給電システムの設計方法
【課題】コイルの大きさや距離を調整しなくても所望の共鳴周波数で臨界結合を実現し、広帯域に渡り高い伝送効率を得ることができる給電システムの設計方法を提供する。
【解決手段】DC/AC変換器31及びAC/DC変換器51のインピーダンスを調整することにより、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の共鳴周波数が小さくなるほど給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように設計する。
【解決手段】DC/AC変換器31及びAC/DC変換器51のインピーダンスを調整することにより、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の共鳴周波数が小さくなるほど給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように設計する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システムの設計方法に係り、特に、電力が供給される給電側コイルを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルから受電する受電側コイルを有する受電手段と、を備えた給電システムの設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した給電システムとして、例えば図1に示すものが知られている(例えば非特許文献1、2)。同図に示すように、給電システム1は、給電手段としての給電部3と、受電手段としての受電部5と、を備えている。上記給電部3は、電力が供給される給電側ループアンテナ32と、給電側ループアンテナ32に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ32に電磁結合された給電側コイルとしての給電側ヘリカルコイル33と、を有している。上記給電側ループアンテナ32に電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側ヘリカルコイル33に送られる。
【0003】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル33に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側コイルとしての受電側ヘリカルコイル51と、この受電側ヘリカルコイル51に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され当該受電側ヘリカルコイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、を有している。給電側ヘリカルコイル33に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル51にワイヤレスで送られる。
【0004】
さらに、受電側ヘリカルコイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られ、この受電側ループアンテナ52に接続されたバッテリなどの負荷7に供給される。上述した給電システム1によれば、給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51との電磁共鳴により非接触で給電側から受電側に電力を供給することができる。
【0005】
そして、上述した受電部5を自動車4に設け、給電部3を道路2などに設けることにより、上述した給電システム1を利用してワイヤレスで自動車4に搭載されたバッテリに電力を供給することが考えられている。
【0006】
ところで、給電側、受電側ヘリカルコイル33、51の結合は、コイルの大きさ、コイル間距離、周波数に依存することが知られている。広帯域に渡り安定した伝送効率を得るためには密結合でも疎結合でもない、臨界結合付近を使うことが理想である。そこで、従来は、所望の共鳴周波数で臨界結合を得るために、給電側、受電側ヘリカルコイル33、51のコイルの大きさやコイル間距離を調整していた。
【0007】
しかしながら、上述したようにコイルの大きさを調整する場合は、所望の共鳴周波数毎に異なる大きさの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51を用意する必要があり、コスト的に問題となる。また、上述したように道路2に給電側ヘリカルコイル33を配置し、自動車4に受電側ヘリカルコイル51に配置する給電システム1においては、コイル間距離を調整すること自体が非常に困難である。従って、コイルの大きさやコイル間距離の調整によって臨界結合を得ることが難しく、帯域が2分割される、伝送効率が低下するなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Kurs,A.Karalis,R.Moffatt,J.D.Joannopoulos,P.Fisher,M.Soljacic,"Wireless power transfer via strongly coupled magnetic resonances",Science,Vol.317,pp.83-86,July6,2007
【非特許文献2】M.Soljacic,A.Karalis,J.Joannopoulos,A.Kurs,R.Moffatt,P.fisgeR,"電力を無線伝送する技術を開発 実験で60Wの電球を点灯“、日経エレクトロニクス,3Dec.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、給電側、受電側コイルの大きさやコイル間距離を調整しなくても所望の共鳴周波数で臨界結合を実現し、広帯域に渡り高い伝送効率を得ることができる給電システムの設計方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、給電側、受電側コイルの大きさやコイル間距離を調整せずに所望の共鳴周波数で臨界結合が得られるようにすべく検討を重ねた結果、給電手段及び受電手段のインピーダンスを調整すると給電側コイルと受電側コイルとの結合状態が調整できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、請求項1記載の発明は、電力が供給される給電側コイルを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルから受電する受電側コイルを有する受電手段と、を備えた給電システムの設計方法であって、前記給電側コイル及び前記受電側コイルの大きさ及びコイル間距離を変えずに前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計することを特徴とする給電システムの設計方法に存する。