説明

耐候光試験方法及び耐候光試験機

【課題】所定の温度及び湿度のもとで所定の光を試料に照射する耐候光試験機において、試験槽内の温度を精度良く制御すると共に、広範な湿度域において、光源からの放射照度を均一にして、省エネルギーで運転可能な耐候光試験方法及び耐候光試験機を提供する。
【解決手段】加熱器の制御回路内に温度演算回路を設け加熱器出力を制御し、加熱器と冷却器を連動させて、それぞれの運転負荷が最少になるように運転することによって、測温体の値を制御し、加熱器の制御回路内に除湿演算回路を設け湿度センサからの情報を加えて加熱器を作動させ、冷凍機のインバータの周波数を試験槽に作用する熱負荷の程度に応じて選択して冷却器を稼働させ、インバータで矩形に制御した電力で光源を点灯する手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験槽内に人工光源を配し、前記人工光源の周囲に試料およびブラックパネル温度計を装着した試料枠を有し、試験槽内に光源からの光を遮断した位置に乾球温度計と湿度センサを設け、前記ブラックパネル温度計あるいは前記乾球温度計と前記湿度センサの値に基づいて冷却器、加熱器、加湿器を運転することによってブラックパネル温度あるいは試験槽内の温度および湿度を制御し、インバータ回路で制御した交流電源によって光源を点灯する耐候光試験方法及び耐候光試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
耐候光試験機は、試験槽内に試料を配し、所定の温度及び湿度のもとで所定の光を前記試料に照射して促進劣化させることによって前記試料の寿命を短時間で求めるものである。前記試験槽内には人工光源を設置し、その周囲に前記試料およびブラックパネル温度計を装着した試料枠を有し、それらを露光させると共に、試験槽内の空気は、循環送風機によって前記試験槽に隣接して設けた調温調湿室に導かれ、冷却器、加熱器、加湿器によって所定の温度および湿度にして再び前記試験槽内に導入される。
【0003】
特許文献1では、耐候光試験機の試験槽内に設けた測温体によって冷凍機およびヒータの温度制御を行うことが記述されており、耐候光試験機においてこの形式を採用しているものが一般的である。試験槽内の温度に影響する因子は様々だが、前記耐候光試験機の外気温度と光源から発する熱によるものが大部分である。前記外気温度は昼と夜の間にゆっくりと変化するため急激な変動が少ない。また、光源からの熱の影響も、光源の放射照度を一定にして試験を行っている場合においては変動が少ない。このように急激な変化が起こらない状況においては試験槽内の温度を一定に制御することは容易である。しかし、キセノンアークランプや、メタルハライドランプの場合には、ランプが点灯を開始し所定の放射照度に達する際に放射照度が急激に上昇する。この所定の放射照度に達する際の放射照度の変化の程度はランプの種類やその放電電力によって異なる。そのため、放射照度が大きく、かつ短時間に急激に変化する光源を用い、前述の温度制御方式を採用した耐候光試験機の場合には、放射照度が急激に上昇する際の光源からの急激な発熱に冷却が対処しきれなくなり、設定温度を超える、いわゆるオーバーシュート状態になる。
【特許文献1】特開2005−181028
【0004】
また、前記試験機と前記調温調湿室を循環する空気は、冷却器と加熱器を作動させることによりブラックパネル温度計および乾球温度計の値が設定値になるように温度制御する。ここで、制御の精度を上げるために設定値と現在値およびこれらの履歴を基にPID値を用いて演算して求めた操作量で冷却器と加熱器を作動させる制御システムを採用したものがある。耐候光試験機の温度制御は可能な限り冷却器と加熱器を低負荷状態で運転することが経済的に好ましいが、この制御システムは冷却器と加熱器が高負荷運転状態で温度制御する場合もあり、省エネルギー運転とは言い難い状況になることが多々ある。また、特許文献2には、冷却器は、循環空気を冷却すると同時に除湿も行うために、前記循環空気の湿度も低下することが記述されており、高湿度の試験条件の場合において、高負荷状態で冷却器を運転すると、設定した湿度条件を満たすことが困難になる。
【特許文献2】特開2002−55043
【0005】
