説明

耳標の取り付け用具

【課題】 従来の耳標の取り付け用具は、人力(握力)を基本としているため、作業者にとって強いパワーが要求され、時として一気に装着することができなかったり、連続しての作業に大きな疲労、苦痛が強いられてしまうという点である。
【解決手段】 一部にエアシリンダを固着装備した基体と、その基体に備えられたグリップ部と、エアバルブと、そのエアバルブに圧縮空気を送るコンプレッサーと、前記エアバルブのピストンを押圧して圧縮空気を前記エアシリンダに送るトリガーとを有し、前記した基体に装備され、エアシリンダのピストン側に固定された耳標のセット部を設け、そのセット部のエアシリンダのピストン側には耳標の挿し込み体の装着ピンを備え、その装着ピンと直線的に対応するセット部の対向側には前記挿し込み体が挿入され、ロックされる受体の装着部を備えていることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は牛や豚等の家畜類に個体識別のため、耳殻に装着する耳標の取り付け用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、牛や豚等の家畜は食肉として出荷されることから個体を識別するため耳標が耳殻に装着され、この耳標には近時より明確に情報を判別するため個体情報が入力されたICチップが具備されるようになり、加えてDNA情報も明確とするため耳標の装着時における出血を採血容器に採取し保存しておくことが行なわれている。
【0003】
この耳標は通常、筒体とその筒体の一方開口縁に設けられたフランジとより成る受体と、その受体の筒体に挿入され、先端にニードル部を有する挿し込み部と、その挿し込み部の基端に設けられたフランジとより成る挿し込み体との組み合わせとなっている。
【0004】
そして、この耳標の耳殻への取り付けは、耳殻の一方面に耳標の受体を宛がい、その受体の筒体に挿し込み体の挿し込み部を先端のニードルで耳殻の軟骨を砕きながら貫通させて行なわれる。
【0005】
この取り付け作業には約60kg相当の強いパワーが必要となり、人力ではとても対応できるものではなく、専用の取り付け用具が用いられることとなり、この取り付け用具はペンチ型のものとされている。しかし、このタイプの取り付け用具では作業者は数をこなしきれず、連続しての作業も疲労と苦痛を伴もなうものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2008−295476号出願書類
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の耳標の取り付け用具は、人力(握力)を基本としているため、作業者にとって強いパワーが要求され、時として一気に装着することができなかったり、連続しての作業に大きな疲労、苦痛が強いられてしまうという点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した問題点を解決するために、本発明に係る耳標の取り付け用具は一部にエアシリンダを固着装備した基体と、その基体に備えられたグリップ部と、エアバルブと、そのエアバルブに圧縮空気を送るコンプレッサーと、前記エアバルブのピストンを押圧して圧縮空気を前記エアシリンダに送るトリガーとを有し、前記した基体に装備され、エアシリンダのピストン側に固定された耳標のセット部を設け、そのセット部のエアシリンダのピストン側には耳標の挿し込み体の装着ピンを備え、その装着ピンと直線的に対応するセット部の対向側には前記挿し込み体が挿入され、ロックされる受体の装着部を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る耳標の取り付け用具は前記した耳標のセット部は動物の耳殻を挟むことができるようU字形あるいはV字形の一体物であることを特徴とし、前記した耳標のセット部における受体の装着部には、受体の筒部を挟持する、上方を開放した板バネ体が設けられていることを特徴とし、前記した耳標のセット部における受体の装着部には、受体の筒部外面に形成された係合フランジと係合する内側フランジを設けるとともに、受体の耳殻挟持用フランジの基端に形成されたフィンとの嵌合部を形成してあることを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明に係る耳標の取り付け用具は前記した耳標のセット部には採血容器を吊持することができる透孔あるいはフック部が形成されていることを特徴とし、前記したエアシリンダ、グリップはカバーで被覆され、そのカバーには本体を吊持することができる透孔あるいはフック部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る耳標の取り付け用具は上記のように構成されている。そのため、耳標の耳殻への取り付け作業におけるパワーは圧縮空気を利用した強力なものとなり、作業者はトリガーを介してエアバルブのピストンを操作するのみの簡単で力のいらない作業を行なえば済むので、連続しての取り付け作業も容易に、かつ、苦痛を伴もなうことなく実行することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る耳標の取り付け用具を示す側断面図である。
