説明

緩め補助具

【課題】締結部材のサイズによらず、固着した締結部材を容易に緩めて外せるようにした緩め補助具を提供する。
【解決手段】緩め補助具1Aは、ボルトあるいはナットの締緩作業に用いられるソケット、レンチ等の工具に装着される本体部2Aと、ボルトの頭部あるいはナットと対向して本体部2Aに設けられ、ボルトの頭部あるいはナットに打ち込まれる鋭尖形状を有し、本体部とボルトあるいはナットを、工具による本体部の回転動作で回転可能に一体とする突起部3Aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトとナット等、雄ねじと雌ねじの回転動作で締緩される締結部材が固着しているような場合に、締結部材を緩める作業で用いられる緩め補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、錆付いて変形したボルト、ナット等の締結部材を取り外す工具として、ナットを油圧により切断するカッタ等の工具が提案されている。このようなカッタ等による切断工具は、小径のナットに適用されるもので、大径のナットでは切断が困難である。
【0003】
このため、大径のナットが固着しているような場合は、ガストーチ等を利用してナットを切断する技術が提案されている。しかし、作業箇所が火気厳禁である場合は適用できない。
【0004】
そこで、ナットあるいはボルトが装着されるソケットの側面に、複数の止め螺旋を設け、ナットあるいはボルトの側面を止め螺旋で固定できるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ナットの軸方向からねじ周辺部の複数箇所にドリルで穴を開け、ナットを切断できるようにした技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3013730号公報
【特許文献2】特開平5−69248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ソケットの側面に複数の止め螺旋を設ける技術では、ボルトあるいはナットの側面側から所定の工具で止め螺旋を締める作業が必要で、ソケットをボルトあるいはナットに装着する作業に手間が掛かる。また、ボルトあるいはナットの側面側の複数方向、例えば6方向から止め螺旋を締める作業が必要で、ソケットをボルトあるいはナットに装着する作業で、ボルトあるいはナットの周囲に、止め螺旋を工具で締結できるだけの広い空間が必要である。
【0008】
一方、ナットの軸方向からねじ周辺部の複数箇所にドリルで穴を開けてナットを切断する技術では、大径のナットを切断する場合は、大径のドリル及び大径のドリルがセットできる大型の駆動装置が必要である。また、ドリルによる切削に伴う削り屑の処理が必要となる。更に、ドリルによる切削に伴う摩擦についても考慮する必要がある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、締結部材のサイズによらず、固着した締結部材を容易に緩めて外せるようにした緩め補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、締結部材の締緩作業に用いられる工具に装着される本体部と、締結部材を緩める本体部の回転動作の軸方向に沿って突出して本体部に設けられ、締結部材に打ち込まれる鋭尖形状を有し、本体部と締結部材を、工具による本体部の回転動作で回転可能に一体とする突起部とを備えた緩め補助具である。
【0011】
本発明では、雄ねじと雌ねじの回転動作で締緩される締結部材に、回転動作の軸方向に沿って本体部が配置され、本体部を締結部材の方向に押す力で、締結部材に突起部が打ち込まれ、締結部材と本体部が一体とされる。
【0012】
締結部材と一体とされた本体部が工具に装着され、工具で本体部が回される。本体部が回されると、突起部が締結部材に打ち込まれた本体部の回転動作で、突起部が締結部材を緩める方向に押圧し、締結部材を緩めるために必要な力が、本体部及び突起部を介して締結部材に加えられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、本体部に設けられた突起部が締結部材に打ち込まれることで、本体部と締結部材が一体とされ、工具による本体部の回転動作で、締結部材を緩めるために必要な大きな力を加えることができる。
