説明

給湯機制御装置

【課題】電力負荷の平準化を促進しつつ各給湯機の運転を効率化する。
【解決手段】各貯湯式給湯機150における1日の使用熱量を各貯湯式給湯機150から受信する。そして複数の貯湯式給湯機それぞれにおける1日の使用熱量に基づいて、予め設定された期間内に沸上げられる熱量を前記貯湯式給湯機毎に決定する。そして、同一時間帯に運転される貯湯式給湯機150の台数が、複数の貯湯式給湯機150の台数未満となるように、沸上げ運転の開始時間と終了時間を設定し、沸上げ運転を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の貯湯式給湯機を制御する給湯機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯湯式給湯機は、消費電力の低い給湯機として広く用いられている。貯湯式給湯機は、事前に湯を沸かして貯めておき使用するタイプの給湯機である。
【0003】
一般的に、電力会社における電力負荷の平準化を促進するための要求(電力負荷平準化要求)に応えるよう、貯湯式給湯機は、電力単価の安くなる夜間帯に湯を沸かすように運転が制御される。そして、この電力負荷平準化要求に応えるように貯湯式給湯機の運転を制御するための様々な提案がされている。
例えば、特許文献1には、電力負荷平準化要求に応えるため、利用者が負担する電力料金が最適化されるように給湯機の貯湯運転を制御する給湯機制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−139213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の給湯機制御装置では、個々の給湯機に対して電力負荷の平準化要求を適用するため、集合住宅等に設置されている複数の給湯機を制御する場合、個々の給湯機の使用熱量のばらつきにより、給湯機によっては運転効率が低下する場合も考えられる。このため、電力負荷の平準化を促進しつつ各給湯機の運転を効率化するという観点からみると未だ十分ではない。
【0006】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、複数の給湯機を制御する場合において、電力負荷の平準化を促進しつつ各給湯機の運転を効率化することができる給湯機制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る給湯機制御装置は、
複数の貯湯式給湯機と相互に通信可能に接続され、
前記複数の貯湯式給湯機それぞれにおける1日の使用熱量を前記複数の貯湯式給湯機から受信する受信部と、
前記複数の貯湯式給湯機それぞれにおける1日の使用熱量に基づいて、予め設定された期間内に沸上げられる熱量を前記貯湯式給湯機毎に決定する沸上げ熱量決定部と、
前記貯湯式給湯機毎に、前記沸上げ熱量決定部で決定した熱量に基づいて、沸上げ運転の運転時間を設定する運転時間設定部と、
前記沸上げ熱量決定部で決定された熱量と、前記運転時間設定部で設定された運転時間に基づいて、前記各貯湯式給湯機の沸上げ運転を制御する沸上げ運転制御部と、
を備える給湯機制御装置であって、
前記運転時間設定部は、同一時間帯に運転される前記貯湯式給湯機の台数が、前記複数の貯湯式給湯機の台数未満となるように、前記貯湯式給湯機の沸上げ運転の開始時間と終了時間を設定する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の給湯機を制御する場合において、電力負荷の平準化を促進しつつ各給湯機の運転を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る給湯機制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の給湯機制御システムにおける貯湯式給湯機の一例を示す構成図である。
【図3】図1の給湯機制御システムにおける貯湯熱量の算出例を説明するための図である。
【図4】図1の給湯機制御システムにおける深夜運転の沸上げ熱量の一例を示す図である。
【図5】沸上げ温度と貯湯式給湯機の運転効率の関係を説明するためのp−h線図である。
【図6】図1の給湯機制御システムにおける処理の一手順を示すフローチャートである。
【図7】図1の給湯機制御システムにおける沸上げ運転の効果を説明するための図である。
【図8】(a)は、図1の給湯機制御システムにおける各貯湯式給湯機が、同一時間帯に沸上げ運転される場合の例を示す図であり、(b)は、同一時間帯に沸上げ運転される貯湯式給湯機の台数が少なくなるように調整された場合の例を示す図である。
【図9】(a)は、図1の給湯機制御システムにおける各貯湯式給湯機の沸上げ完了時間が同じ時間である場合の例を示す図であり、(b)は、図1の給湯機制御システムにおける各貯湯式給湯機の沸上げ完了時間が異なる場合の例を示す図である。
【図10】供給水温と貯湯式給湯機の運転効率の関係を説明するためのp−h線図である。
【図11】貯湯式給湯機における各計測値の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施形態に係る給湯機制御システムについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
給湯機制御システム10は、図1に示すように、給湯機制御装置100と、複数の貯湯式給湯機150と、を備えている。
【0012】
