説明

聴力補助具

【課題】 従来の補聴器や聴力補助具は、これらの装着者が難聴者等であることを周囲の者に知られ易いため、人によっては装着することに躊躇してしまうことがあることに鑑みて、装着に対する抵抗感を減少した聴力補助具を提供する。
【解決手段】 眼鏡のフレーム21(図3参照)やカチューシャ(図5参照)や耳飾り11等の頭飾品に必要な回路装置や電源等を組み込み、集音マイク12を該頭飾品の前方を指向した部分に配する。ケーブル13を介して回路装置に接続されたイヤホン14を耳Eの穴に挿入する。集音マイク12は左右に配され、ステレオ効果を発揮するから音源の方向を把握しやすい。頭飾品に組み込まれていることから、装着の抵抗感を緩和して、難聴者等の生活の安全性や利便性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、聴力が低下した者等の聴音を補助する補助具であって、特に、一見しただけでは補助具を装着していることが他人からわかりにくく、また、ステレオ効果で音源の方向を把握しやすい聴力補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
難聴者の聴力の補助のための装置として補聴器があり、一般的には、挿耳型や耳掛け型、箱型と称される形式の補聴器に区別されている。挿耳型では、耳の内部にイヤホン等の装置一式が挿入される。耳掛け型では、耳介と頭部との間に配置された小型の筐体に装置一式が収容され、使用者の外耳道に可撓性のシリコンチューブを挿通させ可聴部が挿入されている。また、箱型のものは、小型のケーシング内に装置一式が収容され、コードと可撓性シリコン等からなる成形片を備えた耳側受信機とが使用者の耳に連繋される。
【0003】
これらの補聴器のうち挿耳型と耳掛け型は、これらの形態上、装着していることが一見して認められるため、補聴器を使用していることを周囲に知られたくない者にとっては装着することに抵抗がある。また、運動時には脱落してしまうおそれがある。また、前記箱型のものでは、胸ポケット等にケーシングを収容してイヤホンコードを耳まで伸長させることから、周囲の人々にはいわゆる携帯オーディオプレーヤーでの音楽を聴いていると思われるので、挿耳型等に比較して装着の抵抗が薄れている。しかし、運動時には脱落してしまうおそれがある。
【0004】
上述した問題を解決しようと、特許文献1に開示された補聴器では、集音部、処理部、出力部で構成されている補聴器において、前記集音部を手首にバンドで装着した構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−246094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された補聴器では、集音部が手首に装着されるものであるため、モノラルによる聴音となり、音源の方向を認識しにくく、生活上での一般的な使用に注意が必要となる。また、運動時に脱落することはないが、音源の方向を認識しにくいため、音に対する応答性が劣って、運動時の動作に支障が生じる場合がある。
【0007】
音源の方向を確実に認識できるようにするためには両手首に装着することになるが、手首は、その指向方向が一定とならないから音源の方向が手首の指向方法に応じて変化してしまうことになる。したがって、両手首に装着したとしても、確実なステレオ効果を発揮させられず、使用者が不安定な状況に陥るおそれがある。
【0008】
そこで、この発明は、装着した状態で違和感がなく、周囲にも補聴器等を装着していることが知られにくく、また、ステレオ効果を奏することができる聴力補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る聴力補助具は、頭部に配される頭飾品であって、左右に配される部分を有する頭飾品と、前記頭飾品の一部であって前方を指向した部分に配した左右一対の集音マイクと、前記頭飾品の内部に組み込まれた所定の回路装置と、前記回路装置とケーブルを介して接続されたイヤホンとからなることを特徴としている。
【0010】
すなわち、頭飾品に集音マイクを配すると共に、該頭飾品に電源や駆動回路等の回路装置を内蔵させ、イヤホンを接続させた構造を採用したものである。
【0011】
