説明

耐久評価装置

【課題】 従来の耐久評価装置は、2つの部材を押し付けながら摺動させる構造であり、2つの部材が当接と離間を繰り返すインジェクタの耐久評価ができない。また、実際の内燃機関をそのまま使用すると、内燃機関の回転速度に制限があるため、試験時間が長くなるとともに、コストが高くなってしまう。
【解決手段】 ノズルアッシーに燃料を供給しながらニードル2を往復動させてノズルボディ1とニードル2の当接と離間を繰り返すことにより、燃料に対するインジェクタの耐久評価を行うことができる。電動モータと回転/直線変換手段でニードル2を往復動させるため、電動モータの回転速度を速めるだけで試験時間を短縮化できる。実際の内燃機関等を用いないため、コストを抑えることができる。また、当接回数が目標回数に達すると自動停止する。さらに、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが目標荷重Ftに調整されて、評価精度が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久評価装置に関するもので、特にテスト媒体が触れる環境において第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返す耐久評価装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
(第1の従来技術)
耐久評価装置として、図15に示す高速往復摩擦試験装置(HFRR)が一般的に知られている。この高速往復摩擦試験装置は、(1)試験球J1と試料平板J2をテスト媒体(オイル、燃料等)J3中で当接させた状態で、(2)試験球J1を一定荷重で試料平板J2に押し付けながら高周波で往復運動させる装置であり、試料平板J2についた摩耗痕の大きさから摩耗量を判断するものである。
しかし、高速往復摩擦試験装置は、簡便ではあるが、2つの部材J1、J2を押し付けながら摺動させる構造であったため、第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返すテスト部品(例えばインジェクタのノズルボディとニードル等)に対して耐久評価ができないという問題がある。
【0003】
なお、高速往復摩擦試験装置は、上記の不具合の他に、次の問題もある。
・テスト媒体J3は、容器J4内に溜めておかれるだけであり、2つの部材J1、J2の摺動部位に摩耗粉が滞留するため、摩耗粉により摩耗量がバラツク不具合がある。
・テスト媒体J3は、容器J4内に溜めておかれるだけの開放状態であるため、蒸発しやすいテスト媒体(例えば、低臨界燃料、気体燃料等)J3で耐久試験を行うことができない。
・テスト媒体J3は、容器J4内に溜めておかれるだけで温度管理ができないため、テスト媒体J3の温度の影響が摩耗量に影響を及ぼすことになり、評価精度にかける。
・2つの部材J1、J2の摩耗の進行に従って、接触部の面圧が低下していくため、結果のバラツキが大きい。
・2つの部材J1、J2の摺動部位の潤滑性を摩耗量で評価するが、摩耗が少ない場合か、摩耗が飽和している条件以外では、摩耗量のバラツキが大きく再現性がない。
【0004】
(第2の従来技術)
上述したように、高速往復摩擦試験装置は、例えばインジェクタのように、第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返すテスト部品に対して耐久評価ができない。
そこで、内燃機関を電動機によって駆動し、各部の摩耗量を評価する装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかし、特許文献1、2に開示された技術は、次の問題点を有している。
・実際の内燃機関をそのまま使用するため、耐久評価装置が大型になるとともに、費用がかかり、試験数を増加させることが困難である。
・内燃機関の回転速度(単位時間当たりの回転数)に制限があるため、試験時間が長くなり、短時間で評価を行うことができない。
・内燃機関は電動機で駆動されるものであって、噴射系に燃料は供給されないため、噴射系の信頼性を評価することができない。なお、実際に噴射系から燃料を噴射させて、噴射系の摩耗評価を行うことは一般に実施されるが、やはり駆動装置が大型になり、回転速度に制限がある。
【0005】
(従来技術のまとめ)
(1)高速往復摩擦試験装置は、簡便ではあるが、例えばインジェクタのように、第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返すテスト部品に対して耐久評価ができないものであり、(2)特許文献1、2に開示された耐久評価装置は、実際の内燃機関をそのまま使用するため、耐久評価に要するコストが高くなってしまうとともに、内燃機関の回転速度に制限があるため、試験時間が長くなり、短時間で評価を行うことができない。
【特許文献1】特開平11−281531号公報
【特許文献2】特開平7−63748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返すテスト部品の耐久評価ができ、試験時間の短縮が可能で、さらにコストを抑えることが可能な耐久評価装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[請求項1の手段]
請求項1の手段を採用する耐久評価装置は、当接離間部にテスト媒体が触れる環境において第1部材と第2部材が当接と離間を繰り返すものであるため、第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返すテスト部品の耐久評価ができる。
当接荷重発生手段によって第1部材に対して第2部材を相対的に往復動させるものであるため、例えば従来技術のように実際の内燃機関等を用いなくても、第1部材と第2部材の当接と離間を繰り返えさせることができ、当接と離間を繰り返す速度を容易に速めることができる。この結果、試験時間の短縮を行うことが可能になる。
また、上述のように、当接荷重発生手段によって第1部材に対して第2部材を相対的に往復動させるものであるため、例えば従来技術のように実際の内燃機関等を用いなくても、第1部材と第2部材の当接と離間を繰り返えさせることができ、耐久評価装置のコストを抑えることができる。
【0008】
[請求項2の手段]
請求項2の手段を採用する耐久評価装置におけるテスト媒体付与手段は、当接離間部にテスト媒体を通過させるものであるため、当接離間部に摩耗粉が滞留する不具合を防ぐことができる。このため、当接離間部に滞留した摩耗分により摩耗量がバラツクことで耐久評価の精度が低下する不具合を回避することができる。
【0009】
[請求項3の手段]
請求項3の手段を採用する耐久評価装置におけるテスト媒体付与手段は、当接離間部を通過したテスト媒体を、再び当接離間部に供給する閉ループを構成するものである。即ち、テスト媒体は、当接離間部を介して循環するものである。このため、テスト媒体を無駄に消費しない。
【0010】
[請求項4の手段]
請求項4の手段を採用する耐久評価装置において閉ループを循環するテスト媒体は、常温常圧で蒸発しやすい液体、あるいは常温常圧で気化する気体である。このため、蒸発しやすいテスト媒体(例えば、低臨界燃料等)や、気体よりなるテスト媒体(例えば、水素燃料等)で試験を行うことができる。
【0011】
[請求項5の手段]
請求項5の手段を採用する耐久評価装置は、第1部材と第2部材の当接回数が、予め設定された目標回数に達すると耐久テスト運転を自動停止するものである。このため、当接回数がテスト毎に変動する不具合がなく、耐久評価の精度を高めることができる。
【0012】
[請求項6の手段]
請求項6の手段を採用する耐久評価装置は、荷重センサで検出した第1部材と第2部材の当接荷重が、予め設定された目標荷重(あるいは適正荷重範囲内)になるように当接荷重調整手段を制御するものである。即ち、第1部材と第2部材の当接荷重を目標荷重(あるいは適正荷重範囲内)に自動調整するものである。このように設けることで、摩耗の進行等の要因によって当接荷重が変動する不具合を防ぐことができ、耐久評価の精度を高めることができる。
なお、目標荷重(あるいは適正荷重範囲内)は、耐久テスト運転中に一定値に保たれるものであっても良いし、時間的経過に伴って変更されるものであっても良い。
【0013】
[請求項7の手段]
請求項7の手段を採用する耐久評価装置は、荷重センサで検出した第1部材と第2部材の当接荷重が、予め設定された限界荷重範囲から外れた場合に、耐久テスト運転を自動停止するものである。即ち、耐久テスト運転中に「テスト部品の破損」、「テスト部品の焼き付き固着」などの不具合が生じた場合に、直ちに運転が停止される。これにより、テスト部品の破損状態、破損時の摩耗状態、固着状態を詳しく解析することが可能になる。
【0014】
[請求項8の手段]
請求項8の手段を採用する耐久評価装置は、第1温度センサで検出した計測温度(当接離間部のテスト媒体の温度)が、予め設定された目標温度(あるいは適正温度範囲内)になるように温度調整装置を制御するものである。即ち、当接離間部におけるテスト媒体の温度を自動調整するものである。このように設けることで、テスト媒体の温度変化による評価のバラツキを抑えることができ、耐久評価の精度を高めることができる。
