説明

緑化用透水性マット及びその製法

【課題】植栽の成育に必要な水を緩やかに供給することで水分不足を解消して植栽を保護し、給水作業の負担を軽減し、歩行者の滑止めの効果があり、人や動物の侵入に対する植栽の保護を図ることができ、しかもヒートアイランド現象を抑制することができる緑化用透水性マット及びその製法を提供する。
【解決手段】透水性のマット本体2は、ベース用ゴムチップ3にバインダーを混合して型枠により成形固化したものからなる。マット本体2の上面2Aには、カバー用ゴムチップ6をマット本体2上面2Aに散在させてバインダーにより固着することで凹凸状の滞水部5が形成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽に緩やかに給水するので植栽の生育に好適であるし、植栽の根元に敷設することで根元を人や獣類の浸入から保護し、またヒートアイランド現象の抑制にも役立つ緑化用透水性マット及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
透水性マットは従来から知られており、その基本構成はゴムチップにバインダーを混合し、型枠内で加熱しながらプレスしてマット状に成形したものであるが、この構成を踏まえて更に安全性や耐久性を高めるための種々の研究がなされている(特許文献1、同2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−136503号公報
【特許文献2】特許第2553085号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に記載の技術は、バインダーで結合し、内部に空隙を有する小石とゴムチップの混合体からなる表層と、バインダーで結合し、内部に空隙を有するゴムチップからなる内層とから構成したゴムチップ複合部材に関する。この技術によれば、通気性、通水性に優れ、適度な弾性を有するとされている。
また、特許文献2に記載の技術は、加硫ゴム等の弾性チップをウレタン等のバインダーで接着した弾性マットの表面に、2液高圧スプレーンマシンでスプレーした速硬化型ウレタンエラストマーの粒子が多数の透孔を有して結合した表面層を有する透水型弾性舗装材に関する。この技術によれば、速硬化型ウレタンエラストマーを使用するので、弾性マット表面に容易に微細な粒子が互いに多数の透孔を有して結合している厚い表面層を形成でき、その表面強度が大きいので耐久性に優れているとされている。
【0005】
上述した先行技術は相応の効果を奏するものであるが、マット上面に水を積極的に保持する目的は無いし、そのような構成にもなっていないため、降雨や散布による水は速やかにマット内に浸透して地盤に吸収されることになり、持続性のある保水機能に欠けるという問題がある。このため、水分の蒸発が早い気候の頃には、地面や植栽が早期に水分不足になるが、これに対処するために散水、給水作業の頻度が多くなるという問題がある。
【0006】
また、例えば公園や歩道脇の植栽は根元に人や動物が侵入して地面が踏み固められると、地中に水分が浸透することができなくなって植栽の生育が阻害されるという問題がある。
【0007】
本発明は従来技術の問題点に鑑みなされたもので、植栽の成育に必要な水を緩やかに供給することで水分不足を解消して植栽を保護し、給水作業の負担を軽減し、歩行者の滑止め効果があり、人や動物の侵入に対する植栽の保護を図ることができ、しかもヒートアイランド現象を抑制することができる緑化用透水性マット及びその製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る本発明の手段は、ベース用ゴムチップにバインダーを混合して成形固化した透水性のマット本体と、該マット本体の上面にカバー用ゴムチップを散在し、前記バインダーに固着させることによりマット本体の上面に形成した凹凸状の滞水部とからなる。
【0009】
そして、前記滞水部は、前記カバー用ゴムチップの大きさを前記ベース用ゴムチップと同等以下に設定することにより、起伏の大きな凹凸状に形成するとよい。
【0010】
また、請求項1記載の緑化用透水性マットは、円弧状平板に形成してもよい。
【0011】
また、請求項4に係る本発明を構成する手段は、底板が取外し可能な型枠にベース用ゴムチップとバインダーを混合して充填し、上板を被せて上方から加圧しながら一定時間加温した後、前記型枠を上下反転させて前記底板を取外し、再度一定時間加温することにより透水性のマット本体を成形し、該マット本体上面にカバー用ゴムチップを散在させ、上方から板状重しを被せて一定時間加温した後該板状重しを取除いて前記型枠から脱型する工程からなり、前記マット本体上面に凹凸状の滞水部を形成した緑化用透水性マットを製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は叙上の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)透水性を有するマット本体の上面にカバー用ゴムチップを散在固着した凹凸状の滞水部を形成し、降雨や散布した水は滞水部に滞留させて緩やかに浸透させるようにしたから、植栽の根を過剰給水から保護し、またヒートアイランド現象を抑制することができるし、植栽への給水作業を低減することができる。