給湯機制御装置100は、電力負荷の平準化を促進しつつ複数の貯湯式給湯機150の沸上げ運転を効率良く行うための深夜沸上げ量決定機能を備えた制御装置である。
給湯機制御装置100は、図示するように、記憶部102と、制御部104から構成され、後述する各貯湯式給湯機150と相互に通信可能に接続されている。
【0013】
記憶部102は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random−Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等から構成され、沸上げ制御プログラム103を備えている。また、記憶部102には、接続されている各貯湯式給湯機150の情報が格納されている。各貯湯式給湯機150の情報には、例えば、接続される貯湯式給湯機150の台数や、各貯湯式給湯機150の貯湯式タンク159の容量等が含まれる。
【0014】
沸上げ制御プログラム103は、深夜沸上げ量決定機能を実現するための一連の動作が記述されたプログラムである。
【0015】
制御部104は、CPU(Central Processing Unit)等から構成される。制御部104は、沸上げ制御プログラム103に従って動作し、深夜沸上げ量決定機能を提供する。制御部104は、沸上げ制御プログラム103により提供される主要な機能部として、送信部105と、データ収集部106と、沸上げ熱量算出部107を備えている。
【0016】
送信部105は、後述する沸上げ熱量算出部107で算出される、各貯湯式給湯機150で許容される最大の深夜沸上げ熱量を各貯湯式給湯機150の計測制御装置160へ送信する。
【0017】
データ収集部106は、各貯湯式給湯機150の計測制御装置160で計測される1日の使用熱量を受信して沸上げ熱量算出部107へ送信する。
【0018】
沸上げ熱量算出部107は、算出した給湯機制御システム10全体における使用熱量と、予め定められたシステム全体における深夜運転率から、システム全体における深夜沸上げ熱量を算出し、各貯湯式給湯機150が後述する下限温度で沸上げ運転される場合に許容される最大の深夜沸上げ熱量(以下、許容される最大の深夜沸上げ熱量)を算出する。ここで、運転率とは、貯湯式給湯機150における1日の使用熱量のうち、予め定められた期間内で沸上げられる熱量の割合を示す。例えば、深夜の運転率は、1日の使用熱量のうち、深夜時間帯で沸上げられる熱量の割合を表す。
【0019】
理解を容易にするためシステムを構成する貯湯式給湯機150のタンク容量が全て等しい場合を例に説明すると、各貯湯式給湯機150で許容される最大の深夜沸上げ熱量は、システム全体における深夜沸上げ熱量を、システムを構成する貯湯式給湯機150の台数で割ることにより算出される。なお、各貯湯式給湯機150のタンク容量が異なる場合、タンク容量毎に重み付けをして算出する。
【0020】
沸上げ熱量算出部107は、算出した各貯湯式給湯機150で許容される最大の深夜沸上げ熱量を、最大沸上げ熱量データとして送信部105へ送信する。
【0021】
貯湯式給湯機150は、給湯機制御装置100の指示に従って沸上げ運転を行い、沸き上げられた湯を複数の給湯端末に供給するもので、図2に示すように、ヒートポンプユニット151とタンクユニット152とを備えている。
【0022】
ヒートポンプユニット151は、例えばCOやHFC(ハイドロフルオロカーボン)などを冷媒に用いたヒートポンプである。
ヒートポンプユニット151内には、圧縮機153と、水冷媒熱交換器154と、膨張弁155と、空気熱交換器156と、圧力センサ157a、157bと、温度センサ158a、158bが搭載されている。そして、圧縮機153、水冷媒熱交換器154、膨張弁155および空気熱交換器156が環状に接続され、冷凍サイクル回路(冷媒回路)が構成されている。
【0023】
圧縮機153は、例えば駆動周波数を任意に変化させることにより容量(単位当たりの送り出し量)を変化させることができるインバータ回路を備える容量可変の圧縮機である。圧縮機153は、後述する計測制御装置160からの指示に応じて容量を可変する。
【0024】
水冷媒熱交換器154は、市水温度の水(以下、水若しくは低温水と略す)を目標の貯湯温度まで昇温加熱する加熱源である。
水冷媒熱交換器154は、プレート式あるいは二重管式などの熱交換器であり、流入する冷媒と水(低温水)との間で熱交換を行う。この水冷媒熱交換器154における熱交換により、冷媒は放熱し、水は吸熱する。
【0025】
膨張弁155は、開度が可変である膨張弁である。膨張弁155は、後述する計測制御装置160からの指示に応じて開度を調整する。
【0026】
空気熱交換器156は、室外空気の熱を採熱する熱源側送風ファンにより流れてきた外気と冷媒との間で熱交換を行う。この空気熱交換器156における熱交換により冷媒は吸熱し、外気は放熱する。
【0027】
圧力センサ157aは、圧縮機153の吐出側に配置され、圧力センサ157bは圧縮機153の吸入側に配置されている。圧力センサ157a、157bは、配置場所における冷媒圧力を計測し、その計測データを計測制御装置160に送信する。
【0028】
温度センサ158aは、圧縮機153の吐出側に配置され、温度センサ158bは、圧縮機153の吸入側に配置されている。温度センサ158a、158bは、配置場所における冷媒温度を計測し、その計測データを計測制御装置160に送信する。
【0029】
タンクユニット152は、貯湯タンク159と、計測制御装置160と、流量センサ161と、ポンプ162と、温度センサ163a〜163iと、三方弁164を備える。これらの構成部品は、金属製の外装ケース内に収められている。
