説明

縮環構造含有樹脂

【課題】本発明は、高いレベルでの耐熱性および電気特性、光学特性を有し、分散性、パターニング性に優れた硬化物を与える縮環構造含有エポキシエステル樹脂、その製造方法、縮環構造含有エポキシエステル樹脂組成物及び成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、下記一般式(17)に示されるエポキシアクリレート樹脂である。
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱および放射線硬化性を有する新規な縮環構造含有エポキシ樹脂、縮環構造含有エポキシエステル樹脂、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂、該樹脂の製造方法、そして該樹脂を含む熱硬化性あるいは放射線硬化性の樹脂組成物に関する。さらに本発明は、該樹脂組成物を用いて得られる、耐熱性、電気特性等に優れる成形体に関する。具体的には、本発明は、高屈折率で、透明性に優れた樹脂組成物を調製するのに有用なエポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アルカリ可溶型樹脂に関する。さらに具体的には、有機顔料や無機微粒子などを分散させた樹脂組成物の調製に有用なエポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アルカリ可溶型樹脂に関する。さらに本発明は、上記エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アルカリ可溶型樹脂を含む熱硬化または感放射線性樹脂組成物であって、カラーフィルター、液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などにおける保護膜や層間絶縁膜を調製するために有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にエポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物を形成する。そのため、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来、工業的に最も使用されているエポキシ樹脂として液状および固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂がある。エポキシ系の機能性高分子材料としては、従来からエポキシアクリレート樹脂を代表とするエポキシエステル樹脂が汎用されている。この樹脂は、例えば感光性材料などの分野で使用されている(例えば、非特許文献1)。しかし、これらの樹脂は耐熱性、電気特性および硬度が不充分であり、例えば、高いレベルの耐熱性が要求される電子材料分野においては不充分である。
また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を原料とした、エポキシアクリレート樹脂等のエポキシエステル樹脂を多塩基性カルボン酸無水物で変性したアルカリ可溶型樹脂及びアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、ソルダーレジストや液晶カラーフィルター製造用のカラーレジスト用の感光性、分散用樹脂として検討されている(特許文献1、2、3)。これらは、耐熱性や電気特性、透明性などに優れているが、近年のより高いレベルの要求に対しては不充分である。また、カラーフィルター用感光性樹脂組成物の用途においては、近年、色純度を高めるために顔料を高濃度化する要求が強いが、従来の組成物では、分散剤を大量に添加するしかなく、結果、現像性が犠牲となるなど、より分散性に優れた分散樹脂が求められている。また、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるカラーインクにおいては、分散性、分散安定性に優れた分散樹脂が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−194942号公報
【特許文献2】特開平06−93082号公報
【特許文献3】特開平7−207211号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】山岡亜夫および森田浩著「感光性樹脂」、共立出版、1988年3月初版発行、82〜84頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決するものであり、その目的とするところは、その硬化物が高いレベルでの耐熱性および電気特性を有し、パターニング性、分散性に優れた機能性エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アルカリ可溶型樹脂を提供することにある。本発明の他の目的は、該樹脂の製造方法、および該樹脂を含む熱硬化あるいは感放射線性の組成物を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、このような樹脂組成物を硬化させて得られる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、ある縮環構造を含有するエポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、アルカリ可溶型樹脂が、高屈折率を有し、耐熱性、分散性、透明性などに優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される:
【0007】
【化1】

【0008】
ここでY1〜4は、下記一般式(2)若しくは、下記一般式(3)から各々独立して選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【0009】
【化2】

【0010】
ここでY5〜6は、一般式(2)若しくは、下記一般式(3)から各々独立して選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【0011】
【化3】

【0012】
ここで、上記一般式(1)、(2)のZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子、q1〜6は各々独立して0から4の整数である。さらに、上記一般式(1)、(2)、(3)のR7〜14は各々独立して水素原子またはメチル基、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0013】
また、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂は、下記一般式(4)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物にエピハロヒドリンを作用させる工程を含む製法から得られるものであり、一般式(1)に示される樹脂は例えばこの工程を含むプロセス(製造方法)によって得られる。
【0014】
【化4】

【0015】
ここで、Zは前記と同じであり、R15〜16は各々独立して炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子、f1〜2は各々独立して0から4の整数、R17〜18は各々独立して水素原子またはメチル基、m9〜10は各々独立して0から10の整数、そしてr1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR15〜18は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0016】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂の好適な実施態様のひとつには、一般式(1)の縮環構造含有エポキシ樹脂においてp1〜4が0である下記一般式(5)が挙げられる。
【0017】
【化5】

【0018】
ここで、Z、R1〜4、q1〜4、R7〜10、m1〜4、sは前記と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜10は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0019】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂で、別の好適な実施態様のひとつとして、一般式(1)の縮環構造含有エポキシ樹脂においてs1〜2が0である下記一般式(6)が挙げられる。
【0020】
【化6】

【0021】
ここで、Z、R1〜2、q1〜2、R、R10、m、mは上記と同じであり、h1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜2、R、R10は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0022】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂のより好適な実施態様においては、一般式(1)、(2)、(4)、(5)、(6)において、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である。また、別の好適な実施態様においては、一般式(1)〜(6)においてp1〜6、q1〜6、f1〜2は各々独立して0から2の整数、m1〜10は各々独立して0から2の整数、そしてh1〜2、r1〜2は各々独立して1から2の整数、s1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
【化10】

【0027】
【化11】

【0028】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂の製造方法は、前述の一般式(4)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物にエピハロヒドリンを作用させる工程を包含する。
【0029】
上記エピハロヒドリンのうち、特にエピクロロヒドリンが好適に用いられる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記縮環構造含有エポキシ樹脂を含有する。
【0031】
本発明は、上記エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる成形体を包含する。
【0032】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、下記一般式(12)で表される。
なお、本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂を包含する。
【0033】
【化12】

【0034】
ここでY1〜4は、下記一般式(13)若しくは、下記一般式(14)から各々独立して選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【0035】
【化13】

【0036】
ここでY5〜6は、一般式(13)若しくは、下記一般式(14)から各々独立して選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【0037】
【化14】

【0038】
ここで、上記一般式(12)、(13)、(14)のZ、R1〜6、q1〜6、R7〜14、m1〜8、s1〜2は上記一般式(1)、(2)、(3)と同じであり、R19は単塩基性カルボン酸に由来する部位を含む基を示し、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、R19、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0039】
また、本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、一般式(1)、(5)、(6)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂と単塩基性カルボン酸とを反応させる工程を含む製法から得られるものであり、一般式(12)に示される樹脂は例えばこの工程を含むプロセス(製造方法)、または、式(4)の多官能水酸基含有縮環構造化合物に単塩基性カルボン酸グリシジルを作用させる工程を含むプロセス(製造方法)によって得られる。
【0040】
さらに、本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、一般式(4)の多官能水酸基含有縮環構造化合物にエピハロヒドリンを作用させる工程を含む製法から得られた縮環構造含有エポキシ樹脂に、単塩基性カルボン酸を作用させる工程を含む製法からも得られ、一般式(12)に示される樹脂は例えばこの工程を含むプロセス(製造方法)によっても得られる。
【0041】
上記プロセス(製造方法)によって得られる縮環構造含有エポキシエステル樹脂の好適な実施態様においては、上記プロセス(製造方法)における一般式(1)、(2)、(4)、(5)、(6)のZが、式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である。
また、別の好適な実施態様においては、上記プロセス(製造方法)における一般式(1)〜(6)においてp1〜6、q1〜6、f1〜2は各々独立して0から2の整数、m1〜10は各々独立して0から2の整数、そしてh1〜2、r1〜2は各々独立して1から2の整数、s1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0042】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂の好適な実施態様のひとつには、一般式(12)の縮環構造含有エポキシエステル樹脂においてp1〜4が0である下記一般式(15)が挙げられる。
【0043】
【化15】

【0044】
ここで、Z、R1〜4、q1〜4、R7〜10、m1〜4、R19、sは上記一般式(12)と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜10、R19は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0045】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂で、別の好適な実施態様のひとつとして、一般式(12)の縮環構造含有エポキシエステル樹脂においてs1〜2が0である下記一般式(16)が挙げられる。
【0046】
【化16】

【0047】
ここで、Z、R1〜2、q1〜2、R、R10、m、m、R19は上記一般式(12)と同じであり、h1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜2、R、R10、R19は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0048】
上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂の好適な実施態様のひとつとして、上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂の単塩基性カルボン酸に由来する部位に、不飽和基を有し、放射線重合性を有する縮環構造含有エポキシエステル樹脂が挙げられる。これらを特に縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂とし、以下に示す。
【0049】
本発明の縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は、下記一般式(17)で表される。
なお、これは、一般式(12)においてR19が不飽和基を有する基である縮環構造含有エポキシエステル樹脂である。ここで、不飽和基は、エテニル基や2−プロペニル基などである。
【0050】
【化17】

【0051】
ここでY1〜4は、下記一般式(18)若しくは、下記一般式(19)から各々独立して選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【0052】
【化18】

【0053】
ここでY5〜6は、一般式(18)若しくは、下記一般式(19)から各々独立して選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【0054】
【化19】

【0055】
ここで上記一般式(17)、(18)、(19)のZ、R1〜6、q1〜6、R7〜14、m1〜8、s1〜2は上記一般式(1)、(2)、(3)と同じであり、R20は各々独立して水素原子またはメチル基を示し、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、R20、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0056】
好適な実施態様のひとつには、一般式(17)の縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂においてp1〜4が0である下記一般式(20)が挙げられる。
【0057】
【化20】

【0058】
ここで、Z、R1〜4、q1〜4、R7〜10、m1〜4、R20、sは上記一般式(17)と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜10、R20は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0059】
さらに好適な実施態様のひとつとして、一般式(17)の縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂においてs1〜2が0である下記一般式(21)が挙げられる。
【0060】
【化21】

【0061】
ここで、Z、R1〜2、q1〜2、R、R10、m、m、R20は上記一般式(17)と同じであり、h1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜2、R、R10、R20は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0062】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂の好適な実施態様においては、一般式(12)、(13)、(15)、(16)、(17)、(18)、(20)、(21)において、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である。
【0063】
また、別の好適な実施態様においては、一般式(12)〜(21)において、p1〜6、q1〜6、は各々独立して0から2の整数、m1〜8は各々独立して0から2の整数、そしてh1〜2は各々独立して1から2の整数、s1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0064】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂の第1の製造方法は、上記一般式(1)、(5)、(6)で表される縮環構造含有エポキシ樹脂、または、一般式(4)の多官能水酸基含有縮環構造化合物にエピハロヒドリンを作用させる工程を含む製法から得られた縮環構造含有エポキシ樹脂に、単塩基性カルボン酸を作用させる工程を包含する。
【0065】
好適な実施態様においては、一般式(1)〜(6)において、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、p1〜6、q1〜6、f1〜2は各々独立して0から2の整数、m1〜10は各々独立して0から2の整数、そしてh1〜2、r1〜2は各々独立して1から2の整数、s1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0066】
別の好適な実施態様においては、上記単塩基性カルボン酸が(メタ)アクリル酸であることにより、上記縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂が得られる。
【0067】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂の第2の製造方法は、上記一般式(4)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物に、単塩基性カルボン酸グリシジルを作用させる工程を包含する。
【0068】
好適な実施態様においては、一般式(4)の上記多官能水酸基含有縮環構造化合物において、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、f1〜2は各々独立して0から2の整数、m9〜10は各々独立して0から2の整数、そしてr1〜2は各々独立して1から2の整数である。
【0069】
別の好適な実施態様においては、上記単塩基性カルボン酸が(メタ)アクリル酸グリシジルであることにより、上記縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂が得られる。
【0070】
本発明のエポキシエステル樹脂組成物は、上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂を含有し、熱硬化性又は感放射線性の組成物である。
【0071】
本発明は、上記エポキシエステル樹脂組成物を硬化させて得られる成形体を包含する。
【0072】
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂は、式(12)、(15)、(16)、(17)、(20)、(21)で表される縮環構造含有エポキシエステル樹脂に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる。
【0073】
好適な実施態様においては、上記一般式(12)、(13)、(15)、(16)、(17)、(18)、(20)、(21)においてZが、式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である。
また別の好適な実施態様としては、一般式(12)〜(21)において、p1〜6、q1〜6、は各々独立して0から2の整数、m1〜8は各々独立して0から2の整数、そしてh1〜2は各々独立して1から2の整数、s1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0074】
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の好適な実施態様のひとつとして、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂が挙げられる。縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂のうち放射線重合性を有する不飽和基を分子内に有するものをいう。例えば、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、式(17)、(20)、(21)で表される縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる。
【0075】
さらに好適な実施態様のひとつとしては、放射線重合性の不飽和基がエテニル基である縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂が挙げられる。
【0076】
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂及び縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂の製造方法は、一般式(12)、(15)、(16)、(17)、(20)、(21)で表される縮環構造含有エポキシエステル樹脂に、多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させる工程を包含する。
【0077】
本発明の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物は、上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂または、上記縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を含有する。
【0078】
本発明は、上記感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物を硬化させて得られる成形体を包含する。
【0079】
本発明のエポキシ樹脂組成物、縮環構造含有エポキシエステル樹脂組成物、感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物は、有機顔料及び/または無機微粒子を含むものが好ましい。
【0080】
本発明は、上記の有機顔料及び/または無機微粒子を含む樹脂組成物を硬化させて得られる成形体を包含する。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、新規な縮環構造含有エポキシ樹脂、縮環構造含有エポキシエステル樹脂、および縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂、並びにそれらの簡便な製造方法が提供される。これらの樹脂は熱または放射線により重合し、硬化することが可能である。これらを含む樹脂組成物は、微粒子の分散性に優れる。また、これらを含む樹脂組成物を用いて得られる硬化成形体あるいは薄膜は、透明性が高く、高いレベルでの耐熱性および電気特性を有し、硬化収縮の度合いが少ない。さらに、本発明のアルカリ可溶型樹脂を用いると、基板上に所望のパターンの、上記優れた性質を有する薄膜が精度良く形成される。従って、本発明の樹脂あるいは樹脂組成物は、各種電子部品(カラーフィルターを包含する液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子など)の保護膜形成材料;層間絶縁膜の形成材料、カラーレジスト用バインダー組成物;プリント配線板製造の際に用いられるソルダーレジスト;コーティング剤;光学部品材料などとして好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1で得られた、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂のH−NMRのチャートである。
【図2】実施例3で得られた、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂のH−NMRのチャートである。
【図3】実施例4で得られた、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂のH−NMRのチャートである。
【図4】実施例5で得られた、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂のH−NMRのチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下に本発明を詳細に説明する。
A.縮環構造含有エポキシ樹脂
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂は、下記一般式(1)で表される:
【0084】
【化22】

