説明

給水湯管引出し口形成具

【課題】
径や外形が異なる複数種類の信号線に対応するとともに、該信号線と引き出し口との間に生じる隙間を少なくして空気流通を低減することができる給水湯管引出し口形成具を提供することである。
【解決手段】
可とう性を有するサヤ管又は可とう性と保温性を有する保温筒の端部に取着されて、前記サヤ管内に配管された可とう性を有する給水湯管を引き出す引出し口を構成する給水湯管引出し口形成具であって、前記引出し口形成具は、全体が筒状に形成されて、一端に前記サヤ管に外嵌するサヤ管取着部が、他端に前記給水湯管が引き出される管引出し口が設けられるとともに、前記サヤ管内に給水湯管とともに配線された信号線が引き出される信号線引出し口が形成されている。そして、前記信号線引出し口は、信号線引出し口の一部又は全部を塞ぐ舌片が一体成形により設けられ、前記舌片は、たわみ変形可能な可とう性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水湯管が内部に配管されたサヤ管の端部に取着されて、内部の給水湯管を引き出す引出し口を形成する給水湯管引出し口形成具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、サヤ管の端末に取付けられ、該サヤ管の内部に配管された給水湯管を引き出すための引出し具が存在する(例えば、意匠登録第996117号公報)。この引出し具は、サヤ管の端部に取付けられるとともに、サヤ管の内部に配管された温水管及び信号線を引き出す筒状の引出し口が備えられ、該筒を貫通するように温水管及び信号線が引き出されている。また、このサヤ管内には、一般に風呂の追い炊きや床暖房等に用いられる行き戻り配管として2本の温水管と、制御信号を伝達する信号線とが配管・配線されており、サヤ管の端部に取付けられた引出し具の前記引出し口から引き出された温水管及び信号線は、室外の給湯器等の熱源機に接続される。そして、温水管の引出し口は、引き出された温水管の外径と略同一に形成されており、その内面は温水管の外面に密着して、熱源機との接続箇所からの漏水が温水管の外面をつたってサヤ管内へと侵入するのを防止している。
【特許文献1】意匠登録第996117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、温水管は一般に規格によってその外径が定められており、共通性があるものの、信号線には追い炊きや床暖房等の用途等によってたくさんの種類があり、その径や外形が異なるため、ある特定の信号線を用いる場合しか使用することができなかった。すなわち、サヤ管内への異物の侵入を防止するには、特定の信号線の外径にあわせた引出し具を選択して使用する必要があった。そのため、信号線の引出し口の内径を大きく設定することで複数種類の径や外形に対応しているが、細い信号線を使用する際には、その引出し口内面と信号線外面との間に隙間ができてしまい、該隙間によって引出し具内部及び取付けられたサヤ管内部との空気流通が生じ、熱源機により暖められた湯が冷えてしまいエネルギー効率が悪くなるおそれがあった。
【0004】
本発明は、径や外形が異なる複数種類の信号線に対応するとともに、該信号線と引き出し口との間に生じる隙間を少なくして空気流通を低減することができる給水湯管引出し口形成具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、可とう性を有するサヤ管の端部に取着されて、前記サヤ管内に配管された可とう性を有する給水湯管を引き出す引出し口を構成する給水湯管引出し口形成具であって、前記引出し口形成具は、全体が筒状に形成されて、一端に前記サヤ管に外嵌するサヤ管取着部が、他端に前記給水湯管が引き出される管引出し口が設けられるとともに、前記サヤ管内に給水湯管とともに配線された信号線が引き出される信号線引出し口が形成され、前記信号線引出し口は、信号線引出し口の一部又は全部を塞ぐ舌片が一体成形により設けられ、前記舌片は、たわみ変形可能な可とう性を有していることを要旨としている。