説明

給湯式パネルヒータ、防曇鏡ユニットおよびそれらの製造方法

【課題】 薄型かつ軽量であって、大幅な付帯工事を伴うことなく既設の鏡本体に簡単に添設することができる防曇用の給湯式パネルヒータを提供する。
【解決手段】 給湯パイプ25を表面金属シート22と裏面金属シート23との間に挟み込んで一体化する。この際、給湯パイプ25は、裏面金属シート23の冗長凹溝パターン23Pの内部に収納した状態とし、裏面金属シート23と給湯パイプ25間の接触面積を増大させるとともに、表面金属シート22の平面性を損ねることなく表面金属シート22と裏面金属シート23の密着性を確保する。給湯式パネルヒータ20は、鏡本体の裏面に裏面金属シート22の側を向けて取り付け、給湯パイプの熱を表面金属シート22経由および裏面金属シート23経由の2経路から鏡本体に伝導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銭湯や一般家庭の風呂場、ユニットバス、シャワーユニット等の湯気雰囲気内に設置される鏡の防曇用途に使用する給湯式パネルヒータ、給湯式パネルヒータを備える防曇鏡ユニット、およびこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風呂場等の湯気雰囲気内において、その場で使用されるお湯から立ち上った湯気が、熱容量が大きくて熱伝導性が大きい金属質やガラス質の物体表面に水滴として凝結する結露現象は、身近で馴染み深い現象としてよく知られている。この際、結露発生箇所が鏡である場合には、鏡としての機能を発揮することができない状態となり、例えば、ひげを剃ろうとするにしても非常に不都合である。したがって、既設の鏡に取り付けて簡単に防曇り効果が得られるような器具や装置、あるいは、そもそも結露が発生しないようにした防曇鏡に対する要望には、根強いものがある。
【0003】
湯気雰囲気内における鏡の結露現象の問題は、浴室等において大多数の人が日常的に体験する問題であるため、従来より電気的、化学的、機械的、冷熱装置的等の多岐の技術分野からの問題解決案が提案されている。これらのうち、本願の技術内容に関連する冷熱装置的な提案としては、次のようなものを例示することができる。
【特許文献1】実開平6−61166号公報
【特許文献2】実用新案登録第3010366号公報
【特許文献3】実用新案登録第3035498号公報
【特許文献4】特開2003−102603号公報
【特許文献5】特開2007−44076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上に例示した従来の曇り防止装置は、一般に広く普及しているとはいえない現実がある。そこで、その原因を検討するに、コストの問題は指摘しないとしても、次のような問題が考えられる。
【0005】
鏡の表面にお湯または水を流す方式の装置においては(特許文献5参照)、間欠的に作動させるとしても、鏡の表面に水が流れている間は、鏡の像に揺らぎが発生し、見づらくなることが避けられない。また、この方式は、鏡表面に人手で水を掛ける場合と同様に、短時間後には、再び鏡に曇りが発生してしまう問題がある。
【0006】
鏡の裏面側にお湯を貯留する箱体を設け、鏡を箱体を介して壁面に取り付ける方式の装置においては(特許文献2,4参照)、壁面に箱が取り付けられているような外観となり、特に、箱体側面が目に付き易い状態となることから、箱体側面部分が周囲材質同等の材質でない場合には、視覚的な違和感や貧相感が避けられない。また、鏡のサイズによっては、お湯を貯留した箱体と鏡との合計重量が相当な重量に達することとなり、壁面を貫通させる堅固な金具で壁面に固定する必要が生じるため、壁面に鏡を取り付けるという目的との関係における付帯工事の割合が大きくなってしまう問題がある。
【0007】