また、特許文献1には、試験槽内の湿度は、湿度センサの測定値を基に加湿器をオン、オフ制御して調節している、との記述がある。このことは、湿度と温度の制御が独立しているということであり、冷却器および加熱器の制御はブラックパネル温度計あるいは乾球温度計の値で行っていることを意味している。従って、湿度を下げて試験を行う場合には到達湿度に限界があり、低湿度の環境を得ることは困難である。
【0006】
また、耐候光試験機の電源部は、一般には商用交流電源を利用して位相差制御回路によって電力を調整して光源を点灯している。このときの光源に供給される交流電源の波形は、SCRの特性上、単にサイン波形の一部を切り取った波形にはならずに、1/2サイクル中にピーク電圧が複数有する波形になる場合もあり、光源はその波形に追従する強度の光を発生するので、放射照度は肉眼では一定に感じられても、1ヘルツの間の放射照度の変化を測定すると、変動した状態になっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の耐候光試験機では、温度、湿度、放射照度の高精度制御および省エネルギー運転において次のような問題点があり、そしてこれらの問題点は相互に関連しているため独立して解決することは困難であった。
【0008】
温度を設定値に保つためには、試験槽内に設けた測温体の値によって冷却器および加熱器で温度制御を行うが、ランプの種類やその放電電力によって、光源の点灯開始時に放射照度が急激に上昇することがある。この場合には光源からの急激な発熱に冷却が対処できずオーバーシュート状態となり、その結果、無駄にエネルギーを消費している。
【0009】
また、温度制御において試験槽内の測温体の値が設定値を保っている状態で、冷却器および加熱器の負荷状態を低負荷状態にすることを考慮したものはなく、冷却器および加熱器が同時かつ高負荷状態で運転している場合があり、非常にエネルギー効率が悪い。
【0010】
高湿度が要求される試験条件の場合において、冷却器が高負荷状態で運転されていると除湿作用が激しく生ずるので、当該条件を満たすことができない。
【0011】
また、温度と湿度の制御は独立しており、湿度センサから加熱器あるいは冷却器もしくはその両方へ情報が伝達されることはなく、測温体からの情報のみで冷却器および加熱器を制御していた。この結果、温度制御のために作動中の冷却器で生ずる除湿は湿度センサの値とは連動せず、低湿度が要求される試験条件の場合において、当該条件を満たすことができない。
【0012】
点灯光源の電源には商用交流電源を利用し、位相差制御回路によって調整した電力を供給しているが、電力の波形はSCRの特性上、1/2サイクル中にピーク電圧を複数有する波形になる場合があり、この影響で放射照度が一定にならない。
【0013】
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであり、したがって、本発明の目的は、省エネルギー運転で、温度と、湿度と、放射照度と、を高精度制御化し、再現性に優れた試験を行うことができる耐候光試験方法及び耐候光試験機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、前記測温体の値が予め設定した値になるように、加熱器の制御回路内に測温体の値を制御する温度演算回路を設け、前記予め設定した値と、予め温度演算回路内に設定したPID値と測温体からの情報を基に演算して求めた操作量を百分率で表示し、前記操作量の30%から70%の間に一点の値をとり、前記操作量が前記一点の値未満のときには、百分率で表した加熱器への負荷電力(以降相対負荷電力と記述)を0%とし、前記操作量が100%のときには、加熱器の相対負荷電力を100%とし、前記操作量がその間のときには、その間の操作量と加熱器の相対負荷電力を直線で結ぶ関係で加熱器を作動させることによって測温体の値を制御する。このことにより、光源からの熱のエネルギーのみで試験槽内の測温体の値が設定値以上になるような強い光源の場合において、従来の加熱器の制御では、操作量に連動して加熱器を作動させていたところを、前記温度演算回路により、測温体の値が設定値に達したならば加熱器の出力を最小にし、光源からの熱のエネルギーと冷却器の出力のみで測温体の値を設定値で維持することができる。また、点灯開始時において、前記のエネルギーの強い光源では、測温体の値を急激に上昇させるため、温度演算回路からの操作量はこれに伴って低くなり、加熱器への相対負荷電力は最小となる。そのため、点灯開始時の光源からの急激な発熱に冷凍機による冷却が対応しきれなることによって測温体の温度が設定温度を越えてしまう、いわゆるオーバーシュート状態を防止することができる。