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記給電手段は、直流電力を交流電力に変換して、前記給電側コイルに供給する直流/交流変換器を有し、前記受電手段は、前記受電側コイルが受電した交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換器を有する前記給電システムの設計方法であって、前記直流/交流変換器及び前記交流/直流変換器のインピーダンスを調整することにより、前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計することを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法に存する。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記給電手段及び前記受電手段はそれぞれ、前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスを調整する整合器を有する前記給電システムの設計方法であって、前記整合器のインピーダンスを調整することにより、前記給電手段及び前記受電手段の共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計することを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法に存する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1〜3記載の発明によれば、給電側コイル及び受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど給電手段及び受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計するので、コイルの大きさや距離を調整しなくても所望の共鳴周波数で臨界結合を実現し、広帯域に渡り高い伝送効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の給電システムの設計方法が実施される給電システムを示す図である。
【図2】図1に示す給電システムを構成する給電側ループアンテナ、給電側ヘリカルコイル、受電側ヘリカルコイル及び受電側ループアンテナの斜視図である。
【図3】給電部及び受電部の特性インピーダンス=50Ω、共鳴周波数0.1f0の給電システム(=製品B)について、周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図4】給電部及び受電部の特性インピーダンス=50Ω、共鳴周波数0.001f0の給電システム(=製品C)について、周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図5】製品Bについて、周波数0.1f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図6】製品Cについて、周波数0.001f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図7】給電部及び受電部の特性インピーダンス=27Ω、共鳴周波数0.1f0の給電システム(=製品D)について、周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図8】製品Dについて、周波数0.1f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図9】給電部及び受電部の特性インピーダンス=0.3Ω、共鳴周波数0.001f0の給電システム(=製品E)について、周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図10】製品Eについて、周波数0.001f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図11】臨界結合となる共鳴周波数と特性インピーダンスとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の給電システムの設計方法が実施される給電システムを図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明の給電システムの設計方法が実施される給電システムを示す図である。図2は、図1に示す給電システムを構成する給電側ループアンテナ、給電側ヘリカルコイル、受電側ヘリカルコイル及び受電側ループアンテナの斜視図である。図1に示すように、上記給電システム1は、道路2上などに設けられた給電手段としての給電部3と、自動車4の腹部分などに設けられた受電手段としての受電部5と、を備えている。
【0017】
上記給電部3は、直流電源6から供給される直流電力を交流電力に変換するDC(直流)/AC(交流)変換器31と、DC/AC変換器31により変換された交流電力が供給される給電側ループアンテナ32と、給電側ループアンテナ32に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ32に電磁供給された給電側コイルとしての給電側ヘリカルコイル33と、給電側ヘリカルコイル33に並列接続されたコンデンサC1と、を有している。
【0018】
上記給電側ループアンテナ32は、円ループ状に設けられていて、その中心軸が道路2から自動車4の腹部分に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。この給電側ループアンテナ32の両端には、DC/AC変換器31が接続されていて、上述したようにDC/AC変換器31により変換された交流電力が供給される。
【0019】
上記給電側ヘリカルコイル33は、例えば巻線を円状に巻いて構成されている。本実施形態においては、給電側ヘリカルコイル33は、その巻線が1巻に設けられているが、2巻以上であっても良い。また、給電側ヘリカルコイル33は、上記給電側ループアンテナ32の自動車4側に、給電側ループアンテナ32と同軸上に配置されている。上記給電側ループアンテナ32と給電側ヘリカルコイル33とは、互いに電磁結合できる範囲内、即ち、給電側ループアンテナ32に交流電力が供給され、交流電流が流れると給電側ヘリカルコイル33に電磁誘導が発生するような範囲内で、互いに離間して設けられている。上記コンデンサC1は、共鳴周波数を調整するために設けられている。