鏡の裏面に、お湯を供給する金属管と放熱用の金属板との組合せによる一種のラジエータを構成する方式の装置は(特許文献1,3参照)、上手に設計するならば、鏡の裏面と壁面との間に介装しても違和感のないスマートな厚みに抑えることができるとともに、軽量に仕上げることが可能であって、従来どおりの簡単なクランプ金具で鏡本体を取り付けることができる優れた方式であるということができる。ただし、この方式のものにおいては、金属管の断面形状との関係において、金属管から鏡までの熱伝導経路の確保が技術上のポイントとなる。したがって、熱伝導経路が十分囲確保されない構造が安易に採用される場合には、鏡の温度上昇の立ち上がりが遅く、例えば、入浴終了間際になってようやく防曇効果が現れるという事態にもなりかねない難しい方式でもある。
【0008】
本願は、基本的に上記ラジエータ方式に属するものであるので、熱伝導経路の十分な確保という問題に観察点を絞って従来の提案を検討するに、特許文献1における構成は、鏡本体の裏面に金属板を添設し、この金属板に蛇行態様に形成した金属製の給湯パイプを断熱材で押し付けて密着させることによって、給湯パイプの熱を金属板を経由して鏡本体に伝える構成である。この構成においては、給湯パイプからの熱は、最短距離で鏡本体に至ることができるが、断面円形の給湯パイプと金属板との接触状態は線接触であり、十分な熱伝導経路が確保されているとは言えない。また、断熱材を必要とすることから、厚みを抑えることには限界がある。
【0009】
一方、特許文献3における構成は、金属板に給湯パイプを収納する溝状の窪みを形成し、給湯パイプを金属板の窪み内に収納して断熱材で金属板とともに鏡本体に押し付ける構成である。この構成においては、給湯パイプと金属板との接触面積は大きくなる反面で、接触箇所が給湯パイプの背面側となるため、熱の伝導経路が長くなるという難点がある。また、上記と同様に、断熱材を必要とすることから、厚みを一定限度以下にすることができない。
【0010】
本発明は、上記従来のラジエータ方式の構成における熱の伝導経路を見直し、熱効率を改善することによって防曇効果を低下させることなく断熱材を不要とし、このことによって既設の鏡と壁面との間に挟み込むようにして簡単に取り付けることができる極めて薄型を実現した給湯式パネルヒータと、この給湯式パネルヒータを予め鏡本体に取り付けた防曇鏡ユニット、およびこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の請求項1に記載の給湯式パネルヒータは、平面状の表面金属シートと、所定の冗長パターンに曲げ加工した金属製の給湯パイプと、給湯パイプの冗長パターンに対応する冗長凹溝パターンを形成した裏面金属シートとを備え、表面金属シートと裏面金属シートとを冗長凹溝パターン内に給湯パイプを収納して貼着してなり、給湯パイプに給湯したお湯の熱を表面金属シートを介して鏡本体に熱伝導させるとともに、裏面金属シートから表面金属シートを経由して鏡本体に熱伝導させることを特徴とする。
【0012】
上記給湯式パネルヒータにおける給湯パイプは、表面金属シートと裏面金属シートとの間に挟み込まれた状態となっている。表面金属シートは平面状であり、したがって表面金属シートと給湯パイプとの接触状態は、線接触であって熱伝導面積が小さいのであるが、鏡本体に対する熱伝導経路が短いという有利性によって有効な熱伝導が可能である。一方、鏡本体に対して給湯パイプの背後に位置する裏面金属シートにおいては、鏡本体までの熱伝導経路が長くなる半面において、冗長凹溝パターンの断面形状を給湯パイプの断面形状に沿う形状とすることができるので、熱伝導に必要な接触面積大きく確保することができるという有利性によって、鏡本体に対して有効な熱伝導をすることが可能である。すなわち、上記給湯式パネルヒータでは、表面金属シート経由経路と裏面金属シート経由経路との2経路から鏡本体に伝導することができるので、断熱材を使用することなく防曇効果を発揮することができる。なお、上記構成における給湯パイプについての冗長パターンとは、一定面積内における給湯パイプの総延長を長くすることを目的とした給湯パイプの屈曲配置状態を示す。また、裏面金属シートについての冗長凹溝パターンとは、給湯パイプを収納する溝についての屈曲配置状態を示している。
【0013】
本発明の請求項2に記載の給湯式パネルヒータは、表面金属シートと裏面金属シートとの少なくとも裏面金属シートが、ガラスクロスラミネートアルミニウムシートであることを特徴とする。
【0014】
