説明

統合電子制御装置

【課題】統合電子制御装置の入出力ユニットおよび演算処理部を設けた基板の部品点数を削減して小型化する。
【解決手段】自動車に搭載される複数の機器をそれぞれ制御する複数の電子制御ユニットを統合した統合電子制御装置10であって、複数の電子制御ユニットの演算処理部21を統合して設けた基板20と、複数の電子制御ユニットの入出力部31と駆動回路32とを統合して設けた入出力ユニット30とを備え、基板20の演算処理部21と、入出力ユニット30の入出力部31および駆動回路32とは、基板20または入出力ユニット30のいずれか一方に設けたシフトレジスタ35と、該シフトレジスタ35に接続した専用回路とを介して接続し、基板20と入出力ユニット30とは専用回線を構成する配線を介して接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合電子制御装置に関し、詳しくは、自動車内に搭載される複数の電子制御ユニットを統合するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高機能化および高性能化に伴い、自動車に搭載される電装機器および該電装機器を制御する電子制御ユニット(ECU)の数は急増しており、車両内の配線が複雑化、大規模化することにより、配置スペースの問題や車両重量が増加する問題がある。
そこで、機器を制御するECUをシートやドアのボデー系、エンジンやスロットル等のパワートレイン系などに区分けし、該区分けしたECUを1つにまとめた総合制御ユニットとする場合がある。このように、複数のECUを1つにまとめることで、車両に搭載されるECUの数を削減し、軽量化、省スペース化を図っている。
【0003】
しかし、複数のECUを1つにまとめた総合制御ユニットにおいても、ECUが制御する機器や制御に用いるセンサ、アクチュエータ等は前記まとめた電子制御装置に接続しなければならない。このため、機器やセンサの設置位置が車内の各所に分散している場合には、前記総合制御ユニットと機器等を接続するための配線を車内に配索しなければならず、配線が肥大化するという問題がある。
【0004】
このため、特開平7−95659号公報(特許文献1)においては、センサや制御対象の機器と接続して複数の入出力信号の処理を行う入出力ユニットと、該入出力信号を用いて演算を行う演算ユニットと、演算ユニットと入出力ユニットを結合するインターフェース手段で構成する自動車用統合制御ユニットが提案されている。該統合制御ユニットでは、入出力ユニットを複数設け、車両の右前方、右後方、左前方、左後方などエリアごとに入出力ユニットを配置して各エリアに設置されたセンサや機器を接続し、多重通信などのインターフェース手段により演算ユニットと接続している。
このように、車両内の設置位置が近い機器等をまとめて入出力ユニットに接続すると共に、入出力ユニットと演算ユニットは多重通信で接続しているので、配線の削減を可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−95659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1においては、演算処理部を設けた基板(演算ユニット)と入出力ユニットとを接続するインターフェース手段として多重通信を用いている。このため、基板及び入出力ユニットの双方に多重通信用のマイコンやドライバ、A/D変換部、RAM、ROMなどを搭載しなくてはならず、基板及び入出力ユニットが大型化するという問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、統合電子制御装置の入出力ユニットおよび演算処理部を設けた基板の部品点数を削減して小型化することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、自動車に搭載される複数の機器をそれぞれ制御する複数の電子制御ユニットを統合した統合電子制御装置であって、
前記複数の電子制御ユニットの演算処理部を統合して設けた基板と、
前記複数の電子制御ユニットの入出力部と駆動回路とを統合して設けた入出力ユニットとを備え、
前記基板の演算処理部と、前記入出力ユニットの入出力部および駆動回路とは、前記基板または入出力ユニットのいずれか一方に設けたシフトレジスタと、該シフトレジスタに接続した専用回路とを介して接続し、
前記基板と前記入出力ユニットとは前記専用回線を構成する配線を介して接続していることを特徴とする統合電子制御装置を提供している。
【0009】
前記本発明の統合電子制御装置は、入出力ユニットに制御対象の機器及びセンサ等を接続し、入出力ユニットの入出力部はセンサから信号を取得してシフトレジスタと専用回路を介して基板の演算処理部に出力することを特徴としている。前記演算処理部は入出力ユニットからの信号を用いて演算処理を行った後、シフトレジスタと専用回路を介して制御信号を入出力ユニットの入出力部または駆動回路に出力している。該入出力部または駆動回路は制御対象の機器へ制御信号を出力している。
このように、演算処理部を設けた基板と入出力ユニットとを多重通信で接続して信号の送受信を行うのではなく、シフトレジスタと専用回路を介して信号の送受信を行っているため、演算処理部を設けた基板及び入出力ユニットに多重通信用の部品を設ける必要がなく、基板及び入出力ユニットを小型化できる。
【0010】
また、入出力ユニットの入出力部は、センサ等からの信号の受信や、受信した信号のA/D変換、演算処理部からの制御信号のD/A変換等を行うため、ノイズが発生しやすく、該ノイズは演算処理部を誤動作させる原因となると共に、入出力部や駆動回路は発熱量が大きく、該発熱が演算処理部を誤動作させる原因となる。