【0014】
これにより、締結部材が固着しているような場合でも、工具による本体部の回転動作で、締結部材を緩めるために必要な大きな力を、本体部及び突起部を介して締結部材に加えて、締結部材を緩めることができる。
【0015】
また、締結部材が変形して、締結部材の締緩作業で用いられる工具で締結部材を保持できないような場合でも、工具による本体部の回転動作を、本体部及び突起部を介して締結部材に加えて、締結部材を緩めることができる。
【0016】
従って、小径の締結部材のみならず、大径の締結部材であっても、締結部材を切断することなく緩めて外すことができ、固着している締結部材を外す作作業を、容易かつ迅速に行うことができる。
【0017】
また、締結部材を切断する必要が無いので、大径の締結部材であっても、ガストーチによる切断等、火気を必要とすることはなく、作業箇所が火気厳禁であっても、固着している締結部材を外す作業を行うことができる。
【0018】
更に、緩め作業の締結部材に対して、回転動作の軸方向に沿って本体部を配置し、本体部を締結部材の方向に押す力で、締結部材に突起部を打ち込んで、締結部材と本体部を一体にできるので、本体部を締結部材に装着する作業を、狭いスペースで容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1の実施の形態の緩め補助具の一例を示す側面図である。
【図2】第1の実施の形態の緩め補助具の一例を示す正面図である。
【図3】第1の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【図4】第1の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【図5】第1の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【図6】第1の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【図7】第2の実施の形態の緩め補助具の一例を示す側面図である。
【図8】第2の実施の形態の緩め補助具の一例を示す正面図である。
【図9】第2の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【図10】第2の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【図11】第2の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【図12】第2の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の緩め補助具の実施の形態について説明する。
【0021】
<第1の実施の形態の緩め補助具の構成例>
図1は、第1の実施の形態の緩め補助具の一例を示す側面図、図2は、第1の実施の形態の緩め補助具の一例を示す正面図である。また、図3〜図6は、第1の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【0022】
第1の実施の形態の緩め補助具1Aは、例えば、図3等に示すようなボルト10とナット11を緩める作業で、ボルト10とナット11が固着しているような場合に用いられる。
【0023】
締結部材の一例であるボルト10は、本例では六角柱形状の頭部10aと、雄ねじが切られた軸部10bで構成される。また、締結部材の一例であるナット11は、本例では六角柱形状の外形を有し、雌ネジが切られた図示しない軸穴部が設けられる。
【0024】
ボルト10とナット11は、ボルト10の軸部10bが締結対象物12に開けられた穴部12aに挿入され、締結対象物12の穴部12aから突出したボルト10の軸部10bに、ナット11の軸穴部が合わせられる。そして、ボルト10とナット11は、所定の締結方向への相対的な回転動作で締結される。
【0025】
第1の実施の形態の緩め補助具1Aは、ボルト10とナット11の締緩作業を行う工具であるソケット13及びソケット13を廻すハンドル14と共に用いられ、ソケット13及びハンドル14の動きでボルト10あるいはナット11を回転させる。
【0026】