ガラスクロスラミネートアルミニウムシートは、ガラス繊維の薄い布にアルミニウムシートを積層したものであり、凹凸に対する広範囲の追従性と熱伝導性を発揮することができるので、裏面金属シートに給湯パイプを押し付ける方法、または給湯パイプに表面金属シートを押し付ける方法によって、アルミニウムシートを破断させることなく冗長凹溝パターンを簡単に形成することができるほか、表面金属シートに関しては、鏡本体に対する密着性を高めることができる。
【0015】
本発明の請求項3に記載の給湯式パネルヒータは、表面金属シートと裏面金属シートとの少なくとも裏面金属シートが、エンボス加工または縮み加工されたアルミニウムシートであることを特徴とする。
【0016】
エンボス加工または縮み加工されたアルミニウムシートは、平面状であっても微視的には、微細な屈曲状態が反復した断面形状に形成されている。したがって、高度の延性を発揮することが可能であり、破断することなく給湯パイプに沿って変形し、密着することができる。
【0017】
本発明の請求項4に記載の防曇鏡ユニットは、鏡本体の裏面に請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の給湯式パネルヒータを熱伝導可能に添設したことを特徴とする。
【0018】
上記防曇鏡ユニットは、添設された給湯式パネルヒータが、その構成において給湯パイプの直径を僅かに上回る程度の薄型であって軽量であるため、通常の鏡と同様の手軽な取付け手段によって浴室等の壁面に新規設置することができる。
【0019】
ここで、裏面金属シートには、給湯パイプを収納するための断面半円形の冗長凹溝パターンが形成され、これにより給湯パイプを固定するが、この断面半円形の冗長凹溝パターンは、壁側(鏡本体とは反対側)とは接触しないようにするか、又は、壁側に接触するとしても、断面半円形の頂点部のみが接触するようになることから、壁側に熱が伝わらないか、又は、伝わる熱の量を少なくすることができる。
【0020】
本発明の請求項5に記載の給湯式パネルヒータの製造方法は、下敷き平板に一定幅と一定深さを保って連続する溝状の冗長凹溝パターンを形成し、下敷き平板の冗長凹溝パターン内に給湯パイプを曲げながら押し込んで給湯パイプを倣い曲げ加工し、倣い曲げ加工した給湯パイプを冗長凹溝パターンから取り出した後、下敷き平板上に裏面金属シートを重ね置き、裏面金属シート上に倣い曲げ加工した給湯パイプを載せ置き、給湯パイプ上に表面金属シートを載せ置き、表面金属シート上に上押し平板を重ね置いて上押し平板を加圧することによって、表面金属シートと裏面金属シートとを給湯パイプを挟み込んだ状態で貼着することを特徴とする。
【0021】
上記給湯式パネルヒータの製造方法における給湯パイプは、下敷き平板の冗長凹溝パターン内に押し込む方法によって倣い曲げ加工されるので、給湯パイプの曲げ箇所ごとに給湯パイプを潰すことなく曲げ可能な曲率等を配慮する手数を要することなく能率よく作業完了することができるとともに、同一のものを量産することができる。下敷き平板の冗長凹溝パターンによって成形された給湯パイプには、その冗長凹溝パターンに対応する冗長パターンが転写されており、したがって、下敷き平板上に裏面金属シートを載せ置いてその上に給湯パイプを置き、その上に表面金属シートを重ね、この上に上押し平板を載せて加圧すると、裏面金属シートは、給湯パイプによって給湯パイプが成形された際の冗長凹溝パターン内に押し込まれる。つまり、裏面金属シートに冗長凹溝パターンが形成される。同時に、裏面金属シートの冗長凹溝パターンに対する給湯パイプの装填および表面金属シートとの張り合わせ作業が同時に完了する。
【0022】
本発明の請求項6に記載の給湯式パネルヒータの製造方法は、請求項5に記載の製造方法において、同一の下敷き平板に複数種類の冗長凹溝パターンを形成し、加温対象である鏡本体の態様に応じていずれかの種類の冗長凹溝パターンを選択使用することを特徴とする。
【0023】
上記給湯式パネルヒータの製造方法においては、加温対象である鏡本体の態様、つまり、サイズや外形に応じて複数の下敷き平板を準備する必要がなく、鏡本体の態様に適合する給湯式パネルヒータを製造することができる。
【0024】
