説明

耐つまとび性およびそのコイル内均一性に優れたホ―ロ―用冷延鋼板の製造方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は耐つまとび性に優れたホーロー用冷延鋼板の製造方法に関するものである。
さらに詳しくは、耐つまとび性に優れるとともに、耐つまとび性のコイル内均一性にも優れたホーロー用冷延鋼板製造方法に関する。
(従来の技術)
従来から耐つまとび性に優れたホーロー用冷延鋼板としてキャップド鋼が使用されてきたが、製造コストの低減のためインゴット法から連続鋳造法による製造方法を検討され、すでにいくつかの方法が開示されている。第1は、例えば特開昭62−270727号公報のように鋼中の酸素量をキャップド鋼以上に含有させる方法であるが、この方法は表面欠陥をなくすために製鋼作業において非常に厳しい管理が要求され、容易な製造方法とはいえない。また、加工性の点でも難点がある。第2は、例えば特開昭60−110845号公報のように、TiやNbなどの炭化物形成元素を添加する方法であるが、この方法は加工性をよくするために真空脱ガス処理法によって極低炭素化する必要があり製造コストを著しく上昇させる。第3は、熱間圧延において高温巻取することにより炭化物を塊状化する方法であるが、この方法ではコイルの端部が改善されない。
(発明が解決しようとする課題)
本発明は従来の技術で問題となっている製鋼作業の困難さや真空脱ガス処理の必要性およびコイル内品質のバラツキなどに鑑み、これらの問題点を解決し安価で耐つまとび性に優れかつ、鋼板内でそのバラツキがないホーロー用冷延鋼板の製造方法を提供することにある。
(課題を解決するための手段)
本発明は、C:0.02〜0.08%、Mn:0.08〜0.50%、sol.Al:0.005〜0.06%、N:0.0030%未満、

として0.0010%以下から−0.0010%以上、残部が鉄および不可避的不純物からなる連続鋳造した鋳片を、900℃以上で切断後、補助加熱を施して40分以内に直送熱間圧延を開始し、仕上圧延後650℃を超え700℃以下で巻取り、冷間圧延した後連続焼鈍することを特徴とする耐つまとび性およびそのコイル内均一性に優れたホーロー用冷延鋼板の製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
Cは、鋼中炭化物を耐つまとび性の改善に使用するため0.02%以上必要である。しかし、多すぎると加工性が悪化するので0.08%以下とする。
Mnは、熱間脆化の防止および耐つまとび性の改善のために0.08%以上とする。一方、多すぎても耐つまとび性の改善効果が弱まり、加工性も低下するので0.50%以下とする。
Alは、脱酸のために熱可溶Alとして0.005%以上とするが、多すぎると加工性を低下させるので、0.06%以下とする。
Nは、加工性に有害な元素であるため加工性の点から少ないほど好ましく0.0030%未満とする。
Bは、Nを容易に固定するためおよび耐つまとび性の改善のために

としてその含有量を規制することが重要で、その量を0.0010%以下とする。しかし、多量のB含有は加工性を低下させるので−0.0010%以上とする。
上記成分鋼を連続鋳造したあと、いわゆる直送圧延法によって補助加熱を施こして熱間圧延を開始するが、鋳片を900℃以上で切断後40分以内に直送熱間圧延を開始する。これは、900℃未満で切断したり、また900℃以上で切断してもその後40分を超えるといずれも鋳片の表面温度、特に鋳片の長さ先端部と尾端部のおよび鋳片の幅方向両端部の温度降下が大きくなり耐つまとび性の向上効果が得にくくなり、また耐つまとび性に鋼板コイル内でバラツキが生じるためである。
熱間圧延の仕上温度は加工性の確保の点からAr3点変態点以上とすることが好ましい。巻取温度は耐つまとび性および加工性の点から650℃超とするが、高すぎると酸洗性を著しく低下させるので上限は700℃とする。
冷間圧延は耐つまとび性の向上のため60%以上の圧下率とするが、あまり高すぎても逆効果となるため85%以下とする。
次に再結晶焼鈍は連続焼鈍で行う。これは、従来の箱焼鈍による方法とくらべて連続焼鈍による方がコイル内の耐つまとび特性が均一となるためである。焼鈍温度は、加工性の向上には高温ほど好ましいがあまり高すぎると耐つまとび性が低下するので、700〜800℃が好ましい。焼鈍後は通常1%前後の調質圧延を行う。
(実 施 例)
第1表に示す成分鋼を連続鋳造し、次いで直送圧延と通常の再加熱後圧延(再加熱温度1150℃)で熱間圧延した。直送圧延では熱間圧延の開始までの熱履歴を変化させた。熱間圧延の仕上温度は900℃で板厚2.8mmに仕上げたあと巻取温度を600〜750℃間で変化させた。酸洗後0.8mmまで冷間圧延したのちに750℃で連続焼鈍し、1.0%の調質圧延を行なった。得られた鋼板のつまとび性をコイルの先,中,後の位置で評価するとともに機械的性質も調査した。
その結果を製造条件とあわせて第2表に示す。同表中に記載した鋳片のルートは、直送熱延をDR、従来の再加熱後熱延をCCRと表記した。本発明の方法で製造された鋼板は、従来の再加熱後圧延による鋼板よりも水素透過時間が長く、コイル内のバラツキも小さく均一性に優れた耐つまとび性を示す。また、一般的には直送圧延材を連続焼鈍すると従来の再加熱圧延材よりもかなり機械的性質が劣るという事実があるけれども、本発明による鋼板は従来法と同等の機械的性質を示す。




(発明の効果)
本発明の方法によって製造されたホーロー用冷延鋼板は、高価な合金元素を添加することなくコイル内で均一なホーロー特性が得られ、直送圧延法と連続焼鈍法による工程の簡省略化で大幅に製造コストが低減できることの工業的意義は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】C:0.02〜0.08%、Mn:0.08〜0.50%、sol.Al:0.005〜0.06%、N:0.0030%未満、

として0.0010%以下から−0.0010%以上、残部が鉄および不可避的不純物からなる連続鋳造した鋳片を、900℃以上で切断後、補助加熱を施して40分以内に直送熱間圧延を開始し、仕上圧延後650℃を超え700℃以下で巻取り、冷間圧延した後連続焼鈍することを特徴とする耐つまとび性およびそのコイル内均一性に優れたホーロー用冷延鋼板の製造方法。

【特許番号】第2505579号
【登録日】平成8年(1996)4月2日
【発行日】平成8年(1996)6月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−140714
【出願日】平成1年(1989)6月2日
【公開番号】特開平3−6331
【公開日】平成3年(1991)1月11日
【出願人】(999999999)新日本製鐵株式会社
【復代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弘明 (外1名)
【参考文献】
【文献】特開昭63−183128(JP,A)