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給水湯管引出し口形成具において、前記舌片は複数設けられていることを要旨としている。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の給水湯管引出し口形成具において、前記引出し口形成具は、全体が分割体で構成され、信号線引出し口が分割体の接合部に連通して設けられていることを要旨としている。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3に記載のいずれか一項の給水湯管引出し口形成具において、隣り合う舌片間、又は、舌片と信号線引出し口内面との間は、信号線を保持可能な幅に構成されていることを要旨としている。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4に記載のいずれか一項の給水湯管引出し口形成具において、前記引出し口形成具は、前記信号線引出し口の略全体を塞ぐ開閉動自在な蓋体を備えていることを要旨としている。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5に記載のいずれか一項の給水湯管引出し口形成具において、前記引出し口形成具は全体が分割体で構成され、前記引出し口形成具の分割体を組付ける閉じ部に前記信号線引出し口を塞ぐ蓋体が一体に設けられていることを要旨としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サヤ管から給水湯管とともに引き出される信号線の、径や外形が異なる複数種類に対応するとともに、該信号線と信号線引出し口との間に生じる隙間を少なくして空気流通を低減することができることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した第1実施形態の給水湯管引出し口形成具を図1〜図3に基づいて説明する。本発明に係る第1実施形態の給水湯管引出し口形成具10は、合成樹脂製で筒体を軸方向に2分割した2つの半円筒状の分割体(20、30)からなり、両分割体(20、30)の一側がヒンジ41により開閉動自在に一体に連結されており、前記ヒンジ41を軸に両分割体を相対的に回動させて他側の端面である接合部42を互いに当接させることで閉じることができ、その状態で全体が筒状となるように形成されている。また、その接合部42近傍には、前記両分割体を筒体に閉じた状態を維持するための閉じ部21が軸方向に沿って2つ設けられ、当該各閉じ部21は、板状に形成されてその基端を軸に回動自在に一方の分割体20の外面に設けられ、閉じ部21によって両分割体(20、30)が組付け可能となっている。
【0013】
さらに、前記引出し口形成具10は、一端側に可とう性を有する給水湯管を内部に配管して保護するサヤ管が内挿されるようにサヤ管端部に外嵌するサヤ管取着部11が設けられ、他端側には、前記サヤ管端部から引き出された給水湯管が引き出される2つの管引出し口13を形成して他を閉塞する閉塞壁12が設けられ、その閉塞壁12よりさらに外方には、引き出された各給水湯管を紫外線等から保護すべく個別に収容する保護管が連結される2つの保護管連結部15が設けられている。
【0014】
前記サヤ管取着部11は、周方向に沿って連続し内部へと突出した係合突部11aが設けられ、当該係合突部11aを前記サヤ管の外面に形成された段部に係合させることで、サヤ管からの軸方向への移動による離脱を防止している。また、取着部の奥方にはサヤ管の所定以上の挿し込みを規制する規制部11bが各分割体(20、30)にそれぞれ設けられている。当該規制部11bにより、サヤ管端面と閉塞壁12との間に信号線を配線可能な配線空間を確保している。
【0015】
前記管引出し口13は、引き出される給水湯管の外径と略同一径に形成され、さらにその内面に周方向に沿って連続する圧接リブ14が設けられ、該圧接リブ14が引き出された給水湯管の外面に圧接して給水湯管と管引出し口13との間の隙間を塞いでいる。なお、各分割体(20、30)を組付けた際に対面する閉塞壁12の端面にも、同様の圧接リブ14が設けられて閉塞壁間の隙間を塞いでいる。
【0016】
