説明

繊維機械

【課題】メンテナンス性を向上させるとともに、動作媒体を供給するための管路の折れ曲がりを防止できる繊維機械を提供する。
【解決手段】自動ワインダは、ユニット本体部4と、構成部材と、管路61と、を備える。前記構成部材は、ユニット本体部4又はその近傍に配置される。管路61は、弾性素材からなり、前記構成部材を動作させる圧縮空気を供給するためのものである。また、ユニット本体部4の内部は、仕切り壁55a,55b,55c,55d,55eによって、基板配置区画51,53と、空気配管区画50,52,54と、に区画されている。そして、当該ユニット本体部4の内部において、管路61は、空気配管区画50,52,54内に配管され、制御基板63は、基板配置区画51,53内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械に関する。詳細には、繊維機械において、動作流体を供給するための管路の配管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動ワインダ等の繊維機械は、圧縮空気を各構成要素に供給し、当該圧縮空気によって各構成を作動させている。例えば、糸継装置においては、圧縮空気によって旋回空気流を発生させ、糸の解撚及び結合を行っている。この他、繊維機械においては、エアブラスト(圧縮空気の吹き付け)によって糸屑を除去したり、エアシリンダを駆動することで各種構成を駆動したりしている。
【0003】
また、一般的な繊維機械は、(圧縮空気ではなく)カムやリンク機構等の機械的手段によって伝達される駆動力で駆動される構成要素も備えている。従って、従来の繊維機械においては、圧縮空気供給用の管路と、カムやリンク等の機械要素と、が本体内のスペースに配置されていた。
【0004】
ところで近年、各構成要素を個別かつ柔軟に制御したいという要求があり、駆動力をカムやリンクで各構成要素に伝達する構成に代わって、それぞれの構成要素をモータで個別に駆動する構成が試みられている。このような繊維機械においては、カムやリンク機構に代わって、本体内部のスペースの大部分をモータ駆動制御用の回路基板(制御基板)が占め、更に圧縮空気供給用の管路が配管されることになる。
【0005】
このような繊維機械は、本体内部の制御基板等を定期的に(又は不定期に)メンテナンスする必要がある。このため、上記管路の配管・取り付け構造は、メンテナンス性を考慮して決定することが好ましい。例えば、前記制御基板のメンテナンス等を行う際に、前記管路が邪魔にならないように当該管路を配管することが要求される。また、管路が樹脂やゴム等の弾性素材からなる場合は、フレキシブルであるがゆえに管路の折れ曲がり等の不具合が発生してしまうおそれがある。従って、制御基板のメンテナンス作業時に管路が不用意に折れ曲がったりしないように当該管路を配管する必要がある。
【0006】
空気用配管を備えた繊維機械のメンテナンス性を向上させるという観点では、例えば特許文献1が公知である。特許文献1は、保守点検の際に移動可能な巻取ユニットを開示しており、当該巻取ユニットにおいて空気配管の端部はカップリングを介して着脱自在に接合されている。また、特許文献1において、空気配管は、着脱を容易に行えるように、可撓性の管によって形成されている。更に、特許文献1が開示する巻取ユニットは、配管を取り外しても他の巻取ユニットに圧力変動が生じないようにするための開閉片を備えている。このように構成することにより、配管を容易に着脱すことができるので、保守点検作業を円滑に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−106434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、配管を容易に着脱可能に構成することで、保守点検し易い位置まで巻取ユニットを移動させることができるようにすることを目的とするものであり、巻取ユニット内部での管路の取り扱い(配管)については特に記載されていない。従って、特許文献1の構成では、巻取ユニット内部をメンテナンスする際に、空気配管が邪魔になったり、当該空気配管が折れ曲がったりしてしまうことを防ぐという課題を解決することができない。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、メンテナンス性を向上させるとともに、動作媒体を供給するための管路の折れ曲がりを防止できる繊維機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、以下の構成の繊維機械が提供される。即ち、この繊維機械は、ユニット本体部と、構成部材と、管路と、を備える。前記構成部材は、前記ユニット本体部又はその近傍に配置される。前記管路は、弾性素材からなり、前記構成部材を動作させる動作媒体を供給するためのものである。また、前記ユニット本体部の内部は、区画部材によって、少なくとも配管区画が区画されている。そして、当該ユニット本体部の内部において、前記管路は、前記配管区画内に配管される。