【0085】
ここでY1〜4は、下記一般式(2)若しくは、下記一般式(3)から各々独立して選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【0086】
【化23】

【0087】
ここでY5〜6は、一般式(2)若しくは、下記一般式(3)から各々独立して選ばれる基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【0088】
【化24】

【0089】
ここで上記一般式(1)、(2)のZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子、q1〜6は各々独立して0から4の整数である。さらに、上記一般式(1)、(2)、(3)のR7〜14は各々独立して水素原子またはメチル基、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0090】
Zにおける六員環の脂環式化合物と1つ以上の芳香環との縮環構造を含む二価基としては、例えば、六員環の脂環式化合物と1〜3個の芳香環との縮環構造を含む二価基が挙げられる。六員環の脂環式化合物及び五員環の脂環式化合物は、環上に炭素以外の原子を含んでいてもよく、例えば酸素原子、硫黄原子、窒素原子を含むものが挙げられる。具体的なZの例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0091】
【化25】

【0092】
1〜6における炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。炭素数1から5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0093】
この縮環構造含有エポキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシ樹脂(A)」、「エポキシ樹脂(A)」などと記載される場合がある。上記一般式(1)〜(3)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、p1〜6、q1〜6は各々独立して0から2の整数、m1〜8は各々独立して0から2の整数、そしてs1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0094】
【化26】

【0095】
【化27】

【0096】
【化28】

【0097】
【化29】

【0098】
【化30】

【0099】
Zが、式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、芳香族を含む縮環骨格由来の高耐熱性、高屈折率、電気特性が付与でき、大きな面構造由来の分散安定性が得られる。さらに、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、より高いレベルでの耐熱性、屈折率、電気特性、分散安定性が得られる。
Zが式(10)(11)の縮環構造を含む二価基である場合、このようなエポキシ樹脂(A)は取り扱いが簡便であり、製造コストの点で有利である。
【0100】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂は、上記一般式(1)のp1〜4の何れかが1以上のとき縮環構造含有エポキシ樹脂は分岐構造をとり、さらにp5〜6の何れかが1以上であれば、更なる分岐構造を有する。また、p1〜4の全てが0のとき、縮環構造含有エポキシ樹脂は、直鎖の樹脂である。
【0101】
分岐を有する上記縮環構造含有エポキシ樹脂は、例えば、硬化性、分散安定性、耐熱性等で優位であり、上記縮環構造含有エポキシ樹脂が直鎖である場合、例えば、取り扱いが簡便である、樹脂設計の自由度が高くなる点等で優位となる。
【0102】
また、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂は、下記一般式(4)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物にエピハロヒドリンを作用させる工程を含む製法から得られるものであり、一般式(1)に示される樹脂は、例えばこの工程を含むプロセス(製造方法)によって得られる。
【0103】
【化31】

【0104】
ここで、Zは上記と同じであり、R15〜16は各々独立して炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子、f1〜2は各々独立して0から4の整数、R17〜18は各々独立して水素原子またはメチル基、m9〜10は各々独立して0から10の整数、そしてr1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR15〜18は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0105】
15〜16における炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルケニル基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。炭素数1から5のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニル基、シクロヘキシルフェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0106】
一般式(4)に示される多官能水酸基含有縮環構造化合物は、本明細書中で、「多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)」と記載される場合がある。
【0107】
また、この縮環構造含有エポキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシ樹脂(A1)」、「エポキシ樹脂(A1)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシ樹脂(A1)は、前述の縮環構造含有エポキシ樹脂(A)に含まれる。上記一般式(4)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、f1〜2は各々独立して0から2の整数、m9〜10は各々独立して0から2の整数、そしてr1〜2は各々独立して1から2の整数である。
【0108】
上記エピハロヒドリンの例としては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリンなどが挙げられ、取り扱いが簡便であり、安価であることから特にエピクロロヒドリンが好適にもちいられる。
【0109】
上記多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)は、当該分野で知られている方法により調製され得る。例えば、酸性触媒の存在下、フェノール類とケトン類とを縮合させることにより製造されることが知られている(例えば、特開平7−112949号公報参照)。
【0110】
上記多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)とエピクロロヒドリンとの反応は、通常50〜120℃の温度範囲において1〜10時間行われる。好ましくは、70〜110℃の温度範囲において、3〜6時間行われる。
上記多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)とエピクロロヒドリンとの割合は、多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)の水酸基1モルに対してエピクロロヒドリン1〜20モルが好ましい。
多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)とエピクロロヒドリンとの反応に用いられる触媒としては、例えばホスホニウム塩類、4級アンモニウム塩類、ホスフィン化合物類、3級アミン化合物類、イミダゾール化合物類等が挙げられる。
【0111】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂の好適な実施態様のひとつには、一般式(1)の縮環構造含有エポキシ樹脂においてp1〜4が0である下記一般式(5)が挙げられる。
【0112】
【化32】

【0113】
ここで、Z、R1〜4、q1〜4、R7〜10、m1〜4、sは上記一般式(1)と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜10は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0114】
この縮環構造含有エポキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシ樹脂(A2)」、「エポキシ樹脂(A2)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシ樹脂(A2)は、前述の縮環構造含有エポキシ樹脂(A)に含まれる。上記一般式(5)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、q1〜4は各々独立して0から2の整数、m1〜4は各々独立して0から2の整数、そしてsは0から8の整数である。
【0115】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂で、別の好適な実施態様のひとつとして、一般式(1)の縮環構造含有エポキシ樹脂においてs1〜2が0である下記一般式(6)が挙げられる。
【0116】
【化33】

【0117】
ここで、Z、R1〜2、q1〜2、R、R10、m、mは上記一般式(1)と同じであり、h1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜2、R、R10は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0118】
この縮環構造含有エポキシ樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシ樹脂(A3)」、「エポキシ樹脂(A3)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシ樹脂(A3)は、前述の縮環構造含有エポキシ樹脂(A)に含まれる。上記一般式(6)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、q1〜2は各々独立して0から2の整数、m、mは各々独立して0から2の整数、そしてh1〜2は各々独立して1から2の整数である。
【0119】
尚、上記一般式(6)のh1〜2が多くなるにつれ、硬度や硬化性などが高くなる。一方、一般式(6)のh1〜2が少なくなるにつれ、樹脂の取り扱いや設計が容易になる。
【0120】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂(A)を含有する。このエポキシ樹脂(Aは1種のみを単独で使用できる他、2種以上の混合物としても使用することができる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂(A)を10〜90重量%含有することが好ましい。
【0121】
このエポキシ樹脂組成物には、さらに必要に応じて(i)上記エポキシ樹脂(A)以外のエポキシ樹脂、(ii)反応性希釈剤、(iii)硬化剤、(iv)硬化促進剤、(v)添加剤、(vi)溶剤などが含有され得る。
【0122】
上記(i)のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどのビスフェノール系エポキシ樹脂;フェノール樹脂、クレゾールノボラック型樹脂などの多官能フェノール系エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂などのナフタレン系エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;上記エポキシ樹脂(A)以外の縮環構造系エポキシ樹脂などが挙げられる。
上記(i)のエポキシ樹脂は、本発明のエポキシ樹脂(A)に対して5〜70重量%含むことが好ましい。
【0123】
上記(ii)の反応性希釈剤は、粘度調整を行うために添加する低粘度なエポキシ化合物であり、特に二官能以上の低粘度エポキシ化合物が好ましい。反応性希釈剤としては、例えば、次の化合物が挙げられる:ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ポリグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、メチル化ビニルシクロヘキセンジオキサイドなど。これら反応性希釈剤は1種のみを単独で使用できる他、2種以上を混合しても使用することができる。
上記(ii)の反応性希釈剤は、本発明のエポキシ樹脂(A)に対して1〜50重量%含むことが好ましい。
【0124】
上記(iii)の硬化剤としては、特に限定されないが、アミン化合物類、イミダゾール化合物、カルボン酸類、酸無水化合物、フェノール類、第4級アンモニウム塩類、メチロール基含有化合物類、トリフル酸(Triflic acid)塩類、三弗化硼素エーテル錯化合物類、三弗化硼素、光または熱により酸を発生するジアゾニウム塩類、スルホニウム塩類、ヨードニウム塩類、ベンゾチアゾリウム塩類、アンモニウム塩類、ホスホニウム塩類のような潜在性カチオン重合触媒などが挙げられる。
【0125】
上記硬化剤の配合量は、一般的には硬化剤の種類により異なり得るので一概に規定することはできないが、例えば、酸無水化合物やフェノール類の場合、エポキシ基1モルに対して酸無水物基またはフェノール性水酸基0.2〜2.0モルの割合が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0モルである。他の種類の硬化剤の場合も、上記値を参照して当業者が適宜に使用することができる。
【0126】
上記(iv)の硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7およびそのフェノール塩、フェノールノボラック塩、炭酸塩、ギ酸塩などのアミン類(第三アミンを含む)およびその誘導体;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類;エチルホスフィン、プロピレンホスフィン、フェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリアルキルホスフィンなどの、オルガノホスフィン類(第1、第2、および第3ホスフィン類)などが挙げられる。
【0127】
このような硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.05〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0重量部である。
上記「エポキシ樹脂」とは、組成物中に含まれる全てのエポキシ樹脂を意味し、本発明のエポキシ樹脂(A)、及び本発明のエポキシ樹脂(A)以外のエポキシ樹脂(i)を含む。
【0128】
上記(v)の添加剤としては、補強材または充填材、着色剤、難燃剤、硬化性の化合物(硬化性モノマー、オリゴマー、または樹脂)、固体微粒子などが挙げられる。
上記補強剤または充填剤としては、粉末状あるいは繊維状の補強剤や充填剤が用いられる。粉末状の補強剤または充填剤としては、例えば次の素材でなる材料が挙げられる:酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩;ケイソウ土粉、塩基性ケイ酸マグネシウム、焼成クレイ、微粉末シリカ、溶融シリカ、結晶シリカなどのケイ素化合物;水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物;その他、カオリン、マイカ、石英粉末、グラファイト、二硫化モリブデンなど。繊維状の補強剤または充填剤としては、次の材料が挙げられる:ガラス繊維、セラミック繊維、カーボンファイバー、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ボロン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維など。
上記着色剤、または難燃剤としては、例えば二酸化チタン、鉄黒、モリブデン赤、紺青、群青、カドミウム黄、カドミウム赤、三酸化アンチモン、赤燐、ブロム化合物、トリフェニルホスフェートなどが挙げられる。
上記硬化性の化合物は、最終的な塗膜、接着層、成形品などにおける樹脂の性質を改善する目的で用いられる。それには、例えば、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などがある。
上記固体微粒子としては、有機顔料や無機微粒子などが挙げられ、例えば光学材料、表示素子材料などの用途に好適に用いるために添加され得るものである。上記有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物や、中心金属がCu、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn等の異種金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。また、上記無機微粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化タンタル、酸化インジウムスズ、酸化ハフニウム硫酸バリウムなどの金属酸化物;炭酸カルシウム、塩化金、臭化金、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化パラジウム、塩化白金酸、塩化金酸ナトリウム、硝酸銀、白金アセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナートなどの金属塩;金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属類;亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。これら固体微粒子の粒径は、例えば1nm〜5μmである。
これら(v)添加剤は、いずれも1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記(v)添加剤は、本発明の樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量で含有され得る。
【0129】
上記(vi)の溶剤としては、例えば、次の溶剤が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0130】
このような溶剤を添加する場合、その配合量は、組成全体の5〜70重量%が好ましい。
【0131】
本発明の組成物は、目的に応じた成形体とされる。この成形体は、組成物自体の硬化物でなる所望の形状の製品、あるいは基材上に形成された該組成物の硬化物でなる塗膜であってもよい。例えば上記組成物は、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱しあるいは放射線照射することにより硬化し、所望の形状の成形体が得られる。あるいは、溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥し、次いで加熱しあるいは放射線照射することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。
【0132】
成形方法および硬化条件は特に限定されないが、例えば、所定の金型を用いて成形する場合には、加熱加圧による成形法やコールドプレスと呼ばれる低温成形法が用いられる。加熱加圧による方法としては、例えば、ハンドレイアップやスプレーレイアップと呼ばれる方法により常圧で本発明組成物を金型に充填した後、加熱硬化させる方法;トランスファープレス装置を用いて射出成形により加熱圧縮する方法;および連続積層成形法、プルトルージョンと呼ばれる連続引抜成形法、フィラメントワインディング成形法などの連続成形法が挙げられる。またこれらの成形方法においては、上記樹脂組成物を補強剤と混合、あるいは補強剤に含浸させることにより中間成形材料を得、これを成形し、硬化させることもできる。補強剤としては、樹脂、ガラスなどでなる織布、不織布などが挙げられる。これを用いて得られる中間成形材料としては、例えば、SMC(シートモールディングコンパウンド)と呼ばれるシート状の中間成形材料;BMC(ベルクモールディングコンパウンド)あるいはプレミックスと呼ばれる液状または固形状の中間成形材料;ガラスクロスやマットなどに本発明組成物を含浸させたプリプレグなどが挙げられる。
【0133】
本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂(A)は、高い屈折率を有し、耐熱性に優れ、熱または放射線照射により容易に硬化する。このエポキシ樹脂(A)を含む樹脂組成物は成形加工性に優れるため、上述のように、金型により所定の形状に成形し、あるいは基板上に薄膜を形成することが容易である。これらを熱または放射線により硬化させて得られた成形体(薄膜を含む)は、耐熱性および耐環境性(耐候性)に優れ、曲げ特性などの機械的強度が高く、高い靱性、熱衝撃性、および良好な成形加工性を有する。
【0134】
このエポキシ樹脂組成物から得られる成形体は、上記耐熱性などの性質に加え、絶縁性に優れており、硬化収縮が小さく寸法安定性にも優れていることから、該組成物は、電気・電子材料封止剤に有用である。さらに、この組成物は、耐熱性、接着性、硬化性などに優れていることから、コンデンサーなど各種電子部品のポッティング材、コーティング材などに好適に用いられる。電子絶縁材料用の封止材や、ポッティング剤として使用する場合には、従来から一般に使用されるエポキシ樹脂を用いた封止用樹脂と同様の方法で使用することができる。さらに硬化物は透明性に優れていることから、光学デバイス用熱硬化性樹脂組成物としても有用である。
【0135】
また、本発明のエポキシ樹脂(A)は分散性に優れるので、組成物中に有機顔料や無機微粒子を分散させる場合に好適に用いることができる。この組成物を硬化させて得られる成形体も本発明の一つである。
【0136】
B.縮環構造含有エポキシエステル樹脂
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、下記一般式(12)で表される:
【0137】
【化34】