なお、目標温度(あるいは適正温度範囲内)は、耐久テスト運転中に一定値に保たれるものであっても良いし、時間的経過に伴って変更されるものであっても良い。
【0015】
[請求項9の手段]
請求項9の手段を採用する耐久評価装置は、当接荷重発生手段の他に、第1部材に対して第2部材を相対的に回転させる回転駆動手段を備えるものである。このように、第1部材に対して第2部材を相対的に回転可能に設けることで、第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返す際に、第1部材と第2部材とが回転するテスト部品の再現性を実現することができる。即ち、第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返す際に、第1部材と第2部材とが回転するテスト部品の耐久評価の精度を高めることができる。
【0016】
[請求項10の手段]
請求項10の手段を採用する耐久評価装置で試験される第1部材は、弁座を備えるバルブボディであり、第2部材は、弁座に着座および離座する弁体である。即ち、弁装置の耐久評価を行うことができるとともに、弁装置の試験時間の短縮が可能であり、さらに弁装置の耐久評価を行う耐久評価装置のコストを抑えることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
最良の形態1の耐久評価装置は、第1部材(例えば、バルブボディ等)に対して第2部材(例えば、弁体等)を相対的に往復動させることで、第1部材と第2部材の当接と離間を繰り返させて、第1部材と第2部材が当接と離間を繰り返す当接離間部に当接荷重を繰り返して発生させる当接荷重発生手段と、第1部材と第2部材が当接と離間を繰り返す当接離間部に、テスト媒体を与えるテスト媒体付与手段とを備え、当接離間部にテスト媒体が触れる環境において第1部材と第2部材が当接と離間を繰り返すものである。
【実施例1】
【0018】
実施例1を図1〜図10を参照して説明する。
なお、実施例1〜4は、インジェクタ(燃料噴射弁)におけるノズルアッシー(第1部材と第2部材とが当接と離間を繰り返すテスト部品の一例)の耐久評価装置である。
また、実施例1〜3は、テスト媒体として低臨界燃料(例えばアルコール燃料等の常温常圧で蒸発しやすい燃料:以下、単に燃料と称す)を用いて試験を行う耐久評価装置である。
【0019】
<試験されるノズルアッシーの説明>
先ず、耐久評価装置で試験されるノズルアッシーについて説明する。
ノズルアッシーは、内燃機関に燃料を噴射するインジェクタにおいて燃料の噴射と停止を行うノズルであり、ノズルボディ1(バルブボディの一例:第1部材に相当する)とニードル2(弁体の一例:第2部材に相当する)とで構成される。
ノズルアッシーは、インジェクタが内燃機関に搭載された状態において、ノズルボディ1に対してニードル2が相対的に往復動され、ノズルボディ1とニードル2が当接と離間を繰り返すものである。具体的には、ノズルボディ1の弁座と、ニードル2のシート部とが、着座と離座を繰り返すものである。
なお、内燃機関の運転中にノズルボディ1とニードル2が当接と離間を繰り返す部分、即ちノズルボディ1の弁座とニードル2のシート部が着座と離座を繰り返す部分を、当接離間部Aと称する。
【0020】
以下において、ノズルアッシーの一例を説明する。
ノズルボディ1は、図1中の右側先端部に燃料を噴射するための噴孔を1つまたは複数備える。このノズルボディ1の内部には、棒状のニードル2を摺動自在に保持するための摺動孔3が形成されている。この摺動孔3の中間部位には、孔径が広げられた油溜4が設けられている。また、ノズルボディ1には、外部から油溜4へ燃料を供給する燃料送出路5が形成されている。
【0021】
ニードル2は、ノズルボディ1の摺動孔3内において摺動自在に保持される棒状のもので、先端に形成されたシート部が、ノズルボディ1内の先端側に形成された弁座に着座、離座することで噴孔を閉塞、開放するものである。ニードル2は、油溜4の近傍からシート部まで摺動孔3より小径な小径部6を備え、その小径部6と摺動孔3の間に形成される油路により、油溜4に供給された燃料を先端側に供給する。即ち、外部から燃料送出路5を介して油溜4に供給された燃料は、小径部6と摺動孔3の間を通って当接離間部Aに供給される。
【0022】
上記のようにノズルアッシーは構成されているため、ニードル2のシート部が、ノズルボディ1の弁座から離座すると、ノズルボディ1内と噴孔とが連通して、燃料送出路5からノズルボディ1内に供給された燃料が噴孔から噴射する。また、ニードル2のシート部が、ノズルボディ1の弁座に着座すると、ノズルボディ1内と噴孔との連通が遮断されて、燃料の噴射が停止される。
【0023】
<耐久評価装置の概略構成の説明>
耐久評価装置は、当接離間部Aに燃料が触れる環境においてノズルボディ1とニードル2の当接と離間を繰り返させる装置であり、ノズルボディ1に対してニードル2を相対的に往復動させることで、ノズルボディ1とニードル2の当接と離間を繰り返させて当接荷重を発生させる機能を備えた試験装置本体7と、ノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aに燃料を与える燃料循環装置8(テスト媒体付与手段の一例)と、耐久評価装置の運転制御を行う制御装置9とで構成される。
【0024】
<試験装置本体7の説明>
試験装置本体7は、ノズルアッシーを収容する本体ブロック11と、ノズルボディ1とニードル2の当接荷重を調整する当接荷重調整手段12と、ニードル2を往復動させてノズルボディ1とニードル2の当接と離間を繰り返させる当接荷重発生手段13とから構成される。
【0025】
(本体ブロック11の説明)
本体ブロック11を図1を参照して説明する。
本体ブロック11は、第1ブロック14と第2ブロック15からなり、第1ブロック14内にノズルアッシーを組付けた後、第1ブロック14と第2ブロック15を接合した状態で運転される。なお、第1ブロック14と第2ブロック15の間には、第1シール材16が挟み付けられて、ノズルアッシーが収容される空間(以下、ノズル収容空間Bと称す)に満たされる燃料が外部に漏れないように設けられている。
【0026】
第1ブロック14と第2ブロック15は、同軸上に貫通した貫通穴17a、17bを備える。
第1ブロック14の貫通穴17aの内側には、ニードル2がノズルボディ1に当接した際の当接荷重を外部に取り出す荷重軸18が挿通されている。第1ブロック14の貫通穴17aと荷重軸18との間には、第2シール材19が配置されて、荷重軸18を軸方向に摺動自在に支持するとともに、ノズル収容空間Bに満たされる燃料が外部に漏れないように設けられている。
一方、第2ブロック15の貫通穴17bの内側には、ノズルボディ1内に組付けられたニードル2を軸方向へ往復動させる駆動軸20が挿通されている。第2ブロック15の貫通穴17bと駆動軸20との間には、第3シール材21が配置されて、駆動軸20を軸方向に摺動自在に支持するとともに、ノズル排圧室Cに満たされる燃料が外部に漏れないように設けられている。
【0027】
ノズルアッシーは、第1ブロック14に設けられた貫通穴17aの内部で、且つ荷重軸18と駆動軸20の軸方向の間に設けられたノズル収容空間Bの内部に組付けられるものであり、ニードル2が駆動軸20の先端に結合されることで、ノズルボディ1の中心軸が荷重軸18および駆動軸20と同軸上に支持される。このように、ノズルボディ1は本体ブロック11内において径方向に支持され、ノズルボディ1の外周面(径方向の面)が、本体ブロック11に接触しない状態で支持される。
ノズルボディ1の軸方向の支持を説明する。ノズルボディ1は、荷重軸18によって第2ブロック15側へ押し付けられる構造になっている。なお、荷重軸18がノズルボディ1を第2ブロック15側に押し付ける力(当接荷重に関連する力)については後述する。そして、ノズルボディ1において第2ブロック15とは異なる軸方向に向く面と、第1ブロック14との間には、軸方向隙間αが形成されている。これにより、ニードル2がノズルボディ1に当接した際の当接荷重が全て荷重軸18に加わるようになっている。
【0028】
次に、本体ブロック11に形成された油路を説明する。
第2ブロック15には、外部(燃料循環装置8の第2メイン路51)から供給される燃料を、ノズルボディ1の燃料送出路5に導く燃料供給路22が形成されている。
第1ブロック14には、噴孔から噴射された燃料を外部(燃料循環装置8の第3メイン路52)に排出する燃料排出路23が形成されている。
第1、第2ブロック14、15には、第1ブロック14内に形成されるノズル収容空間Bと、第2ブロック15内に形成されるノズル排圧室Cとを連通する連通路24が形成されており、摺動孔3とニードル2の隙間からノズル排圧室Cにリークした燃料は、連通路24を通ってノズル収容空間Bに導かれる。
なお、ノズル収容空間B内において噴孔近傍に配置された第1温度センサ25は、当接離間部Aを通過した燃料の温度を検出するためのものであり、この第1温度センサ25で検出された計測温度は制御装置9に出力される。
【0029】
(当接荷重調整手段12の説明)
試験装置本体7には、ノズルボディ1とニードル2の当接荷重を調整する当接荷重調整手段12が設けられている。
