説明

継手構造

【課題】接続管が傾くことを抑制し、高い気密性および信頼性で接続可能な継手構造を提供する。
【解決手段】ホルダー8を介して金属製ガスケット20を保持する接続管1aに他の接続管1bを近接対向させ、フランジ2a,2bの外周を取り囲むようにセンターリング9を装着する。傾斜面3a,3bを両側辺とする台形部分を溝14内に挿入しながら、セグメント10a〜10cを閉じてリング状にする。ボルト11をねじ穴13にねじ込み、傾斜面3a,3bを両側辺とする台形部分を溝14内へ挿入し、フランジ2a,2b間の間隔を小さくし、ガスケット20の両面に突起6a,6bを圧接させる。この時、フランジ2a,2bの傾斜面3a,3bとフランジ側つば部4a,4bとの間の溝部5a,5b内に、クランプリング10の突条19を進入させることにより、クランプリング10の縮小動作をガイドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接続管の接続用の継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や一般産業機械などにおいて、空気、純水、温度調整用の冷水または温水、有機系薬液などの流体の搬送のために、接続管を含む管路構成が用いられている。このような管路構成には、接続管を他部材、例えばもう1つの接続管や装置筐体の流体出入口に接続させるための継手構造が含まれている。
【0003】
従来、1対の接続管を互いに接続させる継手構造として、例えば各接続管の先端面同士を互いに密着させて保持する構成がある。その場合、気密性を高めるために両先端面間にゴム製のOリングが挟み込まれる。各先端面にはOリングを保持するための溝が形成される。なお、各接続管の先端面にそれぞれフランジが形成されている場合もある。
【0004】
しかし、近年、例えば半導体製造装置などにおいて、特に反応室への気体供給部では、ほんの僅かでも不純物が混入したり、流体の圧力や流量が変動したりするだけで、使用不能な不良品を製造してしまうことがある。従って、このような位置に設けられる管路構成には、以前に比べてはるかに高いレベルの気密性が要求される。前記したようにOリングを用いた構成では、Oリングの材料であるゴムの性質上、格別に高い気密性を実現するのは困難であり、また、ゴムの経年劣化による信頼性の低下を招き易い。さらに、流通する気体とゴムとが化学反応を生じて変質してしまう可能性も否定できない。
【0005】
そこで、特許文献1および特許文献2には、Oリングに替えて、リング状の金属製のガスケットを、接続管(管状継手部材)の先端面同士の間に挟み込む構成が提案されている。これらの構成では、各先端面に環状のシールビード(突起)を設け、これらのシールビードをガスケットの両面にそれぞれ当接させている。特許文献1,2の構成では、一方の接続管の外周の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部と、他方の接続管に係合する係合部とを有する連結ナットが用いられている。連結ナットの雄ねじ部を接続管の雌ねじ部に深くねじ込むことによって、両先端面の各シールビードによってガスケットを両側から強く押圧して、高い気密性を実現している。
【0006】
特許文献1に記載された構成では、一方の接続管の雄ねじ部を連結ナットの雌ねじ部に深くねじ込むことによって高い気密性を実現しているが、このねじ込みの際に、摩擦力によって連結ナットと一緒に他方の接続管も回転することがある。その際に、回転する接続管のシールビードと、そのシールビードが圧接するガスケットとの間に摩擦が生じ、金属の微細粒子(パーティクル)が発生して浮遊する。この微細粒子は、流通する気体中に混入する不純物となる。また、パーティクルの発生だけでなく、接続管の回転により面シール部に傷ができ、そこからリークし易くなる。
【0007】
仮に、この継手の組立完了時には微細粒子が発生しなかった場合や、組立完了直後に微細粒子を除去してから実際の使用に供した場合であっても、長期の使用の間に微細粒子が発生する可能性がある。すなわち、前記したように連結ナットの回転と一緒に他方の接続管が回転した場合、他方の接続管の先端部分がねじれた状態で保持されることがある。この場合、接続管の反発力によってその接続管がねじれを解消する方向に徐々に移動したり、温度変化に伴う膨張または収縮によって1対の接続管を互いに固定させる力が弱まったときに、接続管がねじれを解消する方向に移動したりする可能性がある。その結果、シールビードとガスケットの間に摩擦が生じて、金属の微細粒子が発生して浮遊する可能性がある。また、このようなパーティクルの発生に加えて、前述した1対の接続管を互いに固定させる力が弱まったことにより保持力が低下し、リークし易くなる。
【0008】
このように、特許文献1の構成によると、継手構造の、外部に対する高い気密性が得られるものの、継手構造の内部において金属の微細粒子が発生して、継手構造内を流通する流体に混入する不純物となる可能性がある。特に、半導体製造装置の気体供給部にこの継手構造が採用されている場合に、シールビードと金属製ガスケットとの摩擦により生じた微細粒子が不純物として混入することは、所望の半導体を製造できなくなる致命的な問題になる。
【0009】
特許文献2に記載の構成では、他方の接続管(管状継手部材)と連結ナットの係合部との間に、スラスト玉軸受が配置されている。このスラスト玉軸受によって、連結ナットと他方の接続管とが共回りすることが防げる。その結果、金属の微細粒子(パーティクル)の発生を抑えることができ、また、リークの危険性を小さくすることができる。しかし、この構成では、スラスト玉軸受を用いるために、この継手構造の組み立て工程が煩雑になり、製造コストおよび組み立て時間が増大する。
【0010】