【0138】
ここでY1〜4は、下記一般式(13)若しくは、下記一般式(14)から各々独立して選ばれる基である。
【0139】
【化35】

【0140】
ここでY5〜6は、一般式(13)若しくは、下記一般式(14)から各々独立して選ばれる基である。
【0141】
【化36】

【0142】
ここで、Z、p1〜6、R1〜6、q1〜6、R7〜14、m1〜8、s1〜2は上記一般式(1)〜(3)と同じであり、R19は単塩基性カルボン酸に由来する部位を含む基を示す。構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、R19、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0143】
この縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)」、「エポキシエステル樹脂(B)」などと記載される場合がある。上記一般式(12)〜(14)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、p1〜6、q1〜6は各々独立して0から2の整数、m1〜8は各々独立して0から2の整数、そしてs1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0144】
Zが、式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、芳香族を含む縮環骨格由来の高耐熱性、高屈折率、電気特性が付与でき、大きな面構造由来の分散安定性が得られる。さらに、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である場合、より高いレベルでの耐熱性、屈折率、電気特性、分散安定性が得られる。
Zが式(10)(11)の縮環構造を含む二価基である場合、このようなエポキシエステル樹脂(B)は取り扱いが簡便であり、製造コストの点で有利である。
【0145】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、上記一般式(12)、(13)のp1〜4の何れかが1以上のとき縮環構造含有エポキシエステル樹脂は分岐構造をとり、さらにp5〜6の何れかが1以上であれば、更なる分岐構造を有する。また、p1〜4の全てが0のとき、縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、直鎖の樹脂である。
【0146】
分岐を有する上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、例えば、耐熱性、硬化性、分散安定性で優位であり、上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂が直鎖である場合、例えば、取り扱いが簡便である、樹脂設計の自由度が高くなる点で優位となる。
【0147】
また、本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、上記縮環構造含有エポキシ樹脂(A)に、単塩基性カルボン酸を作用させる工程を含む製法から得られ、あるいは、一般式(4)の多官能水酸基含有縮環構造化合物に単塩基性カルボン酸グリシジルを作用させる工程を含む製法からも得られるものであり、一般式(12)に示される樹脂は、例えばこの工程を含むプロセス(製造方法)によって得られる。
【0148】
上記の方法により得られた縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B1)」、「エポキシエステル樹脂(B1)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B1)は、前述の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)に含まれる。
【0149】
好適な実施態様としては、一般式(1)〜(6)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、p1〜6、q1〜6、f1〜2は各々独立して0から2の整数、m1〜10は各々独立して0から2の整数、h1〜2、r1〜2は各々独立して1から2の整数、そしてs1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0150】
別の好適な実施態様としては、上記単塩基性カルボン酸及び単塩基性カルボン酸グリシジルが、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸グリシジルであることで、放射線重合性を有する縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B1)が得られる。
【0151】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂の好適な実施態様のひとつには、一般式(12)の縮環構造含有エポキシエステル樹脂においてp1〜4が0である、直鎖状の下記一般式(15)が挙げられる。
【0152】
【化37】

【0153】
Z、R1〜4、q1〜4、R7〜10、m1〜4、R19、sは上記一般式(12)と同じである。構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜10、R19は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0154】
この縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B2)」、「エポキシエステル樹脂(B2)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B2)は、前述の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)に含まれる。上記一般式(15)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、q1〜4は各々独立して0から2の整数、m1〜4は各々独立して0から2の整数、そしてsは各々独立して0から8の整数である。
【0155】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂で、別の好適な実施態様のひとつとして、一般式(12)の縮環構造含有エポキシエステル樹脂においてs1〜2が0である下記一般式(16)が挙げられる。
【0156】
【化38】

【0157】
Z、R1〜2、q1〜2、R、R10、m、m、R19は上記一般式(12)と同じであり、h1〜2は各々独立して1から5までの整数である。構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜2、R、R10、R19は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0158】
この縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B3)」、「エポキシエステル樹脂(B3)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B3)は、前述の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)に含まれる。上記一般式(16)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、q1〜2、は各々独立して0から2の整数、m、mは各々独立して0から2の整数であり、h1〜2は各々独立して1から2の整数である。
【0159】
尚、上記一般式(16)のh1〜2が多くなるにつれ、硬度や硬化性などが高くなる。一方、一般式(16)のh1〜2が少なくなるにつれ、樹脂の取り扱いや設計が容易になる。
【0160】
上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂の好適な実施態様のひとつとして、上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂の単塩基性カルボン酸に由来する部位が、不飽和基を有する基であるものが挙げられる。これらを特に縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂とし、以下に示す。
縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は、放射線重合性官能基を有することを特徴とする。
【0161】
本発明の縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は、下記一般式(17)で表される。
なお、これは、一般式(12)においてR19が不飽和基を有する基である縮環構造含有エポキシエステル樹脂である。ここで、不飽和基は、エテニル基や2−プロペニル基などである。
【0162】
【化39】

【0163】
ここでY1〜4は、下記一般式(18)若しくは、下記一般式(19)から各々独立して選ばれる基である。
【0164】
【化40】

【0165】
ここでY5〜6は、一般式(18)若しくは、下記一般式(19)から各々独立して選ばれる基である。
【0166】
【化41】

【0167】
ここでZ、p1〜6、R1〜6、q1〜6、R7〜14、m1〜8、s1〜2は上記一般式(12)、(13)、(14)と同じであり、R20は独立して水素原子またはメチル基である。構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、R20、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0168】
この縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B4)」、「エポキシエステル樹脂(B4)」、「縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂(B4)」、「エポキシアクリレート樹脂(B4)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B4)は、前述の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)に含まれる。上記一般式(17)〜(19)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、p1〜6、q1〜6は各々独立して0から2の整数、m1〜8は各々独立して0から2の整数、そしてs1〜2は各々独立して0から8の整数である。
【0169】
本発明の縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は、上記一般式(12)、(13)のp1〜4の何れかが1以上のとき縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は分岐構造をとり、さらにp5〜6の何れかが1以上であれば、更なる分岐構造を有する。また、p1〜4の全てが0のとき、縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は、直鎖の樹脂である。
【0170】
分岐を有する上記縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は、例えば、耐熱性、硬化性、分散安定性で優位であり、上記縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂が直鎖である場合、例えば、取り扱いが簡便である、樹脂設計の自由度が高くなる点で優位となる。
【0171】
好適な実施態様のひとつには、一般式(17)の縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂においてp1〜4が0である下記一般式(20)が挙げられる。
【0172】
【化42】

【0173】
Z、R1〜4、q1〜4、R7〜10、m1〜4、R20、sは上記一般式(17)と同じである。構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜10、R20は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0174】
この縮環構造含有エポキシエステル樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B5)」、「エポキシエステル樹脂(B5)」、「縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂(B5)」、「エポキシアクリレート樹脂(B5)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B5)は、前述の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)に含まれる。上記一般式(20)において、好ましくは、Zが式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、q1〜4は各々独立して0から2の整数、m1〜4は各々独立して0から2の整数、そしてsは各々独立して0から8の整数である。
【0175】
さらに別の好適な実施態様のひとつとして、一般式(17)の縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂においてs1〜2が0である下記一般式(21)が挙げられる。
【0176】
【化43】