また、請求項2の発明に係る聴力補助具はは、前記頭飾品が左右の耳の上部に配される棒状体を有する耳飾りであり、前方に伸長させた前記棒状体の先端部に前記集音マイクを配してあることを特徴としている。
【0012】
前記棒状体を耳の上に挟み込んだ状態で、該棒状体が前後方向に伸長する状態となるようにする。なお、このとき、該棒状体が耳から離脱しないように耳と係合する部分を形成しておくことが好ましい。そして、この棒状体の先端に集音マイクを配したものである。
【0013】
また、請求項3の発明に係る聴力補助具は、前記頭飾品が眼鏡用フレームであって、該フレームのテンプルの先端部に前記集音マイクを配してあることを特徴としている。
【0014】
眼鏡のフレーム自体に回路装置や集音マイクを組み込んだものであり、眼鏡を装着している態様となるものである。
【0015】
また、請求項4の発明に係る聴力補助具は、前記頭飾品が、顔面上部に配されて両端部が左右の耳に掛止される帯状体であり、前方を指向した部分に前記集音マイクを配してあることを特徴としている。
【0016】
眼鏡のフレーム部分のみを頭飾品として使用するようにしたものであり、レンズを保持しない構造としたもので、眼鏡のフレームのイヤーパッドとテンプル、ブリッジに相当する部分を有する構造としたものである。
【0017】
また、請求項5の発明に係る聴力補助具は、前記頭飾品がカチューシャであり、該カチューシャの一部であって前方を指向した部分に前記集音マイクを配してあることを特徴としている。
【0018】
頭飾品にカチューシャを利用するものであり、該カチューシャに回路装置や集音マイクを組み込んだものである。
【0019】
また、請求項6の発明に係る聴力補助具は、前記頭飾品が後頭部に巻回させたヘッドバンドであり、該ヘッドバンドの前方を指向させた先端面に前記集音マイクを配してあることを特徴としている。
【0020】
後頭部を巻回させて耳に掛け渡した頭飾品とすれば、先端部が前方を指向するから、この先端部に集音マイクを配した構造としたものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明に係る聴力補助具によれば、頭飾品に回路装置や集音マイク等を組み込むため、使用者が聴覚に劣っていることを周囲の者に知られにくい。そのため、装着する際の抵抗感を緩和して、日常生活を円滑に送れるようになる。特に、対人とのコミュニケーションを促進させ、使用者に安心感を与えることができる。
【0022】
また、集音マイク等を頭部の左右に配することができるから、聴音にステレオ効果を発揮して、音源の方向をほぼ確実に認識することができる。このため、例えば、自動車がいずれの方向から接近しているかを把握でき、安全性の向上に貢献する。
【0023】
また、請求項2の発明に係る聴力補助具によれば、簡単な構造であり、前記棒状体が左右対称であるから、構造を共通にでき、量産化を促進して製造コストの低減を図ることができる。
【0024】
また、請求項3の発明に係る聴力補助具によれば、眼鏡の使用者にとっては眼鏡を掛けていれば、この聴力補助具を装着した状態となるから、殆ど違和感を感じることなく使用することができる。なお、眼鏡を必要としない者にとっても、素通しのレンズやサングラス等を使用した眼鏡を装着することで、この聴力補助具を同時に装着することができる。
【0025】
また、請求項4の発明に係る聴力補助具によれば、ヘアバンドを装着している外観を呈して、周囲の者に聴力補助具と認識されにくい。
【0026】
また、請求項5の発明に係る聴力補助具によれば、種々の装飾を施すことが可能となり、より装飾品としての価値がある聴力補助具とすることができる。
【0027】
また、請求項6の発明に係る聴力補助具によれば、頭部の前方にフレーム等の部材が存しないから、装着者にとって、視界内に入る部材がなく、例えば、眼鏡を装着し慣れていない者にとっては違和感を覚えることなく聴力補助具を装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の第1実施形態に係る聴力補助具を示す概略の平面図である。
【図2】図1に示す聴力補助具の側面図である。
【図3】この発明の第2実施形態に係る聴力補助具を示す概略の斜視図である。