ヒートポンプユニット1とタンクユニット2とは、湯水が流れる配管で接続され、ヒートポンプユニット151とタンクユニット152との間を、タンクユニット152内の貯湯タンク159下部を起点に、ポンプ162、水冷媒熱交換器154を経て貯湯タンク159上部に戻ることで湯水が循環する沸上げ回路が構成される。
【0030】
貯湯タンク159は、ステンレスなどの金属又は樹脂などで形成されている。貯湯タンク159の外側には断熱材(図示せず)が配置されている。これにより、貯湯タンク159内で、高温の湯(以下、高温水と略す)を長時間に渡って保温することができる。なお、図2では、貯湯タンク3を1つだけ示しているが、さらに多くの数の貯湯タンク159を設置するようにしてもよい。
【0031】
貯湯タンク159には出湯管165と給水管166とが接続されており、給水管166により貯湯タンク159下部から水を給水し、出湯管165により浴槽への湯張りなど各種の給湯用途に応じて貯湯タンク159より出湯がなされる。
このとき貯湯タンク159では、タンク上部から流出した高温水の体積分、水道圧により、タンク下部から市水が供給される。貯湯タンク159内では、上部に高温水、下部に低温水が滞留して温度成層が形成され、高温水と低温水との間には温度境界層が生成される。
【0032】
計測制御装置160は、給湯機制御装置100からの指示に応じて貯湯式給湯機150を統括制御する。計測制御装置160は、記憶部167と制御部168を備えている。制御部168が記憶部167に格納された制御プログラム169を実行することにより、貯湯式給湯機150における沸上げ運転機能や出湯運転機能等の各種機能が実現される。
【0033】
記憶部167は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM、DVD−RW等から構成され、制御プログラム169を備えている。また、記憶部167には、後述する使用熱量算出部171の機能により算出される日々の使用熱量が格納される。
【0034】
制御部168は、CPU等から構成される。制御部168は、制御プログラム169より提供される主要な機能部として、受信部170と、使用熱量算出部171と、通信部172と、沸上げ熱量決定部173と、運転時間設定部174と、沸上げ運転制御部175と、昼間運転部176と、出湯部177を備えている。
【0035】
受信部170は、流量センサ161および温度センサ163a〜163iから送信される各計測データを受信して使用熱量算出部171へ送信する。
【0036】
使用熱量算出部171は、受信部170から受信した各種計測データに基づいて、給湯機使用者の1日の使用熱量を算出し、算出した使用熱量を使用熱量データとして通信部172へ送信する。
【0037】
1日の使用熱量は、温度センサ163c〜163hに基づいて推算される貯湯タンク159内の貯湯熱量の変動により算出する。
具体的には、使用熱量算出部171は、使用者が給湯機の使用を開始する1日の最初、例えば深夜運転を終了する午前7時と、使用者の使用が完了する1日の最後、例えば深夜運転を開始する午後11時に、貯湯熱量の推算を行い、午前7時と午後11時の貯湯熱量の偏差を使用者の1日の使用熱量とする。
【0038】
貯湯熱量の推算は次のように行う。まず、図3に示すように、給湯タンク157の高さ方向に設けられている温度センサ163c〜163hの設置位置毎に給湯タンク157を高さ方向に分割する。そして受信部170から受信した各分割区間における上端および下端の温度センサ163の計測データに基づいて、使用熱量算出部171は、それぞれの計測データが示す温度の平均値を分割区間毎に算出する。そして、算出した平均値を各分割区間の平均温度とし、各温度センサ163の位置から算出される各分割区間の湯量および水の比熱をこの平均温度に掛け合わせ、各分割区間の貯湯熱量を推算する。推算した各分割区間の貯湯熱量を積算し、積算した熱量を給湯タンク157全体の貯湯熱量とする。
【0039】
なお、昼間運転が行われる場合には、昼間運転に伴い貯湯熱量が増加するため、機器特性から把握される昼間運転の単位時間当たりの沸上げ熱量と、昼間運転実施時間を掛け合わせて得られる熱量を、昼間運転によって沸上げられる熱量として貯湯熱量の偏差に加算し、これを使用者の1日の使用熱量とする。昼間運転は、使用熱量が増加した場合に、貯湯タンク159内の残湯量が無くなる湯切れ状態を回避するために行われる運転である。
【0040】
通信部172は、使用熱量算出部171から受信した1日の使用熱量を示す使用熱量データを、給湯機制御装置100のデータ収集部106へ送信する。
また、通信部172は、貯湯式給湯機150で許容される最大の深夜沸上げ熱量を示す最大沸上げ熱量データを給湯機制御装置100の送信部105から受信し、沸上げ熱量決定部173へ送信する。
【0041】
沸上げ熱量決定部173は、通信部172から受信した最大沸上げ熱量データが示す、貯湯式給湯機150で許容される最大の深夜沸上げ熱量に基づいて、深夜運転の沸上げ熱量を決定する。
受信した最大沸上げ熱量データが示す最大の深夜沸上げ熱量が1日の平均使用熱量以上の場合、沸上げ熱量決定部173は、1日の平均使用熱量を深夜運転の沸上げ熱量として決定する。
【0042】
一方、受信した最大沸上げ熱量データが示す最大の沸上げ熱量が1日の平均使用熱量未満の場合、沸上げ熱量決定部173は、許容される最大の深夜沸上げ熱量を、深夜運転の沸上げ熱量として決定する。
