説明

綜絖枠高さ調節装置

【課題】綜絖枠の高さ調節作業を容易にでき、開口装置の製造費用を抑え、開口装置が故障しにくく、綜絖枠の上下動の高速化にも適した綜絖枠の高さ調節装置の提供。
【解決手段】綜絖枠毎に設けられて往復駆動装置と綜絖枠とを連結する駆動伝達機構であって対応する綜絖枠の支持高さを変更可能に構成された駆動伝達機構を含む開口装置に用いられる綜絖枠高さ調節装置において、綜絖枠に対し係脱可能であって織機の運転開始前に行われる綜絖枠の高さ調節作業時に綜絖枠の側方に配置されて綜絖枠のサイドステーに係合される係合手段と、高さを調節する綜絖枠の側方における織機の固定部に載置されて該固定部に対し係合手段を上下方向に移動させる昇降手段とを含む、綜絖枠高さ調節装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の綜絖枠の高さを調節する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機において、綜絖枠の高さを不適当に設定したまま織機を運転すると、開口不良、筬打ち時の織物裂け等のトラブルが発生しやすくなる。このため、筬の適切な位置で筬打ちするように綜絖枠の高さを調節する作業が行われる。
【0003】
たとえば図9に示す織機の開口装置では、綜絖枠毎に駆動伝達機構が設けられ、往復駆動装置の運動を駆動伝達機構によって綜絖枠の上下動に変換している。また、駆動伝達機構には、綜絖枠の左右を下から伸縮ロッドで支持する部分がある。伸縮ロッドは、全高を変更可能なものではあるが、それ自身には高さ調節機構が付いておらず、全高を所望の長さに保持するボルトが単に捩じ込まれているだけである。
【0004】
従って、綜絖枠を支えることなくボルトを緩めると、綜絖枠がその重量によって伸縮ロッドの全高を縮めて落下してしまう。そのため、綜絖枠の高さ調節作業は、綜絖枠を支える人と、ボルトを回す人、併せて2人以上を要するものであり、作業性が悪い。
【0005】
綜絖枠を支える人を不要にする従来の技術として、開口装置の一部として綜絖枠の高さ調節機構を各綜絖枠の駆動伝達機構の中に含んでおり、高さ調節機構を手動操作するものが存在する(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−107103号公報
【特許文献2】特開平05−230734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらは、いずれも、綜絖枠の数に対応する分だけ左右一対の高さ調節機構を用いるので、開口装置の製造費用が嵩む。また、高さ調節機構を開口装置の一部とするので、高さ調節機構がない開口装置に比べると、高さ調節機構の付いた開口装置は、部品点数の増加及び構造の複雑化を招き、故障しやすいと言える。
【0008】
さらに、綜絖枠は高さ調節機構を駆動伝達機構の中に含んでいる分だけ重くなっている。従って、高さ調節機構を綜絖枠に固着する構造は、綜絖枠の上下動を高速化するには不適当である。
【0009】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その解決課題は、綜絖枠の高さ調節作業が容易に行え、且つ、開口装置の製造費用を安く抑え、開口装置が故障しにくく、その上で綜絖枠の上下動の高速化にも適した綜絖枠の高さ調節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、綜絖枠毎に設けられて往復駆動装置と綜絖枠とを連結する駆動伝達機構であって対応する綜絖枠の支持高さを変更可能に構成された駆動伝達機構を含む開口装置に用いられる綜絖枠高さ調節装置を前提とする。
【0011】
そして、綜絖枠に対し係脱可能であって織機の運転開始前に行われる綜絖枠の高さ調節作業時に綜絖枠の側方に配置されて綜絖枠のサイドステーに係合される係合手段と、高さを調節する綜絖枠の側方における織機の固定部に載置されて該固定部に対し係合手段を上下方向に移動させる昇降手段とを含む、ことを特徴とする。なお、本発明における織機の固定部とは、高さ位置が織機のフレームに対して固定された綜絖枠の側方の近傍の動かない部分のことである。
【0012】