【0012】
このように、管路を配管するスペースを区画することにより、管路を、制御基板等の他の部材から隔てておくことができるので、当該他の部材をメンテナンスする際に、管路の折れ曲がりによる管路遮断や管路の損傷が発生することを防ぐことができる。また、管路を他の部材から隔てておくことにより、他の部材をメンテナンスする際に管路が邪魔になることがない。また、万が一、管路が損傷して動作媒体が流出してしまった場合であっても、当該動作流体によって風綿が拡散される等の悪影響が、制御基板等の他の部材に及ぶことを防ぐことができる。
【0013】
前記の繊維機械は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記ユニット本体部において、前記区画部材には、電力又は電気信号を伝達するためのケーブルを通過させる開口部が形成される。そして、前記区画部材に形成された前記開口部と前記ケーブルとの隙間には、シール部材が配置されている。
【0014】
このように、区画部材に開口部が形成されている場合に当該開口部をシール部材で塞ぐことにより、万が一、管路が損傷して動作媒体が流出してしまった場合であっても、当該動作流体が開口部を介して流出して風綿が拡散されることにより基板の接触不良が発生する等の悪影響を、制御基板等の他の部材に及ぼすことを防ぐことができる。
【0015】
前記の繊維機械は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この繊維機械は、前記ユニット本体部を支持するための支持部を備える。前記ユニット本体部は、前記支持部に固定的に支持された固定部と、前記固定部に対して移動可能に構成された移動部と、から構成されている。そして、前記管路は、前記ユニット本体部の外部から前記固定部を介して前記移動部まで配管される。
【0016】
このように、ユニット本体部の一部を移動可能に構成することで、移動部に設けられた構成部材のメンテナンス性を向上させることができる。また、外部からの管路を固定部から導入し、当該固定部を介して移動部まで配管しているので、移動部を移動させても、前記配管の導入箇所は動かない。従って、移動部を移動させる際であっても、前記導入箇所において配管を取り外す必要が無い。これにより、更にメンテナンス性を向上させることができる。
【0017】
前記の繊維機械は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記固定部と前記移動部はヒンジ部によって連結される。そして、前記管路は、前記ヒンジ部の近傍を通過するように配管されている。
【0018】
このように構成することにより、ヒンジ部を使った簡単な構成で、移動部を移動させることができる。また、ヒンジ部の近傍に管路を配管することにより、移動部と固定部との間の管路を取り外さなくても、移動部を移動させることができる。
【0019】
前記の繊維機械において、前記ヒンジ部の軸芯を通るように配管されることが好ましい。
【0020】
このように配管することで、ヒンジ部を中心として移動部を回動移動させた時に管路に生じる屈曲を小さくすることができ、当該管路が折れ曲がる程の大きな力が掛かることを防ぐことができる。
【0021】
前記の繊維機械において、前記動作媒体は、圧縮空気であることが好ましい。
【0022】
即ち、繊維機械において、圧縮空気は、各種シリンダの動作媒体として用いられる他、糸端同士を撚り合わせるための旋回空気流を発生させたり、糸屑のクリーニングのためのエアブラストとして用いたりすることが多い。従って上記のように、圧縮空気の配管を、制御基板等の他の部材と区画する構成が特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの全体的な構成を示す外観斜視図。
【図2】ワインダユニットの側面図。
【図3】ユニット本体の内部の様子を示す側面部分断面図。
【図4】ヒンジ部の構成を示す外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダの概略的な外観斜視図である。本実施形態の自動ワインダ(繊維機械)1は、並べて配置された複数のワインダユニット2と、その並べられた方向の一端に配置された機台制御装置3と、を備えている。
【0025】
