説明

耕耘機用ロ−タリ耕耘装置

【目的】 ダッシュ現象やスリップ現象のない良好な耕耘を行う。
【構成】 センタ−ドライブケ−ス7の左右両脇部に傾斜耕耘爪軸筒14を配設し、且つ、傾斜爪軸筒14の中心部を通ってセンタ−ドライブケ−ス7に支承する耕耘軸9の左右延出部に水平爪軸筒13をそれぞれ嵌着して、耕耘軸9をそれに嵌着される受動スプロケット10とチエン11等からなる主伝動系で正転駆動するとともに、傾斜爪軸筒14を主伝動系に連係して設けられた逆転駆動系で駆動するように構成されたロ−タリ耕耘装置において、逆転駆動系に、該逆転駆動系を非伝動状態にして受動スプロケット10に連動結合することができる切換ギア17を設け、切換ギア17の選択切換により傾斜爪軸筒14を水平爪軸筒13に対して逆転する状態と、同じ方向に回転する状態とに切り換えできるようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、センタ−ドライブケ−スの左右両脇部に配設する傾斜爪軸筒を、その外方に装設される水平爪軸筒に対して逆転駆動して、傾斜・水平の両爪軸筒に止着する耕耘爪の背反回転による打ち消し合い作用でもって機体のダッシュ現象を抑止しながら耕耘するように構成された、部分逆転方式の耕耘機用ロ−タリ耕耘装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】上述した部分逆転方式の耕耘機用ロ−タリ耕耘装置は、例えば、特公昭46−39041号公報によって知られるところであるが、従来のものは、常に、水平爪軸筒が正転駆動され、且つ、傾斜爪軸筒が逆転駆動される状態のもとで稼働されるものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】したがって、耕耘機々体のダッシュ現象が生じ易い硬い圃場の耕耘には好都合である反面、比較的に軟い圃場の耕耘においては、逆転する傾斜爪軸の耕耘爪が機体のスリップ現象を助長することになり、殊に、代掻き作業機や畦立作業機を併用する耕耘作業においては、前記スリップ現象が大になって作業不能に陥ることがあるといった問題点があった。本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圃場条件や作業態様に異なりがあっても、その異なりに対応して機体のダッシュ現象もスリップ現象も生ぜさせることなく良好に耕耘できるように改良した部分逆転方式の耕耘機用ロ−タリ耕耘装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明におけるロ−タリ耕耘装置は、センタ−ドライブケ−ス(7)の左右脇部に傾斜爪軸筒(14)(14)を配設し、且つ、傾斜爪軸筒(14)(14)の中心部を通ってセンタ−ドライブケ−ス(7)に支承する耕耘軸(9)の左右延出部に水平爪軸筒(13)(13)を嵌着して、前記耕耘軸(9)をそれに嵌着される受動スプロケット(10)とチエン(11)等からなる主伝動系で正転駆動するとともに、傾斜爪軸筒(14)(14)を前記主伝動系に連係して設けられた逆転駆動系で駆動するように構成された耕耘機用ロ−タリ耕耘装置において、前記逆転駆動系に、該逆転駆動系を非伝動状態にして受動スプロケット(10)に連動結合することができる切換ギア(17)を設けたことを特徴とするものである。
【0005】
【作用】上記のように構成されたロ−タリ耕耘装置において、切換ギア(17)により逆転駆動系が伝動状態に保たれている場合は、耕耘軸(9)に直接的に嵌着結合されている左右の水平耕耘軸(13)(13)が正転駆動されるに対し、左右の傾斜爪軸筒(14)(14)は逆転駆動されて、水平爪軸筒に止着される耕耘爪群と、傾斜爪軸筒に取り付けられる耕耘爪が背反方向に回転して土中に打ち込まれることとなって機体のダッシュ現象が抑止されながらの耕耘が行われる。また、切換ギア(17)が、逆転駆動系を非伝動状態にして主伝動系のスプロケット(10)に噛合されると、傾斜爪軸筒(14)も水平耕耘爪軸筒(13)と同じ方向に回転駆動されることとなって、傾斜爪軸筒(14)と水平耕耘爪軸筒(13)の耕耘爪が共に正転方向に回転され、スリップ現象を助長することのない耕耘が行われる。
【0006】
【実施例】本発明の実施例について図面を参照して説明するが、図1は本発明に係るロ−タリ耕耘装置の要部を示す断面部分図、図2は本発明に係るロ−タリ耕耘装置が実施された耕耘機の全体側面図、図3は耕耘爪の配列例を示す概略図、図4は耕耘爪の打込み順序を示す説明図である。