ソケット13は、締緩作業の対象とするボルト10及びナット11の寸法と合わせた6角あるいは12角の開口13aが設けられる。ハンドル14は、ソケット13が着脱可能に構成され、締緩作業の対象とするボルト10及びナット11の寸法と合わせたソケット13の装着が可能である。
【0027】
緩め補助具1Aは、ボルト10の頭部10aまたはナット11に装着されると共に、ソケット13に装着され、ソケット13及びハンドル14で回すことが可能な本体部2Aを備える。また、緩め補助具1Aは、ボルト10の頭部10aまたはナット11に打ち込まれ、本体部2Aとボルト10あるいはナット11を、本体部2Aと共に回転可能に一体とする突起部3Aを備える。
【0028】
緩め補助具1Aは、金属材料で鋳造等により形成されるボルト10及びナット11に比較して硬い材質で構成され、本例では、ステンレス材料で本体部2Aと突起部3Aが一体に形成される。
【0029】
本体部2Aは、ソケット13の開口13aに挿入される正六角柱形状を有する。本体部2Aは、本例では、緩め作業の対象となるボルト10及びナット11と同じ対辺寸法で構成され、ボルト10あるいはナット11に装着された状態で、ボルト10あるいはナット11と共にソケット13に挿入可能に構成される。
【0030】
本体部2Aは、ボルト10の頭部10aあるいはナット11と対向し、ボルト10及びナット11を緩める作業における回転動作の軸方向に沿った一の面に、少なくとも1個、好ましくは複数個の突起部3Aが一体で設けられる。
【0031】
本体部2Aは、ボルト10あるいはナット11を緩める方向に回す力が、ボルト10あるいはナット11の複数個所に分散して略均等に伝達されるように、複数個の突起部3Aが、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Aの回転動作における円周方向に沿って等間隔で設けられる。本例では、4個の突起部3Aが、90°間隔で設けられる。
【0032】
突起部3Aは、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Aの回転動作の軸方向に沿って、本体部2Aの一の面から突出し、突出方向の先端が、金属材料で鋳造等により形成されるボルト10あるいはナット11に打ち込まれるような鋭尖形状で構成される。また、突起部3Aは、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Aの回転方向における前面側に押圧平面30が構成される。
【0033】
突起部3Aは、断面形状が三角形で構成され、本体部2Aの一の面に対して垂直に立ち上がり、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Aの回転方向に対して略直交する平面で押圧平面30が構成される。
【0034】
本体部2Aは、緩め作業の対象となるボルト10の軸部10bが挿入可能な径の穴部20が設けられる。穴部20は、突起部3Aが設けられる本体部2Aの一の面から所定の深さ、本例では本体部2Aを貫通して設けられ、ナット11側に本体部2Aが装着される使用形態では、ナット11から突出したボルト10の軸部10bが挿入される。
【0035】
これにより、緩め補助具1Aは、ボルト10の頭部10aあるいはナット11の軸方向に重ねられた本体部2Aが、ボルト10あるいはナット11方向に例えば打撃されることで、突起部3Aがボルト10の頭部10aあるいはナット11に打ち込まれる。
【0036】
突起部3Aがボルト10の頭部10aあるいはナット11に打ち込まれた本体部2Aの回転動作で、突起部3Aの押圧平面30がボルト10の頭部10aあるいはナット11を緩める方向に押圧し、ボルト10あるいはナット11を緩めるために必要な力が、ボルト10あるいはナット11に加えられる。また、本体部2Aの回転動作で、突起部3Aがボルト10あるいはナット11から抜ける方向の力は生じない。
【0037】
<第1の実施の形態の緩め補助具の使用例>
次に、各図を参照して、第1の実施の形態の緩め補助具1Aの使用例について説明する。ここで、本例では、緩め補助具1Aをナット11側に装着して使用する形態について説明する。
【0038】
緩め補助具1Aは、6面で構成される本体部2Aの各側面とナット11の側面の向きが合わせられてナット11に重ねられ、本体部2Aがナット11方向に押される力が加えられる。本例では、図示しないハンマ等の打撃部材で、本体部2Aがナット11方向に打撃される。
【0039】
