説明

給電システム

【課題】共鳴周波数を決める受電側コンデンサのばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制した給電システムを提供する。
【解決手段】給電部3が、電力が供給される給電側コイル32と、給電側コイル32の両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサC1を有する。受電部5が、給電側コイル32と電磁共鳴して給電側コイル32からの電力を受電する受電側コイル51と、受電側コイル51の両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサC2を有する。給電側コンデンサC1が、その容量が可変に設けられた可変コンデンサから構成され、受電部5が、受電側コンデンサC1の容量を送信する受電側通信アンテナ54をさらに有し、給電部3が、受電側通信アンテナ54からの受電側コンデンサC2の容量を受信する受電側通信アンテナ33と、受信した受電側コンデンサC2の容量に応じて給電側コンデンサC1の容量を調整する容量調整部34と、をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電システムに係り、特に、電力が供給される給電側コイル及び前記給電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルからの電力を受電する受電側コイル及び前記受電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサを有する受電手段と、を備えた給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述した給電システムとして、例えば図1に示すものが知られている(例えば非特許文献1)。同図に示すように、給電システム1は、給電手段としての給電部3と、受電手段としての受電部5と、を備えている。上記給電部3は、電力が供給される給電側ループアンテナ31と、給電側ループアンテナ31に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ31に電磁結合された給電側コイル32と、給電側コイル32の両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサC1と、を有している。上記給電側ループアンテナ31に電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側コイル32に送られる。
【0003】
上記受電部5は、給電側コイル32に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置されると電磁共鳴する受電側コイル51と、この受電側コイル51に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され当該受電側コイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、受電側コイル51の両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサC2と、が設けられている。給電側コイル32に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側コイル51にワイヤレスで送られる。
【0004】
さらに、受電側コイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られ、この受電側ループアンテナ52に接続されたバッテリやランプなどの負荷に供給される。上記給電側コンデンサC1、受電側コンデンサC2の容量は、給電側ループアンテナ31に供給される交流電力の周波数で共鳴するような所望の容量Csに設定されている。上述した給電システム1によれば、給電側コイル32と受電側コイル51との電磁共鳴により非接触で給電側から受電側に電力を供給することができる。
【0005】
しかしながら、上述した従来技術の給電システム1では、製品によっては共鳴周波数f0での伝送効率が低下してしまうものがある、という問題があった。この原因について発明者らが鋭意探求した結果、図7に示すグラフからも明らかなように、給電側、受電側コンデンサC1、C2のばらつきが原因であることが分かった。一般に市販のコンデンサはその容量が±5%程度が補償されているので、コンデンサC1、C2のバラツキとしては、この程度が見込まれる。図7は、受電側コンデンサC2の容量が所望の容量Csの場合、所望の容量Csから±3%、±5%ばらついた場合の交流電力の周波数f0付近の伝送効率についてシミュレーションした結果である。なお、図7において、給電側コンデンサC1は所望の容量Csで誤差が無いものとしている。
