説明

給電システム

【課題】本発明の目的は、電力の伝送効率を低下させることなく、軽量化を図ることができる給電システムを提供することにある。
【解決手段】給電システム1は、電力が供給される給電側コイル7と、該給電側コイルと対向すると電磁誘導して給電側コイルからの電力を受電する受電側コイル8と、を備え、表皮効果が発生するような高周波の電力が供給される。給電側コイル及び受電側コイルのうち少なくとも一方を構成する導線A、B、A´の断面形状が、正方形、長方形又は楕円形に形成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システムに係り、特に、電力が供給される給電側コイルと、該給電側コイルと対向すると電磁共鳴して給電側のコイルからの電力を受電する受電側コイルと、を備えた給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した給電システムとして、例えば図1、図2及び図7に示すものが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1、非特許文献2参照)。図1、図2に示すように、給電システム1は、給電部3と、受電部5と、を備えている。上記給電部3は、電力が供給される給電側ループアンテナ6と、給電側ループアンテナ6に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ6に電磁結合された給電側コイル7と、該給電側コイル7の両端に接続されたキャパシタC1と、を備えている。給電側ループアンテナ6に電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側コイル7に送られる。
【0003】
受電部5は、給電側コイル7に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側コイル8と、この受電側コイル8に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され当該受電側コイル8に電磁結合された受電側ループアンテナ9と、受電側コイル8の両端に接続されたキャパシタC2と、を備えている。給電側コイル7に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側コイル8にワイヤレスで送られる。さらに、受電側コイル8に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ9に送られ、この受電側ループアンテナ9に接続されたバッテリなどの負荷10に供給される。そして、上述した受電部5を自動車4に設け、給電部3を道路2などに設けることにより、上述した給電システム1を利用してワイヤレスで自動車4に搭載された負荷に電力を供給することが考えられている。
【0004】
キャパシタC1、C2は、この共鳴周波数を調整するためのものであり、巻線数Nに応じて所望の共鳴周波数f0が得られるような値に設定されている。
【0005】
このような構成の給電システム1において、給電部3から受電部5へ伝送される電力は、磁束の大きさで決定される。即ち、磁束が大きいほど、伝送される電力が大きくなる。また、磁束の大きさは、給電側及び受電側ループアンテナ6、9、給電側及び受電側コイル7、8に流れる電流の大きさで決定される。即ち、給電側及び受電側ループアンテナ6、9、給電側及び受電側コイル7、8に流れる電流が大きいほど、磁束が大きくなる。従って、伝送される電力を大きくする為には、給電側、受電側コイル7、8に流れる電流を大きくすれば良い。
【0006】
給電側及び受電側コイル7、8は、図7の断面図に示すように、例えば、直径φ=5mmの断面正円形の銅線Cを巻いて構成されている。このように、給電システム1は、銅線Cに流れる電流を大きくするために、該銅線Cの断面積を大きくすることで、電力の伝送効率の向上を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−97263号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】A.Kurs,A.Karalis,R.Moffatt,J.D.Joannopoulos,P.Fisher,M.Soljacic"Wireless power transfer via strongly coupled magnetic resonances",science,Vol.317,pp.83-86,July6,2007
【非特許文献2】M.Soljacic,A.Karalis,J.Joannopoulos,A.Kurs,R.Moffatt,P.FisheR,"電力を無線伝送する技術を開発 実験で60Wの電球を点灯"、日経エレクトロニクス,3Dec.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の給電システム1は、銅線Cの断面積を大きくしていたので、給電側及び受電側コイル7、8の重量が増加してしまう、という問題があった。即ち、銅線Cの断面積を小さくすると、電力の伝送効率が低下し、逆に、伝送効率を向上させるために銅線Cの断面積を大きくすると、給電側及び受電側コイル7、8の重量、即ち給電システム1の重量が増加してしまい、電力の伝送効率を低下させることなく、給電システム1を軽量化することが困難であった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、電力の伝送効率を低下させることなく、軽量化を図ることができる給電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための請求項1記載の本発明は、電力が供給される給電側コイルと、該給電側コイルと対向すると電磁誘導して前記給電側のコイルからの電力を受電する受電側コイルと、を備え、表皮効果が発生するような高周波の電力が供給される給電システムにおいて、前記給電側コイル及び前記受電側コイルのうち少なくとも一方を構成する導線の断面形状が正方形、長方形又は楕円形に形成されたことを特徴とする給電システムである。