本発明の請求項7に記載の防曇鏡ユニットの製造方法は、下敷き平板に一定幅と一定深さを保って連続する溝状の冗長凹溝パターンを形成し、下敷き平板の冗長凹溝パターン内に給湯パイプを曲げながら押し込んで給湯パイプを倣い曲げ加工し、倣い曲げ加工した給湯パイプを冗長凹溝パターンから取り出した後、下敷き平板上に裏面金属シートを重ね置き、裏面金属シート上に倣い曲げ加工した給湯パイプを載せ置き、給湯パイプ上に表面金属シートを載せ置き、さらに表面金属シート上に鏡本体を重ね置き、鏡本体上に上押し平板を重ね置いて上押し平板を加圧することによって、鏡本体と表面金属シートと裏面金属シートとを給湯パイプを挟み込んだ状態で貼着することを特徴とする。
【0025】
上記防曇鏡ユニットの製造方法は、請求項5に記載の給湯式パネルヒータの製造工程に鏡本体を重ねる工程を追加した方法に相当する。この方法においては、完成した給湯式パネルヒータを別作業によって鏡本体に取り付ける作業を有することなく、給湯式パネルヒータを備える防曇鏡ユニットを一気に製造することができる。
【0026】
本発明の請求項8に記載の防曇鏡ユニットの製造方法は、請求項7に記載の製造方法において、同一の下敷き平板に複数種類の冗長凹溝パターン形成し、加温対象である鏡本体の態様に応じていずれかの種類の冗長凹溝パターンを選択使用することを特徴とする。
【0027】
上記防曇鏡ユニットの製造方法においては、同一の下敷き平板を使用しながらも、使用する冗長凹溝パターンを選択することにより、異なるサイズや異なる形状の鏡本体にたいして、最適な給湯式パネルヒータ組み合わせた状態で防曇鏡ユニットを製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の給湯式パネルヒータは、給湯パイプを表面金属シートと裏面金属シートとの間に挟み込む構成を採用することにより、給湯パイプから発生するお湯の熱を表面金属シートを介して鏡本体に熱伝導するとともに、裏面金属シートからも表面金属シートを経由して鏡本体に熱伝導する2経路の熱伝導経路を形成することができるので、断熱材を用いない薄型とした場合においても、加温対象である鏡本体に効率よく熱を伝え、短時間内に防曇効果を発揮することができるとともに、薄型とすることにより、大掛かりな付帯工事を要することなく既設の鏡本体と壁面とも間に介装して使用することができる。
【0029】
本発明の給湯式パネルヒータの製造方法は、冗長凹溝パターンを形成した下敷き平板を使用することによって、給湯パイプを冗長凹溝パターン内に押し込むようにして倣い曲げ加工することができるので、効率よく所定の冗長パターンを有する給湯パイプを量産することができるとともに、下敷き平板上に裏面金属シートと給湯パイプと表面金属シートと順次に重ね置き、この上に上押し平板を載せて加圧することにより、表面金属シートと裏面金属シートとの間に給湯パイプを挟みこんだ形態の給湯式パネルヒータを効率よく製造することができる。
【0030】
本発明の防曇鏡ユニットは、裏面に本発明の軽量で薄型の給湯式パネルヒータを備えることにより、ヒータを備えることによる全体の厚み増加および重量増加を最小限に抑えることができるので、既設の鏡を交換すると同等の簡単な作業内容で交換設置することができるほか、通常の鏡を取り付けるのと同等の作業内容で新設設置することができる。そして、裏面金属シートの冗長凹溝パターンが壁側(鏡本体とは反対側)とは接触しないようにするか、又は、壁側に接触するとしても、断面半円形として形成される頂点部のみが接触するようにして取り付けることで、壁側に熱が伝わらないか、又は、伝わる熱の量を少なくすることができる。つまり断熱効果は維持される。
【0031】
本発明の防曇鏡ユニットの製造方法は、本発明の給湯式パネルヒータを製造する際に、表面金属シートに次いで、鏡本体を追加するのみで、給湯式パネルヒータのみを製造する場合と殆ど変わらない手数で効率よく給湯式パネルヒータ付きの防曇鏡ユニットを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を引用しながら本発明の給湯式パネルヒータ、防曇鏡ユニットおよびそれらの製造方法の実施の形態を説明する。
【0033】