なお、1日の平均使用熱量は、適度な期間、例えば過去2週間から1ヶ月程度の使用熱量の平均値を示し、記憶部167に格納されている過去の使用熱量を読み込んで算出する。
【0043】
1日の使用熱量として平均的な値を用いることで、前日の使用熱量が過去の使用熱量と比較して極端に増減している場合等、使用熱量の変動が極端な場合であっても、適切に電力負荷平準化要求に応えることができる。
【0044】
具体的には、図4に示すように、使用熱量の少ない貯湯式給湯機150については、沸上げ熱量決定部173は、深夜運転により1日の平均使用熱量を沸上げするように、1日の平均使用熱量を深夜運転の沸上げ熱量として決定する。一方で、使用熱量の多い貯湯式給湯機150については、沸上げ熱量決定部173は、1日の平均使用熱量のうち、許容される最大の深夜沸上げ熱量についてのみ深夜運転で沸上げし、残りは昼間運転で沸上げするように、許容される最大の深夜沸上げ熱量を深夜運転の沸上げ熱量として決定する。
【0045】
本実施形態では、貯湯式給湯機150毎に電力負荷平準化要求を適用せず、各貯湯式給湯機150全体を一つの単位として電力負荷平準化要求を適用するため、例え使用熱量の多い貯湯式給湯機150があっても、許容される最大の深夜沸上げ熱量についてのみ深夜運転で沸上げし、残りは昼間運転で沸上げするように深夜運転の沸上げ熱量を設定することができる。
【0046】
図2に戻り、沸上げ熱量決定部173は、設定した深夜運転の沸上げ熱量に基づいて、深夜運転の沸上げ温度を決定する。具体的には、沸上げ熱量決定部173は、深夜運転開始時の貯湯タンク159の貯湯熱量に深夜運転の沸上げ熱量を足して、深夜沸上げ運転終了時の貯湯タンク159の必要保持熱量を算出する。この必要保持熱量を貯湯タンク159の容積および水の比熱で割って、その値を深夜運転の沸上げ温度として決定する。このように、一般的に貯湯式給湯機150における沸上げ温度は、深夜運転の沸上げ熱量によって変化し、沸上げ熱量が多いほど、決定される沸上げ温度は高温となる。本実施形態では、以下に説明するように、沸上げ温度と貯湯式給湯機150の運転効率の関係から、深夜運転の沸上げ温度は、沸上げ温度の下限値に設定される。
【0047】
沸上げ温度には上限と下限とが設定されており、沸上げ熱量決定部173は、この上限と下限の範囲内で沸上げ温度を決定する。上限値は、沸上げ温度が高すぎると沸上げ中に蒸気が発生し、貯湯タンク159の内圧が高くなりすぎる可能性があるため、その状況を避けるために設定される温度で、例えば90℃に設定される。一方、下限値は、貯湯タンク159内でのレジオネラ菌の繁殖を防止するために設定される温度で、例えば65℃に設定される。
【0048】
沸上げ温度と貯湯式給湯機150の運転効率の関係について説明する。貯湯式給湯機150における冷凍サイクルは、図5に示すように、沸上げ温度が高い場合には点線で示すサイクル、沸上げ温度が低い場合には実線で示すサイクルとなる。沸上げ温度が高いほど冷媒の温度を高くする必要があり、図示するように、冷媒の温度を高くすると、冷凍サイクルにおける高圧部分の圧力は、沸上げ温度が低い場合の冷凍サイクルにおける高圧部分の圧力と比較して高くなる。
【0049】
圧縮機153で冷媒を昇圧する際の必要仕事量は、高圧部分の圧力と低圧部分の圧力との差圧である昇圧幅が増加するほど増加する。そのため、沸上げ温度が高くなればなるほど圧縮機153の必要仕事量が増加し、貯湯式給湯機150の消費電力も増加する。一方、沸上げ温度が低いほど、冷凍サイクルにおける高圧部分の圧力は低くなるため、昇圧幅も低くなり、貯湯式給湯機150の消費電力は沸上げ温度が高い場合と比較して減少する。
従って、沸上げすべき熱量を沸上げする場合において、貯湯式給湯機150の消費電力を極力抑えた運転を効率の良い運転とした場合、沸上げ温度が低いほど、貯湯式給湯機150の運転効率は良くなる。
【0050】
貯湯タンク159に所定の熱量を貯湯する場合、高温の湯を少量貯める運転パターンと、低温の湯を多量に貯める運転パターンが考えられる。高温の湯を貯める運転パターンの場合、沸上げする沸上げ温度を高くする必要があるため、貯湯式給湯機157の運転効率は、上述したように低下する。従って、貯湯タンク159に貯湯する際には、貯湯式給湯機157の運転効率が低下することのないように、低い温度の湯を多量に貯める運転パターンが選択される。
【0051】
以上より、沸上げ熱量決定部173は、貯湯式給湯機157の運転効率が低下することのないよう、沸上げ温度の下限値を深夜運転の沸上げ温度として決定する。本実施形態では、貯湯式給湯機150毎に電力負荷平準化要求を適用せず、各貯湯式給湯機150全体を一つの単位として電力負荷平準化要求を適用するため、例え使用熱量の多い貯湯式給湯機150があっても、沸上げ温度の下限値を深夜運転の沸上げ温度とすることができ、貯湯式給湯機157の運転効率の低下を防止することができる。
【0052】
図2に戻り、沸上げ熱量決定部173は、上記のようにして決定した深夜運転の沸上げ熱量と沸上げ温度に基づいて沸上げを行うよう、沸上げ運転制御部175へ決定した深夜運転の沸上げ熱量と沸上げ温度を送信する。
【0053】
運転時間設定部174は、深夜運転の運転時間を設定する。具体的には、深夜運転の沸上げ熱量を貯湯式給湯機150の単位時間あたりの沸上げ熱量で割って、必要となる深夜の運転時間を算出する。ここで、貯湯式給湯機157の単位時間あたりの沸上げ熱量は、沸上げ温度、給湯機へ供給される市水の温度、貯湯式給湯機157周囲の外気温度に応じて決定される。