なお、特許文献1,2のいずれにおいても、一方の接続管(管状継手部材)の外周に雄ねじを形成するために製造が煩雑になっている。また、一方の接続管の雄ねじ部と連結ナットの雌ねじ部とを螺合させる際には、例えば工具として2つのスパナ等を用いて、接続管と連結ナットのうちの一方を固定しつつ他方を回転させるのが一般的である。このとき、雄ねじ部と雌ねじ部とを十分に締め付けるためにスパナ等の工具を取り扱うスペースが十分でないことがある。すなわち、一方の接続管の雄ねじ部を連結ナットの雌ねじ部にねじ込んで継手構造を構成した状態では、この継手構造の周囲にあまり広いスペースが存在せず、管路を構成する様々な部材や、装置の筐体の一部などが存在することが多い。また、半導体製造装置等において多系統の管路構成が設けられ、それぞれの管路に前記した継手構造がそれぞれ含まれている場合がある。このような状態で、何らかの理由で両ねじ部の締め付けが不十分である時には、前記したように2つのスパナ等を用いてさらに締め付ける必要があるが、作業者がスパナ等の工具を自由に操作することが困難である。具体的には、例えば特許文献1,2の構成の場合、一方の接続管が回転しないように押さえるためのスパナと、連結ナットを回転させるためのスパナとの2本のスパナを用いる必要があり、しかも、比較的大きな力を加えて効率よくしっかりと締結するためには、作業時のスパナのストロークを大きくとることが望ましい。その際に、前記したように継手構造の周りに十分な空きスペースがないと、作業者が2本のスパナを用いて作業するのが困難であり、その結果、十分な締め付け力が得られない可能性がある。特に、一旦締め付けを行った後に締結が緩んだ際の再締め付けの作業は困難である。
【0011】
そこで、特許文献3は、図7に示すように、1対の接続管21a,21bにそれぞれ設けられたフランジ22a,22b同士を、金属製ガスケット26を介して対向させた状態で、複数のセグメントからなり、各フランジ22a,22bに設けられた下り勾配の傾斜面23a,23bに対応する対応傾斜面24a,24bが設けられているクランプリング25を、両フランジ22a,22bの外周を取り囲むように装着する構成が提案されている。この構成によると、フランジ22a,22bの傾斜面23a,23bを両側辺とする台形部分をクランプリング25の内周部の溝内に挿入しながら、両端のセグメントを近接させて互いに固定することにより、両フランジ22a,22bが金属製ガスケット26に密着する。従って、接続管21a,21bがねじれた状態で保持されることなく、高い気密性および高い信頼性で接続管21a,21bを接続でき、内部において金属の微細粒子が発生するおそれが小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平2−62756号公報
【特許文献2】特許第3517719号公報
【特許文献3】特開2008−286325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記したように特許文献3は優れた効果を有するが、対応傾斜面24a,24bが傾斜面23a,23b上を摺動しながらクランプリング25が固定される構成であるため、操作が容易である反面、接続管21a,21bが少し傾いた状態(例えば±3度程度の傾斜状態)でも固定可能である。このように接続管21a,21bが傾いた状態で固定されると、気密性が失われる可能性がある。また、仮に気密性が確保できたとしても、接続管21a,21bが傾いて保持されるため、外観を損なうとともに、無駄に広いスペースが必要となり、継手構造を含む機械のレイアウトの制限となるおそれがある。
【0014】
そこで本発明の目的は、接続管が傾くことを抑制し、高い気密性および高い信頼性で接続可能であって、内部において金属の微細粒子が発生するおそれが小さい継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、先端部にフランジを有する1対の接続管を接続する継手構造において、1対の接続管の前記フランジ同士が対向した状態で、両フランジによって両側から圧接される、平らなリング状の金属製ガスケットと、金属製ガスケットの少なくとも一部に係合する係合部を有し、一方の接続管に保持されるホルダーと、1対の接続管のフランジ同士が金属製ガスケットを挟んで対向した状態で、両フランジの外周を取り囲むように装着可能なセンターリングと、一続きに並べられ、隣り合うもの同士が互いに揺動可能に連結されている複数のセグメントからなり、複数のセグメントのうち一端に位置するセグメントと他端に位置するセグメントとが締結部材によって互いに固定されたときに、全てのセグメントにより、金属製ガスケットを挟んで互いに対向するフランジの外周の全周を覆って保持するリング形状を構成するクランプリングと、を有し、金属製ガスケットと各フランジの互いに当接する面のいずれか一方に環状の突起が設けられており、1対の接続管の各フランジと金属製ガスケットは、それぞれの開口部が連通し、かつ両フランジの中心線が一致するように配置されており、各フランジは、その外周から接続管の先端部と反対側に向かう下り勾配の傾斜面を有し、クランプリングの各セグメントは、内周部に、各フランジの傾斜面にそれぞれ対応する対応傾斜面を有し、フランジとクランプリングの各セグメントの内周面とのいずれか一方にはつば部が形成されており、他方にはつば部に当接する当接面が形成されていることを特徴とする。
【0016】
各フランジに、傾斜面に対向するフランジ側つば部が形成され、クランプリングの各セグメントの内周部に、各フランジのフランジ側つば部に当接する当接面が形成されていてもよい。その場合、各フランジの傾斜面とフランジ側つば部との間に、フランジの外周に位置する溝部が形成されており、クランプリングの各セグメントの対応傾斜面と当接面との間に、各フランジの溝部に対応する形状の突条が形成されている。
【0017】