【図4】この発明の第3実施形態に係る聴力補助具を示す概略の斜視図である。
【図5】この発明の第4実施形態に係る聴力補助具を示す概略の斜視図である。
【図6】この発明の第5実施形態に係る聴力補助具を示す概略の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る聴力補助具を具体的に説明する。
【0030】
図1及び図2に、この発明の第1実施形態に係る聴力補助具10を示してある。この聴力補助具10は頭部Hの耳Eに掛止される棒状体の耳飾り11からなり、この耳飾り11を耳Eに掛止させた状態で、図に示すように、長手方向が前後方向となるように装着されるようにしてある。この耳飾り11の先端部に集音マイク12が配されている。また、耳飾り11の内部には回路装置や電源等が組み込まれており、回路装置にはケーブル13を介してイヤホン14が接続され、このイヤホン14を耳穴に挿入する。
【0031】
この第1実施形態に係る聴力補助具10では、前記集音マイク12によって捕捉された音声が耳飾り11の内部の回路装置により増幅等され、イヤホン14から出力されて装着者によって聞き取られることになる。この場合、集音マイク12がイヤホン14から適宜に離れた位置にあるためハウリングが生じにくく、音声を明瞭に聞き取ることができる。
【0032】
また、左右の耳Eに配されているため、ステレオ効果を期待できる。このため、装着者は音源の方向を推測でき、例えば、自動車が接近する場合に、いずれの方向から接近するかを認識でき、衝突することを回避できる。しかも、集音マイクが装着者の口から適宜に離れた位置にあるから、装着者の発音を捕捉しにくい。さらに、集音マイクが頭蓋骨から離れて配されるから、骨伝導による音声を捕捉することもない。また、左右の耳飾り11の構造を共通にできるので、製造コストの上昇を抑制できる。
【0033】
図3に示す第2実施形態に係る聴力補助具20では、眼鏡のフレーム21を利用した構造であり、フレーム21のテンプル21aに回路装置や電源等が組み込まれ、左右のテンプル21aのそれぞれの先端部に集音マイク22を配してある。また、回路装置等にケーブル23を介してイヤホン24が接続されており、このイヤホン24が耳Eの穴に挿入されるようにしてある。
【0034】
この第2実施形態に係る聴力補助具20は眼鏡の一部を兼用したものであるため、眼鏡を装着している者にとっては違和感を感じることなく使用することができる。
【0035】
図4にはこの発明の第3実施形態に係る聴力補助具30を示してあり、眼鏡のフレームのみをアクセサリーのように使用する帯状体31からなるものであり、該帯状体31の両端部は耳Eに掛止されて頭部Hの前側に装着される。この帯状体31の左右の湾曲部のそれぞれに集音マイク32が配されている。また、眼鏡フレームのテンプルに相当する部分31aに回路装置や電源等が組み込まれ、回路装置にケーブル33を介してイヤホン34が接続され、このイヤホン34が耳Eの穴に挿入される。
【0036】
この第3実施形態に係る聴力補助具30は眼鏡のフレーム形態をした帯状体31をアクセサリーとした頭飾品であり、装着している者にとって聴力補助具30に対しての違和感が緩和される。
【0037】
図5に示す第4実施形態に係る聴力補助具40は頭飾品のいわゆるカチューシャの形態を利用したカチューシャ体41であり、頭部Hの左右に掛け渡されるように装着される。このカチューシャ体41の前方を指向した部分には、左右に適宜な距離を隔てた位置に集音マイク42が配されている。また、回路装置や電源等はカチューシャ体41に組み込まれており、回路装置とケーブル43を介して接続されたイヤホン44が耳Eの穴に挿入される。
【0038】
この第4実施形態に係る聴力補助具40によれば、種々の意匠を施すことが可能なカチューシャの形態を模している構造であるため、装着に対する抵抗感を確実に緩和させることができる。
【0039】
図6に示す第5実施形態に係る聴力補助具50は後頭部を巻回させて先端部を左右の耳Eに掛止させて装着するヘッドバンド51による頭飾品であり、先端部が前方を指向するよう装着される。この先端部のそれぞれに集音マイク52が配されている。また、回路装置や電源等はヘッドバンド51に組み込まれており、回路装置とケーブル53を介して接続されたイヤホン54が耳Eの穴に挿入される。