【0177】
Z、R1〜2、q1〜2、R、R10、m、m、R20は上記一般式(17)と同じであり、h1〜2は各々独立して1から5までの整数である。構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜2、R、R10、R20は同一でも良いし、異なっていても良い。
【0178】
この縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B6)」、「エポキシエステル樹脂(B6)」、「縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂(B6)」、「エポキシアクリレート樹脂(B6)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B6)は、前述の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)に含まれる。上記一般式(21)において、好ましくは、Zが上記式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、Zが上記式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基であり、q1〜2は各々独立して0から2の整数、m、mは各々独立して0から2の整数、そしてh1〜2は各々独立して1から2の整数である。
Zが式(10)(11)の縮環構造を含む二価基である場合、このようなエポキシアクリレート樹脂(B6)は取り扱いが簡便であり、製造コストの点で有利である。
【0179】
尚、上記一般式(21)のh1〜2が多くなるにつれ、硬度や硬化性などが高くなる。一方、一般式(21)のh1〜2が少なくなるにつれ、樹脂の取り扱いや設計が容易になる。
【0180】
上記エポキシエステル樹脂(B)は例えば、上述のエポキシ樹脂(A)に単塩基性カルボン酸を作用させることにより得られる。
あるいは、上記一般式(4)で表される多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)に、単塩基性カルボン酸グリシジルを作用させることにより得られる。
【0181】
上記エポキシエステル樹脂(B)の調製に用いられる単塩基性カルボン酸としては、カルボキシル基を1つ有する次の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリル酸、シクロプロパンカルボン酸、2,2,3,3−テトラメチル−1−シクロプロパンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、2−シクロペンテニルカルボン酸、2−フランカルボン酸、2−テトラヒドロフランカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、4−プロピルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−へプチルシクロヘキサンカルボン酸、4−シアノシクロヘキサン−1−カルボン酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、1,3,4,5−テトラヒドロキシシクロヘキサン−1−カルボン酸、2−(1,2−ジヒドロキシ−4−メチルシクロヘキシル)プロピオン酸、シキミ酸、3−ヒドロキシ−3,3−ジフェニルプロピオン酸、3−(2−オキソシクロヘキシル)プロピオン酸、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸水素アルキル、シクロヘプタンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸、テトラシクロドデセンカルボン酸、1−アダマンタンカルボン酸、(4−トリシクロ[5.2.1.02.6]デカ−4−イル)酢酸、p−メチル安息香酸、p−エチル安息香酸、p−オクチル安息香酸、p−デシル安息香酸、p−ドデシル安息香酸、p−メトキシ安息香酸、p−エトキシ安息香酸、p−プロポキシ安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、p−ペンチルオキシ安息香酸、p−ヘキシルオキシ安息香酸、p−フルオロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、p−クロロメチル安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、ペンタクロロ安息香酸、4−アセトキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、o−ベンゾイル安息香酸、o−ニトロ安息香酸、o−(アセトキシベンゾイルオキシ)安息香酸、テレフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸モノメチルエステル、イソフタル酸モノシクロヘキシルエステル、フェノキシ酢酸、クロロフェノキシ酢酸、フェニルチオ酢酸、フェニル酢酸、2−オキソ−3−フェニルプロピオン酸、o−ブロモフェニル酢酸、o−ヨードフェニル酢酸、メトキシフェニル酢酸、6−フェニルヘキサン酸、ビフェニルカルボン酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、アントラセンカルボン酸、フェナントレンカルボン酸、アントラキノン−2−カルボン酸、インダンカルボン酸、1,4−ジオキソ−1,4−ジヒドロナフタレン−2−カルボン酸、3,3−ジフェニルプロピオン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、ケイ皮酸、3−メトキシケイ皮酸、4−メトキシケイ皮酸、キノリンカルボン酸などで、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
特に好適な単塩基性カルボン酸としては、放射線重合性官能基を導入できる不飽和基を含有するものが良く、例えば、(メタ)アクリル酸が好ましい。
なお、一般式(12)〜(16)のR19は、上記の単塩基性カルボン酸に由来する部位となる。
【0182】
また、上記エポキシエステル樹脂(B4)〜(B6)の調製に用いられる単塩基性カルボン酸は、(メタ)アクリル酸から選ばれる。
【0183】
上記エポキシエステル樹脂(B)の調製に用いられる単塩基性カルボン酸グリシジルとしては、次の化合物が挙げられるが、これらに限定されない:(メタ)アクリル酸グリシジル、酢酸グリシジル、酪酸グリシジル、安息香酸グリシジル、p−エチル安息香酸グリシジル、(テレ)フタル酸グリシジルなどで、これらは単独で用いても良く、2種以上を組み合わせても良い。
特に好適な単塩基性カルボン酸グリシジルとしては、放射線重合性官能基を導入できる不飽和基を含有するものが良く、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。
なお、一般式(12)〜(16)のR19は、上記の単塩基性カルボン酸グリシジルに由来する部位となる。
【0184】
また、上記エポキシエステル樹脂(B4)〜(B6)の調製に用いられる単塩基性カルボン酸グリシジルは、(メタ)アクリル酸グリシジルから選ばれる。
【0185】
上記エポキシ樹脂(A)と単塩基性カルボン酸との反応、および多官能水酸基含有縮環構造化合物(D)と単塩基性カルボン酸グリシジルとの反応は、いずれも必要に応じて適切な溶媒を用いて、50〜120℃の温度範囲において5〜30時間行なわれる。上記用いられ得る溶媒としては、例えばメチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレンモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのアルキレンモノアルキルエーテル類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン類;コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジブチルなどのエステル類などがある。これらのうち、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよび3−メトキシブチル−1−アセテートが好適である。さらに、必要に応じて触媒および重合禁止剤を用いることが出来る。用いられる触媒としては、例えばホスホニウム塩類、4級アンモニウム塩類、ホスフィン化合物類、3級アミン化合物類、イミダゾール化合物類等が挙げられ、通常、反応物全体の0.01〜10重量%の範囲で用いられることが好ましい。また、用いられる重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、4−メチルキノリン、フェノチアジン等が挙げられ、通常、反応物全体の5重量%の以下の範囲で添加され得る。
【0186】
上記エポキシエステル樹脂(B)において、特に不飽和基を分子内に有するもの、例えば、エポキシアクリレート樹脂(B4)〜(B6)は、熱硬化性および放射線硬化性を有する。ここで、放射線とは、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などを総称していう。従って、このエポキシアクリレート樹脂(B4)〜(B6)を含むエポキシアクリレート樹脂組成物は、熱硬化性または感放射線性の樹脂組成物として機能する。
また、本発明のエポキシエステル樹脂(B)のうち、放射線硬化性を有さない物についても、感放射線性樹脂組成物に含有させることが可能であり、それらを含む感放射線性樹脂組成物には、概樹脂縮環構造由来の耐熱性、分散性、光学特性等が付与され得る。
いずれの組成物においても上記エポキシエステル樹脂(B)は単独で含有されていてもよく、2種以上の混合物として含有されていてもよい。
【0187】
上記エポキシエステル樹脂(B)を含むエポキシエステル樹脂組成物が、感放射線性樹脂組成物である場合には、該組成物には、上記エポキシアクリレート樹脂(B)に加えて(I)光重合開始剤が含有され得、熱硬化性樹脂組成物である場合には(II)ラジカル開始剤が含有され得る。さらにこれらの組成物のいずれにも、(III)上記エポキシエステル樹脂(B)以外の光硬化性または熱硬化性のアクリレート化合物、(IV)添加剤、(V)溶剤、(VI)固体微粒子などが含有され得る。
【0188】
本発明のエポキシエステル樹脂(B)を含む感放射線性樹脂組成物中に含有され得る(I)の光重合開始剤は、上記エポキシエステル樹脂(B)および必要に応じて含有される上記光硬化性のアクリレート化合物の光重合を開始させる効果を有する化合物および/または増感効果を有する化合物である。このような光重合開始剤としては、例えば次の化合物が挙げられる:アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどの有機過酸化物;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物。
【0189】
このような光重合開始剤の配合量は、放射線硬化性不飽和基含有化合物100重量部に対して、0.05〜5.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0重量部である。
上記「放射線硬化性不飽和基含有化合物」とは、上記感放射線性樹脂組成物中に含まれる全ての放射線硬化性不飽和基含有化合物を意味し、本発明のエポキシエステル樹脂(B)で放射線硬化性を有するもの、及び本発明のエポキシエステル樹脂(B)以外の光硬化性または熱硬化性のアクリレート化合物などを含む。
【0190】
これらの化合物は、その1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、それ自体では光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。このような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
【0191】
上記熱硬化性樹脂組成物に含有され得る(II)のラジカル開始剤としては、ケトンパーオキサイド系化合物、ジアシルパーオキサイド系化合物、ハイドロパーオキサイド系化合物、ジアルキルパーオキサイド系化合物、パーオキシケタール系化合物、アルキルパーエステル系化合物、パーカーボネート系化合物、アゾビス系化合物などでなるラジカル開始剤が用いられる。特に、ジアシルパーオキサイド系あるいはアゾビス系のラジカル開始剤が好適であり、例えば過酸化ベンゾイル、α,α’−アゾビス(イソブチロニトリル)などが汎用される。これらの化合物は、その1種を単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0192】
このようなラジカル開始剤の配合量は、放射線硬化性不飽和基含有化合物100重量部に対して、0.05〜10.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5.0重量部である。
【0193】
上記(III)のエポキシエステル樹脂(B)以外の光硬化性または熱硬化性のアクリレート化合物は、組成物が必要とされる物性に応じて、粘度調整剤あるいは光架橋剤として利用され、該化合物は所定の範囲内で組成物中に含有される。このようなアクリレート化合物としては、例えば、次の化合物がある:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する1価のアクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの多価(メタ)アクリレート等。
【0194】
これらの化合物は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。
【0195】
これらの化合物は、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、該縮環構造含有エポキシエステル樹脂100重量部当たり、これらの化合物が50重量部以下の割合で含有される。50重量部を超える場合には、該成分を含む組成物を硬化させたときに割れが起こりやすく、密着性も低下しやすくなる。
ただし、放射線硬化性を有しない該縮環構造含有エポキシエステル樹脂を用いたときはその限りではない。
【0196】
上記(IV)の添加剤としては、該組成物の使用目的に応じて、熱重合禁止剤、密着助剤、消泡剤、界面活性剤、可塑剤などが用いられる。
【0197】
これらのうち熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。これらの化合物は、その1種のみを単独で使用できるほか、2種以上を併用して使用することもできる。このような熱重合禁止剤の配合量は、放射線硬化性不飽和基含有化合物100重量部に対して、5重量部以下の割合で含有され得る。
【0198】
密着助剤は、エポキシエステル樹脂(B)を含む液状の組成物が基材に塗布される場合に、基材との接着性を向上させる目的で添加される。該密着助剤としては、好ましくは、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナト基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン化合物(官能性シランカップリング剤)が用いられる。このような官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0199】
このような密着助剤の配合量は、通常、エポキシエステル樹脂100重量部に対して、5重量部以下の割合で含有され得る。
【0200】
消泡剤としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素系化合物、アクリル系化合物などが挙げられる。
【0201】
界面活性剤は、液状の組成物を塗布しやすくすること、得られる塗膜の平担度を向上させることなどの目的で含有される。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。具体的には例えば、BM−1000[BMへミー社製];メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183[大日本インキ化学工業(株)製];フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430、フロラードFC−431[住友スリーエム(株)製];サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141、サーフロンS−145[旭硝子(株)製];SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57、DC−190[東レシリコーン(株)製]などが挙げられる。
【0202】
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルなどが挙げられる。
【0203】
上記(V)の溶剤としては、例えば、次の溶剤が用いられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジブチルなどのエステル類。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。このような溶剤を添加する場合、その配合量は、組成全体の5〜70重量%が好ましい。
【0204】
上記(VI)の固体微粒子としては、有機顔料や無機微粒子などが挙げられ、例えば光学材料、表示素子材料などの用途に好適に用いるために添加され得るものである。上記有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物や、中心金属がCu、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn等の異種金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。また、上記無機微粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化タンタル、酸化インジウムスズ、酸化ハフニウム硫酸バリウムなどの金属酸化物;または炭酸カルシウム、塩化金、臭化金、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化パラジウム、塩化白金酸、塩化金酸ナトリウム、硝酸銀、白金アセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナートなどの金属塩;金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属類;亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。これら固体微粒子は、いずれも1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら固体微粒子の粒径は、例えば1nm〜5μmである。
また、これら固体微粒子は、本発明の樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量で含有され得る。
【0205】
本発明の感放射線性樹脂組成物を硬化させるのに用いる放射線としては、波長の長いものから順に、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、γ線などが挙げられる。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも波長の短い上記放射線は、化学反応性が高いため理論的には紫外線より優れているが、経済性の観点から紫外線が実用的である。
【0206】
本発明の組成物は、目的に応じた成形体とされる。本発明のエポキシエステル樹脂組成物を硬化させて得られる成形体も本発明の一つである。
この成形体は、組成物自体の硬化物でなる所望の形状の製品、あるいは基材上に形成された該組成物の硬化物でなる塗膜であってもよい。
【0207】
例えば溶媒を含む液状の組成物を基材上に塗布・乾燥し、次いで放射線(例えば光)を照射しあるいは加熱することにより、基材上に硬化膜を形成することができる。あるいは、上記放射線硬化性あるいは熱硬化性の組成物は、必要に応じて加熱溶融し、所定の型に流し込んで加熱しあるいは放射線照射することにより、所望の形状の成形体が得られる。
【0208】
上記本発明の組成物により形成された成形体(塗膜を含む)は、高い硬度を有し、耐熱性に極めて優れ、さらに、高い屈折率を有する。
【0209】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)は、耐熱性、光学特性に優れる。このエポキシエステル樹脂を含有する熱硬化性あるいは感放射線性組成物は、種々の用途に利用される。具体的には、例えば、各種コーティング剤、特に高い硬度と耐熱性とを要求されるコーティング剤として有用である。あるいは、カラーフィルター用レジストインク材料;電子部品の保護膜用材料(例えば、カラーフィルターを包含する液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などに用いられる保護膜の形成材料);層間絶縁および/または平坦化膜の形成材料;プリント配線板の製造に用いられるソルダーレジスト;あるいは、液晶表示素子におけるビーズスペーサーの代替となる柱状スペーサーの形成に好適な感光性組成物として好適に用いられる。さらに、本発明の組成物は、各種光学部品(レンズ、LED、プラスチックフィルム、基板、光ディスクなど)の材料;該光学部品の保護膜形成用のコーティング剤;光学部品用接着剤(光ファイバー用接着剤など);偏光板製造用のコーティング剤;ホログラム記録用感光性樹脂組成物原料などとして好適に利用される。
【0210】
本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)は分散性に優れるので、組成物中に有機顔料や無機微粒子を分散させる場合に好適に用いることができる。この組成物を硬化させて得られる成形体も本発明の一つである。
【0211】
C.縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂は、上記一般式(12)〜(21)等で表される縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と、多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる。
【0212】
上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)」、「アルカリ可溶型樹脂(C)」などと記載される場合がある。
【0213】
また、本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂に含まれ、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂のうち、放射線重合性を有する官能基を有するもの、具体的には分子内に不飽和基を有するものを縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂とする。
【0214】
上記縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂は、本明細書中で、「縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C1)」、「アルカリ可溶型樹脂(C1)」、「縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(C1)」、「アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(C1)」、「放射線重合性不飽和樹脂(C1)」などと記載される場合がある。この縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C1)は、前述の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)に含まれる。
【0215】
上記縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(C1)は、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)において、特に不飽和基を分子内に有するもの、例えば、縮環構造含有エポキシアクリレート樹脂(B4)〜(B6)と多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる。
【0216】
アルカリ可溶型樹脂(C)を調製するのに用いる、上記多塩基性カルボン酸は、ジカルボン酸、テトラカルボン酸などの複数のカルボキシル基を有するカルボン酸であり、このような多塩基性カルボン酸、あるいはその無水物としては、次の化合物が挙げられる:マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、グルタル酸などのジカルボン酸およびそれらの無水物;トリメリット酸またはその無水物;ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸およびそれらの酸二無水物など。
【0217】
上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)の1例としては、例えば、下記一般式(22)で表される樹脂が挙げられる:
【0218】
【化44】

【0219】
ここでZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基、Aはテトラカルボン酸二無水物の残基、Aはジカルボン酸無水物の残基である。また、ここで平均のuは平均で、0から130である。
【0220】
上記一般式(22)において、好ましくは、Zが上記式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、上記式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である。
Zが式(10)(11)の縮環構造を含む二価基である場合、このような縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)は取り扱いが簡便であり、製造コストの点で有利である。
【0221】
なお、上記一般式(22)に示される縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂は、不飽和基を持たないため、放射線重合性を有さない縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の一例と言える。
【0222】
一方、放射線重合性を有する縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂、上記縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(C1)の1例としては、例えば、下記一般式(23)で表される樹脂が挙げられる:
【0223】
【化45】

