説明

緊急災害警報転送システム

【課題】コンピュータシステムにおける災害対策としてコールドスタンバイ、ホットスタンバイがあるが、災害発生時のコンピュータシステム障害において、コールドスタンバイには、系切り替え時間がかかるという課題、ホットスタンバイには、待機系システムの電力維持コストがかかるという課題がある。
【解決手段】被災エリアネットワーク100、及び非被災エリアネットワーク200上に緊急災害警報受信装置を配置しておき、緊急地震速報などの緊急災害警報を緊急災害警報受信装置が受信した場合に、非被災エリアネットワーク200上の緊急災害警報受信装置201から非起動コンピュータ202へ起動命令を送信しコンピュータを起動させ、緊急災害警報を送信することで、高速な系切り替えを行うことができる(コールドスタンバイからホットスタンバイへの高速移行ができる)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管轄するネットワーク上のコンピュータシステムの復旧に関わり、災害発生時における被災エリア及び、非被災エリア上で、緊急地震速報を含む緊急災害警報を緊急災害警報受信装置が受信した場合に、当該エリアの一つ以上のコンピュータへ起動命令及び、緊急災害警報を転送する緊急災害警報転送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プログラムを実行するコンピュータを現用系とし、現用系と同等のプログラムが動作可能なコンピュータを稼動させ、待機系としてスタンバイさせておくホットスタンバイと、現用系と同等のプログラムが動作可能なコンピュータを待機系として非稼動状態でスタンバイさせておくコールドスタンバイがある。
【0003】
また、災害の警報装置として、地震速報システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−166975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンピュータシステムにおける災害対策として、コールドスタンバイによるコンピュータシステムの復旧方式がある。現状のコールドスタンバイでは、現用系システムの障害を検知してから、待機系システムを現用系システムへと移行するため、移行作業の完了前に現用系システムが破壊されている可能性があり、コンピュータシステムの不稼動である期間が長くなる場合がある。
【0006】
一方、上記とは別の災害対策として、ホットスタンバイによるコンピュータの復旧方式がある。現状のホットスタンバイ形式では、待機系から現用系への移行は、プログラム及びプログラムが使用するデータの移行だけで済むため、移行時間が短いが、待機系システムのコンピュータを常に稼動状態にしておくための電力がかかる。
【0007】
本発明では、地震速報システムにおける緊急地震速報を含む緊急災害警報を緊急災害警報受信装置が受け付け、災害発生前に現用、待機の両系のコンピュータシステムへ緊急災害情報を転送することで、コールドスタンバイの持つ低電力コストのメリットを維持しつつ、障害発生した現用系システムを待機系システムへ移行するまでの時間を短縮することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本発明では、管轄するネットワーク上の緊急災害警報受信装置が、緊急地震速報を含む自然災害又は、人的災害における緊急災害警報を受信する手段と、前記緊急災害警報に含まれる災害情報を基に、受信した緊急災害警報データを当該ネットワーク上の一つ以上の稼動中コンピュータに対して転送又は、コンピュータ上の災害対応プログラムが受信可能なデータ形式へ変換後に転送する手段と、前記緊急災害警報に含まれる災害情報を基に、当該ネットワーク上の一つ以上の非稼動コンピュータに対して、起動命令を指示する信号を送信し、起動された一つ以上の起動中コンピュータに対し、受信した緊急災害警報データを転送若又は、コンピュータ上の災害対応プログラムが受信可能なデータ形式へ変換後に転送する手段と、を備え、被災エリアで受信した緊急災害警報が非被災エリアへ配信されない場合に、被災エリアに存在する緊急災害警報受信装置と、非被災エリアに存在する緊急災害警報受信装置間で、緊急災害警報データを送受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、現用系システムでの災害発生時に配信された緊急災害警報受信時に待機系システムが稼動状態になることにより、現状のコールドスタンバイと同等の電力コストで、高速に系切り替えを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の緊急災害警報転送システムのシステム構成を表す全体図である。
【0012】
図1において、100は被災エリアネットワーク、101は被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置、102は被災エリアネットワーク100に配置された稼動中コンピュータ、200は非被災エリアネットワーク、201は非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置、202は非被災エリアネットワーク200に配置された非稼動コンピュータ、300は緊急災害警報受信装置に配信する緊急災害警報、301は自然災害に関する自然災害警報、302は図示していない気象庁の緊急地震速報配信サーバから配信される緊急地震速報、303は人的災害に関する人的災害警報を示す。ここで、稼働中コンピュータ102が存在するシステムが現用系システムであり、非稼働コンピュータ202が存在するシステムが待機系システムである。
【0013】
緊急災害警報300の緊急災害警報は、自然災害に関する自然災害警報301と、人的災害に関する人的災害警報303の人的災害警報を含む。また、自然災害に関する自然災害警報301は、緊急地震速報302を含む。