係合手段は、綜絖枠を側面から係合するものであっても良いが、綜絖枠と係合手段とを係合させるための特別な改造を綜絖枠に施さずに係合するには、次のようにすることが望ましい。即ち、係合手段は、綜絖枠の任意の位置を把持する把持装置を含むものである。
【0013】
係合手段が綜絖枠の任意の位置を把持する把持装置を含むものであれば、綜絖枠と係合手段とを係合させるための特別な改造を綜絖枠に施さずに済み、開口装置による綜絖枠の上下動に全く影響を与えない。
【0014】
昇降手段は、動力源となる駆動装置を備えるものであっても良いが、その製造費用を安く抑えるには次のようにすることが望ましい。即ち、昇降手段は、雄ネジ部または雌ネジ部のうちの一方のネジ部が形成されて該一方のネジ部において係合手段に形成された前記ネジ部のうちの他方のネジ部に螺合されるネジ部材と、ネジ部材における一方のネジ部と係合手段における他方のネジ部とを相対回転させるための操作部と、織機の固定部に載置される座部とを含む、ものである。
【0015】
昇降手段がネジ部材と操作部と座部とを含む、ものである場合、駆動装置を備えるものに比べて製造費用を安く抑えられる。
【0016】
綜絖枠高さ調節装置は、係合手段と昇降手段だけで構成されるものであっても良いが、綜絖枠の高さ調節作業の効率を一段と向上させるには、次のようにすることが望ましい。即ち、綜絖枠高さ調節装置は、綜絖枠の高さを測定する綜絖枠高さ測定手段を含む、ものである。
【0017】
綜絖枠の高さを測定する綜絖枠高さ測定手段を含むものであれば、別体の綜絖枠高さ測定手段を用意しなくても良いので、綜絖枠の高さ調節作業が一段と容易に行える。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、綜絖枠に対し係脱可能な係合手段と、織機の固定部に載置される昇降手段とを備えるものなので、織機の運転開始前にのみ織機に取り付け、織機運転時には取り外して使用できる。従って、綜絖枠の左右に取り付けるために本発明の綜絖枠高さ調節装置が最低2つあれば各綜絖枠に対し綜絖枠の高さ調節作業を繰り返すことで織機全体の綜絖枠の高さ調節作業を行えるので、開口装置の製造費用を安く抑えられる。
【0019】
また、本発明は、開口装置による往復駆動装置や駆動伝達機構とは無関係であって、織機運転時には取り外して使用できるので、綜絖枠の上下動の高速化に適し、故障しにくい。
【0020】
その上、本発明は、織機の固定部と綜絖枠との間に取り付けてから、昇降手段を使用すれば、係合手段を上下に移動させて、係合手段ごと綜絖枠を上下に移動でき、それに伴って駆動伝達機構による綜絖枠の支持高さを変更できるので、綜絖枠の高さ調節作業が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一番目の例の綜絖枠高さ調節装置の使用状態を示す正面図である。
【図2】一番目の例の綜絖枠高さ調節装置を示す正面図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】図2のA−A線拡大断面図である。
【図5】二番目の例の綜絖枠高さ調節装置の使用状態を示す正面図である。
【図6】(イ)(ロ)図は、二番目の例の綜絖枠高さ調節装置を示す正面図、B−B線拡大断面図である。
【図7】三番目の例の綜絖枠高さ調節装置の使用状態を示す正面図である。
【図8】(イ)(ロ)図は、三番目の例の綜絖枠高さ調節装置を示す正面図、側面図である。
【図9】綜絖枠を昇降させる開口装置を示す正面図である。
【図10】綜絖枠の左側を案内する構造を示す斜視図である。
【図11】開口装置が綜絖枠を下から支持する構造を示す正面図である。
【図12】フレーム、ヘルドフレームガイド、綜絖枠の高さ関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
綜絖枠高さ調節装置1を適用する織機の一例を図9〜図11に基づいて説明する。図9は、綜絖枠90を昇降させる構造を示すものである。図10は、綜絖枠90の左側を案内する構造を示すものである。図11は、開口装置80が綜絖枠90を下から支持する構造を示すものである。
【0023】
綜絖枠高さ調節装置1を適用する織機の一例は、綜絖枠90の左右にはガイド91が設けられ、上下動させる綜絖枠90の前後・左右方向をガイド91に案内させ、綜絖枠90よりも下方に設けられた開口装置80によって綜絖枠90を上下動させるものである。以下、開口装置80、ガイド91の順でさらに詳述する。
