説明

絶縁用手袋

【課題】300Vを超えた電路作業において十分な電気絶縁性と軽量かつ柔軟な作業性・耐油性・耐寒性を併せ持った絶縁用手袋を提供する。
【解決手段】最下層に芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層、前記熱可塑性エラストマー組成物層上にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物の乾式層、指先からの親指根元付近にかけて、前記乾式層上に、ウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物の湿式成膜層(ポーラス層)が形成された三種三層一体型の絶縁用手袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電路作業を安全に行うことができる絶縁性・耐油性・耐寒性に優れ、軽量かつ柔軟性に優れた絶縁用手袋及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保護手袋として種々の材料が用いられている。例えば、天然ゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、メタクリル酸エチルグラフトラテックス等のゴムラテックスや、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタン系エラストマー等の非ゴム系ポリマーのエマルジョン等が挙げられる(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記のゴムラテックスは、非ゴム系ポリマーのエマルジョンに比べて作業中に生じる摩擦等に弱く、また耐油性に劣るという問題があった。また、ポリ塩化ビニルエマルジョン等は、ウレタン系エラストマーに比較して耐寒性が悪く、マイナス10℃、マイナス20℃という厳寒地での使用には適さなかった。
一方、ウレタン系エラストマーは、耐油性、耐摩擦性、耐寒性、更には耐酸化性及び耐老化性等に優れることから保護手袋の材料として好適に用いられてきた。
【0004】
他方、労働安全衛生規則や労働省告示等において、電路作業に用いられる絶縁保護具については一定の絶縁基準値を具備することが求められている。例えば、交流電圧300Vを超え600V以下の電路作業においては、試験電圧3000V/1分間の基準を満たすことが要求されている(非特許文献1)。
ここで上記ウレタン系エラストマーを主成分として製造された保護手袋は、ウレタン系エラストマーの有する絶縁性より、交流電圧300V以下での使用には何ら支障はなかったが、300Vを超えた電路作業においては基準の絶縁値を満たさないおそれがあった。
特に近年エンジンとモーターを組み合わせた、いわゆるハイブリッド車や、電気自動車等といった高電圧の自動車が実用化されつつあるが、ハイブリッド車等は、交流電圧として500V以上の電路作業が要求されることから、上記ウレタン系エラストマー等を主成分とした絶縁用手袋では電気絶縁性の観点から問題が生じることになる。
【0005】
ここで絶縁性に優れたゴムラテックスと耐油性等に優れたウレタン系エラストマーを積層することが考えられる。しかしながらゴムラテックスとウレタン系エラストマーを積層した手袋の開発には、柔軟性及び軽量化の困難性が予測される。そのため従来は、300Vを越え600V以下の充電電路での作業で使用することの出来る絶縁用手袋で絶縁性・耐油性・耐寒性を併せ持つものは存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−201517号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】労働省告示第144号、型式検定の手引き[(社)産業安全技術協会]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、300Vを超えた電路作業において十分な電気絶縁性と軽量かつ柔軟な作業性・耐油性・耐寒性を併せ持った絶縁用手袋を提供することにある。
また他の目的は、絶縁性に優れた芳香族ビニル系化合物ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル系化合物ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層と耐油性等に優れたウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層を充分な耐剥離性をもって積層することにより、電気絶縁性に加えて、より高度な耐油性・耐寒性を併せ持った絶縁用手袋を提供することにある。
更に他の目的は、十分な電気絶縁性を持った絶縁用手袋を迅速かつ安価に製造することができる絶縁用手袋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物によって形成されたことを特徴とする絶縁用手袋が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、更にウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層が積層されたことを特徴とする絶縁用手袋が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、ウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層が基布を含有することを特徴とする絶縁用手袋が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第2又は第3の発明において、各層が未接着部分を有するように積層されたことを特徴とする絶縁用手袋が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜第4いずれかの発明において、更にウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成されるポーラス層が積層されたことを特徴とする絶縁用手袋が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜第5いずれかの発明において、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物を含有する溶液に手型を浸漬することによって、当該手型の表面に皮膜を形成することを特徴とする絶縁用手袋の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第2〜5いずれかの発明において、手型をウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する溶液に浸漬することによって第一層を形成した後、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物を含有する溶液に浸漬することによって第二層を形成した後、更にウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する溶液に浸漬することによって第三層を形成することを特徴とする絶縁用手袋の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜第5いずれかの発明において、予め手形状に形成した基布を手型に被せた後、当該手型を芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物を含有する溶液に浸漬することを特徴とする絶縁用手袋の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第9の発明によれば、第2〜第5のいずれかの発明において、予め手形状に形成した基布を手型に被せた後、ウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物に浸漬することによって基材層を形成し、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物を含有する溶液に浸漬することによって外層を形成することを特徴とする絶縁用手袋の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明における低圧用手袋が提供される。