【0020】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル33と電磁共鳴する受電側コイルとしての受電側ヘリカルコイル51と、この受電側ヘリカルコイル51に対してその中心軸方向に対向するように配置され、受電側ヘリカルコイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、受電側ループアンテナ52が受電した交流電力を直流電力に変換するAC(交流)/DC(直流)変換器53と、受電側ヘリカルコイル51に並列接続されたコンデンサC2と、を有している。
【0021】
上記受電側ループアンテナ52には、AC/DC変換器53を介して車載バッテリなどの負荷7が接続されている。また、受電側ループアンテナ52は、円形のループ状に設けられていて、その中心軸が自動車4の腹部分から道路2に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。また、本実施形態においては、図2に示すように、上記受電側ループアンテナ52は、上述した給電側ループアンテナ32と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側ループアンテナ52の径が、上述した給電側ループアンテナ32の径よりも小さく設けられていても良い。
【0022】
上記受電側ヘリカルコイル51は、例えば巻線を円形に巻いて構成されている。本実施形態においては、受電側ヘリカルコイル51は、給電側ヘリカルコイル33と同様に、その巻線が1巻に設けられているが、2巻以上であってもよい。また、上記受電側ヘリカルコイル51は、上述した給電側ヘリカルコイル33と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側ヘリカルコイル51の径が、上述した給電側ヘリカルコイル33の径よりも小さく設けられていても良い。
【0023】
また、受電側ヘリカルコイル51は、上述した受電側ループアンテナ52の道路2側に、受電側ループアンテナ52と同軸上に配置されている。受電側ループアンテナ52と受電側ヘリカルコイル51とは、互いに電磁結合する範囲内、即ち、受電側ヘリカルコイル51に交流電流が流れると受電側ループアンテナ52に誘導電流が発生する範囲内に、互いに離間して設けられている。上記コンデンサC2は、コンデンサC1と同様に、共鳴周波数を調整するために設けられている。これらコンデンサC1、C2は、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の共鳴周波数が所望の周波数f0となるように容量が予め調整されている。
【0024】
上述した給電システム1によれば、自動車4の受電部5が道路2に設けた給電部3に近づいて給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51とが中心軸方向に互いに間隔を空けて対向したとき、給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51とが電磁共鳴して給電部3から受電部5に非接触で電力を供給できる。
【0025】
詳しく説明すると、上記給電側ループアンテナ32に交流電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側ヘリカルコイル33に送られる。即ち、給電側ヘリカルコイル33には、給電側ループアンテナ32を介して電力が供給される。給電側ヘリカルコイル33に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル51にワイヤレスで送られる。さらに、受電側ヘリカルコイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られ、この受電側ループアンテナ52に接続された負荷7にAC/DC変換器53を介して供給される。
【0026】
次に、本発明の給電システム1の設計方法について説明する。まず、本発明者らは、給電部3及び受電部5の特性インピーダンス=50Ωにして、周波数f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量を調整した給電システム1(以下これを製品Aとする)について、周波数f0付近での通過特性をシミュレーションした。結果、周波数f0付近の広い範囲で高い通過特性が得ることができ、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の臨界結合できている。
【0027】
次に、本発明者らは、上記周波数f0付近で臨界結合が得られている製品Aにおいて周波数0.1f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量のみを調整した給電システム1(以下これを製品Bとする)について、共鳴周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした。結果を図3に示す。同図に示すように、周波数0.1f0付近では、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の結合が強くなりすぎ、結果帯域が2分割され、帯域が狭くなってしまっている。
【0028】
さらに、本発明者らは、上記周波数f0付近で臨界結合が得られている製品Aにおいて周波数0.001f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量のみを調整した給電システム1(以下これを製品Cとする)について、周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした。結果を図4に示す。同図に示すように、周波数0.001f0付近では、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の結合が強くなりすぎ、もはや通過特性がほとんどない状態となっている。
【0029】
そこで、本発明者らは、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の大きさや距離を変えずに給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の結合を調整できる方法を検討すべく、製品Bについて周波数0.1f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションしてみた。結果を図5に示す。また、本発明者らは製品Cについて周波数0.001付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした。結果を図6に示す。
