説明

耐引掻き性および/または耐摩性被覆のための高充填性ペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物、その製造方法および使用

【課題】可能な限り均一に、特に固形分に関して可能な限り変動可能に使用することができ、相当する塗料製剤を耐引掻き性および/または耐摩性被覆を製造するために使用することができる系を提供する。
【解決手段】耐引掻き性および/または耐摩性被覆のための高充填性ペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物であって、少なくとも1種の珪素有機化合物およびミクロ規模のコランダムおよび/またはナノ規模の酸化物を合成樹脂または合成樹脂前駆化合物に配合することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐引掻き性または耐摩性被覆のための珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物に関し、珪素有機ナノまたはミクロハイブリッド系は小さい金属酸化物コアAおよび実質的に完全な珪素有機シェルBからなり、組成物は合成樹脂または合成樹脂前駆化合物中の、金属酸化物粒子(KA−O)と、1個の有機官能性基および少なくとも1個の加水分解可能の基または少なくとも1個のヒドロキシル基を有する、少なくとも1種の有機官能性珪素化合物とのその場で行われる反応により得られる。
【0002】
本発明は更に支持体上に耐引掻き性および耐摩性被覆を形成するための塗料および相当する耐引掻き性および耐摩性に被覆される物品の基材としてのこの組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ゾル粒子またはゲル粒子または金属酸化物または半金属酸化物の表面特性を加水分解可能なオルガノシランまたはオルガノシロキサンで処理することにより変性することは知られており、その際一般に単層のみのシラン層を酸化物粒子またはゾル粒子またはゲル粒子に結合する。こうして処理した酸化物粒子またはゾル粒子またはゲル粒子、例えば無機顔料または充填剤をポリマーマトリックス、特にフィルムおよび被覆剤およびこれにより製造可能な被覆に配合する。しかしながら一般にこれらのポリマー系の耐引掻き性または耐摩性は低い。
【0004】
ドイツ特許第19846660号には共有結合により酸化物粒子に結合した珪素有機基により被覆されている、ナノ規模の表面変性された酸化物粒子または混合酸化物粒子が記載され、その際反応性基として有機官能性基が記載され、一般に外側に向かって配向され、この基がポリマー材料との重合によりプレポリマーが硬化してポリマーマトリックスに結合する。この被覆剤の製造法は費用がかかり、それというのもオルガノシランおよび酸化物成分を交互にプレポリマーに配合するからである。
【0005】
ドイツ特許第19846659号はドイツ特許第19846660号と同じ時代に属し、同様にナノ規模の表面変性された酸化物粒子を含有する耐引掻き性合成樹脂層を備えたシート材料に関する。ドイツ特許第19846659号は特に反応性の放射線により架橋可能な基を有するナノ規模の酸化物粒子の被膜を形成するためのアクリルオキシアルキルシランの使用を記載する。ここで被覆剤の製造は同様に水、酸および湿潤剤の存在で、アクリレート製剤中のナノ規模の珪酸と3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(DYNASYLAN)(登録商標)MEMO)との時間のかかる反応により行われる。再び成分を特定の順序で交互に一緒に混合しなければならない。
【0006】
更にエチレン性不飽和有機基を有する加水分解可能なシラン成分は多くは費用のかかる装入物質である。更にダイナシランMEMOはすでに微量の重合を開始する物質または放射線の存在で反応する傾向があり、これにより相当する製剤の粘度が急激に上昇することがある。好ましくない重合を避けるために、安定剤を添加しなければならない。従ってしばしば装入物質の取り扱いおよびこの被覆剤系の製造を制御することが困難である。
【0007】
更に前記被覆剤はしばしば高粘性であり、多くは少ない割合の酸化物粒子のみを有し、これは後の被覆の耐引掻き性に作用する。この高粘性の被覆剤は、特に支持体が薄い引き裂かれる支持体である場合は、支持体に被覆することが困難である。こうして得られる被覆の耐引掻き性はしばしば改良の余地がある。更にこの高粘性の系においては特定の費用のかかる被覆装置が必要である。この高粘性の被覆剤にしばしば有機物の排出(VOC(揮発性有機化合物)問題)を高める溶剤を添加する。
【0008】
市販される耐摩性のPU塗料で50回転後に2mgの磨耗が測定された(DIN68861号によるテーバー磨耗試験)。
【0009】
未公開のドイツ特許第10100631号および第10100633号の説明によれば実質的に耐引掻き性の被覆(DIN53799号)を製造することができる。しかしこの被覆系は耐引掻き性だけでなく十分な耐摩性(DIN52347/ASTMD−1044による曇りおよびDIN68861号による磨耗)が必要である使用、例えば木材塗装、プラスチックの床および寄せ木張りの床には使用できない。更に高く充填された系は不均一性を有することがあり、これは後の被覆の表面特性に不利に作用する。更にここで「耐引掻き性および耐摩性被覆のための珪素有機ナノ−またはミクロハイブリッド系を有する組成物(Siliciumorganische Nano−/Mikrohybridsysteme enthaltende Zusammensetzung fuer kratz−und abriebfeste Beschichtungen)」という表題のドイツ特許第10141690号を挙げておく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許第19846660号
【特許文献2】ドイツ特許第19846659号
【特許文献3】未公開のドイツ特許第10100631号
【特許文献4】未公開のドイツ特許第10100633号
【特許文献5】ドイツ特許第10141690号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
使用者はしばしばこの珪素有機ナノ−またはミクロハイブリッド系を有する組成物を、耐引掻き性または耐摩性に加工するための塗料製剤の製造または変性に使用できるので、可能な限り均一に、特に固形分に関して可能な限り変動可能に使用することができ、相当する塗料製剤を耐引掻き性および/または耐摩性被覆を製造するために使用することができる系を提供するという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は本発明により、請求項に記載の組成物により解決される。
【0013】
特にドイツ特許第10100631号、ドイツ特許第10100633号およびドイツ特許第10141690号に記載されるような、いわゆるその場での反応を、三本ロール練り機、円錐混合機、混練機または例えばVMA−Getzmann社のトラスミル(Torusmill)(登録商標)の名称で提供される(欧州特許第0850106B1号)ような良好な分散作用を有する分散機中で実施することにより、保存安定な、十分に老化防止性のペースト、すなわち高度に充填された、すぐれたやり方で均一な珪素有機ナノ−および/またはミクロハイブリッドカプセルを有する組成物が、少なくとも1種の珪素有機化合物およびミクロ規模のコランダムおよび/またはナノ規模の酸化物を合成樹脂または合成樹脂前駆化合物に配合することにより得られることが判明した。本発明でトラスミルを使用する場合は専らディスソルバーまたはディスソルバーディスクを使用し、利用する。すなわちここでトラスミルの浸漬ミルの使用は省き、浸漬ミルの機能は本発明の方法では使用しない。
【0014】
この濃縮物またはこのペーストをプレポリマー、例えばアクリレートで、有利にはペースト1質量部をアクリレート1〜5質量部、特に1〜3質量部、特に有利には1.5質量部で希釈することにより放射線硬化後にすぐれた耐引掻き性および耐摩性被覆を生じる塗料系を得ることができる。
【0015】
本発明のペーストは合成樹脂を基礎とする現存する塗料系に簡単なやり方で配合することができ、有利には耐引掻き性および耐摩性被覆を製造するために使用することができる。
【0016】
更に本発明のペーストは特に簡単な経済的なやり方で、例えばDPGDAまたはHDDAのようなアクリレート希釈剤および場合により他の自体公知の塗料添加剤と混合することができ、所望のやり方で使用する用意のできた過酸化物または放射線架橋可能な耐引掻き性および/または耐摩性塗料に希釈することができる。
【0017】