前記保護管連結部15は、前記引き出された給水湯管の端部から、給水湯管を内部に挿通した状態で軸方向に移動させた保護管の外面に形成された段部に嵌りこみ、該保護管の軸方向の移動を防止した状態で連結できる連結口15aを備えている。また、前記連結口15aと前記管引出し口13を形成する閉塞壁12との間(詳細には閉塞壁12と近接した位置)には、給水湯管が接続された熱源機との接続部から漏れて給水湯管の外面を伝ってきた湯水を外方へ排出する排出口15bが形成されている。
【0017】
前記閉じ部21には、他方の分割体30に設けられた被係止部31に係止する四角孔状の係止部21aが設けられ、前記被係止部31に係止部21aを係止させることで両分割体(20、30)を組付けることができる。さらに、閉じ部21の先端は組付けた状態で他方の分割体30の外面から離れる方向に屈曲しており、被係止部31に係止部21aが係止した閉じ部21の係止状態を強制的に解除するための指掛部21bが形成されている。そして、その閉じ部21の側方(詳しくは、各閉じ部21が互いに相手側に向けた方向)に延設された、後述する信号線引出し口50の略全体を外側から塞ぐことができる蓋体22が形成されている。この蓋体22はその基端部22aが薄肉に形成されて閉じ部21に対して回動自在に設けられており、閉じ部21を係止して両分割体を組付けた状態であっても、該蓋体22のみを回動させて信号線引出し口50を外方に臨ませることができる。
【0018】
前記接合部42の前記両閉じ部21の間であって、一方の分割体20には、突出する突出部23が設けられており、他方の分割体30には、両分割体を組付けた際に軸方向のズレを防止すべく前記突出部23の軸方向両側方に当接する当接段部33が設けられている。さらに、前記突出部23及び当接段部33から連設された略L字状の凸部43が、両分割体(20、30)に設けられ、両分割体を組付けた状態で閉じ部21に向けて開口したコ字状を構成し、凸部43に囲まれた該コ字状の内側には前記蓋体22が配置されるよう構成されている。さらに説明すると、この凸部43(凸部43に囲まれたコ字状の内側面)と、前記蓋体22の側縁面とが略当接するように設けられているとともに、凸部43の有する突出高さを超えて蓋体22が開く方向に傾動するまでは、蓋体22が開く方向へと多少傾動しても、蓋体22と凸部43が協働して信号線引出し口50を外方に臨まないよう実質的に塞いでいる。
【0019】
そして、前記凸部43に囲まれたコ字状の内側には、給水湯管とともにサヤ管内に配線された信号線を引き出す信号線引出し口50が形成されている。該信号線引出し口50は、両分割体(20、30)にそれぞれ接合部42側に開口して該接合部42と連通するコ字状に切り欠かれており、両分割体を組付けることで互いが合致して1つの信号線引出し口50を構成している。そして、該信号線引出し口50には、その内周面から信号線引出し口内部に向けて延設された舌片51が一体成形により設けられて、信号線引出し口50の略全体を塞いでいる。
【0020】
前記舌片51は、切り込み51aにより互いに独立して複数設けられている。詳細には、一つの分割体に設けられた信号線引出し口50に2つの舌片51がその間を接合部42と連通するように(切り込み51aが接合部42と連通するように)して対向して設けられ、両分割体(20、30)を組付けて構成される信号線引出し口50には、前記2つの舌片51間と接合部42とにより十字状に分離された、計4つの舌片51により該信号線引出し口50の全体が閉塞されている。当該舌片51は、薄板状に形成されて自在にたわむ可とう性を有しており、信号線引出し口50から引き出される信号線の外面に当接することで、引出し口形成具の内方又は外方にたわみ、信号線の引き出しを許容している。そして、信号線によりたわみ変形させられた前記舌片51は、信号線の引き出しに追従してたわみ、信号線の外面に当接した状態となり、信号線の径や外形に関わらず、信号線と信号線引出し口50との間に生じる隙間を少なくしている。そのため、前記信号線と信号線引出し口50との間に生じる隙間からの空気流通を低減できて、サヤ管内に配管された給湯管の温度低下を抑制できる。なお、隣り合う舌片51間の間(切り込み51a)は、信号線をその間に押し込むことで仮保持可能な略V字状の細幅に形成されている。