【0012】
請求項2記載の本発明は、電力が供給される給電側ループアンテナと、該給電側ループアンテナに電磁結合される給電側コイルと、該給電側コイルに対向すると電磁誘導して前記給電側のコイルからの電力を受電する受電側コイルと、該受電側コイルに電磁結合され、前記受電側コイルからの電力を受電する受電側ループアンテナと、を備え、表皮効果が発生するような高周波の電力が供給される給電システムにおいて、前記給電側ループアンテナ、前記給電側コイル、前記受電側コイル、及び前記受電側ループアンテナのうち少なくとも一つを構成する導線の断面形状が、正方形、長方形又は楕円形に形成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2記載の給電システムにおいて、前記導線は、その断面における長方形の短辺又は楕円形の短軸が、前記給電側コイルと前記受電側コイルとの対向方向に沿って配置され、前記導線の断面における長方形の長辺又は楕円形の長軸が、前記対向方向に直交する方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の本発明によれば、表皮効果が発生すると、導線の表面にしか電流が流れず、内部には流れなくなる。このために、導線の抵抗は、導線の断面積ではなく、導線の断面の周囲長に反比例する。よって、給電側コイル及び受電側コイルのうち少なくとも一方を構成する導線の断面形状を、正方形、長方形又は楕円形に形成することにより、断面の周囲長が等しい断面正円形の導線よりも、断面積を小さくできるので、電力の伝送効率を低下させることなく、軽量化を図ることができる。
【0015】
請求項2記載の本発明によれば、表皮効果が発生すると、導線の表面にしか電流が流れず、内部には流れなくなる。このために、導線の抵抗は、導線の断面積ではなく、導線の断面の周囲長に反比例する。よって、給電側ループアンテナ、給電側コイル、受電側コイル、及び受電側ループアンテナのうち少なくとも一つを構成する導線の断面形状を、正方形、長方形又は楕円形に形成することにより、断面の周囲長が等しい断面正円形の導線よりも、断面積を小さくできるので、電力の伝送効率を低下させることなく、軽量化を図ることができる。
【0016】
請求項3記載の本発明によれば、導線は、その断面における長方形の短辺又は楕円形の短軸が、給電側コイルと受電側コイルとの対向方向に沿って配置され、導線の断面における長方形の長辺又は楕円形の長軸が、対向方向に直交する方向に沿って配置されているので、この導線を用いて構成された受電側コイルを自動車に搭載すると、受電側コイルの対向方向に沿う自動車の高さ方向の寸法が抑えられ、これにより、自動車の車内スペースを大きく確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる給電システムの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す給電システムを採用して、自動車に搭載された負荷に電力を供給する様子を示す図である。
【図3】図1に示された給電システムを構成する給電側コイル及び受電側コイルを構成する導線の断面図である。
【図4】図3に示された給電側コイル及び受電側コイルを構成する導線の変形例を示す断面図である。
【図5】銅線の周囲長を統一した、断面長方形又は断面正方形状の銅線を用いて給電側、受電側コイルを設けた給電システムである本発明品と、断面正円形の銅線を用いて給電側、受電側コイルを設けた給電システムである従来品と、について周波数付近での伝送効率を示すグラフである。
【図6】図4に示された給電側コイル及び受電側コイルを構成する導線の他の変形例を示す断面図である。
【図7】従来の給電システムを構成する給電側コイル及び受電側コイルを構成する導線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の給電システムを図1〜図3、及び図5に基づいて説明する。図1に示すように、給電システム1は、給電部3と、受電部5と、を備えている。同図に示すように、給電システム1は、道路2上などに設けられた給電部3と、自動車4の腹部分などに設けられた受電部5と、を備えている。
【0019】
給電部3は、交流電力が供給される給電側ループアンテナ6と、該給電側ループアンテナ6に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ6に電磁結合された給電側コイル7と、給電側コイル7の両端に接続されたキャパシタC1と、を備えている。
【0020】