このために希釈剤または塗料を適当に予め入れ、簡単な経済的なやり方で本発明のペーストを撹拌して入れる。従って本発明のペーストはペーストを製造する際におよび希釈後に塗装する際に驚異的に有利な加工可能性によりすぐれている。
【0018】
更に実際に、組成物中のコランダムの割合が高くても混合装置および被覆装置での平均以上の磨耗が確認されないことが示され、これは酸化物粒子の珪素有機被膜に帰因する。
【0019】
同様に本発明のペーストが適当な希釈剤で希釈後または有機塗料系に配合後、使用者により有利なやり方で支持体に特別の耐引掻き性および耐摩性被覆およびこれからなる相当する物品を製造するために使用できることが判明した。
【0020】
硬化可能な合成樹脂または硬化可能な合成樹脂の前駆物質、すなわち液状プレポリマーまたは相当するプレポリマーの混合物はここおよび以下で、例えばアクリレート、メタクリレート、エポキシド、ポリウレタン、不飽和ポリエステルまたはこれらの混合物であると理解される。
【0021】
更に本発明の方法により実質的に完全な多層の珪素有機で被覆された酸化物粒子、すなわちコアAが得られ、これは直接有利なやり方で硬化可能な合成樹脂または硬化可能な合成樹脂の前駆物質中に微細に分散して存在する。
【0022】
更に本発明の方法により珪素有機ナノまたはミクロハイブリッド系をプレポリマーに特に均一に配合されて取得する。
【0023】
こうして得られた組成物は製造および塗装の際の驚異的に有利な加工可能性によりすぐれており、実際に組成物中のコランダムの割合が高いにもかかわらず、コランダム粒子の珪素有機被膜により混合装置および被覆装置での付加的な磨耗が確認されないことが示される。
【0024】
塗料のダイラタント挙動は技術的処理において一般におよび個々に特定の塗料で被覆する際に問題を生じることがある。一般にこのダイラタント被覆系において2500mPasまでの粘度が所望される。有利には本発明の溶剤不含の被覆剤は500mPasより高く2000mPasまで、特に800〜1000mPasの粘度を有する。ロール塗布のためには0.8〜1.2mPasの範囲の粘度が存在すべきである。
【0025】
一般に使用すべきペーストまたは粘性の塗料の希釈および被覆の際の温度体系(典型的には約60℃)のほかに特定の塗料添加剤が分散液の粘度を効果的に低下することが判明した。例えばエーロシル(Aerosil)OX50 30質量%およびダイナシラン(DYNASYLAN)VTMO 9質量%を有するDPGDAのような9質量%の製剤の添加により高いダイラタント分散液または塗料のレオロジー挙動を更に改良することができる。
【0026】
シラン成分としてダイナシラン(登録商標)PTMOを有する塗料系はダイラタント挙動を示すことができる。VTMOまたは相当するオリゴマーのプロピルおよび/またはビニル官能性アルコキシシロキサンまたはこれからなる混合物を添加した混合物ダイナシラン(登録商標)PTMOの使用により特に有利なレオロジー挙動を達成することができる。
【0027】
従って本発明の方法において、珪素有機成分として、例えばPTMOおよびVTMOまたは若干の例のみを記載すれば、プロピル官能性アルコキシシロキサンまたはビニル官能性アルコキシシロキサンまたはプロピル/ビニル官能性アルコキシシロキサンまたはこれらの混合物からの混合物が有利である。
【0028】
例えばn−プロピルトリアルコキシシラン、ペルフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロアルキルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシランおよび/またはビニルトリアルコキシシランの少なくとも1種から出発する、意図的に製造される縮合物または共縮合物のようなオリゴマーのオルガノアルコキシシランの使用が特に有利であり、それというのも、その際それぞれ相当する有機官能性アルコキシオルガノシロキサンが生じ、前記シロキサンはモノマーのシランに比べてほとんど揮発性でなく、従って加工条件下で蒸発せず、本発明の方法において有利にエダクトの損失が示されないからである。この場合にアルコキシ基としてエトキシおよびメトキシが有利である。
【0029】
前記被覆の硬化は適当に光化学的にUV照射によりまたは電子線の照射により行う。一般には照射を10〜60℃、有利には周囲温度で行う。
【0030】
こうして本発明により簡単かつ経済的な方法で珪素有機ナノ/ミクロハイブリッドカプセルを含有するペーストを使用してすぐれた耐引掻き性および耐摩性被覆を形成することができる被覆剤を製造することができる。
【0031】
従って本発明の対象は、耐引掻き性および/または耐摩性被覆のための実質的に特に均一な、高度に充填されたペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物(ペーストと呼ぶ)であり、その際珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルが酸化物コアAおよび珪素有機シェルBからなり、コアAは成分(a)および/または(b)の少なくとも1種のナノ規模またはミクロ規模の酸化物粒子(KA−O)を含有し、珪素有機シェルBは一般式Ia:
(Si´O−)Si−R (Ia)
[式中、Rは式IIからRおよびRの形で理解されるように、有機官能性基を表し、xは0〜20の数であり、Siのなお自由な原子価はSiO−および/または−ZによりおよびSi´の自由な原子価はSiO−、−Rおよび/または−Zにより飽和され、基Zは同じかまたは異なり、ヒドロキシ基またはアルコキシ基であり、シェルBのSiまたはSi´はそれぞれ最大で1個の基Rを有する]
の少なくとも1種の珪素有機成分を含有しおよび/またはシェルBの珪素有機成分が一般式Ib:
(KA−O)−[(Si´O−)Si−R] (Ib)
[式中、Rは前記のものを表し、xは0〜20の数であり、 Siのなお自由な原子価は(KA−O)−、SiO−および/または−ZによりおよびSi´の自由な原子価は(KA−O)−、SiO−、−Rおよび/または−Zにより飽和され、基Zは同じかまたは異なり、ヒドロキシ基またはアルコキシ基であり、シェルBのSiまたはSi´はそれぞれ最大で1個の基Rを有する]の1個以上の共有結合を介してコアA(KA−O)に結合しており、前記組成物は、
(i)以下の(a)、(b)または(c)の群:
(a)元素周期表の第2〜第6主族、第1〜第8副族またはランタニドの少なくとも1種の金属または半金属の少なくとも1種のナノ規模の酸化物および/または混合酸化物または
(b)ミクロ規模のコランダムまたは
(c)(a)および(b)からの酸化物粒子混合物
からの酸化物粒子と、
(ii)一般式II:
SiY(4−s−r) (II)
[式中、基RおよびRは同じかまたは異なり、それぞれ1〜50個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、クロロアルキル基、イソシアノアルキル基、シアノアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アシルアルキル基、アクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルキル基、ポリスルファンアルキル基、メルカプトアルキル基、チアシアミドアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、カルボネートアルキル基またはウレイドアルキル基を表し、Yはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基または2−メトキシエトキシ基を表し、sは1、2または3であり、rは0、1または2であり、(s+r)は3以下である]
の少なくとも1種の有機官能性シランおよび
(iii)場合により、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基またはイソプロポキシ基を有し、平均オリゴマー化度1〜50を有する、モノマーおよび/またはオリゴマーの珪酸エステル、例えばダイナシル(DYNASIL)(登録商標)Mのようなテトラメトキシシラン、ダイナシル(DYNASIL)(登録商標)Aのようなテトラエトキシシランおよびダイナシル(DYNASIL)(登録商標)Pのようなテトラプロポキシシランまたはダイナシル(DYNASIL)(登録商標)40のようなオリゴマーのエチルシリケート、および