【0030】
同図に示すように、製品Bにおいては周波数0.1f0付近でインピーダンスが50Ω(図5中の1=50Ω)よりも低くなっていることが分かった。また、製品Cにおいては周波数0.001f0付近でのインピーダンスが50Ω(図6中の1=50Ω)よりもかなり低くなっていることが分かった。
【0031】
そこで、本発明者らは、給電部3及び受電部5の特性インピーダンスが27ΩになるようにDC/AC変換器31、AC/DC変換器53のインピーダンスを調整し、周波数0.1f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量が調整された給電システム1(製品D)について周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性とインピーダンス特性とをシミュレーションした。結果を図7及び図8に示す。なお、製品Aの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51と製品Dの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51とは、その大きさ、コイル間距離が互いに同じである。同図からも明らかなように、特性インピーダンスを下げることにより臨界結合が得られることが分かった。
【0032】
また、本発明者らは、給電部3及び受電部5のインピーダンスが0.3ΩになるようにDC/AC変換器31、AC/DC変換器53のインピーダンスを調整し、周波数0.01f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量が調整された給電システム1(製品E)について周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性とインピーダンス特性とをシミュレーションした。結果を図9及び図10に示す。なお、製品Aの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51と製品Dの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51とは、その大きさ、コイル間距離が互いに同じである。同図からも明らかなように、特性インピーダンスを下げることにより臨界結合が得られることが分かった。
【0033】
即ち、本発明者らは、給電部3及び受電部5のインピーダンスを調整すると給電側、受電側ヘリカルコイル33、51の結合状態が調整できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0034】
そこで、給電システム1を設計する際には、DC/AC変換器31及びAC/DC変換器53のインピーダンスを調整することによって、図11に示すように所望の共鳴周波数が小さくなるほど給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように設計している。具体的には、DC/AC変換器31及びAC/DC変換器53に内蔵されたコンデンサの容量やコイルのインダクタを調整している。ここでは、DC/AC変換器31及びAC/DC変換器53で用いられるコンデンサやコイルとしては、臨界結合が得られるような容量やインダクタに固定されたコンデンサやコイルを用いているが、容量やインダクタが可変な可変コンデンサや可変コイルを用いて、容量やインダクタを調整してもよい。
【0035】
また、特性インピーダンスが50Ωを超える周波数では給電側ループアンテナ32と給電側ヘリカルコイル33との距離、受電側ループアンテナ52と受電側ヘリカルコイル51との距離を調整することで臨界結合を得るように調整する。特性インピーダンスが50Ωでなくなったことにより、従来の高周波回路とのインタフェースが問題となるが、その場合のインピーダンス変換方式にはλ/4伝送線路を用いたもの、L/Cの回路を用いたもの、トランスを用いたものなど各種技術ががあり、これらを組み合わせることで回路のインタフェースは実現可能である。
【0036】
上述した実施形態によれば、給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように調整するので、コイルの大きさや距離を調整しなくても所望の共鳴周波数で臨界結合を実現し、広帯域に渡り高い伝送効率を得ることができる。
【0037】
なお、上述した実施形態によれば、DC/AC変換器31、AC/DC変換器53のインピーダンスを調整していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、給電部3及び受電部5にそれぞれコンデンサやコイルから成る整合器を設けて、整合器のインピーダンスを調整することにより、給電部3及び受電部5の共鳴周波数が小さくなるほど給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように設計してもよい。
【0038】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 給電システム
3 給電部(給電手段)
5 受電部(受電手段)
33 給電側ヘリカルコイル(給電側コイル)
31 DC/AC変換器(直流/交流変換器)
53 AC/DC変換器(交流/直流変換器)
51 受電側ヘリカルコイル(受電側コイル)
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システムの設計方法に係り、特に、電力が供給される給電側コイルを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルから受電する受電側コイルを有する受電手段と、を備えた給電システムの設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した給電システムとして、例えば図1に示すものが知られている(例えば非特許文献1、2)。同図に示すように、給電システム1は、給電手段としての給電部3と、受電手段としての受電部5と、を備えている。上記給電部3は、電力が供給される給電側ループアンテナ32と、給電側ループアンテナ32に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ32に電磁結合された給電側コイルとしての給電側ヘリカルコイル33と、を有している。上記給電側ループアンテナ32に電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側ヘリカルコイル33に送られる。