クランプリングは、金属製ガスケットを挟んで互いに対向するフランジの外周の全周を覆って保持するリング形状を構成している状態で、締結部材が一端のセグメントと他端のセグメントとをより近接させるほど、クランプリングの各セグメントは、各対応傾斜面が各フランジの各傾斜面に沿って摺動するとともに各当接面が各フランジの各フランジ側つば部に沿って摺動しながら突条が溝部内に進入するように、半径方向内側に移動して、金属製ガスケットを挟んでフランジ同士をより緊密に保持可能なものであり、クランプリングによって金属製ガスケットを挟んでフランジ同士が緊密に保持された状態で、突起がそれに対向する面に食い込みまたは潰される。
【0018】
また、各フランジの、接続管の先端部と反対側に当接面が形成され、クランプリングの各セグメントの内周部に、フランジの当接面に当接するクランプリング側つば部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の継手構造によると、接続管がねじれた状態で保持されることがないので、簡単な構成で、継手外部に対する高い気密性を確保することができる。そして、継手外部に対する高い気密性と、継手内部における不純物である微細粒子の発生防止とを容易に両立することができる。
【0020】
さらに、本発明によると、接続の信頼性を高めるには締結部材を強く締め付ければよい。特に、この締結部材として、例えばボルトおよびナットやアイボルトを用いる場合には、複数のスパナ等を用いる必要はなく、ドライバーやレンチ等を回転させるだけでよい。このボルトおよびナットやアイボルトは継手全体の大きさに比べて比較的小さくてもよく、しかも、スパナのように大きなストロークを必要としない。従って、多系統の管路構成が設けられ、それぞれの管路に継手構造がそれぞれ含まれているような場合にも、作業性よく接続作業が行え、接続の信頼性を高めることができる。
【0021】
そして、本発明によると、接続管のフランジに、傾斜面と対向するフランジ側つば部が設けられるか、あるいは、クランプリングに、フランジの当接面に当接するクランプリング側つば部が設けられることによって、接続管が傾いた状態でクランプリングにより固定されることが抑制され、より高い気密性および信頼性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の第1の実施形態の継手構造の正面断面図である。
【図1B】本発明の第1の実施形態の継手構造の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の継手構造の組立工程を示す正面断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の継手構造の、図2に続く組立工程を示す正面断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の継手構造に用いられるクランプリングの、締結部材を取り外して開いた状態の斜視図である。
【図5A】本発明の第1の実施形態の継手構造の、図3に続く組立工程を示す正面断面図である。
【図5B】本発明の第1の実施形態の継手構造の、図3に続く組立工程を示す側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の継手構造の側面図である。
【図7】特許文献3に記載の継手構造の一例の正面断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態の継手構造の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
図1A,図1Bに本発明の第1の実施形態の継手構造の完成状態が示されている。本実施形態の継手構造は、1対の接続管1a,1bを気密に接続するためのものである。この接続管1a,1bは、端部にフランジ2a,2bがそれぞれ形成されている。フランジ2a,2bは、その外周部から接続管1a,1bの先端部と反対側に向かう下り勾配の傾斜面(接続管1a,1bの先端部と反対側に向かうにつれて半径方向内側に向かって傾斜した面)3a,3bをそれぞれ有している。
【0025】
そして、フランジ2a,2bの、傾斜面3a,3bから見て先端部と反対側に、傾斜面3a,3bに対向するつば部(フランジ側つば部)4a,4bが設けられている。従って、フランジ2a,2bの外周面に、傾斜面3a,3bとフランジ側つば部4a,4bを内壁として凹状に形成された溝部5a,5bが存在する。
【0026】
フランジ2a,2bの対向面(接続管1a,1bの先端面)には、環状の突起(シールビード)6a,6bが形成されている。両フランジ2a,2bの各突起6a,6bは同じ形状および同じ寸法に形成されている。傾斜面3a,3bは、フランジ2a,2bの対向面と反対側(接続管1a,1bの先端面の反対側)に設けられているので、両接続管1a,1bが、先端面同士が互いに対向するように近接配置されると、両傾斜面3a,3bが側辺をなす台形部分(断面形状が略台形である部分)が構成される。この時、突起6a,6bの先端同士が対向する。フランジ2a,2bには、対向面側に段部7a,7bが形成されている。この段部7a,7bは、後述するホルダー8の筒状部8aおよびセンターリング9の突起9aが填め込まれる小径の円周面を構成している。なお、接続管1a,1bは、流体を流通させる長い管の一部であってもよいが、そのような長い管の端部に溶接等によって連結された接続用部材(いわゆるグランド)であってもよい。
【0027】
接続管1aと1bの間に、平らなリング状の金属製ガスケット20が配置されている。図1Aに示す完成状態では、金属製ガスケット20は、突起6a,6bによって両側から圧接されている。接続管1a,1bと金属製ガスケット20はそれぞれの内径が一致しており、継手構造の完成状態においてそれぞれの中心線が一致し、それぞれの開口部が連通するように配置されている。
【0028】
