説明

繊維処理剤組成物

【課題】複合粒子の繊維への付着性及び機能性物質の複合粒子への残存性が向上した複合粒子を含有する繊維処理剤組成物の提供。
【解決手段】複合粒子を含有する繊維処理剤組成物であって、前記複合粒子は、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子と機能性物質とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料等への香りや防虫効果の付与のため、香料や防虫剤などの機能性物質を含む繊維処理剤の開発が進んでいる。例えば、特許文献1には、シリカやゼオライトY等の多孔性無機粒子に香料を吸収させた複合粒子、及びその複合粒子と繊維柔軟剤を含む繊維柔軟剤組成物が開示されている。しかしながら、ゼオライトYは細孔径が0.7nmであり、それよりも小さい分子サイズの香料しか担持できない。また、シリカゲルやフュームドシリカは、約10nmの一次粒子が凝集した構造を持ち、その一次粒子間の空隙に由来する数nm〜数10nmの細孔を有するが、その細孔に香料を担持したとしても、一般的に、その細孔径分布にばらつきがあるため、香料の放出制御が困難である。
【0003】
一方、多孔性無機粒子として、数nmの均一な細孔径の細孔(メソ細孔)を持つメソポーラスシリカ粒子が注目されている(非特許文献1)。例えば、特許文献2には、片面に1層以上の樹脂層を有している繊維構造物において、該樹脂層中に、機能性薬剤を担持している平均粒径0.01〜5μmのメソポーラスシリカを含有している機能性繊維構造物が開示されている。特に、粒子の外殻部にメソ細孔構造を持ち、外殻部の内部(以下、「中空部」ともいう。)に空洞を持つメソポーラスシリカ粒子(以下、「中空メソポーラスシリカ粒子」ともいう。)は、該中空部に機能性化合物を多量に担持でき、また、粒子の構造を制御することによりその中空部に保持された機能性化合物の粒子外への放出速度を制御できる。それゆえ、中空メソポーラスシリカ粒子は、高性能な徐放担体として期待されている。例えば、特許文献3には、中空メソポーラスシリカ粒子を徐放担体に用い、その中空部に香料を担持させるにより香料徐放性の優れた複合シリカ粒子が得られることが開示されている。しかし、繊維への賦香や機能付与を目的とした繊維処理剤や柔軟剤等へ配合する賦香や機能成分としての応用を考えた場合、その製品形態を水溶液とすることが一般的であり、保持させた機能性物質が水中へ溶出または流出しやすく、又、シリカ表面の水酸基により粒子表面が親水的であること、更に、表面電荷が負に帯電していることから繊維へ付着しにくいという問題点があり、使用が困難である。
【0004】
また、特許文献4には、有機シランで表面処理しメソ細孔の細孔径を縮小させた中空メソポーラスシリカ粒子を用いて複合シリカ粒子を製造することにより、水への香料流出を抑制できることが開示されている。他の表面処理技術として、特許文献5には、メソポーラスシリカの表面水酸基を表面処理剤で処理することにより、表面水酸基を疎水性の官能基と化学反結合させ、表面を疎水化することで、有機溶剤への分散性を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−209188号公報
【特許文献2】特開2003−82580号公報
【特許文献3】特開2009−155400号公報
【特許文献4】特開2009−203116号公報
【特許文献5】特開2009−190909号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】C.T.Kresge, et.al., Nature, 359, 710 (1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような表面処理技術を繊維処理剤に用いて、繊維への付着性や機能性物質の複合粒子への残存性を向上させる技術はない。また、上記2つの特許文献4及び5において、表面状態がどの程度になるまで処理すればどのような効果が得られるかについて、特に、繊維処理剤の水中への分散性、繊維への付着性、香料の徐放性等との間に明確な基準は不明である。
【0008】
そこで、本発明は、機能性物質の複合粒子への残存性及び繊維への付着性が向上した複合粒子を含有する繊維処理剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複合粒子を含有する繊維処理剤組成物であって、前記複合粒子は、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子と機能性物質とを含む繊維処理剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立が可能な複合粒子を含有する繊維処理剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、メソポーラスシリカ粒子の表面を表面処理剤で修飾することにより、繊維への付着性を向上し、機能性物質の溶出または流出を抑制した複合粒子を含有する繊維処理剤が得られるという知見に基づく。より具体的には、適切なぬれ張力を示すように有機シランで表面処理した後、該メソポーラスシリカ粒子に機能性物質を担持させることにより、複合粒子からの機能性物質の溶出又は流出を抑制でき、さらに、繊維への付着性が向上するという知見に基づく。
【0012】
すなわち、本発明は、複合粒子を含有する繊維処理剤組成物であって、前記複合粒子は、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子と機能性物質とを含む繊維処理剤組成物(以下、「本発明の繊維処理剤組成物」ともいう)に関する。本発明の繊維処理剤組成物によれば、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立が可能となり、繊維への機能付与の効率及び該機能の持続性を向上できる。
【0013】
複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立が可能となる詳細なメカニズムは不明であるが、以下のように推定される。本願で用いる機能性物質は、その発現する効果や放出性から、特定の範囲の疎水性を有しており、メソポーラスシリカ粒子の表面のぬれ張力が所定の値よりも低下した特定の範囲であるとき、該シリカ粒子と保持される機能性物質との親和性が高くなり、水中等では該機能性物質が溶出又は流出しにくくなり、空気中への放出も長期にわたって徐々に進行するようになるものと考えられる。また、繊維処理剤の機能性付与成分としての応用を考える場合、特定の範囲の疎水性を有する表面ぬれ張力が低い該シリカ粒子は、その処理過程で水中に存在するよりも、繊維表面へ付着しやすくなるものと考えられる。但し、本発明はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0014】
[複合粒子]
本発明の繊維処理剤組成物は、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子と機能性物質とを含む複合粒子(以下、「本発明における複合粒子」ともいう)を含有する組成物である。本発明の繊維処理剤組成物は、一態様において、溶媒(例えば、後述する繊維処理剤ベース液)に本発明における複合粒子が分散又は懸濁した液体組成物であってもよい。また、本発明の繊維処理剤組成物は、その他の態様において、溶媒(例えば、後述する繊維処理剤ベース液)に分散又は懸濁する前の本発明における複合粒子そのものであってもよい。
【0015】
[表面ぬれ張力]
本明細書において、表面ぬれ張力とは、ぬれの度合いを示す指標をいう。本明細書において、メソポーラスシリカ粒子の表面ぬれ張力とは、JIS K 6768 に定められている標準液をぬれ張力試験用混合液として各種調製し、ぬれ張力試験用混合液の高い値のものから液表面にメソポーラスシリカが浮遊する液に順に添加し、メソポーラスシリカ粒子が液表面からはじめて沈降したときのぬれ張力試験用混合液の値の表面張力をいい、具体的には、実施例に記載の方法で測定されるものをいう。
【0016】
[表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子]
本明細書において、本発明における複合粒子の構成要素の1つは、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子である。表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子は、表面を修飾していないメソポーラスシリカ粒子(「メソポーラスシリカ粒子原料」ともいう)を表面処理して得られる。
【0017】
表面ぬれ張力が50mN/mを示す状態とは、表面が疎水性である繊維へ複合粒子を付着させるために最低限必要である表面状態を保持していることである。すなわち、表面ぬれ張力が50mN/mより低くなると、メソポーラスシリカ粒子表面が疎水的になるため、繊維処理剤等としての使用場面、例えばすすぎ等の工程で用いる場合に、水中から、繊維表面へ複合粒子を効率よく付着させることができる。さらに、表面ぬれ張力が50mN/mより低い場合には、機能性物質の複合粒子からの溶出または流出を防ぐために最低限必要な、メソポーラスシリカ粒子と保持される機能性物質との親和性が高くなり、製品形態や、短時間の処理中の水中への溶出が抑制され、機能性物質の複合粒子への残存性が向上し、繊維処理後に機能性物質を徐放することができるようになる。複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子の表面ぬれ張力は、50mN/m以下であり、好ましくは、20〜50mN/m、より好ましくは20〜45mN/m、更に好ましくは20〜40mN/m、特に好ましくは22.6〜40mN/mである。
【0018】
[平均一次粒子径]
表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子の平均一次粒子径は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.02〜10μm、さらに好ましくは0.05〜5μm、特に好ましくは0.1〜1μmである。本明細書において、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子の平均一次粒子径は、TEMを用いて得られる数平均粒子径であって、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、揃った粒子径の粒子群から構成されていることが好ましい。具体的には、表面ぬれ張力が50mN/m以下であるかつ平均一次粒子径が20μm以下メソポーラスシリカ粒子は、同様の観点から、好ましくは一次粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していることが好ましい。
【0019】
[メソポーラスシリカ粒子原料]
本明細書において、表面を修飾していないメソポーラスシリカ粒子(メソポーラスシリカ粒子原料)としては、ヘキサゴナル配列のメソポーラス(メソ細孔)構造を有する粒子が挙げられる。具体的には、メソポーラスシリカ粒子原料は、粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さない粒子が挙げられる。粉末X線回折(XRD)測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示すことは、このシリカ粒子がメソ領域に周期性のある物質であることを意味する。また、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さないことは、ゼオライトなどの結晶性化合物と異なるものであることを意味する。本発明におけるメソポーラスシリカ粒子原料を構成するメソポーラスシリカとしては、中空メソポーラスシリカ及び中実メソポーラスシリカが挙げられ、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、中空メソポーラスシリカが好ましい。
【0020】
