説明

耐候光試験機用空気調和装置及び該空気調和装置を搭載した耐候光試験機

【課題】従来の空気調和装置は、上下開閉蓋が上下動して吸排気と循環を行うタイプで、上下開閉蓋が全開の場合、上下開閉蓋と排気口の隙間間隔が大きく排気風量が多いので、試験槽内の蒸気が逃げてしまった。上下開閉蓋が全閉の場合は、排気風量がゼロとなり、上下開閉蓋の上下動により排気風量が大きく変動するので、湿度の変動幅を小さく、高湿度に制御することは困難であった。
【解決手段】温湿度が標準状態の試験場所に、耐候光試験機を設置し、空気調和装置の上下開閉蓋と排気口との隙間間隔と、設定試験湿度の相関を予め求めておき、隙間間隔を駆動手段により設定し、間隔表示手段に表示する。試験槽内湿度を高湿度で、小さな変動幅に制御するために、試験中は隙間間隔を狭めて固定し、排気風量を一定に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候光試験機用の空気調和装置と、その空気調和装置を搭載した耐候光試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、プラスチック、ゴム、塗料などの産業用原材料の寿命を予測することは、産業の発展のために欠かせないことである。物質の劣化は、光、雨、露、雪、温度、湿度、腐食性ガス、塩分など様々な要因が複雑にからみあって生じるが、そのメカニズムを究明するために耐候光試験機が開発された。
【0003】
耐候光試験機は、自然環境に近い環境条件を人工的に造りだし、自然環境との相関をとりながら、物質の劣化を促進させる装置である。太陽光を模擬した紫外線蛍光灯、紫外線カーボンアーク灯、サンシャインカーボンアーク灯、キセノンアークランプ、メタルハライドアークランプ等を光源とし、その放射照度、試験槽内空気の温度や湿度、ブラックパネル温度等を制御して、試料を暴露実験する装置である。
【0004】
空気調和装置は、耐候光試験機を構成する重要な部品のひとつで、試験槽内の温度、湿度を設定するために、吸気、排気等の換気、試験機内空気の循環など、耐候光試験機の空気の流通を制御する装置である。
【0005】
従来の耐候光試験機用空気調和装置は、試験槽内空気温度を検知して自動制御で上下開閉蓋を上下動させ、試験槽内空気の吸排気と循環を行う。即ち、試験槽内温度が設定試験温度を上回る場合、上下開閉蓋を開き、外気を吸引して試験槽内温度を下げ、また、試験槽内温度が設定試験温度を下回る場合、上下開閉蓋を閉じ、吸排気せず、槽内循環にして、試験槽内温度を上昇させるものであった。
上下開閉蓋を開き、排気するときは、排気を再吸入しないように、上下開閉蓋仕切板14と遮風板10及び風路切換弁6によって、排気と吸気を隔絶させ、空気置換効率と循環効率を高めたものであった。 (特許文献1参照)
【0006】
【特許文献1】実願2006−52
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の空気調和装置は、上下開閉蓋を上昇させ、全開にすると排気口との隙間間隔が大きく開口するので、蒸気を含んだ試験槽内空気を多く排出する。上下開閉蓋を下降させ、全閉にすると排気風量はゼロとなり、排気風量の変動が大きい。そのため、試験槽内の湿度の変動幅が大きく、湿度制御が困難であるとともに、高湿度が得られないという問題があった。

【課題を解決するための手段】
【0008】
JIS Z 8703(試験場所の標準状態)によれば、試験を実施する場所の標準状態は、温度20℃、23℃、25℃のいずれかとし、相対湿度50%、65%のいずれかを組み合わせたものである。温度の許容差は温度5級の±5℃、湿度の許容差は湿度10級の±10%を採用するのが一般的である。
さらに、JIS B 7753(サンシャインカーボンアーク灯式耐光性及び耐候性試験機)によれば、サンシャインカーボンアーク灯式耐候光試験機を設置する場所は、温度23±5℃、相対湿度65±10%であることが望ましい。
【0009】
空気調和装置は耐候光試験機を構成する重要な部品で、本発明の空気調和装置は、筒形の形状をしており、本体仕切板11により内部を垂直方向に排気用風路2と吸気用風路1に分け、各々の上部を排気口7、吸気口12とする。排気用風路2下方には循環用風路3を設ける。
上下開閉蓋4は上下開閉蓋頂部13と遮風板10と上下開閉蓋仕切板14とから構成され、吸気口12と排気口7を形成するとともに、吸気と排気を隔絶させる機能を持つ。この上下開閉蓋4の上下動は駆動手段5によって行われる。
風路切換弁6はリンク棒15で上下開閉蓋4と連結しており、上下開閉蓋4の動きに応じて循環用風路3を開放または遮断する。
排気口7と上下開閉蓋4との隙間間隔8、即ち設定試験湿度に対応した数値を表示する手段を、空気調和装置に備える。
【0010】
前記数値を求めるために、試験開始前に、外気温湿度に応じた設定試験湿度と前記隙間間隔8との相関を予め求めておく。
試験の湿度条件を設定するときは、駆動手段5を用いて、設定試験湿度に対応する前記隙間間隔8の値に上下開閉蓋4の位置を定める。
試験開始後は、上下開閉蓋4を上下動させず、一定に維持する。
従来の上下開閉蓋の開閉は、前述のごとく、試験槽内の温度を基に、設定温度を超えたときは全開としていたので、排気の際に蒸気を大量に排出し、蒸気発生機からの蒸気の供給が追従せず、高湿度環境が得られなかったが、本発明の手段では、前述の予め求めた隙間間隔は、上下開閉蓋を全開状態で作動することはなく、より狭められるので、従来の方法よりも高湿度環境が得られる。

