説明

絶縁電線の製造方法

【課題】形成される絶縁層の偏肉を防止するとともに、塗布ダイスを開口部の直径が異なるものに交換するための煩雑な交換作業を必要とせず、絶縁塗料の変更のための液槽の洗浄による絶縁塗料の損失を防止し、絶縁電線の製造コストを低減させる絶縁電線の製造方法を提供することを提供すること。
【解決手段】導体および該導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線の製造方法であって、液状の絶縁塗料を微滴化して噴霧し、導体に直接または他の層を介して付着させた後、絶縁塗料の焼付けを行うことにより絶縁層を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線の製造方法に関する。さらに詳しくは、絶縁電線を製造する際に、導体に絶縁塗料を付着させるための液槽および塗布ダイスの使用を不要とする絶縁電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁電線の製造方法として、絶縁塗料が充填された液槽に導体を浸漬することによって導体の表面に絶縁塗料を付着した後、焼付けることによって絶縁電線を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、この方法は、図2に示されるように、絶縁塗料13が充填された液槽11に導体12を矢印A方向に走行させ、浸漬することによって導体12に絶縁塗料13を付着させ、この絶縁塗料13が付着した導体12を塗布ダイス14の開口部に挿通させ、導体12の外周に付着した余剰の絶縁塗料13を除去した後、焼付炉15で焼付けることによって絶縁電線を製造する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−123759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、図2に示される方法には、塗布ダイス14を必要とするため、塗布ダイス14の開口部に挿通した導体12を走行させたとき、導体12の振れにより、形成される絶縁層に偏肉が生じるおそれがある。さらにこの方法には、絶縁塗料13を付着させる対象の導体12をそれとは異なる直径を有する導体12に変更したときや、導体表面に形成される絶縁層の厚さを変更したときには、塗布ダイス14を開口部の直径が異なるものに交換しなければならず、その交換作業が煩雑となるとともに絶縁塗料の損失が生じる。
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、形成される絶縁層の偏肉を防止するとともに、塗布ダイスを開口部の直径が異なるものに交換するための煩雑な交換作業を必要とせず、絶縁塗料の変更のための液槽の洗浄による絶縁塗料の損失を防止し、絶縁電線の製造コストを低減させる絶縁電線の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の絶縁電線の製造方法は、導体および該導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線の製造方法であって、液状の絶縁塗料を微滴化して噴霧し、導体に直接または他の層を介して付着させた後、絶縁塗料の焼付けを行い、絶縁層を形成することを特徴とする。
【0007】
本発明の絶縁電線の製造方法は、従来技術のような塗布ダイスを必要としないので、塗布ダイスの開口部に挿通した導体を走行させたとき、導体の振れにより、形成される絶縁層に偏肉が生じることを回避することができる。さらに、本発明の絶縁電線の製造方法は、塗布ダイスを必要としないので、絶縁塗料を付着させる対象の導体をそれとは異なる直径を有する導体に変更したときや、導体表面に形成される絶縁層の厚さを変更したときに、従来技術のように塗布ダイスを開口部の直径が異なるものに交換するという煩雑な交換作業が不要となる。また、本発明の絶縁電線の製造方法では、別の種類の絶縁電線を製造するときに、絶縁塗料の変更のための液槽の洗浄やダイスの交換のための作業が不要となる。
【0008】
本発明の絶縁電線の製造方法において、インクジェットヘッドを用いて絶縁塗料を導体の表面に噴霧した場合には、絶縁塗料を狭い範囲内で噴霧することができるので、絶縁塗料の飛散を防止し、高均一かつ高速で導体の所定位置に適切に絶縁塗料を噴霧によって付着させることができる。
【0009】
本発明の絶縁電線の製造方法において、絶縁塗料として、2液型の絶縁塗料を用いた場合には、絶縁塗料の保存安定性を高めることができ、絶縁塗料を噴霧する直前に2液を混合し、絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させた後、絶縁塗料の焼付けを行うときの焼付け時間の短縮化を図ることができる。2液型の絶縁塗料としては、例えば、樹脂とその硬化剤を用いることができる。
【0010】
本発明の絶縁電線の製造方法において、導体の周囲に複数の噴霧ノズルを配設し、当該噴霧ノズルから絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させた場合には、噴霧によって絶縁塗料を均一に導体に付着させることができる。
【0011】
本発明の絶縁電線の製造方法において、絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させ、絶縁塗料の焼付けを行い、絶縁層を形成することからなる操作を繰り返して行った場合には、噴霧によって絶縁塗料をより均一に導体に付着させることができるとともに、ピンホールの発生を抑制し、耐電圧特性に優れた絶縁層を形成することができる。
