説明

繊維機械のクリーニング装置

【課題】 巻取機稼動時に発生する風綿を効率良く回収できるよう吸気ダクトの先端にガイド部材を設ける。
【解決手段】 クリーニング装置1の吸気ダクト3A、3Bの先端には、風綿吸引用開口部3aと、風綿吸引用開口部3aを形成する吸気ダクト3の壁面の先端に一体的に取付けられるガイド部材3bとが設けられている。このときガイド部材3bは、床面Fに沿うように取付けられる。本実施の形態では、風綿吸引用開口部3aは円形状になっており、ガイド部材3bは風綿吸引用開口部3aに対して同心円状に設けられた円形板となっている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、巻取機及び紡績機等の稼動時に発生する風綿を清掃するクリーニング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、巻取機或いは紡績機の機台の近傍には、風綿を床面で吸引回収するための吸気ダクト(図9R>9、10参照)と、エアーを噴射して床面に溜まった風綿を該吸気ダクトの近辺に吹き飛ばす吹気ノズルとを有するクリーニング装置が設けられている。従来の場合、上記吸気ダクト8の上記風綿吸引用の開口部8aの形状は、幅広の矩形形状となっている。又、上記吹気ノズルは、床面の真上或いは斜め上方からエアーを噴射して、該床面に溜まった風綿を上記吸気ダクト側に吹き飛ばしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような開口部8aを有する吸気ダクト8で風綿の吸引を行う場合、風綿を吸引するエアーの流れは、上記開口部8aの真下、及びその近傍にしか生じない。そのため、床面Fに溜まった風綿を広範囲に渡って吸引することが難しくなる。又、上記のような開口部8aを有する吸気ダクト8では、開口部8aと床面Fとの距離が50mm程度離れてしまうと、上記開口部8aと床面Fとの間で風綿を吸引するのに必要なエアーの流れを得られなくなる。
【0004】一方、上記吹気ノズルで床面に溜まった風綿を吹き飛ばす場合、上記のように床面の真上或いは斜め上方からエアーを噴射すると、一部の風綿は、上記吸気ダクトによって吸引できない範囲に吹き飛ばされ、上記吹気ノズルと吸気ダクトの間の床面上の風綿を全て吸引することができなくなる。又、床面の真上或いは斜め上方からエアーを噴射すると、風綿が床面から巻き上げられる恐れもあった。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記のような問題解決のために、請求項1の発明は、床面上に溜まる風綿等の埃を吸引回収する吸気ダクトを備えた繊維機械のクリーニング装置において、上記吸気ダクトの吸引用開口部には、該吸引用開口部の周辺の床面に沿って、吸気ダクト内に吸い込まれる方向のエアーの流れを発生させるガイド部材が設けられていることを特徴としている。この請求項1の発明によれば、吸気ダクトによって床面上の風綿等の埃を吸引する際、上記吸引用開口部及びガイド部材と床面との間に風綿等の埃を吸引するエアーの流れが生じ、上記吸引用開口部及びガイド部材の真下付近の風綿が吸気ダクトに吸引される。
【0006】又、請求項2の発明は、上記クリーニング装置には、上記吸気ダクト側に上記床面上の風綿をよせるようにエアーを吹き出す吹気ダクトが備えられており、上記吹気ダクトの先端には、上記床面に沿う方向にエアーを吹き出すエアー吹出用開口部を備える吹気ノズルが取付けられていることを特徴としている。この請求項2の発明によれば、上記吹気ノズルからは、床面に沿ってエアーが噴射されるので、吸気ダクトと吹気ダクトとの間の床面上の風綿等の埃を巻き上げることなく、吸気ダクト側に寄せることができる。