給湯式パネルヒータ20は、表面金属シート22と、裏面金属シート23と、給湯パイプ25と、配管用付属部品とからなる(図1)。給湯式パネルヒータ20が取り付けられる鏡本体10は、曇りが問題となる浴室や浴室に隣接するような洗面室等の鏡を想定するが、浴室や洗面室等以外の鏡にも適用可能である。
【0034】
表面金属シート22は、アルミニウム製のシートであり、鏡本体10に密着することができる平面状の状態で使用される。曲げる必要がないので、厚みには特別の制約がない。しかし、鏡本体10に貼着する予定であることから、片面に感圧性の接着剤が付与されているものを使用することが便宜であり、このような条件で市販されているものを考えると、0.3ミリないし0.5ミリが適当である。銅板シートを用いることもできるが、完成時に重くなり、高価でもある。なお、表面金属シート22は、加温対象となる鏡本体10の外形に沿って、一回り程度小サイズに裁断する(図2)。
【0035】
裏面金属シート23は、給湯パイプ25を収納するための断面半円形の冗長凹溝パターン23Pを形成する必要がある。したがって、材料として要求される性質は、熱伝導性が良好なことに加え、柔軟であって展性、延性に優れることが求められる。このような観点から、本実施の形態においては、ガラスクロスラミネートアルミニウムシートが用いられている。この素材は、アルミニウムシートに感圧接着剤を含浸させたガラス繊維の薄い布を積層したものであって、上記要求特性を満たすことができる。この素材は、通常、配管用資材として市販されているが、広幅のテープ状のものしか入手できない場合には、幅方向に張り合わせて使用することができる。ガラスクロスラミネートアルミニウムシートは、凹凸に対する追随性が極めて良好であって、給湯パイプ25に押し付ける簡略な作業によって冗長凹溝パターン23Pを形成することができる。ここで採用されている冗長凹溝パターン23Pは、上下のアール反転部R…で複数回折り返し、2箇所の末端部を一方の側方に揃えたパターンである。
【0036】
なお、ガラスクロスラミネートアルミニウムシートに代えて、エンボス加工または縮み加工したアルミニウムシートを使用することもできる。これらの加工によって素材自体が有する展性、延性に加えて、断面構造に基づく展性および延性、柔軟性を発揮することができるので、無理なく容易に冗長凹溝パターン23Pを形成することができるからである。
【0037】
給湯パイプ25には、外径4ミリの銅管が用いられている。給湯パイプ25の外径を4ミリと設定したのは、浴室等に設置されている鏡の裏面と壁面との間には、毛細管現象によって結露が貯留することを防止するために、5ミリ程度の空隙が設定されていることに着目したものである。つまり、給湯パイプ25の外径を4ミリに設定することにより、給湯式パネルヒータ20の仕上がり厚みを5ミリ程度に抑え、既設の鏡本体10の裏面に介装可能とすることができる。本実施の形態の給湯パイプ25は、断面が円形であり、これにより裏面金属シート23には、給湯パイプを収納するための断面半円形の冗長凹溝パターン23Pが形成され、これにより給湯パイプ25を固定するとともに、この断面半円形の冗長凹溝パターン23Pが壁側(鏡本体とは反対側)と接触するとしても、断面半円形の頂点部のみが接触するようになる。このため、給湯パイプ25は断面が円形であることが好ましいが、断面が矩形状であっても適用可能である。なお、給湯パイプ25としては、アルミニウム管を採用することもできるが、配管資材としては、銅管の方がスタンダードであって、ロウ等の応用資材も豊富に提供されている。また、給湯パイプ25は、管用ベンダーを用いることによって所定の冗長パターンに曲げ加工することができる。
【0038】
給湯パイプ25の2末端には、それぞれエルボとホースニップルを組み合わせた末端金具25A,25Aが取り付けられている。
【0039】
表面金属シート22と裏面金属シート23とは、裏面金属シート23の冗長凹溝パターン23P内に給湯パイプ25を収納した状態で貼着され、周縁部は、縁補強24によって補強されている。この状態で給湯式パネルヒータ20の完成である。なお、貼着のための接着剤を別途に用いる場合には、耐水性および耐久性に優れたシリコーン系の接着剤を用いることが好ましい。