【0012】
本発明の絶縁電線の製造方法において、絶縁塗料が超臨界流体で希釈されたものである場合には、超臨界流体が用いられているので、可燃性や毒性のある有機溶媒を用いることが必要でなくなることから、環境に対する影響を低減させることができる。
【0013】
本発明の絶縁電線の製造方法において、超臨界流体が、超臨界二酸化炭素である場合には、超臨界二酸化炭素は、臨界点以下の温度で気化して飛散するので、容易に絶縁塗料からなる絶縁層を形成させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の絶縁電線の製造方法によれば、形成される絶縁層に偏肉を防止するとともに、塗布ダイスを開口部の直径が異なるものに交換するための煩雑な交換作業を必要とせず、絶縁塗料の変更のための液槽の洗浄による絶縁塗料の損失を防止し、絶縁電線の製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の絶縁電線の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。
【図2】従来の絶縁電線の製造方法の一実施態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の絶縁電線の製造方法は、前記したように、導体および該導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線の製造方法であって、液状の絶縁塗料を微滴化して噴霧し、導体に直接または他の層を介して付着させた後、絶縁塗料の焼付けを行い、絶縁層を形成することを特徴とする。
【0017】
導体としては、特に限定がなく、例えば、銅線などが挙げられる。導体の直径(導体径)は、絶縁電線の強度を確保する観点から、好ましくは0.02mm以上である。導体の直径(導体径)の上限値は、特に限定されず、絶縁電線の用途などに応じて適宜決定すればよいが、一般的な絶縁電線では、4mm程度までである。また、導体の形状は、特に限定されず、例えば、丸線、平角線、多角形状の線などが挙げられる。
【0018】
絶縁塗料としては、例えば、絶縁性を有する樹脂を溶媒に溶解させた絶縁塗料、絶縁性を有する樹脂を加熱溶融させた絶縁塗料、樹脂とその硬化剤とからなる2液型の絶縁塗料などが挙げられる。これらの絶縁塗料のなかでは、樹脂とその硬化剤とからなる2液型の絶縁塗料は、絶縁塗料を噴霧する直前に樹脂とその硬化剤とを混合し、得られた絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させた後、絶縁塗料の焼付けを行うときに、その焼付け温度の低温化および焼付け時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
前記樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。
【0020】
ポリウレタンには、ポリエステル系ポリウレタンとポリエーテル系ポリウレタンとがある。ポリエステル系ポリウレタンは、例えば、アジピン酸と多価アルコールとを重縮合させることによって得られるアジペートと、ジイソシアネートとを重付加反応させることによって得ることができる。ポリエーテル系ポリウレタンは、例えば、ポリ(オキシプロピレン)グリコール(PPG)やポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)などの二官能ポリエーテルとジイソシアネートとを反応させることによって得ることができる。
【0021】
絶縁性を有する樹脂としてポリウレタンを用いる場合には、焼付け温度の低温化および焼付け時間の短縮化を図る観点から、絶縁塗料を導体に噴霧する直前に二官能ポリエーテルとジイソシアネートとを混合し、得られた混合物を反応させて絶縁塗料を調製しながら導体に噴霧することが好ましい。
【0022】
ポリエステルイミドは、例えば、トリカルボン酸無水物とジアミンとの反応生成物であるイミドジカルボン酸と多価アルコールとを反応させることによって得ることができる。
【0023】
絶縁性を有する樹脂を溶媒に溶解させた絶縁塗料に使用される溶媒としては、超臨界流体、有機溶媒などが挙げられる。
【0024】
超臨界流体は、臨界温度以上の温度および圧力においた物質のことを意味し、気体の拡散性と液体の溶解性の性質を有する。超臨界流体は、可燃性や毒性のある有機溶媒を用いることが必要でなくなることから、環境に対する影響を低減させることができるという利点を有する。超臨界流体としては、例えば、超臨界二酸化炭素、超臨界水、超臨界メタン、超臨界エタン、超臨界プロパン、超臨界メタノール、超臨界エタノール、超臨界アセトンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの超臨界流体のなかでは、超臨界二酸化炭素は、臨界点以下の温度で気化して飛散するので、容易に絶縁塗料からなる絶縁層を形成させることができるという利点を有する。超臨界流体の量は、導体の表面に付着させるときに絶縁塗料が所望の粘度を有するように調整することが好ましい。なお、飛散した超臨界流体は、回収して再利用することができる。
【0025】
