について図面を参照して具体的に説明する。なお、本実施形態における給水条件決定サーバ等は、コンピュータをプログラムで制御することで実現できるが、この場合のハードウェアやプログラムの実現態様は各種変更可能である。また、本発明は、上記のようなプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記憶媒体としても把握できる。したがって、以下の説明では、本発明及び本実施形態の各機能を実現する仮想的回路ブロックを用いる。
【0017】
[本発明の特徴]
一般的に、顧客が水処理機器を購入する場合、顧客は、機器自体の購入を要望しているわけではなく、機器から吐出される水を要求しているのであり、高価な機器類は、業者の便宜上、販売・貸与という形態をとっているに過ぎない。また、原水の状況は、日本全国同一の状況には無く、季節や地域、あるいは供給過程においてもそれぞれ質、量共に変化している。しかし、業者側においては、単純化した設計製造過程による少品種大量生産が価格低減化のために要求され、多様な顧客状況に、それぞれ対処するという方向にはなかった。
【0018】
本発明は、以下に述べるように、給水条件を決定することにより、従来行っていた機器の販売、貸与という形態は取らず、あくまでも必要とする水質、水量を、各顧客に合わせて確保し、水自体の供給をしようとするものである。本実施形態の特徴は、原料としての水が一定でないということから、顧客の要求が同一とはなり難い状況あることを前提に、「給水条件を顧客の要求に一致させる」ということを主目的にしたものである。
【0019】
原材料が常に変化し、顧客の要求が個々に違うのであるから、同一機器で対処することは不可能である。本発明は、原材料としての水質変化に合わせ、機器自体を随時変化改良させることも可能とすることにより、機器の購入を促すのではなく、要求される水自体の利用を維持、促進させるという画期的な技術である。
【0020】
[実施形態の構成]
本実施形態は、図1に示すように、給水条件決定サーバS1と、これに通信ネットワークNを介して接続された顧客端末T1、作業者端末T2、カード会社サーバS2等によって構成されている。これらのサーバ及び端末を構成するコンピュータは、キーボード、マウス、タッチパネル等の入力装置、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置、CPU及びその周辺回路等の処理装置、ハードディスク、メモリ等の記憶装置を備えたコンピュータであり、下記に示す情報を、適宜入力装置から入力し、出力装置から出力することができる。なお、通信ネットワークNとしては、インターネットを利用することが想定される。但し、本発明における通信ネットワークは、多数者が接続可能なネットワークを広く意味するものであり、どのようなLAN又はWANを経由するか、有線か無線かは問わない。
【0021】
給水条件決定サーバS1は、顧客からの要求を受けて、あらかじめ登録された各種データベースに基づいて給水条件の決定を行い、結果を出力するシステムであり、浄水サービスを提供するサービス提供会社Pの管理者Aによって管理される。顧客Uは、顧客端末T1から自らの要求を入力して、給水条件決定サーバS1に送信する。給水条件決定サーバS1において決定された給水条件に基づく設置情報は、作業者端末T2に送信され、作業者Wは受信した設置情報に従って、顧客Uの給水施設への水処理装置の設置作業を行い、作業後に設置の確認情報を作業者端末T2から送信する。顧客Uの利用料金に関する情報は、カード会社サーバS2に送信され、決済処理が行われる。
【0022】
[給水条件決定サーバの構成]
給水条件決定サーバS1は、顧客情報データベース(以下、DBとする)1、特性情報DB2、管理情報DB3、判定処理部4、入出力処理部5、料金処理部6を有している。
【0023】
[データベース]
[顧客情報DB]
顧客情報DB1は、登録された顧客Uの識別情報、登録された顧客Uが給水を受ける環境に関する顧客属性、各顧客Uの給水条件を登録する登録条件、各顧客Uの要求情報等を記憶する手段である。
【0024】
