説明

線量不確定度を計算するシステム及び方法

線量不確定度を表現している分散マップを生成する働きをする線量計算ツールである。分散マップは、点毎に、どこに線量の高不確定度が存在する可能性があり、どこに線量の低不確定度が存在する可能性があるかを示している。線量不確定度は、送達パラメータ又は演算処理パラメータに関係している1つ又はそれ以上のデータパラメータの誤差の結果である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月28日出願の米国仮特許出願第61/092,523号に対する優先権を主張し、同仮特許出願の全内容を参考文献としてここに援用する。
【背景技術】
【0002】
過去何十年をかけて、コンピュータ及びネットワーク化、放射線療法治療計画立案用ソフトウェア、及び医用画像化様式(CT、MRI、US、及びPET)の進歩が、放射線療法の実践に組み入れられてきた。これらの進歩は、画像誘導放射線療法(「IGRT」)の発展につながった。IGRTは、患者の体内解剖学的構造の断面画像を使用して、健康な臓器への放射線照射を低減しながらも腫瘍への放射線線量の狙い撃ちの向上を図る放射線療法である。腫瘍へ送達される放射線線量は、強度変調放射線療法(「IMRT」)を用いて制御され、同療法は、放射線ビームの寸法、形状、及び強度を、患者の腫瘍の寸法、形状、及び場所に適合するように変えることを伴う。IGRTとIMRTは、改善された腫瘍制御をもたらすと同時に、腫瘍の周囲の健康な組織が照射されることによる急性副作用の可能性を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国仮特許出願第61/092,523号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IMRTは、癌患者へ放射線を投与するための最先端技法である。治療の目標は、腫瘍周囲の健康な臓器によって吸収される放射線量を制限しながら放射線の処方量を腫瘍へ送達することである。IMRT治療の計画立案には、それぞれが何百もの又はそれ以上の小線束強度から構成されているフルエンスマップを求めることが必要になる。
【0005】
IMRTを最適に投与するためには、幾つかの数学的課題が生じる。治療は、患者周りにライナックを回転させ、MLCのリーフの動きを、送達される放射線がそれぞれのガントリー(ビーム)角度での何らかの所望の線量分布に適合するように調整することによって進行する。
【0006】
ビーム角度を知ることに加え、我々は、全てのガントリー角度についてMLC開口のそれぞれの点(x,y)でビームがどれほど強いかを知らなくてはならない。これらの強度プロフィール又はフルエンスマップは、kが使用されるガントリー角度の数であるときa=1、2、・・・kについて二次元非負関数Ia(x,y)により表現される。関数Ia(x,y)を求めるプロセスは、しばしば、フルエンスマップ最適化と呼ばれている。最終的には、ひとたびフルエンスマップ関数Ia(x,y)が求められたら、関数を、それらを実現させようとするリーフシーケンスへ変換しなくてはならない。或る特定の位置(x,y)のMLCリーフの開口時間が長くなればなるほど、当該位置からの直線経路に沿った組織(加えて、一部周辺組織)が吸収する線量は多くなる。フルエンスマップをリーフが開閉する動きに変換するプロセスは、リーフシーケンス化と呼ばれている。MLCリーフシーケンスを所望のフルエンスマップに近似させることがどれほどうまくいくかに影響を及ぼす物理的及び数学的問題が数多くある。
【0007】
治療計画立案の観点から、TomoTherapy(登録商標)治療技術は、使用され得る投射(ビーム角度)の多さのせいで複雑化した標的体積を治療する場合にすこぶる融通性が効く。TomoTherapy(登録商標)システムは、放射線を患者へ螺旋状に送達する能力を有している。しかしながら、螺旋状の送達パターンの固有性により、ユーザーには、照射野幅、ピッチ、及び変調因数の様な、新しい計画立案用パラメータを指定することが求められる。これらのパラメータの賢明な値の選択に失敗すれば、治療計画の品質が危うくなり、総治療時間が増加するのみならず、放射線送達装置が正確に送達するのがより困難な治療計画が出来上がってしまうかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施形態では、本発明は、放射線送達での線量測定不確定度を評価する方法を提供している。本方法は、患者の治療計画を生成する段階であって、放射線送達装置を使用して患者へ送達されるべき線量を含んでいる治療計画を生成する段階と、放射線送達装置用のデータパラメータを同定する段階と、線量計算モジュールを使用して、患者へ送達されるべき線量の不確定度指標を表現している分散マップを生成する段階であって、不確定度指標はデータパラメータに関係している、分散マップを生成する段階と、を含んでいる。
【0009】
もう1つの実施形態では、本発明は、放射線送達装置の送達誤差を検出する方法を提供している。本方法は、患者の治療計画を生成する段階であって、目標フルエンスを含んでいる治療計画を生成する段階と、治療計画に従って患者へ放射線を送達する段階と、治療計画の送達後に、放射線送達装置からの出力フルエンス情報を取得する段階と、出力フルエンス情報と目標フルエンスを比較してフルエンス分散を求める段階と、フルエンス分散に線量計算アルゴリズムを適用して線量分散マップを生成する段階と、を含んでいる。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、部分送達治療計画を評価する方法を提供している。本方法は、患者の治療計画を生成する段階であって、複数の治療フラクションと目標分散情報とを含んでいる治療計画を生成する段階と、治療計画に従って患者へ治療フラクションの少なくとも1つを送達する段階と、治療フラクションの送達後に、放射線送達装置からの出力フルエンス情報を取得する段階と、目標分散情報と出力フルエンス情報の組合せに基づいて未来治療フラクションを評価する段階と、を含んでいる。
【0011】
本発明の他の態様は、詳細な説明及び添付図面を考察することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】放射線療法治療システムの斜視図である。
【図2】図1に示されている放射線療法治療システムで使用することができるマルチリーフコリメーターの斜視図である。
【図3】図1の放射線療法治療システムの概念図である。
【図4】放射線療法治療システムで使用されるソフトウェアプログラムの概略線図である。
【図5】増大ピッチを使用して計画立て直しされた代表的な患者についての線量体積ヒストグラムを示している。
【図6】計画立て直し前と後の両方での正規化されたリーフ開口時間のヒストグラムを示している。
【図7】低ピッチ計画と高ピッチ計画の両方について再構築DQA線量グリッドと計画DQA線量グリッドの間で取られた分散マップの薄片を示している。