当接荷重調整手段12は、荷重軸18がノズルボディ1の端部を支持する位置を調整するものであり、荷重センサ26を介して荷重軸18の軸方向位置を決定するセンサ支持ブロック27と、このセンサ支持ブロック27を軸方向へ移動させる微動装置28とから構成される。
荷重軸18とセンサ支持ブロック27の間に介在された荷重センサ26は、荷重軸18を介して伝えられたノズルボディ1とニードル2の当接荷重を検出するものであり、この荷重センサ26で検出された当接荷重は制御装置9に出力される。
また、微動装置28によるセンサ支持ブロック27の移動制御は、荷重センサ26の検出した当接荷重に基づいて制御装置9によりなされるものであり、微動装置28の移動制御、即ちノズルボディ1とニードル2の当接荷重の制御については後述する。
【0030】
(当接荷重発生手段13の説明)
当接荷重発生手段13を、図1、図2を参照して説明する。
この実施例1の当接荷重発生手段13は、回転運動を直線方向の往復運動に変換する装置であり、回転力を発生する電動モータ31と、この電動モータ31の発生した回転運動を往復運動に変換する回転/直線変換手段32とから構成される。そして、回転/直線変換手段32で直線方向に変換された往復運動は、駆動軸20に伝えられて、駆動軸20に連結されたニードル2を往復動させる。
【0031】
電動モータ31は、通電を受けると回転力を発生する周知なものであり、制御装置9によって回転速度(当接と離間の速度)と、回転する数(当接回数)が制御される。
回転/直線変換手段32は、電動モータ31の発生した回転運動を往復運動に変換するものであり、電動モータ31の出力軸と一体に回転する回転軸33と、この回転軸33に固定されるとともに回転軸33に対して偏心回転する偏心カム34と、この偏心カム34の外周面に装着されるとともに偏心カム34に対して回転方向に摺動自在な駆動環35と、この駆動環35と駆動軸20を連結する駆動腕36と、この駆動腕36の揺動を許容して、駆動腕36の軸方向変化量のみを駆動軸20に伝えるジョイント37とから構成される。
なお、回転軸33は、軸受部材38によって回転自在に支持されるものである。また、偏心カム34は、外周縁が円形を呈するものであり、偏心カム34の外周縁の中心と、回転軸33の回転中心とがズレているものである。なお、図1において、偏心カム34の外周縁の中心と、回転軸33の回転中心とのズレ量をeで示す。
【0032】
また、当接荷重発生手段13には、ノズルボディ1とニードル2の当接回数をカウントするために、回転軸33の回転状態(回転速度および回転数)を検出する回転センサ41が設けられている。具体的に、この実施例の回転センサ41は、偏心カム34の回転を検出するピックアップセンサであり、偏心カム34に設けられた第1パルサ42(磁性体、磁石等)が回転センサ41に接近、離間することで、回転軸33の回転状態を検出する。なお、回転センサ41で検出した回転軸33の回転状態は、制御装置9に出力される。
【0033】
<燃料循環装置8の説明>
燃料循環装置8を図3を参照して説明する。
燃料循環装置8は、高圧燃料タンク43内の燃料を試験装置本体7に供給するとともに、試験装置本体7を通過した燃料を高圧燃料タンク43内に回収し、回収した燃料を再び試験装置本体7に供給する閉ループを構成するものである。
即ち、燃料循環装置8は、ノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aを通過する燃料を試験装置本体7に供給し、ノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aを通過した燃料を回収し、回収した燃料を再びノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aに供給する閉ループを構成するものである。
【0034】
実施例1の燃料循環装置8は、高圧燃料タンク43内の燃料を試験装置本体7に供給し、ノズルアッシーで噴射した燃料等を再び高圧燃料タンク43に戻すためのメイン循環回路44と、試験装置本体7を迂回させて燃料を高圧燃料タンク43に戻すための本体バイパス回路45と、燃料を圧縮して高圧燃料タンク43へ戻すための圧縮リターン回路46とから構成される。
【0035】
(メイン循環回路44の説明)
メイン循環回路44は、高圧燃料タンク43内の燃料を、高圧ポンプ47→第1メイン路48→アキュムレータ49→第2メイン路51→試験装置本体7→第3メイン路52→高圧燃料タンク43へ戻す燃料の循環路により構成される。
高圧ポンプ47は、高圧燃料タンク43内の燃料を高圧に圧縮して第1メイン路48へ圧送する燃料ポンプであり、制御装置9によって作動が制御される。
第1メイン路48は、高圧ポンプ47の圧送した燃料をアキュムレータ49に導く燃料配管であり、第1メイン路48の途中には、第1メイン路48を通過する燃料の温度を調整する温度調整装置53と、第1メイン路48を開閉する遮断弁54とが設けられている。
【0036】
温度調整装置53は、第1メイン路48を通過する燃料を加熱、あるいは冷却するものであり、制御装置9によって作動が制御されることで、第1メイン路48を通過する燃料の温度が制御される。
また、遮断弁54も制御装置9によって開閉状態が制御されるものであり、制御装置9により耐久テスト運転中は開弁され、耐久テストが停止すると閉弁される。
【0037】
アキュムレータ49は、第1メイン路48を介して圧送された燃料を蓄圧する燃料蓄圧容器である。
このアキュムレータ49には、アキュムレータ49内の燃料圧力を検出する第1圧力センサ55が取り付けられている。この第1圧力センサ55は、試験装置本体7に供給される燃料の圧力(ノズルの噴射圧力)を検出するものであり、第1圧力センサ55で検出された燃料圧力は制御装置9に出力される。
また、アキュムレータ49には、アキュムレータ49内の燃料温度を検出する第2温度センサ56が取り付けられている。この第2温度センサ56は、試験装置本体7に供給される燃料の温度(ノズルの噴射温度)を検出するものであり、第2温度センサ56で検出された燃料圧力は制御装置9に出力される。
【0038】
第2メイン路51は、アキュムレータ49内に蓄圧された燃料を試験装置本体7に導く燃料配管であり、下流端が第2ブロック15に形成された燃料供給路22に接続される。これにより、本体ブロック11内に装着されたノズルボディ1の燃料送出路5に燃料が供給される。
第3メイン路52は、試験装置本体7から排出された燃料を高圧燃料タンク43へ戻す燃料配管であり、上流端が第1ブロック14に形成された燃料排出路23に接続される。これにより、試験装置本体7から排出された燃料が第3メイン路52を介して高圧燃料タンク43へ戻される。
【0039】
第3メイン路52の途中には、試験装置本体7から排出された燃料圧力が所定の圧力になると開弁する排圧調整弁57が設けられ、試験装置本体7の燃料排圧を所定の圧力に保つように設けられている。
排圧調整弁57の下流側の第3メイン路52には、高圧燃料タンク43へ戻される燃料圧力を検出する第2圧力センサ58が設けられており、第2圧力センサ58で検出された燃料圧力は制御装置9に出力される。
第3メイン路52で、高圧燃料タンク43の直前位置には、高圧燃料タンク43に戻される燃料を冷却して液化させる燃料クーラ59が設けられている。この燃料クーラ59は、試験する燃料の種類に応じて作動させるものである。
【0040】
(本体バイパス回路45の説明)
本実施例の燃料循環装置8には、試験装置本体7を迂回させる本体バイパス回路45が設けられている。
この本体バイパス回路45は、アキュムレータ49に接続されたパージ弁61→第1バイパス路62で構成され、パージ弁61が開弁することにより、アキュムレータ49に蓄圧された燃料を試験装置本体7をバイパスして排圧調整弁57の下流側の第3メイン路52に導くものである。
なお、このパージ弁61の開閉制御は、制御装置9によりなされる。
【0041】
(圧縮リターン回路46の説明)
本実施例の燃料循環装置8には、燃料を圧縮してから高圧燃料タンク43へ戻す圧縮リターン回路46が設けられている。
この圧縮リターン回路46は、第3メイン路52の下流側の一部を迂回する第2バイパス路63に設けられたものであり、三方切替弁64→パージタンク65→コンプレッサ66→逆止弁67が設けられている。
【0042】
三方切替弁64は、第3メイン路52と第2バイパス路63の分岐部に設けられ、高圧燃料タンク43へ通じる燃料流路を、第3メイン路52または第2バイパス路63の一方へ切り替えるもので、制御装置9により作動が制御される。パージタンク65は、気化燃料を蓄える高圧容器である。コンプレッサ66は、気化燃料を加圧して液化させる気化燃料圧縮機であり、制御装置9により作動が制御される。逆止弁67は、三方切替弁64が第3メイン路52を選択している時に、第3メイン路52を流れる燃料がコンプレッサ66へ逆流するのを防ぐ一方向弁である。
【0043】
(高圧燃料タンク43の説明)
高圧燃料タンク43は、コンプレッサ66によって加圧された燃料を蓄えることができる機密容器である。高圧燃料タンク43の上部には、高圧燃料タンク43内の圧力が異常高圧に上昇した際に開弁する第1安全弁68が取り付けられている。
また、高圧燃料タンク43内における第1メイン路48には、第1メイン路48内の燃料圧力が異常高圧に上昇した際に開弁する第2安全弁69が取り付けられている。