【0015】
また、冷凍機の制御回路に前記測温体の設定値と同一の値を設定値として入力し、前記加熱器の制御回路内の温度演算回路に測温体の値の許容される温度範囲の中央値より低く、かつ前記測温体の値の許容下限値以上の値を設定値として入力し、前記加熱器の制御回路内の温度演算回路と前記冷凍機の制御回路において、前記測温体の現在値及びPID演算に必要な時間内の温度履歴(以降測温体の情報と記述)に対して加熱器の予め設定したPID値と冷却器の予め設定したPID値を基に演算して求めた操作量で前記加熱器と前記冷却器を作動させることによって前記測温体の値を制御する手段を具備させる。このことにより、冷却器と加熱器が連動し、冷却器および、加熱器の出力が最小になる。つまり、余分な冷却、加熱をなくし、省エネルギーで試験できる。また、従来の耐候光試験機よりも冷却器への負荷が小さくなるため、除湿も少なくなり、高湿度の条件で試験が可能となる。
【0016】
また、試験槽内の湿度が設定値よりも高い場合において、除湿効果を高めるために、最適負荷以上の電力を加熱器に付与する。これに伴って冷却器への冷媒の供給量が増加する。この冷媒の供給量の増加分だけ従来よりも除湿作用が増すことによって、より低湿度雰囲気を得るものである。すなわち、湿度センサからの情報を基に、加湿器の湿度制御回路に予め設定したPID値を用いて、加湿器用ヒータへの相対負荷電力を制御する操作量を演算し、その値によって加湿器用ヒータへの相対負荷電力を制御すると共に、前記試験槽内の湿度が設定値よりも高い場合には、湿度センサの現在値及びPID演算に必要な時間内の温度履歴(以降湿度センサの情報と記述)と、加湿器の湿度制御回路に予め設定したPID値を用いて、加湿器用ヒータの出力を制御する操作量を演算し、その値によって加湿器用ヒータの出力を制御すると共に、加熱器の制御回路内に湿度センサからの情報で前記加熱器を作動させる除湿演算回路を設け、前記湿度センサからの情報を基に、予め設定したPID値を基に求めた操作量の10%から30%の間に一点の値をとり、操作量が前記一点の値を超えたときには、加熱器への相対負荷電力を0%とし、前記操作量が0%のときには、加熱器への相対負荷電力を100%とし、その間を直線で結ぶ操作量と加熱器の相対負荷電力との関係を基に演算した除湿演算回路からの操作量を加え、操作量が100%を超えた場合には100%で加熱制御することによって前記湿度を制御する手段を具備させる。これにより低湿度の条件での試験が可能となる。
【0017】
また、冷凍機の定格運転吸込み圧力範囲内において冷却器の冷媒の供給量を膨張弁で変えることによって温度を制御する手段を具備させる。
【0018】
また、電動機の回転数を決定する周波数を選択設定できるインバータで回転数を制御する冷凍機を搭載し、光源の負荷電力を変化させたときの光源からの熱による測温体の温度上昇分を相殺する冷却能力に対応する前記インバータの周波数を求め、そのデータを前記冷凍機の制御回路に記憶させておき、前記測温体の情報に応じて、前記制御回路で自動的に周波数を選択して冷凍機を運転し、冷却器に連結する前記膨張弁から冷媒の供給量を制御する手段を具備させる。このことにより、省エネルギー運転で、温度制御の優れた試験が可能となる。
【0019】
また、光源に対向して設置した受光器で測定した放射照度の値をインバータ型点灯電力出力回路に伝達し、予め設定した放射照度と前記受光器で測定した放射照度の値が一致するように前記インバータ型点灯電力出力回路から電圧が零ボルトを中点とし正負に変化する矩形の交流を光源に負荷することにより均一な放射照度で試験することができる。
【発明の効果】
【0020】
上述したように本発明では、光源点灯時の光源からの急激な発熱により、設定温度を逸脱するオーバーシュート現象を防止でき、冷却器又は加熱器の出力を最小にして運転し、低湿度域から高湿度域の広い範囲で試験が可能になり、また、冷却器は冷媒の流量を変化させ、冷凍機のインバータの周波数を試験槽に作用する熱負荷の程度に応じて選択して冷却器を稼働し、インバータで点灯光源電力の波形を均一な矩形波にして一定で均一な放射照度で試験が可能になるので、温度、湿度、放射照度を高精度に制御し、再現性に優れた試験を行うとともに省エネルギーで試験ができる耐候光試験方法及び耐候光試験機を提供できる。

