説明

繊維フィルタ及びそのM/D設計方法

【目的】動作特性である捕集率と圧力損失が、構造特性である繊維目付と繊維直径に対し特定の相関関係を有することを利用して、繊維フィルタの設計方法を提供し、同時に最適設計された繊維フィルタを提供する。
【構成】本発明に係る繊維フィルタは、レンジフード又は換気扇に装着される繊維フィルタにおいて、前記繊維フィルタの繊維素材量だけから算出される繊維目付をM(g/m)とし、その繊維直径をD(μm)としたとき、ファン運転時における油蒸気の捕集率C(%)及び繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がフィルタ設計範囲において近似的にM/Dの1次関数で表現されることを特徴とする。また、前記捕集率C(%)がC(%)以上であり、前記圧損ΔP(Pa)がΔP(Pa)以下になるように設計される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所、調理場、厨房などに設けられたファン駆動のレンジフード又は換気扇に配置される繊維フィルタに関し、更に詳細には、繊維から形成される繊維フィルタの繊維目付及び繊維直径が適切に設計された繊維フィルタ及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レストランや食堂の厨房、家庭の台所の上方には、ファンによって排気駆動されるレンジフードや換気扇が配置されている。調理用の油脂、魚や肉から油分が蒸発すると、レンジフードや換気扇の表面に大量の油分や塵埃が付着し、その除去作業が必要になる。そのため、レンジフードや換気扇の適所に繊維フィルタが装着され、排気中の油分や塵埃をフィルタで捕集し、前記除去作業の簡便化が図られている。この繊維フィルタは売切商品として販売されており、また装着ホルダと一体に構成されたレンタル商品として広範囲に実用化されている。
【0003】
前記繊維フィルタは、長繊維や短繊維をバインダ剤で相互に結着した不織布を所定形状に裁断した繊維フィルタから構成されことが多い。繊維フィルタは主として油分を捕集するから、高温の油分による変質・燃焼を防止するために、ガラス繊維から形成されることが多く、また他の無機繊維や有機繊維から形成される場合もある。更に、捕集された油剤やフィルタ繊維の燃焼を防止するために、表面に難燃剤を担持させる技術も開発されている。
【0004】
各種の繊維フィルタが開発されているが、その典型的な従来技術として、特許第2981533号(特許文献1)と特開2002−136814(特許文献2)を列挙して、その内容と課題を説明する。
【0005】
前記特許文献1には、平均繊径が0.5〜6.0μm、嵩密度0.05〜0.50g/cmの極細不織布(中間層)と、この極細不織布の片面又は両面に平均繊径10〜60μm、嵩密度0.05〜0.50g/cmの繊維シート(表面層)を積層し、高さ3〜100mmの凹凸形状に成形された成形フィルタが開示されている。この成形フィルタは、2層構造又は3層構造を有し、表面層がフィルタ全体の保形機能を奏し、表面層及び中間層により効率的に油分捕集機能を奏する。
【0006】
前記特許文献2には、2層の表面層間に中間層を介在させた積層構造のフィルタ素子が開示され、繊維重量とバインダ剤等の担持物質重量を含めた目付が150g/m以下であり、前記中間層の密度が前記表面層の密度よりも小さく設定されたフィルタ素子が示されている。更に、詳細には、各表面層は、密度0.01〜0.1g/cm、厚さ0.1〜3mm、フィルタ素子の全重量に対する重量割合20〜40重量%、繊維にたいするバインダ付着率25〜45重量%の特徴を有する。また、中間層は、密度0.001〜0.01g/cm、厚さ5〜50mm、フィルタ素子の全重量に対する重量割合20〜60重量%、繊維に対するバインダ付着率20〜40重量%の特徴を有している。このフィルタ素子は、3層構造を有し、硬性の表面層がフィルタ全体の保形機能を奏し、硬性の表面層及び軟性の中間層の両者が効率的な油分捕集機能を奏する特徴を有する。
【特許文献1】特許第2981533号公報
【特許文献2】特開2002−136814公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1には、中間層の平均繊径を0.5〜6.0μmに設け、表面層の平均繊径を10〜60μmに設計することが開示されている。また、ジグザグの折畳構造にすると、圧力損失が1.5mmHOになり、除塵率が98%になることが記載されているが、それ以上の詳細な記述は全く無い。つまり、平均繊径や圧力損失の数値結果が記載されているだけで、平均繊径や圧力損失をどのように設計するかについては全く記載されておらず、平均繊径と圧力損失の相関関係については示唆さえされていない。換言すれば、場当たり的にフィルタ構造を決めているだけで、フィルタ自体の設計理論や設計思想は全く見られない。前記平均繊径は本発明の繊維直径に相当する概念であることを付記しておく。
【0008】
前記特許文献2には、繊維重量とバインダ剤等の担持物質重量を含めた全体目付が150g/m以下であることが主張されている。また、[0018]には、フィルタ素子全体の目付が150g/m以上では圧力損失が大きくなり好ましくないと記載され、特にガラス繊維の場合には、目付が150g/m以下では、圧力損失を確実に10Pa以下に保持できることが開示されている。確かに、全体目付の臨界値150g/mと圧力損失の臨界値10Paは記載されているが、全体目付と圧力損失との相関関係については全く記載されていない。しかも全体目付と繊維直径(平均繊径)との関係については示唆さえされていないのである。