【0224】
ここでZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基、Aはテトラカルボン酸二無水物の残基、Aはジカルボン酸無水物の残基である。また、ここで平均のuは平均で、0から130である。
【0225】
上記一般式(23)において、好ましくは、Zが上記式(7)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基、より好ましくは、上記式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である。
Zが式(10)(11)の縮環構造を含む二価基である場合、このような縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂(C1)は取り扱いが簡便であり、製造コストの点で有利である。
【0226】
縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)は、上記縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させることにより得られる。また、この反応において、得られる樹脂の耐熱性や耐熱黄変性を向上させるために多価アルコール類を共存させて反応することも出来る。
【0227】
上記多価アルコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,6−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド、プロピレンオキシド付加体等の芳香族ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等の三価以上のアルコール等が挙げられる。
【0228】
この反応において、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)、多価アルコール類、および多塩基性カルボン酸の添加順序は特に問わない。例えば、これらを同時に混合して反応させる方法、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と多価アルコールとを混合し、ついで、多塩基性カルボン酸またはその無水物を添加、混合して反応させるなどの方法がある。また、これらの反応生成物にさらに多塩基性カルボン酸を添加し、反応させてもよい。
【0229】
多塩基性カルボン酸またはその無水物の種類および数を適宜選択することによって、縮環構造骨格を有し、かつ、構造の異なる種々の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C−a)さらには、多価アルコールを反応させた縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C−b)を製造することができる。具体的には、例えば、以下の(C−a−i)〜(C−a−iii)、(C−b−i)〜(C−b−iii)に示す第1〜第6の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)が調製されるが、これらは例示である。
【0230】
(C−a−i)第1の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂:縮環構造含有エポキシエステル樹脂と、1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物とを混合し、反応させて得られる樹脂;(C−a−ii)第2の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂:縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と、2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物(例えば、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物)とを混合し、反応させて得られる樹脂;および、(C−a−iii)第3の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂:縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と、テトラカルボン酸またはその二無水物とを反応させ、得られる反応生成物とジカルボン酸またはその無水物とを反応させて得られる樹脂。
【0231】
(C−b−i)第4の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂:縮環構造含有エポキシエステル樹脂(Bと、多価アルコールと、1種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物とを混合し、反応させて得られる樹脂;(C−b−ii)第5の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂:縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と、多価アルコールと、2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物(例えば、ジカルボン酸無水物およびテトラカルボン酸二無水物の混合物)とを混合し、反応させて得られる樹脂;および、(C−b−iii)第6の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂:縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と、多価アルコールと、テトラカルボン酸またはその二無水物とを反応させ、得られる反応生成物とジカルボン酸またはその無水物とを反応させて得られる樹脂。
【0232】
このようにして得られる、構造が異なる縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C−a)または(C−b)は、それぞれ、目的の用途に応じて利用される。
【0233】
なお、「多塩基性カルボン酸またはその無水物」とは、「特定の多塩基性カルボン酸およびそれに対応する無水物のうちの少なくとも一方」という意味であり、例えば、多塩基性カルボン酸がフタル酸であれば、フタル酸およびフタル酸無水物のうちの少なくとも一方を指していう。
【0234】
また、「2種類またはそれ以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物の混合物」とは、少なくとも2種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物が同時に存在することをいう。従って、上記(C−a−ii)および(C−b−ii)の方法においては、少なくとも2種類の多塩基性カルボン酸またはその無水物が反応に関与する。
【0235】
縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂は、上記いずれの方法においても、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)、多価アルコール、多塩基性カルボン酸またはその無水物を、上記例示の方法(順序)で、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒中に溶解(懸濁)し、加熱して反応させることにより製造される。さらに、必要に応じて触媒を添加することが出来る。用いられる触媒としては、例えばホスホニウム塩類、4級アンモニウム塩類、ホスフィン化合物類、3級アミン化合物類、イミダゾール化合物類が挙げられ、通常、反応物全体の0.01〜10重量%の範囲で用いられることが好ましい。
【0236】
上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の製造において、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と多価アルコールとは、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)の水酸基と多価アルコールの水酸基とのモル比(縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)の水酸基/多価アルコールの水酸基)が、99/1から50/50となるように調整することが好ましく、95/5から60/40であることがより好ましい。多価アルコールの水酸基のモル比が50%を超えると、得られる樹脂の分子量が急激に増大し、ゲル化の恐れがある。また、1%未満では、耐熱性や耐熱変色性を向上させにくい傾向がある。
【0237】
多塩基性カルボン酸またはその無水物は、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と多価アルコールの水酸基の合計1当量(モル)に対して、酸無水物基換算で好ましくは0.3〜1当量、より好ましくは0.4〜1当量の割合で反応に供される。多塩基性カルボン酸またはその無水物が酸無水物基換算で、0.3当量未満では、得られるアルカリ可溶性樹脂の分子量が充分高くならない場合がある。そのため、このようなアルカリ可溶性樹脂を含む感放射線性樹脂組成物を用いて露光および現像を行った場合に、得られる被膜の耐熱性が不充分であったり、被膜が基板上に残存する場合がある。上記多塩基性カルボン酸またはその無水物が酸無水物基換算で1当量を超える場合には、未反応の酸あるいは酸無水物が残存し、得られるアルカリ可溶性樹脂の分子量が低くなり、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物の現像性が劣る場合がある。
【0238】
なお、酸無水物基換算とは、使用する多塩基性カルボン酸またはその無水物に含まれるカルボキシル基および酸無水物基を全て酸無水物に換算したときの量を示す。
【0239】
上記第2、第3および第5、第6の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)の製造に際しては、2種類以上の多塩基性カルボン酸またはその無水物を用いる。一般的に、ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物とが用いられる。ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物との割合(ジカルボン酸無水物/テトラカルボン酸二無水物)は、モル比で1/99〜90/10であることが好ましく、5/95〜80/20であることがより好ましい。ジカルボン酸無水物の割合が全酸無水物の1モル%未満では、樹脂粘度が高くなり、作業性が低下するおそれがある。さらに、得られる樹脂の分子量が大きくなりすぎるため、該樹脂を含む感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に薄膜を形成し、露光を行った場合に、該露光部が現像液に対して溶解しにくくなり、目的のパターンが得られにくくなる傾向にある。ジカルボン酸無水物の割合が全酸無水物の90モル%を超えると、得られる樹脂の分子量が小さくなりすぎるため、該樹脂を含む組成物を用いて基板上に塗膜を形成した際に、プリベーク後の塗膜にスティッキングが残るなどの問題が生じやすくなる。
【0240】
上記いずれの場合にも、縮環構造含有エポキシエステル樹脂(B)と多価アルコールと多塩基性カルボン酸またはその無水物の反応時には、反応温度は50〜130℃が好ましく、より好ましくは70〜120℃である。反応温度が130℃を超えるとカルボキシル基と水酸基の縮合が一部起こり、急激に分子量が増大する。一方、50℃未満では反応がスムーズに進行せず、未反応の多塩基性カルボン酸またはその無水物が残存する。
【0241】
このようにして得られる本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)は、感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物の主成分として好適に用いられる。
【0242】
本発明の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物は、上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂を含む。
通常、この感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物には、該縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)および放射線反応性化合物が含有される。この組成物がポジ型の感放射線性樹脂組成物である場合には、該放射線反応性化合物として、例えばキノンジアジド化合物が用いられ、通常、上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)100重量部に対して、該放射線反応性化合物は、0.5から50重量部含有されることが好ましい。ネガ型の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物である場合には、該放射線反応性化合物として、例えば光重合開始剤やアクリレートなどが用いられ、通常、上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂100重量部に対して、例えば光重合開始剤は、0.1から30重量部含有することが好ましく、更に好ましくは、0.4から10重量部の範囲である。またアクリレートの場合は、上記縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂100重量部に対して通常0.1から50重量部含有されることが好ましい。
本発明の感放射線性樹脂組成物は、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
なお、ネガ型の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物としては、通常、放射線重合性を有する縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂、例えばアルカリ可溶型樹脂(C1)が好適であるが、(C)に含まれる放射線重合性のない縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂も放射線重合性を有する他の化合物を配合することで好適に用いられ得る。
以下にネガ型感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物を例に挙げて、本発明の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物についての説明を行う。
【0243】
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)を含有する感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物は、該縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)、および必要に応じて、(a)光重合開始剤、(b)該縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)以外の重合性のモノマーまたはオリゴマー、(c)エポキシ基を有する化合物、(d)添加剤、(e)溶剤、(f)固体微粒子などを含有する。
【0244】
上記(a)の光重合開始剤とは、光重合開始作用を有する化合物および/または増感効果を有する化合物をいう。このような化合物としては、例えば次の化合物が挙げられる:アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテンなどのイオウ化合物;2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなどのアントラキノン類;アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイドなどの有機過酸化物;および2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールなどのチオール化合物。
【0245】
このような光重合開始剤の配合量は、放射線硬化性不飽和基含有化合物100重量部に対して、0.05〜10.0重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5.0重量部である。
【0246】
上記「放射線硬化性不飽和基含有化合物」とは、上記感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物中に含まれる全ての放射線硬化性不飽和基含有化合物を意味し、本発明のアルカリ可溶型樹脂(C)で放射線硬化性を有するもの、及び本発明のアルカリ可溶型樹脂(C)以外の光硬化性または熱硬化性のアクリレート化合物などを含む。
【0247】
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、それ自体では、光重合開始剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤の能力を増大させ得るような化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第三級アミンを挙げることができる。
【0248】
上記(b)の該縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)以外の重合性のモノマーまたはオリゴマーは、放射線で重合することのできるモノマーやオリゴマーであり、組成物の使用目的に応じた物性にあわせて含有させることができる。このような放射線で重合し得るモノマーあるいはオリゴマーとしては、以下のモノマーあるいはオリゴマーが挙げられる:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類。これらのモノマーあるいはオリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0249】
これらのモノマーあるいはオリゴマーは、粘度調整剤あるいは光架橋剤として作用し、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、上記モノマーおよびオリゴマーの少なくとも1種が、アルカリ可溶型樹脂(C)100重量部に対して50重量部以下の範囲で組成物中に含有される。このモノマーあるいはオリゴマーの含有量が50重量部を超えると、プリベーク後のスティッキング性に問題が出てくる。
【0250】
上記(c)のエポキシ基を有する化合物としては、エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーまたはモノマーが用いられる。エポキシ基を少なくとも1個有するポリマーとしては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂がある。
エポキシ基を少なくとも1個有するモノマーとしては、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0251】
これらのエポキシ基を有する化合物は、本発明の樹脂組成物の性質を損なわない範囲で含有され得る。通常は、該縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)100重量部当たり、エポキシ基を有する化合物が50重量部以下の割合で含有される。50重量部を超える場合には、該成分を含む組成物を硬化させたときに割れが起こりやすく、密着性も低下しやすくなる。
【0252】
上記(d)の添加剤としては、熱重合禁止剤、密着助剤、エポキシ基硬化促進剤、界面活性剤、消泡剤などがあり、これらは本発明の目的が損なわれない範囲の量で組成物中に含有される。
【0253】
上記熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが挙げられる。
【0254】
上記密着助剤は、得られる組成物の接着性を向上させるために含有させる。密着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアナト基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン化合物(官能性シランカップリング剤)が好ましい。この官能性シランカップリング剤の具体例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0255】
上記エポキシ基硬化促進剤としては、アミン化合物類、イミダゾール化合物類、カルボン酸類、フェノール類、第4級アンモニウム塩類またはメチロール基含有化合物類などが挙げられる。エポキシ基硬化促進剤を少量含有させることにより、加熱により得られる硬化膜の耐熱性、耐溶剤性、耐酸性、耐メッキ性、密着性、電気特性、硬度などの諸特性が向上する。
【0256】
上記界面活性剤は、例えば、液状の組成物を基板上に塗布することを容易にするために含有させ、これにより得られる膜の平担度も向上する。界面活性剤としては、例えばBM−1000(BMヘミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173およびメガファックF183(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、フロラードFC−170C、フロラードFC−430およびフロラードFC−431(住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、サーフロンS−113、サーフロンS−131、サーフロンS−141およびサーフロンS−145(旭硝子(株)製)、SH−28PA、SH−190、SH−193、SZ−6032、SF−8428、DC−57およびDC−190(東レシリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0257】
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、アクリル系などの化合物が挙げられる。
【0258】
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有され得る上記(e)の溶剤は、組成物中の各成分を均一に溶解し、例えば基板上への塗工を容易にするために用いられる。このような溶剤としては、組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に制限はない。例えば、次の化合物が挙げられる:メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエチレングリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのジエチレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチル−1−アセテートなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;ならびに2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジブチルなどのエステル類。
【0259】
これらの中でエチレングリコールエーテル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ケトン類およびエステル類が好ましく、特に3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびメチルアミルケトンが好ましい。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
このような溶剤を添加する場合、その配合量は、組成全体の5〜70重量%が好ましい。
【0260】
上記(f)の固体微粒子としては、有機顔料や無機微粒子などが挙げられ、例えば光学材料、表示素子材料などの用途に好適に用いるために添加され得るものである。上記有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物や、中心金属がCu、Mg、Al、Si、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Ge、Sn等の異種金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。また、上記無機微粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化錫、酸化タンタル、酸化インジウムスズ、酸化ハフニウム硫酸バリウム、などの金属酸化物;炭酸カルシウム、塩化金、臭化金、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化パラジウム、塩化白金酸、塩化金酸ナトリウム、硝酸銀、白金アセチルアセトナート、パラジウムアセチルアセトナートなどの金属塩;金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属類;および亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。これら固体微粒子は、いずれも1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これら固体微粒子の粒径は、例えば1nm〜5μmである。
また、これら固体微粒子は、本発明の樹脂組成物の本来の性質を損なわない範囲の量で含有され得る。
【0261】
本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(C)は、アルカリに可溶である。このアルカリ可溶型樹脂を含有する感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物は、所望の形状に成形し、放射線により硬化させて、種々の目的に利用される。特に、該組成物により基板上に薄膜を形成し、放射線照射を行った後、現像することにより所定のパターンを有する薄膜を形成する目的に利用される。
【0262】
例えば、上述のように、基板上に薄膜を形成して、放射線硬化および現像を行う場合には、通常、まず溶媒を含む上記組成物の各成分を混合して液状の組成物を得る。これを例えば、孔径1.0〜0.2μm程度のミリポアフィルターなどでろ過して、均一な液状物とするのがより好適である。次いで、この液状の組成物を、基板上に塗布して塗膜を得る。塗布する方法としては、ディッピング法、スプレー法、ローラーコート法、スリットコート法、バーコート法、スピンコート法などがある。特にスピンコート法が汎用される。これらの方法によって、液状の樹脂組成物を1〜30μm程度の厚さに塗布した後、溶剤を除去すれば薄膜が形成される。通常、溶剤を充分に除去するためプリベーク処理が行われる。通常、プリベークは、70℃から140℃で数分間行われる。
【0263】
この基板の薄膜上に所望のパターンを有するマスクを載置した後、放射線による照射を行う。用いられる放射線としては、波長の長いものから順に、可視光線、紫外線、電子線、X線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。これらの中で、経済性および効率性の点から、実用的には、紫外線が最も好ましい放射線である。本発明に用いる紫外線は、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプなどのランプから発振される紫外光を好適に使用することができる。紫外線よりも、波長の短い放射線は、化学反応性が高く、理論的には紫外線より優れているが、経済性の観点から紫外線が実用的である。
【0264】
上記照射により、露光部分は重合反応により硬化する。未露光部分は現像液で現像される。このことにより、放射線の未照射部分が除去され、所望のパターンを有する薄膜が得られる。現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法などが挙げられる。
【0265】
上記現像液としては、アルカリ性水溶液、該アルカリ性水溶液と水溶性有機溶剤および/または界面活性剤との混合液、本発明の組成物が溶解し得る有機溶剤等が挙げられ、好ましくはアルカリ性水溶液と界面活性剤との混合液である。
【0266】
本発明の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物を現像するのに適したアルカリ性水溶液の調製に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−5−ノナンが挙げられ、好ましくは炭酸ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどが用いられる。
【0267】
このアルカリ性水溶液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、プロパノール、エチレングリコールなどの水溶性有機溶剤、スルホン酸塩、リン酸エステル、ポリオキシアルキレン誘導体などの界面活性剤などが適量添加される。
【0268】
本発明の樹脂組成物の現像は、通常10〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度で、市販の現像機や超音波洗浄機を用いて行うことができる。現像時間は、現像方法、現像液、温度、塗膜の膜厚などによって適宜調整できる。
【0269】
アルカリ現像後、耐アルカリ性を向上させるために、加熱してエポキシ硬化処理を施すことが望ましい(ポストベーク処理)。本発明の樹脂組成物においては、加熱処理を行うことにより、強アルカリ水に対する耐久性が著しく向上するばかりでなく、銅などの金属あるいはガラスに対する密着性、耐熱性、表面硬度などの諸性質も向上する。この加熱硬化条件における加熱温度と加熱時間については、例えば、80〜250℃、10〜120分が挙げられる。好ましい加熱温度は100〜200℃である。このようにして、所望のパターンを有する硬化薄膜を得ることができる。
【0270】
本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜は、耐熱性、透明性、基材との密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐溶剤性、表面硬度などに優れる。さらにこの硬化膜は有機性の塗膜であるため、低誘電率である。そのため、本発明の組成物は例えば、電子部品の保護膜用材料(例えば、カラーフィルターなどの液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子などに用いられる保護膜の形成材料);層間絶縁膜および/または平坦化膜の形成材料;カラーレジスト用バインダー:プリント配線板の製造に用いられるソルダーレジスト;液晶表示素子におけるビーズスペーサーの代替となる柱状スペーサーの形成に好適なアルカリ可溶型の感光性組成物等として好適に用いられる。さらに、本発明の組成物は、各種光学部品(レンズ、LED、プラスチックフィルム、基板、光ディスクなど)の材料;該光学部品の保護膜形成用のコーティング剤;光学部品用接着剤(光ファイバー用接着剤など);偏光板製造用のコーティング剤;ホログラム記録用感光性樹脂組成物などとして好適に利用される。
本発明の感放射線性アルカリ可溶型樹脂組成物を硬化させて得られる成形体も本発明の一つである。
【0271】
また、本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂は分散性に優れるので、組成物中に有機顔料や無機微粒子を分散させる場合に好適に用いることができる。この組成物を硬化させて得られる成形体も本発明の一つである。
【実施例】
【0272】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0273】
実施例1
(縮環構造含有エポキシ樹脂の合成)
以下の式(4.a)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物(上記一般式(4)において、Zが式(7)を含む二価基であり、R15、R16=メチル基、f=2、f=2、m=0、m10=0、r=1、r=1)250gをエピクロロヒドリン800gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.8gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液165gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロロヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロロヒドリンを留去し、メタノールを加え、上記一般式(1)において、Zが式(7)を含む二価基であり、s=0、R、R=メチル基、q、q=2、p、p=0、m、m=0である縮環構造含有エポキシ樹脂(1.a)250gを得た。この樹脂のエポキシ当量は270g/eqであった。
【0274】
【化46】