【0024】
開口装置80は、往復駆動装置81と、綜絖枠90毎に設けられた駆動伝達機構82とを備え、駆動伝達機構82によって往復駆動装置81の往復運動を綜絖枠90の昇降運動に変換するものである。
【0025】
駆動伝達機構82は、まず、往復駆動装置81の一部である揺動レバー83の往復運動を、同じ高さに支持される左右の揺動アーム85、85のうち片方に連結レバー84によって伝え、左右の揺動アーム85、85をリンク86によって同期して揺動運動させる。続いて、駆動伝達機構82は、左右の揺動アーム85によって揺動運動を伸縮ロッド87の上下運動に変えて、伸縮ロッド87によって上下運動を綜絖枠90の左右の下側に伝え、最終的に綜絖枠90を上下動させるものである。以下、各部品について詳述する。
【0026】
一対の揺動アーム85、85は、綜絖枠90よりも下方の左右において点Pを中心にして揺動可能に支持され、一方の揺動端同士がリンク86で連結され、他方の揺動端には伸縮ロッド87がそれぞれ連結されている。また、片方の揺動アーム85には連結レバー84が連結されている。
【0027】
伸縮ロッド87は、綜絖枠90の支持高さを変更可能なものである。伸縮ロッド87は、上下に延在する筒状のヘルドフレームジョイント87aの内部に、ジョイントロッド87bが上下にスライド可能に挿入され、ヘルドフレームジョイント87aにボルト87cを捩じ込んでジョイントロッド87bを固定し、ヘルドフレームジョイント87aに対するジョイントロッド87bの上方向の突出長を保持するものである。一方、伸縮ロッド87は、必要に応じてボルト87cを緩めてヘルドフレームジョイント87aに対するジョイントロッド87bの上方向の突出長を変更する。ヘルドフレームジョイント87aに対するジョイントロッド87bの上方向の突出長を調整することにより綜絖枠90の高さが変更される。
【0028】
ヘルドフレームジョイント87aの下端部には揺動アーム85の他方の揺動端が連結されることによって、揺動アーム85は揺動運動を上下運動に変換する。また、ジョイントロッド87bの上端にはジョイント87dを介して綜絖枠90の下部が連結されることによって、伸縮ロッド87と一緒に綜絖枠90が上下運動する。
【0029】
ガイド91は、綜絖枠90の左右を構成するサイドステー90a、90aの側方にヘルドフレームガイド92が配置され、ヘルドフレームガイド92には左右内向きに開口する凹溝92aが前後および上下に間隔をあけて設けられ、サイドステー90aの前後及び左右外側を凹溝92aに案内させるものである。また、ガイド91は、ヘルドフレームガイド92の左右外側にはガイドシャフト93が左右外側に向って突設されており、ガイドシャフト93の左右外側部をシャフトブラケット94を介して織機のフレーム95に支持させるものである。
【0030】
上述した織機に使用する左右一対の綜絖枠高さ調節装置1、1の一例を図1〜図4に基づいて、左側についてのみ説明する。図1は、綜絖枠高さ調節装置1をヘルドフレームガイド92の上に載せて綜絖枠90を支持する構造を示す正面図である。図2は、綜絖枠高さ調節装置1を拡大して示す正面図である。図3は、図2の左側面図である。図4は、図2のA−A線断面図である。
【0031】
図1〜図3に示す綜絖枠高さ調節装置1は、織機の運転開始前に行われる綜絖枠90の高さ調節作業時に、織機の固定部としてのヘルドフレームガイド92に載置され、綜絖枠90に取り付けられて設置されるもので、設置後には綜絖枠90を支持しながら上下方向に移動させて綜絖枠90の高さを調節し、綜絖枠90の高さ調節作業の終了後には織機から取り外されるものである。従って、綜絖枠高さ調節装置1は織機運転時における開口装置80の動作に影響を与えない。
【0032】
綜絖枠高さ調節装置1は、綜絖枠90に係合される係合手段2と、係合手段2を上下方向に移動させる昇降手段3と、綜絖枠90の高さを測定する綜絖枠高さ測定手段4とを含むものである。以下、各手段について詳述する。
【0033】