【0019】
また、本発明の第11の発明によれば、第6〜9のいずれかの発明における低圧用手袋の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る絶縁用手袋は、300Vを超えた電路作業において十分な電気絶縁性と軽量かつ柔軟な作業性を持ち、耐油性・耐寒性に優れるという効果を奏する。
また本発明は、十分な電気絶縁性を持った絶縁用手袋を迅速かつ安価に製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施の形態の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る絶縁用手袋は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物によって形成されている。
本発明に係る絶縁用手袋とは、活線作業を行う場合に作業者が保護のために手先につけるものである。本発明に係る絶縁用手袋は、300Vを越え7000V以下の電気回路の作業に使用し得る。また特に好ましくは600V以下の電気回路にて使用する低圧用手袋である。
必要に応じて、本発明に係る絶縁用手袋を50V以上、300V未満の電気回路の作業へ使用してもよい。
【0023】
ここで芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体としては、イソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水添物等が挙げられる。なかでもポリウレタンとの接着性の点でイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体が好ましい。
【0024】
以下、イソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体について説明する。
イソブチレン系ブロック共重合体としては、イソブチレンを主体とするユニットと芳香族ビニル化合物を主体とするユニットを有しているものであれば、いずれの構造を有するものも使用可能であるが、物性のバランスと合成の簡便さから、(芳香族ビニル化合物を主体とするユニットとイソブチレンを主体とするユニットと芳香族ビニル化合物を主体とするユニット)の構造を有するトリブロック体、(イソブチレンを主体とするユニット−芳香族ビニル化合物を主体とするユニット)の構造を有するジブロック体、またはこれらの混合物を用いることができる。ブロック共重合体のイソブチレンを主体とするユニットと芳香族ビニル化合物を主体とするユニットの割合は、物性のバランスから、イソブチレンを主体とする単量体95〜20重量%と芳香族ビニル化合物を主体とする単量体5〜80重量%が好ましく、さらにイソブチレンを主体とする単量体90〜60重量%と芳香族ビニル化合物を主体とする単量体10〜40重量%が好ましい。
【0025】
ブロック共重合体の重量平均分子量には、特に制限はないが、40,000〜500,000が好ましく、60,000〜400,000が特に好ましい。重量平均分子量が40,000未満の場合、機械特性が低下、また、500,000を超える場合、成形性が悪化する。
【0026】
上記芳香族ビニル系重合体ブロックで用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン等が挙げられる。上記化合物の中でもコストと物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましく、その中から2種以上選んでもよい。
【0027】
芳香族ビニル化合物系ブロックとは、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックを意味する。
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物のみからなる重合体が好ましいが、芳香族ビニル化合物と50重量%未満のイソブチレン系化合物との共重合体であってもよい。また、イソブチレン系化合物を主体とする重合体ブロックは、イソブチレン系化合物のみからなる重合体が好ましいが、イソブチレン系化合物と50重量%未満の芳香族ビニル化合物の共重合体であってもよい。
【0028】
イソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体の市販品としては、鐘淵化学(株)製の103T(数平均分子量=92,000、重量平均分子量=100,000)又は073T(数平均分子量=60,000、重量平均分子量=65,000)等を挙げることができる。
【0029】
また本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物において、イソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体に対し、必要に応じて増粘剤(粘度調整剤)として機能する水添及び/または部分水添共重合体を含有させても良い。例えば、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とするランダム共重合体の水素添加物(HSBR)、結晶性エチレンブロックと共晶性エチレン−ブテンブロックを有するブロック共重合体(CEBC)、結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックと芳香族ビニル化合物から成るブロックを有するブロック共重合体(SEBC)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(部分水添スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体:SBBS)などが挙げられる。
【0030】
かかる水添及び/又は部分水添共重合体としては、水添及び/又は部分水添ブロック共重合体であることがより好ましい。
水添ブロック共重合体としては、芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体または共役ジエンブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