【0275】
【化47】

【0276】
得られたエポキシ樹脂を分取GPC(装置:日本分析工業株式会社製LC−908)により精製し、得られた精製エポキシ樹脂について構造解析を行った。次にその結果を示す。H−NMRのチャートを図1に示す。
【0277】
〔1〕融点:179.8℃(DSCによる、DSC210型:セイコー電子工業株式会社製)
【0278】
〔2〕H−NMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)
ピーク δ、ppm
a 2.7−2.9 4H
b 3.3 2H
c 3.7−4.0 4H
d 2.2 12H
e 6.5 4H
f,g,h,i 6.9−7.3 8H
【0279】
〔3〕MS m/n=534 M(装置:Waters社製alliance・ZQ4000)
【0280】
実施例2
(縮環構造含有エポキシ樹脂の合成)
実施例1記載の式(4.a)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物100gをエピクロロヒドリン66gと1,4-ジオキサン30gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.7gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、70℃にてフレーク状の水酸化ナトリウム20gを添加し、2時間反応攪拌した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、キシレンを加えて水洗した後、濃縮し、上記一般式(1)において、Zが式(7)を含む二価基であり、R1〜4=メチル基、q1〜4=2、p1〜4=0、m1〜4=0、sは主として0〜3からなる、縮環構造含有エポキシ樹脂(1.b)120gを得た。この樹脂のエポキシ当量は319g/eqであった。
【0281】
【化48】

【0282】
得られたエポキシ樹脂について構造解析を行った。次にその結果を示す。
【0283】
〔1〕GPC s0体=72%、s1体=19%、s2体=4%、s3体≧5%(装置:Waters社製alliance)
【0284】
実施例3
(縮環構造含有エポキシ樹脂の合成)
以下の式(4.c)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物(上記一般式(4)において、Zが式(7)を含む二価基であり、f=0、f=0、m=0、m10=0、r=1、r=1)200gをエピクロロヒドリン800gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.7gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液150gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロロヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロロヒドリンを留去し、メタノールを加え、上記一般式(1)において、Zが式(7)を含む二価基であり、s=0、q、q=0、p、p=0、m、m=0である縮環構造含有エポキシ樹脂(1.c)210gを得た。この樹脂のエポキシ当量は260g/eqであった。
【0285】
【化49】

【0286】
【化50】

【0287】
得られたエポキシ樹脂を分取GPC(装置:日本分析工業株式会社製LC−908)により精製し、得られた精製エポキシ樹脂について構造解析を行った。次にその結果を示す。H−NMRのチャートを図2に示す。
【0288】
〔1〕融点:141℃(DSCによる、DSC210型:セイコー電子工業株式会社製)
【0289】
〔2〕H−NMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)
ピーク δ、ppm
a 2.7−2.9 4H
b 3.3 2H
c 3.9−4.2 4H
d,e 6.7−6.9 8H
f,g,h,i 6.9−7.3 8H
【0290】
〔3〕MS m/n=496(M+NH(装置:Waters社製alliance・ZQ4000)
【0291】
実施例4
(縮環構造含有エポキシ樹脂の合成)
以下の式(4.d)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物(上記一般式(4)において、Zが式(7)を含む二価基であり、f=0、f=0、m=1、m10=1、r=1、r=1、R17〜18は、水素原子である)200gをエピクロロヒドリン800gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.4gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液120gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロロヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロロヒドリンを留去し、上記一般式(1)において、Zが式(7)を含む二価基であり、s=0、q、q=0、p、p=0、m、m=1、R、R10=水素原子である縮環構造含有エポキシ樹脂(1.d)215gを得た。この樹脂のエポキシ当量は350g/eqであった。
【0292】
【化51】

【0293】
【化52】

【0294】
得られたエポキシ樹脂を分取GPC(装置:日本分析工業株式会社製LC−908)により精製し、得られた精製エポキシ樹脂について構造解析を行った。次にその結果を示す。H−NMRのチャートを図3に示す。
【0295】
〔1〕H−NMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)
ピーク δ、ppm
a 2.6−2.8 4H
b 3.2 2H
c,d,e 3.4−4.1 12H
f,g 6.7−6.9 8H
h,i,j,k 6.9−7.3 8H
【0296】
〔2〕MS m/n=584(M+NH(装置:Waters社製alliance・ZQ4000)
【0297】
実施例5
(縮環構造含有エポキシ樹脂の合成)
以下の式(4.e)で示される多官能水酸基含有縮環構造化合物(上記一般式(4)において、Zが式(11)を含む二価基であり、f=0、f=0、m=0、m10=0、r=1、r=1)160gをエピクロロヒドリン800gに溶解し、さらにベンジルトリエチルアンモニウムクロライド1.7gを加え、100℃にて5時間攪拌した。次に、減圧下(150mmHg)、70℃にて40%水酸化ナトリウム水溶液160gを3時間かけて滴下した。その間、生成する水をエピクロロヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロロヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに30分間反応を継続した。その後、濾過により生成した塩を取り除き、さらに水洗した後、エピクロロヒドリンを留去し、上記一般式(1)において、Zが式(11)を含む二価基であり、s=0、q、q=0、p、p=0、m、m=0である縮環構造含有エポキシ樹脂(1.e)180gを得た。この樹脂のエポキシ当量は235g/eqであった。
【0298】
【化53】

【0299】
【化54】

【0300】
得られたエポキシ樹脂を分取GPC(装置:日本分析工業株式会社製LC−908)により精製し、得られた精製エポキシ樹脂について構造解析を行った。次にその結果を示す。H−NMRのチャートを図4に示す。
【0301】
〔1〕H−NMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)
ピーク δ、ppm
a,j,k 2.7−2.9 8H
b 3.3 2H
c 3.9−4.2 4H
d,e 6.7−7.1 8H
f,g,h,i 6.9−7.3 4H
【0302】
〔2〕MS m/n=432(M+NH(装置:Waters社製alliance・ZQ4000)
【0303】
実施例6
(縮環構造含有エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた成形体の調製および評価)
実施例1で得られた、縮環構造含有エポキシ樹脂(1.a)100重量部とメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤(新日本理化(株)製リカシッドMH−700)60重量部との混合物に、触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)1重量部を混合し、得られた混合物を100mm×100mm、厚み1mmのステンレス製金型に入れ、100℃のオーブンで1時間、ついで180℃で4時間加熱し、熱硬化させた。得られた成形体(試験片)を用い、次の項目について評価を行った。
【0304】
[1]耐熱性:
DSC(DSC210型:セイコー電子工業株式会社製)により、Tgの測定を行う。
【0305】
[2]誘電率および誘電正接:
TR1,2100形 誘電体損自動測定装置(安藤電気株式会社製)にて測定する。
【0306】
[3]弾性率:
動的粘弾性測定装置DMS6100(セイコー電子工業株式会社製)を用い、−50〜250℃の温度範囲において、両持ち曲げモードで1Hzの正弦波を与えた場合の応答を測定し、貯蔵弾性率E’を求める。
【0307】
本実施例に用いた組成物の組成を表1に、得られた試験片の評価結果を表2に示す。後述の実施例7〜15および比較例1についても合わせて表1および表2に示す。
【0308】
実施例7
エポキシ樹脂(1.a)100重量部を、エポキシ樹脂(1.a)50重量部およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製EOCN−102S)50重量部の混合物に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を68重量部に変更したこと以外は、実施例6と同様に試験片を調製し、評価を行った。
【0309】
実施例8
エポキシ樹脂(1.a)を実施例2で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.b)に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を51重量部に変更したこと以外は、実施例6と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0310】
実施例9
エポキシ樹脂(1.b)100重量部を、エポキシ樹脂(1.b)50重量部およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製EOCN−102S)50重量部の混合物に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を63重量部に変更したこと以外は、実施例8と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0311】
実施例10
エポキシ樹脂(1.a)を実施例3で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.c)に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を63重量部に変更したこと以外は、実施例6と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0312】
実施例11
エポキシ樹脂(1.c)100重量部を、エポキシ樹脂(1.c)50重量部およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製EOCN−102S)50重量部の混合物に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を69重量部に変更したこと以外は、実施例10と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0313】
実施例12
エポキシ樹脂(1.a)を実施例4で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.d)に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を47重量部に変更したこと以外は、実施例6と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0314】
実施例13
エポキシ樹脂(1.d)100重量部を、エポキシ樹脂(1.d)50重量部およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製EOCN−102S)50重量部の混合物に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を61重量部に変更したこと以外は、実施例12と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0315】
実施例14
エポキシ樹脂(1.a)を実施例5で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.e)に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を70重量部に変更したこと以外は、実施例6と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0316】
実施例15
エポキシ樹脂(1.e)100重量部を、エポキシ樹脂(1.e)50重量部およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製EOCN−102S)50重量部の混合物に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤を73重量部に変更したこと以外は、実施例14と同様の条件で試験片を作製し、評価を行った。
【0317】
比較例1
エポキシ樹脂(1.a)を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)に変更し、かつメチルヘキサハイドロ無水フタル酸型硬化剤(新日本理化(株)製リカシッドMH−700)を86重量部に変更したこと以外は、実施例6と同様に試験片を調製し、評価を行った。
【0318】
【表1】

【0319】
【表2】

【0320】
表1〜2の結果から明らかなように、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂を用いると、高いレベルでの高耐熱性および電気特性を有する成形体が得られることがわかる。
【0321】
実施例16
(縮環構造含有エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた薄膜の調製および評価)
実施例1で得られた、縮環構造含有エポキシ樹脂(1.a)100重量部、触媒として芳香族スルホニウム塩(三新化学工業(株)製サンエイドSI−60)1重量部を溶剤であるシクロヘキサノン中に溶解し、濃度30重量%の溶液とした。次に、得られた混合物をスピンナーを用いてガラス基板およびシリコン基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、膜厚約2μmの塗膜を得た。次いで、240℃のオーブンで1時間ポストベークして熱硬化させた。得られた硬化膜について、次の項目の評価を行った。本実施例に用いた組成物の組成を表3に、そして得られた硬化膜の評価結果を表4に示す。後述の実施例17〜25および比較例2についても合わせて表3および表4に示す。
【0322】
(1)屈折率:
上記得られた硬化膜につき、光干渉式膜質測定機にて632.8nmにおける屈折率を測定する。
【0323】
(2)光線透過率:
上記得られた硬化膜につき、日立製分光光度計U−2000にて可視光領域(400nm)における分光透過率を測定する。
【0324】
(3)密着性
JIS−K−5400に準じ、碁盤目剥離試験により評価する。
【0325】
実施例17
エポキシ樹脂(1.a)100重量部を、エポキシ樹脂(1.a)50重量部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)50重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例16と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0326】
実施例18
エポキシ樹脂(1.a)を実施例2で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.b)に変更したこと以外は、実施例16と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0327】
実施例19
エポキシ樹脂(1.b)100重量部を、エポキシ樹脂(1.b)50重量部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)50重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例18と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0328】
実施例20
エポキシ樹脂(1.a)を実施例3で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.c)に変更したこと以外は、実施例16と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0329】
実施例21
エポキシ樹脂(1.c)100重量部を、エポキシ樹脂(1.c)50重量部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)50重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例20と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0330】
実施例22
エポキシ樹脂(1.a)を実施例4で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.d)に変更したこと以外は、実施例16と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0331】
実施例23
エポキシ樹脂(1.d)100重量部を、エポキシ樹脂(1.d)50重量部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)50重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例22と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0332】
実施例24
エポキシ樹脂(1.a)を実施例5で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.e)に変更したこと以外は、実施例16と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0333】
実施例25
エポキシ樹脂(1.e)100重量部を、エポキシ樹脂(1.e)50重量部およびビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)50重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例24と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0334】
比較例2
エポキシ樹脂(1.a)をビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)に変更したこと以外は、実施例16と同様の条件で硬化膜を作製し、評価を行った。
【0335】
【表3】