緩め補助具1Aは、本体部2A及び突起部3Aが、ナット11より硬い材質で構成されているので、突起部3Aがナット11に打ち込まれ、図4に示すように、本体部2Aとナット11が、本体部2Aを回す力で回転可能に一体となる。ここで、ナット11側に本体部2Aが装着される使用形態では、ナット11からボルト10の軸部10bが突出している場合、本体部2Aの穴部20に、ナット11から突出したボルト10の軸部10bが挿入されることで、軸部10bが干渉することなく、突起部3Aがナット11に打ち込まれる。
【0040】
ナット11に装着された緩め補助具1Aは、ナット11と共に本体部2Aがソケット13の開口13aに挿入される。このため、本例では、ナット11と緩め補助具1Aの本体部2Aを重ねて挿入可能な深さの開口13aを有したソケット13が用いられる。
【0041】
突起部3Aが打ち込まれることで一体とされた緩め補助具1Aの本体部2Aとナット11が挿入されたソケット13は、図5に示すようにハンドル14が取り付けられ、図6に矢印Aで示すナット11を緩める方向に回される。
【0042】
緩め補助具1Aは、本体部2Aがソケット13に挿入されていることで、ハンドル14を回す力がソケット13を介して伝達されて、本体部2Aがナット11を緩める方向に回される。緩め補助具1Aは、本体部2Aの回転動作で、突起部3Aの押圧平面30がナット11を緩める方向に押圧する。
【0043】
緩め補助具1Aは、ボルト10の軸部10bを中心としたナット11の回転方向に沿った複数箇所を、複数の突起部3Aが各押圧平面30でナット11を緩める方向に押圧することで、ナット11を緩める方向に回す力が生じる。また、緩め補助具1Aは、各突起部3Aの平面で構成される押圧平面30でナット11を押圧することで、ナット11を緩める方向に回す大きな力をナット11に加える。
【0044】
これにより、ナット11を緩めるために必要な力が、ハンドル14からソケット13及び緩め補助具1Aを介してナット11に伝達され、ボルト10とナット11、ナット11と締結対象物12等が固着しているような場合でも、ナット11が緩められる。
【0045】
また、緩め補助具1Aを使わない締緩作業等で、ナット11の六角形の角部をなめてしまった状態で、ソケット13でナット11を保持できないような場合でも、緩め補助具1Aを使用することで、ナット11を緩めるために必要な力が、ハンドル14からソケット13及び緩め補助具1Aを介してナット11に伝達され、ナット11が緩められる。
【0046】
すなわち、緩め補助具1Aは、本体部2A及び突起部3Aが、ボルト10及びナット11より硬い材質で構成されており、大きな力が加わっても、本体部2Aの六角形の角部がなめられることが抑えられる。
【0047】
また、緩め補助具1Aは、ナット11に突起部3Aが打ち込まれて本体部2Aとナット11が一体とされ、突起部3Aの押圧平面30でナット11を緩める方向に押圧することで、ハンドル14及びソケット13で本体部2Aを回す力が、確実にナット11に伝達される。
【0048】
更に、突起部3Aの押圧平面30は、ナット11を緩める方向への本体部2Aの回転方向に対して、略垂直な平面で構成されることで、ナット11を緩める方向への本体部2Aの回転で、突起部3Aがナット11から抜ける方向の力は生じない。
【0049】
従って、ソケット13で直接ナット11を回す場合と比較して、緩め補助具1Aを使用することにより、大きな力でナット11を回すことができ、錆等でナット11が固着しているような場合でも、ナット11を緩めることができる。
【0050】
また、緩め補助具1Aを使用することにより、ソケット13でナット11を保持せずとも、ハンドル14及びソケット13で本体部2Aを回す力がナット11に伝達され、ソケット13でナット11を保持できないような場合でも、ナット11を緩めることができる。
【0051】
以上の例では、ナット11に緩め補助具1Aを装着する使用形態を例に説明したが、ボルト10の頭部10aに緩め補助具1Aを装着する使用形態も同様である。すなわち、緩め補助具1Aは、本体部2Aの各側面とボルト10の頭部10aの側面の向きが合わせられてボルト10に重ねられ、本体部2Aがボルト10方向に押される力が加えられる。本例では、図示しないハンマで本体部2Aがボルト10方向に打撃される。
【0052】