メソポーラスシリカ粒子原料は、その主成分がシリカで構成され、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらにより好ましくは95モル%以上が二酸化ケイ素であると換算される。メソポーラスシリカ粒子原料は、Al、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、B、Mn、Fe等の他元素を担持した形態、又はシリカの一部が他元素で置換された形態であってもよい。これら元素を導入する場合はそれらの金属を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等の金属原料を製造時又は製造後に添加すればよい。
【0021】
本明細書において、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子は、メソポーラスシリカ粒子原料の粒子表面に、カチオン性有機基、及び/又は、炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子であることが好ましい。これらの粒子表面にカチオン性有機基及び/又は炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子は、例えば、カチオン性有機基を有するアルコキシシラン、炭素数2以上のアルキル基を有するアルコキシシラン、又はカチオン性有機基及び炭素数2以上のアルキル基を有するアルコキシシランでメソポーラスシリカ粒子を処理して製造できる。
【0022】
[カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子]
カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子は、表面負電荷である繊維表面に効率的に付着し、高性能を発現させるという観点から、その表面電荷が正電荷であることが好ましい。カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子の水分散液のpH=7におけるゼータ電位(25℃)が0〜50mVが好ましく、10〜40mVがより好ましい。
【0023】
前記カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子のカチオン性有機基としては、特に制限はないが、性能発現、汎用性等の観点から、窒素(N)原子を含有するカチオン性有機基が好ましく、アミノ基、置換アミノ基を持つカチオン性有機基がより好ましい。
【0024】
アミノ基、置換アミノ基の具体例としては、H2N(CH23−、H2NCH2−、H2N(CH22−、H2N(CH24−、H2N(CH22NH(CH23−、H2N(CH22NHCH2−、H2N(CH22NHCH2CH(Me)CH2−、H2N(CH22NH(CH22NH(CH23−、H2N(CH26NH(CH23−、MeHN(CH23−、EtHN(CH23−、Me2N(CH23−、Et2N(CH23−、Me2NCH2−、Et2NCH2−、MeHNCH2−、EtHNCH2−、H2C=CHCH2NH(CH23−、H2N(CH22S(CH23−、H2N(C64)−、H2N(CH23OC(Me)2C=C−、Ph−NH(CH23−、HOCH2CH2N(Me)(CH23−、C54N−CH2CH2−、Me3+(CH23−、C1837(Me)2+(CH23−等が挙げられる。これらの中では、性能発現、汎用性等の観点から、H2N(CH23−、H2N(CH22NH(CH23−、H2N(CH22NH(CH22NH(CH23−、Me3+(CH23−、C1837(Me)2+(CH23−が好ましく、H2N(CH22NH(CH23−、H2N(CH22NH(CH22NH(CH23−、C1837(Me)2+(CH23−がより好ましい。これらのカチオン性有機基は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子が、窒素原子を含むカチオン性有機基を含有する場合、該カチオン性有機基の量は、性能発現、コスト等の観点から、N/Si原子比で好ましくは0.02〜0.4、より好ましくは0.03〜0.3、さらに好ましくは0.15〜0.25である。また、カチオン性有機基を含有するメソポーラスシリカ粒子中のカチオン性有機基の量は、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子中のカチオン性有機基は、核磁気共鳴測定を用いたケイ素原子(29Si−NMR)や炭素原子(13C−NMR)の測定、赤外分光分析、元素分析、熱重量分析等により同定、定量することができる。
【0026】
[炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子]
炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子における該非イオン性有機基は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、少なくとも該粒子表面に存在し、さらに、メソ細孔内に存在してもよい。また、炭素数2以上の非イオン性有機基としては、例えば、メソポーラスシリカ粒子に非イオン性を付与できる基であって、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、炭素数2以上の疎水性有機基が好ましい。該疎水性有機基としては、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、ハロゲン又はチオール基で置換されてもよい炭素数2〜30の炭化水素基が好ましく、ハロゲン又はチオール基で置換されてもよい炭素数2〜30のアルキル基若しくはアルケニル基又はアリール基がより好ましく、ハロゲン又はチオール基で置換されてもよいアルキル基がさらに好ましく、炭素数2〜30のアルキル基がさらにより好ましい。本発明の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子において、非イオン性有機基は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
非イオン性有機基の炭素数は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、2以上であって、4以上が好ましく、6以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、炭素数は30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0028】
炭素数2以上の非イオン性有機基の具体例としては、CH3CH2−、ClCH2CH2−、CH2=CH−、CF3CH2CH2−、CH3CH2CH2−、CH2=CHCH2−、(CH32CH−、BrCH2CH2CH2−、ClCH2CH2CH2−、CF3CH2CH2CH2−、SHCH2CH2CH2−、(CH2=CH)2−、CH3CH2CH2CH2−、(CH32CHCH2−、(C252−、CH3CH2CH2CH2CH2−、CF3(CF23CH2CH2−、Ph−、(CH2=CHCH22−、C521−、C611−、C613−、C817−、C1021−、C1225−、C1429−、C1633−、C1837−、(C253−、CH3Ph−、(C373−、OCNCH2CH2CH2−、(C372−、CH2=CHPh−、(Ph)2−、(C6132−、(C492−、(C493−、(Ph)3−、BrC1123−、CH3OCO(CH210−、CH3OCOCH2CH2−、ClCH2CH(CH3)CH2−、C815−、C59−、(C252−、(C8172−、C2245−、ICH2CH2CH2−、OCNCH2CH2CH2−、CH3C(CH32CH2CH(CH3)CH2−、HS(CH211−、CH3OCH2CH2CH2−、CH3O(CH2CH2O)3(CH23−等が挙げられる。複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、CH3CH2CH2CH2−、C521−、C613−、C817−、C1021−、C1225−、C1429−、C1633−、C1837−、CF3CH2CH2CH2−、SHCH2CH2CH2−が好ましく、C1021−、C1225−、C1429−、C1633−、C1837−がより好ましい。
【0029】
炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子において、非イオン性有機基の量は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、C/Si原子比で、好ましくは0.15〜1.20であり、より好ましくは0.2〜1.10、さらに好ましくは0.25〜1.00である。また、本発明における非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子中の非イオン性有機基の量は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜20質量%がさらに好ましい。また、炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラススシリカ粒子は、SiO2質量換算で、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは70〜90質量%のシリカを含有することが好ましい。なお、これらの物性は、核磁気共鳴測定を用いたケイ素原子(29Si−NMR)や炭素原子(13C−NMR)の測定、赤外分光分析、元素分析、熱重量分析等により同定、定量することができ、具体的には下記実施例で示した方法で測定できる。
【0030】
なお、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子は、カチオン性有機基及び炭素数2以上の非イオン性有機基を有するアルコキシシランでメソポーラスシリカ粒子を処理して製造されたものであってもよい。
【0031】
[平均細孔径]
本明細書において、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子のメソ細孔構造の平均細孔径は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、1〜10nmが好ましく、1〜5nmがより好ましく、1〜2nmがさらに好ましく、1〜1.5nmがさらにより好ましい。メソ細孔の平均細孔径は、窒素吸着測定を行い、窒素吸着等温線からBJH法により求めることができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。また、メソポーラスシリカ粒子は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、メソ細孔径が揃っていることが好ましく、メソ細孔の好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上が平均細孔径±30%以内に入る。なお、メソ細孔構造を有する外殻部の構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することができ、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。また、TEM観察により、その細孔径、細孔規則性、及び、中空メソポーラスシリカ粒子の場合には外殻部から内部への細孔の繋がり具合を確認することができる。
【0032】
