説明

縦置き低重心雨水貯留タンク

【課題】 設置スペースが少なくて済み、かつ、屋外で風に煽られても転倒し難く、低重心に保つことができる縦置き低重心雨水貯留タンクを提供すること。
【解決手段】 容器本体1の上方には主筒部11を形成して、かつ、下方にはこの主筒部11よりも外郭形状が外方に拡大してなる膨出部12を形成する一方、これら主筒部11と膨出部12との境界近傍における外側面には筒状の排水口13を突成して、かつ、前記容器本体1の底設置面14における端縁部から外向きに延成されて開口する筒状の底口部15を突成して、
これら排水口13および底口部15の少なくとも一方には、当該容器本体1内に収容された水を水量調節しつゝ排出可能なコック部材2を取り付け可能にする一方、当該開口部位を閉塞せしめる遮水キャップ3を嵌着可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の貯留タンクの改良、更に詳しくは、設置スペースが少なくて済み、かつ、屋外で風に煽られても転倒し難く、低重心に保つことができる縦置き低重心雨水貯留タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、緊急用の飲料水や防火用水、生活用水、樹木の灌水、農業用水などは、上水道の水を使用するのではなく、所謂「中水」として、雨水を資源として有効利用している。
【0003】
このような背景から、従来、雨水を貯留しておくために、屋根の雨樋に連結して雨水を集めることができ、庭や屋上、建物同士の隙間などに設置することができるタンクが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、現在の住宅事情によっては、タンクを設置するための十分なスペースを確保することが困難になってきており、設置用地がないために止むなく上水道の使用を強いられて、水資源の浪費を招くという問題があった。
【0005】
そこで、本件出願人は、省スペース化に対応すべく縦置き型のものを開発したが(特許文献2参照)、かかる雨水貯留タンクは、屋外に設置することから、貯留水量が少なくなった場合であっても、強風などで転倒しないように安定化させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3121589号公報(第5−11頁、図1−4)
【特許文献2】特願2008−156955
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の雨水貯留用のタンクに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、設置スペースが少なくて済み、かつ、屋外で風に煽られても転倒し難く、低重心に保つことができる縦置き低重心雨水貯留タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、建物の屋根などに配設された雨樋Aから連通して、当該雨樋Aに集成された雨水を貯留することができるプラスチック製の縦長中空容器であって、
容器本体1の上方には主筒部11を形成して、かつ、下方にはこの主筒部11よりも外郭形状が外方に拡大してなる膨出部12を形成する一方、
これら主筒部11と膨出部12との境界近傍における外側面には筒状の排水口13を突成して、かつ、前記容器本体1の底設置面14における端縁部から外向きに延成されて開口する筒状の底口部15を突成して、
これら排水口13および底口部15の少なくとも一方には、当該容器本体1内に収容された水を水量調節しつゝ排出可能なコック部材2を取り付け可能にする一方、当該開口部位を閉塞せしめる遮水キャップ3を嵌着可能にして、
前記容器本体1内に雨水が充填された時の重心を、本体高さの中央レベルCよりも下方に位置させ、膨出部12内の貯留水をウェイトにして、前記排水口13にコック部材2を取り付けた時に、当該排水口13の水位に下がるまで主筒部11内に収容された水のみを水量調節しつゝ排出可能にするという技術的手段を採用したことによって、縦置き低重心雨水貯留タンクを完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1をベース部材4の上に載置することによって、容器内の全ての水を底口部15に取り付けたコック部材2から調節排水可能にするという技術的手段を採用した。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の主筒部11の断面形状を略四辺形の角筒形状にするという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の膨出部12の容積を容器全体の4分の1以上にするという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の天面に、容器内部を洗浄するための開閉自在な清掃口部16を設けるという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、容器本体の上方には主筒部を形成して、かつ、下方にはこの主筒部よりも外郭形状が外方に拡大してなる膨出部を形成する一方、これら主筒部と膨出部との境界近傍における外側面には筒状の排水口を突成して、かつ、前記容器本体の底設置面における端縁部から外向きに延成されて開口する筒状の底口部を突成して、
これら排水口および底口部の少なくとも一方には、当該容器本体内に収容された水を水量調節しつゝ排出可能なコック部材を取り付け可能にする一方、当該開口部位を閉塞せしめる遮水キャップを嵌着可能にして、
前記容器本体内に雨水が充填された時の重心を、本体高さの中央レベルよりも下方に位置させ、膨出部内の貯留水をウェイトにして、前記排水口にコック部材を取り付けた時に、当該排水口の水位に下がるまで主筒部内に収容された水のみを水量調節しつゝ排出することができる。
【0015】
したがって、本発明の雨水貯留タンクによれば、設置スペースが少なくて済み、かつ、屋外で風に煽られても転倒し難く、低重心に保つことができる。
【0016】
また、必要に応じて、内部の清掃を容易にすることもできることから、雨水貯留タンクとしての実用的利用価値は頗る高いものがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の雨水貯留タンクを表わす全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の雨水貯留タンクを表わす全体正面図である。
【図3】本発明の実施形態の雨水貯留タンクの使用状態を表わす斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の雨水貯留タンクの使用状態の変形例を表わす側面図である。
【図5】本発明の実施形態の雨水貯留タンクの使用状態の変形例を表わす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態を具体的に図示した図面に基づいて、更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0019】