(iV)官能基が同じかまたは異なり、シロキサン中のそれぞれのSi原子は、アルキル、フルオロアルキル、シアノアルキル、イソシアノアルキル、アルケニル、アミノアルキル、ジアミノアルキル、トリアミノアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アシルアルキル、グリシジルオキシアルキル、アクリルオキシアルキル、メタクリルオキシアルキル、メルカプトアルキル、ウレイドアルキル、アリールまたはアルコキシの群からの1個の官能基を有し、シロキサン中のSi原子の残りの自由な原子価はメトキシ基またはエトキシ基またはヒドロキシ基により飽和されている、場合により有機官能性シロキサン、この場合に、特にドイツ特許第19955047号、ドイツ特許第19961972号、ドイツ特許第10056343号、ドイツ特許第10151264号、ドイツ特許第10202389号、欧州特許第0518057号、欧州特許第0590270号、欧州特許第0716127号、欧州特許第0716128号、欧州特許第0760372号、欧州特許第0814110号、欧州特許第0832911号、欧州特許第0846717号、欧州特許第0846716号、欧州特許第0846715号、欧州特許第0953591号、欧州特許第0955344号、欧州特許第0960921号、欧州特許第0978525号、欧州特許第0930342号、欧州特許第0997469号、欧州特許第1031593号および欧州特許第0075697号に記載されるような、平均オリゴマー化度1〜20、有利には平均オリゴマー化度2〜10を有するシロキサンが有利である
との反応により得られ、その際反応をその場で、液体の硬化可能な合成樹脂または合成樹脂の前駆物質中で行い、成分(i)の酸化物粒子の含量が使用される合成樹脂成分100質量部に対して10〜300質量部であり、反応を混合装置または分散装置中で行う。
【0032】
本発明において混合装置は、通常の混合作用のほかに混練作用および場合により付加的な分散作用、すなわち高度に充填された合成樹脂材料の均一化に寄与する作用を有する処理装置であると理解される。本発明のペーストを製造するために、適当にロール混合機、円錐混合機、混合および混練機能を有する押し出し機、混練機または効率を強化した分散装置を使用することができる。
【0033】
基Zのアルコキシ基として1〜18個の炭素原子を有する直鎖、環状または分枝鎖アルキル基を有するアルコキシ基が有利であり、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基またはn−プロポキシ基が特に有利である。
【0034】
本発明の珪素有機ナノまたはミクロハイブリッドカプセルにおいてコアAとシェルBの質量比は有利には0.5:1〜100:1、特に有利には1:1〜2:1である。本発明の方法において特に有利には酸化物成分(i)、珪素有機成分(ii)〜(iv)および合成樹脂成分の装入物質比が0.2質量部:0.5質量部:1質量部〜3質量部:1質量部:1質量部、特に1質量部:1質量部:1質量部〜2質量部:1質量部:1質量部で使用する。その際珪素有機成分(ii)、(iii)および(iv)の質量比は互いに1:0:0から1:1:0および1:0:1を経て0:1:1から0:0:1までにわたる。
【0035】
適当に、本発明の珪素有機ナノ/ミクロハイブリッドカプセルのコアAは、元素Si、Al、Tiおよび/またはZrの群またはミクロ規模のコランダム粒子からの少なくとも1種のナノ規模の酸化物および/または混合酸化物からなり、酸化物水酸化物もこれに含まれ、例えば熱分解により製造した珪酸のようなSiO、シリケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルモシリケート、TiO、チタネート、ZrOまたはジルコネートである。
【0036】
この場合に本発明により酸化物粒子混合物(i)の成分(a)として有利には元素Si、Al、Tiおよび/またはZrの群からの少なくとも1種のナノ規模の酸化物および/または混合酸化物を使用し、その際ナノ規模の酸化物は有利には1〜200nmの平均粒度を有する。特に有利には成分(a)としてナノ規模の珪酸を使用する。
【0037】
更に酸化物粒子混合物(i)の成分(b)としてミクロ規模のコランダム(α−Al)が有利であり、その際これは有利には3〜40μm、特に9〜18μm、特に有利には12〜15μmの平均粒度を有する。
【0038】
更に本発明の対象は、耐引掻き性および/または耐摩性被覆のためのペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物を製造する方法であり、
(i)以下の(a)、(b)または(c)の群:
(a)元素周期表の第2〜第6主族、第1〜第8副族またはランタニドの少なくとも1種の金属または半金属の少なくとも1種のナノ規模の酸化物および/または混合酸化物または
(b)ミクロ規模のコランダムまたは
(c)(a)および(b)からの酸化物粒子混合物
からの酸化物粒子と、
(ii)一般式II:
SiY(4−s−r) (II)
[式中、基RおよびRは同じかまたは異なり、それぞれ1〜50個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、クロロアルキル基、イソシアノアルキル基、シアノアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アシルアルキル基、アクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルキル基、ポリスルファンアルキル基、メルカプトアルキル基、チアシアミドアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、カルボネートアルキル基またはウレイドアルキル基を表し、Yはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基または2−メトキシエトキシ基を表し、sは1、2または3であり、rは0、1または2であり、(s+r)は3以下である]
の少なくとも1種の有機官能性シランおよび
(iii)場合により、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基またはイソプロポキシ基を有し、平均オリゴマー化度1〜50を有する、モノマーおよび/またはオリゴマーの珪酸エステルおよび
(iV)官能基が同じかまたは異なり、シロキサン中のそれぞれのSi原子は、アルキル、フルオロアルキル、シアノアルキル、イソシアノアルキル、アルケニル、アミノアルキル、ジアミノアルキル、トリアミノアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アシルアルキル、グリシジルオキシアルキル、アクリルオキシアルキル、メタクリルオキシアルキル、メルカプトアルキル、ウレイドアルキル、アリールまたはアルコキシの群からの1個の官能基を有し、シロキサン中のSi原子の残りの自由な原子価はメトキシ基またはエトキシ基またはヒドロキシ基により飽和されている、場合により有機官能性シロキサン
を、その場で、液体の硬化可能な合成樹脂または合成樹脂の前駆物質中で反応させ、成分(i)の酸化物粒子の含量が使用される合成樹脂成分100質量部に対して10〜300質量部であり、反応を混合装置または分散装置中で、有利にはトラスミル(Torusmill)(登録商標)中でディスソルバーとして使用せず行うことを特徴とする。
【0039】
本発明の方法を実施する場合に、有利には、
硬化可能の合成樹脂または硬化可能の合成樹脂の前駆物質を混合装置または分散装置に予め入れ、加熱し、有利には50〜90℃、特に60〜80℃、特に有利には65〜75℃、特に70℃より高く加熱し、
触媒、場合により湿潤剤および水を添加し、
成分(ii)〜(iv)を導入し、引き続き
酸化物粒子(i)を良好に混合して添加することにより実施する。
【0040】
適当に、引き続き反応の際に生じるアルコールを系から除去し、材料を冷却し、本発明のペースト状組成物が得られる。
【0041】
本発明の方法において有利には硬化可能の合成樹脂または合成樹脂の前駆物質としてアクリレート、メタクリレート、エポキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコンアクリレートまたは前記成分の2種以上の混合物を使用する。
【0042】