【0054】
深夜時間帯は一般に23時〜7時に設定されているので、運転時間設定部174は、その時間帯の中で深夜運転を実施する時間を割り付ける。例えば、必要となる深夜の運転時間が5時間であった場合、運転の開始を深夜時間帯開始時からとすると、運転時間設定部174は、23時〜4時の間で運転を実施するように時間を割り付ける。一方、運転の完了を深夜時間帯終了時とすると、運転時間設定部174は、2時〜7時の間で運転を実施するように時間を割り付ける。
【0055】
沸上げ運転制御部175は、沸上げ熱量決定部173から受信した深夜運転の沸上げ熱量と沸上げ温度に基づいて、各貯湯式給湯機150に備えられている各機器に対して指示を行い、各貯湯式給湯機150の沸上げ運転を行う。
深夜の沸上げ運転の完了を判断するにあたって、沸上げ運転制御部175は、貯湯タンク159の貯湯熱量を随時算出する。そして、その熱量が沸上げ熱量決定部173における沸上げ温度決定時に用いられた深夜沸上げ運転終了時の貯湯タンク159の必要保持熱量と等しいか否かを判定し、両者が等しい場合に運転を終了する。
【0056】
沸上げ温度が下限値で沸上げ運転される場合、必要なタンク貯湯量は、貯湯タンク159内の湯を全てこの下限値の温度とした場合の貯湯量よりも少なくなる。従って、貯湯タンク159内の湯を全量沸上げる運転ではなく、貯湯タンク159下部に一部低温水が残留した状態で沸上げ運転を完了する。
【0057】
昼間運転部176は、貯湯式給湯機150における昼間運転の開始および終了を各機器に指示する。昼間運転は、貯湯タンク159からの出湯に伴い、貯湯タンク159の貯湯量が減少し、湯切れとなる状態を回避するために行われる。従って昼間運転は、貯湯タンク159の貯湯量に応じて行われる。
【0058】
具体的には、予め湯切れを回避するのに必要な最低限の貯湯熱量が設定されており、昼間運転部176は、出湯に伴う貯湯タンク159の貯湯熱量の変動を随時計測し、計測値が最低限の貯湯熱量を下回った場合に、各機器に指示を与えて貯湯式給湯機150の運転を実行する。
貯湯式給湯機150の運転に伴い貯湯タンク159の貯湯熱量が増加し、貯湯タンク159の熱量が最低限の貯湯熱量を上回った場合、昼間運転部176は、各機器に指示を与えて貯湯式給湯機150の運転を停止する。
【0059】
出湯部177は、ユーザの操作により予め設定される温度に貯湯タンク159上部の高温水と市水とを混合するため、三方弁164の開度を調整するよう、給湯端末からの出湯要求に応じて三方弁164へ指示を与える。この出湯部177により三方弁164の開度が調整され、貯湯タンク159から給湯端末へ所望の温度の湯が供給される。
【0060】
流量センサ161は、貯湯式給湯機150から供給される湯の流量を計測し、その計測データを計測制御装置160へ送信する。
【0061】
ポンプ162は、インバータ回路を備え、計測制御装置160の指示に応じて駆動回転数を変更することにより、容量を可変できるポンプである。ポンプ162は、貯湯タンク159下部の低温水を水冷媒熱交換器154へ搬送する。
【0062】
温度センサ163a〜163iは、設置場所における湯温を計測し、その計測データを計測制御装置160に送信する。
温度センサ163aは、沸上げ回路の水冷媒熱交換器出口側に設置されている。温度センサ163bは、図示するように、貯湯タンク159上部入口側に設置されている。温度センサ163c〜163hは、貯湯タンク159の高さ方向に設置されている。温度センサ163iは、出湯管165に設置されている。
【0063】
三方弁164は、各種の給湯用途に応じて供給される湯が所望の温度となるように、貯湯タンク159上部の高温水と市水とを、混合するために設けられている。三方弁164は、計測制御装置160からの指示に応じて開度が調整される。
【0064】
以上が、給湯機制御システム10の構成である。
【0065】
次に、給湯機制御システム10の運転動作について図6を参照して説明する。本システムでは、給湯機制御装置100における深夜沸上げ量決定処理と各貯湯式給湯機150における沸上げ処理とにより、各貯湯式給湯機150が貯湯タンク159に高温水を貯湯する沸上げ運転を行う。
【0066】
給湯機制御装置100における深夜沸上げ量決定処理は、制御部102に内蔵されているタイマにより時間が計測され、予め設定されている時間が経過する毎に開始される。
【0067】
各貯湯式給湯機150における沸上げ処理は、制御部168に内蔵されているタイマにより時間が計測され、使用者が給湯機の使用を開始する1日の最初と、使用者の使用が完了する1日の最後に、貯湯熱量の推算が行われることで開始される。
【0068】
各貯湯式給湯機150は、使用熱量算出部171の機能により、貯湯タンク159内の貯湯熱量の変動から1日の使用熱量を算出する(ステップS101)。そして各貯湯式給湯機150は、通信部172の機能により、算出した1日の使用熱量を給湯機制御装置100のデータ収集部106へ送信する(ステップS102)。
【0069】
給湯機制御装置100は、沸上げ熱量算出部107の機能により、受信した各貯湯式給湯機150の1日の使用熱量を集計する(ステップS103)。
【0070】
そして給湯機制御装置100は、沸上げ熱量算出部107の機能により、電力負荷平準化を促進するために予め設定される、システム全体における深夜運転率を、集計した1日の使用熱量に掛けて、システム全体での深夜沸上げ量を算出する(ステップS104)。本実施形態では、深夜80%、昼間20%でシステム全体における深夜運転率が設定されている。