【0014】
被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101は、被災エリアネットワーク100に有線又は、無線ネットワークにて接続されている。
【0015】
被災エリアネットワーク100に配置された稼動中コンピュータ102の稼動中コンピュータは一つ以上のコンピュータで構成され、被災エリアネットワーク100に有線又は、無線ネットワークにて接続されている。
【0016】
非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201は、非被災エリアネットワーク200に有線又は、無線ネットワークにて接続されている。
【0017】
非被災エリアネットワーク200に配置された非稼動コンピュータ202は一つ以上のコンピュータで構成され、非被災エリアネットワーク200に有線又は、無線ネットワークにて接続されている。
【0018】
自然災害に関する自然災害警報301、または、人的災害に関する人的災害警報303の災害警報を含む一つ以上の緊急災害警報300を被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101又は、非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201の緊急災害警報受信装置が受信する。
【0019】
緊急災害警報300は、非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置101のみ若しくは、被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101及び、非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201へ同時配信される。
【0020】
緊急災害警報300が被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101及び、非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201へ同時配信される場合、被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101は、受信した緊急災害警報300を解析し、被災エリアネットワーク100上の被災エリアネットワークに配置された稼動中コンピュータ102が受信可能なデータ形式であるかどうかを判定する。受信可能なデータ形式の場合、稼動中コンピュータ102へ緊急災害警報300を転送する。受信不可能なデータ形式の場合、受信可能なデータ形式へ変換後、被災エリアネットワーク100に配置された稼動中コンピュータ102へ緊急災害警報300を転送する。
【0021】
非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201は、受信した緊急災害警報300を解析後、非被災エリアネットワーク200上の非被災エリアネットワークに配置された非稼動コンピュータ202に対して、起動命令を送信する。非被災エリアネットワーク200に配置された非稼動コンピュータ202が起動後、非被災エリアネットワーク200に配置された非稼動コンピュータ202が受信可能なデータ形式であるかどうかを判定する。受信可能なデータ形式の場合、起動済みの非被災エリアネットワーク200に配置された非稼動コンピュータ202へ緊急災害警報300を転送する。受信不可能なデータ形式の場合、受信可能なデータ形式へ変換後、起動済みの非被災エリアネットワーク200に配置された非稼動コンピュータ202へ緊急災害警報300を転送する。
【0022】
緊急災害警報300が被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101のみに配信される場合、被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101は、非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201へ、緊急災害警報300若しくは、データ変換済み緊急災害警報300を転送する。
【0023】
図2は、被災エリアネットワーク100に配置された緊急災害警報受信装置101及び、非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201の手順を詳細に説明したフロー図である。
【0024】
図2において、400は緊急災害警報の受信を行う緊急災害警報受信ブロック、401は受信した緊急災害警報のデータ解析を行う緊急災害警報解析ブロック、402は管轄するネットワークの判別を行う管轄ネットワーク判定ブロック、403は管轄ネットワーク上のコンピュータへの起動命令を送信する起動命令送信ブロック、404は受信した緊急災害警報が管轄ネットワーク上のコンピュータで受信可能かどうかを判定する緊急災害警報判定ブロック、405はコンピュータが受信可能なデータ形式へ緊急災害警報を変換する緊急災害警報変換ブロック、406は緊急災害警報を非被災エリアネットワーク200へ転送するかどうかの判定を行う緊急災害警報転送要否判定ブロック、407は管轄ネットワーク上のコンピュータへ緊急災害警報を転送する緊急災害警報コンピュータ向け転送ブロック、408は緊急災害警報を非被災エリアネットワーク200の緊急災害警報受信装置201へ転送する緊急災害警報受信装置向け転送ブロックを示す。
【0025】