さらに、高圧燃料タンク43には、高圧燃料タンク43内の燃料圧力を検出する第3圧力センサ71が取り付けられており、第3圧力センサ71で検出された燃料圧力は制御装置9に出力される。
【0044】
<制御装置9の説明>
制御装置9は、各種の演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(RAM、ROM、SRAM、EEPROM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路等の機能を含んで構成される周知構造のマイクロコンピュータであり、操作パネルによる操作指示、各種センサから読み込まれたセンサ信号に基づいて各種の演算処理を行い、演算結果に基づいて各電気機能部品を制御するようになっている。
なお、当接荷重調整手段12の微動装置28および当接荷重発生手段13の電動モータ31は、駆動回路72から駆動電力が与えられるように設けられている。そして、制御装置9は、演算結果に基づいて駆動回路72を制御することで、微動装置28および電動モータ31の作動を制御する。
【0045】
制御装置9は、運転スイッチがONされると、ROMに記憶されたプログラムと、RAM等に読み込まれたセンサ信号とに基づき、各種の演算処理を行う。
以下において、制御装置9に搭載された制御プログラム(制御機能)について説明する。
制御装置9には、「メイン制御機能」、「当接回数自動停止機能」、「当接荷重制御機能」、「作動温度制御機能」、「作動圧力制御機能」、「循環路切替運転機能」等の各種制御プログラムが搭載されている。
【0046】
(メイン制御機能の説明)
メイン制御機能は、耐久評価装置の基本制御機能であり、入力される当接荷重、当接回数、燃料圧力、燃料温度、およびそれらの各目標値、適正範囲、限界範囲と、各種センサ信号とに基づいて、各種演算処理を実施し、演算結果に基づいて各電気機能部品に制御出力を与える制御プログラムである。
【0047】
このメイン制御機能の制御例を、図4を参照して説明する。
耐久評価装置の運転スイッチがONされ、このメインルーチンに進入すると(スタート)、まず操作パネル等により設定される装置の各種運転値の読み込みを行う(ステップS1)。具体的には、当接回数、当接荷重、燃料圧力、燃料温度、およびそれらの各目標値、適正範囲、限界範囲などの設定値の読み込みを行う。
次に、各種センサ信号の読み込みを行う(ステップS2)。
次に、各種の演算制御を行う(ステップS3)。具体的には、「当接回数自動停止機能」、「当接荷重制御機能」、「作動温度制御機能」、「作動圧力制御機能」、「循環路切替運転機能」等の演算を行う。
次に、演算結果に基づいて、各電気機能部品に制御出力を与える(ステップS4)。
その後、このメインルーチンを終了する(エンド)。実際には、耐久評価装置の運転が停止されるまで、上記のメインルーチンを繰り返す。
【0048】
(当接回数自動停止機能の説明)
当接回数自動停止機能は、ノズルボディ1とニードル2の当接回数Niをカウントする当接カウンタの機能と、この当接カウンタの機能によってカウントされた当接回数Niが、予め設定された目標回数Nt(例えば、107 回)に達すると、耐久テスト運転を自動停止する機能とを備える。
具体的に当接回数自動停止機能は、当接荷重発生手段13に設けられた回転センサ41から、回転軸33の回転数(ノズルボディ1とニードル2の当接回数)Niを検出し、カウントした当接回数Niが目標回数Ntに達すると、耐久評価装置による耐久テスト運転を自動停止(具体的には、少なくとも当接荷重発生手段13における電動モータ31の運転を停止)する機能である。
【0049】
この当接回数自動停止機能の制御例を、図5を参照して説明する。
この当接回数制御ルーチンに進入すると(スタート)、操作パネル等により設定された目標回数(目標当接回数)Ntの読み込みを行う(ステップS11)。
次に、回転センサ41によってカウントされた当接回数Niの読み込みを行う(ステップS12)。
次に、当接回数Niが目標回数Ntに達したか否か(Ni≧Nt)の判断を行う(ステップS13)。このステップS13の判断結果がNOの場合(Ni<Nt)は、運転を継続し(ステップS14)、この制御ルーチンを終了する。
【0050】
ステップS13の判断結果がYESの場合(Ni≧Nt)は、耐久評価装置による耐久テスト運転を自動停止する。具体的には、少なくとも当接荷重発生手段13における電動モータ31の運転を停止し(ステップS15)、運転状態を記憶装置に記憶させ(ステップS16)、表示パネル等に停止表示を行い(ステップS17)、この制御ルーチンを終了する。
【0051】
その後、評価対象であるノズルアッシーを本体ブロック11から取り外し、ノズルボディ1の弁座やニードル2のシート部の摩耗状況、ノズルボディ1とニードル2の摺動部の摩耗状況を調査して、燃料の潤滑性と、ノズルアッシーの信頼性を評価する。
【0052】
(当接荷重制御機能の説明)
当接荷重制御機能を、図6を参照して説明する。なお、図6は回転軸33の回転角度に対するタイミングダイアグラムであり、(1)偏心カム34の偏心回転による駆動環35の軸方向変位ストローク、(2)ニードル2の変位ストローク、(3)ノズルボディ1とニードル2の当接部の変位ストローク、(4)荷重センサ26で検出される当接荷重Fiの変位を示す。
【0053】
この実施例の当接荷重制御機能は、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが、予め設定された適正荷重範囲内(この実施例では、予め設定した目標荷重Ftの±ΔF/2内)から外れた場合(|Ft−Fi|≧ΔF/2)に、当接荷重Fiが目標荷重Ftになるように当接荷重調整手段12を制御する当接荷重調整機能と、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが、予め設定された限界荷重範囲(この実施例では、予め設定した目標荷重Ftの±Fl/2)から外れた場合(|Ft−Fi|≧Fl/2)に、耐久テスト運転を自動停止する対荷重テスト中断機能とを備える。
【0054】
この実施例の当接荷重調整機能は、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが、予め設定された適正荷重範囲内から外れた場合に、当接荷重Fiを目標荷重Ftに変更するセンサ支持ブロック27の移動方向および移動量を算出し、その算出結果に基づいて微動装置28を駆動する制御プログラムである。
なお、この実施例では、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが、予め設定された適正荷重範囲内より外れてから微動装置28をフィードバック制御して当接荷重Fiを目標荷重Ftに変更する例を示すが、変形例として荷重センサ26で検出される当接荷重Fiが常に目標荷重Ftとなるように微動装置28をフィードバック制御しても良い。
【0055】
この実施例の対荷重テスト中断機能は、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが、予め設定された限界荷重範囲から外れた場合に耐久テスト運転を自動停止する機能の他に、上述した当接荷重調整機能が微動装置28を駆動する調整回数(当接荷重Fiが適正荷重範囲内から外れて微動装置28をフィードバック制御する回数)nが予め設定された上限回数kに達すると、耐久テスト運転を自動停止する機能が設けられている。
【0056】
次に、当接荷重制御機能の制御例を、図7を参照して説明する。
この当接荷重制御ルーチンに進入すると(スタート)、操作パネル等により設定された目標荷重Ft、適正荷重範囲ΔF、限界荷重範囲Flの読み込みを行う(ステップS21)。
次に、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiの読み込みを行う(ステップS22)。 次に、当接荷重Fiが適正荷重範囲外であるか否かの判断を行う(ステップS23)。即ち、|Ft−Fi|≧ΔF/2であるか否かの判断を行う。
このステップS23の判断結果がNOの場合は、当接荷重Fiが適正荷重範囲内であり、運転を継続し(ステップS24)、この制御ルーチンを終了する。
【0057】
ステップS23の判断結果がYESの場合(当接荷重Fiが適正荷重範囲外)は、当接荷重Fiが限界荷重範囲外であるか否かの判断を行う(ステップS25)。即ち、|Ft−Fi|≧Fl/2であるか否かの判断を行う。
このステップS25の判断結果がNOの場合は、当接荷重Fiが適正荷重範囲外であるが限界荷重範囲内であり、当接荷重Fiが目標荷重Ftになるように当接荷重調整手段12を制御し、調整回数nを積算する。
即ち、当接荷重Fiを目標荷重Ftに変更するセンサ支持ブロック27の移動方向および移動量を算出し(ステップS26)、その算出結果に基づいて微動装置28を駆動して当接荷重Fiを調整し(ステップS27)、続いて調整回数nを加算する(ステップS28)。
次に、調整回数nが予め設定された上限回数kに達したか否かの判断を行う(ステップS29)。即ち、n≧kであるか否かの判断を行う。
このステップS29の判断結果がNOの場合は、調整回数nが上限回数kに達しておらず、運転を継続するべくステップS22へ戻る。
【0058】
