説明

耐刃防護衣

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐刃防護衣に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、暴漢がアイスピック、ナイフ、出刃包丁等の刃物類で襲ってきたときに、刃物類によって体が傷付けられないように、耐刃防護衣が提供されている。該耐刃防護衣は、刃物類が容易に貫通することがない厚さを有する金属製のプレートによって形成され、所定の方法で前記プレートを体の周囲に固定することによって装着するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の耐刃防護衣は、金属製のプレートによって形成されるので、装着する人の体型及び動作に合わせて変形させることができず、装着感が悪い。
【0004】本発明は、前記従来の耐刃防護衣の問題点を解決して、装着する人の体型及び動作に合わせて変形させることができ、装着感を良くすることができる耐刃防護衣を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明の耐刃防護衣においては、積層構造の表面側において複数の金属製の第1のプレートを隣接させて形成された第1の防刃層と、前記積層構造の裏面側において複数の金属製の第2のプレートを隣接させて形成された第2の防刃層と、前記第1の防刃層より表側に配設され、摩擦係数の大きい材料から成り、刃物類の先端が横に流れるのを防止するための摩擦プレートとを有する。また、該摩擦プレート、第1の防刃層及び第2の防刃層によって、表面から裏面にかけて積層構造が形成される。そして、前記各第1のプレート間の隣接線と、前記各第2のプレート間の隣接線とはずらされる。本発明の他の耐刃防護衣においては、さらに、前記第1のプレート間に所定の幅のクリアランスが形成される。そして、前記第2のプレート間のクリアランスの幅は0にされる。
【0006】そして、前記各第1のプレート間の隣接線と、前記各第2のプレート間の隣接線とはずらされる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】図2は本発明の実施の形態における耐刃防護衣の前方外観図、図3は本発明の実施の形態における耐刃防護衣の後方外観図である。
【0009】図において、11は内部に図示されない防刃板状体が収容された胸部、12、13は前肩部、14は背部、15、16は後肩部、17、18は前記胸部11の両脇に形成された第1の被巻着部、19は前記胸部11のほぼ中央に形成された第2の被巻着部、21、22は前記背部14の下端の両縁に接続されたゴム製の伸縮部、23、24は該伸縮部21、22を介して背部14と接続された帯状巻着部である。なお、前記胸部11、前肩部12、13、背部14及び後肩部15、16はメッシュによって形成される。
【0010】また、前記前肩部12、13はそれぞれ後肩部15、16と一体に形成され、前記前肩部12、13及び後肩部15、16によって襟ぐり25が形成される。そして、該襟ぐり25に装着する人の首を通し、前記帯状巻着部23、24をそれぞれ第1、第2の被巻着部17〜19に巻き付けることによって、胸部11と背部14とが連結され、耐刃防護衣は装着する人の体の周囲に固定される。このようにして、耐刃防護衣を装着することができる。
【0011】なお、前記帯状巻着部23、24と前記第1、第2の被巻着部17〜19とは、帯状巻着部23、24を第1、第2の被巻着部17〜19に巻き付けるだけで巻着することができ、帯状巻着部23、24を第1、第2の被巻着部17〜19から引き剥(は)がすだけで分離させることができる。
【0012】次に、前記胸部11内に収容された防刃板状体について説明する。
【0013】図1は本発明の実施の形態における防刃板状体の断面図、図4は本発明の実施の形態における防刃板状体の正面図、図5は本発明の実施の形態における第1、第2の防刃層の透視図、図6は本発明の実施の形態におけるバリ防止シートの配設状態を示す図である。
【0014】図において、31は前記胸部11(図2)内に収容された防刃板状体であり、該防刃板状体31の周縁にはバイアステープ32が縫い付けられる。前記防刃板状体31は、表面S1から裏面S2にかけて積層構造を有し、表面シート33、ポリカーボネート樹脂等の摩擦係数の大きい材料から成る摩擦プレート34、中間シート35、該中間シート35に貼(ちょう)着された第1の防刃層36、スポンジ等から成る緩衝シート38、第2の防刃層39、及び裏面シート40を有する。また、前記第2の防刃層39は裏面シート40に貼着される。
【0015】前記表面シート33、中間シート35及び裏面シート40は、いずれも防水浸透性素材によって形成され、防水性及び浸透性が高い。したがって、雨水等が防刃板状体31内を透過することがないだけでなく、通気性がよいので、雨天時に長時間装着しても装着性が低下することがない。なお、必要に応じて緩衝シート38と第2の防刃層39との間、又は第2の防刃層39と裏面シート40との間に、吸汗性及び蒸散性が高い繊維を配設することもできる。その場合、繊維を介して汗を逃がすことができるので、装着性を向上させることができる。