それぞれのワインダユニット2は、正面視で左右一側に設けられたユニット本体部4と、このユニット本体部4の側方に取り付けられた各構成要素(図2に示す解舒補助装置12、テンション付与装置13、糸継装置14、クリアラ15、クレードル23、綾振ドラム24、下糸案内パイプ25、上糸案内パイプ26等)を備えている。
【0026】
図2に、ワインダユニット2の模式的な側面図を示す。図2に示すように、ワインダユニット2は、ボビン支持部7と、巻取部8と、を備えている。
【0027】
ボビン支持部7は、ボビン保持ペッグ9を有している。ボビン保持ペッグ9は、給糸ボビン21の芯管に対して軸線方向に挿入されることにより、当該給糸ボビン21を略直立状態で保持することが可能に構成されている。なお、ボビン保持ペッグ9は、図略のモータによって傾動させることができるように構成されている。ボビン保持ペッグ9を傾斜させることにより、当該ボビン保持ペッグ9が直立状態で保持していた給糸ボビン21を排出することができる。
【0028】
巻取部8は、クレードル23と、綾振ドラム24と、を備えている。巻取部8は、巻取ボビンの周囲に糸20を綾振りしながら巻き付けることにより、パッケージ29を生成するように構成されている。
【0029】
前記クレードル23は、パッケージ29を把持するクレードルアーム23aを備えている。当該クレードルアーム23aの先端にはベアリングセンタ22が配置されており、当該ベアリングセンタ22によって、パッケージ29を回転可能に支持している。
【0030】
綾振ドラム24はパッケージ29に対向して配置されており、図略のモータによって回転駆動されるように構成されている。この綾振ドラム24を回転駆動することにより、パッケージ29を従動回転させる。これにより、給糸ボビン21から解舒された糸を、パッケージ29の表面に巻き取ることができる。また、綾振ドラム24の外周面には図略の綾振溝が形成されており、この綾振溝によって糸20を所定の幅でトラバースすることが可能になっている。以上の構成で、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻き取り、所定長で所定形状のパッケージ29とすることができる。
【0031】
また、クレードル23は揺動軸23bを中心にして揺動することが可能に構成されている。これにより、パッケージ29が巻き太っても、当該パッケージ29の表面を適切に綾振ドラム24に当接させることができる。また、クレードル23には、パッケージ接圧シリンダ81が接続されている。当該パッケージ接圧シリンダ81は、空気圧シリンダとして構成されており、圧縮空気が供給されることにより駆動される。そして、前記パッケージ接圧シリンダ81を駆動することにより、揺動軸23bの時計回り又は反時計回りの方向にクレードルアーム23aを駆動することができる。これにより、パッケージ29の接圧(パッケージ29を綾振ドラム24に押し当てる力)を適宜調節することができる。
【0032】
また、パッケージ接圧シリンダ81を駆動することにより、綾振ドラム24からパッケージ29を引き離すようにクレードルアーム23aを駆動することもできる。この状態で後述のパッケージブレーキ機構を動作させることにより、パッケージ29の回転を速やかに停止させることができる。
【0033】
前記パッケージブレーキ機構は、クレードルアーム23aの先端部に配置されている。このパッケージブレーキ機構は、図略のブレーキシューと、当該ブレーキシューをベアリングセンタ22に押し当てる方向に駆動する図略のブレーキ用シリンダと、から構成されている。当該ブレーキ用シリンダは空気圧シリンダとして構成されており、圧縮空気を供給することにより駆動される。そして、当該ブレーキ用シリンダを駆動することにより、ブレーキシューがベアリングセンタ22に押し当てられ、摩擦力によってベアリングセンタ22の回転を止めることができるように構成されている。これにより、クレードル23に把持されたパッケージ29の回転を速やかに停止することができる。
【0034】
また、ワインダユニット2は、ユニット本体部4の近傍であって、ボビン支持部7と巻取部8との間の糸走行経路中に、各種の装置を備えている。具体的に説明すると、前記糸走行経路には、ボビン保持ペッグ9側から綾振ドラム24側へ向かって順に、解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、糸継装置14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、が配置されている。