ここで、図1中の矢印Z方向は、給電側ループアンテナ6(後述する受電側ループアンテナ9)の中心軸方向であり、給電側ループアンテナ6(受電側ループアンテナ9)と給電側コイル7(後述する受電側コイル8)とが対向する対向方向、即ち鉛直方向を示している。また、図1中の矢印X方向は、矢印Z方向に直交する方向、即ち水平方向であり、給電側及び受電側アンテナ6、9、給電側及び受電側コイル7、8の径方向を示している。
【0021】
給電側ループアンテナ6は、導線を円ループ状に巻いて構成されていて、その中心軸が道路2から自動車4の腹部に向かう方向、即ち鉛直方向Zに沿って配置されている。この給電側ループアンテナ6の両端には、交流電源Vが接続されていて、この交流電源Vからの交流電力が供給されている。
【0022】
給電側コイル7は、銅線A(後述する)を円ループ状に巻いて構成されているが、本発明はこれに限ったものではなく、銅線Aをヘリカル状に巻いて構成されていてもよい。この給電側コイル7の両端には、図1に示すように、共鳴周波数調整用のキャパシタC1が接続されている。
【0023】
給電側ループアンテナ6と給電側コイル7とは、互いに電磁結合できる範囲内、即ち、給電側ループアンテナ6に交流電力が供給され、交流電流が流れると給電側コイル7に電磁誘導が発生するような範囲内で、互いに離間して設けられている。
【0024】
受電部5は、給電側コイル7に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側コイル8と、この受電側コイル8に対してその中心軸方向に対向するように配置され、受電側コイル8に電磁結合された受電側ループアンテナ9と、受電側コイル8の両端に接続されたキャパシタC2と、を備えている。
【0025】
受電側ループアンテナ9は、導線を円形のループ状に巻いて構成されていて、その中心軸Zが自動車4の腹部分から道路2に向かう方向、即ち鉛直方向Zに沿って配置されている。この受電側ループアンテナ9の両端には、負荷10が接続されている。また、本実施形態においては、上記受電側ループアンテナ9は、上述した給電側ループアンテナ6と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側ループアンテナ9の径が、上述した給電側ループアンテナ6の径よりも小さく設けられていてもよい。
【0026】
上記受電側コイル8は、銅線A(後述する)を円ループ状に巻いて構成されているが、本発明はこれに限ったものではなく、銅線Aをヘリカル状に巻いて構成されていてもよい。この受電側コイル8は、上述した給電側コイル7と同じ径に設けられているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、受電側コイル8の径が、上述した給電側コイル7の径よりも小さく設けられていても良い。
【0027】
上記受電側コイル8の両端には、図1に示すように、共鳴周波数調整用のキャパシタC2が接続されている。これらキャパシタC1、C2は、共鳴周波数を調整するために設けられていて、給電側、受電側コイル7、8の容量Cは、共鳴周波数が所望の共鳴周波数f0となる容量Csに設定されている。
【0028】
また、受電側ループアンテナ9と受電側コイル8とは、互いに電磁結合する範囲内、即ち、受電側コイル8に交流電流が流れると受電側ループアンテナ9に誘導電流が発生する範囲内に、互いに離間して設けられている。
【0029】
上述した給電システム1によれば、給電側コイル7と受電側コイル8とが電磁共鳴して給電部3から受電部5に非接触で電力を供給できる。
【0030】
詳しく説明すると、上記給電側ループアンテナ6に交流電流が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側コイル7に送られる。即ち、給電側コイル7には、給電側ループアンテナ6を介して電力が供給される。給電側コイル7に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側コイル8にワイヤレスで送られる。さらに、受電側コイル8に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ9に送られ、この受電側ループアンテナ9に接続された負荷10に供給される。
【0031】
給電側及び受電側コイル7、8は、図3の断面図に示すように、断面長方形の銅線Aから構成されている。銅線Aは、その断面における短辺が、鉛直方向Zに沿って配置されており、その長辺が、水平方向Xに沿って配置されている。
【0032】
この銅線Aは、その断面における短辺の寸法L1が、下記の式(1)で表される範囲内に設けられている。
L1>2δ=2/sprt(π×f×μ×σ) …(1)
δ:表皮厚、f:交流電源Vが供給する交流電力の周波数[Hz]、μ:導線の透磁率、σ:導線の導電率[1/Ωm]
【0033】
上述した本発明の給電側及び受電側コイル7、8を構成する銅線Aは、断面長方形に形成されていたが、本発明はこれに限ったものではなく、給電側及び受電側コイル7、8は、図4の断面図に示すように、一辺の寸法L2が、2/sqrt(π×電力の周波数×導線の透磁率×導線の誘電率)より大きく形成された断面正方形の銅線Bを巻いて構成されていてもよい。図4において、前述した実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