【0336】
【表4】

【0337】
表3〜4の結果から明らかなように、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂を用いると、透明性が高く、高いレベルの屈折率を有する硬化薄膜が得られることがわかる。
【0338】
実施例26
(縮環構造含有エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた微粒子分散組成物の調製および評価)
実施例1で得られた、縮環構造含有エポキシ樹脂(1.a)100重量部とフェノールノボラック樹脂型硬化剤(大日本インキ化学工業(株)製フェノライトTD−2131)41重量部を溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に溶解し、濃度30重量%の溶液とした。次に、微粒子酸化チタン(石原産業(株)製TTO−51(A))141重量部を調製した樹脂溶液に添加し、充填率80%の0.3mm径ジルコニアビーズを用いたボールミルにて1時間分散して、酸化チタンの微粒子分散組成物を得た。得られた微粒子分散組成物について、次の項目の評価を行った。本実施例に用いた微粒子分散組成物の組成を表5に、そして得られた評価結果を表6に示す。後述の実施例27〜30および比較例3についても合わせて表5および表6に示す。
【0339】
(1)粒度分布:
粒度分布計Nano−ZS(Malvern社製)にて分散直後および、40℃、2週間保存後の粒度分布を測定する。
メジアン径の小さい方が、より分散性に優れると判断する。
さらに、メジアン径の変化率[|40℃で2週間保存後のメジアン径−分散直後のメジアン径|/(分散直後のメジアン径)]×100を求める。この評価においては値が小さい程、分散安定性が良い。
【0340】
(2)粘度:
レオメーターRS75(Haake社製)パラレルプレートにより、試料温度23℃、せん断速度300s−1の条件で粘度測定を行う。分散直後および、40℃、2週間保存後のデータを得る。
さらに、粘度の変化率[|40℃で2週間保存後の粘度−分散直後の粘度|/(分散直後の粘度)]×100を求め、分散安定性を評価する。
この評価においては値が小さい程、分散安定性が良い。
【0341】
実施例27
エポキシ樹脂(1.a)を実施例2で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.b)に変更したこと、かつフェノールノボラック樹脂型硬化剤を34重量部、および微粒子酸化チタンを134重量部に変更したこと以外は、実施例26と同様の条件で微粒子分散組成物を作製し、評価を行った。
【0342】
実施例28
エポキシ樹脂(1.a)を実施例3で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.c)に変更したこと、かつフェノールノボラック樹脂型硬化剤を42重量部、および微粒子酸化チタンを142重量部に変更したこと以外は、実施例26と同様の条件で微粒子分散組成物を作製し、評価を行った。
【0343】
実施例29
エポキシ樹脂(1.a)を実施例4で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.d)に変更したこと、かつフェノールノボラック樹脂型硬化剤を31重量部、および微粒子酸化チタンを131重量部に変更したこと以外は、実施例26と同様の条件で微粒子分散組成物を作製し、評価を行った。
【0344】
実施例30
エポキシ樹脂(1.a)を実施例5で得られた縮環構造含有エポキシ樹脂(1.e)に変更したこと、かつフェノールノボラック樹脂型硬化剤を47重量部、および微粒子酸化チタンを147重量部に変更したこと以外は、実施例26と同様の条件で微粒子分散組成物を作製し、評価を行った。
【0345】
比較例3
エポキシ樹脂(1.a)をビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成エポキシ社製AER260)に変更したこと、かつフェノールノボラック樹脂型硬化剤を58重量部、および微粒子酸化チタンを158重量部に変更したこと以外は、実施例26と同様の条件で微粒子分散組成物を作製し、評価を行った。
【0346】
【表5】

【0347】
【表6】

【0348】
表5〜6の結果から明らかなように、本発明の縮環構造含有エポキシ樹脂を用いると、分散性および分散の保存安定性に優れる微粒子分散組成物が得られることがわかる。
【0349】
実施例31
(縮環構造含有エポキシエステル樹脂の合成)
300ml四つ口フラスコ中に、実施例1で得られたエポキシ樹脂(1.a)230g(エポキシ当量270g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド600mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール56mg、およびアクリル酸71gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで15時間を要した。上記一般式(12)において、Zが式(7)を含む二価基であり、s=0、R、R=メチル基、q、q=2、p、p=0、m、m=0、R19=エテニル基である、淡黄色透明で固体状の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.a)を得た。
【0350】
【化55】

【0351】
実施例32
(縮環構造含有エポキシエステル樹脂の合成)
300ml四つ口フラスコ中に、実施例2で得られたエポキシ樹脂(1.b)100g(エポキシ当量319g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド260mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール24mg、およびアクリル酸26gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで13時間を要した。上記一般式(12)において、Zが式(7)を含む二価基であり、R1〜4=メチル基、q1〜4=2、p1〜4=0、m1〜4=0、R19=エテニル基、sは主として0〜3からなる、淡黄色透明で固体状の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.b)を得た。
【0352】
【化56】

【0353】
実施例33
(縮環構造含有エポキシエステル樹脂の合成)
300ml四つ口フラスコ中に、実施例3で得られたエポキシ樹脂(1.c)200g(エポキシ当量260g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド510mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール47mg、およびアクリル酸64gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで13時間を要した。上記一般式(12)において、Zが式(7)を含む二価基であり、s=0、q、q=0、p、p=0、m、m=0、R19=エテニル基である、淡黄色透明で固体状の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.c)を得た。
【0354】
【化57】

【0355】
実施例34
(縮環構造含有エポキシエステル樹脂の合成)
300ml四つ口フラスコ中に、実施例4で得られたエポキシ樹脂(1.d)150g(エポキシ当量350g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド300mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール35mg、およびアクリル酸40gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで12時間を要した。上記一般式(12)において、Zが式(7)を含む二価基であり、s=0、q、q=0、p、p=0、m、m=1、R、R10=水素原子、R19=エテニル基である、淡黄色透明で固体状の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.d)を得た。
【0356】
【化58】

【0357】
実施例35
(縮環構造含有エポキシエステル樹脂の合成)
300ml四つ口フラスコ中に、実施例5で得られたエポキシ樹脂(1.e)100g(エポキシ当量235g/eq)、触媒としてトリエチルベンジルアンモニウムクロライド330mg、重合禁止剤として2,6−ジイソブチルフェノール24mg、およびアクリル酸35gを仕込み、これに10mL/分の速度で空気を吹き込みながら90〜100℃で加熱溶解した。次に、これを徐々に120℃まで昇温させた。溶液は透明粘稠となったがそのまま攪拌を継続した。この間、酸価を測定し、1.0mgKOH/g未満になるまで加熱攪拌を続けた。酸価が目標に達するまで12時間を要した。上記一般式(12)において、Zが式(11)を含む二価基であり、s=0、q、q=0、p、p=0、m、m=0、R19=エテニル基である、淡黄色透明で固体状の縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.e)を得た。
【0358】
【化59】

【0359】
実施例36
(縮環構造含有エポキシエステル樹脂を含む光硬化性樹脂組成物を用いた硬化膜の調製および評価)
実施例31で得られた縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.a)を100重量部、そしてイルガキュア907を3重量部、溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に溶解し、濃度30重量%の溶液とした。このエポキシアクリレート樹脂を含む溶液を、スピンナーを用いてガラス基板およびシリコン基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、厚みが約2μmの塗膜を得た。次に、高圧水銀灯(400W)にて300mJ/cmの光を照射し、塗膜を硬化させた。得られた硬化膜について、次の項目の評価を行った。本実施例に用いた組成物の組成を表7に、そして得られた硬化膜の評価結果を表8に示す。後述の実施例37〜45および比較例4についても合わせて表7および表8に示す。
【0360】
(1)屈折率:
上記得られた硬化膜につき、光干渉式膜質測定機にて632.8nmにおける屈折率を測定する。
【0361】
(2)光線透過率:
上記得られた硬化膜につき、日立製分光光度計U−2000にて可視光領域における分光透過率を測定する。
【0362】
(3)耐磨耗性(耐擦傷性)
基材上の硬化膜表面を、#1000のスチールウールで軽く押さえながら、該スチールウールを30往復させて摩擦する。この塗膜表面の傷の程度を次の基準で判断し、耐摩耗性を評価する。
○:傷がつかない
△:傷はつくが光沢は保たれている
×:無数に傷がつき、光沢が失われる
【0363】
(4)密着性
上記得られた硬化膜につき、JIS−K−5400に準じ、碁盤目剥離試験により評価する。
【0364】
(5)耐熱性
上記得られた硬化膜を250℃、3時間オーブンに入れキュアベークを行う。キュアベーク前後における膜厚変化率[(キュアベーク前の膜厚−キュアベーク後の膜厚)/(キュアベーク前の膜厚)]×100を求める。この評価においては値が小さい程、耐熱性が良い。
【0365】
(6)膜収縮率
露光硬化前後における膜厚変化率を算出する。
露光硬化前後における膜厚変化率[(露光前の膜厚−露光後の膜厚)/(露光前の膜厚)]×100を求める。
【0366】
実施例37
実施例36におけるエポキシエステル樹脂(12.a)100重量部をエポキシエステル樹脂(12.a)60重量部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)40重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例36と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0367】
実施例38
実施例36中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.b)に変更したこと以外は、実施例36と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0368】
実施例39
実施例38におけるエポキシエステル樹脂(12.b)100重量部をエポキシエステル樹脂(12.b)60重量部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)40重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例38と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0369】
実施例40
実施例36中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.c)に変更したこと以外は、実施例36と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0370】
実施例41
実施例40におけるエポキシエステル樹脂(12.c)100重量部をエポキシエステル樹脂(12.c)60重量部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)40重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例40と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0371】
実施例42
実施例36中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.d)に変更したこと以外は、実施例36と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0372】
実施例43
実施例42におけるエポキシエステル樹脂(12.d)100重量部をエポキシエステル樹脂(12.d)60重量部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)40重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例42と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0373】
実施例44
実施例36中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.e)に変更したこと以外は、実施例36と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0374】
実施例45
実施例44におけるエポキシエステル樹脂(12.e)100重量部をエポキシエステル樹脂(12.e)60重量部およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)40重量部の混合物に変更したこと以外は、実施例44と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0375】
比較例4
実施例36中のエポキシエステル樹脂(12.a)をビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂に変更したこと以外は、実施例36と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0376】
【表7】

【0377】
【表8】

【0378】
表7〜8の結果から明らかなように、本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂を用いると、透明性が高く、高いレベルでの屈折率、耐熱性を有し、硬化収縮の度合いが少ない硬化薄膜が得られることがわかる。
【0379】
実施例46
(縮環構造含有エポキシエステル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた微粒子分散組成物の調製および評価)
実施例31で得られた縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.a)を100重量部、溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に溶解し、濃度30重量%の溶液とした。次に、微粒子酸化チタン(石原産業(株)製TTO−51(A))100重量部を上記で調製した樹脂溶液に添加し、充填率80%の0.3mm径ジルコニアビーズを用いたボールミルにて1時間分散して、酸化チタンの微粒子分散組成物を得た。得られた微粒子分散組成物について、次の項目の評価を行った。結果を表9、10に示す。後述の実施例47〜50および比較例5の結果についても合わせて表9、10に示す。
【0380】
(1)粒度分布:
粒度分布計Nano−ZS(Malvern社製)にて分散直後および、40℃、2週間保存後の粒度分布を測定する。
メジアン径の小さい方が、より分散性に優れると判断する。
さらに、メジアン径の変化率[|40℃で2週間保存後のメジアン径−分散直後のメジアン径|/(分散直後のメジアン径)]×100を求める。この評価においては値が小さい程、分散安定性が良い。
【0381】
(2)粘度:
レオメーターRS75(Haake社製)パラレルプレートにより、試料温度23℃、せん断速度300s−1の条件で粘度測定を行う。分散直後および、40℃、2週間保存後のデータを得る。
さらに、粘度の変化率[|40℃で2週間保存後の粘度−分散直後の粘度|/(分散直後の粘度)]×100を求め、分散安定性を評価する。
この評価においては値が小さい程、分散安定性が良い。
【0382】
実施例47
実施例46中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.b)に変更したこと以外は、実施例46と同様の条件で微粒子分散組成物を作成し、評価を行った。
【0383】
実施例48
実施例46中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.c)に変更したこと以外は、実施例46と同様の条件で微粒子分散組成物を作成し、評価を行った。
【0384】
実施例49
実施例46中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.d)に変更したこと以外は、実施例46と同様の条件で微粒子分散組成物を作成し、評価を行った。
【0385】
実施例50
実施例46中のエポキシエステル樹脂(12.a)をエポキシエステル樹脂(12.e)に変更したこと以外は、実施例46と同様の条件で微粒子分散組成物を作成し、評価を行った。
【0386】
比較例5
縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.a)をビスフェノールA型エポキシアクリレート樹脂に変更したこと以外は、実施例10と同様の条件で微粒子分散組成物を作成し、評価を行った。
【0387】
【表9】

【0388】
【表10】

【0389】
表9〜10の結果から明らかなように、本発明の縮環構造含有エポキシエステル樹脂を用いると、分散性および分散の保存安定性に優れる微粒子分散組成物が得られることがわかる。
【0390】
実施例51
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の合成)
実施例31で調製した縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.a)85gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)74gを加えて溶解した後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)21gおよび触媒として臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)9.8gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。
このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.a)のPGMEA溶液を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
また、この縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.a)は、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に分類され得る。
【0391】
【化60】

【0392】
ここで平均のtは、8.6である。
【0393】
実施例52
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の合成)
実施例31で調製した縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.a)64gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)56gを加えて溶解した後、ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)14gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)7.3gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。
このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.a’)のPGMEA溶液を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
また、この縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.a’)は、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に分類され得る。
【0394】
【化61】

【0395】
ここで平均のtは、2.7である。
【0396】
実施例53
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の合成)
実施例32で調製した縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.b)100gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)85gを加えて溶解した後、ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)12gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)33gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。
このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.b)のPGMEA溶液を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
また、この縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.b)は、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に分類され得る。
【0397】
【化62】