識別情報としては、例えば、住所、氏名、電話番号、ID、パスワード、カード番号等が考えられる。顧客属性としては、例えば、後述する地域特性、水質特定、建物特性のうち、各顧客Uの住所、建物等から決定される特性が考えられる。この顧客属性は、あらかじめ顧客Uの住所に基づいて、管理者A側が決定して記録してもよいし、顧客Uの申し込み時に入力される建物の情報等に基づいて決定して記録してもよい。登録条件は、例えば、給水条件(水質等も含む)、使用機器(使用する浄水器の種類等)、設置位置(どの蛇口に対応する配管用か)、料金(月々の固定基本料及び使用量に応じた従量料金等)が含まれる。
【0025】
顧客Uの要求情報としては、例えば、特定の蛇口(キッチン、洗面所、浴室、トイレ、ベランダ、車庫、屋外等)からの給水の用途を特定する情報とすることが考えられる。具体的には、以下の区別が考えられる。
1−A.飲用水(市販ボトル入り飲料水以上の水質)
水道水レベルの原水から重金属類・化学物質等を除去
1−B.調理用水
水道水レベルの原水から一般細菌・殺菌由来化学物質等を除去
1−C.一般生活用水
水道水レベルの原水から耐塩素ウィルス・原虫等を除去
1−D.生活補助用水(洗顔・洗髪)
水道水レベルの原水から塩素・塩素化合物等を除去
1−E.雑用水
外部散水程度
【0026】
[特性情報DB]
特性情報DB2は、水質に影響を与える環境の特性に関する情報、すなわち、地域に由来する地域特性、水源に由来する水質特性、給水構造に由来する建物特性、上記要求情報に対応する利用種別等を記憶する手段である。
【0027】
[地域特性]
地域特性の具体例としては、次に示すようなものが考えられる。
2−A.活動中の火山帯の有無
2−B.石灰岩等の無機鉱物含有地層
2−C.精錬所の有無
2−D.畜舎の有無
2−E.焼却施設の有無
2−F.産廃処理場の有無
2−G.精密機器工場の有無
2−H.その他工場の有無
2−I. 田畑の有無
2−J.ゴルフ場の有無
2−K.その他表土汚染環境の有無
2−L.その他地下水汚染環境の有無
【0028】
以下、主要なものを説明する。
2−A.活動中の火山帯の有無
この場合、シリカ、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム(鍾乳洞様の結石)、硫黄、高温水、硫化水素等が含まれている。これらの物質の混入・溶解は、例えば、逆浸透膜処理には不利となる。
【0029】
2−B.石灰岩等の無機鉱物含有地層
石灰岩質等の地層に含まれるCa−カルシウムは、溶出し、白い結晶となり、金属等に付着するなど、容器の保存にも大きく影響する。また、逆浸透膜処理の場合、膜面の目詰まりに影響するので、注意が必要となる。
【0030】
2−C.精錬所の有無
金属の精錬所においては、各種微細金属が排水とともに、下水に流下するばかりでなく、地中にも浸透し、将来大きな社会問題にも発展する危険性がある。当然、河川下流域や地下水層下流域においては、飲用とする場合、除去しなくてはならない物質である。
【0031】
2−D.畜舎の有無
牛、馬、豚、鶏など畜舎の存在は、家畜の糞尿汚染を考慮した処理が必要となる。アンモニアは、その分解過程において、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素などに変化しており、これらは「メトヘモグロビン症候群」と呼ばれる重大な疾病の原因物質である。地表の土は当然として、地下水までもが汚染されるので、飲用水としての利用の場合、必ず処理を必要とする。
【0032】
2−E.焼却施設の有無
焼却施設には、低温焼却、高温焼却の二種類がある。地方自治体や民間レベルによっては、予算不足から、低温焼却を実施していた地域もあった。この場合、塩素系化学物質などは、有機物と化合し、ダイオキシン類などの極めて発がん性の高い物質を副生してしまうので、飲用としの利用には、十分な注意が必要となる。
【0033】
2−F.産廃処理場の有無
未処理の産廃処理場と、焼却済みの産廃処理場においては、それぞれ大きな違いがある。未処理産廃処理場では、有機物の腐敗により生じる雑菌、細菌、ウィルス等の増殖による汚染の可能性がある。化石燃料から製造された、土中の微生物によっては分解できない物質の堆積なども考えられる。焼却済みの産廃処理場では、焼却自体が原因として生成する有機塩素化合物が考えられる。焼却し灰燼の中に存在する、放射性物資、重金属類、あらゆる種類の化学物質が存在する可能性が極めて高い。
【0034】
2−G.精密機器工場の有無
精密機器工場は、通常山間部にある場合が多い。清純な空気と汚染の少ない水資源が必要だからである。ナノレベルまで不純物を取り除いた、超純水と呼ばれる水によって、各種部品類は清浄されるが、これは、ナノレベルの超微細な粒子が、清浄過程において排出されていることを意味している。