【0009】
以上から分かるように、繊維フィルタの構造特性である目付と繊維直径をどのように設計するかという思想は、両文献には全く記載されていない。しかも、繊維フィルタの動作特性として、捕集率と圧力損失は極めて重要な物性量であるにも拘わらず、これらの動作特性と前記構造特性をどのように関連付けるかという思想に到っては両文献に示唆さえされていない。動作特性と構造特性の相関関係が不明な状態では、繊維フィルタの設計方針は存在しないに等しい。この設計方針の無存在状態は、前記2文献に限らず、繊維フィルタ関連の文献が有する困難な現状を示している。前記相関関係に対する究明が無い限り、繊維フィルタの合理的設計における根本的解決は有り得ないのである。また、前記特許文献2の目付は、繊維目付(繊維重量)とバインダ剤等の担持物質重量を含めた全体目付であり、繊維目付とバインダ剤重量との関係が不明な状態下で、全体目付だけによる主張は原理的に不十分としか言いようが無い。
【0010】
従って、本発明の第1目的は、動作特性である捕集率と圧力損失が、構造特性である繊維目付と繊維直径に対しどのような相関関係を有するかを理論的に決定し、この理論的相関関係の下でフィルタの繊維目付と繊維直径を原理的に設計する方法を提案することである。また、本発明の第2目的は、前記方法により最適設計された繊維フィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、本発明の第1の形態は、レンジフード又は換気扇に装着される繊維フィルタにおいて、前記繊維フィルタの繊維素材量だけから算出される繊維目付をM(g/m)とし、その繊維直径をD(μm)としたとき、ファン運転時における油蒸気の捕集率C(%)及び繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がフィルタ設計範囲において近似的にM/Dの1次関数で表現される繊維フィルタである。
【0012】
本発明の第2の形態は、第1形態において、ファン運転時に油蒸気の捕集率C(%)がC(%)以上であり、繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がΔP(Pa)以下であり、前記C(%)及び前記ΔP(Pa)を適宜設定してフィルタ設計する繊維フィルタである。
【0013】
本発明の第3の形態は、第2形態において、Dが一定で近似的にC=aM+b、ΔP=cM+eと表現されるとき、a>0且つc>0であり、C≧C(%)からMの下限値Mminが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からMの上限値Mmaxが導出され、Mmin≦M≦Mmaxの範囲から繊維フィルタの繊維目付Mが設計される繊維フィルタである。
【0014】
本発明の第4の形態は、第2又は第3形態において、Mが一定で近似的にC=q/D+u、ΔP=s/D+tと表現されるとき、q>0且つs>0であり、C≧C(%)によりDの上限値Dmaxが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からDの下限値Dminが導出され、Dmin≦D≦Dmaxの範囲から繊維フィルタの繊維直径Dが設計される繊維フィルタである。
【0015】
本発明の第5の形態は、第2〜第4形態のいずれかにおいて、C(%)が70(%)に設定され、ΔP(Pa)が10(Pa)に設定される繊維フィルタである。
【0016】
本発明の第6の形態は、第5形態において、Mが80.5(g/m)≦M≦198.2(g/m)の範囲にあり、Dが14.3(μm)≦D≦68.6(μm)の範囲にある繊維フィルタである。
【0017】
本発明の第7の形態は、第1〜第6形態のいずれかにおいて、前記繊維フィルタが1層構造である繊維フィルタである。
【0018】
本発明の第8の形態は、第1〜第6形態のいずれかにおいて、前記繊維フィルタが、密度の異なる2層を接合した2層構造、又は密度の大きな2層の表面層間に密度の小さな中間層を介在させた3層構造を有する繊維フィルタである。
【0019】
本発明の第9の形態は、レンジフード又は換気扇に装着される繊維フィルタにおいて、前記繊維フィルタの繊維素材量だけから算出される繊維目付をM(g/m)とし、その繊維直径をD(μm)としたとき、ファン運転時における油蒸気の捕集率C(%)及び繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がフィルタ設計範囲において近似的にM/Dの1次関数で表現されることを仮定して、前記繊維目付M(g/m)及び前記繊維直径をD(μm)を設計する繊維フィルタのM/D設計方法である。
【0020】
本発明の第10の形態は、第9形態において、ファン運転時に油蒸気の捕集率C(%)がC(%)以上であり、繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がΔP(Pa)以下であり、前記C(%)及び前記ΔP(Pa)を適宜設定して、繊維目付M及び繊維直径Dを設計する繊維フィルタのM/D設計方法である。
【0021】