【0007】又、請求項3の発明は、上記エアー吹出用開口部の形状は、上記床面に沿う方向で幅が広くなっていることを特徴としている。この請求項3の発明によれば、上記エアー吹出用開口部から吹き出されたエアーは、拡散することなく所定の方向に流れるので、吸気ダクトと吹気ダクトとの間の床面上の風綿等の埃を効率良く吸気ダクト側に寄せることができる。
【0008】
【実施の形態】以下図面に基づいて本発明を説明する。図1は本発明の実施の形態のクリーニング装置と多数の巻取ユニットからなる巻取機とのレイアウトの概略を示す側面図である。多数の巻取ユニットUからなる巻取機の上方には、レール2が設置されており、レール2に沿ってクリーニング装置1が移動する。クリーニング装置1は、吸気ダクト3、吹気ダクト4及びクリーニング装置本体1aによって構成されている。
【0009】クリーニング装置本体1aには、図示されないモーターの駆動を受けて回転し、クリーニング装置本体1aをレール2に沿って移動させる駆動輪6と、吸気ダクト3から風綿等の埃を吸い込む方向、及び吹気ダクト4からエアーを吹き出す方向にエアーの流れを生じさせるエアー供給部(図示せず)と、吸気ダクト3から吸引された風綿等の埃を一時的に回収する回収部(図示せず)とが設けられている。又、1つのクリーニング装置1には、吸気ダクト3A、3Bと吹気ダクト4A、4bとが2本ずつ備えられている。そして、巻取ユニットUを介して、吸気ダクト3Aと吹気ダクト4A、及び吸気ダクト3Bと吹気ダクト4Bとが対向している。このとき、各吸気ダクト3A、3B及び各吹気ダクト4A、4Bは、互い違いにクリーニング装置本体1aの移動方向両側面に取付けられている。
【0010】図2は、本発明の実施の形態のクリーニング装置の吸気ダクトの先端近傍の拡大図である。吸気ダクト3の先端には、吸引用開口部3aと、吸引用開口部3aを形成する吸気ダクト3の壁面の先端に一体的に取付けられるガイド部材3bとが設けられている。このときガイド部材3bは、床面Fに沿うように取付けられる。本実施の形態では、吸引用開口部3aは円形状になっており、ガイド部材3bは吸引用開口部3aに対して同心円状に設けられた円形板となっている。
【0011】リブ3cは、上記のようにして設けられたガイド部材3bを補強するためにガイド部材3bと吸気ダクト3の壁面とに取付けられる部材である。このリブ3cは、下方にテーパ状に拡大した形状に形成されており、作業者がガイド部材3bを踏むことがないようになされている。又、吸引用開口部3aの近傍の吸気ダクト3の壁面には、風綿等の埃を効率よく吸引できるようテーパ部3dが設けられている。尚、床面Fとガイド部材3bとの間の間隔は、20mm〜50mm程度設けていればよい。
【0012】上記図示されないエアー供給部が作動して、風綿等の埃の吸引回収が開始されると、ガイド部材3bと床面Fとの間には、床面F上の風綿等の埃を吸引用開口部3bの真下近傍まで吸い寄せる方向(図2中A1方向)にエアーの流れが生じる。そして、吸引用開口部3aの真下近傍まで吸い寄せられた風綿等の埃は、テーパ部3d及び吸気ダクト3の壁面に沿う方向(図2中A2方向)に生じるエアーの流れによって、吸引ダクト3内に吸引される。
【0013】図3は、図2に示される本発明の吸気ダクトで床面の風綿等の埃等の埃を吸引回収した場合のガイド部材の径と、風綿等の埃が吸引回収された床面の範囲との測定結果の一例を示す説明図である。又、図3には比較の対象として、図9及び図10に示される従来の吸気ダクトで床面の風綿等の埃を吸引回収したときの風綿等の埃が吸引回収された床面の範囲を付している。
【0015】尚、図3に記載される「床面距離」とは、従来の吸気ダクト8の開口部8aと床面Fとの距離、及び本発明の吸気ダクト3に取付けられたガイド部材3bと床面Fとの距離であり、「吸引範囲」とは、床面上の風綿等の埃が、従来の吸気ダクト8及び本発明の吸気ダクト3で吸引回収される範囲である。又、「流速」とは、従来の吸気ダクト8の開口部8aの外縁部と対向する部分の床面Fで測定された流速、及び本発明の吸気ダクト3に取付けられたガイド部材3bの外縁部と対向する部分の床面Fで測定された流速である。