本発明の実施形態を図1から図5に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは容器本体であり、この容器本体1は、プラスチック材料(本実施形態では、ポリエチレン)を射出成形またはブロー成形により作製した縦長の中空体である。
【0020】
また、符号2で指示するものはコック部材であり、このコック部材2は、ツマミを回転させることによりバルブを開閉して水量調節しつゝ排出可能な部材である。更にまた、符号3で指示するものは遮水キャップであり、この遮水キャップ3は、螺合式やバヨネット式などにより嵌着するプラスチック製の蓋部材である。
【0021】
しかして、本発明は、建物の屋根などに配設された雨樋Aから連通して、当該雨樋Aに集成された雨水を貯留することができるプラスチック製の縦長中空容器であって、構成するにあっては、まず、容器本体1の上方には主筒部11を形成して、かつ、下方にはこの主筒部11よりも外郭形状が外方に拡大してなる膨出部12を形成する。本実施形態では、容器本体1の主筒部11の断面形状を、略四辺形の角筒形状にすることができ、収容量を大きくして、かつ、より安定的にすることができる。
【0022】
次いで、これら主筒部11と膨出部12との境界近傍における外側面には筒状の排水口13を突成して、かつ、前記容器本体1の底設置面14における端縁部から外向きに延成されて開口する筒状の底口部15を突成する(図2参照)。
【0023】
本実施形態では、必要に応じて、底設置面14を水平にしたときのレベルの延長線上に底口部15の下面のレベルが合致するようにすることにより、この底設置面14を水平に載置した際に、容器内の水を全て排出できるようにすることができる。
【0024】
そして、これら排水口13および底口部15の少なくとも一方には、前記容器本体1内に収容された水を水量調節しつゝ排出可能なコック部材2を取り付け可能にする一方、当該開口部位を閉塞せしめる遮水キャップ3を嵌着可能にする。本実施形態では、排水口13にコック部材2を取り付けると共に、底口部15に遮水キャップ3を嵌着する。
【0025】
そして、図3に示すように、容器本体1を縦置きしたときに、上面に形成された供給口部から雨水が供給される。この際、雨樋Aと供給口部とは、ジョイント部材を用いて接続したり、容器内が満水になった場合にオーバーフローするように給水できるようにしても良い。
【0026】
このように構成したことによって、前記容器本体1内に雨水が充填された時の重心が、本体高さの中央レベルCよりも下方に位置させることができ、膨出部12内の貯留水をウェイトにすることができる。
【0027】
そして、前記排水口13にコック部材2を取り付けた時に、当該排水口13の水位に下がるまで主筒部11内に収容された水のみを水量調節しつゝ排出することができる。
【0028】
本実施形態では、容器本体1の膨出部12の容積を容器全体の4分の1以上にすることができ、より確実に重心を下方に位置させることができる。4分の1よりも小さいと重心が高くなって安定効果が減少する。
【0029】
また、容器本体1内の水の排出により、水位が排水口13まで下がって、膨出部12内に残留する水を使用したい場合には、図4に示すように、容器本体1を傾倒させると共に、コック部材2と遮水キャップ3とを交換することができる。
【0030】
更にまた、本実施形態では、底口部15が地面に直接的に接地すると注ぎ勝手が悪くなるので、図5に示すように、適宜、容器本体1をベース部材4(例えば、コンクリートブロック)の上に載置することによって、容器内の全ての水を底口部15に取り付けたコック部材2から調節排水することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、容器本体1の天面に、容器内部を洗浄するための開閉自在な清掃口部16を設けることができ、この清掃口部16から手を入れて簡単に内部を清掃することができ、定期的なメンテナンスなどを容易にすることができる。
【0032】
本発明は概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、容器本体1の使用材料は、ポリエチレン(高密度または低密度)に限らず、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステルなどのプラスチック材料を採用することができ、本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0033】
1 容器本体
11 主筒部
12 膨出部
13 排水口
14 底設置面
15 底口部
16 清掃口部
2 コック部材
3 遮水キャップ
4 ベース部材
A 雨樋
C 中央レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根などに配設された雨樋Aから連通して、当該雨樋Aに集成された雨水を貯留することができるプラスチック製の縦長中空容器であって、
容器本体1の上方には主筒部11が形成されており、かつ、下方にはこの主筒部11よりも外郭形状が外方に拡大してなる膨出部12が形成されている一方、
これら主筒部11と膨出部12との境界近傍における外側面には筒状の排水口13が突成されており、かつ、前記容器本体1の底設置面14における端縁部から外向きに延成されて開口する筒状の底口部15が突成されており、
これら排水口13および底口部15の少なくとも一方には、当該容器本体1内に収容された水を水量調節しつゝ排出可能なコック部材2を取り付け可能である一方、当該開口部位を閉塞せしめる遮水キャップ3を嵌着可能であって、
前記容器本体1内に雨水が充填された時の重心が、本体高さの中央レベルCよりも下方に位置しており、膨出部12内の貯留水をウェイトにして、前記排水口13にコック部材2を取り付けた時に、当該排水口13の水位に下がるまで主筒部11内に収容された水のみを水量調節しつゝ排出可能にしたことを特徴とする縦置き低重心雨水貯留タンク。
【請求項2】
容器本体1をベース部材4の上に載置することによって、容器内の全ての水を底口部15に取り付けたコック部材2から調節排水可能にしたことを特徴とする請求項1記載の縦置き低重心雨水貯留タンク。
【請求項3】
容器本体1の主筒部11の断面形状が、略四辺形の角筒形状であることを特徴とする請求項1または2記載の縦置き低重心雨水貯留タンク。
【請求項4】
容器本体1の膨出部12の容積が容器全体の4分の1以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の縦置き低重心雨水貯留タンク。
【請求項5】
容器本体1の天面に、容器内部を洗浄するための開閉自在な清掃口部16が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の縦置き低重心雨水貯留タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−52445(P2011−52445A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202096(P2009−202096)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(390014029)株式会社八木熊 (31)