本発明の第11の形態は、第10形態において、1次関数がD一定の場合に近似的にC=aM+b、ΔP=cM+eと表現されるとき、a>0且つc>0であり、C≧C(%)からMの下限値Mminが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からMの上限値Mmaxが導出され、Mmin≦M≦Mmaxの範囲から繊維フィルタの繊維目付Mを設計する繊維フィルタのM/D設計方法である。
【0022】
本発明の第12の形態は、第10又は11形態において、1次関数がM一定の場合に近似的にC=q/D+u、ΔP=s/D+tと表現されるとき、q>0且つs>0であり、C≧C(%)によりDの上限値Dmaxが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からDの下限値Dminが導出され、Dmin≦D≦Dmaxの範囲から繊維フィルタの繊維直径Dが設計される繊維フィルタのM/D設計方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1の形態によれば、ファン運転時における油蒸気の捕集率C(%)及び繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)が、フィルタ設計範囲において、近似的に繊維目付M(g/m)と繊維直径D(μm)からなるM/Dの1次関数で表現される繊維フィルタが提供される。本発明では、油蒸気の捕集率C(%)とは、油蒸気をフィルタに通過させたとき、流通油蒸気質量に対するフィルタ捕集された油蒸気質量の百分率を意味する。圧損ΔP(Pa)とは、ファン駆動時に生起するフィルタ前後の圧力差を意味する。また、繊維目付M(g/m)とは、フィルタを形成する繊維分だけの目付(平面密度)を意味し、バインダ剤や難燃剤などの担持物質質量は含まれない。更に、繊維直径D(μm)とは、平均繊維直径を意味し、繊維直径の異なる複数種の繊維が混在する場合には、その平均繊維直径に相当する。また、フィルタ設計範囲とは、フィルタとして通常に使用される設計量の範囲を意味し、例えば繊維目付M、繊維直径D、繊維種などの数値的・物性的範囲である。また、本発明で使用される繊維はガラス繊維・セラミック繊維・複合繊維・天然繊維・合成繊維・有機繊維・無機繊維などから自在に選択され、特に繊維フィルタとして耐熱性繊維であれば好適である。
本発明者等は、フィルタの動作特性(C、ΔP)が構造特性(M、D)と直接的に関係しているはずであると判断し、その分析の中でMとDはM/Dと一体的に組み合わされ、M/Dを変数とするとの着想を得るに至った。その理由は以下のようである。質量Mが同一でも繊維直径Dが小さくなると、繊維表面積は大きくなるから、CやΔPは増加するはずである。また逆に、繊維直径Dが同一でも質量Mが大きくなると、繊維表面積は大きくなるから、CやΔPは増加するはずである。従って、CやΔPはM/Dを変数とし、その一般関係式として、C=f(M/D)、ΔP=f(M/D)を定立した。茲で、fは一般関数を意味し、その関数関係を最も単純な線形関係(直線関係)に帰着させることにより、本発明を完成するに到ったものである。しかも、本発明者等は前記関数関係を理論的に導出し、CやΔPがM/Dの1次関数になることを理論的に裏付け、この推論の正当性を確信するに至った。この理論を検証するため、動作特性である捕集率C又は圧損ΔPが、構造特性である繊維目付Mと繊維直径Dの組合せ変数M/Dと、近似的に直線関係にあることを仮定して実験したところ、その近似的直線関係を実験データから確認したものである。しかも、この近似的直線関係の発見は、構造特性であるMとDを指定すれば、前記直線関係を用いて、直ちに動作特性であるCとΔPが導出できる。逆に、動作特性であるCとΔPを指定すれば、直ちにM/Dを算出でき、構造特性M、Dを導出することが可能になる。関数関係が直線関係であるから、前記逆算が極めて単純化される特徴がある。このように、本発明では、フィルタの動作特性(C、ΔP)と構造組合特性M/Dとの間に近似的直線関係が成立していることを利用して、(C、ΔP)から(M、D)の導出、及び(M、D)から(C、ΔP)の導出が極めて簡単になる効果が発現する。
【0024】
本発明の第2の形態によれば、繊維フィルタが有すべき油蒸気の捕集率C(%)をC(%)以上に設計し、同時に繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)をΔP(Pa)以下に設計することによって、繊維フィルタの構造特性を最適値に設計できる繊維フィルタが提供される。繊維フィルタの特性として、捕集率Cは所定以上の能力が必要であり、同時に圧損ΔPも所定以下であることが要請される。繊維フィルタを高性能化するには、臨界値Cをより大きく設計し、ΔPをより小さく設計することが重要になる。前述したように、第1形態では、動作特性(C、ΔP)から構造特性(M、D)を導出できるから、本形態によりCとΔPの臨界値C及びΔPを与えることによってMとDの臨界値M及びDを導出でき、繊維フィルタの構造特性を最適設計することが可能になる。
【0025】