緩め補助具1Aは、本体部2A及び突起部3Aが、ボルト10より硬い材質で構成されているので、突起部3Aがボルト10の頭部10aに打ち込まれ、本体部2Aとボルト10が、本体部2Aを回す力で回転可能に一体となる。
【0053】
ボルト10に装着された緩め補助具1Aは、ボルト10の頭部10aと共に本体部2Aがソケット13に挿入される。突起部3Aが打ち込まれることで一体とされた緩め補助具1Aの本体部2Aとボルト10の頭部10aが挿入されたソケット13は、ハンドル14が取り付けられ、ボルト10を緩める方向にハンドル14が回される。
【0054】
緩め補助具1Aは、本体部2Aがソケット13に挿入されていることで、ハンドル14を回す力がソケット13を介して伝達されて、本体部2Aがボルト10を緩める方向に回される。緩め補助具1Aは、本体部2Aの回転動作で、突起部3Aの押圧平面30がボルト10を緩める方向に押圧する。
【0055】
緩め補助具1Aは、軸部10bを中心としたボルト10の回転方向に沿った複数箇所を、複数の突起部3Aが各押圧平面30でボルト10を緩める方向に押圧することで、ボルト10を緩める方向に回す力が生じる。また、緩め補助具1Aは、各突起部3Aの平面で構成される押圧平面30でボルト10を押圧することで、ボルト10を緩める方向に回す大きな力をボルト10に加える。
【0056】
これにより、ボルト10に緩め補助具1Aを装着する使用形態でも、ナット11に緩め補助具1Aを装着する使用形態と同様に、ボルト10を緩めるために必要な力が、ハンドル14からソケット13及び緩め補助具1Aを介してボルト10に伝達される。従って、ボルト10とナット11、ボルト10と締結対象物12等が固着しているような場合でも、ボルト10を緩めることができる。
【0057】
また、緩め補助具1Aを使わない締緩作業等で、ボルト10の頭部10aの六角形の角部をなめてしまった状態で、ソケット13でボルト10の頭部10aを保持できないような場合でも、緩め補助具1Aを使用することで、ボルト10を緩めるために必要な力が、ハンドル14からソケット13及び緩め補助具1Aを介してボルト10に伝達され、ボルト10を緩めることができる。
【0058】
第1の実施の形態の緩め補助具1Aでは、本体部2Aの外形は、緩め作業の対象となるボルト10及びナット11と同じ対辺寸法で構成される。これにより、ボルト10及びナット11の締緩作業で用いられる汎用のソケット13と共に緩め補助具1Aを用いて、固着しているようなボルト10あるいはナット11を緩めて外す作業を行うことができ、作業に必要な工具を増やすことが無い。
【0059】
<第2の実施の形態の緩め補助具の構成例>
図7は、第2の実施の形態の緩め補助具の一例を示す側面図、図8は、第2の実施の形態の緩め補助具の一例を示す正面図である。また、図9〜図12は、第2の実施の形態の緩め補助具の使用例を示す説明図である。
【0060】
第2の実施の形態の緩め補助具1Bは、ボルト10とナット11の締緩作業を行う工具であるレンチ15と共に用いられる。レンチ15は、締緩作業の対象とするボルト10及びナット11の寸法と合わせた6角あるいは12角の開口15aと、ハンドル15bが設けられる。
【0061】
緩め補助具1Bは、ボルト10の頭部10aまたはナット11に装着されると共に、レンチ15に装着され、レンチ15で回すことが可能な本体部2Bを備える。また、緩め補助具1Bは、ボルト10の頭部10aまたはナット11に打ち込まれ、本体部2Bとボルト10あるいはナット11を、本体部2Bと共に回転可能に一体とする突起部3Bを備える。
【0062】
緩め補助具1Bは、金属材料で鋳造等により形成されるボルト10及びナット11に比較して硬い材質で構成され、本例では、ステンレス材料で本体部2Bと突起部3Bが一体に形成される。
【0063】
本体部2Bは、レンチ15の開口15aに挿入される正六角柱形状を有する。本体部2Bは、緩め作業の対象となるボルト10及びナット11と同じ対辺寸法で構成され、ボルト10あるいはナット11が挿入されたレンチ15に挿入可能に構成される。
【0064】
本体部2Bは、ボルト10の頭部10aあるいはナット11と対向し、ボルト10及びナット11を緩める作業における回転動作の軸方向に沿った一の面に、少なくとも1個、好ましくは複数個の突起部3Bが一体で設けられる。
【0065】