【0016】図9及び図10に示される従来の吸気ダクト8で床面F上の風綿等の埃を吸引回収する場合、「床面距離」が25mmであれば、吸気ダクト8によって、開口部8aの真下及びその近傍の床面F上の風綿等の埃の吸引回収が可能であることが明らかである。しかしその一方で、「床面距離」が50mmまで拡がってしまうと、上記「流速」の値が大きく低下し、床面F上の風綿等の埃の吸引回収が行われないという測定結果が得られる。
【0017】従来の吸気ダクト8に対して本発明の吸気ダクト3では、ガイド部材3bの直径D(図4参照)が325mm及び425mmの場合、「床面距離」が20mmのときに比べて「床面距離」が50mmとなっても、「吸引範囲」に大きな差は表れない。又、「流速」に関しても大きな差は表れない。但し、ガイド部材3bの直径がD=525mmであり、「床面距離」が50mmである場合には、「床面距離」が25mmのときに比べて「吸引範囲」が著しく低下することがある。この「吸引範囲」の低下の要因としては、ガイド部材3bの縁部近傍と吸引用開口部3aとが離れすぎているので、ガイド部材3bの縁部近傍では、床面F上の風綿等の埃の吸引回収に必要は「流速」が得られないということが考えられる。
【0018】図5は、本発明のクリーニング装置の吹気ダクトの第1の実施の形態の先端近傍の拡大図である。吹気ダクト4の先端には吹気ノズル5が取付けられている。吹気ノズル5は吹気ダクト4に対して屈曲しており、吹気ノズル5の先端部5aは、床面Fに対して略平行になっている。本実施の形態では、エアー吹出用開口部5bの形状は、床面Fに平行な方向で幅広の矩形形状である。尚、床面Fと吹気ノズル5の先端部5aの下面との間隔は、20mm程度となっている。
【0019】上記図示されないエアー供給部が作動して、吹気ノズル5からエアーの吹き出しが開始されると、エアー吹出用開口部5bからは、床面Fに沿う方向(図5中B方向)のエアーが吹き出される。該エアーの吹き出しによって、吸気ダクト3と吹気ダクト4との間の床面F上の風綿等の埃は、吸気ダクト3近辺の床面Fに寄せられる。その後、上記と同様にして吸気ダクト3が、風綿等の埃を吸引回収する。
【0020】図6は、本発明のクリーニング装置の吹気ダクトの第2の実施の形態の先端近傍の拡大図である。図6では、吹気ダクト4の先端に取り付けられる吹気ノズル6の先端部6aは、中空円筒状になっている。図5に示される吹気ノズル5と同様、吹気ノズル6の先端部6aは、床面Fに対して略平行になっている。
【0021】図7は、本発明のクリーニング装置の吹気ダクトの第3の実施の形態の先端近傍の拡大図であり、図8は、図7の吹気ダクトをエアー吹出用開口部側から見た図である。図7の吹気ダクト4の先端には上記の場合と同様、吹気ノズル7が取り付けられている。吹気ノズル7は第1先端部7aと第2先端部7bとによって構成されており、第1先端部7aは、図6の場合と同様中空円筒状になっている。そして、第2先端部7bは、図5R>5の場合と同様床面Fに平行な方向で幅広の矩形形状となっている。
【0022】図1に示されるように、吸気ダクト3と吹気ダクト4とが、巻取ユニットUを介して対向するように配置された場合、吹気ノズル5から吹き出されたエアーは、床面Fと巻取ユニットUの機台下面との隙間に入り込む。そして、吹気ダクト4と巻取ユニットUとの間の床面F上の風綿等の埃と共に、巻取ユニットUの機台の下の床面Fに溜まった風綿等の埃も、吸気ダクト3側に寄せられる。この場合も上記と同様にして吸気ダクト3が、風綿等の埃を吸引回収する。又、吸気ダクト3及び吹気ダクト4による風綿等の埃の吸引回収を行いながら、クリーニング装置1をレール2に沿って移動させることで、上記巻取機の周囲の床面に溜まった風綿等の埃が回収される。