【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の耐候光試験機(1)の実施例1のブロック図である。
【0022】
図1に示した耐候光試験機(1)は、試験槽(2)内中央に7.5kwのキセノンランプを光源(3)として配し、光源(3)の周囲を試料、受光器(4)及びブラックパネル温度計(5)を懸架した直径が580mmの試料枠(6)が回転し、冷却器(7)と、加熱器(8)と、加湿器(9)と、によって調温調湿された空気を循環用ブロワ(10)で試験槽(2)内に送ることによりブラックパネル温度計(5)の温度並びに試験槽(2)内温度及び湿度を制御しながら試料の促進劣化を行う試験機である。
【0023】
次に操作手順に従って、その機能を記述する。始めに、試験条件(ブラックパネル温度:63±2℃、相対湿度:50%RH、放射照度:60w/m、・・・JIS L 0843:2006)を図には示してないが試験条件設定回路に入力し、本耐候光試験機(1)の電源をオンにすると、前記試験条件設定回路に予め設定した試験条件に従って試験を開始する。
【0024】
ブラックパネル温度計(5)を設定値63℃に維持するためにブラックパネル温度計(5)の値を基に、加熱器制御回路(11)内の温度演算回路(12)および冷却器制御回路(13)であらかじめ設定したPID値で演算した操作量を加熱器用電力出力回路(14)および冷凍機用電力出力回路(15)に伝達する。冷凍機用電力出力回路(15)では、内蔵のインバータ回路によって操作量に対応した周波数および電圧をインバータ駆動冷凍機(20)の電動機に供給する。加熱器制御回路(11)では、受信した操作量に連動した電力を加熱器用電力出力回路(14)から加熱器(8)に供給する。
【0025】
図2は、実施例1の加熱器制御回路(11)内の温度演算回路(14)の操作量と加熱器出力との関係を示した図である。加熱器制御回路(11)内の温度演算回路(12)の操作量(パーセント表示、実際は4〜20mA出力)と加熱器用電力出力回路(14)の最大電力を100としたときの相対電力値との関係をグラフに示したものである。温度演算回路(12)では、前記一点の値すなわち加熱器稼働開始を操作量が50%のところに設定し、操作量が0%以上50%未満のときは、加熱器用電力出力回路(14)からの出力電力を0%として、操作量が50%以上100%までのときは、予め設定したPIDの値で演算した操作量に基づいた電力で加熱器(8)を稼働させる。
【0026】
図3は、実施例1の照射開始時のブラックパネル温度の変化を示した図である。本耐候光試験機(1)の照射開始時のブラックパネル温度計(5)の値が設定値である63℃に到達する前後の状態を示したものである。図3には従来の加熱器制御すなわち、図2において加熱器稼働を操作量が0%のところから開始した場合の結果も併せて示した。図3から明らかなように、本発明による温度制御は、設定温度を逸脱するオーバーシュート現象は生じていない。
【0027】
また、前記試験条件設定回路に照射時のブラックパネル温度計(5)の値を63℃に保持するように設定し、冷却器制御回路(13)には、ブラックパネル温度計(5)の現在値を入力し、加熱器制御回路(11)内の温度演算回路(12)には、ブラックパネル温度計(5)の現在値より0.5℃低い値を入力する。このことにより冷却作用が加熱作用より強く働くことと等価の状態となり、ブラックパネル温度計(5)の値が63℃以下を示す状態になるまでは、加熱および冷却作用が減少する状態が続き、光源(3)からの熱量が少ない場合には冷却が不要になり、加熱器(8)を作動させるだけで、温度制御が可能となる。また、光源(3)からの熱量が多い場合には、加熱が不要になり、冷却器(7)を作動させるだけで、温度制御が可能となる。
このことで、従来よりも冷却に必要な電力が少なくなるので、除湿が少なくなり、高湿度の条件で試験が可能となる。
【0028】
図4は、実施例1のブラックパネル温度を一定に保持したときの冷却器操作量と加熱器操作量との関係を示した図である。60w/mの照射強度で試験を行った場合のブラックパネル温度計(5)の値、加熱器制御回路(11)の操作量、冷却器制御回路(13)の操作量の変化を時間経過とともに示したものである。図4には従来の方式で制御した場合の結果も併せて示した。本発明の制御方法の場合には、点灯開始後2時間ほどで、冷却器(7)を作動させる必要がなくなり省エネルギー運転が可能となるが、従来の方法では、図4から明らかなように設定温度を維持するために、加熱と冷却が同時にかつ高負荷状態で作用し、エネルギー効率の悪い状態となっていた。