有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサエチルリン酸トリアミド、γ−ブチロラクトンなどの極性有機溶媒をはじめ、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロへキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素化合物;ジクロロメタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素化合物;クレゾール、クロロフェノールなどのフェノール類;ピリジンなどの第三級アミン類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶媒の量は、導体の表面に付着させるときに絶縁塗料が所望の粘度を有するように調整することが好ましい。
【0026】
絶縁塗料の粘度は、絶縁塗料を導体に均一に付着させることができればよく、特に限定されない。絶縁塗料の粘度は、通常、絶縁塗料を噴霧させる噴霧ノズルの種類、絶縁塗料に使用される樹脂の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、噴霧ノズルの種類、絶縁塗料に使用される樹脂の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。絶縁塗料の粘度は、例えば、絶縁塗料の固形分量や溶媒量などを調節することによって調整してもよく、あるいは絶縁塗料を導体に付着させるときの絶縁塗料の温度を調節することによって調整してもよい。
【0027】
従来の絶縁塗料が充填された液槽に導体を浸漬することによって導体に絶縁塗料を付着させ、絶縁塗料が付着した導体を塗布ダイスの開口部に挿通させ、導体の外周に付着した余剰の絶縁塗料を除去した後、焼付炉で焼付ける方法(以下、従来法という)では、塗布ダイスによって均一な絶縁皮膜を形成させるために絶縁塗料が低粘度を有することが必要である。これに対して、本発明では、絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させるという手段が採られているので、絶縁塗料が高粘度を有するものを使用することができる。
【0028】
また、従来法によれば、通常、絶縁性を有する樹脂を有機溶媒に溶解させることによって調製された絶縁塗料が用いられている。これに対して、本発明では、絶縁塗料として、絶縁性を有する樹脂を有機溶媒に溶解させることによって調製された絶縁塗料のみならず、絶縁性を有する樹脂を加熱溶融させた絶縁塗料や、樹脂とその硬化剤とからなる2液型の絶縁塗料を用いることができる。
【0029】
絶縁性を有する樹脂を加熱溶融させた絶縁塗料や、樹脂とその硬化剤とからなる2液型の絶縁塗料を用いた場合には、必ずしも有機溶媒を使用する必要がなく、有機溶媒を使用する場合であっても、その使用量を低減させることができる。したがって、これらの絶縁塗料を用いた場合には、有機溶媒が大気中に揮散することによる大気汚染を抑制することができるという利点がある。
【0030】
絶縁塗料を導体に付着させるときの絶縁塗料の温度は、使用する設備によっても異なるが、通常、常温〜50℃であることが好ましい。
【0031】
絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させる際には、例えば、図1に示されるように、インクジェットヘッドなどの噴霧ノズルを有する吐出ヘッド1を使用することができる。噴霧ノズルを有する吐出ヘッド1を導線2の近傍に配設した場合には、噴霧ノズルの温度を容易に制御することができる。したがって、高粘度を有する絶縁塗料であっても噴霧ノズルで絶縁塗料の加熱温度を制御することにより、その絶縁塗料を低粘度化させることができるので、噴霧ノズルから絶縁塗料を容易に噴霧することができる。なお、吐出ヘッド1には、導管3を介して絶縁塗料が充填された絶縁塗料用容器4から絶縁塗料が導入される。絶縁塗料用容器4は、必ずしも容器形状を有するものでなくてもよく、例えば、2液型の絶縁塗料を用いる場合には、2液混合機であってもよい。
【0032】
噴霧ノズルの孔径は、使用される絶縁塗料の粘度およびノズルから噴霧される絶縁塗料の噴霧形態などに応じて適宜決定することができる。
【0033】
噴霧ノズルから絶縁塗料を噴霧させるとき、吐出ヘッドとしてインクジェットヘッドを用いて導体の表面に絶縁塗料を噴霧することが好ましい。インクジェットヘッドを用いた場合、絶縁塗料を狭い範囲内で噴霧することができるので、絶縁塗料の飛散を防止し、高均一かつ高速で導体の所定位置に適切に塗料を噴霧によって付着させることができる。
【0034】
インクジェットヘッドを用いる場合、絶縁塗料が内蔵されている室内に圧電素子を配設し、この圧電素子の振動を利用して絶縁塗料の圧力を瞬間的に高めることによって絶縁塗料をインクジェットヘッドの噴霧ノズルから噴霧させたり、あるいは絶縁塗料が内蔵されている室内に発熱素子を配設し、この発熱素子によって絶縁塗料を加熱することにより、気泡を発生させ、この気泡の破裂によりインクジェットヘッドの噴霧ノズルから噴霧させることができる。これらは、オンデマンド方式と呼ばれているものであり、無駄な絶縁塗料の消費がなく、迅速に絶縁塗料を導体に噴霧することができるという利点を有している。
【0035】
絶縁塗料の1回あたりの噴霧量は、絶縁塗料の種類や粘度などによって異なるので一概には決定することができない。例えば、インクジェットを使用した場合には、1回あたり10〜1000pl(ピコリットル)の量で絶縁塗料を導体に噴霧することができる。
【0036】
絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に絶縁塗料を均一に付着させる観点から、一方向のみならず多方向から絶縁塗料を導体の表面に噴霧し、導体に均一な絶縁層を形成させることが好ましい。この場合、導体の周囲に複数の噴霧ノズルを配設し、当該噴霧ノズルから絶縁塗料を噴霧し、導体の表面全体に絶縁塗料を均一に付着させることにより、均一な皮膜厚さを有する絶縁層を形成することができる。