【0398】
ここでS、Sは、各々独立して0〜3が主である。
また、ここで平均のtは、6.6である。
【0399】
実施例54
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の合成)
実施例33で調製した縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.c)80gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)65gを加えて溶解した後、ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)12gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)9.1gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。
このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.c)のPGMEA溶液を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
また、この縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.c)は、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に分類され得る。
【0400】
【化63】

【0401】
ここで平均のtは、4.4である。
【0402】
実施例55
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の合成)
実施例34で調製した縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.d)80gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)65gを加えて溶解した後、ビフェニルテトラカルボン酸(BPDA)15gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)7.6gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。
このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.d)のPGMEA溶液を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
また、この縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.d)は、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に分類され得る。
【0403】
【化64】

【0404】
ここで平均のtは、2.7である。
【0405】
実施例56
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の合成)
実施例35で調製した縮環構造含有エポキシエステル樹脂(12.e)80gにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)120gを加えて溶解した後、ピロメリット酸二無水物(PMDA)9.6gおよび臭化テトラエチルアンモニウム0.1gを混合し、これを徐々に昇温して110〜115℃で14時間反応させた。ついで、上記反応物にテトラハイドロ無水フタル酸(THPA)12gを添加し、90〜95℃で4時間反応させた。
このようにして、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.e)のPGMEA溶液を得た。酸無水物の消失はIRスペクトルにより確認した。
また、この縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂(23.e)は、縮環構造含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂に分類され得る。
【0406】
【化65】

【0407】
ここで平均のtは、25である。
【0408】
実施例57
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂を含む組成物を用いた薄膜の調製および評価)
実施例51で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.a)を固形分として30重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を20重量部、そしてイルガキュア907を3重量部、溶剤のPGMEA中に溶解し、濃度30重量%の溶液を得た。この溶液を、スピンナーを用いてガラス基板および、シリコン基板上に塗布した後、90℃のホットプレート上で120秒間プリベークして、厚み約2μmの塗膜を形成した。この塗膜を有するガラス基板および、シリコン基板の塗膜表面に所定のパターンを有するマスクを置き、窒素雰囲気下で、250Wの高圧水銀ランプを用いて、波長405nmにて光強度9.5mW/cmの紫外線を1000mJ/cmのエネルギー量となるように照射した。次いで、0.1重量%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて23℃で120秒間の現像処理を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、超純水でリンス処理を行った。得られた薄膜を有する基板を200℃のオーブンに入れ、ポストベーク処理を30分間行い、薄膜を加熱硬化させた(以下、このように硬化した膜を加熱硬化膜と称する)。
【0409】
本実施例における加熱硬化薄膜の調製時における評価、および得られた硬化膜についての評価を、以下に示す項目につき行った。
【0410】
<1> 塗膜の乾燥性
上記プリベーク後の塗膜につき、乾燥性をJIS−K−5400に準じて評価する。評価のランクは次の通りである。
○:全くスティッキングが認められない
△:わずかにスティッキングが認められる
×:顕著にスティッキングが認められる
【0411】
<2> アルカリ水溶液に対する現像性
上記プリベーク後の塗膜を有するガラス基板を露光処理せずに0.1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に120秒間浸漬して現像を行う。
現像前後における膜厚変化率[(現像前の膜厚−現像後の膜厚)/(現像前の膜厚)]×100を求める。この評価においては値が大きい程、現像性が良い。
【0412】
<3> 露光感度
上記マスクとして、ステップタブレット(光学濃度12段差のネガマスク)を上記プリベーク後の塗膜に密着し、露光・現像を行う。その後、残存するステップタブレットの段数を調べる(この評価法では、高感度であるほど残存する段数が多くなる)。
【0413】
<4> 基板との密着性
上記得られた加熱硬化膜を、JIS−K−5400に準じ、碁盤目剥離試験により評価する。
【0414】
<5> 耐熱性
上記得られた加熱硬化膜を250℃、3時間オーブンに入れキュアベークを行う。キュアベーク前後における膜厚変化率[(キュアベーク前の膜厚−キュアベーク後の膜厚)/(キュアベーク前の膜厚)]×100を求める。この評価においては値が小さい程、耐熱性が良い。
【0415】
<6> 屈折率
上記得られた加熱硬化膜につき、光干渉式膜質測定機にて632.8nmにおける屈折率を測定する。
【0416】
<7> 光線透過率
上記得られた加熱硬化膜につき、日立製分光光度計U−2000にて可視光領域における分光透過率を測定する。
【0417】
以上の結果を表11に示す。後述の実施例58〜64および比較例6の結果も合わせて表11に示す。
【0418】
<8> 耐薬品性
上記得られた加熱硬化膜を有する基板を、下記の薬品に下記の条件で浸漬する。
(i)酸性溶液:5重量%HCl水溶液中に室温で24時間浸漬
(ii)アルカリ性溶液
ii−1:5重量%NaOH水溶液中に室温で24時間浸漬
ii−2:4重量%KOH水溶液中に50℃で10分間浸漬
ii−3:1重量%NaOH水溶液中に80℃で5分間浸漬
(iii)溶剤
iii−1:N−メチルピロリドン中に40℃で10分間浸漬
iii−2:N−メチルピロリドン中に80℃で5分間浸漬
浸漬前後における膜厚変化率(%)((浸漬前の膜厚−浸漬後の膜厚)/(浸漬前の膜厚))×100を求める。さらに、比較例6の膜厚変化率を100とし、それを基準とした実施例57〜64の膜厚変化率(実施例の膜厚変化率/比較例の膜厚変化率×100)を求めた。算出された比率より、耐薬品性を評価する。
この評価において、値が100の場合は、比較例6との有意差がなく、値が100より小さい程、耐薬品性の高さが認められる。
【0419】
以上の結果を表12に示す。後述の実施例58〜64および比較例6の結果も合わせて表12に示す。
【0420】
実施例58
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)に変更したこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0421】
実施例59
さらにテトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製 エピコートYx−4000)6重量部を含む組成物を用いたこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0422】
実施例60
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例52で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.a’)に変更したこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0423】
実施例61
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例53で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.b)に変更したこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0424】
実施例62
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例54で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.c)に変更したこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0425】
実施例63
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例55で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.d)に変更したこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0426】
実施例64
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例56で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.e)に変更したこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0427】
比較例6
実施例57において、アルカリ可溶型樹脂(23.a)を下記式に示すビスフェノールA型光重合性不飽和樹脂(23.f)に変更したこと以外は、実施例57と同様の条件で薄膜を作成し、評価を行った。
【0428】
【化66】

【0429】
ここでvは約0.5、平均のwは4.9である。
【0430】
【表11】

【0431】
【表12】

【0432】
表11〜12の結果から明らかなように、本発明の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂を用いると、屈折率と透明性が高く、塗膜乾燥性、耐熱性および耐薬品性に優れた硬化薄膜が得られることがわかる。さらに、露光および現像により基板上に所望のパターンの、上記優れた性質を有する薄膜が精度良く形成されることが明らかである。
【0433】
実施例65
(縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を用いた微粒子分散組成物の調製および評価)
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を固形分として100重量部溶剤のPGMEA中に溶解し、濃度30重量%の溶液を得た。次に、微粒子酸化チタン(石原産業(株)製TTO−51(A))100重量部を上記で調製した樹脂溶液に添加し、充填率80%の0.3mm径ジルコニアビーズを用いたボールミルにて1時間分散して、酸化チタンの微粒子分散組成物を得た。得られた微粒子分散組成物について、次の項目の評価を行った。結果を表13、14に示す。後述の実施例66〜69および比較例7の結果も合わせて表13、14に示す。
【0434】
実施例66
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例53で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.b)に変更したこと以外は、実施例65と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0435】
実施例67
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例54で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.c)に変更したこと以外は、実施例65と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0436】
実施例68
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例55で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.d)に変更したこと以外は、実施例65と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0437】
実施例69
アルカリ可溶型樹脂(23.a)を、実施例56で得られたアルカリ可溶型樹脂(23.e)に変更したこと以外は、実施例65と同様の条件で薄膜を作製し、評価を行った。
【0438】
(1)粒度分布:
粒度分布計Nano−ZS(Malvern社製)にて分散直後および、40℃、2週間保存後の粒度分布を測定する。
メジアン径の小さい方が、より分散性に優れると判断する。
さらに、メジアン径の変化率[|40℃で2週間保存後のメジアン径−分散直後のメジアン径|/(分散直後のメジアン径)]×100を求める。この評価においては値が小さい程、分散安定性が良い。
【0439】
(2)粘度:
レオメーターRS75(Haake社製)パラレルプレートにより、試料温度23℃、せん断速度300s−1の条件で粘度測定を行う。分散直後および、40℃、2週間保存後のデータを得る。
さらに、粘度の変化率[(40℃、2週間保存後の粘度−分散直後の粘度)/(分散直後の粘度)]×100を求め、分散安定性を評価する。
この評価においては値が小さい程、分散安定性が良い。
【0440】
比較例7
アルカリ可溶型樹脂(23.a)をビスフェノールA型光重合性不飽和樹脂(23.f)に変更したこと以外は、実施例17と同様の条件で微粒子分散組成物を作成し、評価を行った。
【0441】
【表13】

【0442】
【表14】

【0443】
表13〜14の結果から明らかなように、本発明のアルカリ可溶型樹脂を用いると、分散性および分散の保存安定性に優れる微粒子分散組成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0444】
本発明によれば、このように、新規な縮環構造含有エポキシ樹脂、縮環構造含有エポキシエステル樹脂、および縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂、並びにそれらの簡便な製造方法が提供される。これらの樹脂は熱または放射線により重合し、硬化することが可能である。これらを含む樹脂組成物は、微粒子の分散性に優れる。また、これらを含む樹脂組成物を用いて得られる硬化成形体あるいは薄膜は、透明性が高く、高いレベルでの耐熱性および電気特性を有し、硬化収縮の度合いが少ない。さらに、本発明のアルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂を用いると、基板上に所望のパターンの、上記優れた性質を有する薄膜が精度良く形成される。従って、本発明の樹脂あるいは樹脂組成物は、各種電子部品(カラーフィルターを包含する液晶表示素子、集積回路素子、固体撮像素子など)の保護膜形成材料;層間絶縁膜の形成材料、カラーレジスト用バインダー組成物;プリント配線板製造の際に用いられるソルダーレジスト;コーティング剤;光学部品材料などとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(17)に示されるエポキシアクリレート樹脂である縮環構造含有エポキシエステル樹脂。
【化1】

ここでY1〜4は、下記一般式(18)若しくは、下記一般式(19)から各々独立して選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【化2】

ここでY5〜6は、各々独立して下記一般式(19)で表される基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【化3】

ここで前記一般式(17)、(18)、(19)のZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、q1〜6は各々独立して0から4の整数であり、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、R7〜14、R20は各々独立して水素原子またはメチル基を示し、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、R20、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【請求項2】
下記一般式(20)に示されるエポキシアクリレート樹脂である請求項1記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂。
【化4】

ここで、Z、R1〜4、q1〜4、R7〜10、m1〜4、R20、sは前記と同じであり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜4、R7〜10、R20は同一でも良いし、異なっていても良い。
【請求項3】
下記一般式(21)に示されるエポキシアクリレート樹脂である請求項1に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂。
【化5】

ここで、Z、R1〜2、q1〜2、R、R10、m、m、R20は前記と同じであり、h1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜2、R、R10、R20は同一でも良いし、異なっていても良い。
【請求項4】
Zが、下記式(7)〜(9)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂。
【化6】

【化7】

【化8】

【請求項5】
Zが、下記式(10)〜(11)からなる群から選ばれる縮環構造を含む二価基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂。
【化9】

【化10】

【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂の製造方法であって、下記一般式(1)に示される縮環構造含有エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを反応させる工程、または、下記一般式(4)の多官能水酸基含有縮環構造化合物と(メタ)アクリル酸グリシジルとを作用させる工程を包含する方法。
【化11】

ここでY1〜4は各々独立して、下記一般式(2)若しくは、下記一般式(3)から選ばれる基であり、p1〜4は各々独立して0から4の整数である。
【化12】

ここでY5〜6は、各々独立して下記一般式(3)で表される基であり、p5〜6は各々独立して0から4の整数である。
【化13】

ここで前記一般式(1)、(2)のZは、六員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つ以上の芳香環との縮環構造、または、五員環の脂環式化合物(環上に炭素以外の原子を含んでもよい)と1つの芳香環との縮環構造を含む二価基であり、R1〜6は各々独立して、炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、q1〜6は各々独立して0から4の整数である。さらに、前記一般式(1)、(2)、(3)のR7〜14は各々独立して水素原子またはメチル基であり、m1〜8、s1〜2は各々独立して0から10の整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR1〜14、Y1〜6は同一でも良いし、異なっていても良い。
【化14】

ここで、Zは前記と同じであり、R15〜16は各々独立して炭素数1から10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基若しくはアルケニル基、炭素数1から5のアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基、又はハロゲン原子であり、f1〜2は各々独立して0から4の整数であり、R17〜18は各々独立して水素原子またはメチル基であり、m9〜10は各々独立して0から10の整数であり、そしてr1〜2は各々独立して1から5までの整数であり、構造式が左右対称であっても、非対称であっても良い。また、複数個のR15〜18は同一でも良いし、異なっていても良い。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂を含む縮環構造含有エポキシエステル樹脂組成物。
【請求項8】
有機顔料及び/または無機微粒子を含む、請求項7に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂組成物を硬化させて得られる成形体。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂に多塩基性カルボン酸またはその無水物を反応させることにより得られる、縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂。
【請求項11】
請求項10に記載の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂の製造方法であって、請求項1〜5のいずれか一項に記載の縮環構造含有エポキシエステル樹脂と多塩基性カルボン酸またはその無水物とを反応させる工程を包含する方法。
【請求項12】
請求項10に記載の縮環構造含有アルカリ可溶型樹脂を含む感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物。
【請求項13】
有機顔料及び/または無機微粒子を含む、請求項12に記載の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の感放射線性アルカリ可溶性樹脂組成物を硬化させて得られる成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64166(P2013−64166A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6683(P2013−6683)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2008−120184(P2008−120184)の分割
【原出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】