特に、しかしこれだけでなく、式IIの有機官能性シランとして以下の化合物を使用することができる。メチルトリメトキシシラン(ダイナシラン(DYNASYLAN)(登録商標)MTMS)、メチルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)MTES) 、プロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)PTMO) 、プロピルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)PTEO)、イソブチルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)IBTMO)、イソブチルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)IBTEO )、オクチルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)OCTMO)、オクチルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)OCTEO)、ヘキサデシルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)9116)、ヘキサデシルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)9216)、3−クロロプロピルトリアルコキシシラン、3−ブロモプロピルアルコキシシラン、3−ヨードプロピルアルコキシシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジアルコキシシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルジメチルアルコキシシラン、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン、3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、特に3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)AMMO)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)AMEO)、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)1189)、n−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)1411)、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)1505)、N−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、N−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)DAMO)、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)TRIAMO)、特に[N−アミノエチル−N´−(3−トリアルコキシシリルプロピル)]エチレンジアミン、および[N−アミノエチル−N−(3−トリアルコキシシリルプロピル)]エチレンジアミン、トリアミノ官能性プロピルメチルジアルコキシシラン、3−(4、5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)MEO)、3−メタクリルオキシプロピルアルコキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)MEMO)、3−メタクリルオキシイソブチルトリアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)GLYMO)、3−グリシジルオキシプロピルエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)GLYEO)、3−グリシジルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルアルコキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)MTMO)、ビニルトリアルコキシシラン、特にビニルトリメトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)VTMO)、ビニルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)VTEO)、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン(ダイナシラン(登録商標)VTMOEO)、ペルフルオロアルキルトリアルコキシシラン、フルオロアルキルトリアルコキシシラン、特にトリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン(ダイナシラン(登録商標)F8621)トリデカフルオロオクチルメチルジアルコキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、(HO)Si(CH−S−(CHSi(OC、1、4−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(Si−69)、(HO)Si(CH−NCS、3−チアシアミドプロピルトリエトキシシラン(Si−264)、(HO)Si(CH−S−(CHSi(OC、1、2−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン(Si−266)、3−シアノプロピルトリアルコキシシラン、特に3−シアノプロピルトリメトキシシラン、N、N´、N´´−トリス(トリメトキシシリルプロピル)トリイソシアヌレート、3−[メトキシ(ポリエチレングリシド)]プロピルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、アリルメチルジアルコキシシラン、アリルジメチルアルコキシシラン、3−メタクリルオキシ−2−メチルプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノ−2−メチルプロピルトリアルコキシシラン、(シクロヘキス−3−エニル)−エチルトリアルコキシシラン、N−(3−トリアルコキシシリルプロピル)アルキルカルバメート、3−アジドプロピルトリアルコキシシラン、4−(2−トリアルコキシシリルエチル)−1、2−エポキシシクロヘキサン、ビス(3−アルコキシシリルプロピル)アミン、トリス(3−アルコキシシリルプロピル)アミン、3−アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、特に3−アクリルオキシメチルジアルコキシシラン、3−アクリルオキシジメチルアルコキシシラン、この場合に前記アルコキシ基の1個のためにメトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、プロポキシまたはアセトキシが有利である。
【0043】
本発明により特に有利には、成分(ii)として3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシ−2−メチル−プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシ−2−メチル−プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはn−プロピルトリエトキシシランまたは前記シランの2種以上の混合物を使用する。n−プロピルアルコキシシランおよびビニルアルコキシシランの混合物が特に有利である。
【0044】
本発明により成分(iv)として、有利にはオリゴマーのビニルトリメトキシシラン(ダイナシラン6490)、オリゴマーのプロピルトリメトキシシラン、オリゴマーのビニルトリエトキシシラン、オリゴマーの3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはプロピルトリメトキシシランとビニルトリメトキシシランのコオリゴマー、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランとプロピルトリメトキシシランのコオリゴマー、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランのコオリゴマー、または3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランとトリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランのコオリゴマー、または3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランとトリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシランのコオリゴマー、またはビニルトリメトキシシランとトリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルトリメトキシシランのコオリゴマーまたはビニルトリメトキシシランとトリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランのコオリゴマーを使用し、若干の有利な例として挙げたにすぎない。2種以上の前記のモノマーのオルガノアルコキシシラン(ii)および(iii)から得られるコオリゴマーを使用することもでき、その際このコオリゴマーは有利には少なくとも1個のビニル基または3−メタクリルオキシプロピル基を有する。