【0003】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル33に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側コイルとしての受電側ヘリカルコイル51と、この受電側ヘリカルコイル51に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され当該受電側ヘリカルコイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、を有している。給電側ヘリカルコイル33に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル51にワイヤレスで送られる。
【0004】
さらに、受電側ヘリカルコイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られ、この受電側ループアンテナ52に接続されたバッテリなどの負荷7に供給される。上述した給電システム1によれば、給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51との電磁共鳴により非接触で給電側から受電側に電力を供給することができる。
【0005】
そして、上述した受電部5を自動車4に設け、給電部3を道路2などに設けることにより、上述した給電システム1を利用してワイヤレスで自動車4に搭載されたバッテリに電力を供給することが考えられている。
【0006】
ところで、給電側、受電側ヘリカルコイル33、51の結合は、コイルの大きさ、コイル間距離、周波数に依存することが知られている。広帯域に渡り安定した伝送効率を得るためには密結合でも疎結合でもない、臨界結合付近を使うことが理想である。そこで、従来は、所望の共鳴周波数で臨界結合を得るために、給電側、受電側ヘリカルコイル33、51のコイルの大きさやコイル間距離を調整していた。
【0007】
しかしながら、上述したようにコイルの大きさを調整する場合は、所望の共鳴周波数毎に異なる大きさの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51を用意する必要があり、コスト的に問題となる。また、上述したように道路2に給電側ヘリカルコイル33を配置し、自動車4に受電側ヘリカルコイル51に配置する給電システム1においては、コイル間距離を調整すること自体が非常に困難である。従って、コイルの大きさやコイル間距離の調整によって臨界結合を得ることが難しく、帯域が2分割される、伝送効率が低下するなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Kurs,A.Karalis,R.Moffatt,J.D.Joannopoulos,P.Fisher,M.Soljacic,"Wireless power transfer via strongly coupled magnetic resonances",Science,Vol.317,pp.83-86,July6,2007
【非特許文献2】M.Soljacic,A.Karalis,J.Joannopoulos,A.Kurs,R.Moffatt,P.fisgeR,"電力を無線伝送する技術を開発 実験で60Wの電球を点灯“、日経エレクトロニクス,3Dec.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、給電側、受電側コイルの大きさやコイル間距離を調整しなくても所望の共鳴周波数で臨界結合を実現し、広帯域に渡り高い伝送効率を得ることができる給電システムの設計方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、給電側、受電側コイルの大きさやコイル間距離を調整せずに所望の共鳴周波数で臨界結合が得られるようにすべく検討を重ねた結果、給電手段及び受電手段のインピーダンスを調整すると給電側コイルと受電側コイルとの結合状態が調整できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、請求項1記載の発明は、電力が供給される給電側コイルを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルから受電する受電側コイルを有する受電手段と、を備えた給電システムの設計方法であって、前記給電側コイル及び前記受電側コイルの大きさ及びコイル間距離を変えずに前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計することを特徴とする給電システムの設計方法に存する。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記給電手段は、直流電力を交流電力に変換して、前記給電側コイルに供給する直流/交流変換器を有し、前記受電手段は、前記受電側コイルが受電した交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換器を有する前記給電システムの設計方法であって、前記直流/交流変換器及び前記交流/直流変換器のインピーダンスを調整することにより、前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計することを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法に存する。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記給電手段及び前記受電手段はそれぞれ、前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスを調整する整合器を有する前記給電システムの設計方法であって、前記整合器のインピーダンスを調整することにより、前記給電手段及び前記受電手段の共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計することを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法に存する。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように請求項1〜3記載の発明によれば、給電側コイル及び受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど給電手段及び受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計するので、コイルの大きさや距離を調整しなくても所望の共鳴周波数で臨界結合を実現し、広帯域に渡り高い伝送効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の給電システムの設計方法が実施される給電システムを示す図である。