係合手段2は、綜絖枠90に対し係脱可能であって、綜絖枠90の高さ調節作業時に綜絖枠90を支持するものである。係合手段2は、図ではその全部が昇降手段3と一体に組まれているが、その一部が昇降手段3と一体に組まれ且つ残部が昇降手段3と別体に設けられ、高さ調節作業時に一部と残部を組み合わせて使用するものでも良い。綜絖枠90を支持する箇所は、図では綜絖枠90を構成する左側のサイドステー90aであるが、綜絖枠90を構成する上側のフレームスチーブ90bであってもよい。また、綜絖枠90に対する係り合いの形態は、図では把持であるが、綜絖枠90を支持することができれば他の形態でもよい。
【0034】
図での係合手段2は、サイドステー90aを前後から把持する把持装置であって、締結部7によって本体部5とクランプ部材6との間にサイドステー90aを挟むものである。以下、本体部5、クランプ部材6、締結部7の順で詳述する。
【0035】
本体部5は、サイドステー90aの左右方向の外側に配置させる直方体状の本体ブロック51と、本体ブロック51の左右方向の内面(綜絖枠90に向く面)における前部から突出してサイドステー90aの前面に配置させるクランプ部52とを備えている。
【0036】
本体ブロック51は、上下に貫通する貫通穴53が形成されると共に、昇降手段3に螺合する雌ネジ部54が貫通穴53の内周面に形成され、後面においては左右方向の外側を内側よりも後側に突出させた段部55が設けられ、締結部7の雄ネジ71が左右方向の外面から側方外向きに突出されるものである。詳しく言えば、雄ネジ71の突出方向は、貫通穴53の貫通方向に対して垂直且つ把持方向に対して垂直の方向である
【0037】
クランプ部材6は、略L字状の板片であって、一片61を本体ブロック51の左右方向の外側に配置し、他片62を本体ブロック51の左右方向の外側からクランプ部52まで延在してある。一片61は、締結部7の雄ネジ71に通す抜穴61aが形成されている。他片62は、本体ブロック51の段部55に倣って凸凹する段付き形状にし、左右方向の内側部をクランプ部63として本体ブロック51のクランプ部52に対向させてある。
【0038】
締結部7は、雄ネジ71にテーパ座金72、クランプ部材6の一片61、およびテーパ座金73の各抜穴72a、61a、73aを順次通し、その後に蝶ナット74を螺合させるものである。雄ネジ71は、本体ブロック51に固着されている。また、奥側のテーパ座金72は本体ブロック51の左右方向の外面に固着され、蝶ナット側のテーパ座金73はクランプ部材6の一片61における左右方向の外面に固着されている。
【0039】
奥側のテーパ座金72は、前から後に向って徐々に綜絖枠90に近づく傾斜面を左右方向の外面に備えており、蝶ナット側のテーパ座金73は奥側のテーパ座金72のそれと逆向きの傾斜面を左右方向の外面に備えている。このため、蝶ナット74を締め付けると、クランプ部材6のクランプ部63が本体部5のクランプ部52に対して平行状態から前記傾斜面の角度にならって前後方向に傾いて、一対のクランプ部52、63で形成する開口がその入口側で一段と狭まることになり、綜絖枠90を把持する力を一段と向上させる。
【0040】
蝶ナット側のテーパ座金73およびクランプ部材6の一片61の各抜穴73a、61aは、上述したクランプ部材6の傾きを確保するため、雄ネジ71との間に遊びが設けられる。また、一対のクランプ部52、63の対向するクランプ面には、滑り止め用の摩擦部材52a、63aがそれぞれ固定されている。
【0041】
次に述べる昇降手段3は、織機の固定部に載置されて固定部に対し係合手段2を上下方向に移動させるものである。
【0042】
図での昇降手段3は、係合手段2に螺合されるネジ部材31を主体とし、ネジ部材31の下端部に備わる回転可能な座部32をヘルドフレームガイド92の上面に載置させ、ネジ部材31の上端部に備わる操作部33を操作することによって、ネジ部材31を係合手段2に対して相対的に回転および逆回転させて、係合手段2を綜絖枠90ごと昇降させるものである。
【0043】
ネジ部材31は、少なくとも係合手段2を昇降させる範囲に雄ネジ部31aが備えられた軸で、図では軸の全長に亘ってネジ山があるスタッドボルトを用いている。
【0044】
ネジ部材31の下端部には、ナット34と皿ばね付きナット35が上下に隣接して螺合され、ダブルナットの作用により皿ばね付きナット35の位置は固定される。皿ばね付きナット35の皿ばね35aは、スタッドボルト31の下端面よりも下に位置しており、スタッドボルト31に対して回転可能に保持され、座部32となる。