【0040】
上記給湯式パネルヒータ20を鏡本体10に貼着したものが、本願の防曇鏡ユニットの実施の形態である(図2)。
【0041】
上記給湯式パネルヒータ20は、既設の鏡本体10に簡単に取り付けることができる(図3)。鏡本体10は、簡単なクランプ金具2…で4箇所固定されている。したがって、先ず、このクランプ金具2…を取り外し、鏡本体10の裏面に給湯式パネルヒータ20を貼着し、元のクランプ金具2…を用いて鏡本体10を付け直す。上述したように、浴室等に設置されている鏡の裏面と壁面との間には5ミリ程度の空隙が設定されていることが、この空隙は上記クランプ金具2により保たれている。このため、給湯式パネルヒータ20は、鏡本体10の裏面空隙に納まる厚みに設定され、つまり既設の鏡本体10を外して、本実施の形態の給湯式パネルヒータ20を取付け、元に戻してクランプ金具2で固定すれば、鏡本体10の裏面空隙において裏面空隙の間隔を変えないで(飛び出すようなことなく)に納められる。しかも、軽量であるために格別の固定手段を用いる必要もない。
【0042】
次に、浴室内のいずれかの給湯管、図3では、シャワー兼洗い場用の混合水栓3の給湯管3AにT型継ぎ手と口径変換継ぎ手5とホースニップル付きの止水栓6を接続し、給湯管3Aを分岐する。そして、止水栓6と給湯式パネルヒータ20の給湯パイプ25のいずれかの末端金具25Aとをホース7で接続する。また、他方の末端金具25Aにも別のホース7を接続し、これは浴槽8内に開放しておく。
【0043】
一旦混合水栓を使用すれば、給湯管3Aにお湯が到達する。この後は、適宜の時期に止水栓6を開放することにより、給湯管3Aのお湯の一部を給湯式パネルヒータ20内の給湯パイプ25を通過させて浴槽8内に排出する経路で分岐疎通させることができる。
【0044】
本発明の給湯式パネルヒータ20および防曇鏡ユニットは、冗長凹溝パターン31Pを形成した冶具である下敷き平板31を利用することによって能率よく製造することができる(図4,図5)。
【0045】
下敷き平板31は、木製であり、木工用のルータ加工による一定幅、一定深さの冗長凹溝パターン31Pが形成してある(図4)。ただし、冗長凹溝パターン31Pは、単一のパターンでなく、複数種類のパターンを同一経路部分を共用するようにして重ねて形成されている。したがって、多数のアール反転部R…のほか、左右いずれにも給湯パイプ25の末端を振り出すことができるように複数の末端案内部R2…を含んでいる。
【0046】
給湯パイプ25は、鏡本体10の形態に応じて下敷き平板31の複数の冗長凹溝パターン31Pの内のいずれかのパターンの任意の範囲を選択して曲げ加工することができる。すなわち、選択した範囲の冗長凹溝パターン31P内に給湯パイプ25を曲げながら押し込むことによって、給湯パイプ25に冗長凹溝パターン31Pの冗長パターンを倣い取ることができる。次いで、曲げ加工した給湯パイプ25を粘着テープT,Tによって仮固定して取り出す。
【0047】
次に、下敷き平板31上に裏面金属シート23を重ね置き、この裏面金属シート23上に曲げ加工した給湯パイプ25を載せ置き、さらに給湯パイプ上25に表面金属シート22を被せる。次いで、表面金属シート22上に鏡本体10を重ね置き、鏡本体10上から上押し平板32を用いて全体を均等に加圧することによって、防曇鏡ユニットを完成することができる(図5)。上押し平板31には、圧力を分散するためのゴム板32Gが張り合わされている。なお、この場合において、鏡本体10の配置を省略すれば、給湯式パネルヒータ20のみが製造されることとなる。
【0048】
給湯式パネルヒータ20を製造する場合においても、防曇鏡ユニットを製造する場合においても、表面金属シート22が正しく平面を保ち、裏面金属シート23が給湯パイプ25に広い面積で接触している熱効率に優れた製品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の給湯式パネルヒータの実施の形態を示す正面図である。
【図2】図1のX−X線矢視拡大断面図である。
【図3】上記実施の形態における給湯式パネルヒータの使用例を示す斜視図である。
【図4】本発明の防曇鏡ユニットの製造方法の実施の形態を示す斜視図である。