【0031】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物に用いることのできる芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体成分は、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの少なくとも1個と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの少なくとも1個とからなるブロック共重合体を水素添加して得られる重合体である。例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、A−B−A−B−A等の構造を有する芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体を水素添加して得られるものである。
【0032】
芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAは、芳香族ビニル化合物のみからなる重合体か、芳香族ビニル化合物と50重量%未満の共役ジエン化合物との共重合体であってもよい。また、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、共役ジエン化合物のみからなる重合体か、共役ジエン化合物と50重量%未満の芳香族ビニル化合物の共重合体であってもよい。
【0033】
水添ブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第3ブチルスチレン等のうちから1種又は2種以上を選択でき、中でもスチレンが好ましい。また共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種又は2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレン及びこれらの組合せが好ましい。
【0034】
芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック重合体成分は、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBにおいて、その水素添加率は任意であるが、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。また、そのミクロ構造は、任意であり、例えば、ブロックBがブタジエン単独で構成される場合、ポリブタジエンブロックにおいては、1,2−ミクロ構造が好ましくは20〜50重量%、特に好ましくは25〜45重量%である。また、1,2−ミクロ構造を選択的に水素添加した物であっても良い。ブロックBがイソプレンとブタジエンの混合物から構成される場合、1,2−ミクロ構造が好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満、更に好ましくは15%未満である。
【0035】
ブロックBがイソプレン単独で構成される場合、ポリイソプレンブロックにおいてはイソプレンの好ましくは70〜100重量%が1,4−ミクロ構造を有し、かつイソプレンに由来する脂肪族二重結合の好ましくは少なくとも90%が水素添加されたものが好ましい。用途により水素添加したブロック共重合体を使用する場合には、好ましくは上記水添物を用途に合わせて適宜使用することが出来る。
また、重合体ブロックAは、成分全体の5〜70重量%の割合で存在するのが好ましい。さらに、成分全体の重量平均分子量は、350,000以下であり、好ましくは30,000〜250,000である。重量平均分子量が350,000を超えると、成形性が悪化する。
【0036】
芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物及び/又は部分水素添加物の具体例としては、スチレン−エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・ブテン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体の部分水添物:SBBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の部分水添物、スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体の部分水添物等を挙げることができる。本発明においては、該芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物及び/又は部分水素添加物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
これらの芳香族ビニル化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加して得られるブロック共重合体の製造方法としては、数多くの方法が提案されているが、代表的な方法としては、例えば特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒又はチーグラー型触媒を用い、不活性媒体中でブロック重合させて得ることができる。こうしたブロック共重合体の水素添加処理は、公知の方法により、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に行うことができる。
【0038】
また、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物に用いることのできる共役ジエンブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、ブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックを有するブロック共重合体(CEBC)等が挙げられる。本発明においては、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、共役ジエンブロック共重合体の水素添加物の重量平均分子量は、350,000以下であり、好ましくは30,000〜250,000である。重量平均分子量が350,000を超えると、成形性が悪化する。
【0039】
また、本発明の組成物に用いることのできる共役ジエンブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、ブタジエンのブロック共重合体を水素添加して得られる結晶性エチレンブロックと非晶性エチレン−ブテンブロックと芳香族ビニル化合物から成るブロックを有するブロック共重合体(SEBC)であってもよい。
また、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物に用いることのできる水添共重合体としては、例えば、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物を主体とするランダム共重合体の水素添加物(H−SBR)であってもよい。例えば、JSR(株)からダイナロン1320P(商品名)が販売されている。
【0040】