【図8】計画立て直し前と後の両方になされたイオンチャンバ測定の結果を示しており、高ピッチ計画で誤差が小さくなったことが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について詳細に説明する前に、本発明は、その適用においては、以下の記述に述べられ又は以下の図面に示されている構造の詳細事項及び構成要素の配列に限定されないものと理解されたい。本発明は、他の実施形態でも実現可能であり、様々なやり方で実践又は実施することができる。更に、ここに使用されている語句及び用語の言い回しは、説明を目的としたものであり、限定を課すものと見なされるべきではないと理解されたい。「含んでいる」、「備えている」、又は「有する」、及びそれらの変形がここで使用されている場合、それらは、その後に掲げられている項目及びそれらの等価物並びに追加の項目を網羅するものとする。別途指定又は限定のない限り、「取り付けられている」、「接続されている」、「支持されている」、及び「連結されている」という用語並びにそれらの変形は、広義に使用されており、直接的と間接的の両方の取り付け、接続、支持、及び連結を網羅する。
【0014】
ここでは図面を記述する際に、上、下、下方、上方、後方、底部、前部、後部などの様な方向に関する言及がなされることもあるが、これらの言及は、便宜上、(垂直に見た)図面に対してなされている。これらの方向は、文字通りに解釈されることも、本発明を何らかの形態に限定することも、意図していない。更に、ここでは説明を目的として「第1」、「第2」、及び「第3」の様な用語が使用されているが、これらには相対的な重要性又は有意性を暗示又は示唆する意図はない。
【0015】
更に、本発明の実施形態は、ハードウェアとソフトウェアの両方、及び電子構成要素又はモジュールを含んでおり、それらは、考察を目的として、構成要素の大多数があたかも単独でハードウェアに実装されているかの様に示されたり説明されたりすることもあるものと理解されたい。しかしながら、当業者においては、この詳細な説明から読み取られた事柄に基づき、少なくとも1つの実施形態では、本発明の電子ベースの態様をソフトウェアで実装してもよいことが認識されるであろう。よって、本発明を実装するのに、複数のハードウェア及びソフトウェアベースの装置、並びに複数の異なる構造の構成要素が利用されてもよいことに留意されたい。更に、後段に記述している様に、図面に示されている特定の機械的構成は、本発明の実施形態を例示することを意図したものであり、他の代わりの機械的構成も実施可能である。
【0016】
図1は、患者14に放射線療法を提供することができる放射線療法治療システム10を示している。放射線療法治療は、光子ベースの放射線療法、近接照射療法、電子ビーム療法、光子線又は中性子線又は粒子線療法、又は他の型式の治療方法を含むことができる。放射線療法治療システム10は、ガントリー18を含んでいる。ガントリー18は、放射線モジュール22を支持することができ、同モジュールは、放射線源24と、放射線のビーム30を生成する働きをする線形加速器26を含むことができる。図面に示されているガントリー18は、リングガントリー、即ち全360°の円弧に亘って広がって完全なリング又は円を作り出しているものであるが、他の型式の取り付け配置構造を採用することもできる。例えば、C字型、部分リングガントリー、又はロボットアームの様な、非リング形状のガントリーを使用することもできるであろう。放射線モジュール22を、患者14に対して様々な回転方向及び軸方向位置に位置決めすることのできる何か他の骨組みを採用してもよい。更に、放射線源24は、ガントリー18の形状に沿わない経路を進んでもよい。例えば、図示のガントリー18が概ね円形の形状であっても、放射線源24には非円形経路を進ませることができる。
【0017】
放射線モジュール22は、更に、放射線ビーム30を修正又は変調する働きをする変調装置34を含むことができる。変調装置34は、放射線ビーム30の変調を提供し、放射線ビーム30を患者14に向けて方向決めする。具体的には、放射線ビーム30は、患者の一部分に向けて方向決めされる。広義に言うと、当該部分には全身を含めてもよいが、全身よりも小さい場合が一般的であり、二次元的な面積及び/又は三次元的な体積によって定義することができる。放射線を受けさせたい部分、これを標的38又は標的領域と呼んでもよく、関心領域の一例である。もう1つの種類の関心領域に要注意領域がある。或る部分に要注意領域が含まれている場合は、放射線ビームは当該要注意領域から逸らされるのが望ましい。患者14は、放射線療法を受ける必要がある標的領域を2つ以上有していることもある。その様な変調は、時に、強度変調放射線療法(「IMRT」)と呼ばれることもある。
【0018】
変調装置34は、図2に示されている照準装置42を含むことができる。照準装置42は、放射線ビーム30を通過させる開口50の寸法を画定及び調節するジョー46のセットを含んでいる。ジョー46は、上ジョー54と下ジョー58を含んでいる。上ジョー54と下ジョー58は、開口50の寸法を調節するために可動になっている。
【0019】
図2に示されている1つの実施形態では、変調装置34は、強度変調を提供するため、次々に位置を移動する働きをする複数のインターレース型リーフ66を含んでいるマルチリーフコリメーター62を備えることができる。更に、リーフ66は、最小開位置と最大開位置の間のどこの位置へも動かせることに留意されたい。複数のインターレース型リーフ66は、放射線ビーム30が患者14の標的38に到達する前に、放射線ビーム30の強さ、寸法、及び形状を変調する。リーフ66のそれぞれは、リーフ66が素早く開閉して放射線の通過を許可又は阻止できるように、モーター又は空気弁の様なアクチュエータ70により独立的に制御されている。アクチュエータ70は、コンピュータ74及び/又は制御装置によって制御することができる。
【0020】
放射線療法治療システム10は、更に、放射線ビーム30を受ける働きをする検出器78、例えばキロ電圧又はメガ電圧検出器、を含むことができる。線形加速器26と検出器78は、患者14のCT画像を生成するコンピュータ断層撮影(CT)システムとして作動することもできる。線形加速器26は、放射線ビーム30を、患者14の標的38に向けて放射する。標的38は、放射線の幾らかを吸収する。検出器78は、標的38によって吸収された放射線の量を検出又は測定する。検出器78は、線形加速器26が患者14の周りを回転して放射線を患者14に向けて放射する際の異なる角度からの吸収データを収集する。収集された吸収データは、吸収データを処理して患者の体組織と臓器の画像を生成するコンピュータ74に送信される。画像は、骨、軟組織、及び血管も示すことができる。
【0021】
CT画像は、扇状幾何学形状、多薄片幾何学形状、又は円錐ビーム幾何学形状を有する放射線ビーム30を用いて取得することができる。また、CT画像は、メガボルト級のエネルギー又はキロボルト級のエネルギーを送達する線形加速器26を用いて取得することもできる。更に、取得されたCT画像は、以前に取得された(放射線療法治療システム10、又は他のCTスキャナ、MRIシステム、及びPETシステムの様な他の画像取得装置からの)CT画像と位置合わせすることもできることに留意されたい。例えば、患者14の以前に取得されたCT画像が、輪郭付けプロセスを経て同定され得た標的を含んでいることもある。患者14の新たに取得されたCT画像を以前に取得されたCT画像と位置合わせすれば、新たなCT画像中に標的38を同定するのに助けとなる。位置合わせプロセスは、堅い又は変形可能な位置合わせツールを使用することができる。
【0022】