【0016】そして、前記第1の防刃層36は、高張力ジェラルミン等の金属から成る複数の第1のプレート41を、隣接線L1、L2に沿って互いにマトリックス状に隣接させて中間シート35に貼着することによって形成され、各第1のプレート41間には所定の幅の第1のクリアランス54が形成される。前記第1の防刃層36の下側周縁における中間シート35側と反対側の面には、ナイロン(商品名)製の帯状のバリ防止シート45が貼着される。
【0017】また、前記第2の防刃層39は、高張力ジェラルミン等の金属から成る複数の第2のプレート51を、隣接線L3、L4に沿って互いにマトリックス状に隣接させて裏面シート40に貼着することによって形成され、各第2のプレート51間に形成される第2のクリアランス55の幅は0にされる。なお、第1のプレート41は第1〜第4の類型p1〜p4から成り、第2のプレート51は第1、第2の類型q1、q2から成る。
【0018】そして、前記第1、第2の防刃層36、39間には、前記緩衝シート38が配設されるので、金属同士が直接触れ、騒音が発生するのを防止することができる。
【0019】このように、防刃板状体31内に第1、第2の防刃層36、39が配設されるので、図示されない刃物類が防刃板状体31を貫通するのを阻止することができる。なお、前記第1、第2のプレート41、51は、いずれも刃物類が貫通するのを防止することができるように厚さが1〔mm〕にされる。
【0020】また、前記摩擦プレート34が第1の防刃層36より表側に配設されるので、刃物類が防刃板状体31を貫通するのが阻止されたときに、刃物類の先端が防刃板状体31に沿って横に流れるのを防止することができる。したがって、防刃性を高くし、安全性を向上させることができる。
【0021】ところで、前記第1、第2の防刃層36、39は、それぞれ第1、第2のプレート41、51を互いにマトリックス状に隣接させることによって形成されるので、装着する人の体型及び動作に合わせて耐刃防護衣を変形させることができる。したがって、耐刃防護衣の装着感を良くすることができる。しかも、前記第1の防刃層36において、各第1のクリアランス54が形成されるので、第1の防刃層36を表面S1及び裏面S2のいずれの側にも湾曲させることができる。したがって、装着する人の体型及び動作に合わせて耐刃防護衣を容易に変形させることができるので、耐刃防護衣の装着感を一層良くすることができる。なお、第2の防刃層39は、装着する人の体にほぼ密着させられるので、第2の防刃層39を裏面S2側に湾曲させる必要性はあるが、表面S1側に湾曲させる必要性はほとんどない。したがって、前記第2の防刃層39において、各第2のクリアランス55の幅は0にされる。その結果、各第2のプレート51間に刃物類が進入するのを防止することができる。
【0022】また、前記隣接線L1、L2と隣接線L3、L4とは、互いに所定の距離mだけずらされる。したがって、前記第1、第2のクリアランス54、55が同じ位置に置かれることがないので、第1のクリアランス54を貫通した刃物類が第2のプレート51を貫通するのが阻止される。なお、前記距離mは第1の類型p1に属する第1のプレート41の幅の半分程度とする。
【0023】次に、第1、第2のプレート41、51について説明する。
【0024】図7は本発明の実施の形態における第1のプレートの第1の類型を示す図、図8は本発明の実施の形態における第1のプレートの第2の類型を示す図、図9R>9は本発明の実施の形態における第1のプレートの第3の類型を示す図、図10は本発明の実施の形態における第1のプレートの第4の類型を示す図、図11は本発明の実施の形態における第2のプレートの第1の類型を示す図、図12は本発明の実施の形態における第2のプレートの第2の類型を示す図である。
【0025】第1の類型p1の第1のプレート41において、幅a1及び高さb1は、a1=5〔mm〕
b1=5〔mm〕
にされ、第2の類型p2の第1のプレート41において、幅a2及び高さb2は、a2=4〔mm〕
b2=5〔mm〕
にされ、第3の類型p3の第1のプレート41において、幅a3及び高さb3は、a3=5〔mm〕
b3=5〔mm〕
にされ、第4の類型p4の第1のプレート41において、幅a4及び高さb4は、a4=4〔mm〕
b4=5〔mm〕
にされる。
【0026】また、第1の類型q1の第2のプレート51において、幅a5及び高さb5は、a5=5〔mm〕
b5=5〔mm〕
にされ、第2の類型q2の第2のプレート51において、幅a6、c及び高さb6、dは、a6=5〔mm〕
b6=5〔mm〕
c6=3〔mm〕
d6=3〔mm〕
にされる。
【0027】なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0028】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、耐刃防護衣においては、積層構造の表面側において複数の金属製の第1のプレートを隣接させて形成された第1の防刃層と、前記積層構造の裏面側において複数の金属製の第2のプレートを隣接させて形成された第2の防刃層と、前記第1の防刃層より表側に配設され、摩擦係数の大きい材料から成り、刃物類の先端が横に流れるのを防止するための摩擦プレートとを有する。また、該摩擦プレート、第1の防刃層及び第2の防刃層によって、表面から裏面にかけて積層構造が形成される。
【0029】そして、前記各第1のプレート間の隣接線と、前記各第2のプレート間の隣接線とはずらされる。