表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子の細孔径の調整は、例えば、所望する細孔径に近い細孔径を有するメソポーラスシリカ粒子原料を用いることで行える。カチオン性又は非イオン性有機基の付与工程において多少の細孔径の減少は起こる可能性があるが、その点を考慮すれば、目的の細孔径のものを調製することができる。また、メソポーラスシリカ粒子原料の合成時に、細孔径のテンプレートとして働く界面活性剤のアルキル鎖長、水溶性高分子化合物の親水性と親油性の構成モノマー単位の比率等を適宜調整することにより、前記メソポーラスシリカ粒子の細孔径を調整することができる。特に平均細孔径が約5nm以上のメソポーラスシリカ粒子原料を調製するためには、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック重合からなる非イオン性高分子化合物を用いることが好ましく、平均細孔径が8nm以下のメソポーラスシリカ粒子原料を得るためには、第四級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0033】
[BET比表面積]
表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子のBET比表面積は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、100〜1500m2/gが好ましく、より好ましくは200〜1500m2/g、さらに好ましくは300〜1000m2/g、特に好ましくは500〜1000m2/gである。BET比表面積は、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
【0034】
[中空シリカ粒子(A−1)及び中実シリカ粒子(A−2)]
表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子の形状は、特に制限されず、不定形、球状等でもよく、それらの混合物でもよいが、機能性物質を徐放する観点から、球状が好ましい。特に、メソ細孔構造の外殻部を持ち内部が中空の球状粒子である、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下である中空メソポーラスシリカ粒子(A−1)(以下、「中空シリカ粒子(A−1)」ともいう)、及び、内部が中空でなく、その中心部から放射状にメソ細孔が配列している球状粒子である、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下である中実メソポーラスシリカ粒子(A−2)(以下、「中実シリカ粒子(A−2)」ともいう)がより好ましく、本発明における複合粒子の機能性物質の保持量を高める観点から、中空シリカ粒子(A−1)がより好ましい。
【0035】
[外殻部の平均厚み及び中空部の平均径]
前記中空シリカ粒子(A−1)の外殻部(メソポーラスシリカ部)の平均厚みは、複合粒子が担体としての強度を維持できる範囲で薄い方が好ましい。また、前記中空シリカ粒子(A−1)の平均径は、内包物を多く保持する観点から大きい方が好ましい。これらの観点から、外殻部の平均厚みは、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜400nm、さらに好ましくは100〜300nmである。中空部の平均径は、同様の観点から、好ましくは10〜5000nm、より好ましくは100〜1000nm、さらに好ましくは200〜800nmである。また、外殻部の平均厚みと平均粒子径の比(外殻部厚み/平均粒子径)は、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、好ましくは0.001〜0.4、より好ましくは0.01〜0.3、さらに好ましくは0.1〜0.3である。さらに、中空部の平均径と外殻部の平均厚みとの比(中空部平均径/外殻部厚み)は、同様の観点から、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜10である。外殻部の平均厚み、及び、中空部の平均径は、TEMの観察により測定でき、具体的は後述する実施例に記載のように測定できる。
【0036】
[カチオン性有機基を有する化合物(B−1)]
本明細書におけるカチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子は、メソポーラスシリカ粒子を、カチオン性有機基を有する化合物(B−1)で処理することによって得ることができる。
【0037】
カチオン性有機基を有する化合物(B−1)としては、特に制限はないが、メソポーラスシリカ粒子にカチオン性有機基を効率的に含有させる観点から、アミノ基を有するアルコキシシラン及びその誘導体、クロルシラン等のカチオン性有機基を有する加水分解性有機シラン化合物が好ましい。
【0038】
アミノ基を有するアルコキシシランとしては、アミノアルキルアルコキシシラン、アミノアリールアルコキシシランが挙げられ、より具体的には下記一般式(1)で表されるアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するアルコキシシランが挙げられる。また該アミノ基を有するアルコキシシランの誘導体とは、一般式(1)から誘導可能な化合物であり、具体的には該アルコキシシランの加水分解物又は加水分解縮合物、有機カルボン酸化合物との塩が挙げられる。
12n-1Si(OR34-n (1)
(上記一般式(1)において、R1はアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する有機基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。OR3は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基であり、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。nは1〜3の数であり、複数のR2及び/又はOR3は同一でも異なっていてもよい。)
【0039】
アミノ基、置換アミノ基の具体例としては、H2N(CH23−、H2NCH2−、H2N(CH22−、H2N(CH24−、H2N(CH22NH(CH23−、H2N(CH22NHCH2−、H2N(CH22NHCH2CH(Me)CH2−、H2N(CH22NH(CH22NH(CH23−、H2N(CH26NH(CH23−、MeHN(CH23−、EtHN(CH23−、Me2N(CH23−、Et2N(CH23−、Me2NCH2−、Et2NCH2−、MeHNCH2−、EtHNCH2−、H2C=CHCH2NH(CH23−、H2N(CH22S(CH23−、H2N(C64)−、H2N(CH23OC(Me)2C=C−、Ph−NH(CH23−、HOCH2CH2N(Me)(CH23−、C54N−CH2CH2−、Me3+(CH23−、C1837(Me)2+(CH23−等が挙げられる。
【0040】
アミノアルキルアルコキシシランの具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリメチル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0041】
また、アミノアリールアルコキシシランの具体例としては、ジフェニルジメトキシシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル−3−(3−フェノキシプロピルチオプロピル)シラン等が挙げられる。
【0042】
上記のカチオン性有機基を有する化合物(B−1)の中では、メソポーラスシリカ粒子にカチオン性有機基を効率的に含有させる観点から、アミノ基及び/又は置換アミノ基を有するアルコキシシランがより好ましく、アミノアルキルアルコキシシランがより好ましい。特に、炭素数1〜3のアルコキシ基を有するアミノアルキルトリアルコキシシランがより好ましく、特に好適な化合物としては、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリドが挙げられる。上記のカチオン性有機基を有する化合物(B−1)は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
[非イオン性有機基を有する化合物(B−2)]
炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子は、メソポーラスシリカ粒子原料を炭素数2以上の非イオン性有機基を有する化合物(B−2)で処理することによって得ることができる。本明細書において、炭素数2以上の非イオン性有機基を有する化合物(B−2)としては、特に制限はないが、メソポーラスシリカ粒子に非イオン性有機基(好ましくは疎水性有機基)を効率的に含有させる観点から、上述した非イオン性有機基を有する加水分解性有機シラン化合物が好ましく、上述した非イオン性有機基を有するアルコキシシランがより好ましい。より具体的には下記一般式(2)で表される非イオン性有機基を有するアルコキシシラン及びこの誘導体が挙げられる。該誘導体は、一般式(2)から誘導可能な化合物であり、具体的には該アルコキシシランの加水分解物又は加水分解縮合物等が挙げられる。
12n-1Si(OR34-n (2)
(上記一般式(2)において、R1は上述した非イオン性有機基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。OR3は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3のアルコキシ基であり、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。nは1〜3の数であり、複数のR2及び/又はOR3は同一でも異なっていてもよい。)
【0044】
炭素数2以上の非イオン性有機基を有するアルコキシシランの具体例としては、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジエトキシジエチルシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンタトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルオクタデシルシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、11−ブロモウンデシルトリメトキシシラン、10−(カルボメトキシ)デシルジメチルメトキシシラン、2−(カルボメトキシ)エチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルメチルジメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシラン、3−クロロイソブチルジメチルメトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルメトキシシラン、3−クロロプロピルジメチルエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジオクチルジメトキシシラン、ドコシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、3−ヨードプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシラン、3−メトキシプロピルトリメトキシシラン、メトキシトリエチレンオキシプロピルトリメトキシシラン、オクタデシルジエトキシクロロシラン、オクタデシルジメチルメトキシシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクチルジメチルメトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランが好ましい。炭素数2以上の非イオン性有機基を有する化合物(B−2)は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0045】
[カチオン性有機基を有する化合物(B−1)又は非イオン性有機基を有する化合物(B−2)による処理]