【0035】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21から解舒される糸が振り回されて給糸ボビン21上部に形成されるバルーンに対し、可動部材76を接触させ、当該バルーンの大きさを適切に制御することによって糸20の解舒を補助するためのものである。当該バルーンが形成される位置は、給糸ボビン21の残糸量によって変化するので、解舒補助装置12は、給糸ボビン21の残糸量に応じて可動部材76を上下させるための解舒補助装置用シリンダ82を備えている。この解舒補助装置用シリンダ82は空気圧シリンダとして構成されており、圧縮空気を供給することにより駆動される。そして、解舒補助装置用シリンダ82を適宜駆動することにより、可動部材76を適切な位置まで上下させて、給糸ボビン21からの糸の解舒を適切に行うことができる。
【0036】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。本実施形態のテンション付与装置13は、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式に構成されている。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合せ状態又は解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動可能に構成されている。
【0037】
クリアラ15は、糸20の糸太さを監視することにより、スラブ等の糸欠陥(糸欠点)を検出するように構成されている。また、クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が配置されている。
【0038】
糸継装置14は、クリアラ15が糸欠陥を検出してカッタ39で糸を切断する糸切断時、給糸ボビン21からの解舒中の糸の糸切れ時、又は給糸ボビン21の交換時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ29側の上糸とを糸継ぎするものである。本実施形態の糸継装置14は、上糸と下糸の糸端に圧縮空気を吹き付けることにより、旋回空気流を発生させて当該糸端を解撚した後、解撚された糸端同士を接近させ、逆方向に旋回空気流を発生させることにより、糸端同士を撚り合わせて結合させるように構成されている。
【0039】
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ29側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0040】
この構成で、糸切れ時、糸切断時、又は給糸ボビンの交換時等においては、下糸案内パイプ25の吸引口32を下方に回動させて下糸を吸引捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することで糸継装置14まで下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、上糸案内パイプ26が図2の位置から軸35を中心として上方へ回動させるとともにパッケージ29を逆回転させ、当該パッケージ29から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、糸継装置14に上糸を案内するようになっている。そして、糸継装置14において、下糸と上糸の糸継が行われる。
【0041】
また、ワインダユニット2の正面側には、マガジン式のボビン供給装置60が配置されている。このボビン供給装置60は、ボビン支持部7で糸を解舒中の給糸ボビンが空になった時に、当該ボビン支持部7に対して新しい給糸ボビンを供給するように構成されている。具体的には、ボビン供給装置60は、給糸ボビン21を複数ストック可能なマガジンカン65を備えている。このマガジンカン65を、図略のモータによって駆動することにより、新しい給糸ボビン21を1つずつボビン支持部7に供給することができる。
【0042】
以上の構成で、前記ボビン供給装置60からの新しい給糸ボビンがボビン支持部7に供給されると、当該新しい給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ29側の上糸と、の糸継ぎが行われる。そして、糸継ぎの後、綾振ドラム24が駆動されることにより、給糸ボビン21から糸を解舒してパッケージ29の表面に巻き返すことができる。
【0043】
また、図示は省略するが、上記の各構成の近傍には、糸屑クリーニング機構が適宜設けられている。当該糸屑クリーニング機構は、適宜の位置に設けられた噴出口から圧縮空気を吹き出すことにより(エアブラスト)、装置に付着した糸屑を除去するものである。
【0044】
また、図2に示すように、ユニット本体部4は上下に分割されている。図2に示すように、本体上部4aには、巻取部8、糸継装置14等が配置されている。また、本体下部4bには、解舒補助装置12等が配置されている。