【0045】
本発明の方法において一般に液体のプレポリマーの成分を一般に混合または分散装置に予め入れ、加熱し、決められた量の水、場合により触媒、場合により湿潤剤および珪素有機成分(ii)〜(iv)を添加し、これに続いて成分(i)を十分に混合して、例えば酸化物(a)および(b)の混合物として導入する。すなわち適当に、まず合成樹脂成分、触媒、湿潤剤、水および珪素有機成分を導入し、場合により他の助剤を一緒に混合し、その後はじめて酸化物成分(i)を添加し、その際この製造法により得られた成分混合物は特に良好な加工特性によりすぐれている。反応の際に生じるアルコールは反応中に、有利にはその後、材料から除去することができる。引き続き適当に冷却し、本発明の材料が得られる。
【0046】
本発明の方法において、有利には酸化物粒子(i)の酸化物成分(KA−O)を合成樹脂100質量部に対して35〜200質量部、より有利には60〜180質量部、特に80〜160質量部、特に有利には80質量部より多く140質量部まで、例えば90〜100質量部使用する。
【0047】
その際成分(a)または(b)を単独で使用することができる。(a)および(b)からなる混合物(c)を使用する場合は、(a):(b)の質量比は1:10〜5:1である。特に有利には成分(a)および(b)の質量比1:3〜1:1、有利には(a):(b)の質量比1:2の酸化物粒子混合物(c)を使用する。
【0048】
本発明の方法において、有利には平均粒子直径1〜100nm、有利には5〜50nm、特に10〜40nmを有するナノ規模の酸化物および/または混合酸化物(a)を使用する。その際酸化物または混合酸化物は40〜400m/g、有利には60〜250m/g、特に80〜250m/gのBET表面積を有することができる。ナノ規模の酸化物または混合酸化物として、例えば、限定するものでないが、アルミニウム、チタン、鉄またはジルコンのような他の金属成分または半金属成分により変性されていてもよい熱分解珪酸を使用することができる。
【0049】
酸化物成分(b)として適当に9〜15μmの平均粒度d50を有するミクロ規模のコランダムを使用する。
【0050】
更に個々の成分(a)または(b)または(c)からなる酸化物成分(i)および少なくとも1種のシランを基礎とする成分、特に(ii)、(iii)および/または(iv)を、100:1〜0.5:1、有利には10:1〜0.5:1、特に3:1〜1:1の質量比で使用することが有利である。
【0051】
本発明の方法において、液体または硬化可能な合成樹脂または液体、硬化可能な合成樹脂の前駆物質として、プレポリマーまたはプレポリマーの混合物に、若干の例を挙げれば、例えばアクリレート、メタクリレート、エポキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコーンアクリレート、多官能性モノマーのアクリレート、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリットトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラアクリレート、アルコキシル化テトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、3、4−エポキシシクロヘキサン−1−カルボン酸−3、4−エポキシシクロヘキシル−1−メチルエステル、1、6−ヘキサンジオールジアクリレートまたは前記合成樹脂またはプレポリマーの2種以上の混合物、例えば一官能性および/または二官能性または多官能性のモノマーの、場合により低粘性のアクリレートの混合物を使用する。
【0052】
本発明の反応は一般に決められた量の水の存在で実施する。適当に、このために珪素有機成分のSi1モル当たり水1〜6モルを使用する。
【0053】
本発明の方法において、有利には前記反応を決められた量の水の存在で実施する。有利には珪素有機成分の加水分解可能なSi結合基1モル当たり水0.5〜6モル、有利には0.5〜4モル、特に1〜2モルを使用する。
【0054】
更に本発明の反応は、有利には触媒の存在で実施する。触媒として特に酸、有利には無水マレイン酸、マレイン酸、酢酸、無水酢酸、グリコール酸、クエン酸、メタンスルホン酸、燐酸が適している。
【0055】
更に湿潤剤の使用が本発明の反応を実施するために有利であることもある。従って反応を有利にはドデシル硫酸ナトリウムの存在で実施する。
【0056】
本発明の方法において、反応を有利には30〜100℃の温度で、特に40〜90℃の温度で、特に有利には50〜80℃の温度で、特に60〜75℃の温度で実施する。
【0057】
本発明の反応において、加水分解および縮合により一般にアルコールが生成し、これを有利には反応中におよび/またはその後反応系から除去する。反応の際に生じるアルコールの除去は蒸留により、適当に減圧下で行うことができる。その際一般に生成物混合物、すなわち本発明の反応により得られる組成物中のアルコールの割合は2質量%未満、有利には0.01〜1質量%、特に0.1〜0.5質量%に低下し、従って有利なやり方で溶剤不含の組成物、すなわち溶剤不含のペーストが得られる。
【0058】
本発明の組成物は特に耐引掻き性および/または耐摩性の被覆を形成するための被覆組成物または塗料を製造するための添加剤または基礎成分として使用する。
【0059】
本発明の組成物は一般に被覆剤を製造するために使用し、ラジカル、熱および/または光または放射線により化学的に硬化することができる。
【0060】
適当に、本発明の組成物またはこれから得られる塗料に他の成分、例えばUVまたは光化学的塗料硬化のための開始剤、ダロキュアー(Darocur)(登録商標)1173、ルシリン(Lucirin)(登録商標)TPO−L、塗料安定剤、HALS化合物、チヌービン(Tinuvin)(登録商標)および酸化防止剤、例えばイルガノクス(Irganox)(登録商標)を添加することができる。これらの添加剤は組成物または塗料に対して一般に0.1〜5質量%、有利には2〜3質量%の量で使用する。塗料系への他の成分の配合は適当に、十分に混合して行う。本発明の組成物または塗料は珪素有機ナノまたはミクロハイブリッドカプセルの高い含量にもかかわらず有利には500〜1000mPasの比較的低い粘度によりすぐれている。その際この系は一般にダイラタント挙動する。
【0061】
従って本発明の対象は、本発明のペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物の耐引掻き性および/または耐摩性被覆を形成する塗料を製造するための使用である。
【0062】
更に塗料を製造するためにペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物を液体の合成樹脂または合成樹脂の前駆物質および/または溶剤で簡単および経済的な方法で撹拌して希釈することによる本発明の使用が本発明の対象である。
【0063】
前記組成物またはこれから製造されるかまたは変性される塗料の塗装は一般に支持体への塗布により行う。支持体の被覆のために通常の被覆法、例えばロール塗布、ドクター塗布、浸漬、注入、流し込み、吹き付け、塗布を使用することができる。
【0064】
例えば塗料を帯状支持体、例えば紙または金属フィルムまたはプラスチックフィルムにロール塗布装置を使用することにより均一に塗布し、その後硬化することができる。溶剤不含の塗料を溶剤を添加せずに従来の吹き付け技術で吹き付け法により処理できることが示された。これにより三次元の支持体を被覆し、硬化することが可能である。適当に被覆を周囲温度、すなわち塗装温度でUV線または電子線法(ESH)により環境に適合して、溶剤不含に硬化することができる。
【0065】
有利には電子線硬化のために約140keVのエネルギーの電子を製造し、その際線量は30〜60kGy、有利には40〜50kGyである。有利にはO残留含量は200ppm未満である。適当に保護ガス、例えば窒素またはアルゴン下で光化学硬化を行う。
【0066】
塗料の硬化をUV照射により、150〜400nmの波長を有する単色または多色のUVランプを使用することにより行う。UV硬化の際に周囲温度、例えば10〜60℃で実施することができる。この場合にO含量は適当に200ppm未満である。