カチオン性又は非イオン性有機基を有する化合物(B−1)又は(B−2)(以下、単に「化合物(B)」ともいう。)による処理方法は特に限定されず、気相法、液相法等の常法に従い行うことができる。化合物(B)の種類に依存するが、製造容易性の観点から液相法が好ましい。液相法としては、例えば、メソポーラスシリカ粒子原料(後述する(C−1)及び(C−2))を化合物(B)のトルエン溶液に分散させ、120℃で1日攪拌、反応後、洗浄、乾燥する方法が挙げられる。具体例として、化合物(B)をメソポーラスシリカ粒子原料100質量部に対し1〜500質量部添加し、20〜150℃で1〜120時間処理することにより行うことができる。尚、メソポーラスシリカ粒子原料を化合物(B)と反応させるに際し、化合物(B−1)、又は、化合物(B−2)のみで行っても化合物(B−1)と化合物(B−2)の混合物で行ってもよい。複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、化合物(B−2)のみで行っても化合物(B−1)と化合物(B−2)の混合物を用いて反応させることが好ましい。
【0046】
化合物(B)を用いて液相処理する場合、性能発現、製造容易性、コストの観点から、該アルコキシシランの添加量は、メソポーラスシリカ粒子原料100質量部に対し、1〜500質量部が好ましく、10〜200質量部がより好ましく、20〜100質量部がさらに好ましく、25〜60質量部が特に好ましい。また、処理溶媒は該アルコキシシランの種類等にも依存するが、非水系溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、トルエンがより好ましく、トルエンがさらに好ましい。処理溶媒は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。処理温度は、20〜150℃が好ましく、50〜140℃がより好ましく、80〜130℃がさらに好ましく、処理時間は、1〜120時間が好ましく、2〜80時間がより好ましく、3〜30時間がさらに好ましい。化合物(B)の処理工程の後に、未反応化合物や副生化合物を除去するために、未反応化合物や副生化合物の沸点以上の温度で熱処理したり、未反応化合物や副生化合物が可溶な溶媒で洗浄することもできる。
【0047】
なお、中空シリカ粒子(A−1)を得るためには、中空メソポーラスシリカ粒子原料(C−1)を、中実シリカ粒子(A−2)を得るためには、中実メソポーラスシリカ粒子原料(C−2)を、それぞれ、化合物(B)と反応させることが好ましい。
【0048】
中空メソポーラスシリカ粒子原料(C−1)の製造方法に特に制限はないが、特開2008−110905号公報、特開2008−150229号公報、特開2008−174435号公報記載の方法により容易に調製することができる。
【0049】
中実メソポーラスシリカ粒子原料(C−2)の製造方法に特に制限はない。例えば加水分解によりシラノール化合物を生成するテトラメチルシランやテトラエトキシシラン等のアルコキシシラン等のシリカ源を、メソ孔のテンプレートとして働く陽イオン界面活性剤又はエチレンオキシド−プロピレンオキシドブロック重合体等の共存下で、水溶液中で反応させることにより製造することができる。
【0050】
[複合粒子]
本発明に用いられる複合粒子は、例えば、上記の方法で得られたカチオン性有機基又は非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子に機能性物質を保持させることにより得ることができる。また、中空メソポーラスシリカ粒子原料(C−1)又は中実メソポーラスシリカ粒子原料(C−2)に機能性物質を保持させたメソポーラスシリカ粒子や機能性物質を保持させたテンプレート含有シリカ粒子に化合物(B−1)又は化合物(B−2)を反応させてカチオン性有機基又は非イオン性有機基を導入することによっても得ることができる。性能発現の観点から、カチオン性有機基又は非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子に機能性物質を保持させる方法が好ましい。
【0051】
[機能性物質]
本発明における複合粒子が含有する機能性物質としては、香料、農薬用基材、防虫基材、防カビ基材、医薬用基材、皮膚手入れ用基材、保湿材等から選ばれる1種類以上が好ましく、中でも香料がより好ましい。本発明における複合粒子は、これらの機能性物質を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの機能性物質は、一般に、流出しやすく、その効果を保持するのが困難であることが多いが、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子に保持させることにより、水や溶媒(例えば、後述する繊維処理剤ベース液)中に安定に配合することが可能である。さらに、メソポーラスシリカ粒子表面を50mN/m以下の表面ぬれ張力とすることで、該シリカ粒子と機能性物質との親和性を向上させて水や溶媒(例えば、後述する繊維処理剤ベース液)中での溶出を防ぐことから、機能性物質としては疎水性物質が好ましい。
【0052】
本発明における複合粒子では、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子が機能性物質を保持する。本発明における複合粒子は、一実施形態において、上述の方法で得られた表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子に機能性物質を保持させることにより得ることができる。また、本発明における複合粒子は、その他の実施形態において、機能性物質を保持させたメソポーラスシリカ粒子や機能性物質を保持させたテンプレート含有シリカ粒子に表面ぬれ張力が50mN/m以下とする表面処理を導入することによっても得ることができる。複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子に機能性物質を保持させる方法が好ましい。
【0053】
[香料]
本明細書において用いられる香料としては、天然香料、合成香料のいずれも使用可能であり、常温常圧下で固体でも液体でも使用可能である。香料としては、炭化水素系香料、アルコール系香料、アルデヒド系香料、ケトン系香料、エステル系香料、フェノール系香料、エーテル系香料、アミン系香料、ラクトン系香料、アセタール系香料、ニトリル系香料から選ばれるものを適宜選択し、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。主な例を下記に示すが、これらの香料成分に限定されるものではない。なお、本発明で用いた香料素材の名称は、印藤元一著、「合成香料 化学と商品知識」(化学工業日報社、1996年3月6日発行)の記載に従った。
【0054】
炭化水素系香料としては、α−ピネン、β−ピネン、カンフェン、リモネン、ジテルペン、テルピノーレン、ミルセン等が挙げられ、アルコール系香料としては、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、リナロール、サンダルマイソールコア、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、テトラヒドロリナロール、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、1−(2−t−ブチルシクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール、テルピネロール、3−メチル−5−フェニルペンタノール、エチルリナロール、テトラヒドロムゴール、cis−3−ヘキセノール、ネロール、l−メントール、3−フェニルプロピルアルコール、2,2,6−トリメチルシクロヘキシル−3−ヘキサノール、アセチルイソオイゲノール、エストラゴール、トリメチルヘキサノール等が挙げられる。
【0055】
アルデヒド系香料としては、アルデヒドC−111、シトラール、シトロネラール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、リリアール、アミルシンアミックアルデヒド、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド(リラール)、ヘリオトロピン、バニリン、エチルバニリン、アニスアルデヒド、マイラックアルデヒド、ジメチルテトラヒドロベンズアルデヒド(トリプラール)、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド、n−ヘキサナール、n−オクタナール、n−ノナナール、cis−4−デセナール、ヘリオナール、ベンズアルデヒド、10−ウンデセナール等が挙げられ、ケトン系香料としては、メチルイオノンG、イソ・イー・スーパー、アセチルセドレン、ラズベリーケトン、α−ヨノン、β−ヨノン、メチル−β−ナフチルケトン、ヘプチルシクロペンタノン、ベンジルアセトン、メチレンテトラメチルヘプタノン、ヘリオトピルアセトン、cis−ジャスモン、エチルマルトール、シクロヘキサデセノン、ムスコン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、ダマセノン、イソダマスコン等が挙げられる。
【0056】
エステル系香料としては、酢酸フェニルエチル、アリルアミルグリコレート、酢酸スチラリル、酢酸o−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸シトロネリル、酢酸ゲラニル、酢酸リナリル、アセチルオイゲノール、酢酸シンナミル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、サリチル酸シクロヘキシル、酢酸トリシクロデセニル、エチル−2−tert−ブチルシクロヘキシルカルボネート、酢酸ベンジル、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート、サリチル酸ベンジル、酢酸テルピニル、プロピオン酸トリシクトデセニル、2−シクロヘキシルプロピオン酸エチル、サリチル酸アミル、ヘプタン酸アリル、サリチル酸cis−3−ヘキセニル、酢酸セドリル(セドレニル)、プロピオン酸スチラリル、プロピオン酸アリルシクロヘキサン、酢酸ネリル、マンザネート、ヘキサン酸アリル(カプロン酸アリル)、2−メチル酪酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸イソボニル、酢酸cis−3−ヘキセニル、2,2−ジメチルプロピオン酸−3−メチル−3−ブテニル、2−エチルカプロン酸エチル等が挙げられる。
【0057】
フェノール系香料としては、オイゲノール、イソオイゲノール、モスシンス、チモール、バニトロープ等が挙げられ、エーテル系香料としては、アンブロキサン、アネトール、メチルイソオイゲノール、ネロリンヤラヤラ、ガラクソライド、β−ナフトールエチルエーテル、エトキシメチルシクロドデシルエーテル、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、アントキサン等が挙げられる。
【0058】
アミン系香料としては、N−メチルアントラニル酸メチル、アントラニル酸メチル、イソブチルキノリン等が挙げられ、ラクトン系香料としては、オキサシクロヘキサデセン−2−オン、シクロペンタデカノリド、γ−ウンデカラクトン、クマリン、エチレンブラシレート、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、δ−ドデカラクトン、γ−ノナラクトン等が挙げられ、アセタール系香料としては、カラナール、2−ブチル−4,4,6−トリメチル−1,3−ジオキサン等が挙げられ、ニトリル系香料としては、ペオニル、シトロネリルニトリル等が挙げられる。
【0059】