画像データは、映像ディスプレイ上に、三次元画像又は一連の二次元画像の何れかとして映し出すことができる。また、画像を備えている画像データは、ボクセル(三次元画像用)又はピクセル(二次元画像用)のどちらであってもよい。一般に、本記述中では、両方を言及するのに画像要素という用語が使用されている。
【0023】
幾つかの実施形態では、放射線療法治療システム10は、X線源とCT画像検出器を含むことができる。X線源とCT画像検出器は、画像データを取得するのに上述の線形加速器26及び検出器78と同様の方式で作動する。画像データはコンピュータ74に送信され、そこで処理されて、患者の体組織及び臓器の画像が生成される。
【0024】
放射線療法治療システム10は、更に、患者14を支持するカウチ82(図1に図示)の様な患者支持台を含むことができる。カウチ82は、x、y、又はz方向の少なくとも1つの軸84に沿って動く。本発明の他の実施形態では、患者支持台は、患者の身体の何れかの部分を支持するように適合されている装置であってもよい。患者支持台は、患者の全身を支持しなくてはならないと限定されているわけではない。システム10は、更に、カウチ82の位置を操縦する働きをする駆動システム86を含むことができる。駆動システム86は、コンピュータ74によって制御することができる。
【0025】
図2と図3に示されているコンピュータ74は、様々なソフトウェアプログラム及び/又は通信アプリケーションを実行するためのオペレーテイングシステムを含んでいる。具体的には、コンピュータ74は、放射線療法治療システム10と通信する働きをする(単数又は複数の)ソフトウェアプログラム90を含むことができる。コンピュータ74は、医療従事者がアクセスできるように適合されている何らかの適した入力/出力装置を含むことができる。コンピュータ74は、プロセッサ、I/Oインターフェース、及び記憶装置、又はメモリの様な、典型的なハードウェアを含むことができる。コンピュータ74は、キーボードやマウスの様な入力装置を含むこともできる。コンピュータ74は、更に、モニターの様な標準的出力装置を含むことができる。加えて、コンピュータ74は、プリンタやスキャナの様な周辺機器を含むことができる。
【0026】
コンピュータ74は、他のコンピュータ74及び他の放射線療法治療システム10とネットワーク化させることができる。他のコンピュータ74は、追加の及び/又は異なるコンピュータプログラム及びソフトウェアを含んでいてもよく、ここに記載されているコンピュータ74と同じである必要はない。コンピュータ74と放射線療法治療システム10は、ネットワーク94と通信することができる。コンピュータ74と放射線療法治療システム10は、更に(単数又は複数の)データベース98及び(単数又は複数の)サーバー102と通信することができる。(単数又は複数の)ソフトウェアプログラム90は(単数又は複数の)サーバー102上に常駐させることもできることに留意されたい。
【0027】
ネットワーク94は、如何なるネットーク化技術又はトポロジー、又は技術とトポロジーの組合せに従って構築することもでき、複数のサブネットワークを含むことができる。図3に示されているコンピュータとシステムの間の接続は、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、公衆交換電話網(「PSTN」)、無線ネットワーク、イントラネット、インターネット、又はあらゆる他の適したネットワークを通して行うことができる。病院又は保険医療施設では、図3に示されているコンピュータとシステムの間の通信は、ヘルス・レベル・セブン(Health Level Seven)(「HL7」)プロトコル、又は任意のバージョン及び/又は他の必要なプロトコルを備えた他のプロトコル類を通じて行うことができる。HL7は、保険医療環境で電子データを交換する場合の、異なる製造供給元による2つのコンピュータアプリケーション(送信側と受信側)の間のインターフェースの実装を定める標準的なプロトコルである。HL7は、保健医療機関が、異なるアプリケーションシステムからのデータのキーセットを交換できるようにしている。具体的には、HL7は、交換されるべきデータ、やり取りのタイミング、及びアプリケーションへのエラーの連絡を定義することができる。フォーマットは、一般的に汎用性があり、関連のアプリケーションの必要を満たすように構成することができる。
【0028】
図3に示されているコンピュータとシステムの間の通信は、任意のバージョン及び/又は他の必要なプロトコルを備えたDigital Imaging and Communications in Medicine(DICOM)プロトコルを通じて行うこともできる。DICOMは、NEMAによって開発された国際通信標準であり、異なる医療機器間で医用画像関連データを伝送するのに使用されるフォーマットを定義している。DICOM RTは、放射線療法データに特化された標準を指す。
【0029】
図3の二方向矢印は、図3に示されているネットワーク94とコンピュータ74の何れか及びシステム10の何れかとの間の二方向通信及び情報伝送を概略的に表現している。しかしながら、一部の医用コンピュータ機器では、一方向の通信及び情報伝送しか必要でないかもしれない。
【0030】
ソフトウェアプログラム90は、放射線療法治療プロセスの機能を果たすべく互いに交信し合う複数のモジュールを含んでいる。様々なモジュールは、放射線療法治療計画の送達が意図された通りに起こったか否かを判定するために互いに交信し合う。
【0031】
ソフトウェアプログラム90は、医療従事者によるシステム10へのデータ入力に基づいて患者14の治療計画を生成する働きをする治療計画モジュール106を含んでいる。データは、患者14の少なくとも一部分の1つ又はそれ以上の画像(例えば、計画画像及び/又は治療前画像)とフルエンスマップを含むことができる。治療計画モジュール106は、医療従事者による処方入力に基づき、治療を複数のフラクションに分け、それぞれのフラクション又は治療用の放射線線量を確定する。治療計画モジュール106は、また、標的38の周りに描かれた様々な輪郭に基づいて標的38用の放射線線量も確定する。複数の標的38が存在していることもあるし、それらが同じ治療計画に含まれていることもある。
【0032】
ソフトウェアプログラム90は、更に、患者14を、特定の治療フラクションについて、ガントリー18の等角点に対して位置決め及び整列させる働きをする患者位置決めモジュール110を含んでいる。患者がカウチ82に載せられている間に、患者位置決めモジュール110は、患者14の画像を取得し、患者14の現在位置を参照画像内の患者の位置と比較する。参照画像は、計画画像、何らかの処置前画像、又は計画画像と処置前画像の組合せであってもよい。患者の位置を調節する必要があれば、患者位置決めモジュール110が駆動システム86に命令を与えてカウチ82を動かすこともできるし、手動で患者14を新しい位置へ動かすこともできる。1つの構成では、患者位置決めモジュール110は、ガントリー18の等角点に対する患者の位置データを提供するように治療室に配置されているレーザーから、データを受信することができる。レーザーからのデータに基づき、患者位置決めモジュール110は駆動システム86に命令を与え、駆動システム86はカウチ82を動かして、患者14のガントリー18に対する正しい整列を実現する。整列プロセスを支援するのに、レーザー以外の装置及びシステムを使用して患者位置決めモジュール110にデータを提供することもできることに留意されたい。