本発明の第3の形態によれば、繊維フィルタの繊維目付Mを具体的に設計する処理手段が提供される。即ち、Dが一定で、前記1次関数を近似的にC=aM+b、ΔP=cM+eと表現したとき、a>0且つc>0であるから、CとΔPはMに関して増加関数になる。従って、C≧Cの条件によりMの下限値Mminが導出され、ΔP≦ΔPの条件によりMの上限値Mmaxが導出される。従って、C及びΔPを与えることにより、Mmin≦M≦Mmaxの範囲が自動的に導出され、この範囲から適切に繊維フィルタの繊維目付Mを設計することが可能になる。C大きくすればMminが大きくなり、ΔPを小さくすればMmaxが小さくなり、Mmin≦M≦Mmaxの範囲が自動的に狭くなる。その結果、繊維目付Mを具体的に特定することができるようになった。このような設計手段は、従来全く存在しなかったものであり、科学的に設計された繊維フィルタを提供することが可能になる。
【0026】
本発明の第4の形態によれば、繊維フィルタの繊維直径Dを具体的に設計する処理手段が提供される。即ち、Mが一定で前記1次関数を近似的にC=q/D+u、ΔP=s/D+tと表現したとき、q>0且つs>0であるから、CとΔPはDに関して減少関数になる。従って、C≧Cの条件によりDの上限値Dmaxが導出され、ΔP≦ΔPの条件によりDの下限値Dminが導出される。従って、C及びΔPを与えることにより、Dmin≦D≦Dmaxの範囲が自動的に導出され、この範囲から適切に繊維フィルタの繊維直径Dを設計することが可能になる。C大きくすればDmaxが小さくなり、ΔPを小さくすればDminが大きくなり、Dmin≦D≦Dmaxの範囲が自動的に狭くなる。その結果、繊維直径Dを具体的に特定することが可能になった。このような設計手段は、従来全く存在しなかったものであり、科学的且つ合理的に設計された繊維フィルタを提供することが可能になる。
【0027】
本発明の第5の形態によれば、C(%)を70(%)に設定し、ΔP(Pa)を10(Pa)に設定した繊維フィルタが提供される。本発明者等は、繊維フィルタの実動作条件の経験から、油蒸気の捕集率Cは70(%)以上であることが好ましく、フィルタ前後の圧損ΔPは10(Pa)以下であることが望ましいことを理解している。従って、C=70(%)、ΔP=10(Pa)と設定して、この条件を満足するように具体的な繊維目付M(g/m)、繊維直径D(μm)を導出し、合理的且つ効率的な繊維フィルタを提供できるようになった。
【0028】
本発明の第6の形態によれば、繊維目付Mが80.5(g/m)≦M≦198.2(g/m)の範囲にあり、繊維直径Dが14.3(μm)≦D≦68.6(μm)の範囲にある繊維フィルタが提供される。これらの範囲は、本発明者等が多数回の実験から導出した、C=0.0984M+62.077、ΔP=0.0376M+2.5483とC=240/D+66.5、ΔP=73.3/D+4.9の近似的関係群を、C=70(%)、ΔP=10(Pa)と組み合わせて得られたものである。具体的に言えば、80.5(g/m)≦M≦198.2(g/m)の範囲は、C=0.0984M+62.077≧70及びΔP=0.0376M+2.5483≦10から導出された。また、14.3(μm)≦D≦68.6(μm)の範囲は、C=240/D+66.5≧70及びΔP=73.3/D+4.9≦10から導出された。勿論、上記関係式が変化すると、MとDの範囲は変化する。設計を高精度に実行するには、Cを更に大きく設定し、ΔPを更に小さく設定すれば、MとDの範囲幅は一層に狭くなり、MとDの決定の任意性を一層小さくすることが可能になる。
【0029】
本発明の第7の形態によれば、前述した第1〜6形態のいずれかにおいて、繊維フィルタが1層構造である繊維フィルタが提供される。1層構造の繊維フィルタとは、繊維密度ρ(g/m)が全体を通して一定のフィルタを意味し、フィルタの厚み方向に均一に油蒸気を捕集できるフィルタが実現される。
【0030】
本発明の第8の形態によれば、前述した第1〜6形態のいずれかにおいて、繊維フィルタが、繊維密度ρ(g/m)の異なる2層を接合した2層構造、又は繊維密度ρ(g/m)の大きな2層の表面層間に前記繊維密度の小さな中間層を介在させた3層構造を有する繊維フィルタが提供される。2層構造フィルタでは、2層の繊維直径が同一の場合、又は2層の繊維直径が異なる場合が含まれ、本発明の繊維直径は2層の繊維直径の平均繊維直径を意味する。また、3層構造フィルタでは、表面層2層と中間層の繊維直径が同一の場合、又はそれらの繊維直径が異なる場合が含まれ、本発明の繊維直径は3層の繊維直径の平均繊維直径を意味するものである。このような複合フィルタでも、本発明の設計構造により、フィルタ全体の繊維目付Mと平均繊維直径Dを設計することが可能になり、合理的に設計された繊維フィルタが提供される。また、この複合フィルタでは、繊維密度の大きな表面層では油粒子を捕集し易く、小繊維密度の比較的厚い層では油粒子を冷却して液化させ、後方の高密度層で油粒子を効果的に捕集させることが可能になる。
【0031】
本発明の第9の形態によれば、第1形態により定義される繊維フィルタのM/D設計方法が提供される。第1形態は前述した特定条件を有するに関するのに対し、第9形態は繊維フィルタを上記特定条件により設計する繊維フィルタの設計方法を与える。従って、その作用と効果は、第1形態と実質的に同様であるから、その詳細を省略する。
【0032】
本発明の第10形態によれば、第2形態により定義される繊維フィルタのM/D設計方法の設計方法が提供される。第2形態は第1形態を更に限定した前記特定条件を有する繊維フィルタに関する。これに対し、第10形態は繊維フィルタを上記限定的特定条件により設計する繊維フィルタの設計方法を与えている。従って、その作用と効果は、第2形態と実質的に同様であるから、その詳細を省略する。
【0033】