本体部2Bは、ボルト10あるいはナット11を緩める方向に回す力が、ボルト10あるいはナット11の複数個所に分散して略均等に伝達されるように、複数個の突起部3Bが、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Bの回転動作における円周方向に沿って等間隔で設けられる。本例では、4個の突起部3Bが、90°間隔で設けられる。
【0066】
突起部3Bは、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Bの回転動作の軸方向に沿って、本体部2Bの一の面から突出し、突出方向の先端が、金属材料で鋳造等により形成されるボルト10あるいはナット11に打ち込まれるような鋭尖形状で構成される。また、突起部3Bは、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Bの回転方向における前面側に押圧平面30が構成される。
【0067】
突起部3Bは、断面形状が三角形で構成され、本体部2Bの一の面に対して垂直に立ち上がり、ボルト10あるいはナット11を緩める本体部2Bの回転方向に対して略直交する平面で押圧平面30が構成される。
【0068】
本体部2Bは、緩め作業の対象となるボルト10の軸部10bが挿入可能な径の穴部20が設けられる。穴部20は、突起部3Bが設けられる本体部2Bの一の面から所定の深さ、本例では本体部2Bを貫通して設けられ、ナット11側に本体部2Bが装着される使用形態では、ナット11から突出したボルト10の軸部10bが挿入される。また、本体部2Bは、突起部3Bと反対側にフランジ部21が設けられる。フランジ部21は、6面で構成される本体部2Bの側面に対して外側に突出する形状を有する。
【0069】
これにより、緩め補助具1Bは、レンチ15に挿入されたボルト10の頭部10aあるいはナット11の軸方向に重ねられた本体部2Bが、ボルト10あるいはナット11方向に例えば打撃されることで、突起部3Bがボルト10の頭部10aあるいはナット11に打ち込まれる。
【0070】
突起部3Bがボルト10の頭部10aあるいはナット11に打ち込まれた本体部2Bの回転動作で、突起部3Bの押圧平面30がボルト10の頭部10aあるいはナット11を緩める方向に押圧し、ボルト10あるいはナット11を緩めるために必要な力が、ボルト10あるいはナット11に加えられる。
【0071】
また、本体部2Bの回転動作で、突起部3Bがボルト10あるいはナット11から抜ける方向の力は生じない。更に、レンチ15に挿入されたボルト10の頭部10aあるいはナット11に突起部3Bが打ち込まれて本体部2Bが装着されると、本体部2Bのフランジ部21によって、レンチ15が外れることが防止される。
【0072】
<第2の実施の形態の緩め補助具の使用例>
次に、各図を参照して、第2の実施の形態の緩め補助具1Bの使用例について説明する。ここで、本例では、緩め補助具1Bをナット11側に装着して使用する形態について説明する。
【0073】
第2の実施の形態の緩め補助具1Bを使用する場合、本例では、図10に示すように、ナット11にレンチ15の開口15aが挿入される。ここで、緩め補助具1Bは、ナット11と共に本体部2Bがレンチ15に挿入される。このため、本例では、ナット11と緩め補助具1Bの本体部2Bを重ねて挿入可能な深さの開口15aを有したレンチ15が用いられる。
【0074】
緩め補助具1Bは、レンチ15に挿入されたナット11の側面と、6面で構成される本体部2Bの各側面の向きが合わせられ、本体部2Bがレンチ15の開口15aに挿入されてナット11に重ねられ、本体部2Bがナット11方向に押される力が加えられる。本例では、図示しないハンマで本体部2Bがナット11方向に打撃される。
【0075】
緩め補助具1Bは、本体部2B及び突起部3Bが、ナット11より硬い材質で構成されているので、突起部3Bがナット11に打ち込まれ、図11に示すように、本体部2Bとナット11が、本体部2Bを回す力で回転可能に一体となる。ここで、ナット11側に本体部2Bが装着される使用形態では、ナット11からボルト10の軸部10bが突出している場合、本体部2Bの穴部20に、ナット11から突出したボルト10の軸部10bが挿入されることで、軸部10bが干渉することなく、突起部3Bがナット11に打ち込まれる。
【0076】