【0033】
患者位置決めモジュール110は、更に、治療中の患者運動を検出及び/又は監視する働きをする。患者位置決めモジュール110は、X線、室内CT、レーザー位置決め装置、カメラシステム、肺活量計、超音波、引張測定、胸部バンドなどの様な運動検出システム112と通信し、及び/又は同システムを組み込んでもよい。患者運動は、不規則又は予想外であることもあり得るし、また平滑又は再現可能な経路に従う必要はない。
【0034】
ソフトウェアプログラム90は、更に、放射線療法治療システム10に命令して、治療計画に従って患者14に治療計画を送達させる働きをする治療送達モジュール114を含んでいる。治療送達モジュール114は、ガントリー18、線形加速器26、変調装置34、及び駆動システム86に、患者14へ放射線を送達させるための命令を生成し、送信することができる。命令は、放射線ビーム30を適正な標的へ治療計画に指定されている適正量だけ送達するために、ガントリー18、変調装置34、及び駆動システム86の必要な動きを、フルエンスマップに従って調整する。
【0035】
治療送達モジュール114は、治療計画によって指定された処方に一致するよう、送達されるべき放射線ビーム30の適切なパターン、位置、及び強度を計算する。放射線ビーム30のパターンは、変調装置34によって、より具体的にはマルチリーフコリメーターの複数のリーフの動きによって、生成される。治療送達モジュール114は、正準的な、所定の、又はテンプレート的なリーフパターンを利用して、治療パラメータに基づく放射線ビーム30用の適切なパターンを生成することができる。治療送達モジュール114はまた、アクセスすることができる、典型症例のパターンのライブラリであって、放射線ビーム30のパターンを確定するのに現患者データを比較するためのライブラリを含むことができる。
【0036】
ソフトウェアプログラム90は、更に、患者治療中に放射線療法治療システム10からのデータを受信する働きをするフィードバックモジュール118を含んでいる。フィードバックモジュール118は、放射線療法治療装置からのデータを受信することができ、患者送信データ、イオンチャンバデータ、フルエンス出力データ、MLCデータ、システム温度、構成要素速度及び/又は位置、流量などに関係している情報を含むことができる。フィードバックモジュール118は、治療パラメータ、患者が受けた放射線線量の量、治療中に取得された画像データ、及び患者の動きに関係しているデータも受信することができる。加えて、フィードバックモジュール118は、ユーザー及び/又は他のソースからの入力データを受信することができる。フィードバックモジュール118は、データを取得し、それが更なる処理で必要とされるまで記憶する。
【0037】
ソフトウェアプログラム90は、更に、フィードバックモジュール118からのデータを分析して、治療計画の送達が意図された通りに起こったか否かを判定し、計画された送達が妥当であることを新たに取得されたデータに基づいて立証する働きをする分析モジュール122を含んでいる。分析モジュール122は、更に、受信されたデータ及び/又は追加の入力されたデータに基づいて、治療計画の送達中に問題が起こったか否かを判定することもできる。例えば、分析モジュール122は、当該問題が、放射線療法治療装置10の誤差、患者の動きの様な解剖学的誤差、及び/又はデータ入力誤差の様な臨床的誤差に、関係しているか否かを判定することができる。
【0038】
分析モジュール122は、放射線療法治療装置10内の、カウチ82、装置出力、ガントリー18、マルチリーフコリメーター62、患者セットアップに関係している誤差、及び放射線療法治療装置10の構成要素間のタイミング誤差を検出することができる。例えば、分析モジュール122は、計画時にカウチの取り換えが行われたか否か、固定装置が正しく使用され及びそれが計画立案時に考慮に入れられたか否か、治療中に位置と速度は正確であるか否かを判定することができる。
【0039】
分析モジュール122は、放射線療法治療装置10の出力パラメータに変化又は偏差が起こったか否かを判定することができる。ガントリー18に関し、分析モジュール122は、ガントリー18の速度及び位置決めに誤差があるか否かを判定することができる。分析モジュール122は、マルチリーフコリメーター62が適正に作動しているか否かを判定するためにデータを受信することができる。例えば、分析モジュール122は、リーフ66が正しい時期に動くか否か、その場に閊えているリーフ66がないかどうか、リーフタイミングが適切に較正されているか否か、及び如何なる所与の治療計画についても、リーフの変調パターンが正しいか否かを判定することができる。分析モジュール122は、更に、如何なる所与の治療計画についても、患者のセットアップ、向き、及び位置の妥当性を立証することができる。分析モジュール122は、ガンドリー18とカウチ62と線形加速器26とリーフ66の間のタイミングが正しいことについても、その妥当性を立証することができる。
【0040】
ソフトウェアプログラム90は、更に、線量不確定度を表現している分散マップを生成する働きをする線量計算モジュール126を含んでいる。線量計算モジュール126は、密度画像(例えば、患者CT画像)、密度画像に対する放射線源(「線源」)の相対位置と動作(位置と動作は「計画幾何学」と呼ばれている)、及び時間のそれぞれの時点に線源の前方の2−D平面に入射するフルエンスを記述しているフルエンスマップ、を受信する。これらの入力(及び、その他、機械試運転など)から、線量画像が計算される。経時的なフルエンスマップは、フルエンス不確定度、誤差、又は他の測定規準のマップと置き換えられる。線量計算モジュール126は、フルエンス不確定度/誤差マップを使用しても、普通にフルエンスマップを使用した場合と同じ様に、通常通りに実行される。得られる画像は、線量画像ではなく、画像空間へ投影された不確定度/誤差を表現している。
【0041】
例えば、我々は、放射線治療計画用のフルエンスマップと、当該計画の1回送達後に再構築された対応するフルエンスマップとを持っているとしよう。線量計算モジュール126は、フルエンスマップを、計画フルエンスマップと送達フルエンスマップの差の二乗で置き換えることにより、分散マップを生成する。線量計算モジュール126は、この分散マップを使用して実行される。得られる画像は、送達の継続時間に亘って累算された、それぞれの画像ボクセルに対する線量の分散を表現している。これらの分散値の平方根は、送達の継続時間に亘るそれぞれのボクセルに対する送達線量対計画線量の標準偏差ということになる。
【0042】
特定時における計画幾何学の不確定度又は誤差は、近隣の時間間隔に亘るフルエンスマップの不確定度として表現することができる。例えば、時間の或る点(t)におけるガントリー位置に不確定度があり、ガントリーが動いているなら、時間の近接する点(t’)についてのフルエンス不確定度は、ガントリーが当該時(t’)に期待される位置に在る確率によって影響を受ける。
【0043】
フルエンスマップから画像空間へ不確定度/分散を投影すること対2つの線量画像を比較することの間には顕著な違いがあり、つまり、フルエンスマップの多数の誤差は、正規線量計算で無効になってしまい、演算処理された線量体積に誤差が現れない可能性がある。しかし、線量計算モジュール126を通して分散(又は類似の非負測定規準)として投影される多数の誤差は、累算され、無効になることはない。よって、線量不確定度の領域は、演算処理された不確定度体積に視認できるであろう。