上述した実施形態によれば、上記式(1)を満たすような寸法に形成された銅線A、Bに、周波数fの電力が印加されると、表皮効果が発生し、このために、銅線A、Bの表面にしか電流が流れず、内部には流れなくなる。この銅線A、Bの断面において、電流が流れる部分の厚さt(=表皮厚δ)は、1/sqrt(π×f×μ×σ)で表すことができる。つまり、表皮効果が発生すると、電流は、厚さt(表皮厚δ)の面積である「電流が流れる部分の面積D」にしか流れなくなる。従って、表皮効果が発生すると、銅線A、Bの抵抗は、銅線A、Bの断面積ではなく、電流が流れる部分の面積D、即ち銅線A、Bの断面の周囲長に反比例する。よって、断面正方形、断面長方形又は断面楕円形の銅線A、Bは、断面の周囲長が等しい断面正円形の銅線Cよりも、断面積を小さくできるので、電力の伝送効率を低下させることなく、軽量化を図ることができる。
【0035】
また、銅線Aは、その断面における長方形の短辺が、鉛直方向Zに沿って配置されており、長方形の長辺が、水平方向Xに沿って配置されているので、この銅線Aを用いて構成された受電側コイル8を自動車に搭載すると、受電側コイル8の鉛直方向Zの寸法、即ち、自動車の高さ方向の寸法が抑えられ、これにより、自動車の車内スペースを大きく確保することができる。また、銅線Aをヘリカル状に巻いて構成された受電側コイルを用いた際には、電力の伝送効率を低下させることなく受電側コイルの鉛直方向Zの寸法をさらに小さくすることができ、これにより、受電側コイルの鉛直方向Zの寸法、即ち、自動車の高さ方向の寸法がより一層抑えられ、自動車の車内スペースをより一層大きく確保することができる。
【0036】
次に、上述した本発明の効果について、断面長方形の銅線Aと、本発明の断面正方形の銅線Bと、従来の断面正円形の銅線Cと、を比較して詳しく説明する。銅線A、B、Cは、その断面における周囲長が同じに形成されている。
【0037】
断面正方形の銅線Bと断面正円形の銅線Cを比較すると、銅線Bの断面積は、銅線Cの断面積よりも小さく、銅線Bと銅線Cは、周波数fの電力が印加された際に、電流が流れる部分の面積Dが等しい。つまり、本発明の断面正方形の銅線Bは、従来の断面正円形の銅線Cとおなじ伝送効率を保ちつつ、断面積が小さくなった分、軽量化を図ることができる。
【0038】
また、断面長方形の銅線Aと断面正方形の銅線Bを比較すると、銅線Aの断面積は、銅線Bの断面積よりも小さく、銅線Aと銅線Bは、周波数fの電力が印加された際に、電流が流れる部分の面積Dが等しい。例えば、銅線A、Bの断面における周囲長を24mmに固定し、この銅線A、Bの鉛直方向Zに沿う辺の寸法と、水平方向Xに沿う辺の寸法を種々変更した場合に、銅線A、Bの断面積は、断面形状が正方形(6×6mm)のときに最大となり、断面形状が長方形(1×11mm)のときに最小となり、断面形状が長方形(1×11mm)の銅線Aの断面積は、銅線Bの断面積の1/3以下となる。つまり、銅線の断面形状を、正方形から長方形に、薄く延ばした形状にすることで、本発明の断面長方形の銅線Aは、断面正方形の銅線Bとおなじ伝送効率を保ちつつ、断面積が小さくなった分、軽量化を図ることができる。
【0039】
次に、本発明の発明者らは、銅線A、B、Cの断面における周囲長=24mmに統一した、断面長方形の銅線Aを用いて給電側、受電側コイル7、8を設けた給電システム1である本発明品A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8と、一辺の寸法が6mmに形成された断面正方形の銅線Bを用いて給電側、受電側コイル7、8を設けた給電システム1である本発明品Bと、直径φ=7.6mm(周囲長≠24mm)の断面正円形の銅線Cを用いて給電側、受電側コイル7、8を設けた給電システム1である従来品と、について周波数f0付近での伝送効率S212をシミュレーションした。結果を図5に示す。なお、本発明品A1〜本発明品A8においては、鉛直方向Zの寸法を、1mm、2mm、3mm、4mm、8mm、9mm、10mm、11mmとして、水平方向Xの寸法を、11mm、10mm、9mm、8mm、4mm、3mm、2mm、1mmとした、断面長方形の銅線Aを用いた。
【0040】
同図からも明らかなように、周波数f0での伝送効率S212は、本発明品A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、本発明品B、従来品とも96%程で、その差は、0.5%程度以内であり、周波数f0での伝送効率S212は、ほとんど等しいといえる。即ち、本発明品A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8、及び本発明品Bは、従来品と同じ伝送効率S212を保ちつつ、断面積が小さくなった分、軽量化できることがわかった。
【0041】
なお、上述した実施形態では、給電側、受電側コイル7、8は、断面長方形の銅線A、又は断面正方形の銅線Bで構成されていたが、本発明はこれに限ったものではなく、図6の断面図に示すように、給電側、受電側コイル7、8は、断面楕円形の銅線A´で構成され、該銅線A´の断面における短軸の寸法L3が、2/sqrt(π×電力の周波数×導線の透磁率×導線の誘電率)より大きく形成されていてもよい。銅線A´は、その短軸が、鉛直方向Zに沿って配置されており、その長軸が、水平方向Xに沿って配置されていてもよい。図6において、前述した実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