前記問題に対しては、本発明では、演算処理部を設けた基板と入出力部を設けた入出力ユニットを別体としているので、入出力部において発生するノイズや発熱による演算処理部の誤動作を防ぐことができる。
【0011】
前記シフトレジスタは前記入出力ユニットに設け、前記基板を前記専用回路用配線を介して接続していることが好ましい。
このように、電子制御ユニットの演算処理部を統合して設けた基板を収容する一方、該基板と専用回路用配線を介して別体の入出力ユニットを設け、該入出力ユニット側にシフトレジスタおよび前記電子制御ユニットに接続する配線を入出力ユニット側にまとめて設けると、多重通信用の部品を設ける必要がなく、基板および入出力ユニットを小型化でき、かつ配線の肥大化を避けることができる。また、入出力ユニットと基板は専用回路用配線で接続しているため、常時信号の送受信を行うことができる。
【0012】
前記統合する電子制御ユニットは、走行系、情報系、ボデー系それぞれに使用される。
例えば、前記ボデー系電子制御ユニットはランプ制御、ドア制御、電動ミラー制御等からなり、
前記ボデー系電子制御ユニットに統合する他の電子制御ユニットは、ワイパ制御、トランク制御、リヤサンシェード制御等からなる。
【0013】
前記ボデー系電子制御ユニットは、パワートレイン系やシャーシ系の電子制御ユニットに比べて車両内に搭載される数が多いため、これらボデー系電子制御ユニットに更に他の電子制御ユニットを統合した統合電子制御装置は大型化する。
しかしながら、本発明では、前記のように電装品と接続される入出力ユニットを別体として設けると共に、該入出力ユニットと専用回線を介して接続する演算処理部は基板上にまとめているため、ボデー系の電子制御ユニットに他の電子制御ユニットを統合しても、該基板の大型化や多層化を抑制でき、該基板を収容する前記ジャンクションボックス等の電気接続箱の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
前述したように、本発明の統合電子制御装置によれば、演算処理部を設けた基板と入出力ユニットとを多重通信で接続して信号の送受信を行うのではなく、シフトレジスタ及び専用回路を介して信号の送受信を行っているため、演算処理部を設けた基板及び入出力ユニットに多重通信用の部品を設ける必要がなく、基板及び入出力ユニットを小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2に本発明の第1実施形態を示す。
本発明の統合電子制御装置10は、自動車に搭載される複数の機器をそれぞれ制御する複数の電子制御ユニット(ECU)を統合したものである。
本実施形態では、1つのボデー系ECUに他の3つの電子制御ユニットを統合している。ボデー系電子制御ユニットは、ランプ制御、ドア制御、電動ミラー制御などのいずれかを行っているものである。
また、ボデー系電子制御ユニットに統合される他のボデー系機能はワイパ制御を行うワイパECU、トランク制御を行うトランクECU、リヤサンシェード制御を行うリアサンシェードECUである。
【0016】
統合電子制御装置10は、ジャンクションボックスからなる電気接続箱11内に収容する基板20と、該電気接続箱11とは別体の入出力ユニット30とからなり、該入出力ユニット30と前記電気接続箱11内の基板20とは専用回路用配線14を介して接続している。
前記電気接続箱11内に収容する基板20に、複数のECUの演算処理部21を統合して設けている。本実施形態では、ボデー系の制御やワイパ制御、トランク制御、リアサンシェード制御の各ECUの演算処理部21を統合している。
また、演算処理部21はROMやRAMからなる記憶部22と接続し、記憶部22はボデー系の制御やワイパ制御、トランク制御、リアサンシェード制御のためのプログラム等を記憶している。
【0017】
入出力ユニット30は、複数のECUの入出力部31と駆動回路32を統合して設けている。また、シフトレジスタ35を設けており、該シフトレジスタ35は、専用回路を構成するユニット用配線36を介して入出力部31と駆動回路32とに接続している。
入出力部31は、入力部33と出力部34からなり、入力部33にはA/D変換部33aと入力ドライバ部33bを備えている。また、出力部34にはD/A変換部34aと出力ドライバ部34bを備えている。
【0018】
前記入出力ユニット30の入出力部31及び駆動回路32には、前記統合したECUに制御される機器およびセンサを接続している。
入力部33には、ボデー系の給油口を開けるためのヒューエルオープナスイッチ12aと、ワイパ制御のためのレインセンサ12bと、トランク制御を行うトランクオープナスイッチ12cと、リアサンシェード制御のためのリアサンシェードスイッチ12dを接続している。入力部33は各スイッチまたはセンサからの制御信号を時分割でA/D変換してシフトレジスタ35に出力している。
また、出力部34には、ボデー系の制御のためのヒューエルオープナ13aを接続している。さらに、駆動回路32は各機器ごとに設けており、各駆動回路32A〜32Cにワイパモータ13b、トランクオープナモータ13c、リアサンシェード駆動モータ13dを接続している。
【0019】
なお、入出力部31及び駆動回路32に接続されるスイッチ及び機器は上記記載に限定されず、例えば、ワイパ制御のためのワイパモータ駆動スイッチやウォッシャモータ駆動スイッチ、トランク制御のためのドアアンロックスイッチやラッゲージエレクトリカルスイッチを入力部33と接続してもよい。
【0020】