【0007】先ず、図2により耕耘機(T)の全体的な構成を説明すると、耕耘機(T)は、ミッシヨンケ−ス(1)から前延するフレ−ム(2)にエンジン(3)を搭載し、エンジン(3)の動力をミッションケ−ス内の伝動機構を経てミッションケ−ス下部に支承する車軸(4)に伝達し、車軸(4)に嵌着する車輪(5)(5)を回転駆動して走行するように構成されている。そして、ミッションケ−ス(1)から後延する操縦ハンドル(6)の握部にあって運転操作するように構成され、ミッションケ−ス(1)の後部で且つ操縦ハンドル(6)の下方にロ−タリ耕耘装置(R)を着脱自在に装備できるようになっている。
【0008】ロ−タリ耕耘装置(R)は、ミッションケ−ス(1)に着脱自在に連設されるセンタ−ドライブケ−ス(7)と、耕耘部枠体の後尾部に設置されるゲ−ジホイル装置(8)等によって構成されており、センタ−ドライブケ−ス(7)の下端部には、進行方向に対して直交する耕耘軸(9)が水平横向きに支承され、該耕耘軸(9)を前記ミッションケ−ス(1)のPTO部に連動連結してセンタ−ドライブケ−ス(7)内に収容構成される主伝動系でもって正転方向(図2において反時計方向)に駆動するようになっており、主伝動系は、ミッションケ−ス(1)のPTO部からの動力を受ける入力軸に嵌着されているスプロケット(図示省略)と、前記耕耘軸(9)の中央部に嵌着結合された受動スプロケット(10)とにチエン(11)を掛回して構成されている。
【0009】前記耕耘軸(9)は、センタ−ドライブケ−ス(7)から左右に突出して設けられるが、それらの突出部は、センタ−ドライブケ−ス(7)の左右両脇部に装設されるホルダ(12)(12)の中心部を通って更に外方に突出され、それぞれの突出部に水平爪軸筒(13)(13)が着脱自在に嵌装されるとともに、前記ホルダ(12)(12)の傾斜外径部に傾斜爪軸筒(14)(14)が回転自在に装備されている。そして、左右の水平爪軸筒(13)(13)の外周には耕耘爪(A〜E)(F〜J)が所定の配列で止着され、また、左右の傾斜爪軸筒(14)(14)の外周には正逆転両用の偏心耕耘爪(15)(15)が各々一本止着されている。
【0010】なお、図示の実施例では、図3のように、左右の水平爪軸筒(13)(13)に各々5本、計10本の耕耘爪(A〜E)(F〜J)が設けられ、それら10本の耕耘爪が、回転方向において等間隔(360°÷10=36°)に位相をずらして装備され、図4に示す順序で土中に打ち込まれるように構成されている。また、左右の傾斜爪軸筒(14)(14)の偏心耕耘爪(15)(15)は、前記耕耘爪(A〜E)(F〜J)とは別の爪配列で設けられている。
【0011】そして、傾斜爪軸筒(14)(14)は、上述した主伝動系に連動組成される逆転駆動系でもって駆動されるようになっており、逆転駆動系は、図1にその一部がみられように構成されている。つまり、センタ−ドライブケ−ス(7)の内部に主伝動系から動力を得るように設けられた逆転駆動ギア(16)に係脱自在に噛合する切換ギア(17)を、傾斜爪軸駆動筒(18)のスプライン部(19)に軸心方向にスライド自在に嵌装し、該切換ギア(17)をシフタ−(20)でもって移動させて、上述の逆転駆動ギア(16)に係合する状態と、切換ギア(17)の側面の係合部(21)が主伝動系のスプロケット(10)側面の係合部に噛合する状態とに切換できるように構成されている。なお、図1には、右側のみが示されているが、左側も同様に構成されるものであって、左右の切換ギア(17)(17)をスライド移動するシフタ−(20)(20)は、両者同時にも、また左右各別にも操作できるようになっている。
【0012】傾斜爪軸駆動筒(18)は、耕耘軸(9)に回転自在に外嵌し、且つホルダ(12)(12)の内径部に回転自在に内嵌支持して設けられ、傾斜爪軸筒(14)の内方に位置する部分にギア(22)を嵌着し、そのギア(22)を、傾斜爪軸筒(14)の内径部に形設する受動ギア部(23)に噛合させて屈折伝動部を形成して、切換ギア(17)が逆転駆動ギア(16)に噛合された場合は、傾斜爪軸筒(14)を水平爪軸筒(13)に対して逆転駆動し、また、切換ギア(17)がスプロケット(10)に噛合された場合は、傾斜爪軸筒(14)を、水平爪軸筒(13)と同じ正転方向に回転駆動するようになっている。