【0071】
続いて給湯機制御装置100は、沸上げ熱量算出部107の機能により、算出したシステム全体における深夜沸上げ量を貯湯式給湯機150の台数で割り、各貯湯式給湯機150で深夜時間帯に許容される深夜沸上げ熱量を算出する(ステップS105)。
【0072】
その後、給湯機制御装置100は、ステップS105で算出した、各貯湯式給湯機150で許容される最大の深夜沸上げ熱量を、最大沸上げ熱量データとして各貯湯式給湯機150に送信する(ステップS106)。
【0073】
各貯湯式給湯機150は、沸上げ熱量決定部173の機能により、給湯機制御装置100から受信した最大沸上げ熱量データに基づいて、深夜運転の沸上げ熱量を決定する。深夜運転の沸上げ熱量は、上述したように、受信した最大沸上げ熱量データの示す熱量と、1日の平均使用熱量とを比較して決定される。
受信した最大沸上げ熱量データの示す熱量が、1日の平均使用熱量以上である場合(ステップS107:Yes)、1日の平均使用熱量を深夜運転の沸上げ熱量とする(ステップS108)。一方で、受信した最大沸上げ熱量データの示す熱量が、1日の平均使用熱量未満である場合(ステップS107:No)、受信した最大沸上げ熱量データにより示される、許容される最大の深夜沸上げ熱量を深夜運転の沸上げ熱量とする(ステップS109)。
【0074】
続いて各貯湯式給湯機150は、沸上げ熱量決定部173の機能により、深夜運転の沸上げ温度を設定する(ステップS110)。
上述したように、沸上げ温度が低いほど貯湯式給湯機150の運転効率は良くなるため、下限値である65℃が設定される。
【0075】
深夜運転の沸上げ熱量と温度が決定されると、各貯湯式給湯機150は、運転時間設定部174の機能により、各貯湯式給湯機150の運転時間を設定する(ステップS111)。
【0076】
各貯湯式給湯機150は、ステップS108〜ステップS111により設定された内容に基づいて、沸上げ運転を実施する(ステップS112)。
【0077】
給湯機制御システム10における各貯湯式給湯機150の沸上げ運転は、深夜沸上げ量決定処理で決定された運転開始時間となることにより、貯湯式給湯機150毎に開始される。各貯湯式給湯機150は、深夜沸上げ量決定処理における沸上げ熱量決定部173の機能により決定された沸上げ温度に応じて、ポンプ162の容量や圧縮機153の容量、膨張弁155の開度を調整し、所定の熱量を沸上げする。
【0078】
各貯湯式給湯機150は、運転時間設定部174の機能により、貯湯タンク159の貯湯熱量が深夜沸上げ運転終了時における貯湯タンク159の必要保持熱量と等しくなるまで沸上げ運転を行い、両者が等しくなった場合、この処理を終了する。
【0079】
以上が、給湯機制御システム10における深夜沸上げ量決定処理の動作である。
【0080】
このように、本実施形態に係る給湯機制御システム10によれば、各貯湯式給湯機150の使用熱量から各貯湯式給湯機150で許容される最大の沸上げ熱量を算出し、これと平均の使用熱量とを比較することで、深夜運転の沸上げ熱量を決定する。そして、使用熱量が多い場合であっても、電力負荷平準化要求を貯湯式給湯機150全体に対して適用するため、図7に示すように、下限温度で許容される最大の沸上げ熱量を超える沸上げは行わず、不足分の熱量を昼間運転により沸上げることができる。
従って、使用熱量の多い貯湯式給湯機150があっても、沸上げ温度を一定とすることができ、貯湯式給湯機150全体として電力負荷平準化を促進しつつ、各貯湯式給湯機150の運転を効率化することができる。
【0081】
(変形例)
この発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。上記実施形態では、深夜沸上げ機能を給湯機制御装置100における深夜沸上げ量決定機能と各貯湯式給湯機150における沸上げ機能との協同により実現する場合について説明したが、これは一例である。例えば、深夜沸上げ機能を、深夜沸上げ量決定機能と沸上げ機能とを併せ持つ一つの給湯機制御装置100により実現してもよい。この場合、1つのプログラムにより深夜沸上げ機能を実現するようにしてもよい。この構成によれば、各貯湯式給湯機150の運転を一つの給湯機制御装置100により制御することが可能となり、設備費用を抑えることができ、かつメンテナンスも容易となる。
【0082】
さらにこの場合、給湯機制御装置100により個別の貯湯式給湯機150の運転スケジュールを調整できる。そのため運転時間設定部174は、図8(b)に示すように、深夜時間帯の中で同一時間帯に運転される貯湯式給湯機150の台数が少なくなるように個別の貯湯式給湯機150の運転スケジュールを調整し、各貯湯式給湯機150に送信してもよい。
このように、同一時間帯に運転される貯湯式給湯機150の台数が少なくなることにより、図8(a)に示すように同一時間帯に運転される貯湯式給湯機150が多い場合と比較して、貯湯式給湯機150全体における瞬時の最大消費電力量を低減することができる。従って契約電力により設定される電気料金を引き下げられ、低コストで各貯湯式給湯機150を運転することができる。さらに、深夜時間帯に同時に運転される貯湯式給湯機150の運転台数が均一化され、深夜時間帯での消費電力量が均一化されることで、電力負荷平準化をさらに促進することができる。
【0083】
また、運転時間設定部174は、図9(b)に示すように、各貯湯式給湯機150の沸上げ完了時間が異なるように、各貯湯式給湯機150の運転スケジュールを調整し、各貯湯式給湯機150に送信してもよい。