熱可塑性エラストマー組成物に水添及び/または部分水添共重合体を含有させる場合における配合量は、例えばイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体100重量部に対して、1〜80重量部、好ましくは3〜50重量部である。前記上限値を超えると、粘度が高くなりすぎ、成形加工性が悪化する。前記下限値未満では添加効果(キシロール、MEK、DMFなどの溶剤でペーストにした時の増粘効果、気泡発生防止効果、均一膜厚形成効果)が充分でない。
【0041】
また必要に応じて、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物には、非芳香族系ゴム用軟化剤を含有させてもよい。非芳香族系ゴム用軟化剤としては、非芳香族系の鉱物油又は液状、若しくは、低分子量の合成軟化剤が挙げられる。一般にゴム用鉱物油軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖を組み合わせた混合物であって、飽和炭化水素鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%を占めるものをナフテン系、芳香族炭素数が30%以上を占めるものを芳香族系と呼び区別されている。本発明で用いられるゴム用鉱物油軟化剤は、上記のパラフィン系及びナフテン系が好ましい。芳香族系の軟化剤は、分散性が悪く好ましくない。
非芳香族炭化水素系ゴム用軟化剤として、パラフィン系の鉱物油軟化剤が特に好ましく、パラフィン系のなかでも芳香族環成分の少ないものが特に適している。
【0042】
パラフィン系軟化剤を構成している化合物としては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)及び、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
【0043】
室温で液状であるパラフィン系軟化剤の市販品としては、日本油脂株式会社製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、出光石油化学株式会社製のIP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8重量%以上のイソパラフィン)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)等が挙げられる。
また、非芳香族系炭化水素軟化剤には、少量の不飽和炭化水素及びこれらの誘導体が共存していても良い。不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素、アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン等のアセチレン系炭化水素を挙げることができる。
【0044】
熱可塑性エラストマー組成物に非芳香族系ゴム用軟化剤を添加する場合における配合量は、例えばイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは3〜60重量部である。前記上限値を超えると軟化剤のブリードアウトを生じやすく最終製品に粘着性を与え、成形体の機械的性質も低下せしめる。前記下限値未満では添加効果が充分でない。
【0045】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物には、更に必要に応じて石油樹脂を含有させてもよい。石油樹脂は、機械特性を向上させ、さらにバランスのよい柔軟性と風合いを付与する機能を果たす成分である。
石油樹脂としては、石油精製工業、石油化学工業の各種工程、特にナフサの分解工程で得られる不飽和炭化水素を原料として共重合して得られる樹脂であって、C5留分を原料とした脂肪族系石油樹脂、C9留分を原料とした芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエンを原料とした脂環族系石油樹脂、並びにテルペン系樹脂およびこれら2種以上が共重合した共重合系石油樹脂、さらにこれらを水素化した水素化石油樹脂などが例示できる。上記した樹脂の水素添石油樹脂は、上記の樹脂を当業者に公知の方法により水素添加して得られる。市販品としては、出光石油化学(株)製のアイマーブ(水素化石油樹脂)、荒川化学工業(株)製のアルコン(水素化石油樹脂)、ヤスハラケミカル(株)製のクリアロン(水素化テルペン樹脂)、トーネックス(株)製のエスコレッツ(脂肪族系炭化水素樹脂)などの市販品を用いることができる。
熱可塑性エラストマー組成物に石油樹脂を含有させる場合の配合量は、例えばイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは3〜20重量部である。前記上限値を超えるとディッピング成形性が悪化し、ベタツキ性が顕著になる。前記下限値未満では柔軟性付与効果が充分でない。
【0046】
更に必要に応じて本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物にテルペン系オイルを添加しても良い。テルペン系オイルは製品への柔軟性付与と溶剤ペーストの粘度低減という機能を有する。
テルペン系オイルは、主として北米や中国本土に産するアカマツ、クロマツの立木から採取した生松脂を水蒸気蒸留して得られる精油、また同樹のパルプ生産の副生物のテレピン油、あるいはオレンジの皮から抽出される精油またはこれらの精油から異性化反応等により誘導されたオレンジ油等から得られ、具体的には、炭素数10からなるテルペン系炭化水素、テルペンエーテルが挙げられる。
【0047】
炭素数10からなるテルペン系炭化水素としては、ミルセン(沸点167℃)、カレン(沸点167℃)、オシメン、ピネン(沸点155℃)、リモネン(沸点176℃)、カンフェン(沸点160℃)、テルピノレン(沸点187℃)、トリシクレン(沸点153℃)、テルピネン(沸点170〜180℃)、フェンチェン(沸点150〜155℃)、フェランドレン(沸点170〜175℃)、シルベストレン(沸点175℃)、サビネン(沸点163℃)、P−メンテン−1(カルボメンテン)(沸点176℃)、P−メンテン−3(沸点168℃)、P−サイメン、P−メンタン(沸点168℃)等が挙げられる。そのなかでも特に、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、P−メンテン−1、P−メンテン−3、P−サイメン、P−メンタンが好ましい。
【0048】
炭素数10からなるテルペンエーテルとしては、1,4−シネオール(沸点173℃)、1,8−シネオール(沸点173℃)、ピノール(沸点180℃)等が挙げられる。その中でも特に、1,4−シネオール、1,8−シネオールから選ばれた少なくとも1種類が好ましい。
【0049】
熱可塑性エラストマー組成物にテルペン系オイルを含有させる場合における配合量は、例えばイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体100重量部に対して1〜75重量部、好ましくは5〜50重量部である。前記上限値を超えると成形時の発生ガスと臭気が烈しくなり、製品表面にブリード感が認められるようになる。前記下限値未満では製品への柔軟性付与とディッピング溶剤の粘度低減効果が充分でない。
【0050】