【0030】この場合、前記第1、第2の防刃層は、それぞれ、複数の第1、第2のプレートを隣接させることによって形成されるので、装着する人の体型及び動作に合わせて耐刃防護衣を変形させることができる。したがって、耐刃防護衣の装着感を良くすることができる。
【0031】また、前記各第1のプレート間のクリアランスと、各第2のプレート間のクリアランスとが同じ位置に置かれることがないので、前記各第1のプレート間のクリアランスを貫通した刃物類が第2のプレートを貫通するのが阻止される。そして、前記積層構造において、第1の防刃層より表側に摩擦プレートが配設されるので、刃物類の貫通が阻止されたときに、刃物類の先端が横に流れるのを防止することができる。したがって、耐刃防護衣の防刃性を高くし、安全性を向上させることができる。本発明の他の耐刃防護衣においては、さらに、前記第1のプレート間に所定の幅のクリアランスが形成される。そして、前記第2のプレート間のクリアランスの幅は0にされる。この場合、第1の防刃層を表面及び裏面のいずれの側にも湾曲させることができる。したがって、装着する人の体型及び動作に合わせて耐刃防護衣を容易に変形させることができるので、耐刃防護衣の装着感を一層良くすることができる。また、第2の防刃層において、第2のプレート間のクリアランスの幅は0にされるので、たとえ、刃物類が各第1のプレート間のクリアランスを貫通しても、各第2のプレート間に刃物類が進入するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における防刃板状体の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態における耐刃防護衣の前方外観図である。
【図3】本発明の実施の形態における耐刃防護衣の後方外観図である。
【図4】本発明の実施の形態における防刃板状体の正面図である。
【図5】本発明の実施の形態における第1、第2の防刃層の透視図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるバリ防止シートの配設状態を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における第1のプレートの第1の類型を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態における第1のプレートの第2の類型を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態における第1のプレートの第3の類型を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態における第1のプレートの第4の類型を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態における第2のプレートの第1の類型を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態における第2のプレートの第2の類型を示す図である。
【符号の説明】
36、39 第1、第2の防刃層
41、51 第1、第2のプレート
L1〜L4 隣接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)積層構造の表面側において複数の金属製の第1のプレートを隣接させて形成された第1の防刃層と、(b)前記積層構造の裏面側において複数の金属製の第2のプレートを隣接させて形成された第2の防刃層と、(c)前記第1の防刃層より表側に配設され、摩擦係数の大きい材料から成り、刃物類の先端が横に流れるのを防止するための摩擦プレートとを有するとともに、(d)該摩擦プレート、第1の防刃層及び第2の防刃層によって、表面から裏面にかけて積層構造が形成され、(e)前記各第1のプレート間の隣接線と、前記各第2のプレート間の隣接線とはずらされることを特徴とする耐刃防護衣。
【請求項2】 (a)前記第1のプレート間に所定の幅のクリアランスが形成され、(b)前記第2のプレート間のクリアランスの幅は0にされる請求項1に記載の耐刃防護衣。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【特許番号】特許第3250618号(P3250618)
【登録日】平成13年11月16日(2001.11.16)
【発行日】平成14年1月28日(2002.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−157254
【出願日】平成11年6月4日(1999.6.4)
【公開番号】特開2000−346595(P2000−346595A)
【公開日】平成12年12月15日(2000.12.15)
【審査請求日】平成11年9月2日(1999.9.2)
【審判番号】不服2001−1542(P2001−1542/J1)
【審判請求日】平成13年2月7日(2001.2.7)
【出願人】(599077409)日本特装株式会社 (7)
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 平11−142096(JP,A)
【文献】特開 平9−229598(JP,A)
【文献】実開 平1−117497(JP,U)
【文献】実開 平3−56096(JP,U)
【文献】実開 平1−94792(JP,U)