ステップS25の判断結果がYESの場合(当接荷重Fiが限界荷重範囲外)、あるいはステップS29の判断結果がYESの場合(調整回数nが上限回数kに達した場合)は、耐久評価装置による耐久テスト運転を自動停止する。具体的には、少なくとも当接荷重発生手段13における電動モータ31の運転を停止し(ステップS30)、運転状態を記憶装置に記憶させ(ステップS31)、表示パネル等に停止表示を行い(ステップS32)、この制御ルーチンを終了する。
【0059】
(作動温度制御機能の説明)
作動温度制御機能は、第1温度センサ25で検出した計測温度Tiが、予め設定された適正温度範囲内(この実施例では、予め設定した目標温度Ttの±ΔT/2内)から外れた場合(|Tt−Ti|≧ΔT/2)に、計測温度Tiが目標温度Ttになるように温度調整装置53を制御する温度調整機能と、第1温度センサ25で検出した計測温度Tiが、予め設定された限界温度範囲(この実施例では、予め設定した目標温度Ttの±Tl/2)から外れた場合(|Tt−Ti|≧Tl/2)に、耐久テスト運転を自動停止する対温度テスト中断機能とを備える。
【0060】
この実施例の温度調整機能は、第1温度センサ25で検出した計測温度Tiが、予め設定された適正温度範囲内から外れた場合に、計測温度Tiを目標温度Ttに変更する熱量(加熱量あるいは冷熱量)を算出し、その算出結果に基づいて温度調整装置53を制御する制御プログラムである。
なお、この実施例では、第1温度センサ25で検出した計測温度Tiが、予め設定された適正温度範囲内より外れてから温度調整装置53をフィードバック制御して計測温度Tiを目標温度Ttに変更する例を示すが、変形例として第1温度センサ25で検出される計測温度Tiが常に目標温度Ttとなるように温度調整装置53をフィードバック制御しても良い。
【0061】
この実施例の対温度テスト中断機能は、第1温度センサ25で検出した計測温度Tiが、予め設定された限界温度範囲から外れた場合に耐久テスト運転を自動停止する機能の他に、上述した温度調整機能が温度調整装置53を制御する調整回数(計測温度Tiが適正温度範囲内から外れて温度調整装置53をフィードバック制御する回数)nが予め設定された上限回数kに達すると、耐久テスト運転を自動停止する機能が設けられている。
【0062】
次に、作動温度制御機能の制御例を、図8を参照して説明する。
この作動温度制御ルーチンに進入すると(スタート)、操作パネル等により設定された目標温度Tt、適正温度範囲ΔT、限界温度範囲Tlの読み込みを行う(ステップS41)。
次に、第1温度センサ25で検出した計測温度Tiの読み込みを行う(ステップS42)。
次に、計測温度Tiが適正温度範囲外であるか否かの判断を行う(ステップS43)。即ち、|Tt−Ti|≧ΔT/2であるか否かの判断を行う。
このステップS43の判断結果がNOの場合は、計測温度Tiが適正温度範囲内であり、運転を継続し(ステップS44)、ステップS42へ戻る。
【0063】
ステップS43の判断結果がYESの場合(計測温度Tiが適正温度範囲外)は、計測温度Tiが限界温度範囲外であるか否かの判断を行う(ステップS45)。即ち、|Tt−Ti|≧Tl/2であるか否かの判断を行う。
このステップS45の判断結果がNOの場合は、計測温度Tiが適正温度範囲外であるが限界温度範囲内であり、計測温度Tiが目標温度Ttになるように温度調整装置53を制御し、調整回数nを積算する。
即ち、計測温度Tiを目標温度Ttに変更する熱量を算出し(ステップS46)、その算出結果に基づいて温度調整装置53を制御して計測温度Tiを調整し(ステップS47)、続いて調整回数nを加算する(ステップS48)。
次に、調整回数nが予め設定された上限回数kに達したか否かの判断を行う(ステップS49)。即ち、n≧kであるか否かの判断を行う。
このステップS49の判断結果がNOの場合は、調整回数nが上限回数kに達しておらず、運転を継続するべくステップS42へ戻る。
【0064】
ステップS45の判断結果がYESの場合(計測温度Tiが限界温度範囲外)、あるいはステップS49の判断結果がYESの場合(調整回数nが上限回数kに達した場合)は、耐久評価装置による耐久テスト運転を自動停止する。具体的には、少なくとも往復動制御手段における電動モータ31の運転を停止し(ステップS50)、運転状態を記憶装置に記憶させ(ステップS51)、表示パネル等に停止表示を行い(ステップS52)、この制御ルーチンを終了する。
【0065】
(作動圧力制御機能の説明)
作動圧力制御機能は、第1圧力センサ55で検出したアキュムレータ49内の計測圧力Piが、予め設定された適正圧力範囲内(この実施例では、予め設定した目標圧力Ptの±ΔP/2内)から外れた場合(|Pt−Pi|≧ΔP/2)に、計測圧力Piが目標圧力Ptになるように高圧ポンプ47の吐出量(単位時間あたりの吐出量)を制御する圧力調整機能と、第1圧力センサ55で検出した計測圧力Piが、予め設定された限界圧力範囲(この実施例では、予め設定した目標圧力Ptの±Pl/2)から外れた場合(|Pt−Pi|≧Pl/2)に、耐久テスト運転を自動停止する対圧力テスト中断機能とを備える。
【0066】
この実施例の圧力調整機能は、第1圧力センサ55で検出した計測圧力Piが、予め設定された適正圧力範囲内から外れた場合に、計測圧力Piを目標圧力Ptに変更する吐出量を算出し、その算出結果に基づいて高圧ポンプ47を制御する制御プログラムである。 なお、この実施例では、第1圧力センサ55で検出した計測圧力Piが、予め設定された適正圧力範囲内より外れてから高圧ポンプ47をフィードバック制御して計測圧力Piを目標圧力Ptに変更する例を示すが、変形例として第1圧力センサ55で検出される計測圧力Piが常に目標圧力Ptとなるように高圧ポンプ47をフィードバック制御しても良い。
【0067】
この実施例の対圧力テスト中断機能は、第1圧力センサ55で検出した計測圧力Piが、予め設定された限界圧力範囲から外れた場合に耐久テスト運転を自動停止する機能の他に、上述した圧力調整機能が高圧ポンプ47を制御する調整回数(計測圧力Piが適正圧力範囲内から外れて高圧ポンプ47をフィードバック制御する回数)nが予め設定された上限回数kに達すると、耐久テスト運転を自動停止する機能が設けられている。
【0068】
次に、作動圧力制御機能の制御例を、図9を参照して説明する。
この作動圧力制御ルーチンに進入すると(スタート)、操作パネル等により設定された目標圧力Pt、適正圧力範囲ΔP、限界圧力範囲Plの読み込みを行う(ステップS61)。
次に、運転停止の信号が入力されたか否かの判断を行う(ステップS62)。
このステップS62の判断結果がNOの場合(運転スイッチON状態)は、第1圧力センサ55で検出した計測圧力Piの読み込みを行う(ステップS63)。
次に、計測圧力Piが適正圧力範囲外であるか否かの判断を行う(ステップS64)。即ち、|Pt−Pi|≧ΔP/2であるか否かの判断を行う。
このステップS64の判断結果がNOの場合は、計測圧力Piが適正圧力範囲内であり、運転を継続し(ステップS65)、ステップS63へ戻る。
【0069】
ステップS64の判断結果がYESの場合(計測圧力Piが適正圧力範囲外)は、計測圧力Piが限界圧力範囲外であるか否かの判断を行う(ステップS66)。即ち、|Pt−Pi|≧Pl/2であるか否かの判断を行う。
このステップS66の判断結果がNOの場合は、計測圧力Piが適正圧力範囲外であるが限界圧力範囲内であり、計測圧力Piが目標圧力Ptになるように高圧ポンプ47を制御し、調整回数nを積算する。
即ち、計測圧力Piを目標圧力Ptに変更する吐出量を算出し(ステップS67)、その算出結果に基づいて高圧ポンプ47を制御して計測圧力Piを調整し(ステップS68)、続いて調整回数nを加算する(ステップS69)。
次に、調整回数nが予め設定された上限回数kに達したか否かの判断を行う(ステップS70)。即ち、n≧kであるか否かの判断を行う。
このステップS70の判断結果がNOの場合は、調整回数nが上限回数kに達しておらず、運転を継続するべくステップS63へ戻る。
【0070】
ステップS62の判断結果がYESの場合(運転停止指示が与えられた場合)、ステップS66の判断結果がYESの場合(計測圧力Piが限界圧力範囲外)、あるいはステップS70の判断結果がYESの場合(調整回数nが上限回数kに達した場合)は、耐久評価装置による耐久テスト運転を自動停止する。具体的には、少なくとも往復動制御手段における電動モータ31の運転を停止し(ステップS71)、パージ弁61を開弁させ(ステップS72)、運転状態を記憶装置に記憶させ(ステップS73)、表示パネル等に停止表示を行い(ステップS74)、この制御ルーチンを終了する。
【0071】
(循環路切替運転機能の説明)
循環路切替運転機能は、燃料循環装置8におけるメイン循環回路44、本体バイパス回路45および圧縮リターン回路46の切替および運転制御を行うプログラムであり、(1)第2圧力センサ58で検出される第3メイン路52内のリターン燃料圧力Prtが、第3圧力センサ71で検出される高圧燃料タンク43内のタンク圧力Ptankより高い場合(Ptank<Prt)に、メイン循環回路44で燃料を循環させ、(2)第2圧力センサ58で検出される第3メイン路52内のリターン燃料圧力Prtが、第3圧力センサ71で検出される高圧燃料タンク43内のタンク圧力Ptankを超えない場合(Ptank≧Prt)に、圧縮リターン回路46を介して燃料を循環させるとともに、圧縮リターン回路46において蒸発燃料を加圧して高圧燃料タンク43へ戻し、(3)耐久テスト運転中に運転停止指示が与えられた場合に、本体バイパス回路45を介してアキュムレータ49内に蓄圧された燃料を高圧燃料タンク43へ戻す制御プログラムである。