【図2】背面図である。
【図3】グリップの底面から内部を見た図である。
【図4】カバーを被覆した状態を示す側面図である。
【図5】受体を挟持する板バネを示す斜視図である。
【図6】板バネの装着状態を示す側面図である。
【図7】平面図である。
【図8】正面図である。
【図9】別の例とした受体の装着状態を示す図である。
【図10】別の例の装着部を示す図である。
【図11】フィンを示す図である。
【図12】採血容器を吊持するための吊持部材の吊り部を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面として示し、実施例で説明したように構成することで実現した。
【実施例1】
【0014】
次に、図面を参照して本発明の好ましい実施の一例を説明する。これらの図にあって1は基体を示しており、この基体1の下面にはグリップ2が一体に成形されている。このグリップ2は中空とされ、その底面から図示しないエアコンプレッサーとチューブで連結され、圧縮空気Aが注入されるようになっている。
【0015】
また、前記グリップ2内にはエアバルブ3が内蔵されている。このエアバルブ3は流路を二分岐させるタイプのものとなっており、その切り換えのためのピストンのヘッド4はグリップ2の前方側に突出されており、その先端に押圧力を受けるための当接部5がヘッド4より大径のものとして一体に備えられている。
【0016】
前記した当接部5は、基体1の前方側寄りにピン6aで枢支されたトリガー6によって押圧操作されるものとなっている。即ち、本実施例におけるエアバルブ3はバルブプランジャとして作用して、圧縮空気の流入、流出を調整することとなる。
【0017】
一方、前記基体1上にはエアシリンダ(コントロールシリンダ)7が固着搭載されているもので、このエアシリンダ7には前記エアバルブ3から分岐された圧縮空気Aが前端及び後端に供給されるものとなっている。
【0018】
このエアシリンダ7の前方側には内部の圧縮空気の圧力によって突出されるピストン8が設けられている。即ち、エアシリンダ7にあってはエキゾーストバルブの作用、あるいはエキゾーストシャッタを作動させることによってピストン8を圧縮空気の流出力によって突出作動させ、負圧によって復元させる。
【0019】
また、基体1の前端には耳標のセット部9が別部材によって一体的に設けられている。このセット部9は基端側に、駆動するピストン8の部分を被包する大径部9aを有し、全体として上方を開放した略U字状の形状をしている。尚、本願は耳標の取り付け用具に関するものであるので、耳標自体についての詳細な説明は省略する。
【0020】
そして、このセット部9には大径部9aの前面に耳標の挿し込み体のフランジを受ける円板状をした受板10が設けられ、その受板10の中央から耳標の挿し込み体における、先端にニードル部を備えた挿し込み部の中空部に挿入される装着ピン11が備えられ、この装着ピン11の基端はピストン8の先端面に固着されている。また、装着ピン11には受板10の前面部分で挿し込み部の中空部の径よりやや大径としたストッパ12が設けられている。
【0021】
さらに、このセット部9の先端側には、耳標の受体の装着部13が設けられている。この装着部13の配備位置は装着ピン11にセットされた耳標の挿し込み体の挿し込み部が、受体Bの筒体B1の軸芯に対し、直線上となるものとされている。
【0022】
また、図中14はDNA採取のための採血容器を落下防止するため吊持する吊持体、あるいはその吊持体を掛けるリングの取り付け用透孔であり、この透孔14はフック等の他の吊り支持の構成でもよい。
【0023】
受体Bの装着部13には図5として示す、受体Bの筒部B1を挟持する板バネ15が備えられる。この板バネ15は上方を開放した略U字形をしており、その対向する側壁部に各々外方へ膨出した膨出部15a、15aを形成し、この膨出部15a、15a間で筒部B1を密に挟持することとなる。この装着状態で受体Bのフランジは装着部13の内面に密に当接される。また、板バネ15はネジ16によって、その底板部分を装着部13に締着固定される。この構成で受体B1は装着部13、強いては板バネ15に対して、ワンタッチで着脱が可能とされる。
【0024】
また、受体Bの装着部13は図9〜図11として示す構成とすることができる。この図9〜図11では装着部13に後述する受体Bのフィン22と嵌合する嵌合部23、23が形成されており、この嵌合によって装着時における受部Bの落下を防止する。対応する受部Bには、耳殻を挟持するためのフランジB2と筒部B1の外面との基部にフィン22が形成されており、さらに、筒体B1の外周に係合用フランジB3が形成されているもので、この係合用フランジB3が装着部13の内面に設けられた内側フランジ24と係合されている。
【0025】
前記した係合用フランジB3と内側フランジ24との存在によって、挿し込み体から装着ピン11を外す際の作業が各フランジB3と24の引っ掛かりで容易に実行できることとなる。かかる装着部13の構成は受体Bを装着する作業が片手で可能となり、パーツも少なく安価となり、故障が生じることも少なく、デザイン的にもシンプルですっきりしたものとなる。
【0026】