【0006】
同図からも明らかなように、受電側コンデンサC2の容量CIIが所望の容量Csで誤差がなく、給電部3と受電部5との共鳴周波数が一致する場合、共鳴周波数f0での伝送効率は97%以上ある。これに対して、受電側コンデンサC2の容量CIIに±3%の誤差があり、給電部3と受電部5との共鳴周波数がずれた場合、共振周波数f0での伝送効率は94%以下に低下し、±5%の誤差があり、給電部3と受電部5との共鳴周波数がさらにずれた場合、共振周波数f0での伝送効率は89%以下に低下してしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M.Soljacic,A.Karalis,J.Joannopoulos,A.Kurs,R.Moffatt,P.fisgeR,"電力を無線伝送する技術を開発 実験で60Wの電球を点灯“、日経エレクトロニクス,3Dec.2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、共鳴周波数を決める受電側コンデンサのばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制した給電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、電力が供給される給電側コイル及び前記給電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルからの電力を受電する受電側コイル及び前記受電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサを有する受電手段と、を備えた給電システムにおいて、前記給電側コンデンサが、その容量が可変に設けられた可変コンデンサから構成され、前記受電手段が、前記受電側コンデンサの容量を送信する送信手段をさらに有し、前記給電手段が、前記送信手段からの前記受電側コンデンサの容量を受信する受信手段と、前記受信した前記受電側コンデンサの容量に応じて前記可変コンデンサの容量を調整する容量調整手段と、をさらに有することを特徴とする給電システムに存する。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記容量調整手段が、前記受信した前記受電側コンデンサの容量に基づいて前記給電手段と前記受電手段との共鳴周波数が一致するように前記受電側コンデンサの容量を調整することを特徴とする請求項1に記載の給電システムに存する。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記給電手段が、所望の周波数で伝送効率が最大となる前記受電側コンデンサの容量と前記給電側コンデンサの容量との関係を記憶する記憶手段をさらに有し、前記容量調整手段が、前記記憶手段に記憶された関係から前記受信した前記受電側コンデンサの容量に対応する前記給電側コンデンサの容量を求め、求めた容量となるように前記可変コンデンサの容量を調整することを特徴とする請求項1に記載の給電システムに存する。
【0012】
請求項4記載の発明は、電力が供給される給電側コイル及び前記給電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルからの電力を受電する受電側コイル及び前記受電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサを有する受電手段と、を備えた給電システムにおいて、前記給電側コンデンサが、その容量が可変に設けられた可変コンデンサから構成され、前記受電手段が、前記受電側コイルが受電した電力レベルを測定する測定手段と、前記測定手段により測定された電力レベルを送信する送信手段をさらに有し、前記給電手段が、前記送信手段からの前記電力レベルを受信する受信手段と、前記受信した前記電力レベルに応じて前記可変コンデンサの容量を調整する容量調整手段と、をさらに有することを特徴とする給電システムに存する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、給電側コンデンサを可変コンデンサから構成し、給電手段側の容量調整手段が、受電手段側から送信された受電側コンデンサの容量に応じて可変コンデンサの容量を調整するので、受電側コンデンサの容量にばらつきがあっても給電側コンデンサをそれに応じた値に調整でき、受電側コンデンサの容量のばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制することができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、容量調整手段が、受信した受電側コンデンサの容量に基づいて給電手段と受電手段との共鳴周波数が一致するように受電側コンデンサの容量を調整するので、受電側コンデンサの容量にばらつきがあっても給電手段と受電手段との共鳴周波数を一致するように給電側コンデンサの容量を調整でき、受電側コンデンサの容量のばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、受電側コンデンサの容量にばらつきがあっても容量調整手段により所望の周波数で伝送効率が最大となるように給電側コンデンサの容量を調整することができ、受電側コンデンサの容量のばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制することができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、受電側コンデンサの容量にばらつきがあっても容量調整手段により所望の周波数で伝送効率が最大となるように給電側コンデンサの容量を調整することができ、受電側コンデンサの容量のばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の給電システムを示す概略図である。
【図2】第1及び第2実施形態における図1に示す給電部、受電部の詳細構成図である。
【図3】第1実施形態の給電システムにおいて、受電側コンデンサC1の容量CIIが所望の容量Csで給電側コンデンサC1の容量CIもCsに調整された場合、受電側コンデンサC1の容量CIIがCs±3%、Cs±5%で給電側コンデンサC1の容量CIもCs±3%、Cs±5%で調整された場合、それぞれについて発振回路の周波数f0付近での伝送効率をそれぞれシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図4】所望の周波数f0で伝送効率が最大となる給電側コンデンサの容量と受電側コンデンサの容量との関係を示すテーブルの概念図である。
【図5】第2及び第3実施形態の給電システムにおいて、受電側コンデンサC1の容量CIIが所望の容量Cs、Cs±3%、Cs±5%とばらついた場合それぞれについての発振回路の周波数f0付近での伝送効率をそれぞれシミュレーションした結果を示すグラフである。
【図6】第3実施形態における図1に示す給電部、受電部の詳細構成図である。
【図7】受電側コンデンサの容量が所望の容量Csの場合、Cs±3%の場合、Cs±10%の場合、それぞれについて交流電力の周波数f0での伝送効率をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態における給電システムを図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明の給電システムを示す概略図である。図2は、第1実施形態及び第2実施形態における図1に示す給電部、受電部の詳細構成図である。なお、図1に示す給電部3は、給電側ループアンテナ31、給電側コイル32、給電側コンデンサC1以外は省略され、受電部5は、受電側コイル51、受電側ループアンテナ52、受電側コンデンサC2以外は省略されている。図1に示すように、給電システム1は、道路2上などに設けられた給電部3と、自動車4の腹部分などに設けられた受電部5と、を備えている。
【0019】
上記給電部3は、図1及び図2に示すように、交流電力が供給される給電側ループアンテナ31と、給電側ループアンテナ31に対してその中心軸方向に対向するように離間して配置され、給電側ループアンテナ31に電磁結合された給電側コイル32と、給電側コイル32の両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサC1と、が設けられている。
【0020】
上記給電側ループアンテナ31は、図1に示すように、導線を円ループ状に巻いて構成されていて、その軸が道路2から自動車4の腹部分に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。この給電側ループアンテナ31の両端には、図2に示すように、発振回路Vが接続されていて、この発振回路Vから交流電力が供給されている。上記給電側コイル32は、例えば巻線をコイル状に巻いて構成されている。給電側コイル32は、上記給電側ループアンテナ31の自動車4側に、給電側ループアンテナ31と同軸上に配置されている。
【0021】
給電側ループアンテナ31と給電側コイル32とは、互いに電磁結合する範囲内、即ち、給電側ループアンテナ31に交流電力が供給されて、交流電流が流れると給電側コイル32に誘導電流が発生するような範囲内で、互いに離間して設けられている。上記給電側コンデンサC1は、両端に印加される電圧に応じて容量が変化するダイオードから構成されるいわゆるバラクタ(可変コンデンサ)から構成されている。