【図2】図1に示す給電システムを構成する給電側ループアンテナ、給電側ヘリカルコイル、受電側ヘリカルコイル及び受電側ループアンテナの斜視図である。
【図3】給電部及び受電部の特性インピーダンス=50Ω、共鳴周波数0.1f0の給電システム(=製品B)について、周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図4】給電部及び受電部の特性インピーダンス=50Ω、共鳴周波数0.001f0の給電システム(=製品C)について、周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図5】製品Bについて、周波数0.1f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図6】製品Cについて、周波数0.001f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図7】給電部及び受電部の特性インピーダンス=27Ω、共鳴周波数0.1f0の給電システム(=製品D)について、周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図8】製品Dについて、周波数0.1f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図9】給電部及び受電部の特性インピーダンス=0.3Ω、共鳴周波数0.001f0の給電システム(=製品E)について、周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図10】製品Eについて、周波数0.001f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした結果を示すスミスチャートである。
【図11】臨界結合となる共鳴周波数と特性インピーダンスとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の給電システムの設計方法が実施される給電システムを図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明の給電システムの設計方法が実施される給電システムを示す図である。図2は、図1に示す給電システムを構成する給電側ループアンテナ、給電側ヘリカルコイル、受電側ヘリカルコイル及び受電側ループアンテナの斜視図である。図1に示すように、上記給電システム1は、道路2上などに設けられた給電手段としての給電部3と、自動車4の腹部分などに設けられた受電手段としての受電部5と、を備えている。
【0017】
上記給電部3は、直流電源6から供給される直流電力を交流電力に変換するDC(直流)/AC(交流)変換器31と、DC/AC変換器31により変換された交流電力が供給される給電側ループアンテナ32と、給電側ループアンテナ32に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ32に電磁供給された給電側コイルとしての給電側ヘリカルコイル33と、給電側ヘリカルコイル33に並列接続されたコンデンサC1と、を有している。
【0018】
上記給電側ループアンテナ32は、円ループ状に設けられていて、その中心軸が道路2から自動車4の腹部分に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。この給電側ループアンテナ32の両端には、DC/AC変換器31が接続されていて、上述したようにDC/AC変換器31により変換された交流電力が供給される。
【0019】
上記給電側ヘリカルコイル33は、例えば巻線を円状に巻いて構成されている。本実施形態においては、給電側ヘリカルコイル33は、その巻線が1巻に設けられているが、2巻以上であっても良い。また、給電側ヘリカルコイル33は、上記給電側ループアンテナ32の自動車4側に、給電側ループアンテナ32と同軸上に配置されている。上記給電側ループアンテナ32と給電側ヘリカルコイル33とは、互いに電磁結合できる範囲内、即ち、給電側ループアンテナ32に交流電力が供給され、交流電流が流れると給電側ヘリカルコイル33に電磁誘導が発生するような範囲内で、互いに離間して設けられている。上記コンデンサC1は、共鳴周波数を調整するために設けられている。
【0020】
上記受電部5は、給電側ヘリカルコイル33と電磁共鳴する受電側コイルとしての受電側ヘリカルコイル51と、この受電側ヘリカルコイル51に対してその中心軸方向に対向するように配置され、受電側ヘリカルコイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、受電側ループアンテナ52が受電した交流電力を直流電力に変換するAC(交流)/DC(直流)変換器53と、受電側ヘリカルコイル51に並列接続されたコンデンサC2と、を有している。
【0021】
上記受電側ループアンテナ52には、AC/DC変換器53を介して車載バッテリなどの負荷7が接続されている。また、受電側ループアンテナ52は、円形のループ状に設けられていて、その中心軸が自動車4の腹部分から道路2に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。また、本実施形態においては、図2に示すように、上記受電側ループアンテナ52は、上述した給電側ループアンテナ32と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側ループアンテナ52の径が、上述した給電側ループアンテナ32の径よりも小さく設けられていても良い。
【0022】
上記受電側ヘリカルコイル51は、例えば巻線を円形に巻いて構成されている。本実施形態においては、受電側ヘリカルコイル51は、給電側ヘリカルコイル33と同様に、その巻線が1巻に設けられているが、2巻以上であってもよい。また、上記受電側ヘリカルコイル51は、上述した給電側ヘリカルコイル33と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側ヘリカルコイル51の径が、上述した給電側ヘリカルコイル33の径よりも小さく設けられていても良い。
【0023】