(2)緑化用透水性マットは、表面の滞水部が凹凸状をなして防滑性があるから、歩道に敷設することで子供や高齢者の歩行の安全を図ることができる。
(3)植栽の根元に敷設することにより、人や動物が侵入して地面が踏み固められて地中への水分の浸透が阻害される事態を予防できるから、特に若い草木の植栽の育成に有効である。
(4)ベース用ゴムチップと同等以下の小さいカバー用ゴムチップを散在させることで、チップ本体の上面全面に起伏の大きい凹凸状の滞水部に形成したから、滞水能力に優れているし、水分をマット本体に緩やかに浸透させることができることから、植栽の根の保護とヒートアイランド現象の抑制を図ることができる。
(5)緑化用透水性マットは円弧状平板に形成し、植栽の根元を囲繞して敷設できるようにしたから、人や動物の侵入に対しても植栽の根元を確実に保護して植栽が傷められる事態や、地面が固められて浸水性が低下する事態を確実に防止することができる。
(6)緑化用透水性マットは、底板が取外し可能な型枠を用いてベース用ゴムチップにバインダーを混合固化してマット本体を成形し、型枠を上下反転させて底板を取外し、マット本体上面にカバー用ゴムチップを散在させて固着することにより凹凸状の滞水部を形成する工程で製造するから、マット本体及び滞水部からなる緑化用透水性マットを効率的に、品質を均一に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る緑化用透水性マットの外観斜視図である。
【図2】緑化用透水性マットの縦断面図である。
【図3】緑化用透水性マットの部分拡大図である。
【図4−1】緑化用透水性マットの製造工程における第一の工程説明図である。
【図4−2】緑化用透水性マットの製造工程における第二の工程説明図である。
【図4−3】緑化用透水性マットの製造工程における第三の工程説明図である。
【図4−4】緑化用透水性マットの製造工程における第四の工程説明図である。
【図5】変形例に係る緑化用透水性マットの斜視図である。
【図6】変形例に係る緑化用透水性マットの使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図において、1は緑化用透水性マット、2は該緑化用透水性マット1を構成するマット本体を示す。該マット本体2は、主として廃タイヤを破砕機によって例えば1〜8mmの大きさに破砕処理して成形したベース用ゴムチップ3にバインダー4を適宜の比率で混合し、後述するように平面略四角形の板状立方体に成形したものからなり、約60%の空隙を有することにより透水性を有している。バインダー4には、例えばウレタン等公知の熱硬化性樹脂を用いる。
【0015】
5は前記マット本体2の上面2Aに形成した滞水部である。該滞水部5はベース用ゴムチップ3と同様に、破砕機によって例えば約1〜4mmmの粒径に成形した多数のカバー用ゴムチップ6で成形してある。ここで、滞水部5を形成するカバー用ゴムチップ6は、凹凸状をした滞水部5に形成するためのものであるから、その大きさはベース用ゴムチップ3と同等以下、即ちベース用ゴムチップ3と同じ大きさか、それより小さいサイズに成形したものを用いる。この場合、大きさが異なるゴムチップを混合することにより、起伏の大きな凹凸状の滞水部5に形成することができる。
また、滞水部5はマット本体2の上面2Aに層状に形成することは目的ではないし、層状にしても滞水性が向上することにはならないから、カバー用ゴムチップ6はマット本体2の上面2Aを覆う程度の量を散在させれば足りる。
【0016】
次に、緑化用透水性マット1の成形に用いる型枠11について説明する。型枠11は例えば金属材やFRPによって形成した枠体12と、底板体13と、押え板14と、板状重し16とから構成してある。
枠体12は上下が開放した四角形の枠部12Aと、該枠部12Aの下端から外側横方向に突出する枠部フランジ12Bと、該枠部フランジ12Bに形成したねじ挿通孔12C、12Cとから構成してある。
【0017】
底板体13は前記枠部12Aに略4分の1の深さまで嵌入する厚さのある四角形板状の底部13Aと、該底部13Aの下端から外側横方向に突出し、前記枠部フランジ12Bと衝合する底板フランジ13Bと、該底板フランジ13Bに刻設したねじ穴13C、13Cとから構成してある。14は押え板で、該押え板14は枠部12Aに上方から嵌入する大きさの四角形の平板に形成してある。
そして、枠部フランジ12Bと底板フランジ13Bを衝合してねじ挿通穴12Cからねじ穴13Cに蝶ねじ15を螺入して締着することにより、底板体13は底部13Aを嵌入した状態で枠体12に組み付けるようになっている。16は滞水部5の成形過程で使用する板状重しで、該板状重し16は枠部12Aに嵌合する大きさで厚さのある平板からなっている。
【0018】
次に、上記型枠11を用いて緑化用透水性マット1を製造する工程について、図4を参照しつつ説明する。先ず、底板体13を組み付けてある型枠11の内面に剥離剤を塗布して電気ヒーター台17上に載置し、計測したベース用ゴムチップ3とバインダー4を混合して枠部12に充填し(図4−1)、上方から押え板14を嵌合して電気ヒーター台17によって約60℃に加温しながら加圧機18によって約5分間プレスして成形し(図4−2)、冷却することによりマット本体2を固化成形する。
【0019】