【0022】
上記受電部5は、給電側コイル32と電磁共鳴する受電側コイル51と、この受電側コイル51に電磁結合された受電側ループアンテナ52と、受電側コイル51の両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサC2と、が設けられている。上記受電側ループアンテナ51には、図2に示すように、車載バッテリやランプなどの負荷6が接続されている。また、受電側ループアンテナ51は、ループ状に設けられていて、その軸が自動車4の腹部分から道路2に向かう方向、即ち鉛直方向に沿うように配置されている。
【0023】
上記受電側コイル51は、給電側コイル32と同一に設けられている(即ち、同一材料、同一形状、同一の大きさに設けられている)。また、受電側コイル51は、図1に示すように、上記受電側ループアンテナ52の道路2側に、受電側ループアンテナ52と同軸上に配置されている。受電側ループアンテナ52と受電側コイル51とは、互いに電磁結合する範囲内、即ち、受電側コイル51に交流電流が流れると受電側ループアンテナ52に誘導電流が発生する範囲内に、互いに離間して設けられている。上記受電側コンデンサC2は、発振回路Vから出力される交流電力の周波数(=所望の周波数)f0で共鳴するような容量のものを用いている。
【0024】
上述した給電システム1によれば、自動車4が給電部3に近づいて給電側コイル32と受電側コイル51とが軸方向に間隔を空けて対向したときに、給電側コイル32と受電側コイル51とが電磁共鳴して給電部3から受電部5に非接触で電力を供給できる。
【0025】
詳しく説明すると、上記給電側ループアンテナ31に交流電力が供給されると、その電力が電磁誘導により給電側コイル32に送られる。給電側コイル32に電力が送られると、その電力が磁界の共鳴によって受電側コイル51にワイヤレスで送られる。さらに、受電側コイル51に電力が送られると、その電力が電磁誘導によって受電側ループアンテナ52に送られて、この受電側ループアンテナ52に接続された負荷6に供給される。
【0026】
また、上述した受電部5には、受電側コンデンサC2の容量CIIを測定する容量測定部53と、この容量測定部53が測定した受電側コンデンサC2の容量CIIを送信する送信手段としての受電側通信アンテナ54と、がさらに設けられている。上記容量測定部53は、受電側コンデンサC2及び受電側ループアンテナ52からなるLC並列回路に交流の小電流を供給する周波数可変の電流源(図示せず)と、給電側ループアンテナ31に生じる電圧を測定する電圧測定部(図示せず)と、を有している。
【0027】
容量測定部53は、図示しない電流源を制御してLC並列回路に供給する小電流の周波数を変動させ、図示しない電圧測定部を用いて給電側ループアンテナ31に生じる電圧を測定する。容量測定部53は、LC並列回路が共振してインピーダンスが無限大となり、電圧測定部により検出された電圧がほぼ0になったとき、そのときの小電流の周波数をLC並列回路の共振周波数fresとする。受電側コイル51のインダクタンスLがわかっていれば下記の式(1)から受電側コンデンサC2の容量CIIを求めることができる。容量測定部53は、受電側コンデンサC2の容量CIIを求めると、求めた容量を受電側通信アンテナ54から送信する。
fres=1/(2πsqrt(LCII)) …(1)
【0028】
また、上述した給電部3は、受電側通信アンテナ54からの受電側コンデンサC2の容量CIIを受信する受信手段としての給電側通信アンテナ33と、受信した受電側コンデンサC2の容量CIIに応じて給電側コンデンサC1の容量CIを調整する容量調整部34と、が設けられている。容量調整部34は、受電側通信アンテナ54から送信された受電側コンデンサC2の容量CIIと同一になるように給電側コンデンサC1の容量CIを調整する(CI=CII)。上述したように給電側コイル32と受電側コイル51とは同一のものを用いているので、給電側コンデンサC1、受電側コンデンサC2の容量CI、CIIを同一にすれば、給電部3と受電部5との共鳴周波数を一致させることができる。
【0029】
上述した給電システム1の動作を説明する。例えば、給電部3の容量調整部34は、給電側通信アンテナ33から容量送信要求を間欠的に送信させている。自動車4が道路2に設けた給電部3上に停車すると、上記自動車4に搭載された受電側通信アンテナ54が容量送信要求を受信する。容量送信要求を受信すると、受電部5の容量測定部53は、上述したように受電側コンデンサC2の容量CIIを測定して受電側通信アンテナ54から送信する。給電側通信アンテナ33が受電側コンデンサC2の容量CIIを受信すると、容量調整部34は受信した受電側コンデンサC2の容量CIIと同一になるように給電側コンデンサC1の容量を調整した後、発振回路Vによる交流電流を給電側ループアンテナ31に供給して、非接触給電を開始する。