上述した実施形態によれば、給電側、受電側コイル7、8は、断面楕円形の銅線A´で構成され、該銅線A´の断面における短軸の寸法L3が、2/sqrt(π×電力の周波数×導線の透磁率×導線の誘電率)より大きく形成されているので、断面楕円形の銅線A´は、断面の周囲長が等しい断面正円形の導線Cよりも、断面積を小さくできるので、電力の伝送効率を低下させることなく、軽量化を図ることができる。
【0043】
また、銅線A´は、その断面における楕円形の短軸が、鉛直方向Zに沿って配置されており、楕円形の長軸が、水平方向Xに沿って配置されているので、この銅線A´を用いて構成された受電側コイル8を自動車に搭載すると、受電側コイル8の鉛直方向Zの寸法、即ち、自動車の高さ方向の寸法が抑えられ、これにより、自動車の車内スペースを大きく確保することができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、銅線A(銅線A´)は、その短辺(短軸)が、鉛直方向Zに沿って配置されており、その長辺(長軸)が、水平方向Xに沿って配置されているが、本発明はこれに限ったものではなく、銅線A(銅線A´)は、その長辺(長軸)が、鉛直方向Zに沿って配置されており、その短辺(短軸)が、水平方向Xに沿って配置されていてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、給電側、受電側コイル7、8のみ銅線A、B、A´で構成していたが、本発明はこれに限ったものではない。給電側ループアンテナ6や受電側ループアンテナ9についても断面長方形の銅線A、断面正方形の銅線B、断面楕円形の銅線A´で構成してもよい。このように、給電側、受電側ループアンテナ6、9を銅線A、B、A´で構成することにより、さらなる軽量化を図ることができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、導線として、銅線A、B、A´が用いられていたが、本発明はこれに限ったものではない。導線は、例えば、銅以外の、例えば、アルミニウムや鉄などの金属から構成されていてもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、給電側、受電側コイル7、8の両方や給電側ループアンテナ6、9の両方を銅線A、B、A´で構成していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば車両の軽量化を図るために、受電側コイル8、受電側ループアンテナ9の両方のみ銅線A、B、A´から構成しても良い。
【0048】
また、上述した実施形態では、給電側、受電側ループアンテナ6、9を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。本発明は、給電側、受電側ループアンテナ6、9を必須とするものではなく、給電側、受電側ループアンテナ6、9についてはなくてもよい。また、上述した実施形態では、キャパシタC1、C2を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。本発明は、キャパシタC1、C2を必須とするものではなく、キャパシタC1、C2についてはなくてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 給電システム
6 給電側ループアンテナ
7 給電側コイル
8 受電側コイル
9 受電側ループアンテナ
A 断面長方形の導線(銅線)
B 断面正方形の導線(銅線)
A´ 断面楕円形の導線(銅線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給される給電側コイルと、該給電側コイルと対向すると電磁誘導して前記給電側のコイルからの電力を受電する受電側コイルと、を備え、
表皮効果が発生するような高周波の電力が供給される給電システムにおいて、
前記給電側コイル及び前記受電側コイルのうち少なくとも一方を構成する導線の断面形状が正方形、長方形又は楕円形に形成されたことを特徴とする給電システム。
【請求項2】
電力が供給される給電側ループアンテナと、該給電側ループアンテナに電磁結合される給電側コイルと、該給電側コイルに対向すると電磁誘導して前記給電側のコイルからの電力を受電する受電側コイルと、該受電側コイルに電磁結合され、前記受電側コイルからの電力を受電する受電側ループアンテナと、を備え、
表皮効果が発生するような高周波の電力が供給される給電システムにおいて、
前記給電側ループアンテナ、前記給電側コイル、前記受電側コイル、及び前記受電側ループアンテナのうち少なくとも一つを構成する導線の断面形状が、正方形、長方形又は楕円形に形成されたことを特徴とする給電システム。
【請求項3】
前記導線は、その断面における長方形の短辺又は楕円形の短軸が、前記給電側コイルと前記受電側コイルとの対向方向に沿って配置され、
前記導線の断面における長方形の長辺又は楕円形の長軸が、前記対向方向に直交する方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−89872(P2013−89872A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230929(P2011−230929)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)