【0044】
線量計算モジュール126によって生成された分散マップは、点毎に、どこに線量の高不確定度が存在する可能性があり、どこに線量の低不確定度が存在する可能性があるかを示している。線量不確定度は、送達パラメータ又は演算処理パラメータに関係している1つ又はそれ以上のデータパラメータの誤差の結果である。換言すると、線量不確定度は、患者への放射線の計画時と送達時における不確定度の効果を表現している。線量不確定度を、患者の治療計画の計画立案時に見越し的に、そして治療計画の調節又は修正のために遡及的に、考慮に入れることができる。
【0045】
線量不確定度は、(単数又は複数の)データパラメータの設定を求めるときに、制約として役立つ。放射線の送達に関係しているデータパラメータとしては、ライナック出力、リーフタイミング、ジョー位置、放射線ビームの減衰/エネルギー成分のスペクトル変化、カウチ位置、及びガントリー位置を含むことができる。モデル化効果に関係している他のデータパラメータとしては、リーフ寸法、リーフ形状、ジョー形状、2つの隣接するリーフのさねはぎ情報、線源対軸距離、及びビーム形状の変化を含むことができる。線量計算モジュール126は、単一のデータパラメータについて線量への効果を反映している線量分散マップを生成する。線量計算モジュール126はまた、データパラメータの組合せについて線量に対する効果を反映している線量分散を生成することもできる。分散は加法的(分散[合計]=分散[a]+分散[b]+...)であるため、線量計算モジュール126は、多くのデータパラメータに起因するフルエンスの分散を組み合わせ(合算し)、線量分散マップを生成することができる。
【0046】
線量計算モジュール126は、ユーザーが、放射線送達装置の運転を見越せるように、そして治療計画を修正させる(単数又は複数の)の誤差を含む装置フィードバックを組み入れられるようにしている。線量計画モジュール126は、装置の機械的偏差及びそれらがどの様に治療送達に影響を与え得るかを積極的に勘案する。
【0047】
従って、線量計算モジュール126は、治療送達の準備段階時にデータパラメータの1つ又はそれ以上を設定するのに不確定度指標を使用することによって、線量不確定度が小さくなるように治療計画を最適化することができる。より具体的には、治療計画は、線量分散マップ上に示されている患者の或る特定の区域について、線量の不確定度が小さくなるように最適化され得る。また、線量分散マップを勘案して治療計画を修正することもできるし、治療を送達するのに異なる放射線送達装置を選択することもできるし、及び全く異なる治療計画を生成すること又は以前に生成された代替計画のリストから選定することもできる。
【0048】
線量計算モジュール126はまた、より高い不確定度を有するMLCリーフへの治療計画の依存度を小さくすることによって(例えば、或るリーフが許容誤差から外れ始めているなら、我々は、そのリーフをあまり使用しない治療計画を生成することができる)、治療計画の等角点を、MLC又はジョーの位置的な不確定度の影響力が小さくなるように調節することによって、リーフタイミング不確定度はリーフが非常に短い開口時間又は投射時間とほぼ同じほど長い開口時間を有しているときはより大きくなるが、このリーフタイミング不確定度が小さくなるように、投射時の分割リーフ開口時間を調節することによって、及び/又はより高い機械出力不確定度を有するガントリー角度への又はカウチ天板位置不確定度によって影響を受ける空間の領域を通る撮影への治療計画の依存度を小さくすることによって、線量不確定度が小さくなるように治療計画を最適化することができる。
【0049】
線量計算モジュール126は、更に、最適化された治療計画の送達実現性を評価することができる。例えば、線量計算モジュール126は、患者へ治療計画を送達するのに、異なる放射線送達装置を使用することを推奨することができる。線量計算モジュール126は、更に、線量分散マップが、線量の不確定度が既定の閾値を超過していることを指し示したときに、ユーザーへの警報を生成することができる。警報は、異なる計画を選択すること、現在の計画を最適化し直すこと、患者位置又は機械パラメータを調節すること、又は送達装置の修理又は整備を行うことを含め、ユーザーが多くの決定を下すための根拠となり得る。
【0050】
遡及的分析では、線量計算部126は、放射線送達装置の送達誤差を検出することができる。そうするために、線量計算部126は、治療計画の送達後に放射線送達装置から出口データを受信する。出口データ(例えば、出力フルエンス情報)は、例えば、単列気体イオン化検出器(例えばキセノン)、多列気体イオン化検出器、結晶検出器、固体検出器、フラットパネル検出器(例えば、アモルファスシリコン又はセレニウム)、又は他の適した検出装置、の様な検出器からもたらされ得る。線量計算部126は、治療計画の中に指定された目標フルエンスを出力フルエンス情報と比較して、フルエンス分散を生成することができる。線量計算部126は、フルエンス分散を線量計算アルゴリズムへの入力として使用して線量分散マップを生成する。線量分散マップは、ユーザーに表示されることになる。
【0051】
フルエンス分散は、複数の治療フラクションのコースに亘る放射線送達装置からのフィードバックに基づいていてもよい。フルエンス分散に基づき、治療計画を修正することもできるし、新しい治療計画を生成することもできるし、及び/又は残りの治療フラクションを送達するのに、異なる放射線装置が選択されてもよい。
【0052】
線量計算部126は、更に、治療前分散リスクが実際にどれほど現実のものとなるかを、実際の分散を調べることによって判定するために、部分送達治療計画を評価することができる。複数の治療フラクション及び目標分散情報を含む治療計画が生成される。治療フラクションのうち少なくとも1フラクションの送達後、線量計算モジュール126は、放射線送達装置から出力フルエンス情報を取得する。線量計算モジュール126は、未来治療フラクションを評価し、目標分散情報と測定分散情報の組合せに基づいて、未来治療について治療計画逸脱のリスクを評定することができる。当該リスクに基づき、ユーザーは、計画を進めるべきかどうか、計画を最適化し直すべきかどうか、送達のための異なる計画を選定するべきかどうか、又は他の送達オプションが存在するかどうか、について判断を下すことができる。
【実施例】
【0053】
目的:TomoTherapy(登録商標)治療システムでの治療が計画されている患者のサブセットについて観測される送達品質保証(DQA)誤差の源を探ること。
【0054】
方法及び材料:TomoTherapy(登録商標)システムを計画されている6人の患者を分析用に選択した。うち3人の患者ではDQA計画は合格であったが、3人ではQDA計画はイオンチャンバ測定値が期待線量から3%を超えて逸脱していた。患者は、2.5cmの照射野幅、0.143−0.215の範囲のピッチ値を含め、同様のパラメータを使用して計画が立てられた。機械出力は、問題にならないと判定され、よって、正規化されたリーフタイミングシノグラムを分析して、それぞれの計画での平均リーフ開口時間を求めた。この分析は、観測された不一致が、主に低LOTを有する計画に関連付けられることを示唆している。これをテストするため、許容誤差外れDQA測定値を有する患者について、0.287の増大ピッチを使用して計画を立て直した。計画立て直し後、新しいDQA計画が生成され、イオンチャンバ測定が行われた。線量再構築を目的に、DQA送達中、オンボードMVCT検出器を使用して、同様に出口フルエンスデータを収集した。