図2,3に示すように、一方の接続管1aにはホルダー8が保持されており、このホルダー8によって金属製ガスケット20が一方の接続管1aに保持されている。ホルダー8は、筒状部8aの一端に、半径方向内側に延びる爪状の係合部8bが設けられた構成である。筒状部8aは、接続管1aに形成された段部7aに嵌合可能な形状および寸法である。係合部8bの内径は金属製ガスケット20の外径よりも小さく、係合部8bは金属製ガスケット20に係合可能である。従って、係合部8bが金属製ガスケット20の外周部に係合して、ホルダー8の内側に金属製ガスケット20を収容した状態で、筒状部8aが接続管1aの段部7aに嵌合させられる。これによって、ホルダー8および金属製ガスケット20は接続管1aに保持される。このとき、金属製ガスケット20は、一方の面が係合部8bに係止され、他方の面が接続管1aの突起6aの先端に当接された状態である。なお、係合部8bは筒状部8aの一端の全周に亘って設けられていてもよいが、筒状部8aの内周の一部のみに形成されていてもよい。
【0029】
接続管1bは接続管1aに対向するように配置されており、突起6bが、前記したようにホルダー8によって接続管1aに保持されている金属製ガスケット20の一方の面に当接している。このように互いに対向した接続管1a,1bの各フランジ2a,2bの外周を取り囲むように、センターリング9が装着されている(図3参照)。なお、両フランジ2a,2bは互いに同一の形状および同一の寸法であり、両フランジ2a,2bの外周面同士が連なって、外径が一定である周面が構成される。従って、この外径と等しい大きさの内径を有するセンターリング9内に、両フランジ2a,2bが殆ど隙間なく填め込まれる。センターリング9は内周側の一部に突起9aを有しており、この突起9aが接続管1bの段部7b上に配置されて、センターリング9は安定して保持されている。
【0030】
以上説明した構成の、接続管1a,1bと金属製ガスケット20とホルダー8とセンターリング9からなる組立体が、クランプリング10によって保持されている。クランプリング10は、図4に示すように、複数の(本実施形態では3つの)セグメント10a〜10cが1列に連結された構成である。隣り合うセグメント同士は軸15を中心として相対的に揺動可能にそれぞれ連結されている。各軸15は、互いに平行であり、各セグメント10a〜10cの開閉動作方向に対し垂直な軸である。具体的には、中央のセグメント10bが、一端のセグメント10aおよび他端のセグメント10cと、軸15を中心として相対的に揺動可能にそれぞれ連結されている。従って、一端のセグメント10aと他端のセグメント10cとが近接するように揺動させると、図1Bに示すようにリング形状を構成することができる。
【0031】
各セグメント10a〜10cの内周には、接続管1a,1bの傾斜面3a,3bに対応する対応傾斜面14a,14bを有する溝14が設けられている。溝14の両側には、対応傾斜面14a,14bと、各セグメント10a〜10cの外側面(フランジ側つば部4a,4bに当接する当接面である)によって構成され、内側に突出する突条19が設けられている。なお、セグメント10a〜10cの外側面とは別に、フランジ側つば部4a,4bに当接する当接面が形成された構成にすることもできる。
【0032】
溝14は、前記したように両接続管1a,1bが互いに対向するように近接配置されたときに両傾斜面3a,3bを両側辺として構成される台形部分を収容する形状および寸法である。そして、突条19は、フランジ2a,2bの傾斜面3a,3bとフランジ側つば部4a,4bとで形成された溝部5a,5bに挿入可能な形状および寸法である。
【0033】
一端のセグメント10aには、締結部材であるボルト11のねじ部11aが収容され、頭部11bが通過不能な大きさの溝状の切欠部12が設けられている。切欠部12には、ボルト11の頭部11bを収容する拡大部分12aが設けられている。他端のセグメント10cには、ボルト11のねじ部11aがねじ込まれるねじ穴13が設けられている。なお、各図面において、雄ねじ部および雌ねじ部は省略して図示している。図1Bに示すように、ボルト11のねじ部11aには抜け止めリングが取り付けられている。
【0034】
各セグメント10a〜10cにより、前記したようにリング形状を構成した状態で、ボルト11の頭部11bを一端のセグメント10aの切欠部12の拡大部分12aに収容して係止させ、ねじ部11aを、切欠部12を貫通させて他端のセグメント10cのねじ穴13にねじ込む。これによって、各セグメント10a〜10cを互いに固定することができる。図1A,図1Bに示す完成状態では、金属製ガスケット20およびホルダー8を挟んで対向するフランジ2a,2bを各セグメント10a〜10cの内側に配置し、溝14内に、両傾斜面3a,3bを両側辺として構成される台形部分を挿入している。このとき、クランプリング10の突条19が、フランジ2a,2bの溝部5a,5b内に挿入される。そして、前記したように、ボルト11を、切欠部12を貫通させて他端のセグメント10cのねじ穴13にねじ込んで固定している。この構成では、ボルト11をねじ穴13へ深くねじ込むほど、傾斜面3a,3b上を対応傾斜面14a,14bが摺動して、溝14内に台形部分がくさび状に深く入り込み、接続管1a,1bのフランジ2a,2b同士がより接近しようとする。すると、金属製ガスケット20に対する突起6a,6bの接触圧力が大きくなり、最終的には、突起6a,6bが金属製ガスケット20の両面に食い込む。その結果、金属製ガスケット20とフランジ2a,2bの突起6a,6bとの密着により得られる気密性が高くなる。この原理を利用して、ボルト11のねじ穴13へのねじ込み量を適切に設定することによって、所望の気密性が得られる。このようにして、図1A,図1Bに示す本実施形態の継手構造が構成されている。
【0035】
さらに、この構成によると、ボルト11の締め付けに伴って、傾斜面3a,3bを両側面とする台形部分が溝14内にくさび状に入り込みながらクランプリング10が縮小する際に、フランジ側つば部4a,4bがクランプリング10の縮小方向への移動をガイドする。従って、クランプリング10が接続管1a,1bに対して相対的に傾いた状態になることが防げる。