【0030】
上述した給電システム1によれば、給電側コンデンサC1をバラクタなどの可変コンデンサから構成し、容量調整部34が、受信した受電側コンデンサC2の容量CIIと同じ値になるように給電側コンデンサC1の容量CIを調整して、給電部3と受電部5との共鳴周波数を一致させるので、受電側コンデンサC2の容量CIIにばらつきがあっても給電部3と受電部5との共鳴周波数を一致させることができ、受電側コンデンサC2の容量CIIのばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制することができる。また、道路2などのインフラに設置される給電部3側の給電側コンデンサC1の容量を調整して、自動車4に搭載される受電部5側の受電側コンデンサC2は固定にすることにより、軽量化が求められる自動車4側の受電部5に容量調整部34を搭載する必要がなくなる。
【0031】
次に、本発明者らは、図1及び図2に示す給電システム1において、受電側コンデンサC1の容量CIIが所望の容量Csで給電側コンデンサC1の容量CIも所望の容量Csに調整された場合、受電側コンデンサC1の容量CIIがCs±3%、Cs±5%で給電側コンデンサC1の容量CIもCs±3%、Cs±5%で調整された場合について、発振回路Vの周波数f0付近での伝送効率をそれぞれシミュレーションした。結果を図3に示す。なお、所望の容量Csとは、給電側コイル32、受電側コイル51の共鳴周波数が発振回路Vから出力される交流電力の周波数f0(=所望の周波数)となるような容量である。
【0032】
図3と図6との比較からも明らかなように、受電側コンデンサC2の容量CIIが所望の容量Csに対して±3%の誤差が生じた場合、従来の給電システム1では伝送効率が94%以下に低下してしまったのに対し、本発明の給電システム1においては96%以上得ることができた。また、受電側コンデンサC2の容量CIIが所望の容量Csに対して±5%の誤差が生じた場合、従来の給電システム1では伝送効率が従来の給電システム1においては伝送効率が89%以下に低下してしまったのに対し、本発明の給電システム1においては92%以上得ることができた。
【0033】
なお、上述した第1実施形態においては、容量調整部34は、受電側コンデンサC2の容量CIIと同じ値になるように給電側コンデンサC1の容量CIを調整して、給電部3と受電部5との共鳴周波数を一致させていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、給電側コイル32と受電側コイル51とが同一でない場合、例えば給電側コイル32の大きさが受電側コイル51よりも大きい場合などは、容量調整部34は、予め分かっている給電側コイル32及び受電側コイル51のインダクタンスの比と、送信された受電側コンデンサC2の容量CIIから給電部3と受電部5との共鳴周波数が一致するような給電側コイルC1の容量CIを求め、求めた容量CIに調整すればよい。
【0034】
第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態における給電システム1の構成は、第1実施形態で既に説明した図1及び図2に示す給電システム1と同様であるため、構成についての説明は省略する。上述した第1実施形態によれば、容量CI=CIIとなるように給電側コンデンサC1の容量CIを調整していた。このように、受電側コンデンサC2の容量CIIがばらつくと、給電側コンデンサC1の容量CIを同じ値としても、共鳴周波数が所望の周波数f0(発振回路Vの周波数)からズレてしまう。
【0035】
そこで、第2実施形態においては、例えば、予めシミュレーションなどにより受電側コンデンサC2の容量CIIがCs±3%、Cs±5%…とばらついたときに、所望の周波数f0での伝送効率が最大となるような給電側コンデンサC1の容量CIの最適容量C11、C12、C13、C14…を求めておき、図4に示すように、所望の周波数f0での伝送効率が最大となるような受電側コンデンサC2の容量CIIと給電側コンデンサC1の容量CIとの関係を示すテーブルを図示しないメモリなどの記憶手段に記憶させる。
【0036】
そして、容量調整部34が、受電部5から受信した受電側コンデンサC2の容量CIIに対する給電側コンデンサC1の容量CIを図4に示すテーブルから求めて、その求めた容量に給電側コンデンサC1の容量CIを調整することも考えられる。このようにすることにより、受電側コンデンサC2の容量CIIにばらつきがあっても容量調整部34により所望の周波数f0で伝送効率が最大となるように給電側コンデンサC1の容量CIを調整することができ、受電側コンデンサC2の容量CIIのばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制することができる。