【0045】
座部32が載置されるのは、図ではヘルドフレームガイド92の上面であるが、これに限らず、その他に織機のフレーム95の上面そのものであっても良いし、フレーム95に固定したフレーム95以外のものの上面であって良い。即ち、座部32が載置されるのは、織機の固定部であって、織機のフレーム95の上面に対し高さが変わらない部分である。
【0046】
ネジ部材31の上端部には、係合手段2のそれとは別の蝶ナット36と、別のナット37が上下に隣接して螺合され、同様に蝶ナット36の位置は固定される。この蝶ナット36は、操作部33となる。
【0047】
次に述べる綜絖枠高さ測定手段4は、基準箇所に対する綜絖枠90の特定箇所の高さを測定するものであって、その測定結果に基づいて綜絖枠90の支持高さを作業者に判断させるものである。図では、この基準箇所はヘルドフレームガイド92の上面を用い、綜絖枠90の特定箇所は綜絖枠90の上面と面一である本体ブロック51の上面を用いる。
【0048】
図での綜絖枠高さ測定手段4は、スケール41を係合手段2の本体部5に対して相対的に上下動可能に支持させるものである。作業者は、ヘルドフレームガイド92の上面にスケール41を載置し、スケール41に対して係合手段2を綜絖枠90と一緒に上下方向に移動させ、その際のスケール41の目盛りと本体部5の上面が指し示す位置を照らし合わせて、綜絖枠90の支持高さを測定する。
【0049】
スケール41は、細長い四角形の定規板に目盛りが上下に記されたもので、定規板には左右の中間部において、前後に貫通する長孔42が上下方向に沿って形成されている。スケール41は本体部5の前面に台座43を介して配置され、スケール41の前面側には座金45、なべ小ねじ44が順次配置される。なべ小ねじ44のねじ軸を、座金45、スケール41、および台座43の各抜穴43a、45a、長孔42を通して、本体部5の前面のねじ穴56に螺合させることによって、スケール41は本体部5に支持される。本体部5のねじ穴56に対するなべ小ねじ44の螺合深さを作業者が調節して、台座43とスケール41との間に隙間ができるようにし、その結果、ヘルドフレームガイド92の上面に載置されたスケール41に対して、係合手段2が上下方向に移動可能に保持される。
【0050】
上述した図示の綜絖枠高さ調節装置1は、以下の手順で使用される。まず、織機を寸動させて綜絖枠90の高さが所定の位置となるように停止させる。次に、作業者は左右一対の綜絖枠高さ調節装置1を織機に設置する前に、あらかじめ把持装置2の蝶ナット74を緩め、把持装置2に備わる一対のクランプ面の間隔をサイドステー90aの厚みよりも広げておく。また、作業者は、あらかじめ操作部33の蝶ナット36を操作し、把持装置2の本体部5の上面と皿ばね付きナット35の底面との距離を、綜絖枠90の上面とヘルドフレームガイド92の上面との距離よりも狭めておく。
【0051】
そして、作業者は、これから調節しようとする綜絖枠90の上面と本体部5の上面とが面一になるように高さを合わせながら、各綜絖枠高さ調節装置1をサイドステー90aに向って押し込んで、把持装置2の一対のクランプ面で形成する開口の底にサイドステー90aの側面を当接させ、昇降手段3のネジ部材31の鉛直度を出しつつ、把持装置2の蝶ナット74を締め付けることによって、一対のクランプ面にサイドステー90aを把持させる。
【0052】
次に作業者は、昇降手段3の操作部33によりネジ部材31と本体部5の雌ネジ部54とを相対回転させ、皿ばね付きナット35をヘルドフレームガイド92の上面に当接させる。このときスケール41は、自重で落下してその下端をヘルドフレームガイド92の上面に当接している。
【0053】
次に、作業者は、綜絖枠90を下から支える左右のヘルドフレームジョイント87aのボルト87cを緩め、ヘルドフレームジョイント87aに対するジョイントロッド87bの突出長を変更可能な状態にする。このとき、綜絖枠90の左右を一対の綜絖枠高さ調節装置1、1で支持しているので、綜絖枠90が自重で落下することはない。この後、作業者は、昇降手段3の操作部33である蝶ナット36を回して、綜絖枠90と一緒に把持装置2を上下動させ、指針となる本体部5の上面とスケール41の目盛りの一致箇所を見ながら綜絖枠90を所望の高さ位置に調節する。