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物には、さらに、本発明の目的を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤[アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト(ウァラステナイト)、クレー]、発泡剤(有機系、無機系)、難燃剤(水和金属化合物、赤燐、ポリりん酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン)などを配合しても良い。ここで発泡剤としては、エクスパンセル(エクスパンセル社製)、マツモトマイクロスフィアー(松本油脂製薬社)等が市販品として挙げられる。
【0051】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−p−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル、トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。このうちフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤が特に好ましい。
【0052】
本発明の絶縁用手袋における熱可塑性エラストマー層を形成するためのディッピング溶液は、例えば芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体(及び必要に応じて上記任意成分を含有する組成物)100重量部を溶剤(例えばキシロール:ゴードー溶剤製)80〜400重量部、好ましくは溶剤100〜300重量部に溶解することにより得られる。前記上限値を超えると粘度が低下し、気泡が発生しやすくなり、膜厚が薄くなる。前記下限値未満では粘度が高くなり、ペースト性が悪化し、ディッピング成形性が悪化する。
その他の方法として、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する組成物(例えばイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族系ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体と必要に応じて水添及び/または部分水添共重合体、非芳香族系ゴム用軟化剤及び石油樹脂等を適宜含有した組成物)を混練温度180℃〜200℃で、適当な単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー又は各種のニーダー等を用いて溶融混練して得られたペレットもしくはブロックを、工業用キシロールなどの有機溶剤に固形分20〜65重量%で溶解させることで得られる。
【0053】
次にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物について説明する。
本発明で用いられるウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物は、合成皮革用ポリウレタン、軟質ポリウレタン等を概念として含み手袋の材料として周知のもの全てを含むものである。またウレタン系エラストマーを含有する組成物には、適宜任意の成分を含有しても良い。ウレタン系エラストマーの例として、市販品としてエステル系1液型ポリウレタン溶液のレザミンCU4620LV(大日精化工業株式会社製)等が挙げられる。
【0054】
次に本発明に係る絶縁用手袋の積層構造を例示する。
図1は本発明に係る絶縁用手袋の構造を示す概念図である。
(a)は熱可塑性エラストマー層単層1のもの、(b)は芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層2又は3とウレタン樹脂エラストマーによって形成される層3又は2からなる二層一体型のもの、(c)は芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層2でウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層3を挟持し、若しくはウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層2で、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層3を挟持した二種三層一体型、(d)は内層が芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層6、中間層がウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層5、外層がウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成されるポーラス(多孔質)構造層4からなる三種三層一体型である。(e)は芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層7に補強材として基布8を含浸した単層−基布含浸型である。(f)は芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層9又は10と、ウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層10又は9からなる二層一体型のものであって、外層に基布8を含浸した二層一体−基布含浸型である。(g)は部分的に未接着部分を有する二層部分接着型である。この構造には空気層11を形成することにより絶縁性を向上させる効果がある。(h)は上記(f)に未接着部分からなる空気層11を有する二層部分接着−基布含浸漬型であり、(i)は芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層12を基布14の表面に積層した単層−基布非含浸型であり、(j)は基布14の表面に芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層15又は16とウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層16又は15を形成した二層一体−基布非含浸型である。また、その他の例として上記(d)において、層5と6を入れ替え、内層が、ウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層5中間層が芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層6、外層がウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成されるポーラス(多孔質)構造層4からなる三種三層一体型のものが挙げられる。
これらは例示であって、本発明は上記の構造に限定されるものではない。
【0055】
上記(d)の構造において、ポーラス(多孔質)構造層を例示したが、ポーラス層を設ける意味はスベリ止め効果の付与及び柔軟性の付与である。以下に具体的な例を述べる。
ウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物からなる層の上にポーラス層を設ける意図はスベリ止め効果の付与である。