加温とプレスによりマット本体2の成形が終了したら、底板体13を取外し、上下を反転させて押え板14を下側にして電気ヒーター台17に載置する。上下反転により枠部12A内のマット本体2は押え板14上に落下する。この状態で、電気ヒーター台17により約60℃で15分間加温する。
【0020】
上下反転させたことにより枠部12A内の上方に形成される空間に、カバー用ゴムチップ6を散在させる(図4−3)。滞水部5はマット本体2の上面2Aに起伏のある凹凸状に形成するものであるから、カバー用ゴムチップ6はマット本体2の上面2Aを覆う程度の散布量で足りる。
上述の如く散在させたカバー用ゴムチップ5の上に板状重し16を載せた状態にして、電気ヒーター台17により約60℃で約15分間加温する。これにより、カバー用ゴムチップ6はマット本体2のバインダー4に貼着した状態になる。バインダー4が硬化したら、枠体2から取出して冷却することにより、縦横約30cm、厚さ約3cmの平板状をした緑化用透水性マット1の成形が完了する。なお、緑化用透水性マット1の形状及び大きさは、実施の形態で説明したものに限られるものではなく、例えば長方形でもよい。また、厚さも約1,6〜3,2cmの範囲に設定すれば、必要な強度性、耐久性を持たせることができる。
【0021】
本実施の形態に係る緑化用透水性マット1は、マット本体2が透水性を有しているから、雨水や散水は浸透して植栽の根元に順次供給される点は、従来の透水性マットと同じである。しかし、本実施の形態では、マット本体2の上面2Aに滞水部5を形成し、雨水や散水の一部は滞水部5に一旦滞留させることで、全ての雨水等が直ぐにマット本体2に浸透することなく序々に浸透するようにしたので、植栽に短時間に過剰給水される事態を防止できるし、長く給水できるので植栽の水枯れを防止することができる。
【0022】
また、緑化用透水性マット1は、植栽の根元に配設することで人や動物が根元の地面を押し固めて水の浸透性を低下させる事態を防止するから、植栽の成育にも好適である。しかも、緑化用透水性マット1は地面を覆うことで、雑草の発生を防止する効果もあるから植栽の生育に好適である。
【0023】
また、緑化用透水性マット1は表面側の滞水部5に水を蓄えることで、気化熱によりヒートアイランド現象の抑制を図ることができる。
【0024】
図5及び図6は本実施の形態の変形例に係る緑化用透水性マット21を示す。該緑化用透水性マット21は、上述した緑化用透水性マット1と同様にマット本体22と、該マット本体22の上面に形成した滞水部23とから構成してあるが、内縁21Aと外縁21Bが湾曲した、円形の4分の1のサイズの円弧状平板に形成したことにある。
【0025】
このような円弧状平板に形成した緑化用透水性マット21は、植栽の根元に円板を形成するように4枚配列することで、根元の周囲を完全に覆うことができるから、根元の周囲に水分を均等に補給できるし、人や動物が侵入して地面を固める事態を確実に防止でき、雨水等の浸透が阻害される事態を確実に防止できる。なお、緑化用透水性マット21は3枚組でも6枚組でもよく、枚数に限定はない。
【0026】
なお、本発明に係る緑化用透水性マットについて、実施の形態では、植栽の成育のために植栽の根元に配置するものとして説明したが、例えば住宅のベランダに配置して散水することにより、ヒートアイランド現象を抑制するのに用いてもよい。また、玄関前通路等の歩行路に敷設することにより、ヒートアイランド現象の抑制と歩行時の滑り止めに使用しても有用である。
【符号の説明】
【0027】
1、21 緑化用透水性マット
2 マット本体
2A 上面
3 ベース用ゴムチップ
4 バインダー
5 滞水部
6 カバー用ゴムチップ
11 型枠
12 枠部
13 底板体
13A 底板
16 板状重し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース用ゴムチップにバインダーを混合して成形固化した透水性のマット本体と、該マット本体の上面にカバー用ゴムチップを散在し、前記バインダーに固着させることによりマット本体の上面に形成した凹凸状の滞水部とから構成してなる緑化用透水性マット。
【請求項2】
前記滞水部は、前記カバー用ゴムチップの大きさを前記ベース用ゴムチップと同等以下に設定することにより、起伏の大きな凹凸状に形成してあることを特徴とする請求項1記載の緑化用透水性マット。
【請求項3】
請求項1記載の緑化用透水性マットは、円弧状平板に形成したものである緑化用透水性マット。
【請求項4】
底板が取外し可能な型枠にベース用ゴムチップとバインダーを混合して充填し、上板を被せて上方から加圧しながら一定時間加温した後、前記型枠を上下反転させて前記底板を取外し、一定時間加温することにより透水性のマット本体を成形し、該マット本体上面にカバー用ゴムチップを散在させ、上方から板状重しを被せて一定時間加温した後該板状重しを取除いて前記型枠から脱型することにより、前記マット本体上面に凹凸状の滞水部を形成する緑化用透水性マットの製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−120489(P2011−120489A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278640(P2009−278640)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(509338260)株式会社アイテック (1)
【Fターム(参考)】