【0054】
具体的な高さ位置の調節の仕方を図12に基づいて説明する。高さ調節は、ヘルドフレームガイド92の上面から綜絖枠90の上面までの高さ寸法H1により決定する。綜絖枠90には図示しないヘルドが支持されており、ヘルドにおけるメールの中心が織機のフレーム95の上面に対して所望寸法となるように、綜絖枠90の高さを調節するのである。その際には、上述の高さ寸法H1の他に、フレーム95の上面からヘルドフレームガイド92の上面までの高さ寸法H2も考慮に入れる。
【0055】
高さ位置の調節後、左右のヘルドフレームジョイント87aのボルト87cを締めて、ジョイントロッド87bの突出長を固定し、ヘルドフレームジョイント87aとジョイントロッド87bとを連結し、綜絖枠90の支持高さを固定する。
【0056】
その後に、各綜絖枠高さ調節装置1における把持装置2の蝶ナット74を緩め、綜絖枠90の把持を解除し、織機から各綜絖枠高さ調節装置1を取り外す。この一連の作業を、調節しようとする綜絖枠90の枚数分だけ繰り返す。
【0057】
次に、図5、図6に示す綜絖枠高さ調節装置1の例を説明する。図5は、綜絖枠高さ調節装置1をヘルドフレームガイド92の上に載せて綜絖枠90を支持する構造を示す正面図である。図6(イ)は綜絖枠高さ調節装置1を拡大して示す正面図で、図6(ロ)は図6(イ)のB−B線拡大断面図である。
【0058】
図示の綜絖枠高さ調節装置1は、基本的には先の実施例と同様の構成および作用を有するが、先の例とは異なり、係合手段2と綜絖枠90とをピン結合により係合させるものを用い、昇降手段3には綜絖枠高さ測定手段4を組み込んだものを用いるものである。従って、専用の綜絖枠高さ測定手段4を綜絖枠高さ調節装置1は有しない。
【0059】
係合手段2は、綜絖枠90の左右方向の外側面に係合する係合装置である。係合装置2は、昇降手段3によって上下動させる本体部5と、本体部5の左右方向の内面から綜絖枠90のサイドステー90aに向かって突出する係合ピン57とを備えるものである。
【0060】
本体部5は、直方体形状であって、上下に貫通する貫通穴53、貫通穴53に形成する雌ネジ部54を先の例と同様に備えるほか、先の例とは異なって、係合ピン57の一方が圧入される埋設穴58を備えている。また、係合ピン57、正確に言えば係合ピン57の他方が嵌まり込む係合穴59は、サイドステー90aにおける外向きの側面に形成される。係合穴59の形成高さは、先の例と同様に綜絖枠90の上面と本体部5の上面とが面一となるように決められる。係合穴59は、既設の綜絖枠90に追加して加工しても良いし、新設の綜絖枠90に予め加工しておいても良い。
【0061】
昇降手段3は、そのネジ部材31の軸部には、上下方向に延在する綜絖枠高さ測定手段4が設けられる。綜絖枠高さ測定手段4は、ネジ部材31の軸部に目盛り表示面46が上下方向に延在して設けられ、目盛り表示面46に目盛りを上下に間隔をあけて記したものである。図示の例では綜絖枠高さ測定手段4は、ネジ部材31であるスタッドボルトにおける円周方向全域のうち一部分について、ねじ山を上下方向に切削して目盛り表示面46を形成し、略平面となった目盛り表示面46に、軸線方向に対して直角に延びる線状の目盛りを、上下に刻印して記したものである。従って、ネジ部材31の断面は、平面視して円の一部を真っ直ぐ切除した形態である。
【0062】
次に、図7、図8に示す綜絖枠高さ調節装置1の例を説明する。図7は、綜絖枠高さ調節装置1をヘルドフレームガイド92の上に載せて綜絖枠90を支持する構造を示す正面図である。図8(イ)は、綜絖枠高さ調節装置1を拡大して示す正面図である。図8(ロ)は、図8(イ)の左側面図である。
【0063】
図示の綜絖枠高さ調節装置1は、複数の部材を組み合わせて一体として使用している先例とは異なり、係合手段2を機能の異なる二つの部分に分けて構成し、昇降手段3を係合手段2のうち一体のみが組み込まれたものとしてある。
【0064】
具体的には、図示の係合手段2は、綜絖枠90に対して係脱可能な第一の係合装置21と、昇降手段3のネジ部材31によって昇降される第二の係合装置22とが、別体に設けられる係合装置である。この係合装置は、綜絖枠90の高さ調節作業時には第二の係合装置22の上に第一の係合装置21を載置して使用するものである。
【0065】