この場合、内層が芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層6、中間層がウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層5、外層がウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成されるポーラス(多孔質)構造層4からなる三種三層一体型構造が好ましい。
外層にウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層があるため、機械的物性は強く、また耐油性にも優れる。
より薄く、柔軟性を求める場合にはウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物からなるポーラス層は各指先部分にのみ設けることがより好ましい。
一方、スベリ止め効果及び柔軟性を特に重要視する場合、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層の上にウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物からなるポーラス層を設ける事が好ましい。
充電回路やその近接における指先の細かい作業などに使用する手袋において、ポーラス構造層を導入した手袋は、柔軟性があり非常に有益である。
【0056】
次に本発明に係る絶縁用手袋の製造方法の一例について説明する。
(溶液Aの製造)
溶剤とイソブチレン系化合物ブロック及び芳香族ビニル系化合物ブロックから構成されるブロック共重合体と必要に応じて水添及び/または部分水添共重合体、非芳香族系ゴム用軟化剤及び石油樹脂等を適宜含有した組成物を固形分20〜40重量%、粘度500〜3000mPa・s程度に調整し充分に脱泡する。これを溶液Aとする。
(溶液Bの製造)
ウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物をジメチルホルムアミド等の溶媒で溶解・希釈することによりディッピング溶液を製造する。この際、着色剤や脱ジメチルホルムアミド調整剤等を添加してもよい。これを溶液Bとする。
(浸漬・乾燥工程)
次に陶器製の手型を上記溶液Aに静かに浸漬した後引き上げる。手型に塗布された溶液Aが偏らないように手型を回転させながら乾燥してゆく。急激な乾燥は気泡を生じさせる可能性があるため、溶媒の沸点以下で時間をかけて乾燥させることが好ましい。浸漬直後は40℃〜60℃でゲル化を図り、その後100℃〜130℃の加熱で溶媒分を揮発させることができる。
【0057】
この浸漬・乾燥工程を数回繰り返すことで、必要とする膜厚を得ることができる。乾燥工程では有機溶媒の揮発ガスが発生するので、ガスの種類により酸化型または還元型の触媒を用いて燃焼させることでこれらのガスのみならず、NOxやSOxなどを発生させない処置が必要になる。また排熱の再利用なども考慮に入れた装置が望ましい。
型上に少なくとも芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマーの皮膜を形成した後に、再び型を溶液Bに静かに浸漬した後に引き上げる。
【0058】
(脱溶媒・乾燥・脱型工程)
浸漬後、直ちに常温の水中に20〜30分間浸し、脱溶媒を図る(湿式成膜)。
脱溶媒後、水中から取り出し、表面の水滴を除去した上で、120〜140℃で30分間加熱処理する。加熱後、常温にまで戻したところで脱型する。
脱型後、130℃、45分間の加熱処理でアニール効果を得ることができる。かかる工程によって二種二層の絶縁用手袋が得られた。すなわち芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物によって形成される層を絶縁性を有する基層とし、その上層をウレタン系エラストマー又は、ウレタン系エラストマーを含有する組成物によって形成される層にて覆うことにより耐油性、耐揮発油性、耐寒性、耐候性等を付与する。また乾式脱溶媒工程では気泡のない非多孔質の構造となるが、特に滑り止め効果を付与するため及び、指先の感覚を重視するような細かな作業に対応する絶縁手袋としては、湿式脱溶媒工程によりウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物皮膜は微細な多孔質構造とするのが好ましい。
【0059】
次に他の製造方法について説明する。
(溶液A・B・Cの製造)
溶液A及び溶液Bを上記と同様の方法で得る。
次にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物をジメチルホルムアミド、MEK、キシロール等を溶媒として溶解・希釈した溶液に着色剤や耐加水分解性能補強剤等を添加し、固形分10〜20重量%、粘度500〜3000mPa・s程度に調整し充分に脱泡する。これを溶液Cとする。
【0060】
(浸漬・乾燥工程)
次に陶器製の手型を上記溶液Aに静かに浸漬した後引き上げる。手型に塗布された溶液Aが偏らないように手型を回転させながら乾燥してゆく。急激な乾燥は気泡を生じさせる可能性があるため、溶媒の沸点以下で時間をかけて乾燥させることが好ましい。浸漬直後は40℃〜60℃でゲル化を図り、その後100℃〜130℃の加熱で溶媒分を揮発させることができる。
【0061】
この浸漬・乾燥工程を数回繰り返すことで、必要とする膜厚を得ることができる。乾燥工程では有機溶媒の揮発ガスが発生するので、ガスの種類により酸化型または還元型の触媒を用いて燃焼させることでこれらのガスのみならず、NOxやSOxなどを発生させない処置が必要になる。また排熱の再利用なども考慮に入れた装置が望ましい。
手型上に芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物によって形成される皮膜を形成した後に、再び手型を溶液Cに静かに浸漬し後引き上げる。手型に塗布された溶液が偏らないように手型を回転させながら70℃程度の温度でゲル化を図る。
最下層に芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物の皮膜が形成され、その上にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物による連続皮膜が形成された型を溶液Bに静かに浸漬し引き上げ、湿式脱溶媒法で成膜することによってポーラス層を形成する。浸漬する深さは手袋の滑り止め効果を及ぼす範囲までとする。
【0062】
(脱溶媒・乾燥・脱型工程)
浸漬後、直ちに常温の水中に20〜30分間浸し、脱溶媒を図る(湿式成膜)。
脱溶媒後、水中から取り出し、表面の水滴を除去した上で、120℃〜140℃で30分間加熱処理する。加熱後、常温にまで戻したところで脱型する。
脱型後、130℃、45分間の加熱処理でアニール効果を得ることができる。かかる工程によって三種三層の絶縁用手袋が得られた。すなわち芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物からなる層を絶縁効力を有する基層とし、その上層をウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物にて連続皮膜で覆うことにより耐油性、耐揮発油性、耐寒性、耐候性、耐加水分解性を付与し、また滑り止め効果を付与するために、最上層の主に指部にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物を湿式成膜した層(ポーラス層)を設けた。
【0063】