突起部3Bが打ち込まれることで一体とされた緩め補助具1Bの本体部2Bとナット11が挿入されたレンチ15は、図12に矢印Aで示すように、ナット11を緩める方向にハンドル15bが回される。緩め補助具1Bは、本体部2Bがレンチ15に挿入されていることで、ハンドル15bを回す力が伝達されて、本体部2Bがナット11を緩める方向に回される。緩め補助具1Bは、本体部2Bの回転動作で、突起部3Bの押圧平面30がナット11を緩める方向に押圧する。
【0077】
緩め補助具1Bは、ボルト10の軸部10bを中心としたナット11の回転方向に沿った複数箇所を、複数の突起部3Bが各押圧平面30でナット11を緩める方向に押圧することで、ナット11を緩める方向に回す力が生じる。また、緩め補助具1Bは、各突起部3Aの平面で構成される押圧平面30でナット11を押圧することで、ナット11を緩める方向に回す大きな力をナット11に加える。
【0078】
これにより、ナット11を緩めるために必要な力が、レンチ15及び緩め補助具1Bを介してナット11に伝達され、ボルト10とナット11、ナット11と締結対象物12等が固着しているような場合でも、ナット11が緩められる。
【0079】
また、緩め補助具1Bを使わない締緩作業等で、ナット11の六角形の角部をなめてしまった状態で、レンチ15でナット11を保持できないような場合でも、緩め補助具1Bを使用することで、ナット11を緩めるために必要な力が、レンチ15及び緩め補助具1Bを介してナット11に伝達され、ナット11が緩められる。
【0080】
すなわち、緩め補助具1Bでも、本体部2B及び突起部3Bが、ボルト10及びナット11より硬い材質で構成されており、大きな力が加わっても、本体部2Bの六角形の角部がなめられることが抑えられる。
【0081】
また、緩め補助具1Bは、ナット11に突起部3Bが打ち込まれて本体部2Bとナット11が一体とされ、突起部3Bの押圧平面30でナット11を緩める方向に押圧することで、レンチ15で本体部2Bを回す力が、確実にナット11に伝達される。
【0082】
更に、突起部3Bの押圧平面30は、ナット11を緩める方向への本体部2Bの回転方向に対して、略垂直な平面で構成されることで、ナット11を緩める方向への本体部2Bの回転で、突起部3Aがナット11から抜ける方向の力は生じない。また、レンチ15に挿入されたナット11に突起部3Bが打ち込まれて本体部2Bが装着されると、本体部2Bのフランジ部21によって、レンチ15が外れることが防止される。
【0083】
従って、レンチ15で直接ナット11を回す場合と比較して、緩め補助具1Bを使用することにより、大きな力でナット11を回すことができ、錆等でナット11が固着しているような場合でも、ナット11を緩めることができる。
【0084】
また、緩め補助具1Bを使用することにより、レンチ15でナット11を保持せずとも、レンチ15で本体部2Bを回す力がナット11に伝達され、レンチ15でナット11を保持できないような場合でも、ナット11を緩めることができる。
【0085】
以上の例では、ナット11に緩め補助具1Bを装着する使用形態を例に説明したが、ボルト10の頭部10aに緩め補助具1Bを装着する使用形態も同様である。すなわち、緩め補助具1Bは、レンチ15に挿入されたボルト10の頭部10aの側面と、6面で構成される本体部2Bの各側面の向きが合わせられ、本体部2Bがレンチ15の開口15aに挿入されてボルト10の頭部10aに重ねられ、本体部2Bがボルト10方向に押される力が加えられる。本例では、図示しないハンマで本体部2Bがボルト10方向に打撃される。
【0086】
緩め補助具1Bは、本体部2B及び突起部3Bが、ボルト10より硬い材質で構成されているので、突起部3Bがボルト10の頭部10aに打ち込まれ、本体部2Bとボルト10が、本体部2Bを回す力で回転可能に一体となる。
【0087】
突起部3Bが打ち込まれることで一体とされた緩め補助具1Bの本体部2Bとボルト10が挿入されたレンチ15は、ボルト10を緩める方向にハンドル15bが回される。緩め補助具1Bは、本体部2Bがレンチ15に挿入されていることで、ハンドル15bを回す力が伝達されて、本体部2Bがボルト10を緩める方向に回される。緩め補助具1Bは、本体部2Bの回転動作で、突起部3Bの押圧平面30がボルト10を緩める方向に押圧する。
【0088】
緩め補助具1Bは、軸部10bを中心としたボルト10の回転方向に沿った複数箇所を、複数の突起部3Bが各押圧平面30でボルト10を緩める方向に押圧することで、ボルト10を緩める方向に回す力が生じる。また、緩め補助具1Bは、各突起部3Bの平面で構成される押圧平面30でボルト10を押圧することで、ボルト10を緩める方向に回す大きな力をボルト10に加える。