【0072】
次に、循環路切替運転機能の制御例を、図10を参照して説明する。
この循環路切替運転制御ルーチンに進入すると(スタート)、第2圧力センサ58で検出したリターン燃料圧力Prtの読み込みを行う(ステップS81)。
次に、運転停止の信号が入力されたか否かの判断を行う(ステップS82)。
このステップS82の判断結果がNOの場合(運転スイッチON状態)は、第3圧力センサ71で検出したタンク圧力Ptankの読み込みを行う(ステップS83)。
次に、リターン燃料圧力Prtがタンク圧力Ptankより高いか否かの判断を行う(ステップS84)。即ち、Ptank<Prtであるか否かの判断を行う。
【0073】
このステップS84の判断結果がYESの場合(Ptank<Prt)は、メイン循環回路44で燃料を循環させる。即ち、高圧燃料タンク43へ通じる燃料流路を、三方切替弁64によって第3メイン路52を選択して第2バイパス路63を閉塞する(ステップS85)。続いて、コンプレッサ66が作動している場合はコンプレッサ66を停止させ(ステップS86)、運転状態を記憶装置に記憶させ(ステップS87)、この制御ルーチンを終了する。
【0074】
このステップS84の判断結果がNOの場合(Ptank≧Prt)は、圧縮リターン回路46で燃料を循環させる。即ち、高圧燃料タンク43へ通じる燃料流路を、三方切替弁64によって第2バイパス路63を選択する(ステップS88)。続いて、コンプレッサ66を運転させて気化燃料を圧縮し(ステップS89)、その後、運転状態を記憶装置に記憶させ(ステップS87)、この制御ルーチンを終了する。
【0075】
一方、ステップS82の判断結果がYESの場合(運転停止指示が与えられた場合)は、本体バイパス回路45で燃料を循環させる。即ち、耐久評価装置による耐久テスト運転を停止し(ステップS90)、次にパージ弁61を開弁し(ステップS91)、コンプレッサ66が作動している場合はコンプレッサ66を停止させ(ステップS92)、続いて表示パネル等に停止表示を行い(ステップS93)、運転状態を記憶装置に記憶させ(ステップS87)、この制御ルーチンを終了する。
【0076】
<実施例1の効果>
実施例1の耐久評価装置は、上述した構成を採用することにより、次の効果を得ることができる。
(1)試験装置本体7の本体ブロック11内にノズルアッシーが配置されて、ノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aに燃料が触れる環境で、ノズルボディ1とニードル2が当接と離間を繰り返す。このため、高速往復摩擦試験装置(HFRR)では評価が困難であったノズルアッシーの耐久評価を行うことができる。
【0077】
(2)電動モータ31と回転/直線変換手段32による当接荷重発生手段13によってニードル2を往復動させるものであるため、従来技術のように実際の内燃機関等を用いなくても、ノズルボディ1とニードル2の当接と離間を繰り返えさせることができる。即ち、電動モータ31の回転速度を速めるだけで、ノズルボディ1とニードル2の当接と離間を繰り返す速度を容易に速めることができる。この結果、試験時間の短縮を行うことができる。
【0078】
(3)電動モータ31と回転/直線変換手段32による当接荷重発生手段13によってニードル2を往復動させる構造であるため、従来技術のように実際の内燃機関等を用いなくても、ノズルボディ1とニードル2の当接と離間を繰り返えさせることができる。この結果、耐久評価装置のコストを抑えることができるとともに、耐久評価装置の体格を小型化および軽量化することが可能になる。
【0079】
(4)燃料循環装置8によって、ノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aに燃料を通過させる構造であるため、当接離間部Aに摩耗粉が滞留しない。このため、当接離間部Aに滞留した摩耗分により摩耗量がバラツクことで耐久評価の精度が低下する不具合を回避することができる。
【0080】
(5)燃料循環装置8によって、ノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aを通過した燃料を、再び当接離間部Aに供給する閉ループを構成するものであるため、燃料を無駄に消費しない。また、燃料が大気中等に漏れるのを防ぐことができるため、高い安全性を確保できる。
【0081】
(6)ノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aを通過する燃料は、蒸発しやすい低臨界燃料であるが、燃料循環装置8によってノズルボディ1とニードル2の当接離間部Aに燃料を供給する構造であるため、試験を行うことができる。
【0082】
(7)制御装置9に設けられた当接回数自動停止機能により、ノズルボディ1とニードル2の当接回数Niが、予め設定された目標回数Ntに達すると、耐久テスト運転が自動停止するため、当接回数Niがテスト毎に変動する不具合がなく、耐久評価の精度を高めることができる。
【0083】
(8)制御装置9に設けられた当接荷重制御機能により、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが、予め設定された適正荷重範囲内から外れた場合に、当接荷重調整手段12の微動装置28を駆動して当接荷重Fiを目標荷重Ftに変更するため、摩耗の進行等の要因によって当接荷重Fiが大きく変動する不具合を回避することができ、耐久評価の精度を高めることができる。
【0084】
(9)制御装置9に設けられた対荷重テスト中断機能により、荷重センサ26で検出した当接荷重Fiが、予め設定された限界荷重範囲から外れた場合に耐久テスト運転が自動停止する。これによって、耐久テスト運転中に「テスト部品であるノズルアッシーの破損」、「ノズルアッシーの焼き付き固着」などの不具合が生じた場合に、直ちに運転が停止されるため、破損状態、破損時の摩耗状態、固着状態を詳しく解析することが可能になる。
【0085】
(10)制御装置9に設けられた作動温度制御機能により、第1温度センサ25で検出した計測温度Tiが、予め設定された適正温度範囲内から外れた場合に、温度調整装置53を制御して計測温度Tiを目標温度Ttに変更するため、当接離間部Aの温度変化による評価のバラツキを抑えることができ、耐久評価の精度を高めることができる。
【実施例2】
【0086】
実施例2を図11を参照して説明する。なお、以下の各実施例において、実施例1と同一符号は同一機能物を示す。また、以下の各実施例では、実施例1に対して異なる部分を説明する。
上記実施例1では、ノズルボディ1の先端に当接する荷重軸18とセンサ支持ブロック27の間に配置した荷重センサ26によって、ノズルボディ1とニードル2の当接荷重Fiを検出するように設けるとともに、センサ支持ブロック27を微動装置28により軸方向へ移動させることでノズルボディ1とニードル2の当接荷重Fiを調整する例を示した。
これに対し、この実施例2は、ニードル2を往復動させる駆動軸20の途中に荷重センサ26を配置して、ノズルボディ1とニードル2の当接荷重Fiを駆動軸20に加わる負荷荷重によって検出するように設けるとともに、本体ブロック11を微動装置28により軸方向へ移動させることでノズルボディ1とニードル2の当接荷重Fiを調整するものである。
【0087】
具体的には、駆動軸20を軸方向に分割して第1、第2駆動軸20a、20bとし、センサ支持ブロック27に設置した荷重センサ26を第1、第2駆動軸20a、20bで挟み付ける構造を採用している。
また、ノズルボディ1と第1ブロック14の間の軸方向隙間αが0に設けられ(α=0)、ノズルボディ1に発生する荷重を、本体ブロック11が受けるように設けられている。これにより、微動装置28により本体ブロック11を軸方向へ移動させることにより、ノズルボディ1とニードル2の当接荷重Fi(荷重センサ26の検出する当接荷重Fi)を調整することができる。
【0088】
(実施例2の効果)
上記実施例2の構造を採用する耐久評価装置は、次の効果を得ることができる。
(1)ニードル2に加わる荷重を直接的に荷重センサ26で検出することができるため、耐久評価の精度を高めることができる。
(2)実施例1で示した荷重軸18を廃止することができるため、試験装置本体7の軸方向寸法を短縮できる。
(3)実施例1で示した荷重軸18を廃止することで、荷重軸18と第1ブロック14の間のシールが不要になり、燃料漏れに対してより安全性が高まる。
【実施例3】
【0089】
実施例3を図12を参照して説明する。
上記実施例1の試験装置本体7では、当接荷重発生手段13によってニードル2を軸方向へ往復駆動する例を示した。
これに対して、この実施例3の試験装置本体7は、当接荷重発生手段13の他に、ノズルボディ1に対してニードル2を相対的に回転させる回転駆動手段73を備えるものである。
即ち、この実施例3の試験装置本体7は、当接荷重発生手段13によってニードル2を軸方向へ往復駆動しながら、回転駆動手段73によってニードル2を回転駆動可能なものである。
【0090】