本発明の第11形態によれば、第3形態により定義される繊維フィルタのM/D設計方法が提供される。第3形態は第2形態を更に限定した前記特定条件を有する繊維フィルタに関する。これに対し、第11形態は繊維フィルタを上記更なる限定的特定条件により設計する繊維フィルタの設計方法を与える。従って、その作用と効果は、第3形態と実質的に同様になるから、その詳細を省略する。
【0034】
本発明の第12形態によれば、第4形態により定義される繊維フィルタのM/D設計方法が提供される。第4形態は第2形態又は第3形態を更に多重限定した前記特定条件を有する繊維フィルタに関する。これに対し、第12形態は繊維フィルタを上記更なる多重限定的特定条件により設計する繊維フィルタの設計方法を与える。従って、その作用と効果は、第2形態又は第3形態と実質的に同様になるから、その詳細を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
[C又はΔPのM及びDに対する関数関係の理論的導出]
図1は繊維フィルタの構成図である。繊維フィルタ2は、繊維4から形成された繊維フィルタで、繊維間をバインダ剤で結合させたり、繊維表面に難燃剤を担持させて構成されている。前記繊維フィルタ2は織物、編物、不織布などからなる布帛であり、特に不織布が好適である。繊維のみからなる繊維フィルタの質量密度を繊維目付M(g/m)と呼び、バインダ剤や難燃剤などの担持物質質量を含めた質量密度を全体目付又は目付と云い、本発明では以下で繊維目付M(g/m)を使用する。
【0036】
図2は繊維フィルタの運転動作状態図である。繊維フィルタ2はファン6の前方に配置され、レンジから放出される油分を含んだ空気は吸気7として前記ファン6の駆動により矢印方向に吸引され、排気9として矢印方向に大気中へと放出される。
【0037】
図3は繊維フィルタを形成する繊維の形状図である。図3では、繊維フィルタ2を形成する全ての繊維4が接続されて直線状に一本で表現されている。繊維半径r、繊維直径D(茲でD=2r)、繊維長Lとすると、繊維円断面積はπr、繊維円周は2πr、繊維断面積AはA=2rL、繊維円断面積を無視すると繊維表面積SはS=2πrLで表される。
【0038】
繊維材料の質量密度をRで表すと、繊維目付MはM=πrLRとなり、繊維目付Mが与えられたとき、繊維長LはL=M/(πrR)と表現され、このLを用いて、前期繊維表面積Sと前記繊維断面積Aは次のようになる。
S=2πrL=2M/(rR)=4M/(DR) (1)
A=2rL=2M/(πrR)=4M/(πDR) (2)
【0039】
吸気中の油分の捕集率Cは、油分が繊維の外周表面に付着捕集されるから、繊維表面積Sに比例するはずであり、比例定数n及び比例定数k(=4n)を用いて以下のように与えられる。
C=nS=n{4M/(DR)}=kM/(DR) (3)
従って、不定な切片を考慮すると、Cは理論的にM/Dの1次関数で表現されることが証明された。
【0040】
繊維フィルタの前後に発生する圧損ΔPは、直感的にフィルタを構成する繊維による遮蔽断面積、即ち前記繊維断面積Aに比例すると考えられる。つまり、比例係数をNとすると、ΔP=NAとなるが、この仮定式は後述の理論により証明される。従って、圧損ΔPは、比例定数N及び比例定数K(=4N/π)を用いて以下のように書き表される。
ΔP=NA=N{4M/(πDR)}=KM/(DR) (4)
従って、不定な切片を考慮すると、ΔPも理論的にM/Dの1次関数で表現されることが証明された。
【0041】
繊維直径Dと繊維密度Rが与えられる場合には、式(3)と(4)から、以下のように、CとΔPは繊維目付Mの1次関数になることが分かる。
C=aM+b (a、b:定数) (5)
ΔP=cM+e (c、e:定数) (6)
同様に、繊維目付Mと繊維密度R与えられる場合には、式(3)と(4)から、以下のように、CとΔPは繊維直径Dの双曲線関数になることが分かる。

C=q/D+u (q、u:定数) (7)
ΔP=s/D+t (s、t:定数) (8)
切片b、e、u、tは単純な前記理論式に切片だけの任意性を付加したものである。
【0042】
前述したΔP=NAを以下に証明しておく。この証明により、上記式群(4)〜(8)の正当性が裏付けられる。図4は圧損の理論式を導出する模式図である。Sは繊維フィルタのフィルタ面積、Aは前述した繊維断面積、S(=S−A)はフィルタの開口面積、Pは吸気圧力、Pは排気圧力、vは吸気速度、vは排気速度である。
【0043】
フィルタの前後では、連続の法則により、S=Sが成立する。この連続則から以下の式が導出される。
v1=S/S=(S−A)v/S
=(1−A/S)v (9)
【0044】
他方、空気密度をYとすると、ベルヌーイの法則から、フィルタの前後で次式が成立する。
+1/2Yv=P+1/2Yv (10)
>Pであるから、圧損ΔPはP−Pで与えられる。式(10)と組み合わせると以下の式が得られる。
ΔP=P−P=(1/2)Y(v−v) (11)
【0045】
式(11)に式(9)を代入すると、次式になる。
ΔP=(1/2)Yv{1−(1−A/S} (12)
A<<Sが成立するから、(1−A/Sは1−2A/Sとなる。従って、式(12)は次式で与えられる。
ΔP=YvA/S (13)
Yv/S=N(定数)とすると、最終的に次式が成立し、目的式が証明された。
ΔP=NA (14)
【0046】
[実施形態1:C=aM+bの導出とMminの決定]