【0035】
また、工場内では、部品の精度を高めるために、あらゆる技術が集積され、完成度の高さを第一の目標と掲げる。これらの精製過程において、ダイオキシン類・重金属類が排出されているが、現在の浄水場の砂ろ過方式や塩素投入では、全くろ過・除去できない。
【0036】
2−H.その他工場の有無
各種工場では、あらゆる種類の製品が製造されている。製造過程では、膨大な種類と量の化学薬品類が使用されている。これらの排水は、河川への流入が一般的であるが、
(1)国の決めている排出規制項目が少ない。
(2)国の決めている排出基準値が低い。
(3)製造業者がその基準すら守れない場合がある。
(4)全て法が遵守されても、排出される多くの化学物質は、浄水場では除去できない。
という問題がある。諸条件を、各工場毎に集積し、その量と物質ごとの水処理方法を工場自体が履行しなくてはならない。人体への影響を考慮すると、飲用・一般使用に適するか否かの判断が、極めて不透明であるので、本来は雑用水以外には利用すべきではない水質である。
【0037】
2−I.田畑の有無
農業分野においては、安定した高収入を得るためには、作物の安定した育成が不可欠である。病虫害や冷害に強く、短期に栽培出荷され、見た目の優位性を確保するために、あらゆる種類の化学肥料・農薬類が使用されている。例えば、減農薬農法によって栽培される野菜の種類によっては、19回も農薬を散布可能となっている。つまり、田畑の下流域においては、農薬・化学肥料による水質汚染を前提にした水処理を考えなくてはならない。
【0038】
また、合成された肥料から溶出する窒素・燐酸・カリウムなどが、藻類の栄養素として働き、フミン質などによる複合水質汚染の原因であることも、考慮すべきである。更には、藻類の繁殖により、水中植生物などの繁茂が阻害され、炭酸同化作用が十分行われず、二酸化炭素が停滞し、酸素不足による好気性菌や微小生物の死滅が、生物による循環作用を阻害し、更なる水質汚染をおこしてしまうので、水処理方法の特定には十分な配慮が必要である。
【0039】
2−J.ゴルフ場
ゴルフ場においては、芝の育成、緑化など見た目の優位性確保のため、多くの農薬が散布されている。種類も多種多量で特定不可能であるが、いずれにしても浄水場では除去できない物質がほとんどである。飲用や一般使用においては十分除去すべき項目である。
【0040】
[水質特性]
水質特性としては、具体例として、次に示すようなものが考えられる。
3−A.井水
地下水脈から供出される水は、浅井戸と深井戸がある。浅井戸においては、表土との循環が活発であり、地表における大地の汚染の影響を大きく受ける。雑菌類・細菌類・ウィルス等の有機物除去に十分配慮した水処理方法を採用すべきである。一方、深井戸においては、堆積した無機塩類が溶解しており、これらの影響を考慮した水処理方法を採用すべきである。
【0041】
4−B.上水
上水は、各都道府県の水道局によって管轄されているが、原水の河川は単一ではなく、複数の河川からの所謂ブレンドである。流域河川の地域特性が複合的になるわけであり、混入・溶解物質の特定は困難を極める。また、厚生労働省により、飲用可としての水質汚染物質の判断基準は、その項目・量とも変化しているが、反面、それらの汚染物質以外は、法的には規制不要な物質と判断されている。平成17年現在、法的に規格基準が及ぶ水質汚染物質は、50項目に過ぎない。さらに、具体的には、年間の水温変化、濁質変化、イオン量の変化などが、季節ごとに現れ、さらに、混入有機物量に合わせて、投入塩素量も変化している。
【0042】
[建物特性]
建物特性としては、具体例として、次に示すようなものが考えられる。
4−A.中高層建築物
a.受水槽+高架タンク
・受水槽自体の構造に起因する汚染
コンクリート:組成成分の溶出
FRP:ガラス繊維や表面処理液の溶出等
その他:受水槽内面仕上素材由来物質の溶出等
・槽内に滞留する間における外的汚染
防水劣化に伴う、接触土中物質の混入溶解
防鼠・防虫構造の劣化に伴う有機物混入
・高架タンク自体の構造に起因する汚染
FRP:ガラス繊維や表面処理液の溶出等
その他:高架タンク内面仕上素材由来物質の溶出等
・タンク内に滞留する間における外的汚染
飛来する鳥類・虫類の混入又は、これらの代謝物の混入
風雨による塵埃等の混入
【0043】
b.受水槽+圧送ポンプ
・基本的な事項は、aと同様