本明細書において、複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、メソポーラスシリカ粒子原料及び/又は表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子の細孔径よりも小さい香料を用いることが好ましい。用いられるメソポーラスシリカ粒子原料及び/又は表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子の細孔径にも依存するが、前記香料の中では、炭化水素系香料としてはリモネン、アルコール系香料としては、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、cis−3−ヘキセノール、l−メントール、トリメチルヘキサノール、アルデヒド系香料としては、シトラール、リリアール、バニリン、エチルバニリン、ヘリオナール、ケトン系香料としては、イソ・イー・スーパー、δ−ダマスコン、エステル系香料としては、酢酸o−t−ブチルシクロヘキシル、酢酸リナリル、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート、アミン系香料としてはアントラニル酸メチル等が好適に挙げられ、リモネン、エチルバニリン、ヘリオナール、δ−ダマスコン、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート、アントラニル酸メチルがより好ましい。
【0060】
[香料の含浸]
香料の保持は、例えば、メソポーラスシリカ粒子原料及び/又は表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子に香料を含浸させることにより行うことができる。以下、中空シリカ粒子(A−1)に香料を含浸させる場合を例にして説明する。
【0061】
香料の含浸処理は、香料が前記メソポーラスシリカ粒子に含浸できる方法であれば特に制限はなく、公知の真空含浸法等を採用することができる。例えば、容器内で香料と中空シリカ粒子(A−1)とを混合し、該容器内を該香料の蒸気圧より高く、用いる中空シリカ粒子(A−1)のメソ細孔中における窒素の蒸気圧より小さい条件で含浸することが好ましい。この場合のメソ細孔中における窒素の蒸気圧は窒素の吸着等温線から求められる。この条件で中空シリカ粒子(A−1)の細孔内を脱気して香料を強制含浸せしめ、例えば1分間〜10時間、好ましくは1分間〜1時間静置した後に容器内の圧力を一旦大気圧に戻し、さらに1分間〜10時間、好ましくは1時間〜10時間静置することで、香料を前記メソポーラスシリカ粒子のメソ細孔内を通して中空内部に導入する方法が挙げられる。なお含浸の程度は、前記メソポーラスシリカ粒子の粒子(中空部、メソ細孔)内全てに香料が包含されるまで行うことが好ましい。常温常圧下で固体である香料の場合、香料の融点以上の温度で加熱融解し液体状態にして含浸させる方法が好ましい。また、固体香料を溶媒に溶解した溶液を含浸させても良い。
【0062】
本発明における複合粒子中の機能性物質の含有量は、特に限定されないが、機能性物質の機能を持続させる観点から、本発明における複合粒子中の組成として、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは10〜80質量%、さらに好ましくは20〜50質量%である。なお、本発明における複合粒子中の機能性物質の含有量は、熱重量分析、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等の常法により求めることができる。本発明における複合粒子においては、まず該複合粒子の外表面付近に保持されている機能性物質の揮散が始まり、その後、中空部及びメソ細孔に保持された機能性物質が、長時間、安定した速度で揮散するため、揮散制御が容易である。これらの機能性物質の中で、酸やアルカリ、ゼオライト等の触媒活性を持つ無機粉体に不安定なエステル類やアセタール類であっても、メソポーラスシリカ粒子の内部に保持させれば、安定に保持され、徐放性、経時残香性(香料の場合)に優れた複合粒子とすることができる。例えば、複数の香料等を併用し、それぞれを異なるメソポーラスシリカ粒子に保持させれば、広範なかつ効果的な調香等を行うことができる。
【0063】
本発明の繊維処理剤組成物に含有する複合粒子は、カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子に機能性物質を保持されている複合粒子であっても、炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子に機能性物質を保持されている複合粒子であっても、カチオン性有機基と炭素数2以上の非イオン性有機基を同一のメソポーラスシリカ粒子に含有するメソポーラスシリカ粒子に機能性物質を保持されている複合粒子であっても良く、これらを混合して含有していても良い。複合粒子の繊維への付着性の向上及び機能性物質の複合粒子への残存性の向上の両立の観点から、これらの粒子の混合物が好ましい。
【0064】
本発明の複合粒子を含有する繊維処理剤組成物中への本発明の複合粒子の添加率は、目的によって、また、複合粒子中の機能性物質の含有量によっても異なるが、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜15質量%である。例えば、機能性物質が香料を用いる賦香を目的とする場合、複合粒子の添加率は、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜15質量%である。
【0065】
[界面活性剤]
本発明の繊維処理剤組成物は、分散安定性等の観点から、本発明の効果を阻害しない範囲で、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性の界面活性剤を用いることができる。より具体的には、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(アルカリ金属塩等、以下同じ)、α−オレフィンスルホン酸塩、スルホ脂肪酸メチルエステル塩、長鎖アルキル硫酸エステル塩、オキシアルキレン付加型ノニオン界面活性剤、アミン塩酸塩等が挙げられる。添加量は、特に限定されないが、本発明の複合粒子の分散性向上の観点から、0.1〜30質量%が好ましい。
【0066】
[その他の成分]
さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、繊維処理剤組成物に通常配合される、水溶性無機塩、酸化防止剤、キレート剤、紫外線吸収剤、溶剤、色素等の添加剤を常用量配合して使用することができる。水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等が挙げられ、酸化防止剤としては、亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられ、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩、クエン酸等が挙げられる。これらの成分の添加率は、求める機能によって適宜選択することができる。
【0067】
[繊維処理剤組成物]
本発明の繊維処理剤組成物の剤型は特に制限されず、液状、粉末状等の各種形態で使用することができるが、使いやすさの観点から、水中油型(O/W型)乳化物とすることが好ましい。本発明の繊維処理剤組成物の使用に際しては、それらを水性液に分散させ、その液中に処理する被処理繊維品を浸漬及び/又は撹拌し、或いは、被処理繊維品を含む洗濯水や濯ぎ水に本発明の繊維処理剤組成物を適当量添加することによって、繊維処理剤組成物中の複合粒子を繊維製品の表面又は内部に効率的に付着、吸着させ、残香性などの機能を付与することができる。また、柔軟剤、洗剤、のり剤等に配合して使用することもできるが、柔軟剤の一成分として使用するのが好ましい。柔軟剤としては、洗濯後の衣料のしなやかさを保たせるものであれば、特に制限されない。例えば、長鎖炭化水素基を有するカチオン性界面活性剤等が挙げられる。処理対象である繊維品は特に制限されず、天然繊維製品、合成繊維製品、半合成繊維製品のいずれの処理にも好適に利用することができる。
【0068】
[繊維処理方法]
したがって、本発明はその他の態様として、本発明の繊維処理剤組成物にて繊維を処理する方法に関する。本発明の繊維処理方法は、被処理繊維と本発明の繊維処理剤組成物とを接触させて該繊維の表面又は内部に付着又は吸着させ、本発明の繊維処理剤組成物が有する機能(例えば、残香性など)を付与することを含む。被処理繊維は、上述の繊維品を含む。被処理繊維と本発明の繊維処理剤組成物とを接触は、例えば、上述のように、水性液に分散させ、その液中に処理する被処理繊維を浸漬及び/又は撹拌し、或いは、被処理繊維を含む洗濯水や濯ぎ水に本発明の繊維処理剤組成物を適当量添加することによって行うことができる。
【実施例】
【0069】
下記製造例1〜11で作製した中空メソポーラスシリカ粒子を用いて実施例1〜8及び比較例1〜5の繊維処理剤を作製し、香料残存率、シリカ付着率、及び残香性について評価した。なお、各種測定及び評価は、以下の方法により行った。
【0070】
(1)メソポーラスシリカ粒子の粉末X線回折(XRD)パターンの測定
粉末X線回折装置(理学電機工業社製、商品名:RINT2500VPC)を用いて、X線源:Cu−kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、及び受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲を回折角(2θ)1〜20°、走査速度を4.0°/分とした連続スキャン法を用いた。なお、測定は、粉砕した試料をアルミニウム板に詰めて行った。
【0071】
(2)メソポーラスシリカ粒子の粒子形状の観察
電解放射型高分解能走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、商品名:FE−SEM S−4000)を用いて粒子形状の観察を行った。
【0072】
(3)メソポーラスシリカ粒子の平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みの測定
透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、商品名:JEM−2100)を用いて加速電圧160kVで粒子の観察を行った。20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径、中空部径、及び外殻部厚みを写真上で実測し、平均一次粒子径、平均中空部径、及び平均外殻部厚みを求めた。なお、観察は、高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(応研商事社製、200−Aメッシュ)に付着させ、余分な試料をブローで除去したものを用いて行った。
【0073】
(4)メソポーラスシリカ粒子のBET比表面積、及び平均細孔径の測定
比表面積・細孔分布測定装置(社島津製作所製、商品名:ASAP2020)を用いて、液体窒素を用いた多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。BET比表面積の導出にはBJH法を採用し、そのピークトップを平均細孔径とした。試料には250℃で5時間の前処理を施した。
【0074】
(5)メソポーラスシリカ粒子の平均凝集粒子径の測定
レーザー散乱粒度分布計(堀場製作所社製、商品名:LA−920)を用いて、相対屈折率1.06、超音波強度7、超音波照射時間1分、循環速度4、分散媒をエタノールとした条件で室温にて測定し、体積基準換算のメジアン径を平均凝集粒子径とした。
【0075】
(6)カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子のカチオン性有機基の定量分析
理学電機工業株式会社製、差動型示差熱天秤(TG−DTA)Thermo plus TG8120を用いて、エアーフロー(300mL/min)下、室温から700℃まで10℃/分の速度で昇温した。700℃で残存した質量をシリカ(SiO2)、150〜700℃までの減量をカチオン性有機基由来とした。カチオン性有機基由来の質量%とシリカ由来の質量%から窒素原子とケイ素原子の比率(N/Si原子比)を求めた。
【0076】
(7)非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子の非イオン性有機基の定量分析
理学電機工業株式会社製、差動型示差熱天秤(TG−DTA)Thermo plus TG8120を用いて、エアーフロー(300mL/min)下、室温から700℃まで10℃/分の速度で昇温した。700℃で残存した質量をシリカ(SiO2)、150〜700℃までの減量を非イオン性有機基由来とした。非イオン性有機基由来の質量%とシリカ由来の質量%から炭素原子とケイ素原子の比率(C/Si原子比)を求めた。