【0067】
これらの塗料を使用することにより特に有利なやり方ですぐれた耐引掻き性または耐摩性被覆を製造することができる。引裂き硬度または耐引掻き性の測定はここで一般にDIN53799により硬質合金球を使用して行う。磨耗は例えばDIN52347により被覆した平坦な板を使用して行う。
【0068】
本発明の被覆は有利には層厚2〜100μm、特に5〜50μm、特に有利には5〜20μmを有する。
【0069】
従って特に簡単かつ経済的な方法で、例えば金属、例えばアルミニウム、鉄、鋼、真鍮、銅、銀、マグネシウム、軽金属合金、木材、紙、ボール紙、織物、石材、プラスチック、熱可塑性樹脂、ポリカーボネート、ガラス、セラミックに特別の耐引掻き性および耐摩性被覆を備えることができる。被覆への実質的に固体の支持体材料の選択は制限されない。これらの支持体は、例えばUV安定および耐候性の保護被覆、例えば自動車工業に透明塗料として使用されるような、いわゆるトップコーティングを備えることができる。
【0070】
特にこの被覆法により、簡単で経済的な方法で、耐引掻き性または耐摩性の物品、若干の例を挙げれば、装飾紙、アルミニウムホイル、ポリカーボネート自動車ガラス板、PVC窓枠、ドアー、作業用板、床用被覆剤、寄せ木張り床が得られる。
【実施例】
【0071】
本発明を以下の実施例により詳細に説明する。
【0072】
実施例
装入物質
エベクリル(Ebecryl)(登録商標)1290:六官能性脂肪族ウレタンアクリレート、UCB Chemical社製
エベクリル(Ebecryl)(登録商標)5129:脂肪族ウレタンヘキサアクリレートとペンタエリトリトールトリ/テトラアクリレートの混合物、UCB Chemical社製
CN936:脂肪族ウレタンジアクリレート、Cray Valley社製
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート、UCB Chemical社製
HDDA:1、6−ヘキサンジオールジアクリレート、UCB Chemical社製
SR444:ペンタエリトリトールトリアクリレートとペンタエリトリトールテトラアクリレートの混合物、Cray Valley社製
ダイナシラン(DYNASYLAN)(登録商標)VTMO:ビニルトリメトキシシラン、Degussa社製
ダイナシラン(DYNASYLAN)(登録商標)6490:オリゴマー化度2〜12を有するオリゴマーのビニルトリメトキシシラン縮合物の混合物、Degussa社製
プラコール(Plakor)(登録商標)13:合成のコランダム(コランダム微細粉末、d50=13μm)ESKSIC社製
エーロシル(AEROSIL)(登録商標)OX50:熱分解珪酸(非晶質、BET50m/g、d50=30nm)
エーロシル(AEROSIL)(登録商標)200:熱分解珪酸(非晶質、BET200m/g、d50=30nm)、Degussa社製
実施例1
ペーストの製造
実験用混練機(Werner and Pfleiderer社)にCN936 3kgおよび4−ヒドロキシアニソール9.1gを予め入れ、60〜65℃に加熱した。加熱したアクリレートに強力に混練しながら水0.75kg中の無水マレイン酸90gの溶液を5分以内でおよびダイナシランVTMO 3kgを30分以内で添加した。引き続き前記の温度範囲で混練を持続してエーロシルOX50 3kgを1時間以内で計量して供給した。シランを十分に加水分解して縮合するためにおよびメタノール/水を除去するために減圧(約50〜100トル)下で65〜70℃でなお2時間混練工程を継続した。最後にバッチを室温に冷却した。
【0073】
使用できる塗料の製造
撹拌容器中でSR444 1kgを約40℃に暖めた。引き続きこの温度で強力な撹拌を持続して30分以内で上記の得られたペースト667gを導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0074】
実施例2
ペーストの製造
実験用混練機(Werner and Pfleiderer社)にEB1290 3kgおよび4−ヒドロキシアニソール9.5gを予め入れ、60〜65℃に加熱した。加熱したアクリレートに強力に混練しながら水0.26kg中の無水マレイン酸28.5gの溶液を5分以内でおよびダイナシランVTMO 0.949kgを30分以内で添加した。引き続き前記の温度範囲で混練を持続してプラコール13 1.323kgおよびエーロシルOX50 1.853kgを1時間以内で計量して供給した。シランを十分に加水分解して縮合するためにおよびメタノール/水を除去するために、減圧(約50〜100トル)下で65〜70℃でなお2時間混練工程を継続した。最後にバッチを室温に冷却した。
【0075】
使用できる塗料の製造
撹拌容器中でDPGDA 1.412kgを約40℃に暖めた。引き続きこの温度で強力な撹拌を持続して1時間以内で上記の得られたペーストの全部の量を導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0076】
実施例2の比較例
撹拌容器中でEB1290 15.78kgおよびDPGDA 7.43kgおよび4−ヒドロキシアニソール48gを予め入れ、65〜70℃に加熱した。加熱したアクリレートに水1.364kg中の無水マレイン酸0.15kgの溶液を5分以内でおよびダイナシランVTMO 4.988kgを30分以内で添加した。引き続き前記の温度範囲で強力に撹拌しながらプラコール13 6.96kgおよびエーロシルOX50 9.74kgを1時間以内で計量して供給した。65〜70℃でなお1時間更に撹拌し、引き続きシランの加水分解により生じるメタノールを真空で蒸留分離した。最後にバッチを室温に冷却した。
【0077】
実施例3
トラスミル(Torusmill)20C(VMA−Getzmann社)中でエベクリル5129 11.22kgおよび4−ヒドロキシアニソール43.2gを予め入れ、撹拌(典型的には500〜100rpm、ディスソルバー)しながら75℃に加熱した。加熱したアクリレートに水081kg中のマレイン酸135gの溶液をおよびダイナシラン6490 2.98kgを5〜10分以内で添加した。引き続き前記の温度で、撹拌速度1000〜2000rpm(ディスソルバー)でエーロシル200 5.97kgを、反応混合物がなお良好に撹拌可能に保たれるように、計量して供給し、このために3〜4時間の供給時間が必要であった。更にエーロシル供給の第2の半分の時間に、撹拌能力を保証するために、HDDAの間欠的添加が必要であり、このために全部で3.3kgのHDDAが必要であった。ディスソルバーを用いて75℃および2000〜3000rpmでなお2時間更に撹拌し、なお流動する塗料を適当な容器に移し、室温に冷却し、その際ペースト状材料に徐々に硬化した。
【0078】
実施例3により製造したペーストからの使用できる塗料の製造
実施例3.1
撹拌容器中でHDDA0.374kgを約40℃に加熱した。引き続きこの温度で強力な撹拌を維持して30分以内でペースト1kgを導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0079】
実施例3.2
撹拌容器中でHDDA0.279kgを約40℃に加熱した。引き続きこの温度で強力な撹拌を維持して30分以内でペースト1kgを導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0080】
実施例3.3
撹拌容器中でHDDA0.209kgを約40℃に加熱した。引き続きこの温度で強力な撹拌を維持して30分以内でペースト1kgを導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0081】
実施例4
トラスミル(Torusmill)20C(VMA−Getzmann社)中でエベクリル1290 11.22kgおよび4−ヒドロキシアニソール43.2gを予め入れ、撹拌(典型的には500〜100rpm、ディスソルバー)しながら75℃に加熱した。加熱したアクリレートに水081kg中のマレイン酸135gの溶液をおよびダイナシラン6490 2.98kgを5〜10分以内で添加した。引き続き前記の温度で、撹拌速度1000〜2000rpm(ディスソルバー)でエーロシル200 5.97kgを、反応混合物がなお良好に撹拌可能に保たれるように、計量して供給し、このために3〜4時間の供給時間が必要であった。更にエーロシル供給の第2の半分の時間に、撹拌能力を保証するために、HDDAの間欠的添加が必要であり、このために全部で3.3kgのHDDAが必要であった。ディスソルバーを用いて75℃および2000〜3000rpmでなお2時間更に撹拌し、なお流動する塗料を適当な容器に移し、室温に冷却し、その際ペースト状材料に徐々に硬化した。