・圧送ポンプ自体の構造に起因する汚染
・部品類の欠落・磨耗による混入汚染
c.直接圧送ポンプ
・下層階ほど水圧は高くなるので、配管内部の磨耗・部品類の欠落など
に起因する異物混入
【0044】
なお、中高層建築物の給水配管において、配水された上水は、受水槽以降、個別の蛇口に至るまでには、相当の給水配管内を移動するので、配管自体の内部からの水質汚染を考慮しなくてはならない。
【0045】
一般的には、ライニング鋼管と呼ばれる給水管が使用されているが、その被覆物質自体が溶出する。また、程なくライニング物質は溶出し終わり、鋼管が露出し、錆の発生が始まる。錆の凹凸部分には、各種物質が固着し易い状況となり、ある衝撃によって剥がれ落ちるので、除去を必要とする。
【0046】
4−B.低層建築物
a.低水圧地に建つ建物
水処理機器は、通常その装置内を通過させる時、圧損が生じる。特に、逆浸透膜方式を採用するに当っては、低圧地域においては、圧力ポンプを併設する必要が生じる。機器を電気的に作動させるしくみを持つ装置においては、原水の供給停止時、各種ポンプ類の空運転による事故防止のため、低圧センサが取り付けられているが、低水圧地においては、認識する圧力数値自体を考慮しなくてはならない。
【0047】
b.中水圧地に建つ建物
敷地内配管は、直近の道路内公設水道管等より分岐される。道路内配管は一定ではなく、口径が異なる。比較的細い公設配管から、各戸に分岐している場合、近隣が一斉に水道を利用する時間帯などは、水圧が低下したり、反対に夜間などは高水圧による被害が出たりする。これら水圧変動のある事を前提とした機器の設計が必要となる。
【0048】
[利用種別]
利用種別としては、具体例として、次に示すようなものが考えられる。
5−A.混入物を除去(雑用水)
5−B.一般細菌・殺菌由来化学物質等を除去(調理用水)
5−C.塩素・塩素化合物等を除去(生活補助用水)
5−D.耐塩素ウィルス・原虫等を除去(一般飲料水)
5−E.重金属類・化学物質等を除去(飲用水)
5−F.各種イオンを除去(飲用水・加湿器用水)
【0049】
[管理情報DB]
管理情報DB3は、設置可能な水処理機器に関する情報を記憶する機器情報、利用する機器に応じた料金情報を記憶する手段である。機器としては、例えば、精密ろ過膜(マイクロフィルター:MF)、限外ろ過膜(ウルトラフィルター:UF)、ナノろ過膜(ナノフィルター:NF)、活性炭フィルター(カーボンフィルター:CF)、紫外線殺菌装置、オゾン殺菌装置等の殺菌装置、逆浸透膜フィルター(リバースオスモシスフィルター:RO)等が考えられる。機器情報は、これらの機器と、これによって除去可能な物質、用途等も関連付けられた情報となっている。料金情報は、使用する機器に応じた設定価格となっており、複数のフィルタの組み合わせが必要なRO等は高価となる。また、使用する機器が多くなるほど、高価となる。
【0050】
[判定処理部]
判定処理部4は、条件判定部41、機器判定部42、料金決定部43、共通判定部44を有している。条件判定部41は、顧客の要求、顧客の属性、地域特性、水質特性、建物特性、利用種別等に基づいて、顧客Uごとの給水条件を判定する手段である。例えば、図3に示すように、飲用水として利用する蛇口の場合に、重金属類・化学物質類・溶解物質等の除去が必要であることが判定される。顧客の居住地、居住建物から見た地域特性、水質特性、建物特性等によっては、さらに、除去が必要な物質があると判定される場合もある。
【0051】
機器判定部42は、条件判定部41により判定された給水条件と、管理情報DB3の機器情報に基づいて、必要な機器を判定する手段である。例えば、上記の重金属類・化学物質類・溶解物質等の除去が必要な例では、MF、UF・殺菌装置、CF、ROが選択される。また、顧客の居住地、居住建物から見た地域特性、建物特性等に応じて、必要な圧力値を満たすポンプが選択される場合もある。料金決定部43は、機器判定部42により判定された機器と、管理情報DB3の料金情報に基づいて、各顧客の料金を決定する手段である。
【0052】
共通判定部44は、要求のあった顧客について、識別情報、顧客属性、登録条件、要求情報等に基づいて、既存の顧客と共通の情報を持っているかどうかを判定する手段である。例えば、要求のあった新規顧客が、住所等から見て、既存の顧客と同一の建物に居住しているかどうかを判定する。
【0053】
[入出力処理部]