【0037】
次に、本発明者らは、第2実施形態に示す給電システム1において、受電側コンデンサC1の容量CIIが所望の容量Cs、Cs±3%、Cs±5%で給電側コンデンサC1の容量CIが図4に示すテーブルに記憶された最適値に調整された場合の所望の周波数f0付近での伝送効率をそれぞれシミュレーションした。結果を図5に示す。
【0038】
図5と図6との比較からも明らかなように、受電側コンデンサC2の容量CIIが所望の容量Csに対して±3%の誤差が生じた場合、従来では伝送効率が94%以下に低下してしまったのに対し、本発明の給電システム1においては96%以上得ることができた。また、受電側コンデンサC2の容量CIIが所望の容量Csに対して±5%の誤差が生じた場合、従来の給電システム1においては伝送効率が89%以下に低下したのに対し、本発明の給電システム1においては92%以上得ることができた。また、第1実施形態と比較すると、受電側コンデンサC2の容量CIIが所望の容量Csに対して+5%の誤差が生じた場合、第1実施形態では93%程度の伝送効率しか得られなかったのに対して、第2実施形態の給電システム1においては94%程度の伝送効率を得ることができた。また、受電側コンデンサC2の容量CIIが所望の容量Csに対して+5%の誤差が生じた場合、第1実施形態では92%程度の伝送効率しか得られなかったのに対して、第2実施形態の給電システム1においては93.5%程度の伝送効率を得ることができた。
【0039】
なお、上述した第1及び第2実施形態によれば、容量測定部53は、測定した受電側コンデンサC2の容量CIIを受電側通信アンテナ54から送信していたが、本発明はこれに限ったものではない。容量測定部53が、測定した受電側コンデンサC2の容量CIIと所望の容量Csとの差を求めて、この差を受電側通信アンテナ54から送信させてもよい。
【0040】
また、上述した第1及び第2実施形態によれば、給電部3から給電を受ける毎に容量測定部53を用いて受電側コンデンサC2の容量CIIを測定していた。このようにすれば、製造時の受電側コンデンサC2の容量CIIのばらつきだけでなく、温度や経年変化などによる容量CIIのばらつきにも対応することができる。しかしながら、本発明はこれに限ったものではない。例えば、容量測定部53を設けなくても、予め受電側コイルC2の容量CIIを測定して、メモリなどの記憶手段に記憶させておいてもよい。
【0041】
第3実施形態
次に、第3実施形態について図6を参照して説明する。図6は、第3実施形態における図1に示す給電部、受電部の詳細構成図である。図6において、上述した第1及び第2実施形態で既に説明した図2に示す給電システム1と同一の部分については同一符合を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と第3実施形態とで異なる点は、第1実施形態では、受電側コンデンサC2の容量CIIを測定する容量測定部53の代わりに測定手段としての測定部55が設けられている。
【0042】
上記測定部55は、受電側ループアンテナ51に供給された電力レベルを測定し、この測定した電力レベルと予め格納された給電部3が送信する電力レベルとから伝送効率を求めて、受電側通信アンテナ54から求めた伝送効率を送信する。容量調整部34は、受信された伝送効率が最大になる値に給電側コンデンサC1を調整する。
【0043】
上述した給電システム1の動作を説明する。例えば、給電部3の容量調整部34は、給電側通信アンテナ33から伝送効率送信要求を間欠的に送信させている。自動車4が道路2に設けた給電部3上に停車すると、容量調整部34は、給電側コンデンサC1の容量CIを可変範囲の下限値まで下げた後、上記自動車4に搭載された受電側通信アンテナ54が伝送効率送信要求を受信する。伝送効率送信要求を受信すると、受電部5の測定部55は、上述したように間欠的に伝送効率を求めて、受電側通信アンテナ54から順次送信する。また、容量調整部34は、伝送効率を受信する毎に、給電側コンデンサC1の容量CIを上記下限値から可変範囲の上限値までΔcづつ間欠的に増加させる。容量CIを上限値まで増加させた後、容量調整部34は、可変範囲のうち最も高い伝送効率が得られる容量に給電側コンデンサC1を調整した後、発振回路Vによる交流電流を給電側ループアンテナ31に供給して、非接触給電を開始する。
【0044】
上述した第3実施形態の給電システム1によれば、受電側コンデンサC2の容量CIIにばらつきがあっても容量調整部34により所望の周波数f0で伝送効率が最大となるように給電側コンデンサC1の容量CIを調整することができる。即ち、受電側コンデンサC2の容量CIIのばらつきに応じて図4のテーブルに示す容量CIに調整することができ、テーブルなどを記憶させなくても第2実施形態と同様に、受電側コンデンサC2のばらつきに起因する伝送効率の低下を抑制することができる。