【0077】
(8)ぬれ張力測定
表面張力22.6mN/m、25.4mN/m、30.0mN/m、35.0mN/m、40.0mN/m、45.0mN/m、50.0mN/m、56.0mN/m、60.0mN/m、65.0mN/m、70.0mN/m、73.0mN/mのぬれ張力試験用混合液(和光純薬株式会社製、No.22.6、No.25.4、No.30.0、No.35.0、No.40.0、No.45.0、No.50.0、No.56.0、No.60.0、No.65.0、No.70.0、No.73.0)2mLをそれぞれ別個のガラス容器(株式会社マルエム製、スクリュー管No.3)に入れた。ついで、シリカ1mgを、表面張力が高い標準液が入っている容器から順に(即ち、73.0mN/m→70.0mN/m→65.0mN/m→・・・→22.6mN/mの順に)、その液表面に振り掛けた。シリカが液表面からはじめて沈降したときのぬれ張力試験用混合液の表面張力を、そのシリカのぬれ張力とした。なお、試験は25℃で行い、沈降の有無については、シリカを各ぬれ張力試験用混合液に振りかけてから10秒後の状態で判断した。
【0078】
(9)カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子を用いた香料複合粒子組成の分析
理学電機工業株式会社製、差動型示差熱天秤(TG−DTA)Thermo plus TG8120を用いて、エアーフロー(300mL/min)下、室温から40℃まで10℃/分の速度で昇温後、40℃で5時間保持、さらに700℃まで10℃/分の速度で昇温した。700℃までの減量を香料とカチオン性有機基の総量、700℃で残存した質量をシリカの質量とした。また前記(6)の測定方法から求められる香料担持前のメソポーラスシリカ粒子のシリカ重量に対するカチオン性有機基の比率を用いて、複合粒子のカチオン性有機基の質量を算出し、カチオン性有機基とシリカ以外を全香料とした。これら結果から、SiO2、カチオン性有機基及び全香料からなる香料複合粒子組成を求めた。
【0079】
(10)非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子を用いた香料複合粒子組成の分析
理学電機工業株式会社製、差動型示差熱天秤(TG−DTA)Thermo plus TG8120を用いて、エアーフロー(300mL/min)下、室温から100℃まで10℃/分の速度で昇温後、100℃で5時間保持、さらに700℃まで10℃/分の速度で昇温した。700℃までの減量を香料と非イオン性有機基の総量、700℃で残存した質量をシリカの質量とした。また前記(7)の測定方法から求められる香料担持前のメソポーラスシリカ粒子のシリカ重量に対する非イオン性有機基の比率を用いて、複合粒子の非イオン性有機基の質量を算出し、非イオン性有機基とシリカ以外を全香料とした。これらの結果から、SiO2、非イオン性有機基及び全香料からなる香料複合粒子組成を求めた。
【0080】
(11)カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子を用いた香料複合粒子の香料残存率の評価
エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料複合粒子に関して、繊維処理工程における分散前と分散後の香料複合粒子の香料担持量の違いから、繊維処理工程後の香料複合粒子の香料残存率を求めた。繊維処理工程における分散前の香料複合粒子の香料担持量は、以下のように求めた。100℃におけるエチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料複合粒子の質量減量を時間(分)で微分し、単位シリカ質量(g)当たり、単位時間(分)における香料の質量減量(mg)として揮発速度(mg香料/分/シリカg)を求めた。測定時間30〜200分の範囲内に、揮発速度が1〜3mg香料/分/シリカgで時間に依存せずほぼ一定となる領域が見られるので、この領域に相当する香料量を分散前のメソポーラスシリカ粒子の中空部(香料複合粒子)の香料担持量(シリカ質量に対する質量%)とした。
【0081】
香料複合粒子の残存率は次のようにして求めた。まず内径13cmの2Lビーカー中、水2000gにエチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料複合粒子を含有する繊維処理剤0.67gを添加し、室温で7分磁気撹拌することで分散処理した。なおスターラーピースは、長さ3.5cmの十字型のものを用い、攪拌速度は攪拌時の水高さの下から1/3の位置に渦巻きの頂点が来るように設定された。攪拌終了後すぐにメンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:セルロールアセテート、孔径:0.2μm)で約10分間ろ過した。
【0082】
ろ過後すぐに熱質量分析測定を行い、分散後のメソポーラスシリカ粒子の中空部に担持された香料(分散後の香料複合粒子の香料担持量)を定量した。分散前に対する分散後の香料担持量の比率を残存率とした。
【0083】
(12)非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子を用いた香料複合粒子の香料残存率の評価
エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料複合粒子に関して、繊維処理工程における分散前と分散後の香料複合粒子の香料担持量の違いから、繊維処理工程後の香料複合粒子の香料残存率を求めた。繊維処理工程における分散前の香料複合粒子の香料担持量は、以下のように求めた。香料複合粒子0.03gを5mLのヘキサンに分散させ、1時間撹拌し、粒子内の香料を抽出した。撹拌終了後、内部標準としてデカン0.01gを加え、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:セルロールアセテート、孔径:0.2μm)でろ過した。ろ液中のエチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料量をアジレント・テクノロジー社製、ガスクロマトグラフィー、HP6890を用いて算出し、分散前の香料複合粒子の香料担持量とした。
【0084】
香料複合粒子の残存率は次のようにして求めた。まず内径13cmの2Lビーカー中、水2000gにエチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料複合粒子を含有する繊維処理剤0.67gを添加し、室温で6分磁気撹拌することで分散処理した。なおスターラーピースは、長さ3.5cmの十字型のものを用い、攪拌速度は攪拌時の水の高さの下から1/3の位置に渦巻きの頂点が来るように設定された。攪拌終了後すぐにメンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:セルロールアセテート、孔径:0.2μm)で約10分間ろ過した。
【0085】
ろ過後すぐにガスクロマトグラフィー測定を行い、分散後のメソポーラスシリカ粒子内に担持された香料を定量した。分散前に対する分散後の香料担持量の比率を残存率とした。
【0086】
(13)タオルへのシリカ付着率の評価
電気バケツ(パナソニック社製、N−BK2)中、水5.7Lに香料複合粒子を含有する繊維処理剤1.9gを添加し、すぐに市販タオル3枚(約285g)を入れ、6分洗浄後、洗濯機で3分脱水した。室内で24時間平干しによりタオルを乾燥させることにより、処理タオルを作製した。処理タオルを灰化、溶解した水溶液中のSi濃度をICPにより定量した。
【0087】
香料複合粒子を含有しない(香料のみ)繊維処理剤においても、同様に処理タオルを作製し、Si濃度の定量を行った。香料複合粒子を含有する繊維処理剤で処理したタオル中のSi量と、香料複合粒子を含有しない繊維処理剤で処理したタオル中のSi量との差をタオルに付着したシリカ由来のSi量とした。繊維処理剤に配合したSi量に対するタオルに付着したSi量の比率をシリカ付着率とした。
【0088】
(14)処理タオルへの残香性評価
前処理として、電気洗濯乾燥機(パナソニック社製、NA−FV8000)にてタオル20枚を市販の液体アタック(花王社製)で洗浄した(洗剤25g、水道水38L、水温20℃、洗い9分、注水すすぎ2回、脱水7分)。次に、電気バケツ(パナソニック社製、N−BK2)中、水5.7Lに、前処理したタオル3枚(約285g)を入れ、すぐに、香料複合粒子含有繊維処理剤1.9g添加し、6分洗浄後、電気洗濯乾燥機で3分脱水した。室内で24時間平干しによりタオルを乾燥させた。
【0089】
乾燥させたタオルの香り、さらにタオルをこすった後の香りについて専門パネラー11人にて官能評価を行い、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中9人以上
○:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中6人以上9人未満
×:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中6人未満
【0090】
[中空メソポーラスシリカ粒子の製造]
製造例1〔中空メソポーラスシリカ粒子(C1)の製造〕
(1)1L−セパラフルフラスコに、イオン交換水600g、メタクリル酸メチル(和光純薬株式会社製)99.5g、塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(三菱レイヨン株式会社製)0.5gを入れ、内温70℃まで昇温させた。
【0091】
次いで、これに、水溶性重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬社製、商品名:V−50)0.5gをイオン交換水5gに溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌を行った。その後、さらに75℃で3時間加熱撹拌を行って冷却した後、得られた混合液から凝集物を200メッシュろ過(目開き約75μm)し、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液(固形分(有効分)含有量14質量%、平均一次粒子径360nm)を得た。
【0092】
(2)次に、10Lフラスコに、水6kg、メタノール2kg、1M水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬株式会社製)45g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)35g、及び上記で得られたカチオン性ポリマー粒子の懸濁液33gを入れて撹拌し、その水溶液に、テトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)34gをゆっくりと加え、5時間撹拌した後、12時間熟成させた。
【0093】
次いで、得られた白色沈殿物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、10Lの水で洗浄し、100℃の温度条件で5時間乾燥した。
【0094】
得られた乾燥粉末を、焼成炉(株式会社モトヤマ製、商品名:スーパーバーン)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1℃/分の速度で600℃まで昇温し、600℃で2時間焼成することにより有機成分を除去した。
【0095】
得られた粉末を、ロータースピードミル(FRITSCH社製、商品名:pulverisettel4)を用いて、乾式解砕(20000rpm)、乾式分級(孔径0.2mmスクリーンをパス)することにより、中空メソポーラスシリカ粒子(C1)粉末を得た。
【0096】
(3)なお、この中空メソポーラスシリカ粒子(C1)は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有していた。また、SEM観察により、この中空メソポーラスシリカ粒子(C1)の粒子形状が球状であることを確認した。