また、受電側ヘリカルコイル51は、上述した受電側ループアンテナ52の道路2側に、受電側ループアンテナ52と同軸上に配置されている。受電側ループアンテナ52と受電側ヘリカルコイル51とは、互いに電磁結合する範囲内、即ち、受電側ヘリカルコイル51に交流電流が流れると受電側ループアンテナ52に誘導電流が発生する範囲内に、互いに離間して設けられている。上記コンデンサC2は、コンデンサC1と同様に、共鳴周波数を調整するために設けられている。これらコンデンサC1、C2は、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の共鳴周波数が所望の周波数f0となるように容量が予め調整されている。
【0024】
上述した給電システム1によれば、自動車4の受電部5が道路2に設けた給電部3に近づいて給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51とが中心軸方向に互いに間隔を空けて対向したとき、給電側ヘリカルコイル33と受電側ヘリカルコイル51とが電磁共鳴して給電部3から受電部5に非接触で電力を供給できる。
【0025】
詳しく説明すると、上記給電側ループアンテナ32に交流電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側ヘリカルコイル33に送られる。即ち、給電側ヘリカルコイル33には、給電側ループアンテナ32を介して電力が供給される。給電側ヘリカルコイル33に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側ヘリカルコイル51にワイヤレスで送られる。さらに、受電側ヘリカルコイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られ、この受電側ループアンテナ52に接続された負荷7にAC/DC変換器53を介して供給される。
【0026】
次に、本発明の給電システム1の設計方法について説明する。まず、本発明者らは、給電部3及び受電部5の特性インピーダンス=50Ωにして、周波数f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量を調整した給電システム1(以下これを製品Aとする)について、周波数f0付近での通過特性をシミュレーションした。結果、周波数f0付近の広い範囲で高い通過特性が得ることができ、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の臨界結合できている。
【0027】
次に、本発明者らは、上記周波数f0付近で臨界結合が得られている製品Aにおいて周波数0.1f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量のみを調整した給電システム1(以下これを製品Bとする)について、共鳴周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした。結果を図3に示す。同図に示すように、周波数0.1f0付近では、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の結合が強くなりすぎ、結果帯域が2分割され、帯域が狭くなってしまっている。
【0028】
さらに、本発明者らは、上記周波数f0付近で臨界結合が得られている製品Aにおいて周波数0.001f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量のみを調整した給電システム1(以下これを製品Cとする)について、周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性をシミュレーションした。結果を図4に示す。同図に示すように、周波数0.001f0付近では、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の結合が強くなりすぎ、もはや通過特性がほとんどない状態となっている。
【0029】
そこで、本発明者らは、給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の大きさや距離を変えずに給電側ヘリカルコイル33及び受電側ヘリカルコイル51の結合を調整できる方法を検討すべく、製品Bについて周波数0.1f0付近でのインピーダンス特性をシミュレーションしてみた。結果を図5に示す。また、本発明者らは製品Cについて周波数0.001付近でのインピーダンス特性をシミュレーションした。結果を図6に示す。
【0030】
同図に示すように、製品Bにおいては周波数0.1f0付近でインピーダンスが50Ω(図5中の1=50Ω)よりも低くなっていることが分かった。また、製品Cにおいては周波数0.001f0付近でのインピーダンスが50Ω(図6中の1=50Ω)よりもかなり低くなっていることが分かった。
【0031】
そこで、本発明者らは、給電部3及び受電部5の特性インピーダンスが27ΩになるようにDC/AC変換器31、AC/DC変換器53のインピーダンスを調整し、周波数0.1f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量が調整された給電システム1(製品D)について周波数0.1f0付近での通過特性及び反射特性とインピーダンス特性とをシミュレーションした。結果を図7及び図8に示す。なお、製品Aの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51と製品Dの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51とは、その大きさ、コイル間距離が互いに同じである。同図からも明らかなように、特性インピーダンスを下げることにより臨界結合が得られることが分かった。
【0032】
また、本発明者らは、給電部3及び受電部5のインピーダンスが0.3ΩになるようにDC/AC変換器31、AC/DC変換器53のインピーダンスを調整し、周波数0.01f0が共鳴周波数となるようにコンデンサC1、C2の容量が調整された給電システム1(製品E)について周波数0.001f0付近での通過特性及び反射特性とインピーダンス特性とをシミュレーションした。結果を図9及び図10に示す。なお、製品Aの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51と製品Dの給電側、受電側ヘリカルコイル33、51とは、その大きさ、コイル間距離が互いに同じである。同図からも明らかなように、特性インピーダンスを下げることにより臨界結合が得られることが分かった。
【0033】
即ち、本発明者らは、給電部3及び受電部5のインピーダンスを調整すると給電側、受電側ヘリカルコイル33、51の結合状態が調整できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0034】