また、本実施例に係る耳標の取り付け用具は、少なくとも基体1、グリップ2及びエアシリンダ7のパートをカバー17で被覆され、外観上の美感や外衝の防護を図っている。このカバー17には取り付け用具自体を吊持するための透孔18a、18bが適宜位置に形成される。取り付け用具自体を吊持すると、机上や地上等に取り付け用具を置き、また取り上げるという作業を省くことができる。尚、吊持に用いる紐は、通常の紐のほか、コイルスプリングやゴムを含めた意味でのエラストマー等の伸縮性を保有する素材を使用すると、さらに作業が行ない易くなる。尚、前記した透孔18a、18bはフック等に代替することも可能である。
【0027】
さらに、透孔14に吊持されるあるいはリングを介して吊持される採血容器の吊持部材19は、その吊り掛けリング部20にスリット20aを形成しておくと、このスリット20aを利用して一気に取り外すことができる。この吊持部材19は吊り掛けリング20の下方に延伸加工されたファイバー21を一体に有しており、その先端に採血容器を係止しておくものとなる。尚、採血容器は受体Bの筒体B1の二次側にセットされ、挿し込み体の挿し込み部の先端ニードルで突かれることにより、受体Bから外されることとなり、この際の落下防止のため、この採血容器をセット部9に吊持しておくこととなる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本実施例における耳標の取り付け用具は上記のように構成されている。また、装着部13における構造は板バネ15や嵌合部23の存在に代えて、上端をフォーク状とした板体を用い、その板体の中程に設けられたブラケットで枢支し、下端をスプリングで附勢した構成のものとすることもできる。この構造では、スプリングに抗して下端を押し、シーソー状に上端と装着部13の間に隙間を作り、そこに受体Bを装着して、フォーク状の先端でフランジ部分を抑える構成となる。
【0029】
また、耳標のセット部9も耳殻を入れる開放部があり、挿し込み体と受体が直線上に装着配備される構成であればよく、U字形に代えてV字形等としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 基体
2 グリップ
3 エアバルブ
4 ピストン
5 当接部
6 トリガー
6a ピン
7 エアシリンダ
8 ピストン
9 耳標のセット部
9a 大径部
10 受板
11 装着ピン
12 ストッパ
13 装着部
14 透孔
15 板バネ
15a 膨出部
16 ネジ
17 カバー
18a 透孔
18b 透孔
19 吊持部材
20 リング部
20a スリット
21 ファイバー
22 フィン
23 嵌合部
24 内側フランジ
B 受体
B1 筒体
B3 係合フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部にエアシリンダを固着装備した基体と、その基体に備えられたグリップ部と、エアバルブと、そのエアバルブに圧縮空気を送るコンプレッサーと、前記エアバルブのピストンを押圧して圧縮空気を前記エアシリンダに送るトリガーとを有し、前記した基体に装備され、エアシリンダのピストン側に固定された耳標のセット部を設け、そのセット部のエアシリンダのピストン側には耳標の挿し込み体の装着ピンを備え、その装着ピンと直線的に対応するセット部の対向側には前記挿し込み体が挿入され、ロックされる受体の装着部を備えていることを特徴とする耳標の取り付け用具。
【請求項2】
前記した耳標のセット部は動物の耳殻を挟むことができるようU字形あるいはV字形の一体物であることを特徴とする請求項1に記載の耳標の取り付け用具。
【請求項3】
前記した耳標のセット部における受体の装着部には、受体の筒部を挟持する、上方を開放した板バネ体が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耳標の取り付け用具。
【請求項4】
前記した耳標のセット部における受体の装着部には、受体の筒部外面に形成された係合フランジと係合する内側フランジを設けるとともに、受体の耳殻挟持用フランジの基端に形成されたフィンとの嵌合部を形成してあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耳標の取り付け用具。
【請求項5】
前記した耳標のセット部には採血容器を吊持することができる透孔あるいはフック部が形成されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の耳標の取り付け用具。
【請求項6】
前記したエアシリンダ、グリップはカバーで被覆され、そのカバーには本体を吊持することができる透孔あるいはフック部が形成されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5に記載の耳標の取り付け用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−183865(P2010−183865A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29763(P2009−29763)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(390004156)株式会社日本バノック (7)