この構成によれば、図9(a)に示す各貯湯式給湯機150の沸上げ完了時間が同じ時間の場合と比較して、貯湯式給湯機150全体における瞬時の最大消費電力量を低減することができる。従って、受電設備の契約電力を引き下げることができ、契約電力により設定される電気料金を引き下げられ、低コストで各貯湯式給湯機150を運転することができる。
【0084】
各貯湯式給湯機150の沸上げ完了時間が異なることで、沸上げ完了時間が同時である場合と比較して貯湯式給湯機150全体における瞬時の最大消費電力量が低減するのは、供給される水温の上昇に伴って貯湯式給湯機150の運転効率が低下し、各貯湯式給湯機150の沸上げ完了時間帯における消費電力量が、最も大きくなるためである。
【0085】
ここで、供給される水温の変化と湯式給湯機150の運転効率との関係について説明する。
【0086】
供給される水温が変化した場合の貯湯式給湯機150の冷凍サイクルは、図10に示すように、供給水温が低い場合は実線で示されるようになり、供給水温が高い場合は点線で示されるようになる。一般に、水冷媒熱交換器154出口の冷媒温度は、供給水温より概ね一定温度高くなる。そのため供給水温が高くなると水冷媒熱交換器154出口の冷媒温度も高くなる。冷媒温度が高くなると冷媒のエンタルピも高くなり、水冷媒熱交換器154出入口における冷媒のエンタルピの変化が小さくなる。冷凍サイクルの加熱能力は、放熱器である水冷媒熱交換器154出入口における冷媒のエンタルピ差に比例するため、図示するように供給水温が高くなりエンタルピ差が縮小すると、加熱能力が低下し、湯式給湯機150の運転効率が低下する。
【0087】
また、水冷媒熱交換器154全体を平均的にみると、供給水温が高くなるにつれ冷媒と水との温度差が縮小する。しかし、所定の沸上げ温度若しくは沸上げ熱量を得られるように湯式給湯機150を運転するには、冷媒と水との温度差が適度に確保される必要がある。そのため図10に示すように、供給水温が低い場合と比べて、冷凍サイクルにおける高圧部分が高くなるように運転される。これに伴い、圧縮機153の昇圧仕事量が増加し、貯湯式給湯機の消費電力が増加する。従って、供給水温が高くなるにつれ、湯式給湯機150の運転効率は低下する。
【0088】
次に、沸上げ完了時間帯における貯湯式給湯機150の消費電力量について説明する。
【0089】
貯湯タンク159内の温度が所定の温度となるように沸上げ運転を行う場合、運転初期は、温度成層が形成されている。貯湯タンク159下部には低温水があるため、図11に示すように、供給水温は、低いまま維持され、貯湯式給湯機150は高効率で運転される。沸上げ運転を継続して貯湯タンク159の貯湯熱量が増加していくと、貯湯タンク159内の高温水の占める割合が増加する。沸上げ運転の終盤になると、貯湯タンク159内の高温水の占める領域が貯湯タンク159下部に近接するようになる。これに伴い、温度成層が形成されず、高温水と低温水とが混合したものが貯湯タンク159下部に存在するようになる。そのためヒートポンプユニット151への供給水温が上昇することとなる。従って、図示するように、沸上げ完了時間帯に近づくにつれ、貯湯式給湯機150の運転効率は低下し、貯湯式給湯機150の消費電力が増加する。
【0090】
以上説明したように、貯湯式給湯機150は、沸上げ完了時間帯が近づくにつれ消費電力が増加する。このため各貯湯式給湯機150における沸上げ完了時間が異なるように各貯湯式給湯機150の運転をスケジューリングすることで、沸上げ完了時間が同時である場合と比較して、瞬時の最大消費電力量を軽減することができる。
【0091】
本発明の実施形態にかかる深夜沸上げ機能を実現するための給湯機制御装置100は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラム146を格納した媒体(CD−ROMなど)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する給湯機制御装置100を構成することができる。
【0092】
また、上述の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションとの分担、またはOSとアプリケーションとの協同により実現する場合等には、OS以外の部分のみを媒体に格納してもよい。
【0093】
また、搬送波にプログラム146を重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS、Bulletin Board System)に当該プログラムを掲示し、ネットワークを介して当該プログラムを配信してもよい。そして、これらのプログラムを起動し、オペレーティングシステムの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行できるように構成してもよい。
【0094】
上記実施形態では、沸上げ運転制御部175の機能により、深夜の沸上げ運転の完了を、運転開始前後における貯湯タンク159の熱量が等しいか否かを判定することで判断する例を示したが、これは一例である。深夜の沸上げ運転の完了は、昼間の放熱を考慮し、貯湯タンク159における貯湯熱量が必要保持熱量より所定以上多くなったことを基準に判断してもよく、また、運転時間設定部174の機能により設定された時間の経過をタイマ等で判定することにより判断してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、各貯湯式給湯機150のタンクユニット152が計測制御装置160を備える例を示したが、必ずしもこれに限定されない。各貯湯式給湯機150のヒートポンプユニット151が計測制御装置160を備えていてもよく、また、各貯湯式給湯機150のヒートポンプユニット151およびタンクユニット152のそれぞれが、計測制御装置160を、対応する機能毎に分割して備えていてもよい。この構成によれば、各機能をそれぞれに対応した計測制御装置160により実現され、負荷を分散させることができ、処理を高速化できる。