【0037】
導体の周囲に配設される噴霧ノズルの個数は、導体の表面全体に均一な絶縁層を形成させることができればよく、特に限定されない。導体の周囲に配設される噴霧ノズルの個数は、個々の導体に合わせて最適となるように選定することが好ましい。
【0038】
絶縁塗料は、導体の表面に直接付着させてもよく、他の層を介して付着させてもよい。絶縁塗料を導体に付着させた後に、焼付けを行う。焼付けの際の焼付け温度は、絶縁塗料の種類によって異なるため一概には決定することができないが、耐電圧特性を高める観点から、通常、300〜450℃であることが好ましい。
【0039】
本発明では、絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させた後、絶縁塗料の焼付けを行い、絶縁層を形成する操作を繰り返して行うことが、噴霧によって絶縁塗料をより均一に導体に付着することができるとともに、ピンホールの発生を抑制する観点から好ましい。前記操作の繰り返し数(以下、噴霧回数という)は、導体の表面に形成される絶縁層の皮膜厚さによって異なるが、通常、7〜30回程度である。
【0040】
形成された絶縁層の皮膜厚さは、本発明の絶縁電線の用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、導体を保護する観点から、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、絶縁電線を用いて製造されるコイルの大きさを小さくする観点から、好ましくは40μm以下である。
【0041】
本発明の製造方法を用いると、導体に部分的に絶縁塗料を付着することも可能となるので、部分的に絶縁層のない箇所を設けた絶縁電線や、部分的に絶縁層を薄くした絶縁電線を製造することができる。
【0042】
また、複数のノズルを用い、種類の異なる絶縁塗料を同時に付着させることも可能となる。従来の方法では、塗布回数を重ねることで種類の異なる絶縁塗料を層状に重ねることは可能であったが、本発明の製造方法では、1つの絶縁層内に複数の異なる絶縁塗料を有する絶縁電線も製造可能となる。例えば、縦縞模様や横縞模様の入った絶縁電線が例示できる。
【0043】
また、端子処理を行なうコイルに使用する絶縁電線の場合には、端子処理(半田付け等によって絶縁皮膜を除去)する部分には耐熱性の低い樹脂を付着させ、その他の部分には耐熱性の高い樹脂を付着させることで、耐熱性と半田付け性とを両立させることができる絶縁電線を得ることができる。
【0044】
すなわち、軸直角方向の断面において、導体中心から一定半径の円周上で異なる樹脂で被覆されている絶縁電線、軸方向において、異なる樹脂で被覆されている絶縁電線、模様入りの絶縁電線を製造することができる。
【0045】
このようにして本発明の絶縁電線の製造方法によって得られる絶縁電線は、例えば、モータなどに用いることができるほか、自動車のイグニッションコイル用電線などとして用いることができる。
【0046】
以上開示された実施の形態は、すべての点で例示的であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 吐出ヘッド
2 導体
3 導管
4 絶縁塗料用容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体および該導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線の製造方法であって、液状の絶縁塗料を微滴化して噴霧し、導体に直接または他の層を介して付着させた後、絶縁塗料の焼付けを行うことにより絶縁層を形成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
【請求項2】
インクジェットヘッドを用いて絶縁塗料を導体の表面に噴霧する請求項1に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項3】
絶縁塗料として、2液型の絶縁塗料を用い、絶縁塗料を噴霧する直前に2液を混合する請求項1または2に記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項4】
導体の周囲に複数の噴霧ノズルを配設し、当該噴霧ノズルから絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させる請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項5】
絶縁塗料を噴霧することによって導体の表面に付着させ、絶縁塗料の焼付けを行い、絶縁層を形成することからなる操作を繰り返して行う請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項6】
絶縁塗料が超臨界流体で希釈されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の絶縁電線の製造方法。
【請求項7】
超臨界流体が、超臨界二酸化炭素である請求項6に記載の絶縁電線の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−277988(P2010−277988A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71364(P2010−71364)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(309019534)住友電工ウインテック株式会社 (67)
【Fターム(参考)】