図5は、本発明の耐候光試験機(1)の実施例1の到達可能相対湿度範囲を示した図である。併せて、従来の方法で行った場合に得られる湿度範囲も示した。図5から明らかなように、従来の方法の場合に比べてより高湿度域で試験することが可能になった。
【0029】
試験槽(2)内の湿度の制御は湿度センサ(16)の値を基に加湿器制御回路(17)で予め設定したPID値で、加湿操作量を演算しその値を加湿器用電力出力回路(18)に伝達し操作量に対応した電力を加湿器(9)に供給するが、高い湿度条件において試験を行う場合には、除湿のために試験槽(2)内の湿度センサ(16)の値を基に、加熱器制御回路(11)内の除湿演算回路(19)で、図6は、実施例1の加熱器制御回路内の除湿演算回路の操作量と加熱器出力との関係を示した図である。前記操作量から求めた加湿用加熱操作量を温度演算回路(12)の加熱操作量に加えた値に対応する電力で加熱器(8)を稼働させる。このとき前記加湿操作量が20%から100%の間は、加湿用加熱操作量が0となる運転を行うことによって、低湿度側の除湿効果が一層高くなる。
【0030】
図5に示すように、本発明によって、高湿度域及び低湿度域での試験が可能になる。
【0031】
また図には示していないが、インバータ駆動冷凍機(20)と冷却器(7)の間には冷媒の流量を調整する膨張弁が装着してあり、ブラックパネル温度計(5)の値をもとに膨張弁の開度を調節し冷却器(7)への冷媒の流量をインバータ駆動冷凍機(20)の許容作動圧力範囲内で変化させて温度を制御する。このことによって、精密な温度制御が可能となるとともに、許容範囲内の圧力で冷却するので、故障の低減、長寿命化が可能になる。
【0032】
また、冷却器(7)は、複数の周波数を段階的に選択できるインバータでインバータ駆動冷凍機(20)の回転を制御して温度を制御する。設定した複数の周波数で温度制御を行ったときの光源(3)への負荷電力と測温体の値との関連を求め、そのデータを前記試験条件設定回路に記憶させておき、槽内の設定温度より前記測温体の値が高い場合には、現在の周波数より一段大きな周波数でインバータ駆動冷凍機(20)を作動させて冷却し、前記測温体の値が前記設定温度より低い場合には、前記設定温度と前記測温体の値との差の程度に応じて冷却器(7)に連結する膨張弁と加熱器(8)とを作動させる。
【0033】
図7は、本発明の耐候光試験機(1)の実施例1の点灯電圧の変化と放電電圧の変化を対応させて示した図である。本発明の耐候光試験機(1)は、受光器(4)で、測定した光源(3)の放射照度を電流値に置き換え、該電流値をインバータ型点灯電力出力回路(21)に伝達し、予め設定した放射照度と該電流値の関係から、試験条件に見合った該電流値になるようにインバータ回路で商用電源を変換した矩形波にした交流で光源(3)を点灯して、ちらつきのない均一な放射照度で試験を行った。このときの光源(3)に供給電源の波形を従来の位相制御型の場合の波形と共に図7に示す。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の耐候光試験機の実施例1のブロック図である。
【図2】図2は、実施例1の加熱器制御回路内の温度演算回路の操作量と加熱器出力との関係を示した図である。
【図3】図3は、実施例1の照射開始時のブラックパネル温度の変化を示した図である。
【図4】図4は、実施例1のブラックパネル温度を一定に保持したときの冷却器操作量と加熱器操作量との関係を示した図である。
【図5】図5は、本発明の耐候光試験機の実施例1の到達可能相対湿度範囲を示した図である。
【図6】図6は、実施例1の加熱器制御回路内の除湿演算回路の操作量と加熱器出力との関係を示した図である。
【図7】図7は、本発明の耐候光試験機の実施例1の点灯電圧の変化と放電電圧の変化を対応させて示した図である。
【符号の説明】
【0035】
1 耐候光試験機
2 試験槽
3 光源
4 受光器
5 ブラックパネル温度計
6 試料枠
7 冷却器
8 加熱器
9 加湿器
10 循環用ブロワ
11 加熱器制御回路
12 温度演算回路
13 冷却器制御回路
14 加熱器用電力出力回路
15 冷凍機用電力出力回路
16 湿度センサ
17 加湿器制御回路
18 加湿器用電力出力回路
19 除湿演算回路
20 インバータ駆動冷凍機