【0021】
前記舌片51は、さらに、引き出された信号線Cの軸方向の移動を許容する可とう性を備えている。そのため、閉じた状態の前記引出し口形成具から信号線Cを軸方向に移動させるように引っ張り出した際に信号線の外面と舌片51との摺接が生じても、信号線を傷つけることがない。また、サヤ管内にともに配管された給水湯管に熱伸縮が生じて、当該給水湯管に引っ張られるように信号線が軸方向に移動することによる、舌片51と信号線外面との摺接に対して、舌片51端面が信号線の外面を傷つけることなく、信号線の軸方向の移動を許容できる。
【0022】
次に、上記第1実施形態における給水湯管引出し口形成具10の設置方法について、主に図4〜図10を用いて説明する。熱源機Bの近くまで配管された外面に凹凸が形成された波付の可とう性を有する合成樹脂製のサヤ管Rの端部から、前記サヤ管R内に配管された可とう性を有する架橋ポリエチレン管等の給水湯管P及び該給水湯管Pとともにサヤ管R内に配線された信号線Cが所定長さ引き出され、引き出された給水湯管Pはその端部から移動させた保護管S内に内挿されて、端部が熱源機Bの接続部B1に接続されている。そして、図5に示すように、前記給水湯管引出し口形成具10の組付けを解除して開いた状態の該引出し口形成具10の一方側の分割体20をサヤ管端部にあてがいサヤ管Rの外面の段部R1に前記係合突部11aを係合させる。そのとき、サヤ管R端面を規制部11bを目安にサヤ管R端面と閉塞部との間に信号線Cを配線可能な空間を確保する程度に閉塞部から離して配置する。また、保護管Sに内挿された給水湯管Pを保護管Sとともに径方向に移動させて、保護管Sの外面に形成された段部S1内に前記連結口15aを嵌め、給水湯管Pを一方側の管引出し口13内にあてがう。なお、図5において信号線は図面上省略している。
【0023】
そして、サヤ管端部から引き出された信号線Cを、前記舌片51における隣り合う舌片51の間に信号線Cを径方向に移動させるように押し込むことで、隣り合う舌片51の側面(仮保持空間を形成する側縁)の間で仮保持させる。このとき、信号線Cが押し込まれることにより隣り合った両舌片51がたわみ変形するとともに、その舌片51の側面が信号線Cの外面に当接する。また、押し込まれた信号線Cは断面におけるその大部分が舌片51間に配置され残りの一部は接合部42から突出した状態となっている。
【0024】
この状態から、他方側の分割体30を前記ヒンジ41を軸に回動して接合部42を合致させるように閉じることで、他方側の分割体30の係合突部11aがサヤ管Rの外面に係合するとともに、保護管の連結口15aが保護管Sの外面に形成された段部S1に嵌りこみ、サヤ管R及び保護管Sと前記引出し口形成具10とが一体に連結される。そして、管引出し口13内に宛てがわれた給水湯管Pは、両分割体(20,30)が閉じられることによりその外面周方向の全体にわたって前記圧接リブ14が圧接して略水密状態を構成するとともに、対面する閉塞壁12の端面どうしも圧接リブ14が互いに圧接しあって略水密状態を構成する。この状態で前記突出部23は前記当接段部33にその両側方が略当接し、両分割体の軸方向のズレを規制している。
【0025】
前記一方の分割体20の信号線引出し口50に仮保持されている信号線Cは、他方の分割体30の信号線引出し口50が近接する際に、他方の分割体30の信号線引出し口50内の複数の舌片51間に入りこむ。これに伴い、他方の分割体30側の舌片51はケーブルの外形状に沿ってたわみ変形することとなる。そして、両分割体(20、30)の信号線引出し口50の接合部42が合致することによる1つの信号線引出し口50が形成された状態で、信号線Cと信号線引出し口50との隙間を閉塞するように、両分割体の舌片51が信号線Cの全周にたわんだ状態で位置することとなる。
【0026】