【発明の効果】
【0011】
外気温湿度に応じた設定試験湿度と隙間間隔8の相関を予め求め、隙間間隔8を固定して試験するので、排気風量は一定となるとともに過剰の吸排気をすることもないので、槽内湿度の変動幅の小さい安定した試験が可能となる。隙間間隔8の値は従来と比べ小さくなり、開口部が狭まるので、放出される蒸気量が減少し、試験槽内空気を高湿度に維持することが可能となる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の空気調和装置を図1に示した。図2に間隔表示手段9を拡大して示し、隙間間隔8が設定試験湿度に対応して表示されている。さらに、その空気調和装置を搭載した耐候光試験機を図3に示した。
耐候光試験機と空気調和装置は、ステンレス鋼などの耐熱、耐腐食性材料から製作される。

【実施例1】
【0013】
サンシャインカーボンアーク灯式耐候光試験機に本発明の空気調和装置を搭載した一例を図3に示す。
本耐候光試験機は、光源としてサンシャインカーボン16を上下に4対配置して放電させる方式を採用している。主な構成部品として、光源が点灯して過熱した空気を槽外に排気するためのアーククーラー17、試料を取り付けるための試料ホルダ18、試料ホルダを試験槽内に設置し、回転させるための試料回転枠19、試料表面温度の代表値を示すブラックパネル温度計20、試験槽内空気に蒸気を供給する蒸気発生機21、試験槽内空気を加温するためのエアーヒータ22、試験機全体の吸排気と循環を司る送風機23と空気調和装置24、サンシャインカーボンアーク放電を安定させるアーク安定装置25等から構成される。
【0014】
たとえば、外気温度が23℃、外気湿度が65%RHの場合には、前記隙間間隔が、
設定試験湿度30%RHのときは、隙間間隔40mm
設定試験湿度50%RHのときは、隙間間隔35mm
設定試験湿度70%RHのときは、隙間間隔25mm
のように、予め求められた。
試験条件が、連続照射、ブラックパネル温度63℃±3℃、湿度70%±5%RHの場合は、隙間間隔を25mmに設定する。
【0015】
外気が試験場所の標準状態である温度28℃、湿度55%RHのときに前記試験条件で試験した結果、ブラックパネル温度は63℃、槽内湿度は70%RHを示し、かつ槽内湿度は70±3%RHの小さな変動幅を示し、高湿度で試験条件の許容範囲内の安定した状態で試験ができた。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の空気調和装置の一例を示す外観図である。
【図2】本発明の間隔表示手段を拡大した図である。
【図3】本発明の空気調和装置を搭載した耐候光試験機の一例を示すもので、耐候光試験機側面から見た断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 吸気用風路
2 排気用風路
3 循環用風路
4 上下開閉蓋
5 駆動手段
6 風路切換弁
7 排気口
8 隙間間隔
9 間隔表示手段
10 遮風板
11 本体仕切板
12 吸気口
13 上下開閉蓋頂部
14 上下開閉蓋仕切板
15 リンク棒
16 サンシャインカーボン
17 アーククーラー
18 試料ホルダ
19 試料回転枠
20 ブラックパネル温度計
21 蒸気発生機
22 エアーヒータ
23 送風機
24 空気調和装置
25 アーク安定装置






























【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐候光試験機用の高湿度型空気調和装置において、
吸気用風路1と、排気用風路2と、循環用風路3と、上下開閉蓋4と、前記上下開閉蓋の駆動手段5と、風路切換弁6とから構成される空気調和装置であって、
外気温湿度に応じた設定試験湿度と、排気口7と前記上下開閉蓋4との隙間間隔8との相関をあらかじめ求めておき、
前記隙間間隔8を設定することによって、
試験槽内の湿度を制御することを特徴とする空気調和装置。

【請求項2】
設定試験湿度に対応した前記隙間間隔の値を表示する手段を、空気調和装置に具備することを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。

【請求項3】
請求項1から請求項2いずれかに記載の空気調和装置を搭載することを特徴とする耐候光試験機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−116250(P2008−116250A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297844(P2006−297844)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【特許番号】特許第3965506号(P3965506)
【特許公報発行日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000107583)スガ試験機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】