実施例1
以下の成分を所定割合で配合してディッピング成形用の組成物を得た。
スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体:SIBSTAR073T(鐘淵化学工業株式会社製) 100重量部
水添ブロック共重合体成分:セプトン2104(SEPS) 0.4重量部
水添ブロック共重合体成分:クレイトンE−1818E(SEBS) 1.7重量部
非芳香族系ゴム軟化剤NAソルベント NAS−5H 5.3重量部
テルペン系オイル:ウッディリバー#10 3.2重量部
石油樹脂:アイマーブP−140 0.4重量部
上記の組成物100重量部を工業用キシロール150重量部に溶かしたもの(固形分40重量%)を溶液Aとし、充分に脱泡した。
更に陶器で作られた型を上記溶液Aに静かに浸漬した後引き上げた。型に付着した溶液Aが偏らないように型を回転させながら乾燥していく。浸漬直後は40℃、20分でゲル化を図り、その後100℃〜130℃の加熱を行い溶媒分を揮発させた。
この浸漬・乾燥を3回繰り返した後、型から脱型することにより厚さ400μmの芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層単層構造の手袋を得た。
【0064】
実施例1での使用原料
リビングカチオン重合によって得られるスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体[SIBS:SIBSTAR 073T(鐘淵化学工業株式会社製)]、スチレン含有量:30重量%、数平均分子量:60,000、重量平均分子量:65,000、分子量分布:1.08、硬さ:57A、不飽和結合:0%
水添共重合体成分、セプトン2104(SEPS)(商標;クラレ株式会社製)、スチレン含有量65重量%、数平均分子量70,000、重量平均分子量91,000、分子量分布1.30、水素添加率90%以上
水添共重合体成分、クレイトンE−1818E(SEBS)(商標;クレイトンポリマージャパン株式会社製)、スチレン含有量30重量%、数平均分子量160,000、重量平均分子量200,000、分子量分布1.25、水素添加率90%以上
非芳香族系ゴム軟化剤 NAソルベント NAS−5H (日本油脂(株)製)比重:0.823、種類:イソパラフィン系炭化水素油、粘度(40℃):11.0cSt、引火点:146℃ テルペン系オイル、ウッディリバー#10(ヤスハラケミカル(株)製)比重:0.80、粘度(25℃):1.14cP、沸点:167〜170℃、引火点:41.5℃
石油樹脂、アイマーブP−140(商標;出光石油化学社製)、軟化点:140℃、平均分子量:910、密度:1.03g/cm
【0065】
実施例2
(1)実施例1と同様の溶液Aを製造し、充分に脱泡した。
(2)以下の成分を攪拌し(固形分16%)溶液Bを得て、充分に脱泡した。
エステル系1液型ポリウレタン溶液:大日精化工業株式会社製レザミンCU4620LV(固形分30%) 100重量部
ジメチルホルムアミド(DMF) 87重量部
湿式成膜助剤:CUT30(大日精化工業株式会社製) 1重量部
(3)以下の成分を攪拌し希釈して(固形分18%)溶液Cを得た。
エステル系1液型ポリウレタン溶液:大日精化工業株式会社製レザミンCU4620LV(固形分30%) 100重量部
メチルエチルケトン(MEK) 67重量部
上記(1)で得られた溶液A中に、陶器で作られた型を静かに浸漬した後引き上げる。型に付着した溶液Aが偏らないように型を回転させながら乾燥していく。浸漬直後は40℃、20分でゲル化を図り、その後100℃、45分間の加熱を行い溶媒分を揮発させることで、型の表面に芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層が形成された。
この溶液Aへの浸漬・乾燥を3回繰り返すことで、膜厚400μmの芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層が形成された。
【0066】
次に上記芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層が形成された型を常温まで冷却し、上記(3)で得られた溶液Cに上記型を浸漬し引き上げた。芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層の表面部に積層された溶液Cが偏らないように型を回転させながら乾燥していく。浸漬直後は60、30分で乾燥し、その後130の加熱で溶媒分を揮発し、膜厚100μmのウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物層を形成した。(乾式脱溶媒法)
次に上記ウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物が形成された型を常温まで冷却し、上記(2)で得られた溶液Bに型を浸漬し引き上げた。溶液Bに浸漬する深さは手形の指先から親指付根付近までとした。浸漬後20℃の水中に30分入れてDMFを湿式にて脱溶媒し、その後、型を取り出し、付着した水滴を除去後、100℃、30分の乾燥を行った。(湿式脱溶媒法)
次に常温に冷却後脱型すると、最下層に芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層、その上に第二層のウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物の乾式層、そして指先からの親指根元付近にかけて、ウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物の湿式成膜層(ポーラス層)が形成された柔軟な三種三層一体型の手袋を得ることができた。
【0067】
実施例3
(1)実施例1と同様の溶液Aを製造し、充分に脱泡した。
(2)実施例2で得られた溶液Cを製造し、充分に脱泡した。
上記(2)で得られた溶液C中に、陶器で作られた型を静かに浸漬した後引き上げる。型に付着した溶液Cが偏らないように型を回転させながら65℃、30分間乾燥を行う。そして型の表面に厚さ50μmのウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物が形成された。
次に上記ウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物層が形成された型を常温まで冷却し、上記(1)で得られた溶液Aに上記型を浸漬し引き上げた。ウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物層の表面部に積層された溶液Aが偏らないように型を回転させながら乾燥していく。浸漬直後は40℃、20分でゲル化を図り、その後100℃、45分の加熱で溶媒分を揮発した。
この溶液Aの浸漬・乾燥を2回繰り返すことにより、膜厚が200μmの芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層が形成された。
次に上記芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層が形成された型を常温まで冷却し、上記(2)で得られた溶液Cに再度浸漬し引き上げた。付着した溶液Cが偏らないように型を回転させながら65℃で乾燥し、その後130℃の加熱で溶媒分を揮発させ、膜厚が100μmのウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物層を形成した。(乾式脱溶媒法)