【0045】
本体上部4aと本体下部4bは、装置正面側に配置されたヒンジ部10によって連結されている。本体下部4bは、装置左右方向に配設された支持フレーム(図略)に固定されている。従って、本体下部4bは固定部であると言うことができる。一方、本体上部4aは、ヒンジ部10を中心として前方に回動するように移動させることができる。従って、本体上部4aは移動部であると言うことができる。なお、本体上部4aを移動させた様子を、図2に二点鎖線で示している。
【0046】
このように本体上部4aを前方に回動させることで、保守点検の頻度の高い糸継装置14や巻取部8等を、保守点検の行い易い位置まで回動させることができる。なお、本体上部4aは、保守点検時以外は、装置後方に配置されたダクト92等にネジ止めされることにより固定されている。
【0047】
次に、図3を参照して、ユニット本体部4の内部の様子を説明する。なお、図3は、ユニット本体部4の側面一部断面図である。
【0048】
図3に示すように、本体下部4bの内部は、当該本体下部4bの下半分に形成された第1空気配管区画50と、前記第1空気配管区画50の上方に形成された第1基板配置区画51と、前記第1空気配管区画50の前方において上下に細長く形成された第2空気配管区画52と、に分けられている。
【0049】
また、図3に示すように、本体上部4aの内部は、第2基板配置区画53と、前記第2基板配置区画53の前方において上下に細長く形成された第3空気配管区画54と、に分けられている。
【0050】
空気配管区画50,52,54は、管路61を配管するためのスペースである。この管路61は、糸継装置14、パッケージ接圧シリンダ81、解舒補助装置用シリンダ82、前記パッケージブレーキ機構、前記糸屑クリーニング機構等に、動作媒体(具体的には、圧縮空気)を供給するためのものである。
【0051】
一方、基板配置区画51,53は、制御基板63を配置するためのスペースである。各制御基板63は、ボビン保持ペッグ9、綾振ドラム24、マガジンカン65等を駆動するための駆動部(具体的には、モータ)を制御するためのものである。
【0052】
そして、基板配置区画51,53の内部には、管路61が配管されないように構成されている。また、本体下部4bにおいて、第1空気配管区画50と第1基板配置区画51との間は仕切り壁(区画部材)55aによって、第1基板配置区画51と第2空気配管区画52との間は仕切り壁(区画部材)55bによって、それぞれ仕切られている。また、本体上部4aにおいて、第2基板配置区画53と第3空気配管区画54との間は、仕切り壁(区画部材)55cによって仕切られている。
【0053】
以上のように、制御基板63を配置する区画(基板配置区画51,53)と、圧縮空気供給用の管路61を配管する区画(空気配管区画50,52,54)と、が区画されていることにより、管路61が制御基板63の近傍を通過しないように構成されている。これにより、制御基板63のメンテナンス時に、管路61の折れ曲がりによって管路61が遮断されたり、当該折れ曲がりにより管路61が損傷してしまうことを防止できる。また、制御基板63のメンテナンス時に、管路61が邪魔になることが無い。
【0054】
また、制御基板63を配置する区画と圧縮空気供給用の管路61を配管する区画との間の境界部分が仕切り壁55a,55b,55cによって仕切られているので、管路61が万が一破損した場合であっても、漏洩した圧縮空気が制御基板63の近傍に供給されてしまうことがない。従って、漏洩した圧縮空気によって基板配置区画51,53内部に風綿を拡散させてしまうことが無いので、制御基板63のコネクタ部に接触不良等の悪影響を及ぼしてしまうことを防ぐことができる。
【0055】
次に、管路61の配管、及び、電気ケーブル64の配線について説明する。なお、この電気ケーブルは、制御基板63に対して、電力及び電気信号を伝達するためのものである。
【0056】
図3に示すように、ユニット本体部4の近傍まで敷設された管路61及び電気ケーブル64は、本体下部4bの後方から当該本体下部4bの内部に導入された後、ユニット本体部4の各部へ配管ないし配線される。これにより、ヒンジ部10を中心に本体上部4aを回動させる際に、管路61及び電気ケーブル64の導入部分を取り外す必要が無い。即ち、特許文献1の構成では、巻取ユニットの上部(本実施形態で言うところの本体上部4a)から空気配管を導入していたので、当該上部を傾動させる際には、空気配管を取り外す必要があった。この点、本実施形態では、上記のように、管路61等を本体下部4bから導入することにより、当該導入部分を切り離さなくても本体上部4aを移動させることができるので、保守点検の作業をスムーズに行うことができる。