前記両分割体が閉じられた前記引出し口形成具10は、開かないように組付けるべく、前記閉じ部21を基端を軸に回動させて閉じ部21の係止部21aを前記被係止部31に係止する。この時、2つの閉じ部21のうち信号線Cが引き出された信号線引出し口50に対応する蓋体22は、信号線Cの外面に当たって、その基端を軸として外方へと開いた状態となる。なお、予め開いた状態となるように塑性変形させて(曲げグセをつけて)おいてから閉じ部21を回動させて係止部21aを被係止部31に係止させて両分割体(20、30)を組み付けても良い。
【0027】
上記第1実施形態の給水湯管引出し口形成具によれば、信号線Cが引き出された信号線引出し口50には、その内面と信号線Cとの間の隙間を前記舌片51が覆うようにして、隙間を少なくしているため、空気の流通を減少させることができる。特に前記舌片51がその外形に追従するようにたわむ可とう性を有しており、外形の異なる信号線にも柔軟に対応できる。さらに、舌片51の可とう性により、両分割体を閉じた際に信号線Cに当接した舌片51が信号線に食い込むことなく、直ちにたわんで信号線を傷つけることが無い。さらには、給水湯管Pの熱伸縮に伴って、信号線が連れ移動しようとしても、前記軟質性によって、前記連れ移動による信号線の軸方向の移動を許容している。
【0028】
また、図10のように設置することで、前記蓋体22が「傘」の役目となって、舌片51間からの雨水の侵入が防止できる。ただし、サヤ管Rが上から配管されてサヤ管R端部に前記引出し口形成具の管引出し口13が下方を向くように取着される場合には、蓋体22が管引出し口側(下側)へ向いて延設されている信号線引出し口側を選択して信号線Cを引き出すことで、該蓋体22を「傘」の役目として機能させられる。
【0029】
信号線引出し口50が分割体の接合部42と連通して設けられているため、貫通孔に信号線Cを端部から軸方向へ押し込むように挿入して引き出す必要が無く作業性が良い。また、分割体を閉じる動作と信号線を信号線引出し口50に案内する動作を一連の動作で行うこともできる。
【0030】
また、組付けた状態(閉じた状態)で1つの信号線引出し口50を形成した上記第1実施形態においては、分割体を開いた状態では、一方の分割体20及び他方の分割体30のそれぞれに信号線引出し口50が形成されている。そのため、一方又は他方のいずれかの分割体をサヤ管Rにあてがったとしても、あてがった分割体側の一方又は他方の分割体の信号線引出し口50に信号線Cを仮保持させることができため、どちらの分割体をサヤ管Rにあてがっても良い。また、サヤ管Rにあてがっていない側の分割体に信号線Cを仮保持させることもできる。そして、仮保持させることで両分割体を閉じる際に接合部間に信号線を挟み込むおそれが軽減される。
【0031】
信号線引出し口50の略全体を外側から塞ぐ蓋体22により、信号線引出し口50を使用しない箇所も空気流通を低減できるとともに、信号線が配線されないサヤ管の端部であっても、給水湯管引出し口を形成することができて部材の共用化が図れる。
【0032】
分割体を組付ける閉じ部21に信号線引出し口50を塞ぐ蓋体22が一体に設けられているため、閉じ部21を回動させて組付ければ、閉じ部21の回動と連動して蓋体22が信号線引出し口50を塞ぐことができる。
【0033】
なお、上記第1実施形態の信号線引出し口50は、両分割体のそれぞれに設けて、それらを合致させて1つの信号線引出し口50としたが、一方又は他方の分割体のみに信号線引出し口50を形成しても良い。
【0034】
具体的には、図11〜図13に示すように、一方側の分割体のみに信号線引出し口50を構成し、4つの舌片51により信号線引出し口50の略全体を閉塞し、前記接合部42と一部が連通する十字状の切り込み51aが形成され、両分割体を閉じた際には、前記十字状の接合部42と連通する切り込み51aの一部を他方側の分割体の接合部42が閉じることとなる。
【0035】
この場合、接合部42から十字状の切り込み51aの中央へと信号線Cを押し込むことで、信号線Cの全体を予め信号線引出し口50内に完全に仮保持させることができる。
【0036】
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図15〜図16に基づいて説明する。この第2実施形態に係る給水湯管引出し口形成具は、合成樹脂製で全体が筒状であるが、第1実施形態とは分割体で構成されていない点が異なる。