39.3μmの繊維直径を有したガラス繊維を用いて3種の繊維目付M(g/m)を有した1層構造の平面状不織繊維フィルタを作製した。この繊維フィルタは、1辺30cm及び厚さ8mmの矩形フィルタで、前記繊維目付M(g/m)は86、117、139の3種類であり、繊維同士を結合させるバインダ剤を夫々36、45、57(g/m)だけ塗着して繊維フィルタを構成した。バインダ剤塗着後の繊維フィルタの全体目付(g/m)は122、162、196になる。
【0047】
前記3種の繊維フィルタの夫々をファンの前面にある矩形枠に装着した。50gの植物油をフライパンに注入し、このフライパンをレンジ上で加熱して油蒸気を生成した。前記ファンを駆動して、油蒸気を繊維フィルタに通過させ、フライパン上の植物油が無くなるまで繊維フィルタに油蒸気を捕集させた。この捕集実験を前記3種の繊維フィルタの夫々に対して行った。
【0048】
油蒸気捕集後の繊維フィルタの重量を測定し、捕集前の繊維フィルタの重量を差し引いて、捕集された油蒸気重量を導出した。この捕集された油蒸気重量を油全重量50gと比較して、油蒸気の捕集率C(%)を算出した。その結果、繊維目付M(g/m2)が86、117、139に対して、捕集率C(%)は70.5、73.7、75.7になることが分かった。以上の実験から、捕集率C(%)と繊維目付M(g/m)の座標点として、(M、C)=(86、70.5)、(117、73.7)、(139、75.7)の3点が得られた。
【0049】
図5は、縦軸を捕集率C(%)、横軸を繊維目付M(g/m)とした捕集率・繊維目付グラフである。前記3点の座標をプロットすると、ほぼ直線に乗ることが分かった。最小二乗法により回帰直線を決定すると、C=0.0984M+62.077が得られた。本発明者等の経験から、油蒸気の捕集率Cの臨界値Cは70%であることが要請されるから、上記直線式からM=80.5(g/m)が導出される。しかも、CはMに関して増加関数であるから、C≧Cの条件からM≧Mとなり、MはMの下限値Mminとなり、C=70ではM≧Mmin=80.5(g/m)が得られる。
【0050】
繊維フィルタの高効率化のためにCを70%より増大化すると、Mminの数値も増加する。従って、M≧Mminの条件から、繊維目付M(g/m2)の特定化が容易になる。この効果は、CがMに対して増加関数であることに依存している。
【0051】
[実施形態2:ΔP=cM+eの導出とMmaxの決定]
実施形態1により作製した3種の繊維フィルタに関し、油蒸気の捕集動作における圧損ΔP(Pa)を測定した。その結果、繊維目付M(g/m)が86、117、139の順に、圧損ΔP(Pa)は5.8、6.9、7.8になることが分かった。以上の測定から、圧損ΔP(Pa)と繊維目付M(g/m)の座標点として、(M、ΔP)=(86、5.8)、(117、6.9)、(139、7.8)の3点が得られた。
【0052】
図6は、縦軸を圧損ΔP(Pa)、横軸を繊維目付M(g/m)とした圧損・繊維目付グラフである。前記3点の座標をプロットすると、図1と同様に、ほぼ1次直線であることが分かった。最小二乗法による回帰直線は、ΔP=0.0376M+2.5483となる。油蒸気が効率的にフィルタを貫通して流通するために、圧損ΔPの臨界値ΔPは10Paであることが望ましいから、上記直線式からM=198.2(g/m)が導出される。しかも、ΔPはMに関して増加関数であるから、ΔP≦ΔPの条件からM≦Mとなり、MはMの上限値Mmaxとなり、ΔP=10(Pa)ではM≦Mmax=198.2(g/m)が得られる。
【0053】
繊維フィルタの高効率化のためにΔPを10Paより減少させると、Mmaxの数値も減少する。従って、M≦Mmaxの条件から、繊維目付M(g/m2)の特定化が容易になる。この効果は、ΔPがMに対して増加関数であることに依存している。
【0054】
実施形態1及び2から、捕集率Cと圧損ΔPが繊維目付Mの近似的増加直線であることが実験的に検証され、その結果、C≧CとΔP≦ΔPの条件から、Mmin≦M≦Mmaxが導出されることが分かった。一例として、C=0.0984M+62.077及びΔP=0.0376M+2.5483に対し、C≧70(%)とΔP≦10(Pa)の条件を適用すると、80.5≦M(g/m)≦198.2の範囲が導出できる。このMの範囲を更に絞り込むためには、臨界値Cを大きくし、臨界値ΔPを小さくすればよい。例えば、C=75(%)にすると、Mmin=131.3(g/m)となり、ΔP=8(Pa)にすると、Mmax=145.0(g/m)が得られる。従って、Mの範囲は131.3≦M(g/m)≦145.0となり、範囲縮小が可能になる。このように、具体的な直線式に対し、CとΔPを可変に設定することにより、構造特性の一つである繊維目付Mの設計が可能になり、任意性を小さくしたMの設計が容易になることが証明された。
【0055】
[実施形態3:C=q/D+uの導出とDmaxの決定]
160(g/m)の繊維目付を有した繊維フィルタを3種の繊維直径D(μm)を有したガラス繊維により夫々形成して、3種類の1層構造式平面状不織繊維フィルタを作製した。この繊維フィルタは、1辺30cm及び厚さ8mmの矩形フィルタで、前記繊維直径D(μm)は20、30、40の3種類である。繊維同士を結合させるバインダ剤は夫々適量だけ塗着され、3種の繊維フィルタが構成された。
【0056】