さらに、シフトレジスタ35は、基板20の演算処理部21と専用回路を構成する前記専用回路用配線14を介して接続している。該専用回路用配線14はECU間の接続に用いられる多重通信による通信ではなく、演算処理部21とシフトレジスタ35との間でデジタル信号の入出力を行う常時通信線である。
【0021】
前記シフトレジスタ35の機能を図2の説明図を用いて説明する。
入出力ユニット30に接続されたスイッチ等から信号を受信すると、入力部33を介してシフトレジスタ35に信号を入力する。シフトレジスタ35は基板20の演算処理部21に信号を出力する。演算処理部21でボデー系制御やワイパ制御等の所定の処理を行い、演算処理部21は制御信号をシフトレジスタ35を介して制御対象の機器に出力する。
【0022】
演算処理部21から制御信号をシフトレジスタ35に出力した場合、図2に示すように、シフトレジスタ35には2進数で表された制御信号が記憶される。シフトレジスタ35はシリアル入力パラレル出力である。
例えば、シフトレジスタ35の上位5ビットをタイミングビット36とし、続く4ビットを出力部34へ出力する信号を格納するビット37A、さらに4ビットを駆動回路32Aへ出力する信号を格納するビット37B、次の4ビットを駆動回路32Bへ出力する信号を格納するビット37C、次の4ビットを駆動回路32Cへ出力する信号を格納するビット37Dとする。
タイミングビット36にはタイミングゲート38を接続すると共に、ビット37A〜37Dにもゲート39A〜39Dを接続している。タイミングゲート38はゲート39A〜39Dと接続してタイミング信号をゲート39A〜39Dに出力している。また、ゲート39A〜39Dはそれぞれ出力部34、駆動回路32A〜32Cと接続している。
【0023】
タイミングゲート38はタイミングビット36に格納された値を検知して、ゲート39A〜39Dがビット37A〜37Dから信号を読み取るタイミングを指示する。例えば5ビットのタイミングビット36全てに「0」が格納された場合に、タイミングゲート38はゲート39A〜39Dにタイミング信号を出す。ゲート39A〜39Dはタイミング信号を受け取ると、ビット37A〜37Dから信号を読み取り、出力部34及び駆動回路32A〜32Cに信号を出力する。
【0024】
出力部34及び駆動回路32A〜32Cからシフトレジスタ35を介して制御信号を演算処理部21に送信する場合、パラレル入力シリアル出力のシフトレジスタ35を用いて出力部34及び駆動回路32A〜32Cからの信号をシフトレジスタ35に記憶させ、タイミングビット36で検知したタイミングで演算処理部21に出力する。
【0025】
なお、タイミングゲート38に代えて、演算処理部21とゲート39A〜39Dをタイミング信号線を介して接続してもよい。このとき、演算処理部21はタイミング信号を出力し、該タイミング信号を受信したゲート39A〜39Dは信号をシフトレジスタ35から読み出す。
【0026】
前記のように、本発明によれば、演算処理部21を設けた基板20と入出力ユニット30とを多重通信で接続して信号の送受信を行うのではなく、入出力ユニット30に設けたシフトレジスタ35及び専用回路用配線14を介して信号の送受信を行うため、基板20及び入出力ユニット30を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明である統合電子制御装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】シフトレジスタの説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 統合電子制御装置
11 電気接続箱
14 専用回路用配線
20 基板
21 演算処理部
30 入出力ユニット
31 入出力部
32 駆動回路
35 シフトレジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される複数の機器をそれぞれ制御する複数の電子制御ユニットを統合した統合電子制御装置であって、
前記複数の電子制御ユニットの演算処理部を統合して設けた基板と、
前記複数の電子制御ユニットの入出力部と駆動回路とを統合して設けた入出力ユニットとを備え、
前記基板の演算処理部と、前記入出力ユニットの入出力部および駆動回路とは、前記基板または入出力ユニットのいずれか一方に設けたシフトレジスタと、該シフトレジスタに接続した専用回路とを介して接続し、
前記基板と前記入出力ユニットとを前記専用回線を構成する配線を介して接続していることを特徴とする統合電子制御装置。
【請求項2】
前記シフトレジスタは前記入出力ユニットに設け、前記基板を前記専用回路用配線を介して前記入出力ユニット内のシフトレジスタと接続している請求項1に記載の統合電子制御装置。
【請求項3】
前記統合する電子制御ユニットは、走行系、情報系、ボデー系にそれぞれ使用される請求項1または請求項2に記載の統合電子制御装置。
【請求項4】
前記ボデー系電子制御ユニットは、ランプ制御、ドア制御、電動ミラー制御用を含み、
前記ボデー系電子制御ユニットに統合する他の電子制御ユニットは、ワイパ制御、トランク制御、リヤサンシェード制御を含む請求項3に記載の統合電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−296871(P2008−296871A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148242(P2007−148242)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)