【0037】
一端側には、内部にサヤ管外面に係合する係合突部11aを有し、サヤ管端部が差し込まれるようにしてサヤ管端部に外嵌することでサヤ管に取着できるサヤ管取着部11が設けられ、他端側には、前記サヤ管端部から引き出された給水湯管が引き出される2つの管引出し口13と、サヤ管端部から引き出された信号線が引き出される1つの信号線引出し口50とを形成して他を閉塞する閉塞壁12が設けられている。
【0038】
前記管引出し口13及び信号線引出し口50は、前記閉塞壁12から立設した筒状であり、管引出し口13は、引き出される管の外面と略同一径に形成されて、管引出し口内面と給水湯管外面とが密着して略水密状態を形成する。また、信号線引出し口50には、一体成形により設けられて信号線引出し口50の一部を塞ぐ舌片51が対向して一対設けられている。
【0039】
前記舌片51は、可とう性を有し、その一部が信号線引出し口50と連結されるとともに、残りの部分は信号線引出し口50と分離しており、信号線引出し口50の一部を閉塞する舌片51は2つの舌片51により構成されている。なお、この給水湯管引出し口形成具10には信号線引出し口50を閉塞する蓋体は備えられていない。また、給水湯管及び信号線はサヤ管取着部11側から前記引出し口形成具の内部に差し込まれ各引出し口(13、50)に端部から押し込まれながら引き出されるものである。
【0040】
この信号線引出し口50から信号線Cを引き出した状態を図16に示す。図16は、円形の信号線Cを引き出した状態を示す要部拡大図及び要部拡大断面図である。
【0041】
図16に示すように、円形の信号線Cを引き出した際に、両舌片51は原形状に比して僅かにたわんで、信号線Cの外面の一部は信号線引出し口50の内面と当接し、残りの部分は舌片51が当接して信号線Cと信号線引出し口50との隙間を信号線Cの周方向の全周にわたって塞いでいる。また、図示した信号線Cより大きな外形の信号線Cを引き出した際には両舌片51は原形状に比して大きくたわむこととなる。
【0042】
上記第2実施形態の給水湯管引出し口形成具によれば、信号線Cが引き出された信号線引出し口50には、その内面と信号線Cとの間の隙間を覆う舌片51が設けられ、該舌片51が、又は、該舌片51と信号線引出し口50内面とが協働して、前記隙間を少なくしているため、空気の流通を減少させることができるとともに、前記舌片51がその外形に追従するようにたわむ可とう性を有しているため、外形の異なる信号線Cにも柔軟に対応できる。
【0043】
なお、上記第2実施形態のサヤ管取着部11の部分のみを、組付け可能な分割体により構成して、それらを組付けて筒状のサヤ管取着部としても良い。この場合、サヤ管にあてがってから両分割体を組付けることでサヤ管に外嵌させられる。
【0044】
また、管引出し口13及び信号線引出し口50の筒状を組付け可能な分割体により構成して、組付けることにより筒状となる管引出し口13及び信号線引出し口50を構成しても良い。この場合、給水湯管及び信号線の引き出す際の各引出し口内面との摩擦が減り、引き出し作業が楽に行える。
【0045】
続いて、本発明における信号線引出し口50のその他の実施形態について図17に示す。なお、図17は信号線C引きだし口の要部のみを拡大して示している。図17(a)は、舌片51の切り込み51aが多数形成されて舌片50が、複数(図においては8つ)形成された例である。また、図17(b)は切り込み51aを放射状に形成して各舌片51を略扇形状又は略三角形状に形成したものである。
【0046】
なお、各実施形態の信号線引出し口50に設けられた舌片51は、径や外形が異なる複数種類の信号線Cに対応してたわみ変形するものであるが、最小の信号線Cの場合には、たわみ変形することなく信号線Cの外面と信号線引出し口50内面との隙間を塞ぐものであっても良い。また、複数本の信号線Cを一度に引き出す際にも1本の信号線Cと比べて径や外形は異なるが、その場合であっても、舌片51によって前記隙間を少なくすることができる。
【0047】