実施例3の回転駆動手段73は、当接荷重発生手段13と組み合わされて、駆動軸20を回転させるものであり、実施例3の駆動軸20は回転自在に設けられている。具体的に、実施例3では、駆動軸20とジョイント37の間には、駆動軸20の回転を許容して、ジョイント37の軸方向変化量のみを駆動軸20に伝える第2ジョイント74が設けられている。第2ジョイント74の一例を説明すると、第2ジョイント74は、駆動軸20の外周に全周に亘って形成された環状溝74aと、ジョイント37と結合された部材において環状溝74a内に係合するピン74bとで構成され、ジョイント37に対して駆動軸20が回転できるようになっている。
【0091】
この実施例3の回転駆動手段73は、駆動軸20の周囲に固定された歯車75を、第2電動モータ76で回転駆動する。第2電動モータ76は、駆動回路72を介して制御装置9により回転速度が制御される。
歯車75と第2電動モータ76の噛合範囲は、軸方向に長く設けられており、駆動軸20とともに歯車75が往復動しても、第2電動モータ76で歯車75を回転駆動することができるようになっている。なお、駆動軸20と歯車75を軸方向に摺動自在で、且つ駆動軸20と歯車75の回転が規制される嵌合部で連結しても良い。
ここで、歯車75は回転伝達手段の一例であり、ベルト等他の回転伝達手段を採用しても良い。また、当接荷重発生手段13に用いられる電動モータ31の回転を利用して駆動軸20を回転駆動させても良い。その場合、電動モータ31の回転速度に対して駆動軸20の回転速度を変更する独立可変手段を設けたり、電動モータ31の回転が駆動軸20に伝わるのを遮断する回転遮断手段を設けるなどしても良い。
【0092】
当接荷重発生手段13は、ノズルボディ1に対するニードル2の回転速度を検出するために、駆動軸20の回転を検出する第2回転センサ77が設けられている。具体的に、この実施例の第2回転センサ77は、駆動軸20の回転状態を検出するピックアップセンサであり、駆動軸20に固定された第2パルサ78(磁性体、磁石等)が第2回転センサ77に接近、離間することで、駆動軸20の回転状態を検出するように設けられている。
そして、第2回転センサ77で検出される駆動軸20の回転状態、即ちニードル2の回転状態は、制御装置9に出力される。
制御装置9は、第2回転センサ77で検出される駆動軸20の回転速度が、予めコントロールパネル等で設定した目標回転速度となるように、第2電動モータ76の回転速度を制御するように設けられている。
【0093】
(実施例3の効果)
上記実施例3の構造を採用する耐久評価装置は、固定保持されたノズルボディ1に対してニードル2を回転可能に設けることで、ノズルボディ1とニードル2とが当接と離間を繰り返す際に、ノズルボディ1に対してニードル2が回転するインジェクタを再現することができる。このように、現実のインジェクタの作動に近づけた状態で耐久テストを行うことができるため、耐久評価の精度を高めることができる。
【実施例4】
【0094】
実施例4を図13を参照して説明する。
上記実施例1〜3の耐久評価装置は、テスト媒体として低臨界燃料を用いる例を示した。
これに対して、実施例4の耐久評価装置は、テスト媒体として気体燃料(例えば水素燃料等、常温常圧で気化する気体燃料:以下、単に気体燃料と称す)を用いて試験を行うものである。
【0095】
実施例4は、実施例1に開示した耐久評価装置に対して燃料循環装置8の構成が一部異なるものであり、その相違部分を説明する。
この実施例4では、実施例1で示した高圧燃料タンク43に代わり、気体燃料を加圧した状態で蓄える高圧ボンベ81を燃料源としている。高圧ボンベ81の出口部には、開閉と吐出圧を調整する調圧&遮断弁82が設けられている。
【0096】
ここで、実施例1で開示した第3圧力センサ71は、この実施例4では第1メイン路48の上流側の燃料圧力(供給圧)を検出するように設けられている。
そして、制御装置9には、耐久テストの運転中、第3圧力センサ71で検出される供給圧が予め設定された目標圧力となるように、調圧&遮断弁82の開度を自動調節する圧力調整機能が搭載されている。
【0097】
この実施例4では、試験装置本体7あるいは本体バイパス回路45を通過した後に第1メイン路48に戻されるリターン燃料は気体であり、且つ高圧ボンベ81内の圧力より低い。このため、試験装置本体7あるいは本体バイパス回路45を通過した燃料は、常にコンプレッサ66で加圧されて第1メイン路48に戻されるようになっている。
具体的には、試験装置本体7あるいは本体バイパス回路45を通過した気体燃料は、第1パージタンク83→コンプレッサ66→逆止弁67→第2パージタンク84→燃料クーラ59→三方切替弁64→第2逆止弁85を通って、高圧ボンベ81と温度調節装置53の間の第1メイン路48に戻される。
この実施例4の三方切替弁64は、第2パージタンク84と第1メイン路48の上流側との間に設けられ、第2パージタンク84を通過した気体燃料を、第1メイン路48の上流側あるいは開放路86の一方へ切り替えるものである。なお、開放路86には、リターン圧が設定圧に上昇した際に開弁して、気体燃料を大気中に放出させる安全弁87が設けられている。
【0098】
ここで、実施例1で開示した第2圧力センサ58は、この実施例4では第2パージタンク84の内圧(リターン圧)を検出するように設けられ、第3圧力センサ71は、上述したように、第1メイン路48の上流側の燃料圧力(供給圧)を検出する。
制御装置9には、第2圧力センサ58で検出されるリターン圧が、第3圧力センサ71で検出される供給圧より高くなると、三方切替弁64を開弁(第3メイン路52と第1メイン路48とを連通)させて、第2パージタンク84内に蓄えられた気体燃料を第1メイン路48の上流側へ戻す切替制御機能が搭載されている。
【0099】
一方、制御装置9には、耐久テスト運転が停止されると、遮断弁54、調圧&遮断弁82、三方切替弁64を全て閉弁する自動閉弁機能が搭載されている。
これにより、耐久テスト運転が停止されると、安全弁87の設定圧以上の気体燃料(安全のため有害でない水素のような気体燃料)は、開放路86から大気中へ放出される。ここで、安全弁87は、急激な圧力開放を緩和する作用を奏するとともに、所定の残圧を燃料循環装置8内に維持する作用も奏する。
なお、この実施例4では、有害でない気体燃料の一部を大気に開放する例を示したが、開放路86から別のタンクに気体燃料を回収するように設けても良い。このように、別のタンクに気体燃料を回収するように設けることで、有害な気体燃料の耐久テストを安全に行うことも可能になる。
【実施例5】
【0100】
実施例5を図14を参照して説明する。
この実施例5の耐久評価装置は、上記実施例1に対して、主に、(1)微動装置28の構成と、(2)荷重軸18とノズルボディ1の当接位置とが異なるものである。
【0101】
(微動装置28の説明)
上記実施例1の微動装置28は、微動装置28に搭載される図示しない駆動手段によってセンサ支持ブロック27(符号、図1参照)を直接的に荷重軸18の軸方向に沿って移動させて、ノズルボディ1とニードル2の当接荷重を調整するものであった。
これに対し、実施例5の微動装置28は、図14に示されるように、荷重軸18の軸方向に対して交差する傾斜面(この実施例では上下方向に傾斜した面)91aに沿ってテーパテーブル92を移動させ、ノズルボディ1とニードル2の当接荷重を調整するものである。
【0102】
具体的に、実施例5の微動装置28は、荷重軸18の軸方向に対して交差する傾斜面91aを備える斜台91と、傾斜面91aに沿って移動可能なテーパテーブル92と、このテーパテーブル92と荷重センサ26の間に挟まれて両者の摩擦を無くすスライダ93と、テーパテーブル92を傾斜面91aに沿って移動させる駆動手段とを備える。
この駆動手段は、通電により回転する電動モータ94と、この電動モータ94の回転を直線移動に変換する回転/直線変換手段とからなる。この回転/直線変換手段は、電動モータ94により回転駆動される雄ネジ(駆動軸)95と、この雄ネジ95と螺合するテーパテーブル92に形成された雌ネジ(図示しない)とからなり、電動モータ94の回転によって雄ネジ95が回転することにより、テーパテーブル92が上昇または下降する。
【0103】
一方、テーパテーブル92は、荷重軸18に直交してスライダ93に摺接する垂直面92aと、この垂直面92aとは平行でなく、斜台91の傾斜面91aに沿うテーパ面92bとを備え、テーパテーブル92の上昇量または下降量を制御することで、荷重軸18の軸方向荷重、即ちノズルボディ1とニードル2の当接荷重を制御するものである。
【0104】
このような微動装置28を採用することにより、斜台91の傾斜面91aに沿ってテーパテーブル92を大きく移動させても、駆動軸18の軸方向変移量を僅かにできる。これにより、荷重軸18の軸方向荷重、即ちノズルボディ1とニードル2の当接荷重の制御精度を高めることができる。また、微動装置28(具体的には電動モータ94)に必要とされる駆動トルクを小さくすることができる。
【0105】
(荷重軸18とノズルボディ1の当接位置の説明)
上記実施例1では、荷重軸18がノズルボディ1の先端と当接する例を示した。
これに対し、この実施例5では、荷重軸18の図示左端がノズルボディ1の肩部1aに当接し、肩部1aを介してノズルボディ1に当接荷重を与えるように設けられている。