第一の係合装置21は、貫通穴53および雌ネジ部54が無いこと以外、前例の係合装置と同様の構造であって、本体部5と係合ピン57とを備えている。
【0066】
第二の係合装置22は、第一の係合装置21を載置させる略コの字形の支持部材23と、支持部材23の底面から上ボルト24の軸部を垂下させるもので、この上ボルト24の軸部が後述の昇降手段3のターンバックル38に螺合される。
【0067】
支持部材23は、コの字板の開口方向を上向きとしてあり、その中央片23aの前後に設けられる前片23bおよび後片23cが本体部5の前後に配置され、本体部5が前後に移動して落下しないようになっている。また、支持部材23は、その中央片23aには上下に貫通する貫通穴23dが形成され、貫通穴23dには上ボルト24の軸部が下向きに通され、この軸部に螺合されたナット25と支持部材23から垂下させた上ボルト24の頭部で中央片23aを挟むことにより固定する。そして、上ボルト24の頭部上面は、第一の係合装置21(本体部5)の底面を載置させる箇所となる。
【0068】
支持部材23の前片23bには、その前にナット26、スケール41、座金45が配置され、なべ小ねじ44でこれらを前片23bに止めて、スケール41とナット26の間にはスケール41の上下動を確保できるように遊びが設けられる。
【0069】
図示の昇降手段3は、第二の係合装置22が一体に組み合わされたもので、第二の係合装置22の上ボルト24に螺合されるターンバックル38を操作部33とし、ターンバックル38の下端部に螺合される下ボルトを上下に延在するネジ部材31とし、下ボルト31の頭部を座部32とするものである。
【0070】
ターンバックル38は、通常通り、一端に右ネジ、他端に左ネジが切ってあるので、上ボルト24と下ボルト31の各雄ネジ部は逆ネジである。
【0071】
図示の綜絖枠高さ調節装置1は、第一の係合装置21が、他とは別体である点に留意して使用する。つまり、作業者は、綜絖枠90の左右に第一の係合装置21をそれぞれ係合した後で、第二の係合装置22と昇降手段3と綜絖枠高さ測定手段4が一体に組まれたものを、第一の係合装置21とヘルドフレームガイド92との間にそれぞれ配置する。このときに作業者は、第二の係合装置22の支持部材23を第一の係合装置21の下部に嵌め込んで、第一の係合装置21と第二の係合装置22の前後方向を位置決めすることができる。その後、作業者は、ターンバックル38を回し、下ボルト31の底面をヘルドフレームガイド92の上面に当接させて綜絖枠90を支持する。この後は、他の例と同様である。
【0072】
なお、図示の第二の係合装置22は、上述の説明では係合手段2の一部として記載しているが、昇降手段3の一部として記載することも可能である。この場合、昇降手段3は、第二の係合装置22の上ボルト24に螺合され上下に延在するネジ部材31としてのターンバックル38の雌ネジ部と、ターンバックル38の雌ネジ部と第二の係合装置22の上ボルト24とを相対回転させるための操作部としてのターンバックル38と、織機の固定部に載置される座部としての下ボルト31とを含む。
【0073】
綜絖枠高さ調節装置1は、上述した例に限定されない。一番目の例では、締結部7の雄ネジ71の突出方向は、把持装置2における本体部5の貫通穴53の貫通方向に対して垂直且つ把持方向に対して垂直な方向であるが、これに限らず、把持方向に対して平行方向であっても良いし、本体部5の雌ネジ部54の軸線方向に対して平行方向であっても良い。
【0074】
二番目の例では係合ピン57を本体部5と一体化させ、係合穴59をサイドステー90aに設けるが、これに限らず、係合ピン57をサイドステー90aと一体化させ、係合穴59を本体部5に設けても良いし、本体部5およびサイドステー90aに係合穴をそれぞれ設け、係合ピン57を単独の部材として用いるものでも良い。
【0075】
二番目の例では、綜絖枠高さ測定手段4は、綜絖枠90の上面と面一に合わせる本体部5の上面が指針となり、指針に一致する目盛りの値を作業者が読んで綜絖枠90の高さ調節をするものであるが、これに限らず、専用の指針を綜絖枠90の上面と不一致の箇所に設けても良い。例えば、図示しないが、綜絖枠高さ測定手段4は、ネジ部材31に、全長の両端部にネジ山があり且つ全長の途中にネジ山がない通常のスタッドボルトを用い、ネジ山がない面を目盛り表示面46とし、目盛り表示面46よりも下側又は上側の雄ネジ部31aで本体部5が移動するものとし、本体部5から上方又は下方の目盛り表示面46に向って専用の指針を突出させるものであっても良い。