【0013】したがって、比較的硬い圃場を耕耘する場合は、左右のシフタ−(20)(20)の操作により切換ギア(17)(17)を逆転駆動ギア(16)(16)に噛合させて主伝動系を稼働すれば、耕耘軸(9)に直接的に嵌着結合されている左右の水平耕耘軸(13)(13)が正転駆動されるに対し、左右の傾斜爪軸筒(14)(14)は、逆転駆動ギア(16)、切換ギア(17)、傾斜爪軸駆動筒(18)、ギア(22)を経て受動ギア部(23)に伝達される動力によって逆転駆動されることとなって、伝動ケ−ス(7)の直下部およびその近傍部の土壌は、逆回転する傾斜爪軸筒の偏心耕耘爪(15)(15)によって残耕処理状態に耕起されるのであり、水平爪軸筒の耕耘爪群(A〜J)と、傾斜爪軸筒の偏心耕耘爪(15)(15)の背反方向における土中打ち込みでもって機体のダッシュ現象が抑止されながら良好な耕起が行なわれるのである。
【0014】ついで、畑地などのような軟い圃場を耕起する場合、あるいは代掻き作業機や畦立作業機を併用した耕耘作業の場合には、左右のシフタ−(20)(20)の操作によって切換ギア(17)(17)を逆転駆動ギア(16)(16)から離脱させ主伝動系のスプロケット(10)に噛合させて稼働すれば、傾斜爪軸筒(14)(14)の偏心耕耘爪(15)(15)も、水平耕耘爪軸筒(13)(13)の耕耘爪群(A〜J)と同じ正転方向に回転されることとなって、スリップ現象のない良好な耕起作業が行われるのである。なお、切換ギア(17)(17)の逆転駆動ギア(16)とスプロケット(10)への噛合切換は左右各別にも行えるものであるから、圃場条件の異なりに対応する等場合によっては、いずれか一方のみを切り換えることにより、スリップを助長しない範囲でダッシュ抑止力を調整することも可能である。
【0015】
【発明の効果】本考案は、以上に説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。逆転駆動系を組成する切換ギア(17)を切り換え操作することにより水平爪軸筒(13)(13)に止着される耕耘爪群(A〜J)と、傾斜爪軸筒(14)に止着される偏心耕耘爪(15)とが背反方向に回転して土中に打ち込まれる作業体勢と、前記耕耘爪群(A〜J)と偏心耕耘爪(15)とが共に正転方向に回転して土中に打ち込まれる作業体勢とに簡単に切り換えることができ、圃場条件や作業態様に異なりがあってもその異なりに対応して機体のダッシュ現象もスリップ現象も生ぜしめることなく良好に耕耘できる。また、場合によっては、左右の傾斜爪軸筒(14)(14)に止着される偏心耕耘爪(15)(15)のいずれか一方のみを水平爪軸筒(13)(13)に止着される耕耘爪群(A〜J)に対して逆転する状態とすることができ、それによって機体のダッシュ抑止力を調整することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るロ−タリ耕耘装置の要部を示す断面部分図である。
【図2】本発明に係るロ−タリ耕耘装置が実施された耕耘機の全体側面図である。
【図3】耕耘爪の配列例を示す概略図である。
【図4】耕耘爪の打込み順序を示す説明図である。
【符号の説明】
7 センタ−ドライブケ−ス
9 耕耘軸
10 受動スプロケット
11 チエン
13 水平爪軸筒
14 傾斜爪軸筒
17 切換ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】 センタ−ドライブケ−ス(7)の左右脇部に傾斜爪軸筒(14)(14)を配設し、且つ、傾斜爪軸筒(14)(14)の中心部を通ってセンタ−ドライブケ−ス(7)に支承する耕耘軸(9)の左右延出部に水平爪軸筒(13)(13)を嵌着して、前記耕耘軸(9)をそれに嵌着される受動スプロケット(10)とチエン(11)等からなる主伝動系で正転駆動するとともに、傾斜爪軸筒(14)(14)を前記主伝動系に連係して設けられた逆転駆動系で駆動するように構成された耕耘機用ロ−タリ耕耘装置において、前記逆転駆動系に、該逆転駆動系を非伝動状態にして受動スプロケット(10)に連動結合することができる切換ギア(17)を設けたことを特徴とする耕耘機用ロ−タリ耕耘装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−303801
【公開日】平成6年(1994)11月1日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−117884
【出願日】平成5年(1993)4月20日
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)