【0036】
この点について説明すると、図7に示すようにフランジ側つば部4a,4bが存在しない構成の場合には、傾斜面23a,23bを両側面とする台形部分がクランプリング25の溝内にくさび状に入り込みながらクランプリング25が縮小する際に、相対位置やクランプリング25の姿勢がずれたり、ボルトを締め付けるために加える力が偏って伝わったりした場合に、クランプリング25が接続管21a,21bに対して相対的に(±3度程度)傾く可能性がある。このような傾きを生じると、接続の気密性および信頼性が低下する可能性がある。また、接続管21a,21bが傾いて保持されるため、外観を損なうとともに、無駄に広いスペースが必要となり、継手構造を含む機械のレイアウトの制限となるおそれがある。
【0037】
これに対し、本発明では、傾斜面3a,3bを両側面とする台形部分がクランプリング10の溝14内にくさび状に入り込むと同時に、溝14の両側に位置する突条19がフランジ2a,2bの溝部5a,5b内にくさび状に入り込む。従って、クランプリング10が接続管1a,1bに対して相対的に傾いた状態のまま縮小することはできない。ボルト11の締め付け開始当初にクランプリング10が接続管1a,1bに対して傾いていたとしても、台形部分が溝14内への進入動作と、溝14の両側に位置する突条19の溝部5a,5bへの進入動作が、その傾きを矯正する。その結果、クランプリング10が接続管1a,1bに対してほとんど(±1度程度しか)傾くことなく、ほぼ垂直な状態でフランジ2a,2bを固定する。それによって、接続の高い気密性および信頼性が確保され、外観およびスペース効率が良好になり、継手構造を含む機械のレイアウトを無用に制限することがない。
【0038】
次に、この継手構造を組み立てる方法について説明する。
【0039】
まず、図2に示すように、ホルダー8の係合部8bを金属製ガスケット20の外周部に係合させ、金属製ガスケット20を筒状部8a内に収容する。その状態で、筒状部8aを一方の接続管1aの段部7aに嵌合させる。これによって、金属製ガスケット20がホルダー8を介して接続管1aに保持される。なお、ホルダー8と金属製ガスケット20と段部7aとを高精度に形成しておくことによって、金属製ガスケット20を位置精度良く、かつしっかりと接続管1aに保持させることができる。こうして、ホルダー8を用いることによって、金属製ガスケット20を接続管1aに位置合わせする。すなわち、金属製ガスケット20と接続管1aの中心線を一致させる。
【0040】
次に、図3に示すように、他方の接続管1bを一方の接続管1aに近接対向するように配置し、突起6a,6bを金属製ガスケット20の両面にそれぞれ当接させる。この状態で、両接続管1a,1bのフランジ2a,2bの外周を取り囲むように、センターリング9を装着する。これによって、接続管1bを、金属製ガスケット20を位置精度良く保持している接続管1aに対して、接続管1a,1bの長手方向に直交する方向に位置ずれしないように位置合わせすることができる。ただしこの時点では、各部材は概ね適切な位置関係にある(金属製ガスケット20と接続管1a,1bのそれぞれの中心線が全て一致している)ものの、まだ固定されてはおらず、高い気密性は得られていない。
【0041】
そこで、クランプリング10を用いて、各部材を強固に固定するとともに、接続管1aと1bの接続の気密性を高める。図4に示すように開いた状態の各セグメント10a〜10cを閉じてリング形状を構成し、各接続管1a,1bのフランジ2a,2bを内側に閉じ込めるようにする。この時、図5A,図5Bに示すように、溝14内に、フランジ2a,2bの傾斜面3a,3bを両側辺として構成されている台形部分が挿入され、かつ、クランプリング10の突条19がフランジ2a,2bの溝部5a,5b内に挿入されるようにする。そして、前記したようにボルト11を、切欠部12を貫通させて他端のセグメント10cのねじ穴13にねじ込んで固定している。
【0042】
図5A,図5Bに示すように、ボルト11のねじ穴13へのねじ込み量が小さい時点では、一端のセグメント10aと他端のセグメント10cとの間隔が十分に狭くなってはいない。すなわち、各セグメント10a〜10cが構成するリング形状(溝14が構成するリング形状)の内径が、まだ十分に小さくなってはいない。従って、フランジ2a,2bの傾斜面3a,3bを両側辺として構成された台形部分の、溝14内への挿入量が小さい。そのため、接続管1a,1bの長手方向に見て、フランジ2aと2bがまださほど互いに近接していない。図5A,図5Bに示す状態では、金属製ガスケット20の両面に突起6a,6bがそれぞれ当接しているものの、その接触圧力が低い。この時点では、気体の流通を遮断するほどの気密性は得られておらず、このままでは継手構造として不十分である。
【0043】
そこで、ボルト11をねじ穴13にさらにねじ込んでいく。そして、図1A,図1Bに示すように、ボルト11のねじ穴13へのねじ込み量が大きくなると、一端のセグメント10aと他端のセグメント10cとの間隔が十分に狭くなる。そして、各セグメント10a〜10cが構成するリング形状(溝14が構成するリング形状)の内径が十分に小さくなる。従って、フランジ2a,2bの傾斜面3a,3bを両側辺として構成された台形部分の、溝14内への挿入量が大きくなる。そのため、接続管1a,1bの長手方向に見て、フランジ2aと2bの間の間隔が十分に小さくなる。この状態では、金属製ガスケット20の両面に突起6a,6bが大きな接触圧力で圧接し、突起6a,6bが金属製ガスケット20の両面に食い込み、金属製ガスケット20が僅かに凹む。その結果、フランジ2a,2bの突起6a,6bと金属製ガスケット20の両面との圧接により、気体の流通を遮断することができ、継手構造として十分な気密性が得られる。