上記各実施形態によれば、信号線引出し口50の一部又は全部を塞ぐ舌片51が一体成形により設けられているため、合成樹脂の単一材料による射出成形によって成形できるため、生産性が良く、また、別に信号線引出し口50と信号線Cとの隙間を塞ぐ部材を用意する必要も無く、引き出し作業時に舌片51が信号線引出し口50からとれてしまうことも無い。さらには、舌片51が他の部分と比べて薄肉となる薄板状に形成したことによって、信号線Cに追従してたわむ可とう性が付与されている。これにより、サヤ管R連結部や、管引出し口13等の他の部分の強度を確保したまま、異なる径や外形の信号線Cに対応してたわみ変形しながら、信号線引出し口50と信号線Cとの間に生じる隙間を少なくすることができる。
【0048】
上記各実施形態は以下のように変更しても良い。
・前記第1実施形態及び第2実施形態において、給水湯管引出し口形成具は円柱状の筒体で説明したが、トラック形状や小判状の略楕円状の筒体であっても、四角柱状の筒体であっても良い。また、取着するサヤ管は断面円形状に限らず断面略楕円形状であっても良くその形状は問わない。
【0049】
・前記サヤ管内に配管される給水湯管は1本であってもまた3本以上であっても良い。そのとき、引出し口形成具はその数に対応する管引出し口を備えた給水湯管引出し口形成具を用いることとなる。また、サヤ管内において複数本の給水湯管が結束体によって1本の結束状態で配管されていても良い。
・前記サヤ管は自身が保温性能を備えた、可とう性と保温性のある保温筒からなるサヤ管に変更しても良い。
【0050】
・前記給水湯管は個別に長手方向に連続して保温材を巻回しておいても良い。そして、管引出し口から引き出される給水湯管は保温材を巻回した状態で引き出すことができる。そのとき、管引出し口の前記圧接リブは、保温材を圧縮するようにして給水湯管に向けて押圧する。
・1つの信号線引出し口に形成される舌片は複数ではなく、1つであっても良い。
【0051】
・第1実施形態において、給水湯管引出し口形成具は2つの分割体により構成されているが、3つ又は4つ等の複数の分割体により構成されていても良い。また、互いの分割体がヒンジにより開閉動自在に連結されているが、ヒンジを省略して組み付け可能にそれぞれが分離していても良い。
・第1実施形態において、保護管連結部は省略しても良い。
【0052】
・第1実施形態において、信号線を引き出す信号線引出し口を閉塞する蓋体は、基端部から折り取って除去しても良く、また、予め省略しても良い。
・第1実施形態において、蓋体は、閉じ部に一体に設けられ無くとも、閉じ部とは別に設けても良い。
【0053】
・第1実施形態において、舌片(複数の舌片間)に信号線を仮保持させているが、仮保持させることなく、閉じながら信号線引出し口に信号線を導いても良い。さらには、仮保持機能は無くても良い。
【0054】
・第1実施形態において、信号線引出し口は、分割体の接合部に設けられているが、他の部分に(例えば、閉塞壁に接合部と連通するように)設けてもよく、さらには、接合部と連通しない貫通孔を形成して該貫通孔を信号線引出し口としても良い。また、引出し口形成具の軸方向に沿って2つ設けられているが、1つであっても良い。
【0055】
・第2実施形態において、給水湯管引出し口及び信号線引出し口は筒状に形成されて閉塞壁から立設しているが、筒状とせず閉塞壁を貫通する貫通孔により各引出し口を構成しても良い。また、前記各引出し口の数は、それぞれ複数であっても良い。
・第2実施形態において、信号線引出し口に設けられた舌片は、閉塞壁側でなくとも、筒状の先端側に設けても良い。
【0056】
・給水湯管引出し口及び信号線引出し口は閉塞壁にそれぞれ設けられているが、信号線引出し口を閉塞壁と異なる位置に設けても良い。例えば、図18に示すようにサヤ管取着部11において取着したサヤ管Rの側方となる位置に信号線引出し口50を設けて、サヤ管Rから引き出された信号線Cを引出し口形成具内部を折り返すように配線して、前記信号線引出し口50から引き出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)及び(b)は第1実施形態の給水湯管引出し口形成具を組付けた状態の斜視図。
【図2】(a)は第1実施形態の給水湯管引出し口形成具を閉じた状態の斜視図であり、(b)は、(a)に示した範囲Qの拡大図。