【0055】
結果:シノグラム分析は、高ピッチ計画について平均リーフ開口時間の30−85%の増加を示した。また、イオンチャンバ測定値は、点線量誤差が1.9−4.4%小さくなり、患者計画が±3%合格判定基準内に入ったことを示した。線量再構築の結果は、イオンチャンバ測定値と申し分なく一致しており、主に短いリーフ開口時間を有する計画へのリーフタイミング誤差の影響力を明確に示している。
【0056】
結論:低平均リーフ開口時間を有する治療計画へのリーフタイミング誤差の影響力は極めて大きくなり得る。これは、低ピッチを使用する治療計画にとって、又は潜在的には、超多分割治療スケジュールにとって、重要になってくる。これらの送達誤差の影響力は、治療計画ピッチを増大することによって低減することができることが実証されている。また、送達誤差を診断する場合の線量再構築の有効性が確立されている。
【0057】
考察:この研究は、TomoTherapy(登録商標)システムでの治療が計画された患者のサブセットで、患者特定送達QA(DQA)点線量測定値が、我々の研究機関が設定した±3%合格判定基準を満たし損ねていたという臨床的状況から生まれた。ファントム整列不良及び機械出力偏差の様な典型的なDQA誤差源は、セットアップ検証のためにオンボードMVCT画像化を利用することによって、そして不合格のDQA計画の測定値を同様の計画パラメータ−即ちほぼ一定の線量率で同じ結果が観測される−を有する合格計画と入れ替えることによって、考えられ得る原因のリストから除外された。
【0058】
この問題を診断するため、TomoTherapy(登録商標)治療システムでの治療が計画されている6人の患者を分析用に選択した:うち3人の患者はDQA計画が合格であったが、3人はイオンチャンバ測定値が期待値から3%を超えて逸脱していた。全ての計画は、2.5cmの照射野幅、15秒のガントリー期間を含め、同様のパラメータを有した。ガントリー回転当たりのカウチ走行距離を照射野幅で割ったものと定義されるピッチ値も、同様で、0.143−0.215の範囲であった。それぞれの患者計画について、正規化されたリーフタイミングシノグラム−総投射時間に対するMLCのそれぞれのリーフが開口している時間の量についての情報を保有している−を、治療計画立案システムから入手して、分析のためにMATLABに読み込ませた。平均リーフ開口時間を算出し、表1に他の治療計画パラメータ及びDQA点線量結果と共に掲載した。
【0059】
表1から分かるように、許容誤差外れのDQA治療計画は、極めて低い平均リーフ開口時間を有している。この結果に基づき、表の患者1−3の平均リーフ開口時間を増大させると、DQA測定値に見られる誤差の縮小がもたらされることになるだろうという仮説を立てた。この仮説をテストするため、患者1−3で、0.287の増大ピッチを用いて計画を立て直した。ピッチを増大させることには、同じ処方線量をより少ない回転数で送達させることによって平均リーフ開口時間を増加させる効果がある。計画立て直し後、新しいDQA計画が生成され、イオンチャンバ測定が行われた。DQAイオンチャンバ測定値の他に、元のDQA処置と計画立て直し済みDQA処置の両方の送達中に、オンボードMVCT検出器を使用して、同様に出口フルエンスデータを収集した。Tomo Therapy Inc.によって開発されたツールを使用し、このデータを利用して、それぞれの投射の時間に亘って取られた個々の検出器のチャネルの信号プロファイルを調べることによって送達フルエンスシノグラムを再構築した。次いで、これらのシノグラムを使用してDQAファントム画像に送達線量を再構築した。
【0060】
[表1] 患者計画パラメータ及びDQA測定値データ
【0061】
【表1】

【0062】
図5は、0.287の増大ピッチを使用して計画立て直しされた代表的な患者の線量体積ヒストグラムを示し、一方、図6は、計画立て直し前と後の両方での正規化されたリーフ開口時間のヒストグラムを示している。これらの図は、ほぼ等価の計画が2つの異なるピッチ値を使用して実現されているが、増大ピッチ計画では平均リーフ開口時間が1.85倍増加することを示している。図7は、低ピッチ計画と高ピッチ計画の両方について再構築DQA線量グリッドと計画DQA線量グリッドの間で取られた差異マップの薄片を示している。これらの差異マップは、DQAイオンチャンバ測定平面で取られ、主に低リーフ開口時間を使用している計画を取り扱った場合のリーフタイミング誤差の影響力を示している。総リーフ開口時間が小さいときには、個々のリーフの遅延誤差の重大度がより大きくなり、その他にも、非常に短いリーフ開口時間で運転されているときにはMLCリーフが非線形的な挙動をするせいで、この様な結果が起こり得る。図8は、計画立て直し前と後の両方になされたイオンチャンバ測定の結果を示しており、試験された3人の患者については、高ピッチ計画を用いたことで誤差が縮小し、1.9−4.4%の範囲であったことが分かる。この図には、再構築された線量値も含まれており、それらの線量値は、送達済みの全ての計画について測定された値との申し分のない一致を示している。
【0063】
上に提示されている実施例は、そこに記載されている放射線療法計画について、同定されたフルエンスマップの誤差であって、計画自体に関係のないフルエンスマップ誤差があったことを我々に教えている。1つの特定の事例では、それはリーフ開口時間誤差として同定されている。以下で更に詳細に論じられている様に、本発明の1つの態様は、フルエンス不確定度を何か目に見えるものに移し換える方法を含んでいる。本質的に、本発明は、線量計算を、不確定度を視覚化するための手段として使用する方法(即ち、フルエンスマップの誤差を線量の誤差に変換することによってそれら誤差を視覚化する)を含んでいる。我々は、誤差源(例えばMLC誤差、ライナック出力偏差、送達不確定度、ガントリー動作、患者を通るビーム軌跡、カウチ動作、IVDT/密度不確定度、機械較正パラメータなど)を捕集し、線量計算部を使用して、線量の様な誤差を組み合わせて或る誤差又は分散マップを作製することができる。ここで論じられているリーフ開口時間は、この方法に従って同定し、計算することができる、1つの考えられ得る誤差である。
【0064】
1つの実施形態では、本方法は、フルエンスマップを、不確定度(誤差又は分散)マップで置き換える段階と、線量不確定度を得るために、不確定度指標を線量計算部を通して送る段階と、を含んでいる。このやり方では、分散を現実空間に分布させる(シノグラム空間から患者空間へのレイトレーシング)。そして、分散に畳み込みアルゴリズムを適用することができ、幾つかの実施形態では、当該アルゴリズムは不確定度指標に対して計画を最適化することができる。
【0065】
1つの特定の実施例では、フルエンスマップの送達又はモデル化誤差に対する治療計画の感受性を、送達後の治療体積全体に亘る分散(又は誤差)マップを生成することによって評価することができる。原則的に、この手法は、小線束毎に推定することができる何らかの種類の送達又はモデル化誤差を探るために役立てることができる。考えられ得る送達誤差の1つの種類は、リーフ開口時間パラメータに関係があり、これについて以下に論じる。