【0097】
さらに、TEM観察より、この中空メソポーラスシリカ粒子(C1)が中空構造を有し、平均一次粒子径が680nm、平均中空部径が360nm、平均外殻部厚みが160nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
【0098】
また、この中空メソポーラスシリカ粒子(C1)粉末は、BET比表面積が1330m2/g、平均細孔径が1.6nm、平均凝集粒子径が0.7μmであった。さらに、ぬれ張力は73mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0099】
製造例2〔中空メソポーラスシリカ粒子(C2)の製造〕
(1)1L−セパラフルフラスコに、イオン交換水600g、メタクリル酸メチル(和光純薬株式会社製)99.5g、塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(三菱レイヨン株式会社製)0.5gを入れ、内温70℃まで昇温させた。
【0100】
次いで、これに、水溶性重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬社製、商品名:V−50)0.5gをイオン交換水5gに溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌を行った。その後、さらに75℃で3時間加熱撹拌を行って冷却した後、得られた混合液から凝集物を200メッシュろ過(目開き約75μm)し、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液(固形分(有効分)含有量14質量%、平均一次粒子径250nm)を得た。
【0101】
(2)次に、300L反応釜にイオン交換水192kg、メタノール64kg、1M水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬株式会社製)1.44kg、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)0.96kg、及び上記で得られたカチオン性ポリマー粒子の懸濁液1.04kgを入れて撹拌し、その水溶液にテトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)1.09kgを30秒で添加し、室温にて70rpmで5時間攪拌した。攪拌速度を25rpmに減速し、さらに18時間攪拌した。次いで、得られた白色沈殿物を、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、10Lの水で洗浄し、100℃の温度条件で5時間乾燥した。
【0102】
得られた乾燥粉末を、焼成炉(モトヤマ社製、商品名:スーパーバーン)を用いて、エアーフロー(3L/min)しながら1℃/分の速度で600℃まで昇温し、600℃で2時間焼成することにより有機成分を除去した。
【0103】
得られた粉末を、ロータースピードミル(FRITSCH社製、商品名:pulverisettel4)を用いて、乾式解砕(20000rpm)、乾式分級(孔径0.2mmスクリーンをパス)することにより、中空メソポーラスシリカ粒子(C2)粉末を得た。
【0104】
(3)なお、この中空メソポーラスシリカ粒子(C2)は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有していた。また、SEM観察により、この中空メソポーラスシリカ粒子(C2)の粒子形状が球状であることを確認した。
【0105】
さらに、TEM観察より、この中空メソポーラスシリカ粒子(C2)が中空構造を有し、平均一次粒子径が410nm、平均中空部径が250nm、平均外殻部厚みが80nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
【0106】
また、この中空メソポーラスシリカ粒子(C2)粉末は、BET比表面積が1188m2/g、平均細孔径が1.6nm、平均凝集粒子径が0.7μmであった。さらに、ぬれ張力は73mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0107】
製造例3〔カチオン性有機基を有する中空メソポーラスシリカ粒子(K1)の製造〕
(1)室温、攪拌下、トルエン50gに3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製)0.6gを溶解後、製造例1で得られた中空メソポーラスシリカ粒子(C1)粉末2gを分散させ、120℃で24時間処理した。処理液を孔径0.2μmのフィルターでろ過し、エタノールで洗浄後、100℃で24時間乾燥させることにより、アミノシラン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(K1)粉末を得た。
【0108】
(2)このアミノシラン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(K1)粉末について、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有していた。また、SEM観察により、この中空メソポーラスシリカ粒子(K1)の粒子形状が球状であることを確認した。
【0109】
さらに、TEM観察より、この中空メソポーラスシリカ粒子(K1)が中空構造を有し、平均一次粒子径が680nm、平均中空部径が360nm、平均外殻部厚みが160nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
【0110】
また、この中空メソポーラスシリカ粒子(K1)粉末は、BET比表面積が610m2/g、平均細孔径が1.1nmであった。さらに、中空メソポーラスシリカ粒子(K1)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は83質量%、カチオン性有機基は15質量%であり、N/Si原子比は0.22、C/Si原子比は0.51であった。さらに、ぬれ張力は40mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0111】
製造例4〔非イオン性有機基を有する中空メソポーラスシリカ粒子(T1)の製造〕
(1)室温、攪拌下、トルエン50gにオクタデシルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)0.6gを溶解後、製造例2で得られた中空メソポーラスシリカ粒子(C2)粉末2gを分散させ、120℃で24時間処理した。処理液を孔径0.2μmのフィルターでろ過し、エタノールで洗浄後、100℃で24時間乾燥させることにより、オクタデシルトリメトキシシラン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(T1)粉末を得た。
【0112】
(2)このアルキルシラン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(T1)粉末は、粉末X線回折(XRD)のパターンにおいて、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角度に1本以上のピークを有していた。また、SEM観察により、この中空メソポーラスシリカ粒子(T1)の粒子形状が球状であることを確認した。
【0113】
さらに、TEM観察より、この中空メソポーラスシリカ粒子(T1)が中空構造を有し、平均一次粒子径が410nm、平均中空部径が250nm、平均外殻部厚みが80nmであり、外殻部がヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外殻部の外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。全ての一次粒子が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していた。
【0114】
また、この中空メソポーラスシリカ粒子(T1)粉末は、BET比表面積が521m2/g、平均細孔径が1.3nmであった。さらに、中空メソポーラスシリカ粒子(T1)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は81質量%、非イオン性有機基は14質量%であり、C/Si原子比は0.75であった。さらに、ぬれ張力は35mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0115】
製造例5〔非イオン性有機基を有する中空メソポーラスシリカ粒子(T2)の製造〕
製造例4(1)において、オクタデシルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)0.6gの代わりに、ドデシルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)1.2gを用いた以外は、製造例4と同様にして、ドデシルトリメトキシシラン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(T2)粉末を得た。
【0116】
この中空メソポーラスシリカ粒子(T2)粉末について、粉末X線回折(XRD)測定及びTEM観察を行った結果、製造例4と同様の結果が得られた。また、この中空メソポーラスシリカ粒子(T2)粉末は、BET比表面積が808m2/g、平均細孔径が1.4nmであった。また、中空メソポーラスシリカ粒子(T2)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は87質量%、非イオン性有機基は11質量%であり、C/Si原子比は0.49であった。結果を下記表1に示す。
【0117】
製造例6〔非イオン性有機基を有する中空メソポーラスシリカ粒子(T3)の製造〕
製造例4(1)において、オクタデシルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)0.6gの代わりに、デシルトリメトキシシラン(信越化学社製)0.4gを用いた以外は、製造例4と同様にして、デシルトリメトキシシラン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(T3)粉末を得た。
【0118】
この中空メソポーラスシリカ粒子(T3)粉末について、粉末X線回折(XRD)測定及びTEM観察を行った結果、製造例4と同様の結果が得られた。また、この中空メソポーラスシリカ粒子(T3)粉末は、BET比表面積が679m2/g、平均細孔径が1.3nmであった。また、中空メソポーラスシリカ粒子(T3)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は83質量%、非イオン性有機基は10質量%であり、C/Si原子比は0.60であった。さらに、ぬれ張力は35mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0119】
製造例7〔カチオン性有機基を有する中空メソポーラスシリカ粒子(K2)の製造〕
製造例3(1)において、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン(信越化学株式会社製)0.6gの代わりに、ジメチルオクタデシル−3−トリメトキシシリルプロピルアンモニウムクロリドのメタノール溶液(信越化学株式会社製、50%メタノール溶液)1.2gを用いた以外は、製造例3と同様にして、アミノシラン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(K2)粉末を得た。
【0120】