緊急災害警報受信ブロック400で、有線又は、無線ネットワークで接続された緊急災害警報300の発信拠点から緊急災害警報300を受信する。緊急災害警報解析ブロック401で、緊急災害警報300を解析する。緊急災害警報解析ブロック401では、緊急災害警報300に含まれる、想定される災害の大きさ又は、実際の災害の大きさ、想定される災害発生場所又は、実際の災害発生場所、予想される災害の種別又は、実際の災害の種別など(これらの情報を総称して「緊急災害警報に含まれる災害情報」という。)を解析し、あらかじめ本装置に設定されてある基準値を満たす場合に、緊急災害警報装置の管轄ネットワーク判定ブロック402以降の処理を実行する制御も合わせて行う。
【0026】
管轄ネットワーク判定ブロック402では、本装置の管轄するネットワークを判定し、被災エリアネットワーク100であれば(「Yes」の場合)、緊急災害警報判定ブロック404の処理へ移行する。非被災エリアネットワーク200であれば(「No」の場合)、起動命令送信ブロック403の管轄する非被災エリアネットワーク200に配置された非稼動コンピュータ202へ起動命令の送信を行う。あらかじめ規定されたコンピュータの稼働台数分のコンピュータの起動を確認後、緊急災害警報判定ブロック404の処理へ移行する。
【0027】
緊急災害警報判定ブロック404では、緊急災害警報300が管轄するコンピュータで受信可能なデータ形式かどうかを判定している。受信不可能なデータ形式の場合(「不可能」の場合)、緊急災害警報変換ブロック405でコンピュータが受信可能なデータ形式へ変換を行う。例えば、緊急地震速報302は受信するが、ある人的災害警報を受信できないコンピュータの場合、あらかじめコンピュータに受信可能な共通データ形式を用意しておき、緊急災害警報300を共通データ形式へ変換後に転送を行う。あるいは、コンピュータ上に受信可能な警報が存在しない場合の選択肢として、起動通知のみを行い緊急災害警報300を転送しない選択肢もある。
【0028】
受信可能なデータ形式の場合(「可能」の場合)、緊急災害警報転送要否判定ブロック406の処理へ移行する。
【0029】
緊急災害警報転送要否判定ブロック406では、被災エリアネットワーク100上に配置され緊急災害警報300を受信した本装置が、あらかじめ、非被災エリアネットワーク200上に緊急災害警報300が同時配信されないことが判明している場合(「必要」の場合)、緊急災害警報受信装置向け転送ブロック408にみられるように、非被災エリアネットワーク200に配置された緊急災害警報受信装置201へ、緊急災害警報300又は、変換された緊急災害警報300を転送する。
【0030】
また、非被災エリアネットワーク200上に緊急災害警報300が同時配信されないことが判明していない場合(「不必要」の場合)、緊急災害警報コンピュータ向け転送ブロック407では、管轄するネットワーク上のコンピュータへ、緊急災害警報300又は、変換された緊急災害警報300を転送する。
【0031】
以上のように、被災エリアネットワーク100、及び非被災エリアネットワーク200上に緊急災害警報受信装置を配置しておき、緊急地震速報などの緊急災害警報を緊急災害警報受信装置が受信した場合に、非被災エリアネットワーク200上の緊急災害警報受信装置201から非起動コンピュータ202へ起動命令を送信しコンピュータを起動させ、緊急災害警報を送信することで、高速な系切り替えを行うことができる(コールドスタンバイからホットスタンバイへの高速移行ができる)。
【0032】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の緊急災害警報転送システムのシステム構成を表す全体図である。
【図2】本発明の実施形態の緊急災害警報受信装置を表す図である。
【符号の説明】
【0034】
100:被災エリアネットワーク
101:緊急災害警報受信装置
102:稼動中コンピュータ
200:非被災エリアネットワーク
201:緊急災害警報受信装置
202:非稼動コンピュータ
300:緊急災害警報
301:自然災害警報
302:緊急地震速報
303:人的災害警報
400:緊急災害警報受信ブロック
401:緊急災害警報解析ブロック
402:管轄ネットワーク判定ブロック
403:起動命令送信ブロック
404:緊急災害警報判定ブロック
405:緊急災害警報変換ブロック
406:緊急災害警報転送要否判定ブロック
407:緊急災害警報コンピュータ向け転送ブロック
408:緊急災害警報受信装置向け転送ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管轄するネットワーク上の緊急災害警報受信装置が、
緊急地震速報を含む自然災害又は、人的災害における緊急災害警報を受信する手段と、
前記緊急災害警報に含まれる災害情報を基に、受信した緊急災害警報データを当該ネットワーク上の一つ以上の稼動中コンピュータに対して転送又は、コンピュータ上の災害対応プログラムが受信可能なデータ形式へ変換後に転送する手段と、
前記緊急災害警報に含まれる災害情報を基に、当該ネットワーク上の一つ以上の非稼動コンピュータに対して、起動命令を指示する信号を送信し、起動された一つ以上の起動中コンピュータに対し、受信した緊急災害警報データを転送又は、コンピュータ上の災害対応プログラムが受信可能なデータ形式へ変換後に転送する手段と、
を備え、
被災エリアで受信した緊急災害警報が非被災エリアへ配信されない場合に、被災エリアに存在する緊急災害警報受信装置と、非被災エリアに存在する緊急災害警報受信装置間で、緊急災害警報データを送受信することを特徴とする緊急災害警報転送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−81030(P2010−81030A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244145(P2008−244145)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(391002409)株式会社 日立システムアンドサービス (205)
【Fターム(参考)】