【0045】
次に、本発明者らは、第3実施形態に示す給電システムにおいて、受電側コンデンサC1の容量CIIが所望の容量Cs、Cs±3%、Cs±5%でばらついた場合それぞれについての所望の周波数f0付近での伝送効率をそれぞれシミュレーションした。結果、図5に示すように、第2実施形態と同じになることが分かった。
【0046】
なお、上述した第3実施形態では、測定部55は、受電側ループアンテナ51に供給された電力レベルを測定し、この測定した電力レベルと予め格納された給電部3が送信する電力レベルとから伝送効率を求めて、受電側通信アンテナ54から求めた伝送効率を送信していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、測定部55としては、測定した電力レベルそのものを給電部3に対して送信するものであってもよい。また、測定部55としては、測定した電力レベルと予め格納された給電部3が送信する電力レベルとから反射率を求めて、受電側通信アンテナ54から求めた反射率を送信するようにしてもよい。
【0047】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 給電システム
3 給電部(給電手段)
5 受電部(受電手段)
32 給電側コイル
33 給電側通信アンテナ(受信手段)
34 容量調整部(容量調整手段)
51 受電側コイル
54 受電側通信アンテナ(送信手段)
55 測定部(測定手段)
C1 給電側コンデンサ(給電側コンデンサ、可変コンデンサ)
C2 受電側コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給される給電側コイル及び前記給電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルからの電力を受電する受電側コイル及び前記受電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサを有する受電手段と、を備えた給電システムにおいて、
前記給電側コンデンサが、その容量が可変に設けられた可変コンデンサから構成され、
前記受電手段が、前記受電側コンデンサの容量を送信する送信手段をさらに有し、
前記給電手段が、前記送信手段からの前記受電側コンデンサの容量を受信する受信手段と、前記受信した前記受電側コンデンサの容量に応じて前記可変コンデンサの容量を調整する容量調整手段と、をさらに有することを特徴とする給電システム。
【請求項2】
前記容量調整手段が、前記受信した前記受電側コンデンサの容量に基づいて前記給電手段と前記受電手段との共鳴周波数が一致するように前記受電側コンデンサの容量を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記給電手段が、所望の周波数で伝送効率が最大となる前記受電側コンデンサの容量と前記給電側コンデンサの容量との関係を記憶する記憶手段をさらに有し、
前記容量調整手段が、前記記憶手段に記憶された関係から前記受信した前記受電側コンデンサの容量に対応する前記給電側コンデンサの容量を求め、求めた容量となるように前記可変コンデンサの容量を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の給電システム。
【請求項4】
電力が供給される給電側コイル及び前記給電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める給電側コンデンサを有する給電手段と、前記給電側コイルと電磁共鳴して前記給電側コイルからの電力を受電する受電側コイル及び前記受電側コイルの両端に接続された共鳴周波数を定める受電側コンデンサを有する受電手段と、を備えた給電システムにおいて、
前記給電側コンデンサが、その容量が可変に設けられた可変コンデンサから構成され、
前記受電手段が、前記受電側コイルが受電した電力レベルを測定する測定手段と、前記測定手段により測定された電力レベルを送信する送信手段をさらに有し、
前記給電手段が、前記送信手段からの前記電力レベルを受信する受信手段と、前記受信した前記電力レベルに応じて前記可変コンデンサの容量を調整する容量調整手段と、をさらに有することを特徴とする給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90470(P2013−90470A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229613(P2011−229613)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)