【0089】
これにより、ボルト10に緩め補助具1Bを装着する使用形態でも、ナット11に緩め補助具1Bを装着する使用形態と同様に、ボルト10を緩めるために必要な力が、レンチ15及び緩め補助具1Bを介してボルト10に伝達される。従って、ボルト10とナット11、ボルト10と締結対象物12等が固着しているような場合でも、ボルト10を緩めることができる。
【0090】
また、緩め補助具1Bを使わない締緩作業等で、ボルト10の頭部10aの六角形の角部をなめてしまった状態で、レンチ15でボルト10の頭部10aを保持できないような場合でも、緩め補助具1Bを使用することで、ボルト10を緩めるために必要な力が、レンチ15及び緩め補助具1Bを介してボルト10に伝達され、ボルト10を緩めることができる。
【0091】
第2の実施の形態の緩め補助具1Bでも、本体部2Bの外形は、緩め作業の対象となるボルト10及びナット11と同じ対辺寸法で構成される。これにより、ボルト10及びナット11の締緩作業で用いられる汎用のレンチ15と共に緩め補助具1Bを用いて、固着しているようなボルト10あるいはナット11を緩めて外す作業を行うことができ、作業に必要な工具を増やすことが無い。
【0092】
以上の各実施の形態では、ボルト10とナット11の締緩作業を行う工具として、ハンドル14に対して着脱可能なソケット13、開口15aがリング状のレンチ15を例に説明したが、先端が開放されているスパナと称されるレンチ、5面でボルトあるいはナットを保持するC形状の先端を持つレンチ、ラチェットレンチ等の他の工具でも良い。
【0093】
また、以上の各実施の形態では、締結部材としてボルト10とナット11を組み合わせて使用する通しボルトと称される形態を例に説明したが、締結対象物に開けられたネジ穴にボルトをねじ込むねじ込みボルトと称される形態でも良い。また、締結対象物に開けられたネジ穴に頭部が設けられていないボルトをねじ込んで埋め込み、埋め込まれたボルトにナットを締結する埋め込みボルトと称される形態でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、ソケットあるいはレンチ等の工具でボルト及びナットの締緩作業を行える空間がボルト及びナットの周囲に存在する作業箇所で、汎用のソケットあるいはレンチ等の工具と共に使用される補助具に適用される。
【符号の説明】
【0095】
1A、1B・・・緩め補助具、2A、2B・・・本体部、3A、3B・・・突起部、30・・・押圧平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部材の締緩作業に用いられる工具に装着される本体部と、
前記締結部材を緩める前記本体部の回転動作の軸方向に沿って突出して前記本体部に設けられ、前記締結部材に打ち込まれる鋭尖形状を有し、前記本体部と前記締結部材を、前記工具による前記本体部の回転動作で回転可能に一体とする突起部と
を備えたことを特徴とする緩め補助具。
【請求項2】
前記突起部は、前記締結部材を緩める前記本体部の回転方向における前面側に、前記本体部の回転方向に対して直交する向きの平面で構成される押圧平面を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の緩め補助具。
【請求項3】
前記本体部及び前記突起部は、前記締結部材に対して硬い材質で構成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の緩め補助具。
【請求項4】
前記本体部の外形は、緩め作業の対象となる締結部材と同じ対辺寸法で構成される
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の緩め補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−6247(P2013−6247A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141066(P2011−141066)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】