入出力処理部5は、通信ネットワークNを介してやり取りされる情報を制御する手段であり、送受信部51、案内情報生成部52、案内情報出力部53、顧客情報受付部54、顧客情報入力部55、設置情報処理部56、決済情報処理部57を有する。送受信部51は、通信ネットワークNを介した情報の送受信を制御する手段である。案内情報生成部52は、顧客端末T1への案内情報をWebページや電子メールとして生成する手段である。案内情報出力部53は、生成された案内情報を出力する手段である。
【0054】
顧客情報受付部54は、Webページや電子メールにより送信されてきた顧客の識別情報、属性、要求情報等を受け付ける手段である。顧客情報入力部55は、顧客情報受付部54が受け付けた情報を顧客情報DB1に入力する手段である。また、この顧客情報には、検査員により検出されて入力される顧客の実際の使用水量に関する情報も含まれる。
【0055】
設置情報処理部56は、決定された給水条件に従った機器の設置に関する情報を、作業者端末T2に出力したり、作業者端末T2からの設置確認を受け付けたりする手段である。決済情報処理部57は、カード会社サーバS2との間で、各顧客の利用により生じた料金の決済を処理する手段であり、与信に必要な情報のやり取り等も行う。
【0056】
[料金処理部]
料金処理部6は、顧客の実際の使用量を判定する使用量判定部61、使用量判定部61によって判定された使用量と、顧客情報DB1に記憶された顧客の料金設定に応じて、顧客への請求料金を算出する料金算出部62を有している。
【0057】
[作用]
[顧客要求の受信]
以上のような本実施形態による給水条件決定処理手順を、図2のフローチャートを参照して説明する。まず、案内情報生成部52が、顧客端末T1からの要求に応じて、浄水サービスの提供に関するWebページ等を生成し、案内情報出力部53によって出力する(ステップ201)。この案内情報は、通信ネットワークNを介して顧客端末T1に送信される。顧客Uは、この案内情報を参照して、サービスを希望する場合には、登録に必要な顧客情報(識別情報、属性、要求情報等)を入力し、送信する。
【0058】
この顧客情報は、送受信部51にて受信され、顧客情報受付部54により受け付けられて、顧客情報入力部55によって顧客情報DB1に入力される(ステップ202)。共通判定部44によって、顧客Uの建物が、顧客情報DB1に登録された識別情報(住所等)に基づいて、既存の顧客と同一建物ではないと判定された場合には(ステップ203)、条件判定部41が、当該顧客Uの要求、属性、特性情報DB2の地域特性、水質特性、建物特性、利用種別等に基づいて、給水条件を判定する(ステップ204)。そして、この判定結果に基づいて、機器判定部42が、必要な機器を判定する(ステップ205)。例えば、図3は、顧客の利用する蛇口に応じて、雑用水、調理用水、生活補助用水、飲用水を割り当て、それぞれの要求仕様に応じて、必要な機器を設定した例である。
【0059】
さらに、料金決定部43が、管理情報DB3の料金情報に基づいて、当該顧客Uの契約料金を決定する(ステップ206)。決定された給水条件に関する情報は、顧客ごとに顧客情報DB1に登録される(ステップ207)。また、かかる給水条件を説明する情報が、案内情報生成部52によって生成されて案内情報出力部53によって出力され(ステップ208)、送受信部51によって顧客端末T1に送信される。
【0060】
また、設置情報処理部56は、決定された給水条件に従った機器の設置に関する情報を出力する(ステップ209)。この設置情報は、送受信部51によって、設置を行う作業者端末T2に送信される。作業者は、顧客Uの施設内に赴き、受信した設置情報に従って設置作業を行い、作業が完了した場合に、作業者端末T2から設置確認を送信する。この設置確認が送受信部51により受信されると、設置情報処理部56は、顧客情報DB1に、当該顧客Uについて設置済み確認の入力を行う(ステップ210)。
【0061】
なお、ステップ203で、既存の顧客と同一の建物の顧客Uからの申し込みがあった場合には、既存の顧客の給水条件を案内する情報を、案内情報生成部52が生成し、案内情報出力部53が出力する(ステップ211)。この案内情報は、送受信部51によって送信される。これを受信した顧客端末T1において、顧客Uが既存の顧客と同様の給水条件を選択すると、これが送受信部51によって受信される。かかる選択が顧客情報受付部54によって受け付けられると(ステップ212)、顧客情報入力部55は、選択された条件で顧客情報を登録する(ステップ207)。その後は、ステップ207以降の処理が行われる。さらに、顧客Uによる選択がない場合には(ステップ212)、ステップ204以降の処理が行われる。
【0062】
上記のように、顧客とサービス提供会社との間で浄水サービス供給契約が成立した後は、顧客Uの毎月の実際の使用量が、メーター等により検査員によって検査され、その情報が顧客情報DB1に入力される。使用量判定部61は、かかる使用量を判定し、料金算出部62は、顧客情報DB1に記憶された顧客Uの料金設定に応じて、顧客Uへ請求する料金を算出する。この請求は、決済情報処理部57によって、カード会社サーバS2との間で処理される。
【0063】
[効果]
以上のような本実施形態によれば、利用種別、目的、水質、水量、その他の顧客の要求に応じて、これを充足する機器が、地域特性、水質特性、建物種別、利用種別、水質、水量、その他事項を考慮の上で選定され、設置される。従って、顧客は、望む通りの水を得ることができる。なお、同一建物内の顧客の場合には、既存の給水条件を利用することができるので、処理を簡略化できる。
【0064】
このように決定された給水条件に基づく契約は、顧客の要求と、提供する機器から吐出される水とを確認し、双方の合意を持って締結されるいわば「水利用権契約」となる。従って、本実施形態は、以下のような運用を促進することにも寄与する。例えば、原水や利用状況が変化する場合には、顧客の要求が維持されるように、使用機器を任意に改良することもでき、常に顧客が要求する一定の仕様の範囲の中に性能を維持することも可能となる。
【0065】
かかる「水の利用権」は、いつでも放棄することができ、顧客は、所有、貸借から発生する煩わしさから開放される。機器は、常にサービス提供者の所有とし、顧客は、自らの要求する仕様を満足しない場合、何時でも交換を要求できる。顧客は、「利用する権利」を購入するのであり、不要となった機器は何時でも撤去を要求できる。
【0066】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記のような実施形態に限定されるものではない。使用する顧客情報、特性情報、管理情報の種類、内容に関しては、上記の実施形態で例示したものには限定されない。要求する水質等を数値化して、これに適合する条件をレベル分けし、各レベルを満たすために必要な機器が選択されるようにしてもよい。
【0067】
また、顧客の要求に応じて決定された条件を案内情報として出力して提示した後、さらに顧客の要求に応じて、条件を変更するようにしてもよい。既存顧客と同一の条件についての案内情報を出力した場合、その一部を変更する要求に応じて、既存の条件を変更する形で顧客に応じてカスタマイズできるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態の構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】図1の実施形態における処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図1の実施形態における給水条件の一例を示す図である。
【図4】従来の製品の需給形態を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1…顧客情報DB
2…特性情報DB
3…管理情報DB
4…判定処理部
5…入出力処理部
6…料金処理部
41…条件判定部
42…機器判定部
43…料金決定部
44…共通判定部
51…送受信部
52…案内情報生成部
53…案内情報出力部
54…顧客情報受付部
55…顧客情報入力部
56…設置情報処理部
57…決済情報処理部
61…使用量判定部
62…料金算出部
N…通信ネットワーク
P…サービス提供会社
S1…給水条件決定サーバ
S2…カード会社サーバ
T1…顧客端末
T2…作業者端末
U…顧客
W…作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより、給水条件を決定する給水条件決定装置において、
前記コンピュータは、
顧客の情報を入力する顧客情報入力手段と、
顧客の情報を記憶する顧客情報記憶手段と、
水質に影響を与える環境に関する特性を記憶する環境特性記憶手段と、
設置可能な水処理機器に関する情報を記憶する機器情報記憶手段と、