そこで、給電システム1を設計する際には、DC/AC変換器31及びAC/DC変換器53のインピーダンスを調整することによって、図11に示すように所望の共鳴周波数が小さくなるほど給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように設計している。具体的には、DC/AC変換器31及びAC/DC変換器53に内蔵されたコンデンサの容量やコイルのインダクタを調整している。ここでは、DC/AC変換器31及びAC/DC変換器53で用いられるコンデンサやコイルとしては、臨界結合が得られるような容量やインダクタに固定されたコンデンサやコイルを用いているが、容量やインダクタが可変な可変コンデンサや可変コイルを用いて、容量やインダクタを調整してもよい。
【0035】
また、特性インピーダンスが50Ωを超える周波数では給電側ループアンテナ32と給電側ヘリカルコイル33との距離、受電側ループアンテナ52と受電側ヘリカルコイル51との距離を調整することで臨界結合を得るように調整する。特性インピーダンスが50Ωでなくなったことにより、従来の高周波回路とのインタフェースが問題となるが、その場合のインピーダンス変換方式にはλ/4伝送線路を用いたもの、L/Cの回路を用いたもの、トランスを用いたものなど各種技術ががあり、これらを組み合わせることで回路のインタフェースは実現可能である。
【0036】
上述した実施形態によれば、給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように調整するので、コイルの大きさや距離を調整しなくても所望の共鳴周波数で臨界結合を実現し、広帯域に渡り高い伝送効率を得ることができる。
【0037】
なお、上述した実施形態によれば、DC/AC変換器31、AC/DC変換器53のインピーダンスを調整していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、給電部3及び受電部5にそれぞれコンデンサやコイルから成る整合器を設けて、整合器のインピーダンスを調整することにより、給電部3及び受電部5の共鳴周波数が小さくなるほど給電部3及び受電部5のインピーダンスが小さくなるように設計してもよい。
【0038】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 給電システム
3 給電部(給電手段)
5 受電部(受電手段)
33 給電側ヘリカルコイル(給電側コイル)
31 DC/AC変換器(直流/交流変換器)
53 AC/DC変換器(交流/直流変換器)
51 受電側ヘリカルコイル(受電側コイル)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給される給電側コイルを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルから受電する受電側コイルを有する受電手段と、を備えた給電システムの設計方法であって、
前記給電側コイル及び前記受電側コイルの大きさ及びコイル間距離を変えずに前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計する
ことを特徴とする給電システムの設計方法。
【請求項2】
前記給電手段は、直流電力を交流電力に変換して、前記給電側コイルに供給する直流/交流変換器を有し、前記受電手段は、前記受電側コイルが受電した交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換器を有する前記給電システムの設計方法であって、
前記直流/交流変換器及び前記交流/直流変換器のインピーダンスを調整することにより、前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計する
ことを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法。
【請求項3】
前記給電手段及び前記受電手段はそれぞれ、前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスを調整する整合器を有する前記給電システムの設計方法であって、
前記整合器のインピーダンスを調整することにより、前記給電手段及び前記受電手段の共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計する
ことを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法。
【請求項1】
電力が供給される給電側コイルを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルから受電する受電側コイルを有する受電手段と、を備えた給電システムの設計方法であって、
前記給電側コイル及び前記受電側コイルの大きさ及びコイル間距離を変えずに前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計する
ことを特徴とする給電システムの設計方法。
【請求項2】
前記給電手段は、直流電力を交流電力に変換して、前記給電側コイルに供給する直流/交流変換器を有し、前記受電手段は、前記受電側コイルが受電した交流電力を直流電力に変換する交流/直流変換器を有する前記給電システムの設計方法であって、
前記直流/交流変換器及び前記交流/直流変換器のインピーダンスを調整することにより、前記給電側コイル及び前記受電側コイルの共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計する
ことを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法。
【請求項3】
前記給電手段及び前記受電手段はそれぞれ、前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスを調整する整合器を有する前記給電システムの設計方法であって、
前記整合器のインピーダンスを調整することにより、前記給電手段及び前記受電手段の共鳴周波数が小さくなるほど前記給電手段及び前記受電手段のインピーダンスが小さくなるように設計する
ことを特徴とする請求項1に記載の給電システムの設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−21862(P2013−21862A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154733(P2011−154733)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
[ Back to top ]