【0082】
実施例4.1
撹拌容器中でHDDA0.498kgを約40℃に加熱した。引き続きこの温度で強力な撹拌を維持して30分以内でペースト1kgを導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0083】
実施例4.2
撹拌容器中でHDDA0.372kgを約40℃に加熱した。引き続きこの温度で強力な撹拌を維持して30分以内でペースト1kgを導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0084】
実施例4.3
撹拌容器中でHDDA0.279kgを約40℃に加熱した。引き続きこの温度で強力な撹拌を維持して30分以内でペースト1kgを導入した。更に1時間撹拌後、バッチを室温に冷却した。
【0085】
使用例
実施例1、2、3.1〜3.3、4.1〜4.3および比較例の使用できる塗料を、磨耗を測定するために、装飾紙上に25μmのスリット幅のドクターでおよび引掻き硬度を測定するために正方形のPVC板(辺の長さ10cm、厚さ2mm)上にスリット幅50μmのドクターで塗布し、低エネルギー電子加速装置(140keV)中で50kGyの線量で硬化した。装置中の酸素残留含量は200ppm未満であった。
【0086】
試料の引掻き硬度をDIN53799によりダイヤモンド尖端および硬質合金球を使用して試験した。更に試料の耐摩性をDIN68861により紙ヤスリS−42、2個の磨耗輪CS−0を使用して50〜1000回転で試験した。更に試料をDIN52347(曇り)およびD−1044(ASTM)により試験した。それぞれの試験結果を表1および表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐引掻き性および/または耐摩性被覆のための高充填性ペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物であり、珪素有機ナノもしくはミクロハイブリッドカプセルが酸化物コアAおよび珪素有機シェルBからなり、コアAは成分(a)および/または(b)の少なくとも1種のナノ規模またはミクロ規模の酸化物粒子(KA−O)を含有し、珪素有機シェルBは一般式Ia:
(Si´O−)Si−R (Ia)
[式中、Rは有機官能性基を表し、xは0〜20の数であり、Siのなお自由な原子価はSiO−および/または−ZによりおよびSi´の自由な原子価はSiO−、−Rおよび/または−Zにより飽和され、基Zは同じかまたは異なり、ヒドロキシ基またはアルコキシ基であり、シェルBのSiまたはSi´はそれぞれ最大で1個の基Rを有する]
の少なくとも1種の珪素有機成分を含有しおよび/またはシェルBの珪素有機成分が一般式Ib:
(KA−O)−[(Si´O−)Si−R] (Ib)
[式中、Rは前記のものを表し、xは0〜20の数であり、 Siのなお自由な原子価は(KA−O)−、SiO−および/または−ZによりおよびSi´の自由な原子価は(KA−O)−、SiO−、−Rおよび/または−Zにより飽和され、基Zは同じかまたは異なり、ヒドロキシ基またはアルコキシ基であり、シェルBのSiまたはSi´はそれぞれ最大で1個の基Rを有する]の1個以上の共有結合を介してコアA(KA−O)に結合しており、前記組成物は、
(i)以下の(a)、(b)または(c)の群:
(a)元素周期表の第2〜第6主族、第1〜第8副族またはランタニドの少なくとも1種の金属または半金属の少なくとも1種のナノ規模の酸化物および/または混合酸化物または
(b)ミクロ規模のコランダムまたは
(c)(a)および(b)からの酸化物粒子混合物
からの酸化物粒子と、
(ii)一般式II:
SiY(4−s−r) (II)
[式中、基RおよびRは同じかまたは異なり、それぞれ1〜50個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、クロロアルキル基、イソシアノアルキル基、シアノアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アシルアルキル基、アクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルキル基、ポリスルファンアルキル基、メルカプトアルキル基、チアシアミドアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、カルボネートアルキル基またはウレイドアルキル基を表し、Yはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基または2−メトキシエトキシ基を表し、sは1、2または3であり、rは0、1または2であり、(s+r)は3以下である]
の少なくとも1種の有機官能性シランおよび
(iii)場合により、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基またはイソプロポキシ基を有し、平均オリゴマー化度1〜50を有する、モノマーおよび/またはオリゴマーの珪酸エステルおよび
(iV)官能基が同じかまたは異なり、シロキサン中のそれぞれのSi原子は、アルキル、フルオロアルキル、シアノアルキル、イソシアノアルキル、アルケニル、アミノアルキル、ジアミノアルキル、トリアミノアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アシルアルキル、グリシジルオキシアルキル、アクリルオキシアルキル、メタクリルオキシアルキル、メルカプトアルキル、ウレイドアルキル、アリールまたはアルコキシの群からの1個の官能基を有し、シロキサン中のSi原子の残りの自由な原子価はメトキシ基またはエトキシ基またはヒドロキシ基により飽和されている、場合により有機官能性シロキサン
との反応により得られ、その際反応をその場で、液体の硬化可能な合成樹脂または合成樹脂の前駆物質中で行い、成分(i)の酸化物粒子の含量が使用される合成樹脂成分100質量部に対して10〜300質量部であり、反応を混合装置または分散装置中で行う、耐引掻き性および/または耐摩性被覆のための高充填性ペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物。
【請求項2】
請求項1記載の耐引掻き性および/または耐摩性被覆のためのペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物を製造する方法において、
(i)以下の(a)、(b)または(c)の群:
(a)元素周期表の第2〜第6主族、第1〜第8副族またはランタニドの少なくとも1種の金属または半金属の少なくとも1種のナノ規模の酸化物および/または混合酸化物または
(b)ミクロ規模のコランダムまたは
(c)(a)および(b)からの酸化物粒子混合物
からの酸化物粒子と、
(ii)一般式II:
SiY(4−s−r) (II)
[式中、基RおよびRは同じかまたは異なり、それぞれ1〜50個の炭素原子を有する直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基、2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、クロロアルキル基、イソシアノアルキル基、シアノアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アシルアルキル基、アクリルオキシアルキル基、メタクリルオキシアルキル基、ポリスルファンアルキル基、メルカプトアルキル基、チアシアミドアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、アミノアルキル基、ジアミノアルキル基、トリアミノアルキル基、カルボネートアルキル基またはウレイドアルキル基を表し、Yはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n−プロポキシ基または2−メトキシエトキシ基を表し、sは1、2または3であり、rは0、1または2であり、(s+r)は3以下である]
の少なくとも1種の有機官能性シランおよび
(iii)場合により、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基またはイソプロポキシ基を有し、平均オリゴマー化度1〜50を有する、モノマーおよび/またはオリゴマーの珪酸エステルおよび
(iV)官能基が同じかまたは異なり、シロキサン中のそれぞれのSi原子は、アルキル、フルオロアルキル、シアノアルキル、イソシアノアルキル、アルケニル、アミノアルキル、ジアミノアルキル、トリアミノアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、アシルアルキル、グリシジルオキシアルキル、アクリルオキシアルキル、メタクリルオキシアルキル、メルカプトアルキル、ウレイドアルキル、アリールまたはアルコキシの群からの1個の官能基を有し、シロキサン中のSi原子の残りの自由な原子価はメトキシ基またはエトキシ基またはヒドロキシ基により飽和されている、場合により有機官能性シロキサン