前記繊維直径Dが異なる3種の繊維フィルタの夫々が矩形枠に装着され、ファンの前面に配置された。50gの植物油が注入されたフライパンをレンジ上で加熱して油蒸気を生成した。前記ファンの駆動により、油蒸気を繊維フィルタに通過させ、植物油が全て蒸発するまで繊維フィルタに油蒸気を捕集させた。この捕集実験は前記3種の繊維フィルタの夫々に対して行なわれた。
【0057】
油蒸気捕集後の繊維フィルタの重量を測定し、捕集前の繊維フィルタの重量を差し引いて、捕集された油蒸気重量を導出した。この捕集された油蒸気重量を油全重量50gと比較して、油蒸気の捕集率C(%)を算出した。その結果、繊維直径D(μm)が20、30、40に対して、捕集率C(%)は78.3、74.1、72.3になることが分かった。以上の実験から、捕集率C(%)と繊維直径D(μm)の座標点として、(D、C)=(20、78.3)、(30、74.1)、(40、72.3)の3点が得られた。
【0058】
図7は、縦軸を捕集率C(%)、横軸を繊維直径D(μm)とした捕集率・繊維直径グラフである。前記3点の座標をプロットすると、ほぼ直線に乗ることが分かった。最小二乗法により回帰双曲線を決定すると、C=240/D+66.5が得られた。前述したように、油蒸気の捕集率Cの臨界値Cは70%であることが要請されるから、上記曲線式からD=68.6(μm)が導出される。しかも、CはDに関して減少関数であるから、C≧Cの条件からD≦Dとなり、DはDの上限値Dmaxとなり、C=70ではD≦Dmax=68.6(μm)が得られる。
【0059】
繊維フィルタの高効率化のためにCを70%より増大化すると、Dmaxの数値は減少する。従って、D≦Dmaxの条件から、繊維直径D(μm)の特定化が容易になる。この効果は、CがDに対して減少関数であることに依存している。
【0060】
[実施形態4:ΔP=s/D+tの導出とDminの決定]
実施形態3により作製した3種の繊維フィルタに関し、油蒸気の捕集動作における圧損ΔP(Pa)を測定した。その結果、繊維直径D(μm)が20、30、40の順に、圧損ΔP(Pa)は8.7、7.3、6.8になることが分かった。以上の測定から、圧損ΔP(Pa)と繊維直径D(μm)の座標点として、(D、ΔP)=(20、8.7)、(30、7.3)、(40、6.8)の3点が得られた。
【0061】
図8は、縦軸を圧損ΔP(Pa)、横軸を繊維直径D(μm)とした圧損・繊維直径グラフである。前記3点の座標をプロットすると、図7と同様に、ほぼ双曲線であることが分かった。最小二乗法による回帰双曲線は、ΔP=73.3/D+4.9となる。油蒸気が効率的にフィルタを貫通して流通するために、圧損ΔPの臨界値ΔPは10Paであることが望ましいから、上記双曲線からD=14.3(μm)が導出される。しかも、ΔPはDに関して減少関数であるから、ΔP≦ΔPの条件からD≧Dとなり、DはDの下限値Dminとなり、ΔP=10(Pa)ではD≧Dmin=14.3(μm)が得られる。
【0062】
繊維フィルタの高効率化のためにΔPを10Paより減少させると、Dminの数値は増加する。従って、D≧Dminの条件から、繊維直径D(μm)の特定化が容易になる。この効果は、ΔPがDに対して減少関数であることに依存している。
【0063】
実施形態3及び4から、捕集率Cと圧損ΔPが繊維直径Dの近似的減少双曲線であることが実験的に検証され、その結果、C≧CとΔP≦ΔPの条件から、Dmin≦D≦Dmaxが導出されることが分かった。一例として、C=240/D+66.5及びΔP=73.3/D+4.9に対し、C≧70(%)とΔP≦10(Pa)の条件を適用すると、14.3≦D(μm)≦68.6の範囲が導出できる。このDの範囲を更に絞り込むためには、臨界値Cを大きくし、臨界値ΔPを小さくすればよい。例えば、C=74(%)にすると、Dmax=32.0(μm)となり、ΔP=8(Pa)にすると、Dmin=23.6(μm)が得られる。従って、Dの範囲は23.6≦D(μm)≦32.0となり、範囲縮小が可能になる。このように、具体的な関数式に対し、CとΔPを可変に設定することにより、構造特性の一つである繊維直径Dの設計が可能になり、任意性を小さくしたDの設計が容易になることが証明された。
【0064】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明では、フィルタの動作特性(捕集率C、圧損ΔP)と構造特性(繊維目付Mと繊維直径Dの組合変数M/D)との間に近似的直線関係が成立していることを利用して、(C、ΔP)から(M、D)の導出、及び(M、D)から(C、ΔP)の導出が極めて簡単になる効果がある。従って、業務用及び家庭用の繊維フィルタの設計が極めて容易になり、科学工学的設計手法を初めて系統的に導入した繊維フィルタを社会及び家庭に提供することができる。また、油蒸気の捕集率C(%)をC(%)以上に設計し、同時に繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)をΔP(Pa)以下に設計することによって、繊維フィルタの構造特性を最適設計でき、繊維フィルタ業界だけでなく、レンジフードや換気扇から油汚れを排除して設備浄化作業の労力低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】繊維フィルタの構成図である。
【図2】繊維フィルタの運転動作状態図である。
【図3】繊維フィルタを形成する繊維の形状図である。
【図4】圧損の理論式を導出する模式図である。