このようにして最下層にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物乾式層、その上に第二層の芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層、そして更にその上にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物層の乾式層が形成された二種三層一体型の手袋を得ることができた。
【0068】
比較例1
ウレタン系エラストマー単体構造の製品として、三恵工業株式会社で製造・販売している低圧ウレタン手袋を用意した。この製品は300V以下の充電電路で使用可能な電気絶縁手袋であり、ウレタン系エラストマー単層で成形されたものである。
【0069】
比較例2
次に加硫ゴム単層の製品として、月星化成株式会社で製造している400V用低圧手袋(厚生労働省の型式検定合格番号F678号)を用意した。
上記の実施例1〜3及び比較例1及び2の手袋について、以下の試験を行い、その結果を表1に示す。
(1)3000V耐電圧試験
JIS T 8112−1997「電気用ゴム手袋」に基づく試験をした。3000V−1分間実施した際に、フラッシュオーバ、貫通破壊、その他の電気的破壊を生じないことを及び充電電流値は5mAであるものを◎とし、それ以外は×とした。その結果を表1に示す。
(2)引張り・伸び試験
JIS T 8112−1997「電気用ゴム手袋」に基づく試験をした。引張強さ14MPa(142.8kgf/cm2)以上、伸び600%以上のものを◎、それぞれの値が、100%未満80%以上を○、80%未満60%以上を△、60%未満を×とした。その結果を表1に示す。
(3)耐水後の耐電圧試験
上記(1)の試験後、手袋をそのまま水中に浸漬したまま放置し、6時間後に再び耐電圧試験を実施した。結果判定基準は、基本は上記(1)と同一条件とした。その結果を表1に示す。常態での変化のないものを◎、20%以上充電電流値が増加したものを○、40%以上増加したものを△とした。
(4)耐水後の物理試験
手袋の平坦な部分から3号ダンベルで試料を採取し、その試料を水中に6時間浸漬したものを用いて物理試験を実施した。その結果を表1に示す。水中浸漬前の引張り強さと伸び率に対する残留率で評価した。残留率が90%以上を◎、80%以上90%未満を○、70%以上80%未満を△、70%未満を×とした。
【0070】
(5)耐油性試験
手袋の平坦な部分から3号ダンベルで試料を採取し、その試料をJIS−C−2320「電気絶縁油」に規定された2号絶縁油(以下「絶縁油」という)中に6時間浸漬したものを用いて実施例3と比較例2の対比物理試験を実施した。厚さは浸漬前に測定し、標線は浸漬後に記すものとした。ここでは耐油性試験前の引張り強さと伸び率に対する残留率で評価した。その結果を表2に示す。残留率が90%以上のものを◎、80%以上90%未満を○、70%以上80%未満を△、70%未満を×とした。ただし、残留率にかかわらず、油中に浸漬したことで著しく膨潤や変形したり、手袋として使用できないような状態になったものは×とした。
(6)片面耐油性試験
絶縁油が手袋の内側に入らないよう注意しながら手袋全体を指先を下に向け絶縁油中に浸漬する。手袋保持のため絶縁油面より出ている部位は裾部3cm程度とした。試験試料としては実施例2、実施例3及び比較例2で得られた手袋を用いた。また、手袋が浮き上がらないよう手袋内部に鋭利な角を持たない重りを使用した。6時間浸漬した後、絶縁油を拭き取り、平坦な部位から3号ダンベルを用いて試料を各2片ずつ(試験試料1、2)採取した。厚さは浸漬前に測定し、標線は浸漬後に記すものとした。その結果を表3に示す。ここでは耐油性試験前の引張り強さと伸び率に対する残留率で評価した。残留率が90%以上のものを◎、80%以上90%未満を○、70%以上80%未満を△、70%未満を×とした。ただし、残留率にかかわらず、絶縁油に浸漬したことで著しく膨潤や変形したり、手袋として使用できないような状態になったものは×とした。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
表1〜3に示すとおり、本発明に係る実施例1〜3の手袋は、現在使用されている比較例2加硫ゴム単層の手袋と同じ電流値が得られたことから、交流電圧300V以上の電路作業において十分使用し得る絶縁性を有するものである。また、比較例1ウレタン系エラストマー単層構造の手袋は極めて絶縁性に劣る。
上記実施例1〜3の手袋は、比較例2の手袋と比較して同等の絶縁性を約半分の厚みで実現しており、絶縁性と柔軟な作業性を併せ持つ手袋であることが分かった。
実施例3の手袋は、常態の引張り・伸び試験結果のとおり、加硫ゴムで作られた手袋に対するJIS規格(JIS T−8112)をも満たす優れた強度を示し、かつ以下のように耐油性にも優れる。
両面耐油性の点では、実施例3の二種三層一体型手袋は比較例2加硫ゴム単層手袋に対し優れ、また、片面耐油性の点では、実施例2三種三層一体型手袋及び実施例3の二種三層一体型手袋は比較例2加硫ゴム単層手袋に対し、優れる。
【符号の説明】
【0075】
1 芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物単層
2,3 芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層又はウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物層
8 基布
11 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最下層に芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体又は、芳香族ビニル化合物系ブロックを有するブロック共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物層、
前記熱可塑性エラストマー組成物層上にウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物の乾式層、
指先からの親指根元付近にかけて、前記乾式層上に、ウレタン系エラストマー又はウレタン系エラストマーを含有する組成物の湿式成膜層(ポーラス層)が形成された三種三層一体型の絶縁用手袋。

【図1】
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【公開番号】特開2012−162843(P2012−162843A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−126932(P2012−126932)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【分割の表示】特願2010−98478(P2010−98478)の分割
【原出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(594173382)三恵工業株式会社 (9)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】