【0057】
管路61は、本体下部4bの外部から、第1空気配管区画50内に導入されている。管路61は、具体的には、ある程度の可撓性を備えた素材(弾性素材)からなる複数本のチューブからなっており、それぞれのチューブ内に高圧の空気が供給されている。また第1空気配管区画50内には、各構成に対する圧縮空気の供給状態を制御するための電磁弁62が複数配置されており、前記各チューブは、対応する電磁弁62に接続される。ただし、電磁弁62に接続されないチューブがあっても良いことは勿論である。
【0058】
電磁弁62を介した管路61は、第1空気配管区画50から第2空気配管区画52内に引き出される。前述のように、第2空気配管区画52は上下に細長く形成されている。従って、管路61は、第2空気配管区画52内を上下方向に配管されることとなる。これにより、本体下部4bから導入された管路61を、制御基板63が配置された区画(第1基板配置区画51)を避けつつ、本体上部4aまで配管することができる。
【0059】
なお、管路61を構成するチューブのうち、一部のチューブは、本体下部4bに配置された構成(例えば解舒補助装置用シリンダ82)に接続される。このように本体上部4aまで引き出す必要のないチューブは、第2空気配管区画52に引き出されることなく、第1空気配管区画50から対応する構成まで直接配管される(図示は省略)。
【0060】
第2空気配管区画52内を上下に配管された管路61は、本体下部4bから上方に引き出され、本体上部4aの第3空気配管区画54内部に導入される。図3に示すように、第2空気配管区画52と第3空気配管区画54とを結ぶ配管経路上には、ヒンジ部10が位置しており、管路61は、このヒンジ部10の軸芯を通るように配管される。
【0061】
このヒンジ部10の構成について、図4を参照して説明する。図4は、ヒンジ部10の構成をより良く図示するため、空気配管区画52,54の装置前面側を塞いでいる前面カバー57,58(図3を参照のこと)を取り外した様子を示す外観斜視図である。
【0062】
図4に示すように、ヒンジ部10は左右に分割されており、当該左右のヒンジ部10の間には、管路61を通すことができるスペースが形成されている。この部分に管路61を配管することにより、ヒンジ部10の軸芯を通るように管路を配管することができる。このように構成することで、本体上部4aをヒンジ部10の軸芯を中心として回動させた時に生じる管路61の屈曲を最小限に抑えることができるので、当該管路61に無理な力が掛かることによる折れ曲がりが発生しないようにすることができる。また、このように構成することにより、本体上部4aと本体下部4bとの間の管路61を切り離さなくても、本体上部4aを回動させることができる。
【0063】
ヒンジ部10の軸芯を通って第3空気配管区画54に導入された管路61は、本体上部4aが備える各構成(例えばパッケージ接圧シリンダ81、糸継装置14)まで配管される。これにより、本体上部4aに配置された各構成要素に圧縮空気を供給することができる。
【0064】
一方、図3に示すように、電気ケーブル64は、本体下部4bの外部から、第1基板配置区画51に導入されている。図面が煩雑になるため電気ケーブル64の接続先を図示することは省略しているが、当該電気ケーブル64の一部は、第1基板配置区画51内の制御基板63に接続される。なお、以下の説明において、電気ケーブル64と言ったときには、ユニット本体部4の外部から内部に引き込まれた電気ケーブル64(外部との接続用の電気ケーブル)に加え、当該ユニット本体部4の内部での配線にのみ用いられる電気ケーブルも含む。
【0065】
第1基板配置区画51内の電気ケーブル64の一部は、第1空気配管区画50内に引き込まれ、電磁弁62等に接続される。これにより、電磁弁62を制御することができる。なお、第1基板配置区画51と第1空気配管区画50との間で電気ケーブル64を通すことができるようにするため、第1基板配置区画51と第1空気配管区画50との間の仕切り壁55aには、開口部71が形成されている。この開口部71には、シール部材(パッキン)72が配置されており、当該シール部材72によって開口部71と電気ケーブル64との間の隙間を塞ぐように構成されている。これにより、第1空気配管区画50内で万が一管路が損傷した場合であっても、大量の空気が開口部71を介して第1基板配置区画51に流れ込んでしまうことを防ぐことができる。
【0066】