を、その場で、液体の硬化可能な合成樹脂または合成樹脂の前駆物質中で反応させ、成分(i)の酸化物粒子の含量が使用される合成樹脂成分100質量部に対して10〜300質量部であり、反応を混合装置または分散装置中で行うことを特徴とする、耐引掻き性および/または耐摩性被覆のためのペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物を製造する方法。
【請求項3】
硬化可能な合成樹脂または硬化可能の合成樹脂の前駆物質としてアクリレート、メタクリレート、エポキシド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、シリコンアクリレートまたは前記成分の2種以上の混合物を使用する請求項2記載の方法。
【請求項4】
使用される合成樹脂100質量部に対して80質量部より多く200質量部までの酸化物成分(i)を使用する請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
酸化物成分(i)および少なくとも1種のシランを基礎とする成分(ii)、(iii)および/または(iv)を100:1〜0.5:1の質量比で使用する請求項2から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
成分(a)として元素Si、Al、Tiおよび/またはZrの群からの少なくとも1種のナノ規模の酸化物および/または混合酸化物を使用し、粒子が1〜200nmの平均粒度を有する請求項2から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
成分(a)としてナノ規模の珪酸を使用する請求項2から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
成分(b)として平均粒度3〜40μmを有するミクロ規模のコランダムを使用する請求項2から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
成分(c)としてナノ規模の珪酸(a)およびミクロ規模のコランダム(b)からなる酸化物粒子混合物を使用する請求項2から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
成分(ii)として、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリルオキシ−2−メチル−プロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシ−2−メチル−プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、またはn−プロピルトリエトキシシランまたは前記シランの2種以上の混合物を使用する請求項2から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
成分(iv)として、n−プロピルメトキシシロキサン、n−プロピルエトキシシロキサン、ビニルメトキシシロキサン、ビニルエトキシシロキサン、フェニルトリメトキシシロキサン、フェニルトリエトキシシロキサン、アルキル基にそれぞれ3〜16個の炭素原子を有するペルフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロアルキルエトキシシロキサンおよびペルフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロアルキルメトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピルメトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピルエトキシシロキサン、n−プロピル/ビニルメトキシシロキサン、n−プロピル/ビニルエトキシシロキサン、フェニル/ビニルエトキシシロキサン、フェニル/ビニルメトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピル/n−プロピルメトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピル/n−プロピルエトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピル/フェニルメトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピル/フェニルエトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピル/トリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルメトキシシロキサン、3−メタクリルオキシプロピル/トリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルエトキシシロキサン、ビニル/トリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルメトキシシロキサン、ビニル/トリデカフルオロ−1、1、2、2−テトラヒドロオクチルエトキシシロキサンまたはこれらからなる混合物の少なくとも1種を使用する請求項2から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
反応を触媒の存在で実施する請求項2から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
反応を湿潤剤の存在で実施する請求項2から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
反応を水の存在で実施する請求項2から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
珪素有機成分(ii)のSi1モル当たり水0.5〜6モルを使用する請求項2から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
反応を30〜100℃の範囲の温度で実施する請求項2から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
硬化可能な合成樹脂または硬化可能な合成樹脂の前駆物質を混合装置または分散装置に入れ、加熱し、触媒、場合により湿潤剤および水を添加し、成分(ii)〜(iv)を導入し、引き続き酸化物粒子(i)を良好に混合して添加する請求項2から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
硬化可能な合成樹脂または硬化可能な合成樹脂の前駆化合物を50〜90℃の範囲の温度に加熱する請求項17記載の方法。
【請求項19】
硬化可能な合成樹脂または硬化可能な合成樹脂の前駆化合物を65〜75℃の範囲の温度に加熱する請求項16または17記載の方法。
【請求項20】
反応中および/またはその後に生じるアルコールを反応系から除去する請求項2から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
耐引掻き性および/または耐摩性被覆を製造する塗料を製造するための、請求項1記載のペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物または請求項2から20までのいずれか1項記載の方法により製造された相当する組成物の使用。
【請求項22】
塗料を製造するために、ペースト状の珪素有機ナノおよび/またはミクロハイブリッドカプセルを含有する組成物を液体の合成樹脂、合成樹脂の前駆化合物および/または溶剤で希釈する請求項21記載の使用。

【公開番号】特開2010−215917(P2010−215917A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112103(P2010−112103)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【分割の表示】特願2002−99206(P2002−99206)の分割
【原出願日】平成14年4月1日(2002.4.1)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】