【0023】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、クリーニング装置の吸気ダクトの吸引用開口部の周辺に床面に沿う円板状のガイド部材が設けることで、吸気ダクトによって床面上の風綿等の埃を吸引する際には、上記ガイド部材と床面との間に生じるエアーの流れによって、ガイド部材と対向する部分及びその近傍の床面上の風綿等の埃が、吸引用開口部側に吸い寄せられ、その後、吸引ダクト内に吸引される。これによって、吸引ダクトで風綿等の埃を吸引できる範囲が広くなり、床面上の風綿等の埃を効率的に吸引回収できる。
【0024】又、クリーニング装置の吹気ダクトの先端に吹気ノズルを取付け、更に、該吹気ノズルには、上記床面に沿う方向にエアーを吹き出すエアー吹出用開口部を設けることで、上記吸気ダクトと吹気ノズルとの間の床面に溜まっている風綿等の埃を吸気ダクト側に寄せることができる。これによって、床面上に溜まった風綿等の埃の回収作業を行う際に、床面上の風綿等の埃を巻き上げられて、空気中を飛散することがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態のクリーニング装置と多数の巻取ユニットからなる巻取機とのレイアウトの概略を示す側面図である。
【図2】本発明の実施の形態のクリーニング装置の吸気ダクトの先端近傍の拡大図である。
【図3】図2の吸気ダクトで床面の風綿等の埃等の埃を吸引回収した場合のガイド部材の径と、風綿等の埃が吸引回収された床面の範囲との測定結果の一例を示す説明図である。
【図4】図2の吸引用開口側平面図である。
【図5】本発明のクリーニング装置の第1の実施の形態の吹気ダクトの先端近傍の拡大図である。
【図6】本発明のクリーニング装置の第2の実施の形態の吹気ダクトの先端近傍の拡大図である。
【図7】本発明のクリーニング装置の第3の実施の形態の吹気ダクトの先端近傍の拡大図である。
【図8】図7のエアー吹出用開口部側平面図である。
【図9】従来のクリーニング装置の吸気ダクトの先端近傍の側面図である。
【図10】図9の開口部側平面図である。
【符号の説明】
1 クリーニング装置
3 吸気ダクト
3a 吸引用開口部
3b ガイド部材
4 吹気ダクト
5、6、7 吹気ノズル
5b、6b、7b エアー吹出用開口部
F 床面
U 巻取ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】床面上に溜まる風綿等の埃を吸引回収する吸気ダクトを備えた繊維機械のクリーニング装置において、上記吸気ダクトの吸引用開口部には、該吸引用開口部の周辺の床面に沿って、吸気ダクト内に吸い込まれる方向のエアーの流れを発生させるガイド部材が設けられていることを特徴とする繊維機械のクリーニング装置。
【請求項2】上記クリーニング装置には、上記吸気ダクト側に上記床面上の風綿をよせるようにエアーを吹き出す吹気ダクトが備えられており、上記吹気ダクトの先端には、上記床面に沿う方向にエアーを吹き出すエアー吹出用開口部を備える吹気ノズルが取付けられていることを特徴とする請求項1記載の繊維機械のクリーニング装置。
【請求項3】上記エアー吹出用開口部の形状は、上記床面に沿う方向で幅が広くなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維機械のクリーニング装置。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図9】
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【公開番号】特開平9−132829
【公開日】平成9年(1997)5月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−282323
【出願日】平成7年(1995)10月31日
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)