また、第1基板配置区画51内の電気ケーブル64の一部は、当該第1基板配置区画51から上方に引き出され、第2基板配置区画53に導入されている。第2基板配置区画53に導入された電気ケーブル64は、当該第2基板配置区画53内の制御基板63等に接続される。なお、第1基板配置区画51の上側は、仕切り壁(区画部材)55dによって塞がれているので、当該仕切り壁55dには、電気ケーブル64を上方に引き出すための開口部73が形成されている。一方、第2基板配置区画53の下側は、仕切り壁(区画部材)55eによって塞がれているので、当該仕切り壁55eには、電気ケーブル64を下方から引き入れるための開口部74が前記開口部73と対応した位置に形成されている。
【0067】
また、この開口部73,74は、図3に示すように、側面視でヒンジ部10寄り(装置正面寄り)の位置に形成されている。このように、ヒンジ部に近い位置に電気ケーブル64を配線することにより、本体上部4aをヒンジ部10を中心として回動させた時に生じる電気ケーブル64の屈曲を最小限に抑え、当該電気ケーブル64に無理な力が掛からないようにすることができる。また、このように構成することにより、本体上部4aと本体下部4bとの間の電気ケーブル64を切り離さなくても、本体上部4aを回動させることができる。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態の自動ワインダ1は、ユニット本体部4と、構成部材と、管路61と、を備える。前記構成部材(具体的には糸継装置14、パッケージ接圧シリンダ81、解舒補助装置用シリンダ82、前記パッケージブレーキ機構、前記クリーニング機構等)は、ユニット本体部4又はその近傍に配置される。管路61は、弾性素材からなり、前記構成部材を動作させる圧縮空気を供給するためのものである。また、ユニット本体部4の内部は、仕切り壁55a,55b,55c,55d,55eによって、基板配置区画51,53と、空気配管区画50,52,54と、に区画されている。そして、当該ユニット本体部4の内部において、管路61は、空気配管区画50,52,54内に配管され、制御基板63は、基板配置区画51,53内に配置されている。
【0069】
このように、管路61を配管するスペースと、制御基板63を配置するスペースと、を区画することにより、制御基板63と管路61とを隔てておくことができるので、制御基板63をメンテナンスする際に、管路61の折れ曲がりによる管路遮断や管路61の損傷が発生することを防ぐことができる。従って、パッケージ接圧シリンダ81等の圧縮空気を動作媒体とする装置に対する圧縮空気の供給が不良となることを防止できる。また、管路61を他の部材から隔てておくことにより、制御基板63をメンテナンスする際に管路61が邪魔になることがない。また、万が一、管路61が損傷して圧縮空気が流出してしまった場合であっても、当該圧縮空気によって風綿が拡散される等の悪影響が、制御基板63に及ぶことを防ぐことができる。
【0070】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、以下のように構成されている。即ち、ユニット本体部4において、仕切り壁55aには、電力又は電気信号を伝達するための電気ケーブル64を通過させる開口部71が形成される。そして、当該開口部71と電気ケーブル64との隙間には、シール部材72が配置されている。
【0071】
このように、仕切り壁55aに開口部71が形成されている場合に当該開口部71をシール部材72で塞ぐことにより、万が一、管路61が損傷して圧縮空気が流出してしまった場合であっても、当該圧縮空気が開口部71を介して流出して風綿が拡散されることにより基板の接触不良が発生する等の悪影響を、制御基板63に及ぼすことを防ぐことができる。
【0072】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、以下のように構成されている。即ち、この自動ワインダは、ユニット本体部4を支持するための図略の支持フレームを備える。ユニット本体部4は、支持フレームに固定的に支持された本体下部4bと、本体下部4bに対して移動可能に構成された本体上部4aと、から構成されている。そして、管路61は、ユニット本体部4の外部から本体下部4bを介して本体上部4aまで配管される。
【0073】
このように、ユニット本体部4の一部を移動可能に構成することで、本体上部4aに設けられた構成部材のメンテナンス性を向上させることができる。また、外部からの管路61を本体下部4bから導入し、本体下部4bを介して本体上部4aまで配管しているので、本体上部4aを移動させても、前記配管の導入箇所は動かない。従って、本体上部4aを移動させる際であっても、前記導入箇所において配管を取り外す必要が無い。これにより、更にメンテナンス性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、以下のように構成されている。即ち、本体下部4bと本体上部4aはヒンジ部10によって連結される。そして、管路61は、ヒンジ部10の近傍を通過するように配管されている。