【0066】
或る特定の治療計画は、短いリーフ開口時間にかかわる誤差に感受性があるかもしれない。1つの実施例では、1つのリーフは一貫して約6ms「ホット」であった。リーフ開口時間誤差は、一般に、(この事例では)「ホット」リーフを使用している主に短いリーフ開口時間を有する治療計画については線量誤差として現れる。しかしながら、短いリーフ開口時間の小線束の数が極めて多い全ての治療計画が線量誤差を有することになるかというと、そういう場合ばかりとは限らない。例えば、短いリーフ開口時間の小線束(及びそれらに関連付けられる誤差)が線量体積全体に亘って分布しているなら、任意の一領域内の効果は無視できるほどに微々たるものであろう。反対に、短いリーフ開口時間の小線束の数が比較的少数である治療計画で、それらの小線束の多くが1か所の線量を独占していれば、極めて大きい線量誤差が示される可能性がある。
【0067】
送達誤差(例えば、短いリーフ開口時間)に対する感受性について治療計画を評価するためには、治療体積全体に亘る送達誤差のマップを生成することが必要である。これは、線量計算部が行う演算処理と実質的に同様である。我々が、それぞれの小線束のフルエンスを送達誤差(分散)の推定に置き換えれば、線量計算部は分散マップを生成しようとするだろう。線量計算部に供給されるパラメータの他の変更が必要になるであろうが(例えば、隣接リーフ推定の補正)、予備考察では重大な実装問題は何も見い出されなかった。
【0068】
線量誤差の最も精度の高い推定は、機械特定リーフ開口時間誤差測定からもたらされることになろう。しかしながら、リーフの挙動は経時的に変化するかもしれないため、一般に問題になりそうな治療計画の同定に当たっては、リーフ開口時間誤差の一般的な「最悪ケース」推定値を使用するのがおそらく最善であろう。
【0069】
線量計算部に供給される分散の単位は、フルエンスに正比例しているはずであり、よって、多数の小線束からの寄与は、線量の場合と同じ様に合算されることに留意されたい。リーフ開口時間誤差の事例では、それは(例えば、単位無しパーセントLOT誤差ではなく)時間であろう。パーセント誤差が所望である場合、当該計算は、誤差が合算された後に行うことができる。
【0070】
本発明の様々な特徴と利点は以下の特許請求の範囲に示されている。
【符号の説明】
【0071】
10 放射線療法治療システム
14 患者
18 ガントリー
22 放射線モジュール
24 放射線源
30 ビーム
34 変調装置
38 標的
42 照準装置
46 ジョー
50 開口
54 上ジョー
58 下ジョー
62 マルチリーフコリメーター
66 インターレース型リーフ
70 アクチュエータ
74 コンピュータ
78 検出器
82 カウチ
86 駆動システム
90 ソフトウェアプログラム
94 ネットワーク
98 データベース
102 サーバー
106 治療計画モジュール
110 患者位置決めモジュール
114 治療送達モジュール
118 フィードバックモジュール
122 分析モジュール
126 線量計算モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線送達での線量測定不確定度を評価する方法において、
患者の治療計画を生成する段階であって、放射線送達装置を使用して前記患者へ送達されるべき線量を含んでいる治療計画を生成する段階と、
前記放射線送達装置用のデータパラメータを同定する段階と、
線量計算モジュールを使用して、前記患者へ送達されるべき線量の不確定度指標を表現している分散マップを生成する段階であって、前記不確定度指標は前記データパラメータに関係している、分散マップを生成する段階と、から成る方法。
【請求項2】
前記患者の前記治療計画を、前記分散が小さくなるように最適化する段階を更に備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療計画を最適化する段階は、前記データパラメータについての前記不確定度指標を、前記データパラメータの設定を確定するときの制約として使用する段階を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療計画を最適化する段階は、より大きな不確定度を有するマルチリーフコリメーターの或る特定のリーフへの依存度を小さくする段階を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記治療計画を最適化する段階は、前記治療計画の等角点を、マルチリーフコリメーター位置とジョー位置のうちの一方による不確定度の影響力が小さくなるように調節する段階を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記治療計画を最適化する段階は、投射時の分割リーフ開口時間を、リーフタイミングの不確定度が小さくなるように調節する段階を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記治療計画を最適化する段階は、より高い放射線送達装置出力不確定度を有するガントリー角度への又はカウチ天板位置不確定度によって影響を受ける空間の領域を通る撮影への治療計画の依存度を小さくする段階を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記治療計画を最適化する段階は、前記患者の或る特定の区域についての前記分散を小さくする段階を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記最適化された治療計画の送達実現性を評価する段階を更に含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記治療計画を最適化する段階は、前記治療計画を前記患者へ送達するのに異なる放射線送達装置を選択する段階を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
複数の治療計画を生成する段階と、前記分散マップに基づいて、前記患者へ送達するための前記治療計画のうちの1つを選択する段階と、を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記データパラメータは、前記放射線送達装置の送達パラメータに関係している、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記データパラメータは、多数の単一データパラメータの組合せを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記データパラメータは、フルエンスである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記データパラメータは、ライナック出力である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記データパラメータは、リーフタイミングである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記データパラメータは、ジョー位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記データパラメータは、放射線ビームの減衰/エネルギー成分のスペクトル変化である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記データパラメータは、カウチ位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記データパラメータは、ガントリー位置である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記データパラメータは、前記放射線送達装置のモデル化パラメータに関係している、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記データパラメータは、リーフサイズとリーフ形状のうちの一方である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記データパラメータは、ジョー形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記データパラメータは、2つの隣接するリーフのさねはぎ情報に関係している、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記データパラメータは、線源対軸距離である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記データパラメータは、ビーム形状の変化に関係している、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記分散マップが、前記線量の不確定度が所定の閾値を超過していることを指し示したときに警報を生成する段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記放射線送達装置は、光子ベースの放射線療法を送達する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記放射線送達装置は、イオンベース又は粒子ベースの放射線療法を送達する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
放射線送達装置の送達誤差を検出する方法において、コンピュータを使用して、
患者の治療計画を生成する段階であって、目標フルエンスを含んでいる治療計画を生成する段階と、
前記治療計画に従って前記患者へ放射線を送達する段階と、
前記治療計画の送達後に、前記放射線送達装置からの出力フルエンス情報を取得する段階と、
前記出力フルエンス情報と前記目標フルエンスを比較してフルエンス分散を求める段階と、
前記フルエンス分散に線量計算アルゴリズムを適用して線量分散マップを生成する段階と、を実施することから成る方法。
【請求項31】
前記フルエンス分散は、複数回の治療のコースに亘る前記放射線送達装置からのフィードバックに基づいている、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記フルエンス分散に基づいて、前記治療計画を修正する段階を更に含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記フルエンス分散に基づいて、新しい治療計画を生成する段階を更に含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記フルエンス分散に基づいて、前記治療計画を送達するための異なる放射線送達装置を選択する段階を更に含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記放射線送達装置への見越し変化に基づいて、前記治療計画を修正する段階を更に含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記線量分散マップを表示する段階を更に含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記線量分散マップは、前記患者へ送達されるべき線量の不確定度指標を表現しており、前記不確定度指標は、前記放射線送達装置のデータパラメータに関係している、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記データパラメータは、多数の単一データパラメータの組合せを含んでいる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記データパラメータは、フルエンスである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記データパラメータは、ライナック出力である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記データパラメータは、リーフタイミングである、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記データパラメータは、ジョー位置である、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記データパラメータは、カウチ位置である、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記データパラメータは、ガントリー位置である、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
部分送達治療計画を評価する方法において、
患者の治療計画を生成する段階であって、複数の治療フラクションと目標分散情報とを含んでいる計画を生成する段階と、
前記治療計画に従って前記患者へ前記治療フラクションの少なくとも1つを送達する段階と、
前記治療フラクションの送達後に、放射線送達装置からの出力フルエンス情報を取得する段階と、
前記目標分散情報と前記出力フルエンス情報の組合せに基づいて、未来治療フラクションを評価する段階と、から成る方法。
【請求項46】
前記組合せに基づいて、未来治療フラクションを調節する段階を更に含んでいる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記組合せに基づいて、前記患者へ前記治療計画を送達するための放射線治療装置を選択する段階を更に含んでいる、請求項45に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−501230(P2012−501230A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525246(P2011−525246)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055419
【国際公開番号】WO2010/025399
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(506024320)トモセラピー・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】