21 インバータ型点灯電力出力回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器と加熱器と加湿器とによって試験槽内に設置した測温体の値と試験槽内の湿度を高精度に制御して試料を促進劣化させる耐候光試験方法において、
前記測温体の値が予め設定した値になるように、加熱器の制御回路内に測温体の値を制御する温度演算回路を設け、前記予め設定した値と、予め温度演算回路内に設定したPID値と測温体からの情報を基に演算して求めた操作量を百分率で表示し、前記操作量の30%から70%の間に一点の値をとり、前記操作量が前記一点の値未満のときには、百分率で表した加熱器への負荷電力(以降相対負荷電力と記述)を0%とし、前記操作量が100%のときには、加熱器の相対負荷電力を100%とし、前記操作量がその間のときには、その間の操作量と加熱器の相対負荷電力を直線で結ぶ関係で加熱器を作動させることによって測温体の値を制御することと、
冷凍機の制御回路に、前記測温体の設定値と同一の値を設定値として入力し、
前記加熱器の制御回路内の温度演算回路に測温体の値の許容される温度範囲の中央値より低く、かつ前記測温体の値の許容下限温度以上の値を設定値として入力し、前記測温体の情報と加熱器及び冷却器の制御回路で予め設定したPIDの値を基に演算して求めた各操作量で、前記冷却器と前記加熱器を作動させることによって前記測温体の値を制御することと、
前記試験槽内の湿度が設定値よりも高い場合には、湿度センサからの情報を基に、加湿器の湿度制御回路に予め設定したPID値を用いて、加湿器用ヒータの出力を制御する操作量を演算し、その値によって加湿器用ヒータの出力を制御すると共に、加熱器の制御回路内に湿度センサからの情報で前記加熱器を作動させる除湿演算回路を設け、前記湿度センサからの情報を基に、予め設定したPID値を基に求めた操作量の10%から30%の間に一点の値をとり、操作量が前記一点の値を超えたときには、加熱器への相対負荷電力を0%とし、前記操作量が0%の時には、加熱器への相対負荷電力を100%とし、その間を直線で結ぶ操作量と加熱器の相対負荷電力との関係を基に演算した除湿演算回路からの操作量を、測温体の値を基に求めた温度演算回路からの操作量に加え、操作量が100%を超えた場合には100%で加熱制御することによって前記湿度を制御することと、
を備えていることを特徴とする耐候光試験方法。
【請求項2】
測温体の値を基に、冷凍機の定格運転吸込み圧力範囲内において冷却器の冷媒の供給量を変化させることによって前記測温体の値を制御することを特徴とする請求項1記載の耐候光試験方法。
【請求項3】
電動機の回転数を決定する周波数を選択設定できるインバータで回転数制御する冷凍機を搭載し、光源の負荷電力を変化させたときの光源からの熱による測温体の温度上昇分を相殺する冷却能力に対応する前記インバータの周波数を求め、そのデータを前記冷凍機の制御回路に記憶させておき、前記測温体の設定値と現在値との差に応じて、前記制御回路で自動的に周波数を選択して冷凍機を運転することによって冷却器に連結する膨張弁から冷媒の供給量を制御することを特徴とする請求項1及び2記載の耐候光試験方法。
【請求項4】
前記光源に対向して設置した受光器で測定した放射照度の値をインバータ型点灯電力出力回路に伝達し、予め設定した放射照度と前記受光器で測定した放射照度の値が一致するように前記インバータ型点灯電力出力回路から電圧が零ボルトを中点とし正負に変化する矩形の交流を光源に負荷して前記光源の放射照度を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の耐候光試験方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の耐候光試験方法を実施するための耐候光試験機。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−26156(P2008−26156A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199246(P2006−199246)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【特許番号】特許第3903150号(P3903150)
【特許公報発行日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】