【0044】
なお、予備試験等によって、十分な気密性が得られるようなボルト11のねじ込み量を予め求めておいてもよいが、前記した継手構造の組立工程中(ボルト11のねじ穴13へのねじ込み作業中)に随時気密性を調べて、十分な気密性が確認できた時点でねじ込み作業を停止するようにしてもよい。
【0045】
図1Bに示すように、ボルト11のねじ穴13への十分なねじ込み量が得られた時点で、切欠部12とねじ穴13が一直線になって、ボルト11が水平に保持されるように構成されている。そして、ボルト11の頭部11bが切欠部12の拡大部分12a内に安定して保持される。しかし、ねじ込み作業中、すなわちねじ込み量がまだ不十分な段階では、図5Bに示すように、切欠部12とねじ穴13が一直線にはなっておらず、ボルト11が切欠部12に対して斜めになって保持される。この時、ボルト11の頭部11bが切欠部12の拡大部分12aの内壁に部分的に偏って当接する。そこで、本実施形態では、頭部11bと、切欠部12の拡大部分12aの、それぞれの当接部を、ほぼ同じ曲率の、対応する球面状に形成している。これによって、各当接部のどの部分がどのように偏って当接したとしても、角部が存在しないため、頭部11bまたは切欠部12が破損したりボルトの進行に支障が生じたりするおそれがない。
【0046】
本実施形態では、比較的厚く複雑に加工された形状のフランジ2a,2bが設けられているが、接続管1a,1bの先端面を拡げただけの単純な形状のフランジを形成することもできる。ただし、前記したように溝14内に進入してくさび効果を生み出す台形部分を構成するための傾斜面3a,3bと、それに対向するフランジ側つば部4a,4bは必ず設けられる。
【0047】
[第2の実施形態]
図6には本発明の継手構造の第2の実施形態が示されている。なお、第1の実施形態と同様な構成については、同一の符号を付与し説明を省略する。
【0048】
本実施形態では、ボルト11に替えてアイボルト16を用いている。このアイボルト16は、ねじ部16aと、セグメント10cにピン17によって揺動可能に取り付けられている係止部16bとからなる。ねじ部16aは、セグメント10aの切欠部12内に挿入可能である。そして、ねじ部16aにはナット18が螺合し、ナット18は、切欠部12の拡大部分12aに係合する。ナット18と切欠部12の拡大部分12aのそれぞれの当接部は、ほぼ同じ曲率の、対応する球面状に形成されている。
【0049】
本実施形態の継手構造は、第1の実施形態と同様な効果が得られるとともに、アイボルト16を用いることによって、組立作業の簡略化が図れる。
【0050】
[第3の実施形態]
図8には本発明の継手構造の第3の実施形態が示されている。なお、第1の実施形態と同様な構成については、同一の符号を付与し説明を省略する。
【0051】
本実施形態の継手構造は、1対の接続管1a,1bの端部のフランジ2a,2bに、フランジ側つば部4a,4bおよび溝部5a,5bが形成されていない。その代わり、クランプリング10の溝14の両側であって対応傾斜面14a,14bの外側に、つば部(クランプリング側つば部)19a,19bがそれぞれ設けられている。図8に示す例では、クランプリング側つば部19a,19bは、突条19の端部から中心側にさらに突出するように形成されており、クランプリング10の中心軸に対して実質的に垂直である。そして、フランジ2a,2bの、接続管1a,1bの先端部と反対側の端部には、クランプリング側つば部19a,19bと当接する当接面27a,27bがそれぞれ設けられている。図8に示す例では、当接面27a,27bは接続管1a,1bの中心軸に対して垂直に形成されており、この当接面27a,27bに連続して傾斜面3a,3bが形成されている。その他の構成は、前記した第1の実施形態と実質的に同じである。
【0052】
本実施形態の継手構造を組み立てる場合には、ホルダー8によって金属製ガスケット20を一方の接続管1aに保持させた状態で、その接続管1aを他方の接続管1bに近接対向させ、センターリング9を用いて位置合わせする。そして、両接続管1a,1bのフランジ2a,2bをクランプリング10で包囲し、ボルト11をねじ穴13にねじ込んで固定する。この時、クランプリング10の溝14内に、フランジ2a,2bの傾斜面3a,3bを両側辺として構成されている台形部分が挿入され、ボルト11のねじ穴13へのねじ込み量が大きくなるにつれて、接続管1a,1bの長手方向に見て、フランジ2aと2bの間の間隔が小さくなる。その結果、金属製ガスケット20の両面にフランジ2a,2bの突起6a,6bが大きな接触圧力で圧接し、気体の流通を遮断するような高い気密性が得られる。
【0053】
そして、本実施形態によると、ボルト11をねじ穴13にねじ込んでクランプリング10の各セグメント10a〜10cが構成するリング形状(溝14が構成するリング形状)の内径を小さくする過程で、クランプリング側つば部19a,19bが、フランジ2a,2bの当接面27a,27bに当接する。仮に、ボルト11の締め付け開始当初にクランプリング10が接続管1a,1bに対して傾いていたとしても、クランプリング側つば部19a,19bがフランジ2a,2bの当接面27a,27bに当接することによって、この傾きが矯正される。その結果、クランプリング10が接続管1a,1bに対してほとんど傾くことなく、ほぼ垂直な状態でフランジ2a,2bを固定する。それによって、接続の高い気密性および信頼性が確保され、外観およびスペース効率が良好になり、継手構造を含む機械のレイアウトを無用に制限することがない。すなわち、本実施形態では、クランプリング側つば部19a,19bとフランジ2a,2bの当接面27a,27bとを用いることによって、第1の実施形態と同様な効果が得られる。そして、本実施形態の場合、当接面27a,27bを非常に容易に形成できるため、比較的大型の部材であって継手構造の主要部である接続管の作製が煩雑になることはない。また、比較的小型の部材であるクランプリング10にクランプリング側つば部19a,19bを形成することも、突条19の一部に加工を加えるだけで比較的容易に行える。