【0096】
上記実施形態では、各貯湯式給湯機150における使用熱量算出部171の機能により、1日の使用熱量を貯湯熱量の偏差により算出する例を示したが、これは一例である。1日の使用熱量を算出するにあたっては、出湯管165に設置されている流量センサ161および温度センサ163iの計測値に基づいて算出してもよい。具体的には、使用者が出湯している間の時間を計測し、流量センサ161で計測される出湯流量と、温度センサ163iで計測される出湯温度を掛けて得られる値から単位時間あたりの熱量を求め、それを積算することにより1日の使用熱量としてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、各貯湯式給湯機150で深夜時間帯に許容される最大の沸上げ熱量を算出する場合に、過去の使用熱量の平均値である平均使用熱量を用いる例を示したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、平均値は必ずしも所定期間における全ての使用熱量の平均値である必要はなく、熱量の多いものから順に複数選択し、その平均値であってもよく、また、各使用熱量に重み付けをする加重平均値であってもよい。さらに、過去の使用熱量のうち最大の熱量と最小の熱量の中間の値であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 給湯機制御システム、100 給湯機制御装置、102 記憶部、103 沸上げ制御プログラム、104 制御部、105 送信部、106 データ収集部、107 沸上げ熱量算出部、150 貯湯式給湯機、151 ヒートポンプユニット、152 タンクユニット、153 圧縮機、154 水冷媒熱交換器、155 膨張弁、156 空気熱交換器、157a〜157b 圧力センサ、158a〜158b 温度センサ、159 貯湯タンク、160 計測制御装置、161 流量センサ、162 ポンプ、163a〜163i 温度センサ、164 三方弁、165 出湯管、166 給水管、167 記憶部、168 制御部、169 制御プログラム、170 受信部、171 使用熱量算出部、172 通信部、173 沸上げ熱量決定部、174 運転時間設定部、175 沸上げ運転制御部、176 昼間運転部、177 出湯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯湯式給湯機と相互に通信可能に接続され、
前記複数の貯湯式給湯機それぞれにおける1日の使用熱量を前記複数の貯湯式給湯機から受信する受信部と、
前記複数の貯湯式給湯機それぞれにおける1日の使用熱量に基づいて、予め設定された期間内に沸上げられる熱量を前記貯湯式給湯機毎に決定する沸上げ熱量決定部と、
前記貯湯式給湯機毎に、前記沸上げ熱量決定部で決定した熱量に基づいて、沸上げ運転の運転時間を設定する運転時間設定部と、
前記沸上げ熱量決定部で決定された熱量と、前記運転時間設定部で設定された運転時間に基づいて、前記各貯湯式給湯機の沸上げ運転を制御する沸上げ運転制御部と、
を備える給湯機制御装置であって、
前記運転時間設定部は、同一時間帯に運転される前記貯湯式給湯機の台数が、前記複数の貯湯式給湯機の台数未満となるように、前記貯湯式給湯機の沸上げ運転の開始時間と終了時間を設定する、
ことを特徴とする給湯機制御装置。
【請求項2】
複数の貯湯式給湯機と相互に通信可能に接続され、
前記複数の貯湯式給湯機それぞれにおける1日の使用熱量を前記複数の貯湯式給湯機から受信する受信部と、
前記複数の貯湯式給湯機それぞれにおける1日の使用熱量に基づいて、予め設定された期間内に沸上げられる熱量を前記貯湯式給湯機毎に決定する沸上げ熱量決定部と、
前記貯湯式給湯機毎に、前記沸上げ熱量決定部で決定した熱量に基づいて、沸上げ運転の運転時間を設定する運転時間設定部と、
前記沸上げ熱量決定部で決定された熱量と、前記運転時間設定部で設定された運転時間に基づいて、前記各貯湯式給湯機の沸上げ運転を制御する沸上げ運転制御部と、
を備える給湯機制御装置であって、
前記運転時間設定部は、前記複数の貯湯式給湯機の内、少なくとも2台の沸上げ完了時間が異なるように、前記各貯湯式給湯機における沸上げ運転の開始および終了を設定する、
ことを特徴とする給湯機制御装置。
【請求項3】
前記予め設定された期間が、深夜時間帯であることを特徴とする請求項1又は2に記載の給湯機制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−64602(P2013−64602A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6731(P2013−6731)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2010−245462(P2010−245462)の分割
【原出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)