【0076】
また、最後の例では、綜絖枠90とは別体の第一の係合装置21を綜絖枠90に係合させる構造を用いたが、これに限らず、綜絖枠90自身がその一部として第一の係合装置21を一体に備えるものとしても良く、この場合、第一の係合装置21は綜絖枠高さ調節装置1に含まれず、係合手段2は第二の係合装置22のみで構成される。
【0077】
同じく最後の例では、ターンバックル38と下ボルト31の組み合わせを昇降手段3の長さが変わるように構成されているが、これに代えて、下ボルト31の代わりに単に回転可能な支持軸を設けると共に、ターンバックル38の代わりに支持軸の上部を下側で回転可能に支えるナット部材を設け、ナット部材の上側の雌ネジに第二の係合装置22の上ボルト24を螺合させ、上ボルト24をネジ部材31として用いるものであっても良い。その他に、上ボルト24の代わりに、コ字状の支持部材23から垂下する単なる支持軸を設け、ターンバックル38の代わりに、支持軸の下部を上側で回転可能に支えるナット部材を設け、ナット部材の下側の雌ネジに下ボルト31を螺合させるものであっても良い。また、ターンバックル38、上ボルト24、および下ボルト31に代えて、両端に逆ネジの雄ネジを設けたターンバックルロッドと、それぞれの雄ネジに螺合するナット部材とを設けても良い。
【符号の説明】
【0078】
1綜絖枠高さ調節装置、2係合手段(把持装置、係合装置)、
3昇降手段、4綜絖枠高さ測定手段、5本体部、6クランプ部材、7締結部、
21第一の係合装置、22第二の係合装置、23支持部材、23a中央片、
23b前片、23c後片、23d貫通穴、24上ボルト、25ナット、26ナット、
31ネジ部材(スタッドボルト、下ボルト)、
31a雄ネジ部、32座部、
33操作部、34ナット、35皿ばね付きナット、35a皿ばね、36蝶ナット、
37ナット、38ターンバックル、
41スケール、42長孔、43台座、43a抜穴、44なべ小ねじ、45座金、
45a抜穴、46目盛り表示面、
51本体ブロック、52クランプ部、52a摩擦部材、53貫通穴、54雌ネジ部、
55段部、56ねじ穴、57係合ピン、58埋設穴、59係合穴、
61一片、61a抜穴、62他片、63クランプ部、63a摩擦部材、
71雄ネジ、72テーパ座金、72a抜穴、73テーパ座金、73a抜穴、
74蝶ナット、
80開口装置、81往復駆動装置、82駆動伝達機構、83揺動レバー、
84連結レバー、85揺動アーム、86リンク、87伸縮ロッド、
87aヘルドフレームジョイント、87bジョイントロッド、87cボルト、
87dジョイント、
90綜絖枠、90aサイドステー、90bフレームスチーブ、91ガイド、
92ヘルドフレームガイド、92a凹溝、93ガイドシャフト、
94シャフトブラケット、95フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
綜絖枠毎に設けられて往復駆動装置と綜絖枠とを連結する駆動伝達機構であって対応する綜絖枠の支持高さを変更可能に構成された駆動伝達機構を含む開口装置に用いられる綜絖枠高さ調節装置において、
綜絖枠に対し係脱可能であって織機の運転開始前に行われる綜絖枠の高さ調節作業時に綜絖枠の側方に配置されて綜絖枠のサイドステーに係合される係合手段と、高さを調節する綜絖枠の側方における織機の固定部に載置されて該固定部に対し係合手段を上下方向に移動させる昇降手段とを含む、
ことを特徴とする綜絖枠高さ調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−108209(P2013−108209A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−21165(P2013−21165)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2008−148172(P2008−148172)の分割
【原出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)