【図3】(a)及び(b)は第1実施形態の給水湯管引出し口形成具を開いた状態の斜視図。
【図4】サヤ管Rから引き出した給水湯管P及び信号線Cを熱源機Bに接続した状態の前面図。
【図5】給水湯管引出し口形成具をサヤ管に取着するとともに、保護管を連結する状態を示す前面図。
【図6】信号線を引き出した状態を示す断面図。
【図7】信号線を引き出した状態を示す斜視図。
【図8】図7の信号線引き出した状態を示す要部拡大斜視図。
【図9】信号線を引き出した状態で給水湯管引出し口形成具を組付けた状態を示す斜視図。
【図10】給水湯管引出し口形成具を設置した状態を示す前面図。
【図11】第1実施形態の別例を示す斜視図。
【図12】図11に示す矢印方向から見た正面図。
【図13】信号線引出し口から信号線を引き出した状態を示す部分拡大図であり、(a)はその正面図、(b)はその斜視図。
【図14】第2実施形態の給水湯管引出し口形成具であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は縦断面図。
【図15】第2実施形態の給水湯管引出し口形成具を部分的に切り欠いた斜視図。
【図16】第2実施形態の給水湯管引出し口形成具の信号線引出し口から信号線を引き出した状態を示す部分拡大図であり、(a)はその平面図、(b)はその斜視図。
【図17】信号線引出し口の別例を示す要部拡大図。
【図18】さらに、その他の例を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0058】
R サヤ管
S 保護管
P 給水湯管
C 信号線
10 給水湯管引出し口形成具
11 サヤ管取着部
13 管引出し口
20 一方の分割体
21 閉じ部
22 蓋体
30 他方の分割体
41 ヒンジ
42 接合部
50 信号線引出し口
51 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可とう性を有するサヤ管の端部に取着されて、前記サヤ管内に配管された可とう性を有する給水湯管を引き出す引出し口を構成する給水湯管引出し口形成具であって、
前記引出し口形成具は、全体が筒状に形成されて、一端に前記サヤ管に外嵌するサヤ管取着部が、他端に前記給水湯管が引き出される管引出し口が設けられるとともに、前記サヤ管内に給水湯管とともに配線された信号線が引き出される信号線引出し口が形成され、
前記信号線引出し口は、信号線引出し口の一部又は全部を塞ぐ舌片が一体成形により設けられ、
前記舌片は、たわみ変形可能な可とう性を有していることを特徴とする給水湯管引出し口形成具。
【請求項2】
前記舌片は複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給水湯管引出し口形成具。
【請求項3】
前記引出し口形成具は、全体が分割体で構成され、信号線引出し口が分割体の接合部に連通して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の給水湯管引出し口形成具。
【請求項4】
隣り合う舌片間、又は、舌片と信号線引出し口内面との間は、信号線を保持可能な幅に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の給水湯管引出し口形成具。
【請求項5】
前記引出し口形成具は、前記信号線引出し口の略全体を塞ぐ開閉動自在な蓋体を備えていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の給水湯管引出し口形成具。
【請求項6】
前記引出し口形成具は全体が分割体で構成され、前記引出し口形成具の分割体を組付ける閉じ部に前記引き出し口を塞ぐ蓋体が一体に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の給水湯管引出し口形成具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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