そのため、この実施例5の荷重軸18には、図示左側にノズルボディ1の先端側(ステム部1b)を隙間を隔てて覆う中空部18aが設けられ、その中空部18a内にステム部1bを収容するようになっている。また、荷重軸18には、ノズルボディ1の噴孔から中空部18a内に噴射された燃料を第3メイン路52へ導くための内外連通孔18bが形成されている。
【0106】
この実施例5のように、ノズルボディ1の肩部1aに当接荷重を与えることで、荷重負荷が与えられる位置が実機ノズル(実際に車両に搭載されて使用される状態)と略同じとなる。これにより、ノズルボディ1の弁座やニードル2のシート部の摩耗状況、ノズルボディ1とニードル2の摺動部の摩耗状況を、実機に近い状態で再現できる。即ち、実機に近い状態で、燃料の潤滑性と、ノズルアッシーの信頼性を評価することが可能となる。
【0107】
[変形例]
上記の実施例では、目標荷重Ftが変更されない例を示したが、当接回数Niや耐久テスト時間経過に応じて、目標荷重Ftを段階的あるいは連続的に変更しても良い。
上記の実施例では、目標温度Ttが変更されない例を示したが、当接回数Niや耐久テスト時間経過に応じて、目標温度Ttを段階的あるいは連続的に変更しても良い。
上記の実施例では、目標圧力Ptが変更されない例を示したが、当接回数Niや耐久テスト時間経過に応じて、目標圧力Ptを段階的あるいは連続的に変更しても良い。
【0108】
上記の実施例では、当接荷重発生手段13の発生する往復動の軸方向と、ニードル2の軸方向とを一致させた例を示したが、当接荷重発生手段13の発生する往復動の軸方向と、ニードル2の軸方向とが異なり、当接荷重発生手段13の発生する往復動を連結手段でニードル2に与えるように設けても良い。
【0109】
上記の実施例では、電動モータ31と回転/直線変換手段32によって当接荷重発生手段13を構成する例を示したが、リニアソレノイド、ピエゾアクチュエータなど、他の駆動装置によりニードル2を軸方向に往復駆動させても良い。
【0110】
上記の実施例では、テスト部品の一例としてノズルボディ1とニードル2からなるノズルアッシーを例示したが、インジェクタの電磁弁、燃料ポンプの調量弁、減圧弁など、燃料噴射装置に搭載される他の弁装置はもちろん、EGRバルブや吸気バルブなど、車両に搭載される他の弁装置、さらには家庭用、業務用など種々の弁装置の耐久テストに本発明を適用することができる。即ち、2つの部材が当接と離間を繰り返す全ての弁装置の耐久テストに本発明を用いることができる。さらに、弁装置でなくても、2つの部材が当接と離間を繰り返すものであれば、本発明を用いて耐久テストを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】試験装置本体の概略断面図である(実施例1)。
【図2】当接荷重発生手段の上視図である(実施例1)。
【図3】耐久評価装置の概略構成図である(実施例1)。
【図4】メイン制御機能の制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図5】当接回数自動停止機能の制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図6】回転軸の回転角度に対するタイミングダイアグラムである(実施例1)。
【図7】当接荷重制御機能の制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図8】作動温度制御機能の制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図9】作動圧力制御機能の制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図10】循環路切替運転機能の制御例を示すフローチャートである(実施例1)。
【図11】試験装置本体の概略断面図である(実施例2)。
【図12】試験装置本体の概略断面図である(実施例3)。
【図13】耐久評価装置の概略構成図である(実施例4)。
【図14】試験装置本体の概略断面図である(実施例5)。
【図15】高速往復摩擦試験装置の概略構成図である(従来例)。
【符号の説明】
【0112】
1 ノズルボディ(バルブボディ、第1部材)
2 ニードル(弁体、第2部材)
8 燃料循環装置(閉ループの循環路を成すテスト媒体付与手段)
9 制御装置
12 当接荷重調整手段
13 当接荷重発生手段
25 第1温度センサ
26 荷重センサ
53 温度調整装置
73 回転駆動手段
A 当接離間部
Fi 当接荷重
Ft 目標荷重
ΔF 適正荷重範囲
Fl 限界荷重範囲
Ti 計測温度
Tt 目標温度
ΔT 適正温度範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に対して第2部材を相対的に往復動させることで、前記第1部材と前記第2部材の当接と離間を繰り返させて、前記第1部材と前記第2部材が当接と離間を繰り返す当接離間部に当接荷重を繰り返して発生させる当接荷重発生手段と、
前記第1部材と前記第2部材が当接と離間を繰り返す当接離間部に、テスト媒体を与えるテスト媒体付与手段とを備え、
前記当接離間部にテスト媒体が触れる環境において前記第1部材と前記第2部材が当接と離間を繰り返すことを特徴とする耐久評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の耐久評価装置において、
前記テスト媒体付与手段は、前記当接離間部にテスト媒体を通過させることを特徴とする耐久評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載の耐久評価装置において、
前記テスト媒体付与手段は、前記当接離間部を通過したテスト媒体を、再び前記当接離間部に供給する閉ループを構成することを特徴とする耐久評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載の耐久評価装置において、
前記閉ループを循環するテスト媒体は、常温常圧で蒸発しやすい液体、あるいは常温常圧で気化する気体であることを特徴とする耐久評価装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれかに記載の耐久評価装置において、
この耐久評価装置は、
前記第1部材と前記第2部材の当接回数をカウントする当接カウンタと、
この当接カウンタのカウントした当接回数が、予め設定された目標回数に達すると、耐久テスト運転を自動停止する制御装置と、
を備えることを特徴とする耐久評価装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれかに記載の耐久評価装置において、
この耐久評価装置は、
前記第1部材と前記第2部材の当接荷重を変更する当接荷重調整手段と、
前記第1部材と前記第2部材の当接荷重を検出する荷重センサと、
この荷重センサで検出した当接荷重が、予め設定された目標荷重、あるいは予め設定された適正荷重範囲内になるように前記当接荷重調整手段を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする耐久評価装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちのいずれかに記載の耐久評価装置において、
この耐久評価装置は、
前記第1部材と前記第2部材の当接荷重を検出する荷重センサと、
この荷重センサで検出した当接荷重が、予め設定された限界荷重範囲から外れた場合に、耐久テスト運転を自動停止する制御装置と、
を備えることを特徴とする耐久評価装置。
【請求項8】
請求項2〜請求項7のうちのいずれかに記載の耐久評価装置において、
この耐久評価装置は、
前記当接離間部に供給するテスト媒体の温度を変更する温度調整装置と、
前記当接離間部におけるテスト媒体の温度を検出する第1温度センサと、
この第1温度センサで検出した計測温度が、予め設定された目標温度、あるいは予め設定された適正温度範囲内になるように前記温度調整装置を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする耐久評価装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちのいずれかに記載の耐久評価装置において、
この耐久評価装置は、
前記当接荷重発生手段の他に、
前記第1部材に対して前記第2部材を相対的に回転させる回転駆動手段を備えることを特徴とする耐久評価装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のうちのいずれかに記載の耐久評価装置において、
前記第1部材は、弁座を備えるバルブボディであり、
前記第2部材は、前記弁座に着座および離座する弁体であることを特徴とする耐久評価装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2006−308553(P2006−308553A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12703(P2006−12703)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【Fターム(参考)】