【0075】
このように構成することにより、ヒンジ部10を使った簡単な構成で、本体上部4aを移動させることができる。また、ヒンジ部10の近傍に管路61を配管することにより、本体上部4aと本体下部4bとの間の管路61を取り外さなくても、本体上部4aを移動させることができる。
【0076】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、ヒンジ部10の軸芯を通るように配管されている。
【0077】
このように配管することで、ヒンジ部10を中心として本体上部4aを回動移動させた時に管路61に生じる屈曲を小さくすることができ、当該管路61が折れ曲がる程の大きな力が掛かることを防ぐことができる。
【0078】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、前記管路61は圧縮空気を供給するためのものである。
【0079】
即ち、繊維機械において、圧縮空気は、各種シリンダの動作媒体として用いられる他、糸端同士を撚り合わせるための旋回空気流を発生させたり、糸屑のクリーニングのためのエアブラストとして用いたりすることが多い。従って、上記のように圧縮空気の管路61と制御基板63とを区画する構成が特に好適である。
【0080】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように構成することができる。
【0081】
上記実施形態では、自動ワインダについて説明したが、例えば精紡機等、他の種類の繊維機械であっても、本発明を適用することができる。
【0082】
動作媒体としては、圧縮空気に限らず、例えば圧油等であっても良い。
【0083】
上記の実施形態におけるユニット本体内部の区画方法は一例であり、これに限定されない。例えば、基板を配置する区画と管路を配管する区画の他に、別の種類の区画が形成されていても良い。
【符号の説明】
【0084】
1 自動ワインダ
4 ユニット本体部
4a 本体上部(移動部)
4b 本体下部(固定部)
50,52,54 空気配管区画(配管区画)
51,53 基板配置区画
61 管路
63 制御基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニット本体部と、
前記ユニット本体部又はその近傍に配置された構成部材と、
弾性素材からなり、前記構成部材を動作させる動作媒体を供給するための管路と、
を備え、
前記ユニット本体部の内部は、区画部材によって、少なくとも配管区画が区画されており、
当該ユニット本体部の内部において、前記管路は、前記配管区画内に配管されることを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維機械であって、
前記ユニット本体部において、前記区画部材には、電力又は電気信号を伝達するためのケーブルを通過させる開口部が形成されており、
前記区画部材に形成された前記開口部と前記ケーブルとの隙間には、シール部材が配置されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維機械であって、
前記ユニット本体部を支持するための支持部を備え、
前記ユニット本体部は、前記支持部に固定的に支持された固定部と、前記固定部に対して移動可能に構成された移動部と、から構成されており、
前記管路は、前記ユニット本体部の外部から前記固定部を介して前記移動部まで配管されることを特徴とする繊維機械。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維機械であって、
前記固定部と前記移動部はヒンジ部によって連結されており、
前記管路は前記ヒンジ部の近傍を通過するように配管されていることを特徴とする繊維機械。
【請求項5】
請求項4に記載の繊維機械であって、
前記管路は、前記ヒンジ部の軸芯を通るように配管されることを特徴とする繊維機械。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の繊維機械であって、
前記動作媒体は、圧縮空気であることを特徴とする繊維機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−144027(P2011−144027A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7452(P2010−7452)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】