【0040】
この第5実施形態に係る聴力補助具50によれば、後頭部に巻回されたヘッドバンド51によるから、頭部Hの前面、すなわち、顔の前方には眼鏡等のような視界に入るものがなく、装着者にとっては聴力補助具50を意識することなく装着することができる。
【0041】
以上に説明したいずれの実施形態に係る聴力補助具10、20、30、40、50のいずれも頭飾品としての機能を備えていることで、聴力に難がある者であることを周囲の者に知られにくい。また、集音マイクが左右のほぼ対称位置に配されるから、ステレオ効果により音源の方向を認識しやすく、このため自動車等の接近する方向を察知でき、安全性にとっても良好なものとなる。しかも、集音マイクとイヤホンとが適宜に離隔した位置に配されるから、ハウリングを防止できて、音声を円滑に聴くことができる。また、運動時の脱落が極力防止されるから、ステレオ効果による聴音と相まって、運動時に利用した場合の装着者の意識の応答性が向上する。加えて、左右を共通の部品で製作すれば、製造コストを低減することができる。
【0042】
なお、いずれの実施形態についても電源が内蔵されているが、この電源としては乾電池であっても構わないが、充電池を利用することが好ましく、装着者の就寝時に充電を行うようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明に係る聴力補助具によれば、頭飾品に必要な機器装置が組み込まれた構造としてあるため、周囲の者にとってはこの頭飾品の装着者が聴力に難のある者であると知られにくい。このため、抵抗感が緩和されてこの聴力補助具を装着することができるので、難聴者にとって生活の安全性や利便性の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0044】
H 頭部
E 耳
10 聴力補助具
11 耳飾り
12 集音マイク
13 ケーブル
14 イヤホン
20 聴力補助具
21 フレーム
21a テンプル
22 集音マイク
23 ケーブル
24 イヤホン
30 聴力補助具
31 帯状体
31a 部分
32 集音マイク
33 ケーブル
34 イヤホン
40 聴力補助具
41 カチューシャ体
42 集音マイク
43 ケーブル
44 イヤホン
50 聴力補助具
51 ヘッドバンド
52 集音マイク
53 ケーブル
54 イヤホン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に配される頭飾品であって、左右に配される部分を有する頭飾品と、
前記頭飾品の一部であって前方を指向した部分に配した左右一対の集音マイクと、
前記頭飾品の内部に組み込まれた所定の回路装置と、
前記回路装置とケーブルを介して接続されたイヤホンとからなることを特徴とする聴力補助具。
【請求項2】
前記頭飾品が左右の耳の上部に配される棒状体を有する耳飾りであり、前方に伸長させた前記棒状体の先端部に前記集音マイクを配してあることを特徴とする請求項1に記載の聴力補助具。
【請求項3】
前記頭飾品が眼鏡用フレームであって、該フレームのテンプルの先端部に前記集音マイクを配してあることを特徴とする請求項1に記載の聴力補助具。
【請求項4】
前記頭飾品が、顔面上部に配されて両端部が左右の耳に掛止される帯状体であり、前方を指向した部分に前記集音マイクを配してあることを特徴とする請求項1に記載の聴力補助具。
【請求項5】
前記頭飾品がカチューシャであり、該カチューシャの一部であって前方を指向した部分に前記集音マイクを配してあることを特徴とする請求項1に記載の聴力補助具。
【請求項6】
前記頭飾品が後頭部に巻回させたヘッドバンドであり、該ヘッドバンドの前方を指向させた先端面に前記集音マイクを配してあることを特徴とする請求項1に記載の聴力補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−81042(P2013−81042A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219502(P2011−219502)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(511239203)