【0054】
次に、本実施形態のもう1つの特徴について説明する。図8に示すように、本実施形態では、センターリング9の突起9aの、接続管1a,1bの長手方向に沿う長さを短くし、その分だけ、フランジ2a,2bの外周面の、センターリング9の突起9a以外の部分を支持する部分(センターリング支持部分28a,28b)の、接続管1a,1bの長手方向に沿う長さを長くしている。例えば、センターリング9の全体の長さが10mm程度の場合に、センターリング支持部分28a,28bのそれぞれの長さを2.5mm以上にしている。それによって、センターリング9の支持の安定性が高まるため、フランジ2a,2bをクランプリング10で締め付ける前の段階で、接続管1a,1bの位置合わせ精度が向上する。このことは、クランプリング10が接続管1a,1bに対して傾いて配置されることを防止する効果がある。従って、本実施形態によると、フランジ2a,2bをクランプリング10で締め付ける前の段階で、比較的長いセンターリング支持部分28a,28bによって、クランプリング10が接続管1a,1bに対して傾いて配置されることを抑制し、さらに、ボルト11をねじ穴13にねじ込んでいく過程で、クランプリング側つば部19a,19bと当接面27a,27bとの当接により、クランプリング10の接続管1a,1bに対する傾きを矯正できる。従って、完成状態における継手構造の精度および信頼性が非常に高い。
【0055】
なお、本実施形態では、比較的厚く複雑に加工された形状のフランジ2a,2bが設けられているが、接続管1a,1bの先端面を拡げただけの単純な形状のフランジを形成することもできる。ただし、前記したように溝14内に進入してくさび効果を生み出す台形部分を構成するための傾斜面3a,3bと、クランプリング側つば部19a,19bに当接する当接面27a,27bは必ず設けられる。
【0056】
図示しないが、本実施形態のボルト11に代えて、第2の実施形態と同様なアイボルト16を用いることも可能である。その場合、組立作業の簡略化が図れる。
【0057】
以上説明した本発明の第1〜3の実施形態の継手構造によると、金属製ガスケット20の両面にフランジ2a,2bの突起6a,6bがそれぞれ圧接することによって、高い気密性が得られる。しかも、クランプリング10を用いてフランジ2a,2bを固定する際に、接続管1a,1b自体を回転させようとする力は働かず、従って接続管1a,1bにねじれは生じない。その結果、金属製ガスケット20と突起6a,6bとの間に摩擦は生じず、微細粒子(パーティクル)が発生しない。長期間使用しても、また温度変化によって各部材に多少の伸縮が生じても、接続管1a,1bが金属製ガスケット20に対して相対的に回転することはなく、摩擦は生じないので、微細粒子が発生しない。この継手構造によると、外部に対する高い気密性が得られるのみならず、内部における不純物の残留やバクテリア等の発生を防げる。これは、特に、半導体製造装置の気体供給部など、非常に高精度の流体の流通が要求される場合や、缶や瓶などへの充填装置や各種ディスペンサー(飲料注出装置)など、飲料液体のクリーンな状態が要求される場合に適している。
【0058】
そして、本発明の第1,2の実施形態では、フランジ2a,2bに、傾斜面3a,3bと対向するフランジ側つば部4a,4bが設けられ、第3の実施形態では、クランプリング10に、当接面27a,27bと当接するクランプリング側つば部19a,19bが設けられている。従って、フランジ側つば部4a,4bおよびクランプリング側つば部19a,19bが、接続管1a,1bが傾いた状態でクランプリング10によって固定されることを抑制し、気密性や信頼性が損なわれることが防止できる。また、外観およびスペース効率が良好であり、継手構造を含む機械のレイアウトの制限になることがない。
【0059】
なお、図1A,8に示す構成では、フランジ2a,2bに設けられた環状の突起6a,6bが金属製ガスケット20の両面に食い込み、金属製ガスケット20の両面が僅かに凹むことによって、高い気密性を実現している。しかし、図示しないが、金属製ガスケット20の両面にそれぞれ、突起6a,6bに対応する凹部が予め形成されていて、その凹部内に突起6a,6bが収容されるようになっていてもよい。また、金属製ガスケット20は変形せず、突起6a,6bが金属製ガスケット20の両面に圧接させられて潰れる構成であってもよい。また、突起がフランジ2a,2bではなく金属製ガスケット20の両面にそれぞれ形成されていてもよい。その場合、金属製ガスケット20の両面の突起がフランジ2a,2bの各先端面に食い込んでフランジ2a,2bの各先端面が凹むことによって、または、突起がフランジ2a,2bの各先端面に圧接して潰れることによって、気密性が得られる構成であってもよい。また、フランジ2a,2bの各先端面にそれぞれ、突起に対応する凹部が予め設けられていてもよい。
【0060】
以上説明した本発明の継手構造において、接続管1a,1bは、流体を流通させる長い管の一部であってもよいが、そのような長い管の端部に溶接等によって連結された接続用部材(いわゆるグランド)であってもよい。後者の場合の溶接による接合は、長い管とグランドの先端面同士を当接させて溶接する、いわゆる突き合わせ式の接合であってもよく、一方の端部を他方の端部の内部に挿入した状態で溶接する、いわゆる差し込み式の接合であってもよい。また、グランドに接続される管として、流体の供給または排出を行う装置の筐体に設けられた管状または開口部状の出入口部を用い、この出入口部にグランドを装着する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1a,1b 接続管
2a,2b フランジ
3a,3b 傾斜面
4a,4b つば部(フランジ側つば部)