【図5】縦軸を捕集率C(%)、横軸を繊維目付M(g/m)とした本発明の捕集率・繊維目付グラフである。
【図6】縦軸を圧損ΔP(Pa)、横軸を繊維目付M(g/m)とした本発明の圧損・繊維目付グラフである。
【図7】縦軸を捕集率C(%)、横軸を繊維直径D(μm)とした本発明の捕集率・繊維直径グラフである。
【図8】縦軸を圧損ΔP(Pa)、横軸を繊維直径D(μm)とした本発明の圧損・繊維直径グラフである。
【符号の説明】
【0067】
2 繊維フィルタ
4 繊維
6 ファン
7 吸気
9 排気
A 繊維断面積
D 繊維直径
L 繊維長
吸気圧力
排気圧力
r 繊維半径
フィルタ面積
フィルタ開口面積
吸気速度
排気速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンジフード又は換気扇に装着される繊維フィルタにおいて、前記繊維フィルタの繊維素材量だけから算出される繊維目付をM(g/m)とし、その繊維直径をD(μm)としたとき、ファン運転時における油蒸気の捕集率C(%)及び繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がフィルタ設計範囲において近似的にM/Dの1次関数で表現されることを特徴とする繊維フィルタ。
【請求項2】
ファン運転時に油蒸気の前記捕集率C(%)がC(%)以上であり、前記繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がΔP(Pa)以下であり、前記C(%)及び前記ΔP(Pa)を適宜設定してフィルタ設計する請求項1に記載の繊維フィルタ。
【請求項3】
Dが一定で近似的にC=aM+b、ΔP=cM+eと表現されるとき、a>0且つc>0であり、C≧C(%)からMの下限値Mminが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からMの上限値Mmaxが導出され、Mmin≦M≦Mmaxの範囲から繊維フィルタの繊維目付Mが設計される請求項2に記載の繊維フィルタ。
【請求項4】
Mが一定で近似的にC=q/D+u、ΔP=s/D+tと表現されるとき、q>0且つs>0であり、C≧C(%)によりDの上限値Dmaxが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からDの下限値Dminが導出され、Dmin≦D≦Dmaxの範囲から繊維フィルタの繊維直径Dが設計される請求項2又は3に記載の繊維フィルタ。
【請求項5】
前記C(%)が70(%)に設定され、前記ΔP(Pa)が10(Pa)に設定される請求項2〜4のいずれかに記載の繊維フィルタ。
【請求項6】
前記Mが80.5(g/m)≦M≦198.2(g/m)の範囲にあり、前記Dが14.3(μm)≦D≦68.6(μm)の範囲にある請求項5に記載の繊維フィルタ。
【請求項7】
前記繊維フィルタが1層構造である請求項1〜6のいずれかに記載の繊維フィルタ。
【請求項8】
前記繊維フィルタが、密度の異なる2層を接合した2層構造、又は密度の大きな2層の表面層間に密度の小さな中間層を介在させた3層構造を有する請求項1〜6のいずれかに記載の繊維フィルタ。
【請求項9】
レンジフード又は換気扇に装着される繊維フィルタにおいて、前記繊維フィルタの繊維素材量だけから算出される繊維目付をM(g/m)とし、その繊維直径をD(μm)としたとき、ファン運転時における油蒸気の捕集率C(%)及び繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がフィルタ設計範囲において近似的にM/Dの1次関数で表現されることを仮定して、前記繊維目付M(g/m)及び前記繊維直径をD(μm)を設計することを特徴とする繊維フィルタのM/D設計方法。
【請求項10】
ファン運転時に油蒸気の前記捕集率C(%)がC(%)以上であり、前記繊維フィルタ前後の圧損ΔP(Pa)がΔP(Pa)以下であり、前記C(%)及び前記ΔP(Pa)を適宜設定して、前記繊維目付M及び前記繊維直径Dを設計する請求項9に記載の繊維フィルタのM/D設計方法。
【請求項11】
前記1次関数がD一定の場合に近似的にC=aM+b、ΔP=cM+eと表現されるとき、a>0且つc>0であり、C≧C(%)からMの下限値Mminが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からMの上限値Mmaxが導出され、Mmin≦M≦Mmaxの範囲から繊維フィルタの繊維目付Mを設計する請求項10に記載の繊維フィルタのM/D設計方法。
【請求項12】
前記1次関数がM一定の場合に近似的にC=q/D+u、ΔP=s/D+tと表現されるとき、q>0且つs>0であり、C≧C(%)によりDの上限値Dmaxが導出され、ΔP≦ΔP(Pa)からDの下限値Dminが導出され、Dmin≦D≦Dmaxの範囲から繊維フィルタの繊維直径Dが設計される請求項10又は11に記載の繊維フィルタのM/D設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−260635(P2007−260635A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92564(P2006−92564)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】