【図5】上記実施の形態における防曇鏡ユニット製造方法の主要工程を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 鏡本体、
20 給湯式パネルヒータ、
23P 冗長凹溝パターン、
22 表面金属シート、
23 裏面金属シート、
25 給湯パイプ、
31 下敷き平板、
31P 冗長凹溝パターン
32 上押し平板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の表面金属シートと、所定の冗長パターンに曲げ加工した金属製の給湯パイプと、該給湯パイプの冗長パターンに対応する冗長凹溝パターンを形成した裏面金属シートとを備え、前記表面金属シートと裏面金属シートとを前記冗長凹溝パターン内に前記給湯パイプを収納して貼着してなり、前記給湯パイプに給湯したお湯の熱を前記表面金属シートを介して鏡本体に熱伝導させるとともに、裏面金属シートから表面金属シートを経由して鏡本体に熱伝導させることを特徴とする給湯式パネルヒータ。
【請求項2】
前記表面金属シートと裏面金属シートとの少なくとも裏面金属シートが、ガラスクロスラミネートアルミニウムシートであることを特徴とする請求項1に記載の給湯式パネルヒータ。
【請求項3】
前記表面金属シートと裏面金属シートとの少なくとも裏面金属シートが、エンボス加工または縮み加工されたアルミニウムシートであることを特徴とする請求項1に記載の給湯式パネルヒータ。
【請求項4】
鏡本体の裏面に請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の給湯式パネルヒータを熱伝導可能に添設してなる防曇鏡ユニット。
【請求項5】
下敷き平板に一定幅と一定深さを保って連続する溝状の冗長凹溝パターンを形成し、該下敷き平板の冗長凹溝パターン内に給湯パイプを曲げながら押し込んで給湯パイプを倣い曲げ加工し、倣い曲げ加工した給湯パイプを冗長凹溝パターンから取り出した後、下敷き平板上に裏面金属シートを重ね置き、該裏面金属シート上に倣い曲げ加工した給湯パイプを載せ置き、該給湯パイプ上に表面金属シートを載せ置き、表面金属シート上に上押し平板を重ね置いて上押し平板を加圧することによって、表面金属シートと裏面金属シートとを給湯パイプを挟み込んだ状態で貼着することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の給湯式パネルヒータの製造方法。
【請求項6】
同一の下敷き平板に複数種類の冗長凹溝パターンを形成し、加温対象である鏡本体の態様に応じていずれかの種類の冗長凹溝パターンを選択使用することを特徴とする請求項5に記載の給湯式パネルヒータの製造方法。
【請求項7】
下敷き平板に一定幅と一定深さを保って連続する溝状の冗長凹溝パターンを形成し、該下敷き平板の冗長凹溝パターン内に給湯パイプを曲げながら押し込んで給湯パイプを倣い曲げ加工し、倣い曲げ加工した給湯パイプを冗長凹溝パターンから取り出した後、下敷き平板上に裏面金属シートを重ね置き、該裏面金属シート上に倣い曲げ加工した給湯パイプを載せ置き、該給湯パイプ上に表面金属シートを載せ置き、さらに表面金属シート上に鏡本体を重ね置き、鏡本体上に上押し平板を重ね置いて上押し平板を加圧することによって、鏡本体と表面金属シートと裏面金属シートとを給湯パイプを挟み込んだ状態で貼着することを特徴とする防曇鏡ユニットの製造方法。
【請求項8】
同一の下敷き平板に複数種類の冗長凹溝パターン形成し、加温対象である鏡本体の態様に応じていずれかの種類の冗長凹溝パターンを選択使用することを特徴とする請求項7に記載の防曇鏡ユニットの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−247813(P2009−247813A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102995(P2008−102995)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(508112519)
【Fターム(参考)】