5a,5b 溝部
6a,6b 突起
7a,7b 段部
8 ホルダー
8a 筒状部
8b 係合部
9 センターリング
9a 突起
10 クランプリング
10a〜10c セグメント
11 ボルト
11a ねじ部
11b 頭部
12 切欠部
12a 拡大部分
13 ねじ穴
14 溝
14a,14b 対応傾斜面
15 軸
16 アイボルト
16a ねじ部
16b 係止部
17 ピン
18 ナット
19 突条
19a,19b つば部(クランプリング側つば部)
20 金属製ガスケット
27a,27b 当接面
28a,28b センターリング支持部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にフランジを有する1対の接続管を接続する継手構造において、
前記1対の接続管の前記フランジ同士が対向した状態で、該両フランジによって両側から圧接される、平らなリング状の金属製ガスケットと、
前記金属製ガスケットの少なくとも一部に係合する係合部を有し、一方の前記接続管に保持されるホルダーと、
前記1対の接続管の前記フランジ同士が前記金属製ガスケットを挟んで対向した状態で、前記両フランジの外周を取り囲むように装着可能なセンターリングと、
一続きに並べられ、隣り合うもの同士が互いに揺動可能に連結されている複数のセグメントからなり、該複数のセグメントのうち一端に位置するセグメントと他端に位置するセグメントとが締結部材によって互いに固定されたときに、全ての前記セグメントにより、前記金属製ガスケットを挟んで互いに対向する前記フランジの外周の全周を覆って保持するリング形状を構成するクランプリングと、
を有し、
前記金属製ガスケットと前記各フランジの互いに当接する面のいずれか一方に環状の突起が設けられており、
前記1対の接続管の前記各フランジと前記金属製ガスケットは、それぞれの開口部が連通し、かつ両フランジの中心線が一致するように配置されており、
前記各フランジは、その外周から前記接続管の前記先端部と反対側に向かう下り勾配の傾斜面を有し、
前記クランプリングの前記各セグメントは、内周部に、前記各フランジの傾斜面にそれぞれ対応する対応傾斜面を有し、
前記フランジと前記クランプリングの前記各セグメントの内周面とのいずれか一方にはつば部が形成されており、他方には前記つば部に当接する当接面が形成されている
ことを特徴とする継手構造。
【請求項2】
前記各フランジに、前記傾斜面に対向するフランジ側つば部が形成されており、
前記クランプリングの前記各セグメントの内周部に、前記各フランジの前記フランジ側つば部に当接する当接面が形成されている
請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記各フランジの前記傾斜面と前記フランジ側つば部との間に、前記フランジの外周に位置する溝部が形成されており、
前記クランプリングの前記各セグメントの前記対応傾斜面と前記当接面との間に、前記各フランジの前記溝部に対応する形状の突条が形成されている
請求項2に記載の継手構造。
【請求項4】
前記クランプリングは、前記金属製ガスケットを挟んで互いに対向する前記フランジの外周の全周を覆って保持するリング形状を構成している状態で、前記締結部材が前記一端のセグメントと前記他端のセグメントとを近接させるほど、前記クランプリングの前記各セグメントは、前記各対応傾斜面が前記各フランジの前記各傾斜面に沿って摺動するとともに前記各当接面が前記各フランジの前記各フランジ側つば部に沿って摺動しながら前記突条が前記溝部内に進入するように、半径方向内側に移動して、前記金属製ガスケットを挟んで前記フランジ同士を緊密に保持可能なものであり、
前記クランプリングによって前記金属製ガスケットを挟んで前記フランジ同士が緊密に保持された状態で、前記突起がそれに対向する面に食い込みまたは潰される
請求項3に記載の継手構造。
【請求項5】
前記当接面は前記各セグメントの外側面である、請求項1から4のいずれか1項に記載の継手構造。
【請求項6】
前記各フランジの、前記接続管の前記先端部と反対側に当接面が形成されており、
前記クランプリングの前記各セグメントの内周部に、前記フランジの前記当接面に当接するクランプリング側つば部が形成されている
請求項1に記載の継手構造。
【請求項7】
前記クランプリングは、前記金属製ガスケットを挟んで互いに対向する前記フランジの外周の全周を覆って保持するリング形状を構成している状態で、前記締結部材が前記一端のセグメントと前記他端のセグメントとを近接させるほど、前記クランプリングの前記各セグメントは、前記各対応傾斜面を前記各フランジの前記各傾斜面に沿って摺動させるとともに、前記クランプリング側つば部を前記当接面に当接させながら、半径方向内側に移動して、前記金属製ガスケットを挟んで前記フランジ同士を緊密に保持可能なものであり、
前記クランプリングによって前記金属製ガスケットを挟んで前記フランジ同士が緊密に保持された状態で、前記突起がそれに対向する面に食い込みまたは潰される
請求項6に記載の継手構造。
【請求項8】
前記締結部材は、前記一端のセグメントと前記他端のセグメントとをねじ止めするボルトであり、前記ボルトを深くねじ込むほど前記両セグメントを互いに近接させることができる、請求項1から7のいずれか1項に記載の継手構造。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132549(P2012−132549A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18165(P2011−18165)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(594165734)イハラサイエンス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】