前記顧客情報記憶手段に記憶された顧客情報と、前記環境特性記憶手段に記憶された特性とに基づいて、顧客への給水条件を判定する条件判定手段と、
前記条件判定手段によって判定された給水条件に基づいて、前記機器情報記憶手段に記憶された情報の中から必要な機器を判定する機器判定手段と、
を有することを特徴とする給水条件決定装置。
【請求項2】
前記特性は、
地域に由来する地域特性と、
水源に由来する水質特性と、
給水構造に由来する建物特性と、
を含むことを特徴とする請求項1記載の給水条件決定装置。
【請求項3】
前記顧客情報には、顧客毎に、条件判定手段によって判定された給水条件が含まれ、
前記顧客情報に共通部分を有する顧客を判定する共通判定手段と、
前記共通判定手段によって一致すると判定された顧客について、前記顧客情報記憶手段に記憶された給水条件を、案内情報として生成する案内情報生成手段と、
前記案内情報生成部によって生成された案内情報を出力する案内情報出力手段と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の給水条件決定装置。
【請求項4】
コンピュータに設定された顧客情報入力手段、顧客情報記憶手段、環境特性記憶手段、機器情報記憶手段、条件判定手段、機器判定手段が、給水条件を決定する給水条件決定方法であって、
顧客情報入力手段は、顧客の情報を入力し、
顧客情報記憶手段は、顧客の情報を記憶し、
環境特性記憶手段は、水質に影響を与える環境に関する特性を記憶し、
機器情報記憶手段は、設置可能な水処理機器に関する情報を記憶し、
条件判定手段が、前記顧客情報記憶手段に記憶された顧客情報と、前記環境特性記憶手段に記憶された特性とに基づいて、給水条件を判定し、
機器判定手段は、前記条件判定手段によって判定された給水条件に基づいて、前記機器情報記憶手段に記憶された情報の中から必要な機器を判定する
ことを特徴とする給水条件決定方法。
【請求項5】
前記特性は、
地域に由来する地域特性と、
水源に由来する水質特性と、
給水構造に由来する建物特性と、
を含むことを特徴とする請求項4記載の給水条件決定方法。
【請求項6】
前記コンピュータに、条件登録手段、共通判定手段、案内情報生成手段、案内情報出力手段が設定され、
前記顧客情報には、顧客毎に、条件判定手段によって判定された給水条件が含まれ、
前記共通判定手段は、前記顧客情報に共通部分を有する顧客を判定させ、
前記案内情報生成手段は、前記共通判定手段によって一致すると判定された顧客について、前記顧客情報記憶手段に記憶された給水条件を、案内情報として生成し、
前記案内情報出力手段は、前記案内情報生成部によって生成された案内情報を出力することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の給水条件決定方法。
【請求項7】
コンピュータを制御することにより、給水条件を決定する給水条件を決定させる給水条件決定プログラムにおいて、
前記コンピュータに、
顧客情報を入力させ、
顧客の情報を記憶させ、
水質に影響を与える環境に関する特性を記憶させ、
設置可能な水処理機器に関する情報を記憶させ、
記憶された顧客情報と特性とに基づいて、顧客への給水条件を判定させ、
判定された給水条件に基づいて、記憶された機器情報の中から必要な機器を判定させることを特徴とする給水条件決定プログラム。
【請求項8】
前記特性は、
地域に由来する地域特性と、
水源に由来する水質特性と、
給水構造に由来する建物特性と、
を含むことを特徴とする請求項7記載の給水条件決定プログラム。
【請求項9】
前記顧客情報には、顧客毎に、条件判定手段によって判定された給水条件が含まれ、
前記コンピュータに、
前記顧客情報に共通部分を有する顧客を判定させ、
一致すると判定された顧客について、記憶された給水条件を、案内情報として生成させ、
生成された案内情報を出力させることを特徴とする請求項7又は請求項8記載の給水条件決定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−188344(P2007−188344A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6599(P2006−6599)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(500161443)株式会社環境向学 (8)