この中空メソポーラスシリカ粒子(K2)粉末について、粉末X線回折(XRD)測定及びTEM観察を行った結果、製造例3と同様の結果が得られた。また、この中空メソポーラスシリカ粒子(K2)粉末は、BET比表面積が660m2/g、平均細孔径が1.1nmであった。また、中空メソポーラスシリカ粒子(K2)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は83質量%、カチオン性有機基は15質量%であり、N/Si原子比は0.03、C/Si原子比は0.69であった。さらに、ぬれ張力は35mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0121】
製造例8〔非イオン性有機基を有する中空メソポーラスシリカ粒子(T4)の製造〕
製造例2で得られた中空メソポーラスシリカ粒子(C2)粉末1gとヘキサメチルジシラザン(和光純薬工業社製)0.1gを1Lテトラーバッグに入れ、密封し、電気乾燥機中に80℃で2日間放置することにより、ジシラザン処理した中空メソポーラスシリカ粒子(T4)粉末を得た。
【0122】
この中空メソポーラスシリカ粒子(T4)粉末について、粉末X線回折(XRD)測定及びTEM観察を行った結果、製造例4と同様の結果が得られた。また、この中空メソポーラスシリカ粒子(T4)粉末は、BET比表面積が1026m2/g、平均細孔径が1.3nmであった。また、中空メソポーラスシリカ粒子(T4)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は92質量%、非イオン性有機基は3質量%であり、C/Si原子比は0.12であった。さらに、ぬれ張力は58mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0123】
製造例9〔カチオン性有機基を有する中実メソポーラスシリカ粒子(K3)の製造〕
製造例1(2)において、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液を用いなかった以外は、製造例1、3と同様にして、アミノシラン処理した中実メソポーラスシリカ粒子(K3)粉末を得た。
【0124】
この中実メソポーラスシリカ粒子(K3)粉末について、粉末X線回折(XRD)のパターンにおける、d=3.0nmの非常に強いXRDピーク、d=1.7nm及びd=1.5nmの弱いXRDピークにより、この球状メソポーラスシリカ粒子(K3)粉末のメソ細孔がヘキサゴナル配列を有すること確認した。また、SEM観察より、この球状メソポーラスシリカ粒子の形状が球状であることを確認した。
【0125】
さらに、TEM観察より、この球状メソポーラスシリカ粒子(K3)粉末が中空構造ではなく中実構造を有し、平均一次粒子径が500nmであり、ヘキサゴナル配列を示す均一なメソ細孔を有し、そのメソ細孔が粒子中心から外側に向かって放射状に貫通していることを確認した。
【0126】
この中実メソポーラスシリカ粒子(K3)粉末は、BET比表面積が380m2/g、平均細孔径が1.1nmであった。また、中実メソポーラスシリカ粒子粒子(K3)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は79質量%、カチオン性有機基は15質量%であり、N/Si原子比は0.23、C/Si原子比は0.54であった。さらに、ぬれ張力は40mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0127】
製造例10〔カチオン性有機基を含む球状シリカ粒子(K4)の製造〕
製造例3(1)において、中空メソポーラスシリカ粒子(C1)粉末の代わりに、球状シリカ粒子(触媒化成製、一次粒子径500nm、比表面積4m2/g)を用いた以外は製造例3と同様にして、アミノシラン処理した球状シリカ粒子(K4)粉末を得た。
【0128】
この球状シリカ粒子(K4)粉末について、粉末X線回折(XRD)ピーク及び細孔径分布ピークが見られないことから、メソ細孔を有していないことを確認した。また、SEM観察より、この球状シリカ粒子は、一次粒子径500nmの球状粒子であることを確認した。
【0129】
この球状シリカ粒子(K4)粉末は、BET比表面積が4m2/gであった。また、球状シリカ粒子(K4)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は99質量%、カチオン性有機基は0.9質量%であり、N/Si原子比は0.01、C/Si原子比は0.02であった。さらに、ぬれ張力は65mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0130】
製造例11〔カチオン性有機基を含む多孔質シリカ粒子(K5)の製造〕
製造例3(1)において、中空メソポーラスシリカ粒子(C1)粉末の代わりに、多孔質シリカ粒子(アルドリッチ製、フュームドシリカ、一次粒子径7nm、比表面積390m2/g)を用いた以外は製造例3と同様にして、アミノシラン処理した多孔質シリカ粒子(K5)粉末を得た。
【0131】
この多孔質シリカ粒子(K5)粉末について、粉末X線回折(XRD)ピーク及び細孔径分布ピークが見られないことから、メソ細孔を有していないことを確認した。また、SEM観察より、この多孔質シリカ粒子は、7nmの球状の一次粒子が凝集していることを確認した。
【0132】
この多孔質シリカ粒子(K5)粉末は、BET比表面積が190m2/gであった。また、多孔質シリカ粒子(K5)粉末のTG−DTA測定した結果、SiO2は83質量%、カチオン性有機基は13質量%であり、N/Si原子比は0.20、C/Si原子比は0.47であった。さらに、ぬれ張力は40mN/mであった。結果を下記表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
[香料複合粒子の製造]
製造例1〜11で得られた中空メソポーラスシリカ粒子粉末(C1、C2、K1、K2、T1〜T4)、中実メソポーラスシリカ粒子粉末(K3)、球状シリカ粉末(K4)、多孔質シリカ粉末(K5)、各0.5gを20mLのサンプル瓶へ入れ、その上に香料6.0gを注いだ。その容器をガラス製デシケータ中に移し、ロータリーポンプを用い3分間減圧した後、窒素ガスを充填し内圧を常圧に戻した。この操作を3度繰り返した後、サンプルを一晩静置した。翌日、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:ポリテトラフルオロエチレン、孔径:0.2μm)によりろ別し、香料複合粒子を得た。
【0135】
実施例1〔香料複合粒子(K1)を含有する繊維処理剤の調製及び評価〕
(1)繊維処理剤ベース液の調製
300mLビーカーに、イオン交換水144gを入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。1つの羽根の長さが2cm、幅0.8cmの撹拌羽根で撹拌しながら(200r/min)、非イオン性界面活性剤(炭素数12の直鎖第1級アルコールにエチレンオキサイドを平均20モル付加させたもの)6gを添加し、次に加熱溶解させた陽イオン性界面活性剤(N−(3−アルカノイルアミノプロピル)−N−(2−アルカノイルヒドロキシエチル)−N−メチルアミン塩酸塩のエタノール溶液(エタノール含有量10%。但し、アルカノイル基は、硬化牛脂由来脂肪酸残基とする。)34gを添加した。次に塩化カルシウム(最終濃度0.05質量%)を入れ5分間撹拌後、10%塩酸水溶液と10%水酸化ナトリウム水溶液でpH2.4に調整した。次に60℃のイオン交換水16gを添加した。その後、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、撹拌しながら(80r/min)、室温(25℃)まで冷却した。
(2)香料複合粒子を含有する繊維処理剤の調製
前記(1)で得られた繊維処理剤ベース液に、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料(商品名:フルテート、花王株式会社製)の濃度が2質量%となるように、下記表2に示す香料複合粒子を配合し香料複合粒子を含有する繊維処理剤を得た。結果を下記表2に示す。
(3)香料複合粒子を含有する繊維処理剤による繊維処理
前記(2)で得られた繊維処理剤のシリカ付着率及び残香性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0136】
実施例2〜5及び比較例1〜4〔香料複合粒子を含有する繊維処理剤の調製と評価〕
実施例1(1)で得られた繊維処理剤ベース液に、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6]デカン−2−カルボキシレート香料(商品名:フルテート、花王株式会社製)の濃度が2質量%となるように、下記表2に示す香料複合粒子を配合しそれぞれの香料複合粒子を含有する繊維処理剤を得た。実施例1と同様にしてこれら繊維処理剤の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0137】
【表2】

【0138】
実施例6〜8及び比較例5〔香料複合粒子を含有する繊維処理剤の調製と評価〕
実施例1(1)で得られた繊維処理剤ベース液に、リモネン香料(商品名:リモネンフロムオレンジ、長谷川香料株式会社製)の濃度が2質量%となるように、下記表3に示す香料複合粒子を配合しそれぞれの香料複合粒子を含有する繊維処理剤を得た。実施例1と同様にしてこれら繊維処理剤の評価を行った。結果を下記表3に示す。
【0139】
【表3】

【0140】
上記表2及び3に示すとおり、実施例1〜8の繊維処理剤は比較例1〜5の繊維処理剤と比べてと比べてシリカ付着性及び残香性にすぐれていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、例えば、繊維処理剤組成物の分野で有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合粒子を含有する繊維処理剤組成物であって、
前記複合粒子は、表面ぬれ張力が50mN/m以下かつ平均一次粒子径が20μm以下であるメソポーラスシリカ粒子と機能性物質とを含む、繊維処理剤組成物。
【請求項2】
前記メソポーラスシリカ粒子が、中空メソポーラスシリカ粒子である、請求項1記載の繊維処理剤組成物。
【請求項3】
前記メソポーラスシリカ粒子は、粒子表面に、カチオン性有機基、及び、炭素数2以上の非イオン性有機基の少なくとも一方を有するメソポーラスシリカ粒子である、請求項1又は2に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項4】
前記メソポーラスシリカ粒子は、粒子表面に、カチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子、及び、炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子の混合物である、請求項1又は2に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項5】
前記粒子表面にカチオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子が、カチオン性有機基を有するアルコキシシランを処理して得られるものである、請求項3又は4に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項6】
前記粒子表面に炭素数2以上の非イオン性有機基を有するメソポーラスシリカ粒子が、炭素数2以上のアルキル基を有するアルコキシシランでメソポーラスシリカ粒子を処理して得られるものである、請求項3又は4に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項7】
複合粒子に対する機能性物質の含有量が、10〜90質量%である、請求項1から6のいずれかに記載の繊維処理剤組成物。
【請求項8】
前記機能性物質が、香料である、請求項1から7のいずれかに記載の繊維処理剤組成物。

【公開番号】特開2012−1837(P2012−1837A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136428(P2010−136428)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】